(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144578
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241003BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20241003BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29C55/14
B29B17/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024118879
(22)【出願日】2024-07-24
(62)【分割の表示】P 2023068679の分割
【原出願日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019225018
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020044267
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 信之
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
(57)【要約】
【課題】 透明性に優れ、コートや蒸着などの二次加工を行いやすく、二次加工後の特性にも優れ、且つペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより環境配慮されたポリエステルフィルムであり、異物が少なく、巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきが少ない二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂と粒子を含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸配向ポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の面が下記要件(1)~(3)をすべて満たす二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm未満の微細突起数が250ケ以上600ケ以下である。
(2)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm以上の微細突起数が300ケ以上600ケ以下である。
(3)算術平均高さSaが0.01μm以上0.025μm以下である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルされたポリエチレンテレフタレートと粒子を含むポリエステル樹脂組成物からなる厚さが5μm以上40μm以下の二軸配向ポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の面が下記要件(1)~(4)をすべて満たす二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm未満の微細突起数が250ケ以上600ケ以下である。
(2)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm以上の微細突起数が300ケ以上600ケ以下である。
(3)算術平均高さSaが0.010μm以上0.025μm以下である。
(4)前記ポリエステル樹脂組成物中の全ジカルボン酸成分100モル%に対するイソフタル酸成分の含有率が0.02モル%以上2.0モル%以下である。
【請求項2】
前記二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中のリサイクルされたポリエチレンテレフタレートの含有率が50質量%以上、100質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
フィルム1m2当たり1mm以上の欠点数が1.0個未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記リサイクルされたポリエチレンテレフタレートが少なくとも1度のアルカリ洗浄が施されてなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記二軸配向ポリエステルフィルムの前記要件(1)~(3)をすべて満たす面とその
対面の動摩擦係数が0.2以上0.60以下である請求項1~4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記二軸配向ポリエステルフィルムの前記要件(1)~(3)をすべて満たす面の濡れ張力が50mN/m以上である請求項1~5のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記二軸配向ポリエステルフィルムの外部ヘイズが1.8%以下であり、内部ヘイズが2%以下である請求項1~6のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、二軸配向ポリエステルフィルムの機能をより高めるためのコートや蒸着といった二次加工を行うのに適しており、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂(以下、「ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂」と称する場合がある)を用いることにより環境配慮されたポリエステルフィルムであると共に、巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきの少ない二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた機械的強度、熱的特性および光学特性等から包装用材料や工業用材料など広範囲の分野に数多く利用されている。二軸配向ポリエステルフィルムは酸素バリア性に優れるもの、一般食品用やレトルト食品用、医薬品などの包装用途においては、内容物の変質や劣化に関係する酸素バリア性、水蒸気バリア性に対する要求が高くなってきており、内容物の変質や劣化が生じてしまう問題がある。
【0003】
そのため、一般食品用やレトルト食品用、医薬品などの包装用途で使用される二軸配向ポリエステルフィルムには、印刷インキとの密着性をさらに向上させたり、酸素や水蒸気等におけるガスバリア性をさらに向上させる方策がとられている。
例えば、ガスバリア性を向上させる方法として、二軸配向ポリエステルフィルムにポリ塩化ビニリデンやポリエチレンビニルアルコール共重合体などのガスバリア性の良好な樹脂からなるフィルムを張り合わせる方法、これらの樹脂を溶解させた液をコートし、薄膜を積層する方法、あるいはアルミニウムなどの金属や酸化アルミニウムなどの金属酸化物を蒸着させ、薄膜をフィルム表面に形成させる方法がある。
【0004】
特に金属酸化物をフィルム表面に設けた蒸着ポリエステルフィルムは、ガスバリア性に加えて耐熱性や透明性の面で優れているためよく用いられている。
しかしながら、良好なガスバリア性を有する、酸化珪素や酸化アルミニウム膜などの金属酸化物薄膜をフィルム表面に設けた蒸着ポリエステルフィルムを工業的に安定して得ることは容易ではなかった。
【0005】
そこで、蒸着ポリエステルフィルムの基材に使用される二軸配向ポリエステルフィルムの表面状態を制御することにより、蒸着ポリエステルフィルムのガスバリア性を向上させることが行われており、二軸配向ポリエステルフィルムの中心面表面粗さや突起数を規定したもの(例えば、特許文献1参照。)や、二軸配向ポリエステルフィルムの中心線表面粗さを規定したもの(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0006】
さらに、特定の高さ以上の微細突起数を制御した二軸配向ポリエステルフィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
これらのフィルムはいずれも金属酸化物薄膜を設けた後のガスバリア性を向上させることのみに着目しているが、フィルム製造後にフィルムロールに巻き取る際にフィルムロールにシワやフィルムロール中のフィルム同士の密着、いわゆるブロッキングの改善は十分とは言えなかった。しかも、コートや蒸着などの二次加工後の性能も十分ではなかった。
【0008】
また、近年では、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもリサイクル原料の利用が進められている。先に述べたポリエステル樹脂においても、使用済みの飲料ペットボトルのリサイクルが行われており、その活用方法が注目されている。PETボトル再生原料を用いることによりCO2削減につながるとも言われており、地球環境の面からも少しでもペットボトル再生原料の使用比率を高めたいという要望がある。
【0009】
例えば、特許文献4では、ペットボトル再生原料を使用した二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、温度285℃における溶融比抵抗が1.0×108Ω・cm以内であり、フィルムに含まれるナトリウム含有量及びカリウム含有量が0ppmより大きく150ppm以下である二軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。
かかる技術によれば、ペットボトル再生原料を作る際に使用する洗浄液成分の残存が少なく熱安定性に優れ、異物も少なく、且つ溶融時の比抵抗が安定しており、フィルムの生産性、及び品位を損なうことがない二軸配向ポリエステルフィルムが得られるというものである。
【0010】
しかしながら、良好なガスバリア性を有する、酸化珪素や酸化アルミニウム膜などの金属酸化物薄膜をフィルム表面に設けた蒸着ポリエステルフィルムについては言及されておらず、易滑性を向上させるために、平均粒子径2.5μmのシリカ粒子を使用しているが、最大高さSzが大きくなり易く、二軸配向ポリエステルフィルムの表面上における、二次加工後のコート膜や無機薄膜層の抜けや欠陥が生じるという課題があり、十分に考慮されていない。また、透明性に優れ、コートや蒸着などの二次加工を行いやすく、かつ二次加工後の特性にも優れ、且つペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより環境配慮されたポリエステルフィルムは未だ実現されていなかった。
【0011】
上記のような透明性に優れ、コートや蒸着などの二次加工を行いやすく、かつ二次加工後の特性にも優れ、且つペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより環境配慮されたポリエステルフィルムを得る手段としては、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂に対して粒子を含むポリエステル樹脂を配合したポリエステル樹脂組成物を二軸延伸することにより得ることができるものと期待でき、通常の比重の樹脂チップと、粒子を含む比重の大きな樹脂チップを混合して成膜するのが一般的である。しかし、粒子を含む樹脂チップと通常樹脂チップの比重差が大きいため、これら原料樹脂チップの偏析により、混合、押出し工程で原料比率のバラつきが生じ易く、フィルム長手方向で物性差が生じる。その結果、長尺な製品ロールの長手方向で均一な物性の製品が得られなくなるケースがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10-119172号公報
【特許文献2】特開平11-010725号公報
【特許文献3】特許第4834923号公報
【特許文献4】特開2014-65282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点を改善し、透明性に優れ、コートや蒸着などの二次加工を行いやすく、二次加工後の特性にも優れ、且つペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより環境配慮された二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することであり、より好適にはペットボトル再生原料の使用比率を更に高めた二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することであり、さらに好適には異物が少ない二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することであり、特に好適には巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきが少ない二軸配向ポリエステルフィルムロール及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、二次加工後の特性を低下させる原因を検討した結果、二軸配向ポリエステルフィルムは電気絶縁性を有するためフィルム製造工程や二次加工工程で搬送ロールとの接触、剥離などにより局所的に帯電した部分であるスタティックマークや、蓄えられた静電気が放電すること等に起因するスタティックマーク放電痕が発生しやすいこと、この部分にはコートされた溶解樹脂や蒸着された無機酸化物分子がフィルム表面に規則的に均一に欠陥なく薄膜を形成することは困難であることを見出した。
