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特開2024-144528加湿エレメント及びスケール抑制方法
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  • 特開-加湿エレメント及びスケール抑制方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144528
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】加湿エレメント及びスケール抑制方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/04 20060101AFI20241003BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F24F6/04
F24F6/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024117850
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2020096514の分割
【原出願日】2020-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】砂原 昌夫
(57)【要約】
【課題】 本発明は、従来の気化式の加湿装置におけるスケール抑制手段とは全く異なる、加湿エレメントの風上側部分におけるスケール抑制手段を備えた加湿エレメントの提供を主な課題とする。
【解決手段】 気化式の加湿装置に用いられる加湿エレメントであって、
前記加湿エレメントが、繊維によって形成される板状部材を含み、
前記板状部材のBET比表面積が0.35m/g以上0.5m/g以下である、加
湿エレメント。これにより、加湿エレメントの風上側部分のスケール発生を抑制できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化式の加湿装置に用いられる加湿エレメントであって、
前記加湿エレメントが、繊維によって形成される板状部材を含み、
前記板状部材のBET比表面積が0.35m/g以上0.5m/g以下である、加湿エレメント。
【請求項2】
前記加湿エレメントが、前記繊維の表面の少なくとも一部にシリカ粒子を含む、請求項1に記載の加湿エレメント。
【請求項3】
前記繊維の平均直径が15μm以上20μm以下である、請求項1又は2に記載の加湿エレメント。
【請求項4】
前記板状部材の見かけ密度が0.2g/cm以上0.6g/cm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の加湿エレメント。
【請求項5】
前記板状部材の気孔率が50%以上80%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の加湿エレメント。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の加湿エレメントを用いる、スケール抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿エレメント及びスケール抑制方法に関し、具体的には気化式の加湿装置に用いられる加湿エレメント及びスケール抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加湿装置として、気化式の加湿装置が知られている。気化式の加湿装置は、含水した複数の加湿エレメントを間隔を空けて配置し、加湿エレメント間に通風することで、水分を蒸発させて加湿空間の加湿を行う。この方式は送風のみで加湿制御を行うため、消費電力が少ないというメリットがある。
【0003】
気化式の加湿装置において、加湿エレメントへの水の供給手段としては、例えば、吸い上げ方式、滴下方式が知られている。吸い上げ方式は、加湿エレメントによる毛細管現象を利用したものであり、加湿エレメントの下端を、給水槽等に供給される水に浸漬することで当該水が加湿エレメントに吸い上げられ加湿エレメントを含水させる。また、滴下方式は、加湿エレメントの上部から散水し加湿エレメントを含水させる。
【0004】
図1は、気化式の加湿装置における、加湿エレメント1間へ通風する例を示す模式図である。図1において、複数の加湿エレメント1は、通風の方向と略平行となるように、互いに略等間隔となるよう配列される。加湿エレメント1の風上側から送風される空気は、複数の加湿エレメントの間に通風されることで加湿され、加湿エレメントの風下側に通過し、加湿する空間に送られる。
【0005】
気化式の加湿装置においては、加湿エレメントに絶えず水が流れる。加湿エレメントを長期にわたり使用すると、水中のカルシウム、マグネシウムなどの元素を含む化合物がスケールとなって加湿エレメントに徐々に付着する。これが成長すると、送風によりスケールが飛ばされ、加湿する空間にスケールが飛散してしまうという問題がある。また、加湿エレメントにおけるスケールの発生は、加湿エレメントの加湿性能にも悪影響を及ぼす。
【0006】
気化式の加湿装置において、特に加湿エレメント1の風上側部分が水分の蒸発が早く、スケールが濃縮されやすい。従って、加湿エレメント1の風上側部分が、特にスケールの発生量が多くなる。
【0007】
スケールの付着を抑制する気化フィルターとして、抗菌剤および防黴剤を含有する吸水性濾材からなる片面ダンボールの積層集合体であって、該積層集合体の風上側の開口断面に保水材を担持した気化フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。該フィルターによれば、風上側に保水材を担持することで、気化フィルターの乾燥を防ぎ、スケールの付着を抑制することによって、長期にわたって加湿性能を維持することができるとされている。
【0008】
また、吸水性及び通気性を有するフィルター部材を備えるフィルターにおいて、吸水性を有し、前記フィルター部材から吸水可能、且つ着脱可能に、前記フィルター部材の少なくとも一部を覆うカバー部材を備えるフィルターが知られている(例えば、特許文献2参照。)。該フィルターによれば、カバー部材はフィルター部材を着脱可能に覆うため、スケールが付着したカバー部材を新たなカバー部材に取り替えれば、フィルターの吸水性及び通気性を維持することができ、加湿装置の加湿性能を維持することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011-196638号公報
