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特開2024-144587金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と金属端子用接着性フィルムを備えるキット、並びに、蓄電デバイス及びその製造方法
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  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と金属端子用接着性フィルムを備えるキット、並びに、蓄電デバイス及びその製造方法 図1
  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と金属端子用接着性フィルムを備えるキット、並びに、蓄電デバイス及びその製造方法 図2
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  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と金属端子用接着性フィルムを備えるキット、並びに、蓄電デバイス及びその製造方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144587
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と金属端子用接着性フィルムを備えるキット、並びに、蓄電デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20241003BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20241003BHJP
   H01M 50/197 20210101ALI20241003BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20241003BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20241003BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M50/184 C
H01M50/186
H01M50/197
H01M50/198
H01M50/193
H01G11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024118945
(22)【出願日】2024-07-24
(62)【分割の表示】P 2024522452の分割
【原出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2022187984
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】藤原 亮
(72)【発明者】
【氏名】小谷 和史
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 泉紀
(72)【発明者】
【氏名】溝尻 誠
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、着色層を備える金属端子用接着性
フィルムであって、シール時の加熱による着色層の流出が抑制される、金属端子用接
着性フィルムを提供する。
【解決手段】蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルム
であって、
前記金属端子用接着性フィルムは、少なくとも、前記蓄電デバイス用外装材側に配
される第1層と、着色層と、前記金属端子側に配される第2層とをこの順に備える積
層体から構成されており、
前記着色層の厚みが50μm以下である、金属端子用接着性フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、
前記金属端子用接着性フィルムは、少なくとも、前記蓄電デバイス用外装材側に配される第1層と、着色層と、前記金属端子側に配される第2層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記着色層の厚みが50μm以下である、金属端子用接着性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と金属端子用接着性フィルムを備えるキット、並びに、蓄電デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの蓄電デバイスが開発されているが、あらゆる蓄電デバイスにおいて電極や電解質等の蓄電デバイス素子を封止するために蓄電デバイス用外装材が不可欠な部材になっている。従来、蓄電デバイス用外装材として金属製の蓄電デバイス用外装材が多用されていたが、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、蓄電デバイスには、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の蓄電デバイス用外装材では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0003】
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る蓄電デバイス用外装材として、基材層/接着層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層された積層シートが提案されている。このような積層フィルム状の蓄電デバイス用外装材を用いる場合、蓄電デバイス用外装材の最内層に位置する熱融着性樹脂層同士を対向させた状態で、蓄電デバイス用外装材の周縁部をヒートシールにて熱融着させることにより、蓄電デバイス用外装材によって蓄電デバイス素子が封止される。
【0004】
蓄電デバイス用外装材のヒートシール部分からは、金属端子が突出しており、蓄電デバイス用外装材によって封止された蓄電デバイス素子は、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子によって外部と電気的に接続される。すなわち、蓄電デバイス用外装材がヒートシールされた部分のうち、金属端子が存在する部分は、金属端子が熱融着性樹脂層に挟持された状態でヒートシールされている。金属端子と熱融着性樹脂層とは、互いに異種材料により構成されているため、金属端子と熱融着性樹脂層との界面において、密着性が低下しやすい。
【0005】
このため、金属端子と熱融着性樹脂層との間には、これらの密着性を高めることなどを目的として、接着性フィルムが配されることがある。このような接着性フィルムとしては、例えば特許文献1に記載されたものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-79638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、蓄電デバイスの高容量化に伴い、金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に配される接着性フィルムの厚みが大きくなる傾向にある。接着性フィルムの厚みが大きくなるに伴い、金属端子と蓄電デバイス用外装材とを接着性フィルムを介して熱融着させる際に、より高温、高圧、長時間のシール条件が採用される傾向にある。
【0008】
また、接着性フィルムを金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に位置精度高く配置するために、接着性フィルムに着色層を設ける場合がある。
【0009】
本開示の発明者が検討したところ、接着性フィルムのシール時に加わる熱量が大きくなると、接着性フィルムの着色層が流出し、接着性フィルムの位置をセンサなどによって精度高く配置することが困難になる場合があることを見出した。
【0010】
本開示は、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、着色層を備える金属端子用接着性フィルムであって、シール時の加熱による着色層の流出が抑制される、金属端子用接着性フィルムを提供することを主な目的とする。さらに、本開示は、当該金属端子用接着性フィルムの製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と当該金属端子用接着性フィルムを備えるキット、蓄電デバイス及び当該蓄電デバイスの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、少なくとも、蓄電デバイス用外装材側に配される第1層と、着色層と、前記金属端子側に配される第2層とをこの順に備える積層体から構成され、着色層の厚みが50μm以下である金属端子用接着性フィルムは、シール時の加熱による着色層の流出が抑制されることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0012】
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、
前記金属端子用接着性フィルムは、少なくとも、前記蓄電デバイス用外装材側に配される第1層と、着色層と、前記金属端子側に配される第2層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記着色層の厚みが50μm以下である、金属端子用接着性フィルム。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、着色層を備える金属端子用接着性フィルムであって、シール時の加熱による着色層の流出が抑制される、金属端子用接着性フィルムを提供することができる。金属端子用接着性フィルムのシール時の加熱による着色層の流出が抑制されることにより、例えば、金属端子用接着性フィルムを金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に位置精度高く配置することができる。さらに、本開示は、当該金属端子用接着性フィルムの製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と金属端子用接着性フィルムを備えるキット、並びに、蓄電デバイス及びその製造方法を提供することも目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の蓄電デバイスの略図的平面図である。
図2図1の線A-A'における略図的断面図である。
図3図1の線B-B'における略図的断面図である。
図4】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
図5】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
図6】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
図7】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
図8】本開示の蓄電デバイス用外装材の略図的断面図である。
図9】本開示の金属端子用接着性フィルムの水蒸気透過度の測定方法を説明するための模式図である。
図10】シール後の着色層の流れ量の測定方法を説明するための模式図(平面図)である。
図11】シール後の着色層の流れ量の測定方法を説明するための模式図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の金属端子用接着性フィルムは、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、金属端子用接着性フィルムは、少なくとも、蓄電デバイス用外装材側に配される第1層と、着色層と、金属端子側に配される第2層とをこの順に備える積層体から構成されており、着色層の厚みが50μm以下であることを特徴とする。
【0016】
本開示の金属端子用接着性フィルムは、このような特徴を備えていることから、シール時の加熱による着色層の流出が抑制される。金属端子用接着性フィルムのシール時の加熱による着色層の流出が抑制されることにより、例えば、金属端子用接着性フィルムを金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に位置精度高く配置することができる。
【0017】
