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  • 特開-車載用反射制御フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144532
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車載用反射制御フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20241003BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B1/111
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024117917
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2023521261の分割
【原出願日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2021082726
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀野 友博
(57)【要約】
【課題】車載用途に好適な光学特性を有する車載用反射制御フィルムを提供すること。
【解決手段】車載用反射制御フィルム10は、基材1と、基材1上に積層される反射制御層5とを備える。反射制御層5が積層されていない基材1に対して、基材1の法線に対して斜め30°の方向から入射した光の正反射光の光量を100%としたとき、車載用反射制御フィルム10の反射制御層5に対して、反射制御フィルム10の法線に対して斜め30°の方向から入射した光の正反射光の光量が0~20.61%であり、かつ、正反射光の反射角±5°の方向の反射光の光量が0.3~2.0%であり、ヘイズが3~11%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材上に積層される反射制御層とを備える車載用反射制御フィルムであって、
反射制御層が、前記基材上に積層される防眩層と、前記防眩層上に他の層を介さずに積層される低屈折率層とからなり、
反射制御層が積層されていない基材に対して、当該基材の法線に対して斜め30°の方向から入射した光の正反射光の光量を100%としたとき、車載用反射制御フィルムの反射制御層に対して、当該反射制御フィルムの法線に対して斜め30°の方向から入射した光の正反射光の光量が0~20.61%であり、かつ、正反射光の反射角±5°の方向の反射光の光量が0.3~2.0%であり、
ヘイズが3~11%であることを特徴とする、車載用反射制御フィルム。
【請求項2】
反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値と、反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値とが、6.89~9.50であることを特徴とする、請求項1に記載の車載用反射制御フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載表示装置等に用いられる車載用反射制御フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される車載表示装置として、センターインフォーメーションディスプレイやセンターコンソールディスプレイが、カーナビゲーションシステム等に利用されてきた。近年、車載表示装置は増加傾向にあり、デジタルアウターモニターやデジタルインナーモニター、デジタルメータークラスターといった新たな車載表示装置の利用が見込まれている。車内には窓を通じて様々な方向から光が入射するため、車載表示装置に反射防止機能を有する光学フィルムを設けることにより車載表示装置の視認性確保が図られる。
【0003】
例えば、特許文献1には、光学基板上に複数の層を積層して構成され、300~660nmの波長域において、45度入射した光の反射率が0.1%以下である反射防止膜が記載されている。また、特許文献2には、透明基材の少なくとも一方の面に透光性無機粒子及び/又は透光性有機粒子を分散させた光学シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-74903号公報
【特許文献2】特許第5725216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載表示装置の表示面には、表示画像が表示される他に、近接車両のライトや街灯の光などの像が映り込む場合がある。これまで、表示画像の視認性を確保するために表示面への映り込み(反射)を抑制することが一般的であったが、車載表示装置における好適な反射光の制御については十分検討されておらず、車載表示装置に用いる光学フィルムに必要な光学特性についても改善の余地があった。
【0006】
それ故に、本発明は、車載用途に好適な光学特性を有する車載用反射制御フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車載用反射制御フィルムは、基材と、基材上に積層される反射制御層とを備える車載用反射制御フィルムであって、反射制御層が、基材上に積層される防眩層と、防眩層上に他の層を介さずに積層される低屈折率層とからなり、反射制御層が積層されていない基材に対して、当該基材の法線に対して斜め30°の方向から入射した光の正反射光の光量を100%としたとき、車載用反射制御フィルムの反射制御層に対して、当該反射制御フィルムの法線に対して斜め30°の方向から入射した光の正反射光の光量が0~20.61%であり、かつ、正反射光の反射角±5°の方向の反射光の光量が0.3~2.0%であり、ヘイズが3~11%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車載用途に好適な光学特性を有する車載用反射制御フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る車載用反射制御フィルムの構成を示す断面図である。