【特許文献2】特開2013-170803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1及び2に開示された技術は、特別な保水剤やカバー部材を要するため、コストが高くなるという問題がある。そこで、本発明は、従来の気化式の加湿装置におけるスケール抑制手段とは全く異なる、加湿エレメントの風上側部分におけるスケール抑制手段を備えた加湿エレメントの提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、気化式の加湿装置に用いられる加湿エレメントであって、前記加湿エレメントが、繊維によって形成される板状部材を含み、前記板状部材のBET比表面積が0.35m/g以上0.5m/g以下であるものとすることにより、加湿エレメントの風上側部分のスケール発生を抑制できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.気化式の加湿装置に用いられる加湿エレメントであって、前記加湿エレメントが、繊維によって形成される板状部材を含み、前記板状部材のBET比表面積が0.35m/g以上0.5m/g以下である、加湿エレメント。
項2.前記加湿エレメントが、前記繊維の表面の少なくとも一部にシリカ粒子を含む、項1に記載の加湿エレメント。
項3.前記繊維の平均直径が15μm以上20μm以下である、項1又は2に記載の加湿エレメント。
項4.前記板状部材の見かけ密度が0.2g/cm以上0.6g/cm以下である、項1~3のいずれか1項に記載の加湿エレメント。
項5.前記板状部材の気孔率が50%以上80%以下である、項1~4のいずれか1項に記載の加湿エレメント。
項6.項1~5のいずれか1項に記載の加湿エレメントを用いる、スケール抑制方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加湿エレメントによれば、気化式の加湿装置に用いられる加湿エレメントであって、前記加湿エレメントが、繊維によって形成される板状部材を含み、前記板状部材のBET比表面積が0.35m/g以上0.5m/g以下であることから、加湿エレメントの風上側部分におけるスケール発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】気化式の加湿装置における、加湿エレメント間へ通風する例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の加湿エレメントは、気化式の加湿装置に用いられる加湿エレメントであって、前記加湿エレメントが、繊維によって形成される板状部材を含み、前記板状部材のBET比表面積が0.35m/g以上0.5m/g以下である。以下、詳述する。
【0016】
<繊維>
本発明の加湿エレメントは、板状部材を含み、該板状部材が繊維によって形成される。後述するように、例えば、加湿エレメントは、繊維で構成される不織布を圧縮成形することで、板状部材とすることができる。
【0017】
繊維としては、例えば、有機繊維、無機繊維、またはこれらを組み合わせた複合繊維などを使用することができる。有機繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、セルロース繊維などが挙げられ、好ましくはポリエステル繊維などが挙げられる。また、無機繊維としては、例えば、ガラス繊維などが挙げられる。これらの中でも、融点又は軟化点が200℃以上の有機繊維とすることが好ましい。繊維は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明において、融点又は軟化点は、示差走査熱量測定(DSC)における吸熱ピーク温度を意味する。
【0018】
また、板状部材は、繊維として、バインダーの役割をする熱融着性繊維を含むことが好ましい。熱融着性繊維としては、融点又は軟化点の異なる2成分以上のポリマーで形成された熱融着性繊維が挙げられる。熱融着性繊維の好適な例として、非熱融着性成分となる高融点ポリマーを芯成分、熱融着性成分となる低融点ポリマーを鞘成分とする芯鞘構造を有する複合繊維が挙げられる。芯鞘構造を有する複合繊維としては、例えば、芯部がポリプロピレン且つ鞘部が変性ポリエチレンからなる複合繊維、芯部がポリエチレンテレフタレート且つ鞘部がポリオレフィンからなる複合繊維、芯部がポリエチレンテレフタレート且つ鞘部が低融点ポリエステルからなる複合繊維等が挙げられる。これらの熱融着性繊維は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、「低融点」とは、示差操作熱量計(DSC)にて測定される融点(Tm)が160℃程度以下、好ましくは140℃程度以下、である特性を示し、「高融点」とは、DSCにて測定される融点(Tm)が200℃程度以上、好ましくは220℃程度以上である特性を示す。また、熱融着性繊維における熱融着性成分の融点又は軟化点としては、例えば、80~130℃が挙げられ、100~120℃が好ましく挙げられ、110~120℃がより好ましく挙げられる。
【0019】
とりわけ、後述する、加湿エレメントの気孔率と板状部材の見かけ密度とを制御しやすくする観点から、板状部材は、繊維として融点又は軟化点が200℃以上の繊維と、熱融着性繊維とを含むものとすることが好ましい。この場合、板状部材における、融点又は軟化点が200℃以上の繊維と熱融着性繊維と、の質量比(融点又は軟化点が200℃以上の繊維の質量/熱融着性繊維の質量)としては、50/50~90/10が好ましく、60/40~80/20がより好ましい。
【0020】
板状部材を形成する繊維の横断面形状としては、特に限定されない。例えば円形とすることが挙げられる。また、板状部材のBET比表面積を高めやすくする観点から、繊維の横断面形状を異形断面形状とすることができる。異形断面形状としては、例えば、扁平断面、略三角形、四角形、五角形等の多角形断面、くさび形断面、矢形断面、あるいは略C型、H型、I型、W型等のアルファベット文字を象った断面が挙げられる。
【0021】
板状部材を形成する繊維の平均直径としては、板状部材のBET比表面積を高いものとしつつ、加湿エレメントの水拡散性がより優れたものとする観点から、10~25μmが好ましく、15~20μmがより好ましい。本発明において、繊維の平均直径は、無作為に100本選び、走査型電子顕微鏡を用いて該100本の繊維のそれぞれの長手方向の任意の箇所の横断面における直径(最も大きい部分)を測定して平均値を算出する。