【0015】
本発明者らが鋭意検討した結果、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂に対して粒子を含むポリエステル樹脂を配合したポリエステル樹脂組成物を二軸延伸して得られる二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、粒子を含むポリエステル樹脂ペレットの安息角を特定の範囲とする事で、また、原料となる樹脂チップの混合に際しては、ホッパーに上方からペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管(以下、インナーパイプと称する場合がある)を通じて、粒子を含むポリエステル樹脂チップを供給して、両チップを混合し、溶融押し出しする事で、フィルムの長手方向で物性のばらつきが少ない均一なフィルムを得ることができることを見出した。また本発明者らは、特に本発明で使用するペットボトルを含む、市場や社会からの再生原料を作る際に異物除去のためアルカリ洗浄を行ったものであっても使用する洗浄液成分の残存が少なく、異物も少ないばかりか、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることで、ポリエステルフィルムとシーラントとの密着性が向上することを見出した。更にコート膜や蒸着膜を形成する側のフィルム表面における特定の高さ以下の微細突起の数を特定の数以上とすることで、前述したスタティックマークと呼ばれる局所的に強い帯電した部分や放電痕の発生を抑制でき、二次加工後の性能、例えばガスバリア性などを向上させることができること、また特定の高さ以上の微細突起の数と突起形状を特定の範囲とすることでフィルム同士の滑り性を向上させることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0016】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂と粒子を含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸配向ポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の面が下記要件(1)~(3)をすべて満たす二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm未満の微細突起数が250ケ以上600ケ以下である。
(2)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm以上の微細突起数が300ケ以上600ケ以下である。
(3)算術平均高さSaが0.010μm以上0.025μm以下である。
【0017】
2.前記二軸配向ポリエステルフィルム中の全ジカルボン酸成分に対するイソフタル酸成分の含有率が0.02モル%以上2.0モル%以下であることを特徴とする1.に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0018】
3.前記二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中のペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂の含有率が50質量%以上、100質量%以下であることを特徴とする、1.又は2.に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0019】
4.フィルム1m2当たり1mm以上の欠点数が1.0個未満であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0020】
5.前記ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂が少なくとも1度のアルカリ洗浄が施されてなることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0021】
6.前記二軸配向ポリエステルフィルムの前記要件(1)~(3)をすべて満たす面とその反対面の動摩擦係数が0.20以上0.60以下である1.~5.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0022】
7.前記二軸配向ポリエステルフィルムの前記要件(1)~(3)をすべて満たす面の濡れ張力が50mN/m以上である1.~6.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0023】
8.前記二軸配向ポリエステルフィルムの外部ヘイズが1.8%以下であり、内部ヘイズが2.0%以下である1.~7.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0024】
9.前記1.~8.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムをロール状に巻き取ってなるフィルムロールであって、フィルム長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングした時の面積4×10-12m2あたりの高さ3nm未満の微細突起数、及び面積4×10-12m2あたりの高さ3nm以上の微細突起数のバラつき
がいずれも40%以下であることを特徴とする、二軸配向ポリエステルフィルムロール。
(バラつきは、最大値をXmax、最小値をXmin、平均値をXaveとしたときの、下記式[1]で表される
バラつき(%)=100x(Xmax-Xmin)/Xave・・・[1])
【0025】
10.フィルム長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングした時の算術平均高さSaのバラつきが40%以下であることを特徴とする、9.に記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
(バラつきは、算術平均高さSaの最大値をXmax、最小値をXmin、平均値をXaveとしたときの、下記式[2]で表される。
バラつき(%)=100x(Xmax-Xmin)/Xave・・・[2])
【0026】
11. 二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法であって、ポリエステル原料樹脂の溶融押出し工程、及び二軸延伸工程を含んでなり、前記ポリエステル原料樹脂の溶融押出し工程において、ホッパーに上方から前記ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂の原料樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管を通じて、安息角が30度以上40度以下である前記粒子を含むポリエステル樹脂組成物の原料樹脂チップを供給して、両チップを混合し、溶融押し出しする工程を有することを特徴とする1.~8.のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【0027】
12.二軸配向ポリエステルフィルムロールの製造方法であって、ポリエステル原料樹脂の溶融押出し工程、二軸延伸工程、及び二軸延伸後のフィルムをロール状に巻き取る工程を含んでなり、前記ポリエステル原料樹脂の溶融押出し工程において、ホッパーに上方から前記ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂の原料樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管を通じて、安息角が30度以上40度以下である前記粒子を含むポリエステル樹脂組成物の原料樹脂チップを供給し、両チップを混合し、溶融押し出しする工程を有することを特徴とする9.又は10.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムロールの製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、透明性に優れ、フィルム製造後にフィルムロールに巻き取る際にフィルムロールにシワが生じにくく、フィルムロール中のフィルム同士の密着(いわゆるブロッキング現象)が少ないためコートや蒸着などの二次加工を行いやすく、二次加工後の性能にも優れ、且つペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより環境配慮されたポリエステルフィルムであり、より好適にはペットボトル再生原料の比率を更に高めたポリエステルフィルムであり、さらに好適には異物が少なく、特に好適には巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のばらつきが少ない二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することができる。
【0029】
特に近年は、二軸配向ポリエステルフィルムの生産効率を高めるために、延伸工程を経て最初に巻き取る二軸配向ポリエステルフィルムロール(以下、マスターロール)の幅方向の長さと長手方向の長さをより大きくすることが進められているが、このようなサイズの大きなフィルムロールにおいてもシワ、ブロッキングが少なく、二次加工を行いやすく、かつ二次加工後の性能、例えば蒸着フィルムのガスバリア性も満足できる二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
マスターロールをスリットし小分けにしたフィルムロールも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】フィルムロールから巻き出したフィルム表面の強く帯電した箇所を、帯電分布判定トナーにより、可視化した状態のフィルム表面の写真、スタティックマークが観察される。
【
図2】フィルムロールから巻き出したフィルム表面の放電痕がある箇所を、帯電分布判定トナーにより可視化した状態のフィルム表面の写真、スタティックマーク放電痕が観察される。
【
図3】巻き出し中の二軸配向ポリエステルフィルム、フィルムロール、除電ブラシ、蛇行防止装置の配置の図である。
【
図4】本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを製造するための樹脂チップの混合方法の一例を説明する為の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂]
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは下記のペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることで、フィルム中のリサイクル原料比率を上げることができ、環境配慮されたフィルムを得ることが可能となる。
【0032】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに使用されるペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを主体とする器のリサイクル品を主体とするものであり、例えば、茶飲料、清涼飲料などの飲料用容器のリサイクル品が好ましく使用でき、適宜配向されていても良く、無色のものが好ましいが、若干の着色成分を含んでいても良い。
【0033】
好ましく利用できるペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされた再生原料は、通常の重合法及び固相重合法で製造、成型されたポリエステルであり、好ましくはポリエチレンテレフタレートを主体とするものであり、他のポリエステル成分、共重合成分を含んでいても差し支えない。触媒としてアンチモン、ゲルマニウム、チタンなどの金属化合物、安定剤としてのリン化合物などを含んでいてもよい。通常ペットボトル用のポリエステルには触媒としてゲルマニウムが用いられることが多く、ペットボトル再生原料を使用してフィルム化すれば、フィルム中にゲルマニウムが1ppm以上含まれるものとなる。しかしながら、あくまでも触媒の含有量であるので、通常高々100ppm以下であり、普通は50ppm以下である。
【0034】
集められた使用済のリサイクルペットボトルは、他の材料やごみが混ざらないように選別され、ラベルなどを除去した後、粉砕されフレークとなる。これらのフレークには、異物が付着、混入している場合が多くある。また、薬品や溶剤などの化学物質を消費者が使用済みのPETボトルに充填して使用している場合も考えられる。例えば、食器などの洗剤、殺虫剤、除草剤、農薬や各種オイル類などが考えられる。通常の洗浄ではPETボトル表面に吸着した化学物質を十分に取り除くことができないため、アルカリ洗浄を行うことが好ましい。この洗浄工程で用いるアルカリ金属水酸化物の溶液としては水酸化ナトリウム溶液、または水酸化カリウム溶液を用いる。このような洗浄工程では、アルカリ洗浄の前に予備洗浄を行っても良い。
アルカリ洗浄を行わないと、原料の樹脂中に異物として残存してしまうため、これらが混入して製膜時の破断のきっかけとなり生産性を低下させてしまうばかりか、フィルム中に異物として残り、フィルムの外観や、後に行われる印刷工程での印刷抜けの原因となりうる。
【0035】
上記洗浄工程で用いるアルカリ金属水酸化物の水溶液の濃度は、温度、時間、攪拌の状態にもよるが、通常は1~10重量%の範囲である。また、洗浄に要する時間は10~100分の範囲であり、効果を高めるため攪拌しながら行うのが好ましい。
