(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014453
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 29/231 20160101AFI20240125BHJP
A23L 33/00 20160101ALI20240125BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
A23L29/231
A23L33/00
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117285
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】390019987
【氏名又は名称】亀田製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 肇
(72)【発明者】
【氏名】竹井 亮
(72)【発明者】
【氏名】星(本間) 千裕
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD01
4B018MD04
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4B041LP04
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、調製が容易であり、かつ、嚥下困難者が嚥下可能な、タンパク質含有ゲル食品を提供することである。
【解決手段】本発明は、食品組成物であって、前記食品組成物が、タンパク質、LMペクチン、カルシウム又はその塩、ナトリウム又はその塩、及び所定のゲル化補助剤を含むものを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品組成物であって、
前記食品組成物が、タンパク質、LMペクチン、カルシウム又はその塩、ナトリウム又はその塩、及びゲル化補助剤を含み、
前記ゲル化補助剤が、還元作用を有する成分とキレート作用を有する成分との組み合わせであり、
前記LMペクチンの含有量が、前記食品組成物に対して、0.5質量%以上14質量%以下であり、
前記カルシウム又はその塩の含有量が、前記食品組成物に対して、カルシウム換算値として0.0050質量%以上1.0質量%以下であり、
前記ナトリウム又はその塩の含有量が、前記食品組成物に対して、ナトリウム換算値として0.0010質量%以上0.8質量%以下であり、
前記ゲル化補助剤の含有量が、前記食品組成物に対して、0.0050質量%以上4.5質量%以下である、食品組成物。
【請求項2】
食品組成物であって、
前記食品組成物が、タンパク質、LMペクチン、カルシウム又はその塩、ナトリウム又はその塩、及びゲル化補助剤を含み、
前記ゲル化補助剤が、還元作用及びキレート作用を有する成分であり、
前記LMペクチンの含有量が、前記食品組成物に対して、0.5質量%以上14質量%以下であり、
前記カルシウム又はその塩の含有量が、前記食品組成物に対して、カルシウム換算値として0.0050質量%以上1.0質量%以下であり、
前記ナトリウム又はその塩の含有量が、前記食品組成物に対して、ナトリウム換算値として0.0010質量%以上0.8質量%以下であり、
前記ゲル化補助剤の含有量が、前記食品組成物に対して、0.010質量%以上2.3質量%以下である、食品組成物。
【請求項3】
さらに、糖類を含む、請求項1又は2に記載の食品組成物。
【請求項4】
さらに、油脂を含む、請求項1又は2に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢者の人口増加にともない、嚥下機能(咀嚼、飲み込み等)が低下した嚥下困難者に適した飲食品に対するニーズが増加している。
【0003】
このようなニーズに応えた食品として、「嚥下困難者用食品」が挙げられる。
嚥下困難者用食品は、嚥下機能のレベルに合わせて、飲み込みやすいように、形態やとろみ、食塊のまとまりやすさ等を調整した食事を意味する。
【0004】
嚥下困難者用食品の形態として、ゲル食品等が挙げられる(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-132286号公報
【特許文献2】特開2011-167142号公報