【0022】
板状部材を形成する繊維の平均繊度としては、板状部材のBET比表面積を高いものとしつつ、加湿エレメントの水拡散性がより優れたものとする観点から、1~4d(デニール)が好ましく、2.5~4dがより好ましい。本発明において、平均繊度は、上記平均直径と繊維の密度から換算することができる。
【0023】
板状部材を形成する繊維の平均繊維長としては、板状部材のBET比表面積を高いものとする観点から、1~100mmが好ましく、5~80mmがより好ましい。本発明において、繊維の平均繊維長は、任意に100本選んだ繊維を、それぞれ拡大鏡及び画像解析装置を用いて1000倍に拡大して観察し、それぞれの繊維長を測定し、これら100本の繊維長の平均値を平均繊維長とする。
【0024】
<板状部材>
本発明の加湿エレメントは、繊維によって形成される板状部材を含む。板状部材は、繊維間の間隙によって形成された気孔を多数有し、通常、一方側の面から他方側の面に貫通する連続気孔と、一方側の面から他方側の面に通じていない非貫通性の気孔とを、それぞれ多数有する。連続気孔としては、構成素材の間隔をぬって折れ曲がり、一方の面から他方の面に貫通しているものや、一方の面から他方の面に直線的に貫通しているものなどが挙げられる。
【0025】
板状部材は、前述した繊維からなる不織布が圧縮成形されてなる繊維集合体とすることが好ましい。
【0026】
上記不織布としては、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、湿式抄紙不織布等が挙げられる。中でも、不織布を嵩高いものとし、板状部材の内部の表面積を高める観点から、ニードルパンチ不織布とすることが好ましい。
【0027】
本発明の加湿エレメントは、板状部材のBET比表面積が0.35m/g以上0.5m/g以下である。これにより、加湿エレメントの風上側部分のスケール発生を抑制することができる。加湿エレメントの風上側部分のスケール発生を抑制することと、加湿エレメントの水拡散性をより両立させる観点から、0.35m/g以上0.45m/g以下とすることが好ましい。なお、本発明において、BET比表面積は、77.4Kにおいて窒素吸着等温線に基づいて算出される値である。具体的には、次のようにして窒素吸着等温線が作成される。測定するサンプルを77.4K(窒素の沸点)に冷却し、窒素ガスを導入して容量法により窒素ガスの吸着量V[cc/g]を測定する。このとき、導入する窒素ガスの圧力P[hPa]を徐々に上げ、窒素ガスの飽和蒸気圧P0[hPa]で除した値を相対圧力P/P0として、各相対圧力に対する吸着量をプロットすることにより窒素吸着等温線を作成する。窒素ガスの吸着量は、市販の自動ガス吸着量測定装置(例えば、商品名「AUTOSORB-1-MP」(QUANTCHROME製)など)を用いて実施できる。本発明では、窒素吸着等温線に基づき、BET法に従って比表面積を求める。この解析は、上記装置に付属する解析プログラム等の公知の手段を用いることができる。なお、加湿エレメントが、板状部材と、後述する、板状部材の表面の少なくとも一部に含まれるシリカ粒子等、繊維以外の物質を含むときは、当該繊維以外の物質を除去して測定をおこなう。除去の方法としては、pH9~11程度のアルカリ性水溶液に5時間浸漬後、水洗して50℃で12時間乾燥する方法が挙げられる。
【0028】
本発明の加湿エレメントにおいて、板状部材のBET比表面積を上記範囲とすることにより加湿エレメントの風上側部分のスケール発生を抑制することができる機序の詳細は必ずしも明らかではないが、例えば次のように考えることができる。すなわち、スケールは供給水中に含まれる硬度成分が、加湿エレメントを構成する繊維表面で乾燥時に濃縮され、析出および堆積したものである。加湿エレメントの乾燥しやすさが異なる部位では、その発生量に差異はあるものの、加湿エレメント全体としてのスケール発生量は、加湿エレメント中の保水量や乾燥・湿潤の繰り返し頻度に依存すると考えられる。この場合、板状部材を構成する繊維の表面積を大きくすることにより、加湿エレメント全体としてのスケール発生量は変わらないが、繊維の単位面積当たりに発生するスケール量が減少する、つまり、スケールが分散されると考えられる。この効果により、スケールが顕著に発生する部位である、風上側部分においてもスケールが軽減されるものと思われる。
【0029】
板状部材のBET比表面積を調整する方法としては、板状部材を形成する繊維の平均直径や平均繊度、横断面形状を制御したり、後述する板状部材の見かけ密度を制御したりすることが挙げられる。
【0030】
板状部材は、見かけ密度が0.2g/cm以上0.6g/cm以下であることが好ましく、0.3g/cm以上0.5g/cm以下であることがより好ましく、0.33g/cm以上0.5g/cm以下であることがさらに好ましい。これにより、前述したBET比表面積と、後述する気孔率と、を制御しやすくなる。本発明において、見かけ密度は、板状部材を熱風乾燥機にて50℃で3時間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した後、質量を秤量し、その質量[g]を板状部材の体積[cm]で除することにより求められる値である。板状部材の見かけ密度を調整する方法としては、板状部材を形成する繊維の平均直径や繊度、横断面形状を制御したり、不織布を圧縮する際の不織布の目付及び板状部材の厚さを制御したりすることが挙げられる。
【0031】
板状部材の気孔率としては、50%以上80%以下が好ましく、60%以上75%以下がより好ましく、60%以上70%以下がさらに好ましい。このような範囲とすることにより、加湿エレメントの加湿性能が優れたものとしつつ、加湿エレメントの風上側部分におけるスケール発生をより一層抑制しやすくなる。本発明において、板状部材の気孔率は、板状部材の全容積における気孔の容積比率を百分率で表したものであり、次のようにして測定して得られた値である。すなわち、まず、板状部材の乾燥重量W[g]と体積V[cm]を測定し、次に板状部材の真比重ρ[g/cm]を測定して、以下の式により算出することができる。
【0032】
【数1】
【0033】
なお、板状部材の真比重ρ[g/cm]は、次のように測定することができる。すなわち、繊維の密度測定方法として用いられる、比重ビン法で測定することができる。まず、試料とする板状部材を50℃で24時間乾燥し、その重量a[g]を測定する。次に比重ビンの重量を測定し、これに試料を入れた後、試料が完全に浸るまで、密度d[g/cm]の置換用液体(沸騰させた蒸留水またはケロシン)を注ぐ。気泡が発生している場合は、減圧デシケーター中で脱泡した後、標線まで再度置換用液体を注ぐ。この状態で比重ビンの重量b[g]を測定する。別途空の比重ビンを用意し、置換用液体のみを標線まで注ぐ。この状態で比重ビンの重量c[g]を測定する。これらの測定結果から、以下の式により真比重を算出することができる。