図2図2は、光の反射方向を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係る車載用反射制御フィルムの構成を示す断面図である。
【0011】
本実施形態に係る車載用反射制御フィルム10(以下、単に「反射制御フィルム」という)は、基材1と、基材1の一方面に積層される反射制御層5とを備える。
【0012】
基材1は、反射制御フィルム10の基体となるフィルムであり、可視光線の透過性に優れた材料により形成される。基材1の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。この中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを好適に利用できる。基材1の厚みは、特に限定されないが、10~200μmとすることが好ましい。
【0013】
基材1の表面には、反射制御層5との密着性を向上させるために、表面改質処理を施しても良い。表面改質処理としては、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理、界面活性剤やシランカップリング剤等の塗布、Si蒸着等を例示できる。
【0014】
本実施形態において、反射制御層5は、基材1側から順に、防眩層2と低反射層3とを備える。
【0015】
防眩層2は、表面に微細な凹凸を有し、この凹凸で外光を散乱させることにより外光の映り込みを低減する光学機能層である。防眩層2は、バインダー樹脂と、有機微粒子及び/または無機微粒子とを含有する塗工液を基材1に塗布し、塗膜を硬化させることによって形成される。
【0016】
バインダー樹脂としては、電離放射線または紫外線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型樹脂を使用でき、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0017】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0020】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0022】
上述した活性エネルギー線硬化性樹脂は1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述した活性エネルギー線硬化性樹脂は、塗工液中でモノマーであっても良いし、一部が重合したオリゴマーであっても良い。
【0023】
また、活性エネルギー線硬化型樹脂としては、上述したラジカル重合性官能基を有する化合物の他に、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを単独でまたは混合して使用することができる。モノマーとしては、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を例示できる。
【0024】
上述した樹脂材料は、光重合開始剤の添加を条件として、紫外線の照射により硬化させることができる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独でまたは混合して使用できる。
【0025】
有機微粒子は、主として防眩層2の表面に微細な凹凸を形成し、外光を拡散させる機能を付与する材料である。有機微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子を使用できる。樹脂粒子の材料の屈折率は、1.40~1.75であることが好ましい。屈折率や樹脂粒子の分散を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用しても良い。
【0026】
光学機能層の基材樹脂に添加する無機微粒子は、平均粒径が10~200nmのナノ粒子であることが好ましい。無機微粒子の添加量は、0.1~5.0%であることが好ましい。
【0027】
無機微粒子は、主として防眩層2中の有機微粒子の沈降や凝集を調整するための材料である。無機微粒子としては、シリカ微粒子や、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカや(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基で表面修飾されたシリカ微粒子等を使用することができる。金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナや酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタニア、ジルコニア等を使用することができる。鉱物微粒子としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を使用することができる。鉱物微粒子は、天然物及び合成物(置換体、誘導体を含む)のいずれであっても良く、両者の混合物を使用しても良い。鉱物微粒子の中でも、層状有機粘土がより好ましい。層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。鉱物微粒子として、層状有機粘土鉱物を用いる場合、上述した合成スメクタイトを好適に使用できる。合成スメクタイトは、防眩層形成用の塗工液の粘性を増加させ、樹脂粒子及び無機微粒子の沈降を抑制して、光学機能層の表面の凹凸形状を調整する機能を有する。