【0036】
アルカリ洗浄に続いて、すすぎ洗浄、乾燥を行うことが好ましい。アルカリ洗浄やすす
ぎ洗浄は数回繰り返して行っても良い。アルカリ洗浄工程において洗浄で用いるアルカリ金属水酸化物の水溶液成分がフレークに残存することにより、その後のペレット造粒工程における溶融押出工程やフィルム製膜時における溶融押出工程を経由することにより、最終的に得られるフィルムの物性に影響を与えることがある。
【0037】
最終的にこれらのペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を使用して得られるフィルム中のナトリウム及びカリウムの濃度が0ppmより大きく150ppm以下であることが好ましく、より好ましくは3~120ppmであり、更に好ましくは5~80ppmである。フィルム中に含まれるナトリウムまたはカリウム濃度が150ppmより高くなるとフィルムの耐熱性、熱安定性が低下したり、着色したりするので好ましくない。また、全くない状態であるとジエチレングリコールの生成を抑えるなどの効果が薄れるため好ましくない。また、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂には若干量はこれらの成分が含有されている場合があり全くなしとするのは困難である。
【0038】
このような洗浄工程では、アルカリ金属水酸化物の水溶液により、ペットボトルフレークの一部が加水分解される。また、ペットボトルを成形する際の加熱により樹脂の重合度が低下する。さらに、回収したペットボトルを再利用するため粉砕した後、再度溶融してペレット化する際に加わる熱や水分の影響により重合度が低下する。そのままでも再利用できるが、使用する用途によっては重合度が低下した場合、成形性や強度、透明性や耐熱性などが劣り、そのままでは再利用することができないことがある。
【0039】
そのような場合、低下した重合度を回復させるため、粉砕して洗浄されたPETボトルのフレークもしくはフレークを溶融し、ペレット化したものを固相重合することが好ましい。
【0040】
固相重合工程では、洗浄したフレーク、もしくはフレークを溶融押出してペレット化したものを180~245℃、好ましくは200~240℃の窒素ガス、希ガスなどの不活性気体中で連続固相重合することにより行うことができる。
【0041】
最終的にペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂として、極限粘度が0.55~0.90dl/g、好ましくは0.60~0.85dl/gとなる条件で、フレーク、またはペレットの条件を調整して行うのが望ましい。
【0042】
フレークをペレット化する工程について説明する。フレークを脱気手段および濾過手段を有する押出機を用いて溶融、押出、冷却、造粒する。
【0043】
押出機における溶融工程では通常260~300℃、好ましくは265~295℃で溶融混練することにより行うことができる。投入するペットボトルを粉砕したフレークは十分に乾燥しておく必要があり、5~200、好ましくは10~100ppm、更には15~50ppmとなる条件で乾燥を行うことが好ましい。フレークに含まれる水分が多い場合、溶融工程で加水分解反応が進み、得られるポリエステル樹脂の極限粘度が低下する。脱気手段として、樹脂の溶融帯域に少なくとも1箇所の真空ベントを有しているものが好ましい。
【0044】
また、該押出機は、濾過手段として溶融樹脂の粒径25μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは10μm以上の固形異物を濾過して除去できるフィルターを有しているのが好ましい。
【0045】
フィルターを通過した溶融樹脂はダイスを経由し、水中で冷却された後、所望の形状のペレットに切断され造粒される。
[ポリエステル樹脂組成物]
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは下記のポリエステル樹脂を主成分として含むポリエステル樹脂組成物からなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが挙げられ、機械的特性および耐熱性、コストなどの観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
ここでの主成分とはポリエステル樹脂組成物中の含有率が80重量%以上であることを意味し、90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上がより好ましく、98重量%以上が最も好ましい。
【0046】
また、これらのポリエステル樹脂には、本発明の目的が損なわれない範囲であれば、他の成分が共重合されていてもよい。具体的には、共重合成分としては、ジカルボン酸成分では、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4-ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。また、ジオール成分としてはジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールも挙げられる。共重合量としては、構成する繰り返し単位あたり10モル%以内が好ましく、5モル%以内がより好ましく、3モル%以下が最も好ましい。
【0047】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂の製造方法としては、まず、前述のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成誘導体とを主たる出発原料として、常法に従い、エステル化またはエステル交換反応を行った後、さらに高温・減圧下で重縮合反応を行うことによって製造する方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂の極限粘度としては、製膜性や再回収性などの点から0.50~0.9dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.55~0.8dl/gの範囲である。
【0049】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物中には、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面が下記要件(1)~(3)をすべて満たすようにするために、無機粒子、有機粒子、及びこれらの混合物からなる粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子を含有することが好ましい。
(1)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm未満の微細突起数が250ケ以上である。
(2)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm以上の微細突起数が300ケ以上600ケ
以下である。
(3)算術平均高さSaが0.010μm以上0.025μm以下である。
【0050】
使用する無機粒子としては、例えば、シリカ(酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウムからなる粒子が挙げられる。
有機粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレンからなる粒子を挙げることができる。中でもシリカ(酸化珪素)、炭酸カルシウム、又はアルミナ(酸化アルミニウム)からなる粒子、若しくはポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、又はその誘導体からなる粒子が好ましく、シリカ(酸化珪素)、又は炭酸カルシウムからなる粒子がより好ましく、シリカ(酸化珪素)からなる無機粒子が特に好ましい。
【0051】
本発明において使用する粒子の粒度分布は単分散のものであるのが好ましい。
無機系微粒子の形状は特に限定されないが、球状に近いほど高さ3nm以上の微細突起数、算術平均高さSaをさほど変化させずに、高さ3nm未満の微細突起数を大きくすることができる。
【0052】
本発明における粒子のコールターカウンタで測定した重量平均粒径は、0.8~1.8μmの範囲とするのが好ましい。
粒子の重量平均粒径が0.8μm以上であると高さ3nm未満の微細突起数、算術平均高さSaをそれぞれ上記(1)、(3)の下限値以上としやすい。
粒子の重量平均粒径が1.8μm以下であると算術平均高さSaを上記(3)の上限値以下としやすく、高さ3nm未満の微細突起数を上記(1)の下限値以上とするのにも適している。
【0053】
本発明における粒子を含むポリエステル樹脂組成物中(マスターバッチ)の粒子の含有量の下限は1000重量ppmであり、より好ましくは1300重量ppmであり、特に好ましくは1400質量ppmである。粒子の含有量が1000重量ppm以上であると高さ3nm未満の微細突起数、高さ3nm以上の微細突起数をそれぞれ上記(1)、(2)の下限値以上としやすくい。
粒子の含有量の上限は好ましくは3000重量ppmであり、より好ましくは2500重量ppmであり、さらに好ましくは2200重量ppmであり、特に好ましくは1800重量ppmである。
マスターバッチ中の無機粒子の濃度は7000~400000ppmが好ましく、8000~350000ppmがより好ましく、9000~300000ppmが特に好ましい。マスターバッチ中の無機粒子の濃度が7000ppmより小さい場合は、無機粒子を含有するマスターバッチの添加比率が大きくなり、主原料となるペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂の割合が少なくなり、安価な樹脂や環境配慮などへの樹脂特性を効果的に得られなくなる。マスターバッチ中の無機粒子の濃度が400000ppmより大きいと、原料の偏析のために長手方向で原料比率の変動が大きくなるため、得られたフィルムの長手方向のバラつきが大きくなりやすい。
マスターペレット(マスターバッチ)の安息角は25度から40度であることが好ましく、30度から40度であることがより好ましい。安息角40度より大きいと、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂と混合した後に押出機に供給されるまでに偏析しやすくなり、得られたフィルムの長手方向のバラつきが大きくなりやすい。なお、前記マスターペレットの安息角度は、ペレットの形状やサイズを変更することにより調整できる。ペレットが球状に近いほど安息角は小さくなり、細長い形状とすれば大きくなる。また、ペレットのサイズが小さくなると安息角は小さくなる。
【0054】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物中に粒子を配合する方法としては、例えば、ポリエステル系樹脂を製造のためのエステル化の段階、エステル交換反応終了後、もしくは重縮合反応開始前の段階のいずれかの段階において添加することができるが、エチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。
また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0055】
粒子とポリエステル系樹脂原料と混合する工程において、粒子の凝集体をなるべく少なくするのが、目的とする表面状態を安定して得る上で好ましいが、混合工程以降の二軸配向ポリエステルフィルムの製膜工程の条件を調整することにより、その影響を少なくできる。
【0056】
また、本発明におけるポリエステル樹脂組成物中には本発明の目的を損なわない範囲において、少量の他の重合体や酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料またはその他の添加剤等が含有されていてもよい。
【0057】
上記のようにして得られるポリエステルフィルムには、二軸配向ポリエステルフィルム中の全ジカルボン酸成分100モル%に対するイソフタル酸成分の含有率が0.02モル%以上2.0モル%以下の範囲で含まれることが好ましい。一般にペットボトルに使用されているポリエステルにはボトル外観を良好にするため、結晶性の制御が行われており、その結果、10モル%以下のイソフタル酸成分を含むポリエステルが用いられていることがある。
このため本発明のポリエステルフィルム中には、イソフタル酸成分を含む材料が一定量含まれることとなり、フィルム中に特定量のイソフタル酸成分を含有することにより、本発明ではさらに、シーラントと接着した際の接着強度を向上させることが出来る。
フィルム中にイソフタル酸成分を含有することによりシーラントとの接着性が向上する理由は明らかではないが、イソフタル酸-エチレングリコールユニットはテレフタル酸-エチレングリコールユニットと比べて結晶化しにくいため、フィルム中に非晶成分が多く残存し、その結果、コロナ処理などのフィルムの表面処理によって改質されやすくなるばかりか、フィルムのごく表面が溶剤に対して溶解されやすくなり、シーラントと接着する際に用いられる接着剤との親和性が増すことが要因であるものと推定される。
【0058】
フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の量の下限は好ましくは0.02モル%であり、より好ましくは0.05モル%であり、さらに好ましくは0.1モル%であり、特に好ましくは0.15モル%である。先に述べたようにペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂は、イソフタル酸成分を多く含むものがあるため、フィルム中のポリエステル樹脂を構成するイソフタル酸成分が0.02モル%未満であることは、リサイクル樹脂の比率の高いポリエステルフィルムの製造が結果として困難になり、あまり好ましくない。フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の量の上限は好ましくは2モル%であり、より好ましくは1.5モル%であり、さらに好ましくは1.0モル%である。2.0モル%を超えると結晶性が低下するため、フィルムとしての力学強度が低下することがあり、あまり好ましくない。また、イソフタル酸成分の含有率を上記範囲とすることでラミネート強度、収縮率、厚みムラに優れたフィルムの作成が容易となり好ましい。
【0059】
ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂の極限粘度の上限は好ましくは0.9dl/gであり、より好ましくは0.8dl/gでり、さらに好ましくは0.75dl/gであり、特に好ましくは0.69dl/gである。0.9dl/gを超えると押出機からの樹脂が吐出しにくくなって生産性が低下することがあり、あまり好ましくない。
【0060】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、全量に対するペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の下限は好ましくは50重量%であり、より好ましくは70重量%であり、さらに好ましくは90質量%であり、特に好ましくは100重量%である。50重量%未満であるとリサイクル樹脂の活用としては、含有率に乏しく、環境保護への貢献の点であまり好ましくない。ここで前記リサイクルされたポリエステル樹脂の含有率が100質量%とは、粒子を0.5質量%以下で含有する場合(すなわち前記リサイクルされたポリエステル樹脂の含有率が99.5質量%以上の場合)を含む。なお、フィルムとして機能向上のために無機粒子などの滑剤や添加剤を添加する場合に用いるマスターバッチ(高濃度含有樹脂)としてペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることもできる。
【0061】
[二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法]
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、例えば上記のペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂チップとポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル樹脂組成物のチップとをホッパーに備えた押出機に供給及び混合し、押出機により溶融押し出しして未延伸シートを形成し、その未延伸シートを延伸することによって得ることができる。
下記に好適な例を述べるが、これらに制限されものではない。
【0062】
本発明のフィルムは少なくとも1層の単層構造でもよく、2層以上の積層構造であってもよい。2層、3層、4層、5層であってもかまわない。2層の場合は積層部/基層部、3層の場合は積層部(A)/基層部/積層部(B)であり、3層の場合、積層部(A)と積層部(B)が同じ組成・構成であっても良く、異なった組成、例えば、無粒子層/基層部/粒子含有層の構成であっても良い。また、実質的に同じ厚さであってよく、異なった厚さであってもよい。好ましくは、積層部(A)と積層部(B)が同じ組成に設計することが生産が容易で望ましい。
【0063】
次に、本発明のフィルムは、これを構成する上記各層の少なくとも一層が二軸に配向していることが好ましい。2層以上の積層構造の内、全部の層が二軸に配向していると特に好ましい。全ての層が無配向や一軸配向では胴巻きラベル用途に使用しづらくあまり好ましくない。
【0064】
原料となる樹脂チップの混合に際しては、ホッパーに上方からペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管(以下、インナーパイプと称する場合がある)を通じて前記ポリエステル樹脂組成物のチップを供給して、両チップを混合し、溶融押し出しする事が好ましい。ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂チップとポリエステル樹脂組成物のチップとを混合した状態で押出し機の上のホッパーに入れると、比重やチップの形状の異なる樹脂チップがホッパー内で原料偏析を起こす可能性があり、特にホッパーの内壁が鉛直でない箇所(斜めになっている部分)で原料偏析を起こす心配が高いが、インナーパイプを通じてホッパー内の押出機直上部にポリエステル樹脂組成物をダイレクトに供給すると、比重やチップ形状が異なっていっても、原料偏斥を低減でき、ポリエステルフィルムを安定して工業生産することができる。
【0065】
具体的な混合手順の一例を
図4に示す。
図4は、ホッパー1を備えた押出機2と、インナーパイプ3との関係の一例を示す概略図である。
図4に示す様に、本発明のポリエステルフィルムの主原料であるペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂チップ以外の樹脂はインナーパイプ3を通じて供給され、ポリエステル樹脂組成物のチップはホッパー1の上部から供給される。そしてインナーパイプ3の出口4が押出機直上(正確には押出機2の樹脂供給口5の直上)になっているため、原料の混合比率を一定に保つことができる。
【0066】
ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂とポリエステル樹脂組成物を溶融押し出しする際には、ホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂とポリエステル樹脂組成物を乾燥させた後に、押出機を利用して、ポリエステル樹脂の融点以上となり、かつ200~300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。あるいは、ポリエステル樹脂、粒子及び必要に応じて添加物を別々の押出機で送り出し、合流させた後に混合溶融しシート状に押し出してもよい。
溶融樹脂組成物の押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0067】
そして、押し出し後のシート状の溶融ポリエステル樹脂を急冷することによって、その未延伸シートを得ることができる。なお、溶融ポリエステル樹脂を急冷する方法としては、溶融ポリエステル樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。回転ドラムの温度は40℃以下に設定するのが好ましい。
【0068】
さらに、得られた未延伸シートを、以下のような長手方向および幅方向の延伸工程、熱固定工程、熱弛緩工程等の工程を組み合わせることで、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得ることが可能となる。
以下に詳細に説明する。長手方向とは、未延伸シートを走行させる方向を、幅方向とはそれと直角方向を意味する。
【0069】
延伸方法は長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸でも、長手方向と幅方向の延伸をどちらか一方を先に行う逐次二軸延伸でも可能であるが、製膜速度が速く生産性が高いという点と最終的に得られる二軸配向ポリエステルフィルムの厚み均一性が優れるという点から逐次二軸延伸が最も好ましい。
ここでいう製膜速度とは、延伸工程を経てマスターロールに巻き取られる際の二軸配向ポリエステルフィルムの走行速度(m/分)を意味する。
【0070】
未延伸シートの長手方向への延伸時温度としては、ポリエステル樹脂のガラス転移点温度(以下、Tg)を指標として、(Tg+15)~(Tg+55)℃の範囲、延伸倍率としては4.2~4.7倍の範囲とすることが好ましい。
延伸時温度が(Tg+55)℃以下であり、さらに4.2倍以上である場合、高さ3nm未満の微細突起数を上記(1)の下限値以上としやすく、また長手方向と幅方向の分子配向のバランスがよく、長手方向と幅方向の物性差が小さく好ましい。また、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの平面性も良く好ましい。
一方、長手方向の延伸温度が(Tg+15)℃以上であり、さらに延伸倍率が4.7倍以下の場合、算術平均高さSaを上記(3)の上限値以下としやすい。熱弛緩工程におけるフィルムの走行方向とは逆方向に生じる引張応力(ボーイング現象)が大きくなり過ぎず好ましい。
【0071】
また、長手方向の延伸において、一段階での延伸でなく、複数のロール間で2段、3段若しくは4段以上の段階に分けて延伸する方法では、延伸速度をあまり大きくしないで、長手方向の延伸倍率を大きくできるため、フィルム幅方向での物性差をより低減させることができるという点から好ましい。効果や設備面、コストの点からは二段又は三段延伸が好ましい。
【0072】
未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能を付与するためにフィルムの少なくとも一方の面に樹脂分散液又は樹脂溶解液を塗布することもできる。
【0073】
未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムを幅方向に延伸する場合、テンター装置に導き、未延伸シートを長手方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持して、熱風によりフィルムを所定の温度まで加熱した後、長手方向に搬送しながらクリップ間の距離を広げることでフィルムを幅方向に延伸することができる。
幅方向の延伸時温度がTg+5℃以上であると、算術平均高さSaを上記(3)の上限値としやすく、また延伸時に破断が生じにくくなり、好ましい。
また延伸時温度がTg+40℃以下であると、高さ3nm未満の微細突起数を上記(1)の下限値以上としやすく、また、均一な幅方向の延伸がしやすくなり、幅方向の厚み斑が大きくなりにくいため、フィルムロール表面の巻硬度の幅方向のばらつきが大きくなりにくく好ましい。
より好ましくはTg+8℃以上Tg+37℃以下であり、更に好ましくはTg+11℃以上Tg+34℃以下である。
未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムの幅方向への延伸倍率は4.0倍以上6倍以下が好ましい。
幅方向延伸倍率が4.0倍以上であると、高さ3nm未満の微細突起数を上記(1)の下限値以上としやすく、また物質収支的に高い収率が得られやすい上に、力学強度が低下しないほか、幅方向の厚み斑が大きくなりにくく、フィルムロールの幅方向の巻硬さのばらつきが生じにくく好ましい。幅方向延伸倍率はが4.1倍以上がより好ましく、4.2倍以上がさらに好ましい。
また幅方向延伸倍率が6倍以下であると、算術平均高さSaを上記(3)の上限値以下としやすく、また延伸製膜時に破断しにくくなり好ましい。
【0074】
幅方向の延伸工程に続いて熱固定工程を行うが、未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムを幅方向に延伸したフィルムの熱固定温度は240℃以上250℃以下が好ましい。
熱固定温度が240℃以上の場合、高さ3nm未満の微細突起数を上記(1)の下限値以上としやすく、また長手方向および幅方向ともに熱収縮率が高くなりすぎず、蒸着加工時の熱寸法安定性が良くなるため好ましい。
一方、熱固定温度が250℃以下の場合、ボーイングが増加しにくく好ましい。
【0075】
さらに熱弛緩処理工程を行うが、熱固定工程の後に熱固定工程と別々に行ってもよく、熱固定工程と同時に行っても良い。熱弛緩処理工程におけるフィルム幅方向の弛緩率としては、4%以上8%以下が好ましい。
弛緩率が4%以上の場合、得られる二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の熱収縮率が高くなりすぎず、蒸着加工時の寸法安定性が良きなるため好ましい。
一方、弛緩率が8%以下の場合、フィルムの幅方向中央部のフィルムの走行方向とは逆方向に生じる引張応力(ボーイング現象)が大きくなり過ぎず、幅方向のフィルム厚み変動率が大きくならず好ましい。
【0076】
熱弛緩処理工程では、未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムを幅方向に延伸されたフィルムが熱緩和により収縮されるまでの間、幅方向の拘束力が減少して自重により弛んでしまったり、また、フィルム上下に設置されたノズルから吹き出す熱風の随伴気流によってフィルムが膨らんでしまうことがあるため、フィルムが非常に上下に変動し易い状況下にあり、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの配向角や斜め熱収縮率差の変化量が大きく変動しやすい。
これらを軽減させる方法としては、例えば、上下部のノズルから吹き出す熱風の風速を調整することで、フィルムが平行になるように保つことが挙げられる。