ρ=(a×d)/(c-b+a)
【0034】
板状部材の厚さ(図1でいう、風向きと直交する方向)としては、例えば、0.5~10mmが挙げられる。また、板状部材の高さ(図1でいう、紙面上下方向)としては、30~300mmが挙げられる。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)としては、30~300mmが挙げられる。また、板状部材の目付[g/m]としては、100~3000g/mが挙げられ、200~2000g/mが好ましく挙げられ、330~550g/mがより好ましく挙げられる。
【0035】
<加湿エレメント>
本発明の加湿エレメントは、繊維によって形成される板状部材を含む。そして、板状部材の表面の少なくとも一部に、本発明の効果を奏する範囲で、繊維以外の物質も含むことができる。
【0036】
加湿エレメントに含まれる、繊維以外の物質として、加湿性能を向上させる物質が挙げられ、例えば、シリカ粒子が挙げられる。シリカ粒子の一次粒子径としては、1~300nm程度、好ましくは1~100nm程度が挙げられる。なお、シリカ粒子の一次粒子径は、JIS Z 8830 2013 窒素吸着BET法により測定される比表面積を、球状粒子の直径として換算し得られた値である。
【0037】
加湿エレメントの質量に対する、シリカ粒子の含有量(質量%)としては、0.1~5.0質量%が挙げられ、0.2~2.0質量%が好ましく挙げられる。
【0038】
また、本発明の加湿エレメントは、上記繊維以外の物質として、抗微生物剤が挙げられる。抗微生物剤としては、公知の抗菌剤、抗カビ剤などを使用することができる。抗菌剤の具体例としては、イルガサン(登録商標、別名:トリクロサン、IUPAC名:5-クロロ-2-[2,4-ジクロロフェノキシル]フェノール)、塩酸クロルヘキシジン、ジンクピリチオン(IUPAC名:ビス(2-ピリジルチオ)亜鉛-1,1’-ジオキサイド)、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールなどが挙げられる。また、抗カビ剤の具体例としては、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート、チアベンダゾール、フルオロフォルペット(IUPAC名:2-(ジクロロ-フルオロメチル)スルファニルイソインドール-1,3-ジオン)、クロルキシレノール、カルベンダジン、キャプタン、クロロタロニル及びメチルスルホニルテトラクロルピリジンなどが挙げられる。抗微生物剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、抗菌剤と抗カビ剤とを併用してもよい。
【0039】
加湿エレメントの質量に対する、抗微生物剤の含有量(質量%)としては、0.01~1.0質量%が挙げられ、0.02~0.5質量%が好ましく挙げられる。
【0040】
また、本発明の加湿エレメントにおいて、板状部材の表面の少なくとも一部に含まれる繊維以外の物質の含有量(質量%)としては、0.11~6.0質量%が挙げられ、0.24~2.5質量%が好ましく挙げられる。
【0041】
<加湿装置>
本発明の加湿エレメントは、気化式の加湿装置に適用される。気化式の加湿装置としては、前述した、吸い上げ方式、滴下方式のものが挙げられる。
【0042】
図1は、気化式の加湿装置における、加湿エレメント1間へ通風する例を示す模式図である。上記加湿装置としては、図1に示すように、複数の加湿エレメント1が、通風の方向と略平行となるように、互いに略等間隔となるよう配列され、加湿エレメント1の風上側から送風される空気は、複数の加湿エレメントの間に通風されることで加湿され、加湿エレメントの風下側に通過し、加湿する空間に送られるものとすることが好ましい。
【0043】
<加湿エレメントの製造方法>
本発明の加湿エレメントの製造方法としては、例えば、板状部材を形成する繊維を準備する工程、該繊維を用いた不織布を準備する工程、該不織布を圧縮成形し板状部材とする工程、を含むものとすることができる。
【0044】
上記不織布を準備する工程において、ニードルパンチ法、スパンレース法、湿式抄紙法等により、不織布を製造することができる。この際、不織布の目付は、100~3,000g/mとすることが好ましく、200~2,000g/mとすることがより好ましい。
【0045】
上記圧縮成形し板状部材とする工程において、圧縮成形する際の加熱温度としては、繊維の融点に応じて適宜設定すればよい。とりわけ、板状部材を形成する繊維として融点又は軟化点が200℃以上の繊維と、熱融着性繊維とを含むものとする場合、上記加熱温度は、熱融着性繊維の熱融着性成分の融点又は軟化点以上で、かつ、上記融点又は軟化点が200℃以上の繊維の融点又は軟化点以下の範囲とすることが好ましく、具体的には、例えば、160~190℃が挙げられる。また、圧縮成形する際の圧力としては、例えば、10,000~30,000kg/m程度が挙げられる。加熱圧縮に次いで、前記熱融着性繊維の熱融着性成分の融点又は軟化点以下、具体的には70℃以下、より好ましくは50℃以上70℃以下で冷却圧縮することにより、厚みなどの形状を固定するとともに、板状部材の強度を確保することができ、板状部材のBET比表面積を安定させることができる。
【0046】
また、本発明の加湿エレメントの製造方法では、必要に応じて、板状部材の表面の少なくとも一部に、繊維以外の物質を付着させる工程を含むことができる。例えば、繊維以外の物質として、シリカ粒子と抗微生物剤とを含有させる場合は、極性有機溶媒に上記のシリカ粒子及び抗微生物剤が分散された分散体に板状部材を浸漬する浸漬工程を行うことができる。浸漬工程に用いられる極性有機溶媒としては、シリカ粒子及び抗微生物剤を分散させることができれば、特に制限されないが、シリカ粒子及び抗微生物剤の分散性に優れ、抗微生物剤をシリカ粒子に担持させた状態で板状部材全体に均一性高く当該シリカ粒子を付着させる観点からは、炭素数1~6程度の低級アルコール、アセトン、ジエチルエーテルなどが好ましく、これらの中でも特にメタノール、イソプロピルアルコール(IPA)が好ましい。これらの極性溶媒を用いることにより、シリカ粒子を板状部材の内部にまで均一に担持させることができ、かつ、シリカ粒子によって形成される上記のような凝集体の内側に抗微生物剤を取り込ませることが可能になるため、長期間にわたって高い抗微生物性を維持でき、かつ、吸水性にも優れる加湿エレメントが得られる。極性有機溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよいし、水と混合して使用してもよい。浸漬工程において、極性有機溶媒に含まれるシリカ粒子の濃度は、例えば1~30質量%程度とすればよい。また、抗微生物剤の濃度は、例えば0.1~10質量%程度とすればよい。