【特許文献3】特開2019-141030号公報
【特許文献4】特開2006-129868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゲル食品は、通常、食品成分や水とともにゲル化剤を配合し、これらに対する撹拌等の操作によってゲル化することで得られる。
【0007】
しかし、従来、食品成分がタンパク質を含む場合、ゲル化のための撹拌には、加熱や高速撹拌機(ミキサー等)、冷却工程等を要し、調製の簡便さに課題があった。特に、災害時等では、加熱や高速撹拌等を行うための道具を準備できない可能性があり、嚥下困難者の食事の確保を妨げ、嚥下困難者が低栄養状態に陥るおそれがある。
【0008】
したがって、簡便に調製できるタンパク質含有ゲル食品に対するニーズがある。
【0009】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、調製が容易であり、かつ、嚥下困難者が嚥下可能な、タンパク質含有ゲル食品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、タンパク質とともに、所定のゲル化剤、ミネラル、及びゲル化補助剤を配合することで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成させた。具体的に、本発明は以下を提供する。
【0011】
(1) 食品組成物であって、
前記食品組成物が、タンパク質、LMペクチン、カルシウム又はその塩、ナトリウム又はその塩、及びゲル化補助剤を含み、
前記ゲル化補助剤が、還元作用を有する成分とキレート作用を有する成分との組み合わせであり、
前記LMペクチンの含有量が、前記食品組成物に対して、0.5質量%以上14質量%以下であり、
前記カルシウム又はその塩の含有量が、前記食品組成物に対して、カルシウム換算値として0.0050質量%以上1.0質量%以下であり、
前記ナトリウム又はその塩の含有量が、前記食品組成物に対して、ナトリウム換算値として0.0010質量%以上0.8質量%以下であり、
前記ゲル化補助剤の含有量が、前記食品組成物に対して、0.0050質量%以上4.5質量%以下である、食品組成物。
【0012】
(2) 食品組成物であって、
前記食品組成物が、タンパク質、LMペクチン、カルシウム又はその塩、ナトリウム又はその塩、及びゲル化補助剤を含み、
前記ゲル化補助剤が、還元作用及びキレート作用を有する成分であり、
前記LMペクチンの含有量が、前記食品組成物に対して、0.5質量%以上14質量%以下であり、
前記カルシウム又はその塩の含有量が、前記食品組成物に対して、カルシウム換算値として0.0050質量%以上1.0質量%以下であり、
前記ナトリウム又はその塩の含有量が、前記食品組成物に対して、ナトリウム換算値として0.0010質量%以上0.8質量%以下であり、
前記ゲル化補助剤の含有量が、前記食品組成物に対して、0.010質量%以上2.3質量%以下である、食品組成物。
【0013】
(3) さらに、糖類を含む、(1)又は(2)に記載の食品組成物。
【0014】
(4) さらに、油脂を含む、(1)又は(2)に記載の食品組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、調製が容易であり、かつ、嚥下困難者が嚥下可能な、タンパク質含有ゲル食品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれに特に限定されない。
【0017】
<食品組成物>
本発明の食品組成物は、2つの態様を包含する。
以下のとおり、2つの態様は、ゲル化補助剤の構成において相違するが、その他の点では共通する構成を有する。
【0018】
第1の態様に係る食品組成物は、以下の要件を全て満たす。
・食品組成物が、タンパク質、LMペクチン、カルシウム又はその塩、ナトリウム又はその塩、及びゲル化補助剤を含む。
・ゲル化補助剤が、還元作用を有する成分とキレート作用を有する成分との組み合わせである。
・LMペクチンの含有量が、食品組成物に対して、0.5質量%以上14質量%以下である。
・カルシウム又はその塩の含有量が、食品組成物に対して、カルシウム換算値として0.0050質量%以上1.0質量%以下である。
・ナトリウム又はその塩の含有量が、食品組成物に対して、ナトリウム換算値として0.0010質量%以上0.8質量%以下である。