また、本開示の蓄電デバイスは、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、蓄電デバイス用外装材の外側に突出した金属端子とを備える蓄電デバイスであって、金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に、本開示の金属端子用接着性フィルムが介在されてなることを特徴とする。
【0018】
以下、本開示の金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス及びその製造方法について詳述する。
【0019】
なお、本明細書において、数値範囲については、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、別個に記載された、上限値と上限値、上限値と下限値、又は下限値と下限値を組み合わせて、それぞれ、数値範囲としてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0020】
また、金属端子用接着性フィルムのMDの確認方法として、金属端子用接着性フィルムの断面を電子顕微鏡で観察し海島構造を確認する方法がある。当該方法においては、金属端子用接着性フィルムの厚み方向に対して垂直な方向の島の形状の径の平均が最大であった断面と平行な方向を、MDと判断することができる。具体的には、金属端子用接着性フィルムの長さ方向の断面と、当該長さ方向の断面と平行な方向から10度ずつ角度を変更し、長さ方向の断面に対して垂直な方向までの各断面(合計10の断面)について、それぞれ、電子顕微鏡写真で観察して海島構造を確認する。次に、各断面において、それぞれ、個々の島の形状を観察する。個々の島の形状について、金属端子用接着性フィルムの厚み方向に対して垂直方向の最左端と、当該垂直方向の最右端とを結ぶ直線距離を径yとする。各断面において、島の形状の当該径yが大きい順に上位20個の径yの平均を算出する。島の形状の当該径yの平均が最も大きかった断面と平行な方向をMDと判断する。また、例えば、150℃環境下に金属端子用接着性フィルムを2分間放置した後の熱収縮率を測定し、収縮率がより大きい方をMDと判断することもできる。
【0021】
1.金属端子用接着性フィルム
本開示の金属端子用接着性フィルムは、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在されるものである。具体的には、例えば図1から図3に示されるように、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、蓄電デバイス素子4の電極に電気的に接続されている金属端子2と、蓄電デバイス素子4を封止する蓄電デバイス用外装材3との間に介在されている。また、金属端子2は、蓄電デバイス用外装材3の外側に突出しており、ヒートシールされた蓄電デバイス用外装材3の周縁部3aにおいて、金属端子用接着性フィルム1を介して、蓄電デバイス用外装材3に挟持されている。
【0022】
なお、本開示において、金属端子用接着性フィルムの金属端子への仮接着工程は、例えば、温度140~160℃程度、圧力0.01~1.0MPa程度、時間3~15秒間程度、回数3~6回程度の条件で行われ、本接着工程は、例えば、温度160~240℃程度、圧力0.01~1.0MPa程度、時間3~15秒間程度、回数1~3回程度の条件で行われる。また、蓄電デバイス用外装材に金属端子用接着性フィルム付き金属端子を介在させてヒートシールする際の加熱温度としては、通常180~210℃程度の範囲、圧力としては、通常1.0~5.0MPa程度、時間1~5秒間程度、回数1回程度の条件で行われる。
【0023】
本開示の金属端子用接着性フィルム1(以下、単に「接着性フィルム」と表記することがある。)は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との密着性を高めるために設けられている。金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との密着性が高められることにより、蓄電デバイス素子4の密封性が向上する。上述のとおり、蓄電デバイス素子4をヒートシールする際には、蓄電デバイス素子4の電極に電気的に接続された金属端子2が蓄電デバイス用外装材3の外側に突出するようにして、蓄電デバイス素子が封止される。このとき、金属により形成された金属端子2と、蓄電デバイス用外装材3の最内層に位置する熱融着性樹脂層35(ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂により形成された層)とは異種材料により形成されているため、このような接着性フィルムを用いない場合には、金属端子2と熱融着性樹脂層35との界面において、蓄電デバイス素子の密封性が低くなりやすい。
【0024】
[着色層11]
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、少なくとも、蓄電デバイス用外装材側に配される第1層と、着色層と、金属端子側に配される第2層とをこの順に備える。着色層の厚みは50μm以下である。
【0025】
より具体的には、図4から図7に示すように、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、第1層12aと第2層12bとの間に、少なくとも1層の着色層11を含む。すなわち、着色層11は、金属端子用接着性フィルム1の表面を構成しない層である。金属端子用接着性フィルム1は3~6層構成であることが好ましい。図4には、蓄電デバイス用外装材3側に位置する第1層12a、着色層11、及び金属端子2側に位置する第2層12bがこの順に積層された3層構成の金属端子用接着性フィルム1の積層構成を示している。また、図6には、蓄電デバイス用外装材3側に位置する第1層12a、第3層12c、着色層11、第4層12d、及び金属端子2側に位置する第2層12bがこの順に積層された5層構成の金属端子用接着性フィルム1の積層構成を示している。図7には、蓄電デバイス用外装材3側に位置する第1層12a、着色層11、基材14、及び金属端子2側に位置する第2層12bがこの順に積層された4層構成の金属端子用接着性フィルム1の積層構成を示している。図4及び図5に示された金属端子用接着性フィルム1では、着色層11が基材14を構成する態様を示している。また、図7には、着色層11とは別に基材14が積層された態様を示している。なお、図5には、後述のように、着色層11と第1層12a、及び着色層11と第2層12bとを強固に接着することを目的として、接着促進剤層13を設けた積層構成を示している。
【0026】
本開示の効果をより好適に発揮する観点から、金属端子用接着性フィルムの厚みに対する金属端子用接着性フィルム1の着色層11の厚みの比率は、好ましくは約0.30以下、より好ましくは約0.25以下、さらに好ましくは約0.20以下であり、また、好ましくは約0.01以上、より好ましくは約0.03以上、さらに好ましくは約0.05以上であり、また、好ましい範囲としては、0.01~0.30程度、0.01~0.25程度、0.01~0.20程度、0.03~0.30程度、0.03~0.25程度、0.03~0.20程度、0.05~0.30程度、0.05~0.25程度、0.05~0.20程度が挙げられる。
【0027】
着色層11は、着色剤を含むポリオレフィン系樹脂により形成された層であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、より好ましくはポリプロピレンが挙げられる。着色層11は、好ましくは、着色剤を含むポリプロピレンにより形成された層である。ポリプロピレンの中でも、ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマーが好ましい。
【0028】
また、着色層11のポリオレフィンは、変性オレフィンを含んでいてもよく、変性オレフィンであってよい。変性ポリオレフィンとしては、酸変性ポリオレフィンが挙げられる。酸変性プロピレンとしては、酸変性されたポリオレフィンであれば特に制限されないが、好ましくは不飽和カルボン酸またはその無水物でグラフト変性されたポリオレフィンが挙げられる。酸変性されるポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、より好ましくはポリプロピレンが挙げられる。
【0029】
着色層11は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。
【0030】
酸変性に使用されるカルボン酸またはその無水物としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。無水マレイン酸を含む樹脂層は、赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。着色層11が無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0031】
着色層11は、着色された層である。着色層11は、例えば、着色剤を含むことにより着色することができる。着色剤としては特に制限されず、樹脂層を着色できる着色剤が好適に使用できる。着色層11は、黒色であることが好ましい。
【0032】
着色剤としては特に制限されず、樹脂層を着色できる着色剤が好適に使用できる。着色剤の具体例としては、顔料が挙げられる。顔料としては、無機系又は有機系の各種顔料を用いることができる。顔料の具体例としては、前述の充填剤で例示した炭素(カーボン、グラファイト)、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムの他、窒化チタン、ジルコニアブラック、酸化銅、酸化コバルト、硫酸バリウムなどの無機酸化物、また、キナクリドン系顔料、ポリアゾ系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機系顔料が好ましく例示できる。炭素(カーボン、グラファイト)は、一般に蓄電デバイスの内部に使用されている材料であり、電解液に対する溶出の虞がない。また、着色効果が大きく接着性を阻害しない程度の添加量で充分な着色効果を得られると共に、熱で溶融することがなく、添加した樹脂の見かけの溶融粘度を高くすることができる。さらに、熱接着時(ヒートシール時)に加圧部が薄肉となることを防止して、蓄電デバイス用外装材と金属端子の間における優れた密封性を付与できる。
【0033】
着色層11の色は特に制限されず、目的に応じて選択することができる。着色層11は、例えば、黒色、灰色、又は白色であることが好ましい。
【0034】
着色層11に顔料を添加する場合、その添加量としては、たとえば、粒径が約0.03μmのカーボンブラックを使用した場合、着色層11を形成する樹脂成分100質量部に対して、それぞれ、0.05~0.3質量部程度、好ましくは0.1~0.2質量部程度が挙げられる。着色層11に顔料を添加することにより、金属端子用接着性フィルム1の有無をセンサで検知可能なもの、または目視で検査可能なものとすることができる。なお、着色層11に前述の充填剤と顔料とを添加する場合、同一の着色層11に充填剤と顔料を添加してもよいが、金属端子用接着性フィルム1の熱融着性を阻害しない観点からは、充填剤及び顔料は、複数の層に分けて添加することが好ましい。
【0035】
着色層11に顔料を添加する場合、その添加量としては、たとえば、粒径が約0.03μmのカーボンブラックを使用した場合、着色層11を形成する樹脂成分100質量部に対して、それぞれ、0.05~0.3質量部程度、好ましくは0.1~0.2質量部程度が挙げられる。着色層11に顔料を添加することにより、金属端子用接着性フィルム1の有無をセンサで検知可能なもの、または目視で検査可能なものとすることができる。なお、着色層11に後述の充填剤と顔料とを添加する場合、同一の着色層11に充填剤と顔料を添加してもよいが、金属端子用接着性フィルム1の熱融着性を阻害しない観点からは、充填剤及び顔料は、異なる層(例えば、着色層11の他、後述の第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12d、基材14など)に分けて添加することが好ましい。
【0036】
また、本開示の金属端子用接着性フィルム1において、着色層11の厚さは50μm以下であればよいが、本開示の効果をより好適に奏する観点から、着色層11の厚さは、好ましくは約45μm以下、好ましくは約40μm以下、より好ましくは約35μm以下、さらに好ましくは約30μm以下であり、また、好ましくは約3μm以上、より好ましくは約5μm以上、さらに好ましくは約10μm以上であり、好ましい範囲としては、好ましくは3~50μm程度、3~45μm程度、3~40μm程度、3~35μm程度、3~30μm程度、5~50μm程度、5~45μm程度、5~40μm程度、5~35μm程度、5~30μm程度、10~50μm程度、10~45μm程度、10~40μm程度、10~35μm程度、10~30μm程度が挙げられる。