【0047】
次に、上記の浸漬工程で浸漬した板状部材を乾燥させる乾燥工程を行う。乾燥工程は、板状部材を上記の分散体から引き上げて、極性有機溶媒を乾燥させることにより行うことができる。極性有機溶媒を乾燥させる方法としては、特に制限されないが、例えば、遠心分離機、ロールプレス機などを用い、分散体の絞り率が10~150質量%程度となるように浸漬した多孔性基材を絞った後、温度40~60℃程度の乾燥機で3~15時間程度乾燥させることにより行うことができる。
【実施例0048】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0049】
<実施例1>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度3d(デニール)、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度4d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0050】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を70質量部、上記芯鞘型複合短繊維を30質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は350g/m、厚さは3.0mmであった。
【0051】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2.0kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.38m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は18μm、平均繊度は3.3d、平均繊維長は51mm、見かけ密度は0.35g/cm、気孔率が68%、目付は350g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0052】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、下記処方1とした分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度50℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、0.6質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.12質量%であった。
【0053】
(処方1)
コロイダルシリカ(一次粒子径10nm):4.0質量%
イルガサン:0.5質量%
3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート:0.5質量%
イソプロピルアルコール(IPA):残部
【0054】
<実施例2>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度3d(デニール)、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度2d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0055】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を80質量部、上記芯鞘型複合短繊維を20質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は450g/m、厚さは3.0mmであった。
【0056】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2.0kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.43m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は17μm、平均繊度は2.8d、平均繊維長は51mm、見かけ密度は0.45g/cm、気孔率が63%、目付は450g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0057】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、処方1の分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度50℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、1.0質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.2質量%であった。
【0058】
<実施例3>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度3d(デニール)、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度4d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0059】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を80質量部、上記芯鞘型複合短繊維を20質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は450g/m、厚さは3.0mmであった。