・ゲル化補助剤の含有量が、食品組成物に対して、0.0050質量%以上4.5質量%以下である。
【0019】
第2の態様に係る食品組成物は、以下の要件を全て満たす。
・食品組成物が、タンパク質、LMペクチン、カルシウム又はその塩、ナトリウム又はその塩、及びゲル化補助剤を含む。
・ゲル化補助剤が、還元作用及びキレート作用を有する成分である。
・LMペクチンの含有量が、食品組成物に対して、0.5質量%以上14質量%以下である。
・カルシウム又はその塩の含有量が、食品組成物に対して、カルシウム換算値として0.0050質量%以上1.0質量%以下である。
・ナトリウム又はその塩の含有量が、食品組成物に対して、ナトリウム換算値として0.0010質量%以上0.8質量%以下である。
・ゲル化補助剤の含有量が、食品組成物に対して、0.010質量%以上2.3質量%以下である。
【0020】
本発明において、LMペクチンはゲル化剤に相当する。
カルシウム又はその塩はLMペクチンのゲル化のために必須の成分であり、ナトリウム又はその塩は均一なゲル形成するためにカルシウムの溶解速度を調整する。
また、ゲル化補助剤は、LMペクチンによるゲル化を促進する。
【0021】
本発明は、上記要件を満たす食品組成物によれば、加熱や高速撹拌、冷却等を行わなくとも容易にゲル化できる、という新規かつ意外な知見に基づき完成されたものである。
【0022】
本発明において、「食品組成物が容易にゲル化する」とは、食品組成物及び溶媒を入れた容器を、常温(例えば、15~25℃)下で、数秒から数分にわたる簡単な撹拌操作によって食品組成物がゲル化することを包含する。
【0023】
本発明において、「簡単な撹拌操作」とは、撹拌機(特に、ミキサー、ホモジナイザー等の高速撹拌機)を要さずに撹拌することを包含し、例えば、手で撹拌(例えば、転倒撹拌)したり、手で振ったりすることを包含する。
【0024】
したがって、本発明によれば、加熱や高速撹拌等を行うための道具や設備を準備できない場合や、電気等の熱源を使用できない場合であっても、タンパク質含有ゲル食品を容易に調製できる。
【0025】
本発明において、「ゲル化」とは、嚥下困難者が嚥下可能である程度の物性を有するゲルへの変化を包含する。
本発明において、「ゲル」や「ゲル食品」とは、嚥下困難者が嚥下可能である程度の物性を有するゲル状物を包含する。
【0026】
本発明において、「嚥下困難者が嚥下可能である程度の物性」とは、例えば、ゲルの硬さ、付着性、凝集性、及び離水性の少なくともいずれか(好ましくは全て)が、以下の基準を満たすことを包含する。
・「ゲルの硬さ」(単位:N/m2):好ましくは3×102~2×104N/m2、より好ましくは2.5×103~1×104N/m2
・「ゲルの付着性」(J/m3):好ましくは1.5×103J/m3以下、より好ましくは4.0×102J/m3以下、さらに好ましくは2.0×102J/m3以下
・「ゲルの凝集性」:好ましくは0.2~0.6
・ゲル化後、経時的な状態変化が少なく、例えば1時間以上静置した場合においても、離水等が認められない。
【0027】
本発明において、「硬さ」、「付着性」、及び「凝集性」は、日本国における「特別用途食品 えん下困難者用食品」の試験方法(令和元年9月9日 消食表第296号)に準じて測定される。
具体的には、クリープメーターを用いて、下記測定条件に基づき測定される。
[測定条件]
プランジャー:直径20mm、高さ8mmの円柱状
圧縮速度:10mm/sec
試料高さ:15mm
クリアランス:5mm
測定温度:20±2℃
【0028】
なお、本発明の食品組成物は、ゲル化処理されていない(ゲル化処理される前の)食品組成物に相当する。後述のとおり、本発明の食品組成物に対して溶媒を添加することで、本発明の食品組成物からゲルが得られる。
【0029】
以下、本発明の食品組成物の構成について詳述する。
【0030】
(1)タンパク質
本発明において、タンパク質は、食品組成物に含まれる主要な栄養成分である。
従来、タンパク質を含む食品組成物は、ゲル化のために煩雑な操作(加熱、高速撹拌等)を要したが、本発明によれば、後述する成分の作用により、このような操作を要さずとも、ゲル化することができる。
【0031】
タンパク質の種類としては、飲食品の成分として利用できるものであれば特に限定されない。
タンパク質は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0032】