【0037】
また、本開示の効果をより好適に奏する観点から、着色層11の軟化点は、後述する第2層12bの軟化点よりも高いことが好ましい。着色層11の軟化点は、好ましくは約95℃以上、より好ましくは約100℃以上、さらに好ましくは約105℃以上であり、また、好ましくは約140℃以下、より好ましくは約130℃以下、さらに好ましくは約120℃以下であり、好ましい範囲としては、95~140℃程度、95~130℃程度、95~120℃程度、100~140℃程度、100~130℃程度、100~120℃程度、105~140℃程度、105~130℃程度、105~120℃程度が挙げられる。本開示において、軟化点の測定方法は、以下の通りである。
【0038】
<軟化点の測定>
市販の軟化点測定装置を用いる。測定前に、下記の工程によりキャリブレーションを行う。標準試料は、軟化点が公知であるポリカプロラクトン(軟化点:55℃)、ポリエチレン(軟化点:116℃)、ポリエチレンテレフタレート(軟化点:235℃)である。各標準試料の表面にサーマルプローブを接触させながら加熱した。加熱中に、サーマルプローブ直下の熱膨張を計測し、Voltage(電位)に対するDeflection(変位)を表すグラフを取得する。装置で設定する測定条件は以下の通りとする。
測定開始温度:0.1V
測定終了温度:10V
昇温速度:0.2V/sec
各標準試料の軟化点を用い、電位に対するサーマルプローブの変位を表すグラフを温度に対する変位のグラフに変換する。キャリブレーション後、樹脂に包埋後ダイヤモンドナイフ等で形成した試料断面の測定部位にサーマルプローブを接触させる。その後、サーマルプローブを接触させた状態で、下記条件で加熱し、温度に対するサーマルプローブの変位を表すグラフ(熱膨張カーブ)を取得する。
測定開始温度:40℃
測定終了温度:350℃
昇温速度:5℃/sec
得られた熱膨張カーブにおいて、カーブの頂点となる時の温度を取得する。任意の5箇所について上記測定を行う。得られた温度の平均値を、軟化点とする。
【0039】
また、本開示の効果をより好適に奏する観点から、着色層11の融解ピーク温度は、好ましくは約135℃以上、より好ましくは約145℃以上、さらに好ましくは約155℃以上である。同様の観点から、当該融解ピーク温度は、例えば180℃以下、好ましくは175℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは約165℃以下である。当該融解ピーク温度の好ましい範囲としては、135~180℃程度、135~175℃程度、135~170℃程度、135~165℃程度、145~180℃程度、145~175℃程度、145~170℃程度、145~165℃程度、155~180℃程度、155~175℃程度、155~170℃程度、155~165℃程度が挙げられる。本開示において、融解ピーク温度の測定方法は、以下の通りである。
【0040】
<融解ピーク温度の測定>
接着性フィルムについて、JIS K7121:2012(プラスチックの転移温度測定方法(JIS K7121:1987の追補1))の規定に準拠して融解ピーク温度を測定する。測定は、示差走査熱量計を用いて行う。測定サンプルを、-50℃で15分間保持した後、10℃/分の昇温速度で-50℃から210℃まで昇温させて、1回目の融解ピーク温度P(℃)を測定した後、210℃にて10分間保持する。次に、10℃/分の降温速度で210℃から-50℃まで降温させて15分間保持する。さらに、10℃/分の昇温速度で-50℃から210℃まで昇温させて2回目の融解ピーク温度Q(℃)を測定する。なお、窒素ガスの流量は50ml/分とする。以上の手順によって、1回目に測定される融解ピーク温度P(℃)と、2回目に測定される融解ピーク温度Q(℃)を求める。以上の手順によって、1回目に測定される融解ピーク温度P(℃)の値を採用する。
【0041】
本開示の効果をより好適に発揮する観点から、着色層11の海島構造の島部比率は、好ましくは約30%以下、より好ましくは約25%以下、さらに好ましくは約20%以下であり、また、好ましくは約0%以上、より好ましくは約5%以上、さらに好ましくは約10%以上であり、好ましい範囲としては、0~30%程度、0~25%程度、0~20%程度、5~30%程度、5~25%程度、5~20%程度、10~30%程度、10~25%程度、10~20%程度が挙げられる。着色層11の海島構造の島部比率は、例えば、ポリプロピレンフィルム中のポリエチレンの含有率、重合形式(ホモ、ブロック、又はランダム)、成膜条件(成膜時の温度及び速度、冷却温度及び速度など)を制御することができる。着色層11の海島構造の島部比率は、以下の方法により測定した値である。
【0042】
<着色層11の海島構造の島部比率の測定>
熱硬化性のエポキシ樹脂内に接着性フィルムを包埋し硬化させる。市販品の回転式ミクロトームと、ダイヤモンドナイフを用いて目的とする方向の断面(TDに平行な方向かつ厚みの方向の断面)を作製し、その際、液体窒素を用いたクライオミクロトームにて、-70℃にて断面作製を行う。包埋樹脂ごと四酸化ルテニウムにて12時間後、膨張部分をミクロトームでトリミングし、MDの方向に向かって100nmから300nmずつ切り進め、合計で1μmから2μmほど切断したところで、着色層の露出している断面を次のようにして観察する。染色した断面について、電界放出形走査型電子顕微鏡(測定条件:3kV 20mA High WD6mm 検出器(Upper))で観測して画像(倍率は10000倍)を取得する。次に、画像を二値化できる画像処理ソフトを用い、当該画像について、海島構造の島の部分と海の部分とを二値化して、島の部分の合計面積の割合(島の部分の合計面積/画像の測定範囲の面積)を求める。
【0043】
[画像処理条件]
画像処理は、画像解析ソフトImageJを用いて行う。具体的には、SEM画像をグレースケール画像(JPEG)のデジタルファイルとして取得し、下記の二値化処理手順とパラメーターに沿って処理を行い、閾値以上の階調(明るい)のピクセルを1、閾値未満の階調(暗い)のピクセルを0として出力し、各々を島部、海部と規定する。
<二値化処理>
1.スパイクノイズ除去 (Despeckle)
2.島部の輪郭除去 (Remove Outliers radius=4 threshold=1 which=Bright)
3.海部の輪郭除去 (Remove Outliers radius=4 threshold=1 which=Dark)
4.スパイクノイズ除去 (Despeckle)
5.X軸(サンプル短手)方向にガウスぼかし (閾値 = 3ピクセル)
6.コントラスト強調 (saturated = 0.2)
7.島部の輪郭除去 (Remove Outliers radius=4 threshold=1 which=Bright)
8.海部の輪郭除去 (Remove Outliers radius=4 threshold=1 which=Dark)
9.大津の二値化
【0044】
本開示の効果をより好適に発揮する観点から、着色層11は、金属端子用接着性フィルム1を温度200℃、面圧0.25MPa、16秒間の条件で加熱した後、温度40℃環境において、パルスNMRを用いたSolid Echo法によって測定される、ソフトセグメント成分の比率が、好ましくは約35%以下、より好ましくは約30%以下、さらに好ましくは約25%以下であり、また、好ましくは約4%以上、好ましくは約5%以上、より好ましくは約10%以上、さらに好ましくは約15%以上であり、好ましい範囲としては、4~35%程度、4~30%程度、4~25%程度、5~35%程度、5~30%程度、5~25%程度、10~35%程度、10~30%程度、10~25%程度、15~35%程度、15~30%程度、15~25%程度が挙げられる。接着性フィルム1の加熱後のソフトセグメント成分の比率は、例えば、ポリプロピレンフィルム中のポリエチレンの含有率、重合形式(ホモ、ブロック、又はランダム)、成膜条件(成膜時の温度及び速度、冷却温度及び速度など)を制御することができる。接着性フィルム1の加熱後のソフトセグメント成分の比率の測定方法は、以下の通りである。
【0045】
<接着性フィルムの加熱後のソフトセグメント成分の比率の測定>
接着性フィルムを温度200℃、面圧0.25MPa、16秒間の条件で加熱する。この加熱処理は、接着性フィルムが蓄電デバイス用外装材と金属端子との間に配され、熱融着された後の物性を想定した加熱である。金属端子用接着性フィルム1を直径10mmのガラス製のサンプル管に導入し、サンプル管をパルスNMR装置に設置して40℃で5分間保持した後、40℃でSolid Echo法で1Hのスピン-スピン緩和の自由誘導減衰曲線を得る。Solid Echo法におけるScan回数は64回に設定した。得られた減衰曲線を、ハードセグメント成分、中間セグメント成分、ソフトセグメント成分の3成分に由来する3つの曲線に波形分離する。波形分離は、BRUKER社製の解析ソフトウェア「TD-NMRA(Version 4.3 Rev 0.8)」を用いて、ハードセグメント成分はガウシアン型、中間セグメント成分及びソフトセグメント成分はエクスポーネンシャル型を関数としてフィッティングすることで得られる。解析には緩和曲線の0.6msecまでの測定点を用いる。フィッティングには以下の式を用いる。
Y=A1×exp(-(t/τ1w1)+A2×exp(-(t/τ2w2)+A3×exp(-(t/τ3w3
ここで、w1~w3はワイブル係数であり、w1は2、w2及びw3は1の値を取る。A1はハードセグメント成分の、A2は中間セグメント成分、A3はソフトセグメント成分のそれぞれ成分比であり、τ1はハードセグメント成分の、τ2は中間セグメント成分の、τ3はソフトセグメント成分のそれぞれ緩和時間を示す。tは時間である。成分比A1、A2、A3は同一水準の測定を3回実施した平均値を採用した。
【0046】
着色層11には、必要に応じて、公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0047】
例えば、着色層11は、必要に応じて充填剤を含んでいてもよい。着色層11が充填剤を含むことにより、充填剤がスペーサー(Spacer)として機能するために、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3のバリア層33との間の短絡を効果的に抑制することが可能となる。充填剤の粒径としては、0.1~35μm程度、好ましくは5.0~30μm程度、さらに好ましくは10~25μm程度の範囲が挙げられる。また、充填剤の含有量としては、着色層11を形成する樹脂成分100質量部に対して、それぞれ、5~30質量部程度、より好ましくは10~20質量部程度が挙げられる。
【0048】
充填剤としては、無機系、有機系のいずれも用いることができる。無機系充填剤としては、例えば、炭素(カーボン、グラファイト)、シリカ、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、シリコンカーバイド、酸化ジルコニウム、珪酸ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、有機系充填剤としては、例えば、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル架橋物、ポリエチレン架橋物等が挙げられる。形状の安定性、剛性、内容物耐性の点から、酸化アルミニウム、シリカ、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物が好ましく、特にこの中でも球状の酸化アルミニウム、シリカがより好ましい。着色層11を形成する樹脂成分への充填剤の混合方法としては、予めバンバリーミキサー等で両者をメルトブレンドし、マスターバッチ化したものを所定の混合比にする方法、樹脂成分との直接混合方法などを採用することができる。
【0049】
前記の通り、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、例えば図4から図7に示すように、少なくとも、第1層12aと、着色層11と、第2層12bとがこの順に積層された構成とすることができる。当該構成において、第1層12aが蓄電デバイス用外装材3側に配置され、第2層12bが金属端子2側に配置される。着色層11は、第1層12aと第2層12bとの間に配置され、基材14又は中間層を構成することができる。図4から図7の積層構成において、両面側の表面に、それぞれ第1層12a及び第2層12bが位置している。また、図6の積層構成においては、第1層12aと着色層11との間に第3層12cを備え、着色層11と第2層12bとの間に第4層12dを備えている。本開示の金属端子用接着性フィルム1は、3層から6層で構成されていることが好ましく、少なくとも、蓄電デバイス用外装材3側の表面を構成する第1層12aと、金属端子2側の表面を構成する第2層12bと、第1層12aと第2層12bの間に位置する着色層11とを備える。