【0077】
本発明の蒸着用二軸配向ポリエステルフィルムには、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。
【0078】
上記の方法で延伸製膜された幅広の二軸配向ポリエステルフィルムは、ワインダー装置により巻き取られ、マスターロールが作製される。マスターロールの幅は5000mm以上10000mm以下が好ましい。ロールの幅が5000mm以上であると、その後スット工程、蒸着加工や印刷加工においてフィルム面積あたりのコストが低くなり好ましい。
マスターロールの巻長は10000m以上100000m以下が好ましい。ロールの巻長が5000m以上であると、その後スリット工程、蒸着加工や印刷加工においてフィルム面積あたりのコストが低くなり好ましい。
また、マスターロールよりスリットしたフィルムロールの巻幅は400mm以上3000mm以下であることが好ましい。巻幅が400mm以上であると、印刷工程において頻繁にフィルムロールを交換する手間が少なくなり、コストの面で好ましい。また、巻幅は長い方が好ましいが、3000mm以下であるとロール幅が大きくなりすぎない他、ロール重量が重くなりすぎず、ハンドリング性が低下せず好ましい。
フィルムロールの巻長は2000m以上65000m以下であることが好ましい。巻長が2000m以上であると、印刷工程において頻繁にフィルムロールを交換する手間が少なくなり、コストの面で好ましい。また、巻長は長い方が好ましいが、65000m以下であるとロール径が大きくなりすぎない他、ロール重量が重くなりすぎず、ハンドリング性が低下せず好ましい。
【0079】
[二軸配向ポリエステルフィルムの特性]
本発明のペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂と粒子を含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面は下記(1)~(3)をすべて満たすのが好ましい。それぞれについて詳細に説明する。
(1)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm未満の微細突起数が250ケ以上600ケ以下である。
(2)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm以上の微細突起数が300ケ以上600ケ以下である。
(3)算術平均高さSaが0.010μm以上0.025μm以下である。
【0080】
(1)面積4×10-12m2あたりの3nm未満の微細突起数
二軸配向ポリエステルフィルムは電気絶縁性を有するためフィルム製造工程や加工工程で搬送ロールとの接触、剥離などにより部分的に帯電した部分であるスタティックマークや、蓄えられた静電気が放電すること等に起因するスタティックマーク放電痕が発生しやすいが、面積4×10-12m2あたりの高さ3nm未満の微細突起数が250ケ以上であるとスタティックマークやスタティックマーク放電痕が少なくなり、コート層を形成後にコート斑が生じにくかったり、形成した無機薄膜層のガスバリア性能が向上したり、二次加工後の性能が向上しやすい。
その理由は、面積4×10-12m2あたりの高さ3nm未満の微細突起数が250ケ以上であると、製造されたフィルムを搬送したり、それを巻取る工程において、フィルムと金属ロールが強い力で接触し、フィルム表面の高い突起が押し込まれた場合でもフィルム表面と金属ロールが接する面積は極めて小さくなるため、摩擦による帯電量が小さくなり、その結果、スタティックマークとスタティックマーク放電痕が少なくなると考えられる。さらに好ましくは300ヶ以上であり、より好ましくは400ヶ以上であり、特に好ましくは500ヶ以上である。この傾向はフィルム同士が接触して起こる摩擦の場合にもあてはまる。
高さ3nm未満の微細突起数はフィルムの滑り性をより向上させたり、ブロッキング性を低下させるものではなく、フィルム表面に形成した無機薄膜層のガスバリア性にも悪影響を与えにくいという特徴をもつ。
また、高さ3nm未満の微細突起数が600ケ以下の範囲であってもスタティックマークやスタティックマーク放電痕は十分少ない。
【0081】
(2)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm以上の微細突起数
高さ3nm以上の微細突起数が300ケ以上であるとフィルム同士の動摩擦係数が小さくなりすぎず、二軸配向ポリエステルフィルムは電気絶縁性を有するためフィルム製造工程や加工工程で搬送ロールとの接触、剥離などにより部分的に帯電した部分であるスタティックマークや、蓄えられた静電気が放電すること等に起因するスタティックマーク放電痕をより発生しにくくできるため好ましい。さらに好ましくは400ヶ以上であり、より好ましくは500ヶ以上である。
高さ3nm以上の微細突起数が600ケ以下であれば、形成した無機薄膜層のガスバリア性も十分に得られる。
【0082】
(3)算術平均高さSa
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面の算術平均高さSaは、0.010以上0.025μm以下が好ましい。
算術平均高さSaが0.010μm以上であるとフィルム間及びフィルム表面に形成された突起と突起の間の凹部のフィルムロール内のフィルム同士の癒着(ブロッキング現象)が発生しにくく、フィルムの二次加工をスムーズに行えるため好ましい。さらに好ましくは0.013μm以上であり、より好ましくは0.015μm以上である。
算術平均高さSaが0.025μm以下であると、二軸配向ポリエステルフィルムのヘイズ、特に外部ヘイズが低下し、透明性に優れるため好ましい。さらに好ましくは0.023μm以下であり、より好ましくは0.020μm以下であり、特に好ましくは0.017μm以下である。
もう一方のフィルム表面の算術平均高さSaも同様の範囲が好ましい。
【0083】
(動摩擦係数)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面とその反対面の間の動摩擦係数は0.20以上0.60以下であることが好ましい。
0.20以上であるとフィルム同士が滑りすぎず、フィルム製造時あるいはスリット時にワインダー装置によりフィルムロールを巻き取る時に、フィルムロールにシワが生じにくく、二次加工性が低下しにくい。さらに好ましくは0.30以上であり、最も好ましくは0.45以上である。
また、0.60以下であるとフィルム同士が滑るので、フィルム製造時あるいはスリット時にワインダー装置によりフィルムロールを巻き取る時に、フィルムロールに巻ズレが生じにくく、二次加工性が低下しにくい。さらに好ましくは0.50以下であり、最も好ましくは0.44以下である。
【0084】
(静止摩擦係数)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面とその反対面の間の静止摩擦係数は0.20以上0.60以下であることが好ましい。
0.20以上であるとフィルム同士が滑りすぎず、フィルム製造時あるいはスリット時にワインダー装置によりフィルムロールを巻き取る時に、フィルムロールにシワが生じにくく、二次加工性が低下しにくい。さらに好ましくは0.30以上であり、最も好ましくは0.45以上である。
また、0.60以下であると、フィルム同士が滑るので、フィルム製造時あるいはスリット時にワインダー装置によりフィルムロールを巻き取る時に、フィルムロールに巻ズレが生じにくく、二次加工性が低下しにくい。さらに好ましくは0.50以下であり、最も好ましくは0.44以下である。
【0085】
(最大高さSz)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの上記(1)~(3)すべてを満たす面の最大高さSzが0.5μm以上2.0μm以下が好ましい。
最大高さSzが0.5μm以上であるとマスターロールを巻き取る際、あるいはマスターロールをスリットし、巻芯に二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取る時に互いに接するフィルムの間に巻き込む空気の量が多くなりにくく、フィルムの伸びや変形が少ない。また、フィルムロール中の空気が抜けた後のロール中のフィルムが弛みにくい。ポリエステル樹脂に含まれる粒子の重量平均粒径が0.8μm以上であると最大高さSzを0.5μm以上としやすい。
最大高さSzが2.0μm以下であると二軸配向ポリエステルフィルムの表面上における、二次加工後のコート膜や無機薄膜層の抜けや欠陥などが少なくなる。長手方向の延伸時温度がTg+40℃以下であるか、延伸倍率が4.2倍以上であると、最大高さSzを2.0μm以下としやすい。
もう一方のフィルム表面の最大高さSzも同様である。
【0086】
(外部ヘイズ)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの外部ヘイズが1.8%以下であることが好ましい。外部ヘイズが1.8%以下であるとフィルム表面の平滑性を損ないにくく、フィルム製造工程では搬送ロールとの接触、剥離などによる帯電が発生しにくく、スタチックマークやスタチックマーク放電痕などの帯電による品質不良が発生しにくいため好ましい。さらに好ましくは1.6%以下であり、より好ましくは1.4%下であり、特に好ましくは1.2%以下であり、最も好ましくは1.0%以下である。
【0087】
(内部ヘイズ)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの内部ヘイズが2.5%以下であることが好ましい。内部ヘイズが2.5%以下であると透明性が低下しにくく好ましい。さらに好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.8%以下であり、特に好ましくは1.6%以下である。
【0088】
(濡れ張力)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面には、低温プラズマ処理やコロナ放電処理等の表面処理による表面改質が行われてもよい。
このとき、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの上記(1)~(3)すべてを満たす面の濡れ張力は50mN/m以上が好ましく、52mN/m以上がより好ましい。
上限は特に無いが、55mN/m以下の範囲であっても、二次加工のコートや蒸着薄膜を行った後の性能には十分である。
【0089】
(フィルム厚み)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのフィルム厚みは、5~40μmが好ましい。5μm以上であるとフィルムとしての強度やコシ感が低下せず、ワインダー装置により巻き取る際、フィルムロールにシワが入りにくく好ましい。一方、フィルム厚みは40μm以下の範囲であれば強度やコシ感は十分に得られ、コストの観点から薄肉化することが好ましい。フィルムの厚みは8~30μmがより好ましく、9μm~20μmが特に好ましい。
【0090】
(欠点数)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム1m2当たり1mm以上の異物が1個未満であることがフィルム品位の観点から好ましく、ポリエステル再生原料を用いながらも品位のよいフィルムであると言える。
【0091】
(蒸着フィルム)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの下記(1)~(3)すべてを満たす少なくとも一方の面に無機薄膜層やアルミ箔のような金属箔などのガスバリア層を設けることができる。
(1)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm未満の微細突起数が250ケ以上600ケ以下である。
(2)面積4×10-12m2あたりの高さ3nm以上の微細突起数が300ケ以上600ケ以下である。
(3)算術平均高さSaが0.01μm以上0.025μm以下である。
【0092】
無機薄膜層としては、金属又は無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点と透明性の点から、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。
【0093】
酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の重量比でAlが20~70%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20%未満であると、水蒸気ガスバリア性が低くなる場合がある。一方、70%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてガスバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO2等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl2O3等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
【0094】
無機薄膜層の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0095】