【0060】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2.0kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.40m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は18μm、平均繊度は3.2d、平均繊維長は51mm、見かけ密度は0.45g/cm、気孔率が65%、目付は450g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0061】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、処方1の分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度50℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、1.0質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.20質量%であった。
【0062】
<実施例4>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度3d(デニール)、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度4d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0063】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を60質量部、上記芯鞘型複合短繊維を40質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は300g/m、厚さは3.0mmであった。
【0064】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2.0kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.39m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は18μm、平均繊度は3.4d、平均繊維長は51mm、見かけ密度は0.30g/cm、気孔率が72%、目付は300g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0065】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、処方1の分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度50℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、0.6質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.12質量%であった。
【0066】
<実施例5>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度3d(デニール)、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度4d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0067】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を80質量部、上記芯鞘型複合短繊維を20質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は350g/m、厚さは3.0mmであった。
【0068】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2.0kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.40m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は18μm、平均繊度は3.2d、平均繊維長は51mm、見かけ密度は0.35g/cm、気孔率が69%、目付は350g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0069】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、処方1の分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度50℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、2.0質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.20質量%であった。
【0070】
<実施例6>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度2d(デニール)、繊維長・BR>T1mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度2d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0071】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を80質量部、上記芯鞘型複合短繊維を20質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は350g/m、厚さは3.0mmであった。
【0072】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2.0kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.50m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は14μm、平均繊度は2d、平均繊維長は51mm、見かけ密度は0.35g/cm、気孔率が68%、目付は350g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0073】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、処方1の分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度50℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、2.4質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.24質量%であった。