【0028】
また、防眩層形成用の塗工液には、レベリング剤を添加しても良い。レベリング剤は、乾燥過程の塗膜の表面に配向して、塗膜の表面張力を均一化し、塗膜の表面欠陥を低減させる機能を有する。
【0029】
更に、光学機能層形成用の樹脂組成物には、適宜有機溶剤を添加しても良い。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、水等のうち、1種類または2種類以上を混合して使用できる。
【0030】
低反射層3は、低反射層3の表面で反射する光を、低反射層3及び防眩層2の界面で反射する光との干渉で打ち消すことにより、反射制御フィルム10の表面反射を低減する光学機能層である。低反射層3は、バインダー樹脂及び低屈折率微粒子を含有する塗工液を防眩層2の表面に塗布し、塗膜を硬化させることにより形成することができる。
【0031】
低反射層3の形成に用いるバインダー樹脂は、特に限定されず、防眩層2の材料として例示した化合物を使用することができる。
【0032】
低屈折率微粒子としては、例えば、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、もしくはNaAlF(氷晶石、屈折率1.33)等の微粒子や、内部に空隙を有するシリカ微粒子を好適に使用することができる。内部に空隙を有するシリカ微粒子は、空隙の部分を空気の屈折率(約1)とすることができるので、低反射層3の低屈折率化に遊離である。具体的には、多孔質シリカ粒子、シェル(殻)構造のシリカ粒子を用いることができる。
【0033】
低屈折率微粒子の平均粒子径は、1nm以上、100nm以下であることが好ましい。低屈折率微粒子の平均粒子径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低反射層3が白化して反射制御フィルム10の透明性が低下する恐れがある。一方、低屈折率微粒子の平均粒子径が1nm未満の場合、粒子の凝集により、低反射層3における粒子の不均一性等の問題が生じる恐れがある。
【0034】
尚、低反射層3を形成するための塗工液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、例えば、防眩層2の材料として例示したものを使用することができる。また、添加剤としては、例えば消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等が挙げられる。
【0035】
また、低反射層形成用の塗工液の塗膜を紫外線照射により硬化させる場合は、塗工液に光重合開始剤が添加される。光重合開始剤としては、防眩層2の材料として例示した物を使用することができる。
【0036】
低反射層3の屈折率は、防眩層2の屈折率より小さく、かつ、1.25~1.50までの範囲内であることが好ましい。屈折率層の屈折率は、できるだけ低い方が空気(屈折率=1)との屈折率と近づき、低反射率を実現しやすいものの、低屈折率材料を多量に添加する必要があるため、機械強度が低くなり傷がつきやすくなる可能性がある。一方、低反射層の屈折率が1.50を超えると、空気との屈折率差が大きくなることにより反射率が上昇する可能性がある。
【0037】
低反射層3の膜厚は、光学干渉層としての特性から、5nm~1μmの範囲内にあることが好ましいが、低反射層3の膜厚に低反射層3の屈折率を乗じた光学膜厚が可視光の波長(抑制すべき波長)の1/4とほぼ等しくなるように設計されることが、薄膜化及び反射率抑制の面でより好ましい。
【0038】
図2は、光の反射方向を説明するための図である。図2は、車載表示装置を上方から見たときの図である。
【0039】
車載表示装置の表示面には、近接車両のライトや街灯の光などの外光が入り込む場合がある。反射光による眩しさを低減し、車載表示装置の表示面の視認性を確保するため、車載表示装置の表示面における外光の反射を抑制することが好ましい。従来、画像表示装置に用いられる光学フィルムは、表示画像の視認性を向上させることを主目的としており、表示面への入射光の像の映り込みを可能な限り低減できるように設計されていた。その一方で、車載表示装置の表示面に映り込んだ外光の像は、車両周囲の状況を表す情報であると捉えることができる。特に、今後の利用拡大が見込まれるデジタルアウターモニターやデジタルインナーモニターは、従来光学ミラーが配置されていた位置またはその近傍に設置され、近接車両のライトや街灯の光などが入射しやすいため、映り込む像を周辺状況把握のための情報として活用できれば有意義である。しかしながら、表示面における反射像を一種の情報として利用できるように、反射像の視認性及び識別性を確保するという技術思想はこれまでなく、反射像の視認性及び識別性を確保するためにどのような属性が光学フィルムに必要であるかについて検討されていなかった。
【0040】
車載表示装置の表示面に映り込んだ像を車両周辺の情報として活用するためには、像の識別性が重要である。ここで、像の識別性とは、乗員が画像表示装置に表示された表示画像と映り込んだ像とを区別することができ、かつ、映り込んだ像が何の像であるかを認識できることをいう。本願の発明者が検討したところ、車載表示装置の表示面に映り込んだ外光の像が鮮明すぎる場合、表示画像と外光の像とを見分けることが困難となるが、表示面に入射した外光の反射を抑制し過ぎると、表示画像の視認性は向上するものの、外光の像を車両周囲の状況把握に利用できなくなることが分かった。また、防眩性フィルムのように拡散により反射率を抑制する手法もあるが、車載表示装置の表示面における光の拡散性が強すぎると、外光の像がぼけてしまい、映り込んだ像が何の像であるかの判別が困難となることが分かった。
【0041】