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiO2とAl2O3の混合物、あるいはSiO2とAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。さらに、上記無機薄膜層上に印刷層を積層していてもよい。
【0096】
本発明においては、前記ガスバリア層の上に保護層を設けることが好ましい。金属酸化物からなるガスバリア層は完全に密な膜ではなく、微小な欠損部分が点在している。金属酸化物層上に後述する特定の保護層用樹脂組成物を塗工して保護層を形成することにより、金属酸化物層の欠損部分に保護層用樹脂組成物中の樹脂が浸透し、結果としてガスバリア性が安定するという効果が得られる。加えて、保護層そのものにもガスバリア性を持つ材料を使用することで、積層フィルムのガスバリア性能も大きく向上することになる。
【0097】
前記保護層としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。保護層を形成させる際に使用する溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
【0098】
前記のウレタン樹脂は、ウレタン結合の極性基が無機薄膜層と相互作用するとともに、非晶部分の存在により柔軟性をも有するため、屈曲負荷がかかった際にも無機薄膜層へのダメージを抑えることができるため好ましい。
ウレタン樹脂の酸価は10~60mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。より好しくは15~55mgKOH/gの範囲内、さらに好ましくは20~50mgKOH/gの範囲内である。ウレタン樹脂の酸価が前記範囲であると、水分散液とした際に液安定性が向上し、また保護層は高極性の無機薄膜上に均一に堆積することができるため、コート外観が良好となる。
【0099】
前記のウレタン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上であることが好ましく、より好ましくは90℃以上である。Tgを80℃以上にすることで、湿熱処理過程(昇温~保温~降温)における分子運動による保護層の膨潤を低減できる。
前記のウレタン樹脂は、ガスバリア性向上の面から、芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネート成分を主な構成成分として含有するウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
その中でも、メタキシリレンジイソシアネート成分を含有することが特に好ましい。上記樹脂を用いることで、芳香環同士のスタッキング効果によりウレタン結合の凝集力を一層高めることができ、結果として良好なガスバリア性が得られる。
本発明においては、ウレタン樹脂中の芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネートの割合を、ポリイソシアネート成分(F)100モル%中、50モル%以上(50~100モル%)の範囲とすることが好ましい。芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合は、60~100モル%が好ましく、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。このような樹脂として、三井化学社から市販されている「タケラック(登録商標)WPB」シリーズは好適に用いることが出来る。芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合が50モル%未満であると、良好なガスバリア性が得られない可能性がある。
【0100】
前記ウレタン樹脂は、無機薄膜層との親和性向上の観点から、カルボン酸基(カルボキシル基)を有することが好ましい。ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入すればよい。また、カルボン酸基含有ウレタン樹脂を合成後、塩形成剤により中和すれば、水分散体のウレタン樹脂を得ることができる。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン等のトリアルキルアミン類、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のN-アルキルモルホリン類、N-ジメチルエタノールアミン、N-ジエチルエタノールアミン等のN-ジアルキルアルカノールアミン類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
(積層体)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを基材フィルムとして他素材の層を積層し、積層体としても良い。その方法として、二軸配向ポリエステルフィルムを作製後に貼り合わせるか、製膜中に貼り合わせることができる。
【0102】
例えば、本発明の二軸配向ポリエステルフィルム、あるいは本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに無機蒸着層を設けたものに、更にシーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成し、包装材料として使用することができる。
ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。
ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂。エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。
【0103】
シーラント層は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。例えば、防湿性を付与する点では、エチレン-環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムが使用できる。 また、シーラント層は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤が配合されてもよい。
シーラント層の厚さは、10~100μmが好ましく、20~60μmがより好ましい。
【0104】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを基材フィルムとした包装材料用の積層体の層構成としては、例えば、基材フィルム/ガスバリア層/保護層、基材フィルム/ガスバリア層/保護層/接着剤層/シーラント層、基材フィルム/ガスバリア層/保護層/接着剤層/樹脂層/接着剤層/シーラント層、基材フィルム/接着剤層/樹脂層/ガスバリア層/保護層/接着剤層/シーラント層、基材フィルム/ガスバリア層/保護層/印刷層/接着剤層/シーラント層、基材フィルム/印刷層/ガスバリア層/保護層/接着剤層/シーラント層、基材フィルム/ガスバリア層/保護層/接着剤層/樹脂層/印刷層/接着剤層/シーラント層、基材フィルム/接着剤層/樹脂層/印刷層/ガスバリア層/保護層/接着剤層/シーラント層、基材フィルム/印刷層/ガスバリア層/保護層/接着剤層/樹脂層/接着剤層/シーラント層、基材フィルム/印刷層/接着剤層/樹脂層/ガスバリア層/保護層/接着剤層/シーラント層、基材フィルム/接着剤層/樹脂層/ガスバリア層/保護層/印刷層/接着剤層/シーラント層、等が挙げられる。
【0105】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを用いた積層体は、包装製品、各種ラベル材料、蓋材、シート成型品、ラミネートチューブ等の用途に好適に使用することができる。特に、包装用袋(例えば、ピロー袋、スタンディングパウチや4方パウチ等のパウチ)に用いられる。積層体の厚さは、その用途に応じて、適宜決定することができる。例えば、5~500μm、好ましくは10~300μm程度の厚みのフィルムないしシート状の形態で用いられる。
【実施例0106】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。
【0107】
A.ポリエステル樹脂の評価方法は下記の通りである。
[ガラス転移転(Tg)]
示差走査熱量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC6220型)を用いて、樹脂試料5mgを窒素雰囲気下にて280℃まで溶融し、5分間保持した後、液体窒素にて急冷し、室温より昇温速度20℃/分の条件にて測定した。
【0108】
[固有粘度(IV)]
ポリエステル樹脂0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/gである。
【0109】
[原料ポリエステル及びフィルムを構成するポリエステル中に含まれるテレフタル酸及びイソフタル酸成分の含有率]
クロロホルムD(ユーリソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーリソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調製し、NMR(「GEMINI-200」;Varian社製)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定した。NMR測定では、所定のプロトンのピーク強度を算出して、酸成分100モル%中のテレフタル酸成分およびイソフタル酸成分の含有率(モル%)を算出した。
【0110】
[原料ペレットの安息角]
直径50mm、高さ10mmの金属円筒の端面中央部に、ポリエチレン製漏斗(口径10mm)を用いてペレットを落下させた。金属円筒の平面とペレットの綾線の作る角度を分度器を用いて測定したものを安息角とした。
【0111】
B.ポリエステルフィルムの評価方法は下記の通りである。
[フィルムの厚み]
JIS K7130-1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
【0112】
[外部ヘイズ、内部ヘイズ、全ヘイズ]
得られたフィルムから縦方向5cm×横方向5cmの面積に切り出し、日本電色工業株式会社製の濁度計(NDH5000)を用いて、25℃で可視光線の全波長に対して、JIS-K7136に準拠して、全ヘイズを測定した。
同様にして、石英ガラス板2枚の間にツェーデル油のみを挟んだ構成の積層体のヘイズ(以下、「ヘイズH1」)、及び、ツェーデル油で表面を均一に濡らしたポリエステルフィルムを石英ガラス板2枚の間に挟んだ構成の積層体のヘイズ(以下、「ヘイズH2」)を測定した。
次いで、下記式に従って内部ヘイズを求める。
内部ヘイズ=ヘイズ(H2)-ヘイズ(H1)・・・式1
外部ヘイズは、全ヘイズから内部ヘイズを差し引くことによって求められる値とする。
なお、全ヘイズ、内部ヘイズ、及び外部ヘイズは、いずれも可視光線の全波長に対する
ヘイズを指す。
【0113】
[算術平均高さSa、最大高さSz]
得られたフィルムから縦方向10cm×横方向10cmの面積に切り出し、Zygo社製の白色レーザー干渉計(NEW VIEW8300)を使用した。
干渉計に20倍レンズを取り付けて、走査を行い、算術平均高さ(μm)と最大高さ(μm)を測定した。測定は、一方の表面のMD方向に0.82μm、 幅方向に0.82μmの範囲で行い、未溶融物や埃等の異物を除く表面を対象とした。
測定箇所は10cm×10cmのサンプルの任意の箇所10点で測定し、その平均値をそれぞれ算術平均高さSa、最大高さSzとした。
算術平均高さSaのバラつき(%)は、得られたポリエステルフィルムロール(幅2080mm、巻き長63,000m)について、長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングした。サンプリングした各フィルムについて、上記の条件にて測定を行った。得られた算術平均高さSaの最大値をXmax(N)、最小値をXmin(N)、平均値をXaveとし、下記式[1]で表される長手方向のバラつきを求めた。
【0114】
[動摩擦係数、静止摩擦係数、]
得られたフィルムから長手方向400mm×幅方向100mmの面積に切り出し、試料フィルムを作製した。これを23℃、65%RHの雰囲気下で12時間エージングし、試験テーブル用として縦方向300mm×横方向100mmの試験片、滑り片用に縦長手方向100mm×幅方向100mmの試験片に分けた。
試験テーブル用試験片を試験テーブルにセットし、滑り片用試験片は、金属製の荷重が1.5kgの滑り片の底面(面積の大きさが39.7mm2、正方形)に、それぞれがキャスティングドラムに接した面が対面するように、両面テープで貼りつけた。
試験片の滑り速度を200mm/分、23℃、65%RH条件下で、その他はJIS K-7125に準拠し、動摩擦係数と静止摩擦係数とをそれぞれ測定し、3回の測定の平均を用いた。
【0115】
[フィルム表面の面積4×10-12m2における微細突起数]
得られたフィルムから長手方向10mm×幅方向10mmの面積に切り出し、 島津製作所社製の走査型プローブ顕微鏡(SPM-9700)を用い、下記の観察条件にて測定を行い、測定面の画像を取り込んだ。
得られた画像(高さトレース)について、下記の条件にて画像処理を行った。
SPM-9700シリーズの粒子解析ソフトウェアを用いて、下記の粒子解析条件で抽出する粒子のしきい値を3nmとして3nm以上の粒子数(突起数)および3nm未満の粒子数(突起数)を、面積4×10-12m2(2μm×2μm角)内でカウントした。なお、3nm未満の粒子数(突起数)は0.01nm以上のものをカウントした。