【0050】
蓄電デバイス10の金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に、本開示の金属端子用接着性フィルム1が配置されると、金属により構成された金属端子2の表面と、蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35(ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂により形成された層)とが、金属端子用接着性フィルム1を介して接着される。金属端子用接着性フィルム1の第1層12aが蓄電デバイス用外装材3側に配置され、第2層12bが金属端子2側に配置され、第1層12aが蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35と密着し、第2層12bが金属端子2と密着する。第1層12aは単層であっても複層であってよい。また、第2層12bは単層であってもよいし複層であってもよい。
【0051】
金属端子用接着性フィルム1に含まれ得る、第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどは、それぞれ、例えば、樹脂フィルムにより形成することができる。第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどをそれぞれ樹脂フィルムにより形成する場合、第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどを着色層11などと積層して本開示の金属端子用接着性フィルム1を製造する際に、予め形成された樹脂フィルムを、それぞれ、第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどとして用いてもよい。また、第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどを形成する樹脂を、それぞれ、押出成形や塗布などによって着色層11などの表面上でフィルム化して、樹脂フィルムにより形成された第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどとしてもよい。
【0052】
金属端子用接着性フィルム1に含まれ得る、第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどは、それぞれ、樹脂により構成することができる。第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどを構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリカーボネート及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられ、これらの中でも、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、より好ましくはポリプロピレンが挙げられる。
【0053】
蓄電デバイス用外装材3側に配置される第1層12aは、ポリオレフィンを主成分として含んでいることがより好ましく、ポリプロピレンを主成分として含んでいることがさらに好ましい。ここで、主成分とは、第1層12aに含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、第1層12aがポリプロピレンを主成分として含むとは、第1層12aに含まれる樹脂成分のうち、ポリプロピレンの含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0054】
また、金属端子2側に配置される第2層12bは、酸変性ポリオレフィンを主成分として含んでいることがより好ましく、酸変性ポリプロピレンを主成分として含んでいることがさらに好ましい。ここで、主成分とは、第2層12bに含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、第2層12bが酸変性ポリプロピレンを主成分として含むとは、第2層12bに含まれる樹脂成分のうち、酸変性ポリプロピレンの含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0055】
第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどの融解ピーク温度は、それぞれ、好ましくは125℃以上、より好ましくは約130℃以上、さらに好ましくは約135℃以上である。当該融解ピーク温度は、例えば180℃以下、好ましくは175℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは約165℃以下、さらに好ましくは約160℃以下である。当該融解ピーク温度の好ましい範囲としては、125~180℃程度、125~175℃程度、125~170℃程度、125~165℃程度、125~160℃程度、130~180℃程度、130~175℃程度、130~170℃程度、130~165℃程度、130~160℃程度、135~180℃程度、135~175℃程度、135~170℃程度、135~165℃程度、135~160℃程度が挙げられる。
【0056】
第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどの軟化点は、好ましくは約70℃以上、より好ましくは約75℃以上、さらに好ましくは約80℃以上であり、また、好ましくは約130℃以下、より好ましくは約120℃以下、さらに好ましくは約110℃以下であり、好ましい範囲としては、70~130℃程度、70~120℃程度、70~110℃程度、75~130℃程度、75~120℃程度、75~110℃程度、80~130℃程度、80~120℃程度、80~110℃程度が挙げられる。特に、第2層12bの軟化点は、着色層11の軟化点よりも低いことが好ましく、好ましくは約70℃以上、より好ましくは約75℃以上、さらに好ましくは約80℃以上であり、また、好ましくは約120℃以下、より好ましくは約110℃以下、さらに好ましくは約100℃以下であり、好ましい範囲としては、70~120℃程度、70~110℃程度、70~100℃程度、75~120℃程度、75~110℃程度、75~100℃程度、80~120℃程度、80~110℃程度、80~100℃程度が挙げられる。
【0057】
また、第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどの厚さは、それぞれ、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上であり、また、好ましくは約120μm以下、より好ましくは約100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。当該樹脂層Bの厚さの好ましい範囲としては、10~120μm程度、10~100μm程度、10~80μm程度、15~120μm程度、15~100μm程度、15~80μm程度、20~120μm程度、20~100μm程度、20~80μm程度が挙げられる。
【0058】
なお、第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどには、着色層11と同様、公知の添加剤(前述の充填剤、顔料など)が含まれていてもよい。充填剤、顔料の種類や添加量については、着色層11と同様である。
【0059】
本開示の効果をより好適に奏する観点から、金属端子用接着性フィルム1の総厚みとしては、例えば約50μm以上、好ましくは約80μm以上、より好ましくは約90μm以上、さらに好ましくは約100μm以上である。また、本開示の金属端子用接着性フィルム1の総厚みは、約500μm以下、好ましくは約300μm以下、より好ましくは約250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。本開示の金属端子用接着性フィルム1の総厚みの好ましい範囲としては、50~500μm程度、50~300μm程度、50~250μm程度、50~200μm程度、80~500μm程度、80~300μm程度、80~250μm程度、80~200μm程度、90~500μm程度、90~300μm程度、90~250μm程度、90~200μm程度、100~500μm程度、100~300μm程度、100~250μm程度、100~200μm程度が挙げられる。より具体的な例としては、例えば、本開示の金属端子用接着性フィルム1を携帯電話、スマートフォン、タブレット用の比較的小型の蓄電デバイスに使用する場合には、総厚みは60~100μm程度とすることが好ましく、電力貯蔵システム、車載用の比較的大型の蓄電デバイスに使用する場合には、総厚みは100~300μm程度とすることが好ましい。
【0060】
また、本開示の効果をより好適に発揮する観点から、本開示の金属端子用接着性フィルム1を温度200℃、面圧0.25MPa、16秒間の条件で加熱した後に測定される融解熱は、好ましくは約50J/g以上、より好ましくは約55J/g以上、さらに好ましくは約60J/g以上であり、さらに好ましくは65J/g以上であり、また、好ましくは約100J/g以下、より好ましくは約90J/g以下、さらに好ましくは約80J/g以下であり、好ましい範囲としては、50~100J/g程度、50~90J/g程度、50~80J/g程度、55~100J/g程度、55~90J/g程度、55~80J/g程度、60~100J/g程度、60~90J/g程度、60~80J/g程度、65~100J/g程度、65~90J/g程度、65~80J/g程度80~100程度が挙げられる。接着性フィルムの加熱後の融解熱は、着色層11を構成するポリプロピレンフィルム中のポリエチレンの含有率、重合形式(ホモ、ブロック、又はランダム)、成膜条件(成膜時の温度及び速度、冷却温度及び速度など)を制御することで調整できる。接着性フィルムの加熱後の融解熱の測定方法は、以下の通りである。
【0061】
<接着性フィルムの加熱後の融解熱の測定>
接着性フィルムを温度200℃、面圧0.25MPa、16秒間の条件で加熱する。この加熱処理は、接着性フィルムが蓄電デバイス用外装材と金属端子との間に配され、熱融着された後の物性を想定した加熱である。次に、JIS K 7122:2012の規定に準拠して融解熱を測定する。測定は、示差走査熱量計を用いて行う。金属端子用接着性フィルム1を、-50℃で15分間保持した後、10℃/分の昇温速度で-50℃から210℃まで昇温させて、1回目の融解熱ΔH(J/g)を測定した後、210℃にて10分間保持した。次に、10℃/分の降温速度で210℃から-50℃まで降温させて15分間保持した。さらに、10℃/分の昇温速度で-50℃から210℃まで昇温させて2回目の融解熱ΔH(J/g)を測定する。なお、窒素ガスの流量は50ml/分とする。以上の手順によって、1回目に測定される融解熱ΔH(J/g)の値を融解熱として採用する。融解熱は、DSC曲線において、ベースライン(ベースからベースへの稜線の開始点と終了点を結んで形成された線)とピークで囲まれた面積とする。
【0062】
また、本開示の効果をより好適に発揮する観点から、本開示の金属端子用接着性フィルム1の水蒸気透過度は、好ましくは約5.10g・mm/(m2・day)以下、より好ましくは約4.50g・mm/(m2・day)以下、さらに好ましくは約4.30g・mm/(m2・day)以下、さらに好ましくは約4.10g・mm/(m2・day)以下であり、また、例えば約2.0g・mm/(m2・day)以上、約0g・mm/(m2・day)以上であり、好ましい範囲としては、0~5.10g・mm/(m2・day)程度、0~4.50g・mm/(m2・day)程度、0~4.30g・mm/(m2・day)程度、0~4.10g・mm/(m2・day)程度、2.0~5.10g・mm/(m2・day)程度、2.0~4.50g・mm/(m2・day)程度、2.0~4.30g・mm/(m2・day)程度、2.0~4.10g・mm/(m2・day)程度が挙げられる。接着性フィルムの水蒸気透過度の測定方法は、以下の通りである。
【0063】
<接着性フィルムの水蒸気透過度の測定>