表示面に映り込んだ像の識別性を確保するために、車載用途の光学フィルムに必要な属性(光学特性)を詳細に検討したところ、車載表示装置の表示面の法線に対して30°斜め方向から入射する光Liの正反射光Lrの光量と、この正反射光の反射角±5°方向に反射する反射光Lr’及びLr’’の光量とを制御することが有効であるという知見を得た(図2参照)。より詳細には、車載表示装置として比較的外光が入射しやすい位置に設けられるデジタルアウターモニターやデジタルインナーミラーを想定し、車載表示装置の取付位置や、運転者に対向する表示面の向き、車両の前後方向に対する表示面の角度を考慮したところ、車載表示装置の表示面には、法線に対して30°斜め方向から光が入射しやすいことが分かった。また、車載表示装置の表示面の法線に対して30°斜め方向からの光Liが入射した場合、車載表示装置を視認した運転者の目に入射するのは、正反射光Lrを中心として約±5°の反射角を有する光であることが分かった。尚、図2は、運転席が左側にある車両を想定しているが、運転席が右側にある場合も同様である。
【0042】
そこで、正反射光Lr(反射角:30°)、反射光Lr’(反射角:25°)及び反射光Lr’’(反射角:35°)の光量に着目して種々検討したところ、映り込んだ像の識別性を確保するため、以下の項目(1)~(3)に示す光学特性が必要であることが判明した。以下において、反射制御層が積層されていない基材に対し、基材の法線に対して斜め30°の方向から入射した光の正反射光の光量を基準光量(=100%)とする。
(1)基材上に積層された反射制御層に対し、基材の法線に対して斜め30°の方向から入射した光Liが正反射した光である正反射光Lrの光量が、基準光量の0~25%であり、
(2)基材上に積層された反射制御層に対し、基材の法線に対して斜め30°の方向から入射した光Liの正反射光Lrの反射角±5°の方向に反射する光の光量、すなわち、基材の法線に対して斜め25°の方向に反射する反射光Lr’の光量と、法線に対して35°の方向に反射する反射光Lr’’の光量とが、いずれも基準光量の0.3~2.0%であり、
(3)反射制御フィルム10のヘイズが3~11%である。ヘイズは、JIS K7105に準拠して測定した値である。
【0043】
本発明に係る反射制御フィルム10は、これらの光学特性を有することにより、車載表示装置の表示面の法線に対して30°斜め方向からの入射光Liの反射を抑制し、入射光Liを適度に拡散させる。この結果、入射光Liの像を鮮明すぎず、かつ、ぼけすぎない像として運転者に視認させることができる。したがって、入射光Liの像を表示画像と区別しやすく、何の像であるかの把握を容易とすることができ、映り込んだ像の識別性を向上できる。
【0044】
反射光Lr’及びLr’’の光量は、主に反射像のぼけに関与するパラメータである。反射光Lr’及びLr’’の光量が基準光量の2.0%を超える場合、反射像のボケが強くなりすぎ、映り込んだ像が何の像であるかの認識が困難となる。一方、反射光Lr’及びLr’’の光量が基準光量の0.3%未満の場合、反射像が鮮明となるため、表示画像と反射像との見分けが付きにくくなる可能性がある。特に、反射光Lr’及びLr’’の光量が基準光量の0.3%未満、かつ、正反射光Lrの光量が基準光量の25%を超える場合は、反射像が鮮明となり過ぎるため、表示画像と反射像との区別が困難となる。また、反射光Lr’及びLr’’の光量にかかわらず、正反射光Lrの光量が基準光量の25%を超えて多くなると、正反射光が明る過ぎることにより表示画像の視認性が低下する可能性がある。また、ヘイズは、正反射光Lr、反射光Lr’及びLr’’の光量のいずれにも関係するパラメータである。反射制御フィルム10のヘイズが3%未満の場合、光の拡散性が低下し、反射光Lr’及びLr’’の光量が上述の下限値より少なくなるため、反射像を適度にぼかすことができなくなる傾向にある。一方、反射制御フィルム10のヘイズが11%を超える場合、光の拡散性が強くなり、反射光Lr’及びLr’’の光量が上述の上限値より多くなるため、反射像のぼけが強くなり、反射像の認識が困難となる傾向にある。
【0045】
以上説明したように、本発明に係る反射制御フィルム10は、画像表示装置の表示面に映り込んだ外光の像を車両周辺の状況を表す一種の情報として活用することを目的としたものであり、上記の項目(1)~(3)の光学特性を備えることにより、表示画像の視認性と、表示面に映り込んだ外光の像の識別性を両立することが可能である。従来、画像表示装置の表示面に映り込んだ外光の像も情報として活用しようとする発想はなかったため、外光の像を情報として活用するために光学フィルムに必要な要件も検討されていなかったが、本発明に係る反射制御フィルム10は、上述した反射像の識別性に優れるため、従来ない発想を実現した光学フィルムとして極めて有効である。
【0046】
尚、本発明に係る反射制御フィルム10は、典型的には、画像表示装置の最表面に設けられる光学フィルムとして用いられるが、画像表示装置を構成する積層体中における積層位置については、所望の光学特性を発揮できる限り、特に限定されない。また、反射制御フィルム10の反射制御層5上に、帯電防止層、防汚層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等の光学機能層を1層以上設けても良い。
【実施例0047】
以下、実施形態に係る反射制御フィルムを具体的に実施した実施例を説明する。
【0048】
(実施例1~5、比較例9~11)
基材上に、反射防止層として、防眩層及び低反射層をこの順に積層した反射制御フィルムを作製した。基材として、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを使用した。基材上に、防眩層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、塗膜を重合硬化させることによって防眩層を形成した。その後、防眩層上に、低反射層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、塗膜を重合硬化させることによって低反射層を形成した。