測定は場所を変えて5回行い、カウント数の最も多いものと少ないものを除いた3回の平均値を計算し、微細突起数とした。
(観察条件)
・カンチレバー:Si(シリコン)製
・走査モード:位相モード
・走査速度:2Hz
・走査範囲:2μm
・画素数:256×256
・オフセットX:0μm
・オフセットY:0μm
・走査角度:0°
・オペレーティングポイント:1.0V
・Pゲイン:0.001
・Iゲイン:1500
・オフセットZ:0μm
・Zレンジ:×2
・走査モード:力一定
(画像処理)
・傾き補正:X方向の平均値(X)、Y方向の平均値(Y)、ラインフィット(L)
・ノイズラインの除去:モード(範囲指定)、自動選択
(粒子解析)
・ターゲットの形状:粒子
・XYしきい値:30%
・無視するピクセル数:5
微細突起数のバラつき(%)は、得られたポリエステルフィルムロール(幅2080mm、巻き長63,000m)について、長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングした。サンプリングした各フィルムについて、上記の条件にて測定を行った。得られた微細突起数の最大値をXmax(N)、最小値をXmin(N)、平均値をXaveとし、下記式[1]で表される長手方向のバラつきを求めた。
【0116】
[摩擦帯電圧]
得られたフィルムから長手方向80mm×幅方向50mmの面積に切り出し、試料フィルムを作製した。これを23℃、50%RHの雰囲気下で16時間エージングした。大栄科学精器製作所社製の摩擦帯電圧測定機(RST-300a)を用いて、摩擦帯電圧の測定を行った。
試料サンプルを回転装置に固定し、ドラム回転速度400rpmで60秒間、金属板と摩擦し発生した静電気を測定し、最大値を摩擦帯電圧とした。測定した摩擦帯電圧により以下の判定基準で評価した。
◎:摩擦帯電圧200V未満
○:摩擦帯電圧200V以上、500V未満
△:摩擦帯電圧500V以上、1000V未満
×:摩擦帯電圧1000V以上
【0117】
[スタティックマーク評価]
得られた幅方向に550mm、長手方向に500mで巻き取った2軸配向ポリエステル
フィルムローを西村製作所社製のスリッター(FN105E型)を用いて、速度15m/min、巻取張力100N/m(ユニット張力設定)で巻き返しを実施した。
このときの静電除去は、スリッターについている静電除去装置をONとし、巻出ロールと傾き調整ローラの間に除電ブラシ(アキレス社製「NSP-2S」)をフィルムの上下面側に設置して静電除去を行った。
得られたフィルムロール最表面のフィルム端部からフィルムを巻き出して、フィルム端部から2m除去した後にフィルムを幅方向の中央部10cm、長手方向に10cmの長さでサンプリングし、春日電機社製の帯電分布判定トナーを使用し、フィルム表面の帯電状態を可視化した。以下の判定基準でフィルムロールの帯電性を評価した。
◎:スタティックマークやスタティックマーク放電痕やトナー付着がない。
〇:スタティックマークやスタティックマーク放電痕が観察されないが、トナーが付着している。
×:スタティックマークやスタティックマーク放電痕が観察される。
[フィルム中の異物(欠点数)]
得られたフィルムを長手方向250mm×幅方向250mmの面積に切り出し、試料フィルムを作製した。これをスケール付き顕微鏡で、フィルム面に対して垂直方向から観察した時の1mm以上の直径を有する異物の数を長手方向250mm×幅方向250mm(0.0625m2)の範囲すべてについて計測する。これを試料フィルム20枚に対して行い、得られた異物の総数を総観察面積(1.25m2)で除し、単位面積1m2当たり異物の個数(個/m2)に換算し、小数点第1位の桁を四捨五入した。測定したフィルム中の異物の数により以下の判定基準で評価した。
〇:フィルム中の異物の数(欠点数)1.0個/m2未満
×:フィルム中の異物の数(欠点数)1.0個/m2以上
【0118】
[濡れ張力]
得られたフィルムから長手方向400mm×幅方向300mmの面積に切り出し、温度23℃、相対湿度50%で24時間エージング後、温度23℃、相対湿度50%の試験室雰囲気とした以外は、JIS-K-7100に準拠しコロナ処理面を下記手順で測定した。
試験片をハンドコータの基板の上に置き、試験片の上に試験用混合液を数滴滴下して、直ちにワイヤバーを引いて広げる。綿棒又はブラシを使用して試験用混合液を広げる場合は、液体は少なくとも6cm2以上の面積に速やかに広げる。液体の量は、たまりを作らないで、薄層を形成する程度にする。
濡れ張力の判定は,試験用混合液の液膜を明るいところで観察し、3秒後の液膜の状態で行う。液膜破れを生じないで、3秒以上、塗布されたときの状態を保っているのは、ぬれていることになる。
濡れが3秒以上保つ場合は、さらに、次に表面張力の高い混合液に進む。
また逆に、3秒以下で液膜が破れる場合は、次の表面張力の低い混合液に進む。この操作を繰り返し、試験片の表面を正確に、3秒間で濡らすことができる混合液を選ぶ。
各々の試験には,新しい綿棒を使用する。ブラシ又はワイヤバーは,残留する液体が蒸発によって組成及び表面張力を変化させるので、使用ごとにメタノールで洗浄し、乾燥させる。
コロナ処理面の表面を3秒間でぬらすことができる混合液を選ぶ操作を少なくとも3回行う。このようにして選ばれた混合液の表面張力をフィルムの濡れ張力として報告する。
【0119】
[評価用ラミネート積層体の作製]
ポリエステルフィルム上にウレタン系2液効果型接着剤(三井化学社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」を13.5:1(重量比)の割合で配合)を用いてドライラミネート法により、ヒートシール性樹脂層として厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「P1147」)を張り合わせ、40℃にて4日間エージングを施すことにより、ラミネート積層体を得た。なお、ウレタン系2液硬化型接着剤で形成される接着剤層の乾燥後の厚みはいずれも約4μmであった。
【0120】
[ラミネート強度]
前述のラミネート積層体に対して、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン社製「テンシロンUMT-II-500型」)を用いてラミネート強度を測定した。
ラミネート強度は、引張速度を200mm/分とし、積層フィルムとヒートシール性樹脂層との間を、剥離角度180度で剥離させたときの強度とした。
【0121】
以下に本実施例及び比較例で使用する原料樹脂チップの詳細を示す。
(ポリエステル樹脂A)
後述する二軸延伸ポリエステルフィルムの作製において使用するペットボトルより再生されたPET樹脂として、以下の方法を用いて合成したものを用いた。
飲料用ペットボトルから残りの飲料などの異物を洗い流した後、粉砕してフレークを得た。得られたフレークをフレーク濃度10重量%、85℃、30分の条件で3.5重量%の水酸化ナトリウム溶液で攪拌下で洗浄を行った。アルカリ洗浄後、フレークを取り出し、フレーク濃度10重量%、25℃、20分の条件で蒸留水を用いて攪拌下で洗浄を行った。この水洗を蒸留水を交換してさらに2回繰り返し実施した。水洗後、フレークを乾燥した後、押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルターを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルターで濾別して、固有粘度0.69dl/g、イソフタル酸含有率2モル%、安息角46度のポリエステル樹脂Aを得た。
(ポリエステル樹脂B)
前記ポリエステル樹脂Aの製造工程において、アルカリ洗浄を行わなかった以外は、上記ポリエステル樹脂Aと同様にして、固有粘度0.69dl/g、イソフタル酸含有率2モル%、安息角46度のポリエステル樹脂Bを得た。
(ポリエステル樹脂C)
後述する二軸配向ポリエステルフィルムの作製において使用する化石燃料由来PET樹脂として、テレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)(東洋紡社製、固有粘度0.62dl/g、安息角45度)を用いた。
(ポリエステル樹脂D)
エステル化反応缶を昇温して200℃に到達した時点で、テレフタル酸[86.4質量部]及びエチレングリコール[64.4質量部]からなるスラリーを仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモン[0.017質量部]及びトリエチルアミン[0.16質量部]を添加した。次いで加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水塩[0.071質量部]、次いでリン酸トリメチル[0.014質量部]を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温した後、リン酸トリメチル[0.012質量部]、次いで酢酸ナトリウム[0.0036質量部]を添加した後、15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、さらに平均粒子径1.3μmの不定形シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを粒子含有量を基準として3.0重量部添加した。このシリカ粒子は、エチレングリコールスラリーを予め調製し、これを遠心分離処理して粗粒部を35%カットし、その後、目開き5μmの金属フィルターでろ過処理を行って得られた粒子である。15分後に、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行い、極限粘度0.60dl/g、安息角37度のポリエステル樹脂Dを得た。
(ポリエステル樹脂E~P)
シリカ粒子の形状及び平均粒子径と含有量を変更した以外はポリエステル樹脂Dと同様の方法でポリエステル樹脂E~Pを得た。
【0122】
原料樹脂チップは、表1に示した通りである。なお、表中の略号は以下の通りである。
TPA:テレフタル酸
EG:エチレングリコール
【0123】
【0124】
[実施例1]
3台の押出し機を用いて3層構成のフィルムを製膜した。基層(B)はポリエステル樹脂Aを98.7質量%、ポリエステル樹脂Dを1.3質量%、表面層(A)はポリエステル樹脂Aを93.3質量%、ポリエステル樹脂Dを6.7質量%とした。ここでポリエステル樹脂Dは、押出し機に入る前に他原料と混合するように
図4に示すようなインナーパイプを用いて入れた。それぞれの原料樹脂を乾燥後、第1、第3の押出機より表面層(A)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機により基層(B)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度にて溶融し、キャススティングドラムに接触する側から表面層(A)/基層(B)/表面層(A)の順番に、Tダイ内にて厚み比が1/10/1(μm)になるように合流積層し、T字の口金から吐出させ、表面温度が30℃のキャスティングドラムにて冷却固化させ、未延伸のポリエチレンテレフタレートシートを得た。
その際、直径0.15mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させて3層未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを115℃に加熱し、一段目を1.24倍、二段目を1.4倍、3段目を2.6倍とした三段延伸にて、全延伸倍率4.5倍で長手方向に延伸した。
引き続き、温度140℃、延伸倍率4.3倍にて幅方向に延伸し、245℃で熱固定し、幅方向に5%熱弛緩処理を行い、チルロールに接触した側のA層表面に40W・min/m
2の条件でコロナ処理を行い、ワインダーでロール状に巻取ることで、厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムのマスターロール(巻長26000m、幅8000mm)を作製した。
得られたマスターロールから二軸配向ポリエステルフィルムを巻出し、直径6インチ(152.2mm)の巻芯に、2200mm幅でスリットしながら、コンタクトロールでフィルムロールに面圧と、2軸ターレットワインダーでフィルムに張力をかけながら、フィルムロールを巻き取った。
得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0125】
[実施例2]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを95.0質量%、ポリエステル樹脂Dを5.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0126】
[実施例3]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを96.0質量%、ポリエステル樹脂Eを4.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0127】
[実施例4]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを92.0質量%、ポリエステル樹脂Fを8.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0128】