まず、次の手順により、蓄電デバイス用外装材(以下、単に「外装材」と表記することがある)を用意する。例えば、基材層として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)及び延伸ナイロン(ONy)フィルム(厚さ15μm)を用意した。PETフィルムとONyフィルムとを、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を用いて接着し、エージング処理を実施することにより、PETフィルム(厚さ12μm)/接着剤層(硬化後の厚みは3μm)/ONyフィルム(厚さ15μm)が外側から順に積層された基材層(厚さ30μm)を得た。また、バリア層として、アルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H-O(厚さ40μm))を用意した。次に、基材層のONyフィルム側の表面と、バリア層とを、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を用いて接着し、エージング処理を実施することにより、基材層(厚み30μm)/接着剤層(硬化後の厚みは3μm)/バリア層(厚み40μm)の積層体が順に積層された、バリア層より内側を欠く擬似的な蓄電デバイス用外装材(総厚み73μm)を得る。
【0064】
次に、図9の模式図に示すように、得られた外装材3を、縦(MD)120mm、横(TD)120mmの正方形に裁断する(図9a)。また、接着性フィルム1を縦(MD)120mm、横(TD)10mmの長方形に裁断した2枚と、縦(MD)100mm、横(TD)10mmの長方形に裁断した2枚とを準備する。外装材3のバリア層側の上に、外装材3の周辺に沿って、縦の長さが同じ接着性フィルムを対向に配置する(図9b)。このとき、接着性フィルムの第2層側が、外装材3のバリア層側になるようにする。次に、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム、厚さ100μm)を、当該積層体の接着性フィルムの上に置き(PTFEフィルムで接着性フィルムの表面を覆い)、シリコンシート/PTFE/当該積層体/PTFE/シリコーンスポンジシートの状態で、200℃に加熱されたプレス機上に載置すると共に、圧力0.25MPaの条件で、16秒間静置して、接着性フィルムを外装材3に熱融着させる。熱融着後の積層体を25℃まで自然冷却し、積層体からPTFEフィルムをはがす。この加熱処理は、接着性フィルムが蓄電デバイス用外装材と金属端子との間に配され、熱融着された後の物性を想定した加熱である。次に、接着性フィルムが内側になるようにして、外装材3を縦方向に半分に折り曲げる(図9c)。縦(MD)120mmの金属端子用接着性フィルムは、後述のヒートシールされる長辺に沿って外装材3の間に2枚重ねて配置され、縦(MD)100mmの金属端子用接着性フィルムは、後述のヒートシールされる短辺に沿って外装材3の間に半分に折り曲げて配置される。外装材3の周辺部は、外装材/接着性フィルム/接着性フィルム/外装材が順に積層された積層体となる(図9c)。
【0065】
次に、ヒートシールバー(ステンレス鋼板)を用い、積層体の長辺と短辺の位置において、積層体の各層間を熱融着させて、1つの短辺が熱融着されていない袋状とする(図9c)。熱融着の条件は、長辺については、幅7mmのヒートシールバーを用い、温度190℃、面圧0.5MPa、1.5秒間、1回ヒートシールする(図9cのs1)。また、短辺については、幅7mmのヒートシールバーを用い、温度190℃、面圧0.5MPa、1.5秒間の条件で1回ヒートシールする(図9cのs2)。ドライルーム内にて1日乾燥させる。次に、熱融着されていない短辺の位置から、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(容積比)の液(水分率0%)を約3.0g注入し(図9d)、熱融着されていない短辺についても、前記の短辺と同様にヒートシールして(図9eのs3)密封袋とする(図9e)。この密封袋を、温度65℃、相対湿度90%の環境で30日間静置した後、ドライルーム内にて、密封袋から取り出した液の水分率をカールフィッシャー法により測定して含有水分(ppm)を得る。得られた含有水分から投入した電解液量(g)、透過距離(mm)、透過断面積(m2)、保管日数(day)から計算し、水蒸気透過度(g・mm/(m2・day))を求める。
水蒸気透過度(g・mm/(m2・day))=[得られた含有水分(ppm)×投入した電解液(g)×透過距離(mm)]/[透過断面積(m2)×保管日数(day)]
・得られた含有水分(ppm):カールフィッシャー法より得られる。
・投入した電解液(g):3.0g
・透過距離(mm):シール幅7mm
・透過断面積(m2):残存厚み(μm)×シール内側周囲200(mm)
・保管日数(day):30日
【0066】
また、本開示の金属端子用接着性フィルムの熱収縮率(試験後の長さN/試験前の長さM)は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であり、好ましい範囲としては、85~100%程度、90~100%程度、95~100%程度が挙げられる。熱収縮率が高い(熱収縮しにくい)ほど、金属タブとのシール時の寸法変化が少なく、寸法精度の高いタブリードを生産することができる。例えば、後述の基材14を形成する樹脂として、ポリエチレンナフタレートなどのを用いると、接着性フィルムの熱収縮率を高くすることができる。熱収縮率の測定方法は、以下の通りである。
【0067】
<接着性フィルムの熱収縮率の測定>
接着性フィルムを長さ120mm(MD)×120mm(TD)のサイズに切り出して試験片とする。次に、金尺にて試験片の長さM(mm)を計測する。次に、試験片のMD方向の端部を金網にテープで固定し、試験片を金網から吊るした状態にする。この状態で、175℃に加熱されたオーブン内に30分置いた後、試験片を金網ごと取出して、室温(25℃)環境で自然冷却する。次に、室温まで自然冷却した試験片の長さN(mm)を金尺にて測定する。下の式により、金属端子用接着性フィルムの熱収縮率を算出し、n3の平均値を測定結果とする。
熱収縮率(%)=(試験後の長さN/試験前の長さM)×100
【0068】
[基材14]
金属端子用接着性フィルム1において、基材14は、金属端子用接着性フィルム1の支持体として機能する層であり、必要に応じて設けられる。例えば、着色層11を基材14とすることもできる。例えば、基材を中間層とする金属端子用接着性フィルム1の場合、この基材の巻取を予め準備しておき、押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、この巻取から巻き出された基材の表面にポリプロピレン等を所定の厚みで押出することで、多層構造の金属端子用接着性フィルム1を製造することができる。
【0069】
基材14は、前述の着色層11より形成されていてもよいし、前述の第1層12a、第2層12b、第3層12c、第4層12dなどにより形成されていてもよい。
【0070】
基材14は、例えば、樹脂フィルムにより形成することができる。基材14を樹脂フィルムにより形成する場合、基材14を第1層12aなどと積層して本開示の金属端子用接着性フィルム1を製造する際に、予め形成された樹脂フィルムを基材14として用いてもよい。また、基材14を形成する樹脂を、押出成形や塗布などによって第1層12aなどの表面上でフィルム化して、樹脂フィルムにより形成された基材14としてもよい。
【0071】
基材14を形成する素材については、特に制限されるものではない。基材14を形成する素材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリカーボネート及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられ、これらの中でも、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。すなわち、基材14を形成する素材は、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン骨格を含む樹脂が好ましい。基材14を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能である。
【0072】
基材14は、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィンを含むことが好ましく、ポリオレフィンにより形成された層であることがさらに好ましい。ポリオレフィンにより形成された層は、延伸ポリオレフィンフィルムであってもよいし、未延伸ポリオレフィンフィルムであってもよいが、未延伸ポリオレフィンフィルムであることが好ましい。ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、より好ましくはポリプロピレンが挙げられる。また、耐電解液性に優れることから、基材14は、ホモポリプロピレンを含むことが好ましく、ホモポリプロピレンにより形成されていることがより好ましく、未延伸ホモポリプロピレンフィルムであることがさらに好ましい。
【0073】
ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸-テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4'-ジフェニルメタン-ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
また、基材14は、上記の樹脂で形成された不織布により形成されていてもよい。基材14が不織布である場合、基材14は、前述のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂等で構成されていることが好ましい。
【0076】
基材14の融解ピーク温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは約130℃以上、さらに好ましくは約140℃以上である。同様の観点から、当該融解ピーク温度は、例えば270℃以下、好ましくは210℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましく190℃以下、さらに好ましくは約180℃以下、さらに好ましくは約170℃以下である。当該融解ピーク温度の好ましい範囲としては、120~270℃程度、120~210℃程度、120~200℃程度、120~190℃程度、120~180℃程度、120~170℃程度、130~270℃程度、130~210℃程度、130~200℃程度、130~190℃程度、130~180℃程度、130~170℃程度、140~270℃程度、140~210℃程度、140~200℃程度、140~190℃程度、140~180℃程度、140~170℃程度が挙げられる。
【0077】
基材14は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0078】
また、基材14に着色剤を配合することにより、基材14を、着色剤を含む層とすることもできる。ただし、この場合、厚みが50μm以下の着色層11とし、厚みが50μmを超える着色層が金属端子用接着性フィルム1に含まれないようにすることが望ましい。基材14は、透明度の低い樹脂を選択して、光透過度を調整することもできる。基材14がフィルムの場合は、着色フィルムを用いることや、透明度の低いフィルムを用いることもできる。また、基材14が不織布の場合は、着色剤を含む繊維やバインダーを用いた不織布や、透明度の低い不織布を用いることができる。
【0079】
基材14が樹脂フィルムにより構成されている場合、基材14の表面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等の公知の易接着手段が施されていてもよい。
【0080】
また、本開示の効果をより好適に奏する観点から、基材14の厚さは、好ましくは約20μm以上、より好ましくは約30μm以上、さらに好ましくは約40μm以上であり、また、好ましくは約120μm以下、より好ましくは約110μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。基材14の厚さの好ましい範囲としては、20~120μm程度、20~110μm程度、20~100μm程度、30~120μm程度、30~110μm程度、30~100μm程度、40~120μm程度、40~110μm程度、40~100μm程度が挙げられる。
【0081】
[接着促進剤層13]
接着促進剤層13は、例えば、着色層11と第1層12a、及び着色層11と第2層12bとを強固に接着することを目的として、必要に応じて設けられる層である(図7を参照)。接着促進剤層13は、着色層11と第1層12a及び第2層12bとの間の一方側のみに設けられていてもよいし、両側に設けられていてもよい。