タンパク質としては、加水分解タンパク質、コラーゲンペプチド、ホエイパウダー、植物由来タンパク質粉末等が挙げられる。タンパク質は、タンパク質とともにその他の成分が含まれる成分(例えば、乳成分)であってもよい。
【0033】
タンパク質の含有量は、実現しようとするタンパク質補給量やゲル化の程度等に応じて適宜調整できる。
【0034】
タンパク質の含有量(タンパク質換算値)の下限は、栄養補給を充分に配合するという観点から、食品組成物に対して、1.0以上、好ましくは8.0質量%以上、より好ましくは17質量%以上である。
【0035】
タンパク質の含有量(タンパク質換算値)の上限は、充分にゲル化しやすいという観点から、食品組成物に対して、94質量%以下、好ましくは89質量%以下、より好ましくは83質量%以下である。
【0036】
(2)LMペクチン
本発明におけるLMペクチンはゲル化剤に相当する。
【0037】
LMペクチンは、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0038】
LMペクチンは、「低メトキシル(Low Methoxyl)ペクチン」としても知られ、エステル化度(DE値(Degree of esterification))が50%未満である。
【0039】
本発明におけるLMペクチンとしては、任意の製品を利用できる。
本発明の効果が奏されやすいという観点から、LMペクチンは、即溶解性、冷水溶解性、再セット性等のうちいずれか、又は全てが好ましいものを好適に使用できる。
【0040】
LMペクチンの含有量の下限は、充分にゲル化しやすいという観点から、食品組成物に対して、0.5質量%以上、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上である。
【0041】
LMペクチンの含有量の上限は、嚥下困難者が喫食するのに適したゲルを作製しやすいという観点から、食品組成物に対して、14質量%以下、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0042】
(3)カルシウム又はその塩
本発明において、カルシウム又はその塩は、LMペクチンのゲル化に必須の成分である。
【0043】
カルシウム又はその塩の種類としては、飲食品の成分として利用できるものであれば特に限定されない。
カルシウム又はその塩は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0044】
カルシウム塩としては、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。
【0045】
カルシウム又はその塩の含有量(カルシウム換算値)の下限は、充分にゲル化しやすいという観点から、食品組成物に対して、0.0050質量%以上、好ましくは0.010質量%以上、より好ましくは0.050質量%以上である。
【0046】
カルシウム又はその塩の含有量(カルシウム換算値)の上限は、食品組成物のゾル化を防ぎやすいという観点から、食品組成物に対して、1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0047】
(4)ナトリウム又はその塩
本発明において、ナトリウム又はその塩は、カルシウム溶解速度を調整し、嚥下困難者が喫食するのに適したゲルの作製に寄与する。
【0048】
ナトリウム又はその塩の種類としては、飲食品の成分として利用できるものであれば特に限定されない。
ナトリウム又はその塩は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0049】
ナトリウム塩としては、ピロリン酸二水素ナトリウム、ピロリン酸四水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
ナトリウム又はその塩の含有量(ナトリウム換算値)の下限は、均一なゲルを作製しやすいという観点から、食品組成物に対して、0.0010質量%以上、好ましくは0.010質量%以上、より好ましくは0.020質量%以上である。
【0051】
ナトリウム又はその塩の含有量(ナトリウム換算値)の上限は、タンパク質含有食品組成物のゲル化を妨げにくいという観点から、食品組成物に対して、0.8質量%以下、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。