【0074】
<比較例1>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度10d(デニール)、繊維長64mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度4d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0075】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を80質量部、上記芯鞘型複合短繊維を20質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は450g/m、厚さは3.0mmであった。
【0076】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.25m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は28μm、平均繊度は8.8d、平均繊維長は58mm、見かけ密度は0.45g/cm、気孔率が61%、目付は450g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0077】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、上記処方1とした分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度60℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、0.6質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.12質量%であった。
【0078】
<比較例2>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度10d(デニール)、繊維長64mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度4d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0079】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を70質量部、上記芯鞘型複合短繊維を30質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は350g/m、厚さは3.0mmであった。
【0080】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.26m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は26μm、平均繊度は8.2d、平均繊維長は57mm、見かけ密度は0.35g/cm、気孔率が67%、目付は350g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0081】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、上記処方1とした分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度60℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、0.6質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.12質量%であった。
【0082】
<比較例3>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度10d(デニール)、繊維長64mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度4d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0083】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を80質量部、上記芯鞘型複合短繊維を20質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は300g/m、厚さは3.0mmであった。
【0084】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.25m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は28μm、平均繊度は8.8d、平均繊維長は58mm、見かけ密度は0.30g/cm、気孔率が68%、目付は300g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0085】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、上記処方1とした分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度60℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、0.6質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.12質量%であった。
【0086】
<比較例4>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度10d(デニール)、繊維長64mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度2d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0087】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を80質量部、上記芯鞘型複合短繊維を20質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は450g/m、厚さは3.0mmであった。