【0082】
接着促進剤層13は、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリブタジエン系等の公知の接着促進剤を用いて形成することができる。強固な密着強度を得る観点からは、これらの中でも、イソシアネート系の接着促進剤により形成されていることが好ましい。イソシアネート系の接着促進剤としては、トリイソシアネートモノマー、ポリメリックMDIから選ばれたイソシアネート成分からなるものが、ラミネート強度に優れ、かつ、高温下でのラミネート強度の低下が少ない。特に、トリイソシアネートモノマーであるトリフェニルメタン-4,4',4"-トリイソシアネートやポリメリックMDIであるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(NCO含有率が約30%、粘度が200~700mPa・s)からなる接着促進剤によって形成することが特に好ましい。また、トリイソシアネートモノマーであるトリス(p-イソシアネートフェニル)チオホスフェートや、ポリエチレンイミン系を主剤とし、ポリカルボジイミドを架橋剤とした2液硬化型の接着促進剤により形成することも好ましい。
【0083】
接着促進剤層13は、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法等の公知の塗布法で塗布・乾燥することにより形成することができる。接着促進剤の塗布量としては、トリイソシアネートからなる接着促進剤の場合は、20~100mg/m2程度、好ましくは40~60mg/m2程度であり、ポリメリックMDIからなる接着促進剤の場合は、40~150mg/m2程度、好ましくは60~100mg/m2程度であり、ポリエチレンイミン系を主剤とし、ポリカルボジイミドを架橋剤とした2液硬化型の接着促進剤の場合は、5~50mg/m2程度、好ましくは10~30mg/m2程度である。なお、トリイソシアネートモノマーは、1分子中にイソシアネート基を3個持つモノマーであり、ポリメリックMDIは、MDIおよびMDIが重合したMDIオリゴマーの混合物であり、下記式で示されるものである。
【0084】
【化1】
【0085】
本発明の効果をより好適に奏する観点から、第1層12aと着色層11とが接面しており、かつ、第2層12bと着色層11とが接面していることが好ましい。
【0086】
本開示の金属端子用接着性フィルム1の好ましい積層構成の具体例としては、ポリプロピレンにより形成された第1層12a/ポリプロピレンにより形成された着色層11/酸変性ポリプロピレンにより形成された第2層12bがこの順に積層された3層構成;酸変性ポリプロピレンにより形成された第1層12a/ポリプロピレンにより形成された着色層11/酸変性ポリプロピレンにより形成された第2層12bがこの順に積層された3層構成、ポリプロピレンにより形成された第1層12a/ポリプロピレンにより形成された着色層11/ポリプロピレンにより形成された第3層12c/酸変性ポリプロピレンにより形成された第2層12bがこの順に積層された4層構成;酸変性ポリプロピレンにより形成された第1層12a/ポリプロピレンにより形成された着色層11/ポリプロピレンにより形成された第3層12c/酸変性ポリプロピレンにより形成された第2層12bがこの順に積層された4層構成などが挙げられる。
【0087】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、ポリオレフィン系樹脂により形成されていることが好ましい。例えば、本開示の金属端子用接着性フィルム1に含まれる樹脂成分は、ポリオレフィン系樹脂のみであることが好ましく、酸変性ポリオレフィンとポリオレフィンのみであることがより好ましく、酸変性ポリプロピレンとポリプロピレンのみであることがさらに好ましい。好ましい酸変性ポリオレフィン及びポリオレフィンについては、前述の通りである。
【0088】
金属端子用接着性フィルム1を金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に介在させる方法としては、特に制限されず、例えば、図1~3に示すように、金属端子2が蓄電デバイス用外装材3によって挟持される部分において、金属端子2に金属端子用接着性フィルム1を巻き付けてもよい。また、図示を省略するが、金属端子2が蓄電デバイス用外装材3によって挟持される部分において、金属端子用接着性フィルム1が2つの金属端子2を横断するようにして、金属端子2の両面側に配置されてもよい。
【0089】
[金属端子2]
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に介在させて使用される。金属端子2(タブ)は、蓄電デバイス素子4の電極(正極または負極)に電気的に接続される導電部材であり、金属材料により構成されている。金属端子2を構成する金属材料としては、特に制限されず、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅などが挙げられる。例えば、リチウムイオン蓄電デバイスの正極に接続される金属端子2は、通常、アルミニウムなどにより構成されている。また、リチウムイオン蓄電デバイスの負極に接続される金属端子2は、通常、銅、ニッケルなどにより構成されている。
【0090】
金属端子2の表面は、耐電解液性を高める観点から、化成処理が施されていることが好ましい。例えば、金属端子2がアルミニウムにより形成されている場合、化成処理の具体例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物などの耐食性皮膜を形成する公知の方法が挙げられる。耐食性皮膜を形成する方法の中でも、フェノール樹脂、フッ化クロム(III)化合物、リン酸の3成分から構成されたものを用いるリン酸クロメート処理が好適である。
【0091】
金属端子2の大きさは、使用される蓄電デバイスの大きさなどに応じて適宜設定すればよい。金属端子2の厚さとしては、好ましくは50~1000μm程度、より好ましくは70~800μm程度が挙げられる。また、金属端子2の長さとしては、好ましくは1~200mm程度、より好ましくは3~150mm程度が挙げられる。また、金属端子2の幅としては、好ましくは1~200mm程度、より好ましくは3~150mm程度が挙げられる。
【0092】
[蓄電デバイス用外装材3]
蓄電デバイス用外装材3としては、少なくとも、基材層31、バリア層33、及び熱融着性樹脂層35をこの順に有する積層体からなる積層構造を有するものが挙げられる。図8に、蓄電デバイス用外装材3の断面構造の一例として、基材層31、必要に応じて設けられる接着剤層32、バリア層33、必要に応じて設けられる接着層34、及び熱融着性樹脂層35がこの順に積層されている態様について示す。蓄電デバイス用外装材3においては、基材層31が外層側になり、熱融着性樹脂層35が最内層になる。蓄電デバイスの組み立て時に、蓄電デバイス素子4の周縁に位置する熱融着性樹脂層35同士を接面させて熱融着することにより蓄電デバイス素子4が密封され、蓄電デバイス素子4が封止される。なお、図1から図3には、エンボス成形などによって成形されたエンボスタイプの蓄電デバイス用外装材3を用いた場合の蓄電デバイス10を図示しているが、蓄電デバイス用外装材3は成形されていないパウチタイプであってもよい。なお、パウチタイプには、三方シール、四方シール、ピロータイプなどが存在するが、何れのタイプであってもよい。
【0093】
蓄電デバイス用外装材3を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、上限については、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、例えば約190μm以下、好ましくは約180μm以下、約160μm以下、約155μm以下、約140μm以下、約130μm以下、約120μm以下が挙げられ、下限については、蓄電デバイス素子4を保護するという蓄電デバイス用外装材3の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上、約80μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、35~190μm程度、35~180μm程度、35~160μm程度、35~155μm程度、35~140μm程度、35~130μm程度、35~120μm程度、45~190μm程度、45~180μm程度、45~160μm程度、45~155μm程度、45~140μm程度、45~130μm程度、45~120μm程度、60~190μm程度、60~180μm程度、60~160μm程度、60~155μm程度、60~140μm程度、60~130μm程度、60~120μm程度、80~190μm程度、80~180μm程度、80~160μm程度、80~155μm程度、80~140μm程度、80~130μm程度、80~120μm程度が挙げられる。
【0094】
(基材層31)
蓄電デバイス用外装材3において、基材層31は、蓄電デバイス用外装材の基材として機能する層であり、最外層側を形成する層である。
【0095】
基材層31を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層31を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層31の形成素材として好適に使用される。また、ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層31の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層31の形成素材として好適に使用される。
【0096】
基材層31は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層31として好適に使用される。
【0097】
これらの中でも、基材層31を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステルが挙げられる。
【0098】
基材層31は、耐ピンホール性及び蓄電デバイスの包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルムを積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層31を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミネート法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。
【0099】
また、基材層31は、成形性を向上させるために低摩擦化させておいてもよい。基材層31を低摩擦化させる場合、その表面の摩擦係数については特に制限されないが、例えば1.0以下が挙げられる。基材層31を低摩擦化するには、例えば、マット処理、スリップ剤の薄膜層の形成、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0100】
基材層31の厚さについては、例えば、10~50μm程度、好ましくは15~30μm程度が挙げられる。
【0101】
(接着剤層32)
蓄電デバイス用外装材3において、接着剤層32は、基材層31に密着性を付与させるために、必要に応じて、基材層31上に配置される層である。即ち、接着剤層32は、基材層31とバリア層33の間に設けられる。
【0102】
接着剤層32は、基材層31とバリア層33とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層32の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。また、接着剤層32の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
【0103】
接着剤層32の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、展延性、高湿度条件下における耐久性や黄変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層31とバリア層33との間のラミネート強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
【0104】