【0052】
(5)ゲル化補助剤
本発明において、ゲル化補助剤は、タンパク質含有食品組成物のゲル化を促進する。
【0053】
本発明における「ゲル化補助剤」は、以下のいずれかの態様を包含する。
(態様1)ゲル化補助剤が、還元作用を有する成分、及びキレート作用を有する成分の組み合わせを含む。
(態様2)ゲル化補助剤が、還元作用及びキレート作用を有する成分を含む。
【0054】
(5-1)態様1について
態様1は、ゲル化補助剤が、還元作用を有する成分、及びキレート作用を有する成分という、少なくとも2種の成分を含む態様である。
ただし、還元作用を有する成分、及びキレート作用を有する成分は、それぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
還元作用を有する成分としては、トコフェロール、亜硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、カテキン等が挙げられる。
【0056】
キレート作用を有する成分としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸等が挙げられる。
【0057】
還元作用を有する成分、及びキレート作用を有する成分の含有量(成分の総量)の下限は、充分にゲル化しやすいという観点から、食品組成物に対して、0.0050質量%以上、好ましくは0.020質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。
【0058】
還元作用を有する成分、及びキレート作用を有する成分の含有量(成分の総量)の上限は、嚥下困難者が喫食するのに適した物性にしやすいという観点から、食品組成物に対して、4.5質量%以下、好ましくは1.2質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下である。
【0059】
還元作用を有する成分、及びキレート作用を有する成分の比率は、適宜調整できるが、その質量比(還元作用を有する成分:キレート作用を有する成分)は、好ましくは1:0.5~3、より好ましくは1:0.75~2.5、さらに好ましくは1:1である。
【0060】
態様1において、さらに、還元作用及びキレート作用を有する成分も含むことは排除されない。
ただし、態様1における好ましい態様は、ゲル化補助剤が、還元作用を有する成分、及びキレート作用を有する成分のみからなる態様を包含する。
【0061】
(5-2)態様2について
態様2は、ゲル化補助剤が、還元作用及びキレート作用のいずれも有する1種の成分を含む態様である。
ただし、還元作用及びキレート作用のいずれも有する成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
還元作用及びキレート作用を有する成分としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0063】
還元作用及びキレート作用を有する成分の含有量の下限は、充分にゲル化しやすいという観点から、食品組成物に対して、0.010質量%以上、好ましくは0.020質量%以上、より好ましくは0.050質量%以上である。
【0064】
還元作用及びキレート作用を有する成分の含有量の上限は、嚥下困難者が喫食するのに適した物性にしやすいという観点から、食品組成物に対して、2.3質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0065】
態様2において、さらに、還元作用を有する成分、及び/又はキレート作用を有する成分も含むことは排除されない。
ただし、態様2における好ましい態様は、ゲル化補助剤が、還元作用及びキレート作用を有する成分のみからなる態様を包含する。
【0066】
(6)その他の成分
本発明の食品組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分に加え、飲食品に添加され得る任意の成分が配合されていてもよく、配合されていなくともよい。
【0067】
その他の成分としては、糖類、油脂、シーズニング、香料等が挙げられる。これらの成分の種類や配合量は、得ようとする効果等に応じて適宜調整できる。
【0068】
糖類としては、マルトデキストリン、デキストリン、グラニュー糖、上白糖、三温糖、黒糖、トレハロース等が挙げられる。