【0088】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.28m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は22μm、平均繊度は8.4d、平均繊維長は56mm、見かけ密度は0.45g/cm、気孔率が58%、目付は450g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0089】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、上記処方1とした分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度60℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、0.7質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.14質量%であった。
【0090】
<比較例5>
(1)板状部材を形成する繊維を準備する工程
繊度6d(デニール)、繊維長64mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(融点255℃)と、繊度4d、繊維長51mmであり、芯部がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)及び鞘部が融点110℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体である芯鞘型複合短繊維とを準備した。
【0091】
(2)繊維を用いた不織布を準備する工程
上記ポリエチレンテレフタレート短繊維を80質量部、上記芯鞘型複合短繊維を20質量部、合計100質量部の比率で、混合し、カーディングしてウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して雰囲気温度180℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。該不織布の目付は350g/m、厚さは3.0mmであった。
【0092】
(3)不織布を圧縮成形し板状部材とする工程
上記不織布を、加熱プレス成形機にて170℃、2kg/cmで8分間加熱加圧し、次いで60℃、2.0kg/cmで8分間冷却加圧して、厚さ1.0mmの部分融着した板状部材を得た。該板状部材のBET比表面積は、0.33m/gであった。また、板状部材を形成する繊維の平均直径は20μm、平均繊度は5.6d、平均繊維長は58mm、見かけ密度は0.35g/cm、気孔率が67%、目付は350g/mであった。また、板状部材の長さ(図1でいう、風向き方向)は100mm、高さ(図1でいう、紙面上下方向)は150mmとした。
【0093】
(4)板状部材の表面の少なくとも一部に、シリカ粒子と抗微生物剤を付着させる工程 次に、上記処方1とした分散液に、得られた板状部材を含浸し、遠心分離機で絞り率50質量%に絞った後、雰囲気温度60℃とした乾燥機中で12時間乾燥し、加湿エレメントを得た。なお、加湿エレメントにおけるコロイダルシリカの含有量は、0.8質量%であった。また、加湿エレメントにおける、イルガサン及び3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートの合計含有量は、0.16質量%であった。
【0094】
<評価方法>
(1)加湿エレメントの風上側部分のスケール発生量
実施例および比較例で作製した板状部材について、次の乾湿繰り返し試験により、発生したスケールの重量を計測した。まず、空調送風機を用いて、板状部材の長さ方向(図1でいう、風向き方向)に、温度40℃、相対湿度10%~30%、風速1.5m/s~2.2m/sに調整した風を流した。次に、炭酸水素ナトリウム1.68g/L、塩化カルシウム2水和物1.47g/Lを溶解した混合水溶液を作製し、板状部材の上端、長さ方向の中央部に対し、内径4mmのチューブから通水ポンプを用いて毎分3mLの速度で供給した。供給開始から10分後に混合水溶液の供給を止め、送風のみの状態を110分保持した。この合計120分の操作を1サイクルとし、これを25サイクル繰り返した。この乾湿繰り返し試験後に、風上側部分に発生したスケールを、端面及び端面から長さ方向に5mmの部分までをピンセットで10回削ぎ落として採取し、その重量を計測した。加湿エレメント20枚分について、その計測値を合計した結果を、加湿エレメントの風上側部分のスケール発生量とした。
【0095】
(2)加湿エレメントの全体のスケール発生量
(1)の乾湿繰り返し試験前後の板状部材の重量を計測し、その差分を加湿エレメントのスケール発生量とした。板状部材20枚分について、加湿エレメントのスケール発生量を合計した結果を、加湿エレメントの全体のスケール発生量とした。
【0096】
(3)水拡散性
板状部材の上端、長さ方向の中央部に対し、内径4mmのチューブから通水ポンプを用いて毎分5mLの速度で供給し、板状部材下端に向かって水が拡散していく様子を観察した。水が供給点から同心円状に拡散した場合は○、水が供給点から同心円状に拡散しない部位があった場合は×と評価した。
【0097】
各実施例の結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
実施例1~6の加湿エレメントは、気化式の加湿装置に用いられる加湿エレメントであって、前記加湿エレメントが、繊維によって形成される板状部材を含み、前記板状部材のBET比表面積が0.35m/g以上0.5m/g以下であることから、加湿エレメントの風上側部分におけるスケール発生を抑制できるものであった。
【0100】
とりわけ、実施例1~5の加湿エレメントは、板状部材のBET比表面積が0.35m/g以上0.45m/g以下であることから、加湿エレメントの風上側部分のスケール発生を抑制することと、加湿エレメントの水拡散性をより両立させるものであった。
【0101】
さらに、実施例1~3、実施例5及び6の加湿エレメントは、気孔率が60~70%であったことから、加湿エレメントの風上側部分におけるスケール発生をより一層抑制しやすくなるものであった。
【0102】
一方、比較例1~5は、板状部材のBET比表面積が0.35m/g未満であったことから、加湿エレメントの風上側部分におけるスケール発生を抑制することができなかった。
図1