また、接着剤層32は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着剤層32を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層31とバリア層33とのラミネート強度を向上させるという観点から、基材層31側に配される接着剤成分として基材層31との接着性に優れる樹脂を選択し、バリア層33側に配される接着剤成分としてバリア層33との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着剤層32は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、バリア層33側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
【0105】
接着剤層32の厚さについては、例えば、2~50μm程度、好ましくは3~25μm程度が挙げられる。
【0106】
(バリア層33)
蓄電デバイス用外装材3において、バリア層33は、蓄電デバイス用外装材の強度向上の他、蓄電デバイス内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止する機能を有する層である。バリア層33は、金属層、すなわち、金属で形成されている層であることが好ましい。バリア層33を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層33は、例えば、金属箔や金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。蓄電デバイス用外装材の製造時に、バリア層33にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、JIS H4000:2014 A8079P-O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
【0107】
バリア層33の厚さについては、蓄電デバイス用外装材を薄型化しつつ、成形によってもピンホールの発生し難いものとする観点から、好ましくは10~200μm程度、より好ましくは20~100μm程度、20~45μm程度、45~65μm程度、65~85μm程度が挙げられる。
【0108】
また、バリア層33は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐食性皮膜を形成する処理をいう。
【0109】
(接着層34)
蓄電デバイス用外装材3において、接着層34は、熱融着性樹脂層35を強固に接着させるために、バリア層33と熱融着性樹脂層35の間に、必要に応じて設けられる層である。
【0110】
接着層34は、バリア層33と熱融着性樹脂層35を接着可能である接着剤によって形成される。接着層の形成に使用される接着剤の組成については、特に制限されないが、例えば、酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物が挙げられる。酸変性ポリオレフィンとしては、第1層12a及び第2層12bで例示したものと同じものが例示できる。
【0111】
接着層34の厚さについては、例えば、1~40μm程度、好ましくは2~30μm程度が挙げられる。
【0112】
(熱融着性樹脂層35)
蓄電デバイス用外装材3において、熱融着性樹脂層35は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する層である。
【0113】
熱融着性樹脂層35に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0114】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0115】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。構成モノマーとしては、スチレンも挙げられる。
【0116】
これらの樹脂成分の中でも、好ましくは結晶性又は非晶性のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、及びこれらのブレンドポリマー;さらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとノルボルネンの共重合体、及びこれらの中の2種以上のブレンドポリマーが挙げられる。
【0117】
熱融着性樹脂層35は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層35は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上形成されていてもよい。第2層12bと熱融着性樹脂層35の樹脂が共通していると、これらの層間の密着性が向上することから、特に好ましい。
【0118】
また、熱融着性樹脂層35の厚さとしては、特に制限されないが、2~2000μm程度、好ましくは5~1000μm程度、さらに好ましくは10~500μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層35の厚さとしては、例えば約100μm以下、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~85μm程度が挙げられる。なお、例えば、後述の接着層34の厚みが10μm以上である場合には、熱融着性樹脂層35の厚みとしては、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~45μm程度が挙げられ、例えば後述の接着層34の厚みが10μm未満である場合や接着層34が設けられていない場合には、熱融着性樹脂層35の厚みとしては、好ましくは約20μm以上、より好ましくは35~85μm程度が挙げられる。
【0119】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、蓄電デバイスに用いるための蓄電デバイス用外装材と、本開示の金属端子用接着性フィルムとを含む、キットの形態とすることもできる。この場合にも、適用対象となる蓄電デバイスは、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、蓄電デバイス用外装材の外側に突出した金属端子とを備えている。本開示のキットは、用時に、金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に、本開示の金属端子用接着性フィルムを介在させるように用いられる。
【0120】
2.蓄電デバイス
本開示の蓄電デバイス10は、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子4と、当該蓄電デバイス素子4を封止する蓄電デバイス用外装材3と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、蓄電デバイス用外装材3の外側に突出した金属端子2とを備えている。本開示の蓄電デバイス10においては、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に、本開示の金属端子用接着性フィルム1が介在されてなることを特徴とする。すなわち、本開示の蓄電デバイス10は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に、本開示の金属端子用接着性フィルム1が介在する工程を備える方法により製造することができる。
【0121】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子4を、蓄電デバイス用外装材3で、正極及び負極の各々に接続された金属端子2を外側に突出させた状態で、本開示の金属端子用接着性フィルム1を金属端子2と熱融着性樹脂層35との間に介在させ、蓄電デバイス素子4の周縁に蓄電デバイス用外装材3のフランジ部(熱融着性樹脂層35同士が接触する領域であり、蓄電デバイス用外装材3の周縁部3a)が形成できるようにして被覆し、フランジ部の熱融着性樹脂層35同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材3を使用した蓄電デバイス10が提供される。なお、蓄電デバイス用外装材3を用いて蓄電デバイス素子4を収容する場合、蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35が内側(蓄電デバイス素子4と接する面)になるようにして用いられる。
【0122】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、半固体電池、擬固体電池、ポリマー電池、全樹脂電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【実施例0123】
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し、本開示は実施例に限定されるものではない。
【0124】
<金属端子用接着性フィルムの製造>
実施例1
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み80μm)の一方面に、黒色の着色層としてカーボンブラックを含むポリプロピレン(h-PP層(ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度162℃、厚み20μm)、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み40μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み60μm)/基材(CPP層、厚み80μm)/着色層(h-PP層、厚み20μm)/第2層(r-PPa層、厚み40μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0125】
なお、各実施例及び比較例において、接着性フィルムにおいて、後述する着色層の海島構造の島部比率、接着性フィルムのソフトセグメント成分比率は、それぞれ、着色層中のポリエチレンの含有率、重合形式(ホモ、ブロック、又はランダム)、成膜条件(成膜時の温度及び速度、冷却温度及び速度など)を制御することで調整した。
【0126】
実施例2
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み80μm)の一方面に、黒色の着色層としてカーボンブラックを含むポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み20μm)、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み40μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み60μm)/基材(CPP層、厚み80μm)/着色層(r-PP層、厚み20μm)/第2層(r-PPa層、厚み40μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0127】
実施例3
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み80μm)の一方面に、黒色の着色層としてカーボンブラックを含むポリプロピレン(h-PP層(ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度162℃、厚み30μm)、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み30μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み60μm)/基材(CPP層、厚み80μm)/着色層(h-PP層、厚み30μm)/第2層(r-PPa層、厚み30μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0128】
実施例4
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み80μm)の一方面に、黒色の着色層としてカーボンブラックを含むポリプロピレン(h-PP層(ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度162℃、厚み40μm)、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み30μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み50μm)/基材(CPP層、厚み80μm)/着色層(h-PP層、厚み40μm)/第2層(r-PPa層、厚み30μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0129】