【0069】
糖類の含有量の下限は、エネルギー補給源として充分な量を配合しやすいという観点から、食品組成物に対して、1.0質量%以上、好ましくは8.0質量%以上、より好ましくは17質量%以上である。
【0070】
糖類の含有量の上限は、嚥下困難者が喫食するのに適した物性にしやすいという観点から、食品組成物に対して、53質量%以下、好ましくは36質量%以下、より好ましくは27質量%以下である。
【0071】
油脂としては、粉末油脂、結晶油脂、液体油脂等が挙げられる。
【0072】
油脂の含有量の下限は、エネルギー補給源として充分な量を配合しやすいという観点から、食品組成物に対して、1.0質量%以上、好ましくは8.0質量%以上、より好ましくは17質量%以上である。
【0073】
油脂の含有量の上限は、食品組成物に対して、62質量%以上、好ましくは45質量%以下、より好ましくは36質量%以下である。
【0074】
シーズニングは、食品組成物に対して各種の味付けや風味を付与し、嗜好性を向上させる観点から、本発明の効果を妨げない範囲で添加が可能である。
シーズニングとしては、調味料、調味料、香料、果実粉末、果汁等が挙げられる。シーズニングの形態は、粉末や液体であり得る。
【0075】
本発明の食品組成物は、腐敗等を防ぐ観点から、水分が低いことが好ましい。
例えば、本発明の食品組成物の水分含有量は、17質量%以下であり得る。
【0076】
(7)各成分の比率
本発明の食品組成物に含まれる各成分は、より良好なゲル化を容易にする観点から、その質量比が以下の要件のいずれかを満たしていてもよい。
【0077】
タンパク質:LMペクチン:還元作用を有する成分:キレート作用を有する成分(質量比)=1~300:8~48:0.1~8:0.1~24
【0078】
タンパク質:LMペクチン:還元作用及びキレート作用を有する成分(質量比)=1~300:8~48:0.1~8
【0079】
(8)食品組成物の形態
本発明の食品組成物の形態は特に限定されず、構成成分の性状等に応じた任意の形態(粉末、液体等)であり得る。
【0080】
本発明の食品組成物の好ましい形態として、粉末等が挙げられる。
粉末形態である食品組成物は、長期間にわたって保存できるので、例えば、非常食や保存食として好適に利用できる。
【0081】
<食品組成物の製造方法>
本発明の食品組成物の製造方法は特に限定されず、食品組成物の形態等に応じた任意の食品製造方法を採用できる。
【0082】
例えば、本発明の食品組成物が粉末形態である場合、食品組成物を構成する成分を混合等することで食品組成物が得られる。
【0083】
得られた食品組成物は、そのままゲル化処理に供してもよく、ゲル化処理に供するまで容器等に封入して保存してもよい。
【0084】
<食品組成物の用途>
本発明の食品組成物は、ゲル化処理によってゲル状物に調製され、ゲル食品として食用に供される。
したがって、本発明の食品組成物は、ゲル化用食品組成物であるともいえる。
【0085】
ゲル化処理としては、特に限定されないが、本発明の食品組成物に溶媒を添加した後に撹拌操作を行う方法が挙げられる。
【0086】
ゲル化処理における撹拌操作としては、手による撹拌(例えば、転倒撹拌、振盪)、簡易な道具(スプーン、マドラー等)による撹拌が挙げられる。
なお、上述のとおり、本発明の食品組成物は、加熱や高速撹拌を行わなくとも容易にゲル化できる。ただし、本発明において、加熱や高速撹拌によって食品組成物をゲル化させる態様は排除されない。
【0087】
ゲル化処理に用いる溶媒としては、飲用可能な任意の溶媒を採用でき、水、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、乳酸菌飲料等が挙げられる。これらのうち、入手が容易であり、ゲル化しやすいという観点から、水が好ましい。
【0088】
ゲル化処理に用いる溶媒の量は、特に限定されないが、食品組成物に対して、1~15倍量、好ましくは1.1~5倍量、より好ましくは1.5~3.5倍量であり得る。
【0089】
ゲル化処理の時間は特に限定されないが、30~60秒であり得る。
【0090】
ゲル化処理の温度は特に限定されないが、室温(0~35℃)や常温(15~25℃)であり得る。
【0091】
<ゲル食品作製用キット>
本発明は、本発明の食品組成物を含むゲル食品作製用キットを包含する。
該キットには、本発明の食品組成物、容器(カップ等)、マドラー、ゲル化処理の方法等を記載した取扱説明書等が含まれ得る。