【0049】
基材上に、反射防止層として、防眩層を積層した反射制御フィルムを作製した。基材として、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを使用した。基材上に、防眩層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、塗膜を重合硬化させることによって防眩層を形成した。
(比較例1~8)
基材上に、反射防止層として、防眩層を積層した反射制御フィルムを作製した。基材として、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを使用した。基材上に、防眩層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、塗膜を重合硬化させることによって防眩層を形成した。
【0050】
(比較例12)
基材上に、反射防止層として、ハードコート層及び低反射層を積層した反射制御フィルムを作製した。基材として、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを使用した。基材上に、ハードコート層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、塗膜を重合硬化させることによってハードコート層を形成した。その後、ハードコート層上に、低反射層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、塗膜を重合硬化させることによって低反射層を形成した。
【0051】
表1~3に、実施例及び比較例で用いた防眩層形成用塗工液、低反射層形成用塗工液及びハードコート層形成用塗工液の組成を示す。尚、各塗工液は、表1~3に記載の溶剤を用いて塗工に適した濃度に希釈した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
[ヘイズ値]
ヘイズは、JIS K7105に従い、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
【0056】
[反射光量]
変角光度計ゴニオフォトメーター(GP-5、株式会社 村上色彩技術研究所)を用いて、反射防止層側から入射角30°でD65光源近似光を照射し、反射角が30°の正反射光、反射角が23°~37°の反射光の強度を測定した。
【0057】
[評価]
液晶表示装置iPad(登録商標) Air(第4世代)の表面に実施例1~5、比較例1~12の反射制御フィルムを貼り合わせた状態で、暗室条件(周囲からの入射光のない状態)のもと、液晶表示装置の中心部を床面からの高さ100cmの位置とし、評価者の目視位置を表示画面の中心部からの水平直線距離50cmの位置として、表示画面に画像を表示させた。この状態で蛍光灯の光を入射角30°で入射させ、正反射方向、正反射方向±5°の3条件で評価を行った。
【0058】
表4における評価の基準は次の通りであり、評価者15人の3条件の評価点の平均点が4点以上5点以下(〇)、3点以上4点未満(△)、1点以上3点未満(×)とし、「〇
」評価を合格とした。
<評価基準>
5点:表示画像と映り込んだ蛍光灯の像を明確に認識でき、かつ明確に識別できる。
4点:表示画像と映り込んだ蛍光灯の像を認識でき、かつ識別できる。
3点:表示画像と映り込んだ蛍光灯の像を認識でき、かつ識別できるが、表示画像または映り込んだ蛍光灯の像が一部ぼやける。
2点:表示画像または映り込んだ蛍光灯の像のどちらかの認識ができない。または、表示画像と映り込んだ蛍光灯の像を識別できない。
1点:表示画像および映り込んだ蛍光灯の像のどちらも認識も識別もできない。
【0059】
表4に、実施例1~5及び比較例1~12に係る反射制御フィルムの層構成、ヘイズ、反射光量(反射角30°、25°及び35°の反射光の光量)、画像識別性の評価をまとめて示す。尚、表3の層構成における「AGLR」は、反射防止層が防眩層及び低反射層で構成されることを表し、「AG」は、反射防止層が防眩層で構成されることを表し、「HCLR」は、反射防止層がハードコート層上の低反射層で構成されることを表す。反射光量の単位は、「%」であり、反射光量の値は、反射防止層が積層されていない基材にD65光源近似光が入射角30°で入射したときの正反射光の強度を100%として表した値である。
【0060】
【表4】
【0061】
実施例1~5に係る反射制御フィルムは、ヘイズが3~11%であることにより入射光が適度に拡散されると共に、低反射層により表面反射も抑制され、正反射光量が25%以下かつ反射角25°及び35°の反射光の強度が0.3~2.0%の範囲内であった。これらの条件を満たす反射制御フィルムにより、表示画像と映り込んだ蛍光灯の像とを区別でき、かつ、映り込んだ像が何の像であるかを認識できることが確認された。
【0062】
比較例1~5に係る反射制御フィルムは、ヘイズが3~11%の範囲内であるが、低反射層が設けられていないために、正反射光量は25%を超え、反射角25°の反射光量及び反射角35°の反射光量も2.0%を超えた。正反射光量が高いために映り込んだ蛍光灯の像が何の像であるかを認識することができたが、正反射光量の高さにより表示画像と映り込んだ像との識別がしにくくなり、実施例1~5と比べて低い評価となった。
【0063】