[比較例1]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂Cに変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0129】
[比較例2]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを95.0質量%、ポリエステル樹脂Gを5.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0130】
[比較例3]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを95.0質量%、ポリエステル樹脂Hを5.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0131】
[実施例5]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂Bに変更した以外は、比較例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0132】
[参考例1]
実施例1と同じように、3台の押出し機を用いて3層構成のフィルムを製膜した。基層(B)はポリエステル樹脂Aを98.7質量%、ポリエステル樹脂Dを1.3質量%、表面層(A)はポリエステル樹脂Aを93.3質量%、ポリエステル樹脂Dを6.7質量%とした。しかし、ポリエステル樹脂A、ポリエステル樹脂Dは全て混合された状態で押出し機に入れた。つまり、ポリエステル樹脂Dはインナーパイプを用いずに、ホッパー上部で混合した状態で押出し機に入った。それぞれの原料樹脂を乾燥後、第1、第3の押出機より表面層(A)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機により基層(B)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度にて溶融し、キャススティングドラムに接触する側から表面層(A)/基層(B)/表面層(A)の順番に、Tダイ内にて厚み比が1/10/1(μm)になるように合流積層し、T字の口金から吐出させ、表面温度が30℃のキャスティングドラムにて冷却固化させ、未延伸のポリエチレンテレフタレートシートを得た。その際、直径0.15mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させて3層未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを115℃に加熱し、一段目を1.24倍、二段目を1.4倍、3段目を2.6倍とした三段延伸にて、全延伸倍率4.5倍で長手方向に延伸した。
引き続き、温度140℃、延伸倍率4.3倍にて幅方向に延伸し、245℃で熱固定し、幅方向に5%熱弛緩処理を行い、チルロールに接触した側のA層表面に40W・min/m2の条件でコロナ処理を行い、ワインダーでロール状に巻取ることで、厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムのマスターロール(巻長26000m、幅8000mm)を作製した。
得られたマスターロールから二軸配向ポリエステルフィルムを巻出し、直径6インチ(152.2mm)の巻芯に、2200mm幅でスリットしながら、コンタクトロールでフィルムロールに面圧と、2軸ターレットワインダーでフィルムに張力をかけながら、フィルムロールを巻き取った。
得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0133】
実施例1~4のフィルムは、表2の結果のように、高さ3nm以上の微細突起数、高さ3nm未満の微細突起数、算術平均高さSaが規定の範囲内となるため、スタティックマークやスタティックマーク放電痕などの帯電による品質不良が少なく、コートや蒸着などの二次加工後の性能に優れ、且つペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより環境配慮されたポリエステルフィルムであり、異物が少なく、巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきが少ないものであった。
【0134】
比較例1は、得られたフィルムの高さ3nm以上の微細突起数、高さ3nm未満の微細突起数、算術平均高さSaが規定の範囲内であるため、スタティックマークやスタティックマーク放電痕などの帯電による品質不良が少なく、コートや蒸着などの二次加工後の性能に優れているが、従来の化石燃料由来のポリエステル樹脂であるため、環境配慮されたポリエステルフィルムとしては劣るものであった。
【0135】
比較例2は、得られたフィルムの高さ3nm以上の微細突起数は範囲内であるものの、高さ3nm未満の微細突起数が少ないため、摩擦帯電圧が高く、スタティックマーク評価が不良であった。しかも、算術平均高さSaが大きすぎるため、外部ヘイズが大きく、透明性に劣るものであった。
【0136】
比較例3は、得られたフィルムの高さ3nm以上の微細突起数は範囲内であるものの、高さ3nm未満の微細突起数が少ないため、摩擦帯電圧が高く、スタティックマーク評価が不良であった。
【0137】
実施例5は、得られたフィルムの高さ3nm以上の微細突起数、高さ3nm未満の微細突起数、算術平均高さSaが規定の範囲内であるため、スタティックマークやスタティックマーク放電痕などの帯電による品質不良が少なく、コートや蒸着などの二次加工後の性能に優れているが、アルカリ洗浄を行っていないペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いたため、フィルム中の異物が多いものであった。
【0138】
参考例1は、原料の供給にインナーパイプを用いておらず、原料の偏析のために長手方向で原料比率の変動が大きくなるため、得られたフィルムの高さ3nm以上の微細突起数、高さ3nm未満の微細突起数の長手方向のバラつきが大きく、フィルムロール中で部分的に実施例1~4と同等の物性を有する良好なフィルムを得ることができるものの、フィルムロールとしては劣るものであった。
【0139】
【0140】
【0141】
[実施例6]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを98.0質量%、ポリエステル樹脂Iを2.0質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを99.6質量%、ポリエステル樹脂Iを0.4質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0142】
[実施例7]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを99.33質量%、ポリエステル樹脂Jを0.67質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを99.87質量%、ポリエステル樹脂Jを0.13質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0143】
[実施例8]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを99.5質量%、ポリエステル樹脂Jを0.5質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを99.87質量%、ポリエステル樹脂Jを0.13質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0144】
[実施例9]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを99.6質量%、ポリエステル樹脂Mを0.4質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを99.87質量%、ポリエステル樹脂Mを0.13質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0145】
[実施例10]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを99.2質量%、ポリエステル樹脂Nを0.8質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを99.87質量%、ポリエステル樹脂Nを0.13質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0146】
[比較例4]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを99.5質量%、ポリエステル樹脂Oを0.5質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを99.87質量%、ポリエステル樹脂Oを0.13質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0147】
[比較例5]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを99.5質量%、ポリエステル樹脂Pを0.5質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを99.87質量%、ポリエステル樹脂Pを0.13質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0148】
[実施例11]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを90.0質量%、ポリエステル樹脂Kを10.0質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを97.4質量%、ポリエステル樹脂Kを2.6質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0149】
[参考例2]
原料として、表面層(A)および基層(B)のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂Lに変更した以外は、実施6と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側のA層表面で行った。
【0150】
実施例5~9のフィルムは、表3の結果のように、高さ3nm以上の微細突起数、高さ3nm未満の微細突起数、算術平均高さSaが規定の範囲内となるため、スタティックマークやスタティックマーク放電痕などの帯電による品質不良が少なく、コートや蒸着などの二次加工後の性能に優れ、且つペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いており、ペットボトル再生原料の使用比率を更に高めることにより環境配慮されたポリエステルフィルムであり、異物が少なく、巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきが少ないものであった。
【0151】
比較例4は、得られたフィルムの高さ3nm以上の微細突起数は範囲内であるものの、高さ3nm未満の微細突起数が少ないため、摩擦帯電圧が高く、スタティックマーク評価が不良であった。しかも、算術平均高さSaが大きすぎるため、外部ヘイズが大きく、透明性に劣るものであった。
【0152】
比較例5は、得られたフィルムの高さ3nm以上の微細突起数は範囲内であるものの、高さ3nm未満の微細突起数が少ないため、摩擦帯電圧が高く、スタティックマーク評価が不良であった。
【0153】
実施例11は、粒子を含むポリエステル樹脂組成物の粒子含有量が少ないため、ペットボトル再生原料の使用比率が少し低下するものの、実施例6~10と同様に良好な物性を有するフィルムおよびフィルムロールであった。
【0154】
参考例2は、粒子を含むポリエステル樹脂組成物のペレットの安息角が大きいため、原料の偏析のために長手方向で原料比率の変動が大きくなるため、得られたフィルムの高さ3nm以上の微細突起数、高さ3nm未満の微細突起数の長手方向のバラつきが大きく、フィルムロール中で部分的に実施例6~10と同等の物性を有する良好なフィルムを得ることができるものの、フィルムロールとしては劣るものであった。
【0155】
【0156】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、透明性に優れ、フィルム製造時あるいはフスリット後にフィルムロールに巻き取る際にフィルムロールにシワが生じにくく、またフィルムロールからフィルムを巻き出しやすいため、コートや蒸着などの二次加工を行いやすい。
また、スタティックマークやスタティックマーク放電痕などの帯電による品質不良が少ないため、コートや蒸着などの二次加工後の性能に優れ、且つペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより環境配慮されたポリエステルフィルムであり、異物が少なく、巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきが少ない二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することが可能となった。
したがって、食品包装用途、特にガスバリア性を有するフィルムへの用途において有用であり、産業界に大きく寄与することが期待される。