【0092】
<ゲル食品の製造方法>
本発明は、本発明の食品組成物に対して、溶媒を添加する工程を含む、ゲル食品の製造方法を包含する。
溶媒の種類や添加量等は、上記<食品組成物の用途>で記載した条件を採用できる。
【実施例0093】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
<食品組成物の作製>
表の「食品組成物の組成」に示す割合で材料を混合し、粉末状の食品組成物を作製した。
なお、表中の「食品組成物の組成」の数値について、上段は配合量(単位:g)を示し、下段は食品組成物に対する割合(単位:質量%)を示す。
【0095】
本例で用いた「LMペクチン」は、エステル化度が50%未満である、低メトキシルペクチンである。
【0096】
表中、「アスコルビン酸」は、「還元作用及びキレート作用を有する成分」に相当する。
「トコフェロール」は、「還元作用を有する成分」に相当する。
「クエン酸」は、「キレート作用を有する成分」に相当する。
【0097】
<各種評価>
上記で得られた粉末状の食品組成物に対し、以下の方法に基づき、ゲル化処理を行い、得られたものの物性を評価した。各評価結果を、表中の「評価」の項に示す。
【0098】
(1)ゲル化処理
カップ状容器に、食品組成物の全量(表中の「食品組成物の総質量」に記載された値)、及び水(90ml)を添加し、30秒~1分間にわたって手で容器を振って撹拌し、5分間放置した。
放置時間の経過後、各容器の内容物を以下の各評価に供した。
【0099】
(2)硬さ、付着性、及び凝集性の評価
各容器の内容物の硬さ、付着性、及び凝集性を、日本国における「特別用途食品 えん下困難者用食品」の試験方法に準じて、クリープメーターを用いて、下記測定条件に基づき測定した。
[測定条件]
プランジャー:直径20mm、高さ8mmの円柱状
圧縮速度:10mm/sec
試料高さ:15mm
クリアランス:5mm
測定温度:20±2℃
【0100】
硬さが、3×102~2×104N/m2の範囲であれば、嚥下困難者用食品として適切な硬さであると判断でき、2.5×103~1×104N/m2の範囲であれば嚥下困難者用食品として特に適切な硬さであると判断できる。
【0101】
付着性が、1.5×103J/m3以下であれば、嚥下困難者用食品として適切な付着性であると判断でき、4.0×102J/m3以下であれば嚥下困難者用食品として特に適切な付着性であると判断できる。
【0102】
凝集性が、0.2~0.6の範囲であれば、嚥下困難者用食品として適切な凝集性であると判断でき、0.4以下であれば特に適切な凝集性であると判断できる。
【0103】
(5)ゲル化状態の評価
上記測定結果や、各容器の内容物の目視観察に基づき、以下の基準によって、各容器の内容物のゲル化状態を評価した。下記基準において、「A」又は「B」に該当すれば、嚥下困難者が喫食するのに適したゲルであると判断できる。
【0104】
[ゲル化状態の基準]
A(非常に良い):容器の内容物がゲル化しており、「硬さ」、「付着性」、及び「凝集性」の全てが、嚥下困難者が喫食するのに特に適切な値値である。
B(良い) :容器の内容物がゲル化しており、「硬さ」、「付着性」、及び「凝集性」が、嚥下困難者が喫食するのに適切な値である。
C(悪い) :容器の内容物がゲル化はしているものの、「硬さ」、「付着性」、「凝集性」のいずれかが、嚥下困難者が喫食するのに適切な値ではない。
嚥下困難者用に適さない物性
D(非常に悪い):容器の内容物がゲル化しておらず(例えば、液状、ゾル状)、「硬さ」、「付着性」、「凝集性」のいずれかが、嚥下困難者が喫食するのに適切な値ではない。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
表に示されるとおり、本発明の要件を満たす食品組成物からは、嚥下困難者用食品として好適なゲルが得られた。
【0109】
これに対し、食品組成物がゲル化補助剤を含まないと、ゲル化処理を行ってもゲルが得られなかった(比較例1~3)。
また、食品組成物がゲル化補助剤を含んでいても、本発明に規定される配合量を満たさないと、ゲル化処理を行ってもゲルが得られなかった(比較例4、5、9、10)。
【0110】
食品組成物がLMペクチンを含んでいても、本発明に規定される配合量を満たさないと、ゲル化処理を行ってもゲルが得られなかった(比較例6~8)。