比較例6及び7に係る反射制御フィルムは、低反射層が設けられていないが、ヘイズが高いことにより入射光の拡散性が高くなり、正反射光量が比較例1~5よりも小さく抑えられている。このため、表示画像と映り込んだ像とを識別することができた。ただし、正反射光の光量がある程度抑制された一方で、反射角25°の反射光量及び反射角35°の反射光量が5.0%近くの値となったため、映り込んだ蛍光灯の像が比較的暗く、かつ、ぼけた状態で視認され、映り込んだ像が何の像であるかの認識ができなかった。
【0064】
比較例8に係る反射制御フィルムは、低反射層が設けられておらず、反射光量が抑制されなかったため、正反射光量が高くなり過ぎ、表示画像と映り込んだ蛍光灯の像との区別ができなかった。
【0065】
比較例9及び10に係る反射制御フィルムは、実施例1~5と同様に反射制御層が防眩層及び低反射層で構成されているが、ヘイズが高いことにより入射光の拡散性が高くなり、反射角25°の反射光量及び反射角35°の反射光量が2.0%を超えた。正反射光の量が25%以下に抑制された一方で、反射角25°の反射光量及び反射角35°の反射光量が高くなったため、映り込んだ像が比較的暗く、かつ、ぼけた状態で視認され、映り込んだ像が何の像であるかの認識ができなかった。
【0066】
比較例11及び12に係る反射制御フィルムは、ヘイズが小さいことにより、反射角25°の反射光量及び反射角35°の反射光量が0.3%より小さくなった。このため、映り込んだ像が鮮明となり、表示画像と映り込んだ蛍光灯の像とを区別することができなかった。
【0067】
以上より、本発明に係る反射制御フィルムは、画像表示装置の表示面の法線に対して斜め30°から入射した場合に、画像表示装置の表示画像と反射像とを区別でき、かつ、反射像が何の像であるかを認識できることが確認された。
【0068】
表5~8に、実施例1~5及び比較例1~12に係る反射制御フィルムのヘイズ、反射光量(反射角23°、24°、25°、26°、27°、30°、33°、34°、35°、36°、37°の反射光の光量)、反射角23°と24°の反射光量の和、反射角26°と27°の反射光量の和、反射角23°と24°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値、反射角33°と34°の反射光量の和、反射角36°と37°の反射光量の和、反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値、反射角36°と37°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値、画像識別性の評価をまとめて示す。反射光量の単位は、「%」であり、反射光量の値は、反射防止層が積層されていない基材にD65光源近似光が入射角30°で入射したときの正反射光の強度を100%として表した値である。反射角23°と24°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値、反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値、反射角36°と37°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値の単位は無次元である。ヘイズ及び評価は表4について記載したものと同様である。
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
実施例1~5に係る反射制御フィルムは、ヘイズが3~11%であることにより入射光が適度に拡散されると共に、低反射層により表面反射も抑制され、正反射光量が25%以下かつ反射角25°及び35°の反射光の強度が0.3~2.0%の範囲内であった。さらに、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値が8.30~9.50の範囲内であった。反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値が6.89~7.87の範囲内であった。これらの条件を満たす反射制御フィルムにより、表示画像と映り込んだ蛍光灯の像とを区別でき、かつ、映り込んだ像が何の像であるかを認識できることが確認された。
【0074】
比較例1~5に係る反射制御フィルムは、ヘイズが3~11%の範囲内であるが、低屈折率層が設けられていないために、正反射光量は25%を超え、反射角25°の反射光量及び反射角35°の反射光量も2.0%を超えた。さらに、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値が5.77~6.20の範囲内であった。反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値が5.36~5.62の範囲内であった。正反射光量が高いために映り込んだ像が何の像であるかを認識することができたが、正反射光量の高さにより表示画像と映り込んだ像との区別がしにくくなり、実施例1~5と比べて低い評価となった。
【0075】
比較例6及び7に係る反射制御フィルムは、低屈折率層が設けられていないが、ヘイズが高いことにより入射光の拡散性が高くなり、正反射光量が比較例1~5よりも小さく抑えられている。このため、表示画像と映り込んだ像とを区別することができた。ただし、正反射光の光量がある程度抑制された一方で、反射角25°の反射光量及び反射角35°の反射光量が5.0%近くの値となったため、映り込んだ像が比較的暗く、かつ、ぼけた状態で視認され、映り込んだ像が何の像であるかの認識ができなかった。さらに、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値が比較例6で4.74、比較例7で3.73であった。反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値が比較例6で4.78、比較例7で3.63であった。
【0076】
比較例8に係る反射制御フィルムは、低屈折率層が設けられておらず、反射光量が抑制されなかったため、正反射光量が高くなり過ぎ、表示画像と映り込んだ像との区別ができなかった。さらに、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値が17.12であった。反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値が11.91であった。
【0077】
比較例9及び10に係る反射制御フィルムは、実施例1~5と同様に反射制御層が防眩層及び低屈折率層で構成されているが、ヘイズが高いことにより入射光の拡散性が高くなり、反射角25°の反射光量及び反射角35°の反射光量が2.0%を超えた。正反射光の量が25%以下に抑制された一方で、反射角25°の反射光量及び反射角35°の反射光量が高くなったため、映り込んだ像が比較的暗く、かつ、ぼけた状態で視認され、映り込んだ像が何の像であるかの認識ができなかった。さらに、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値が比較例9で5.11、比較例10で4.41であった。反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値が比較例9で5.08、比較例10で4.30であった。
【0078】
比較例11及び12に係る反射制御フィルムは、ヘイズが小さいことにより、反射角25°の反射光量及び反射角35°の反射光量が0.3%より小さくなった。このため、映り込んだ像が鮮明となり、表示画像と映り込んだ像とを区別することができなかった。さらに、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値が比較例11で18.19、比較例12で97.00であった。反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値が比較例11で13.65、比較例12で5.00であった。
【0079】
反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値の方が、反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値よりも大きくなる。これは、反射角が0°に近づくほど入射光の影響を受けやすくなるためである。また、実施例1~5では、ヘイズが小さいほど、反射角23°と24°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値と反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値、反射角36°と37°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値が小さくなる。また、実施例1~5と低屈折率層が形成されていない比較例1~5を比較すると、反射率が低いほど、反射角23°と24°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値と反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値、反射角36°と37°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値が小さくなる。そのため、ヘイズを下げることと、反射率を下げることが反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値等を下げることに寄与している。
【0080】
反射角23°と24°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値、反射角36°と37°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値は、実施例と比較例で大きな差は見られない。一方、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値と反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値は、実施例と比較例で顕著な差が見られる。特に、実施例1~5では、反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値と反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値とが、6.89~9.50であることにより、比較例1~12に対して評価の結果が優れていた。これは、反射角25°~7°の反射光量の関係と、反射角33°~35°の反射光量の関係とが上記条件を満たす場合、人の視覚で斜めから入射する光を見た際に、表示画像と映り込んだ蛍光灯の像とを区別し、かつ、映り込んだ像が何の像であるかを認識するのに有利であると考えられる。
【0081】
反射角26°と27°の反射光量の和を反射角25°の反射光量で割った値と反射角33°と34°の反射光量の和を反射角35°の反射光量で割った値が、上記の範囲内であることにより、本発明に係る反射制御フィルムは、画像表示装置の表示面の法線に対して斜め30°から入射した場合に、画像表示装置の表示画像と反射像とを区別でき、かつ、反射像が何の像であるかを認識できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る反射制御フィルムは、画像表示装置に用いられる光学フィルムとして利用でき、特に、車載表示装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 基材
2 防眩層
3 低反射層
5 反射制御層
10 車載用反射制御フィルム
図1
図2