実施例5
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み80μm)の一方面に、黒色の着色層としてカーボンブラックを含むポリプロピレン(h-PP層(ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度162℃、厚み40μm)、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み40μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み40μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み40μm)/基材(CPP層、厚み80μm)/着色層(h-PP層、厚み40μm)/第2層(r-PPa層、厚み40μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0130】
実施例6
多層空冷インフレーション成形を用いて、灰色の着色層として酸化チタンを含むポリプロピレン層としてのポリプロピレンフィルム(PP層)、融解ピーク温度160℃、厚み30μm)、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層、融解ピーク温度140℃、厚み20μm))を成形し、第1ポリオレフィン層(PP層 厚み20μm)/基材(PP層 厚み30μm)/第2ポリオレフィン層(PPa層 厚み50μm)が順に積層された金属端子用接着性フィルム(総厚み100μm)を得た。
【0131】
実施例7
多層空冷インフレーション成形を用いて、灰色の着色層として酸化チタンを含むポリプロピレン層としてのポリプロピレンフィルム(PP層)、融解ピーク温度160℃、厚み20μm)、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み40μm)、ポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層、融解ピーク温度140℃、厚み35μm)、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層、融解ピーク温度140℃、厚み20μm))、ポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層、融解ピーク温度140℃、厚み35μm))を成形し、PP層(厚み20μm)/PP層(厚み35μm)/PP層(厚み20μm)/PP層(厚み35μm)/PPa層(厚み40μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み150μm)を得た。
【0132】
実施例8
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリエチレンナフタレート(PEN層、融解ピーク温度260℃、厚み80μm)の一方面に、黒色の着色層としてカーボンブラックを含むポリプロピレン(h-PP層(ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度162℃、厚み20μm)、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み40μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み60μm)/基材(PEN層、厚み80μm)/着色層(h-PP層、厚み20μm)/第2層(r-PPa層、厚み40μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0133】
比較例1
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、灰色の着色層として酸化チタンを含むポリプロピレン層としてのポリプロピレンフィルム(PP層(ポリプロピレン層)、ポリプロピレン、融解ピーク温度160℃、厚み70μm)、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃)を厚み70μmで押出し、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃)を厚み60μmを共押出し、第1層(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、厚み60μm)/ポリプロピレン層(PP層、厚み70μm)/第2層(r-PPa層、厚み70μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0134】
比較例2
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、灰色の着色層として酸化チタンを含むポリプロピレン層としてのポリプロピレンフィルム(PP層(ホモポリプロピレン層)、ポリプロピレン、融解ピーク温度160℃、厚み60μm)、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃)を厚み50μmで押出し、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃)を厚み40μmを共押出し、第1層(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、厚み40μm)/ポリプロピレン層(PP層、厚み60μm)/第2層(r-PPa層、厚み50μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み150μm)を得た。
【0135】
比較例3
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み80μm)の一方面に、黒色の着色層(基材)としてカーボンブラックを含む金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み60μm)/基材(CPP層、厚み80μm)/着色層(第2層)(r-PPa層、厚み60μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0136】
比較例4
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み50μm)の一方面に、黒色の着色層(基材)としてカーボンブラックを含む金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み100μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み50μm)/基材(CPP層、厚み50μm)/着色層(第2層)(r-PPa層、厚み100μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0137】
比較例5
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み50μm)の一方面に、黒色の着色層(基材)としてカーボンブラックを含む金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み100μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み100μm)/基材(CPP層、厚み50μm)/着色層(第2層)(r-PPa層、厚み50μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0138】
比較例6
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み67μm)の一方面に、黒色の着色層(基材)としてカーボンブラックを含む金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み67μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み67μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み67μm)/基材(CPP層、厚み67μm)/着色層(第2層)(r-PPa層、厚み67μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み201μm)を得た。
【0139】
比較例7
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み50μm)の一方面に、黒色の着色層(基材)としてカーボンブラックを含む金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)、他方面に、外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)を押出し、第1層(r-PP層、厚み50μm)/基材(CPP層、厚み50μm)/着色層(第2層)(r-PPa層、厚み50μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み150μm)を得た。
【0140】
比較例8
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み50μm)の一方面に、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)、他方面に、黒色の着色層(基材)としてカーボンブラックを含む外装材側の着色層(第1層)としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)を押出し、着色層(第1層)(r-PP層、厚み50μm)/基材(CPP層、厚み50μm)/第2層(r-PPa層、厚み50μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み150μm)を得た。
【0141】
比較例9
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、基材としてのポリプロピレンフィルム(CPP層(未延伸ホモポリプロピレン層)、融解ピーク温度160℃、厚み80μm)の一方面に、金属端子側の第2層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(r-PPa層(無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)、他方面に、黒色の着色層(基材)としてカーボンブラックを含む外装材側の第1層としてポリプロピレン(r-PP層(ランダムポリプロピレン層)、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)を押出し、着色層(第1層)(r-PP層、厚み60μm)/基材(CPP層、厚み80μm)/第2層(r-PPa層、厚み60μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0142】
<軟化点の測定>
各層の軟化点は、以下の方法により測定した。結果を表1に示す。測定装置としてANASYS INSTRUMENT社製nanoTA、サーマルプローブとしてANASYS INSTRUMENTS社製PR-EX-AN2-300-5を用いた。測定前に、下記の工程によりキャリブレーションを行った。標準試料は、軟化点が公知であるポリカプロラクタン(軟化点:55℃)、ポリエチレン(軟化点:116℃)、ポリエチレンテレフタレート(軟化点:235℃)である。各標準試料の表面にサーマルプローブを接触させながら加熱した。加熱中に、サーマルプローブ直下の熱膨張を計測し、Voltage(電位)に対するDeflection(変位)を表すグラフを取得する。装置で設定する測定条件は以下の通りとした。
測定開始温度:0.1V
測定終了温度:10V
昇温速度:0.2V/sec
各標準試料の軟化点を用い、電位に対するサーマルプローブの変位を表すグラフを温度に対する変位のグラフに変換した。キャリブレーション後、樹脂に包埋後ダイヤモンドナイフ等で形成した試料断面の測定部位にサーマルプローブを接触させた。その後、サーマルプローブを接触させた状態で、下記条件で加熱し、温度に対するサーマルプローブの変位を表すグラフ(熱膨張カーブ)を取得した。
測定開始温度:40℃
測定終了温度:350℃
昇温速度:5℃/sec
得られた熱膨張カーブにおいて、カーブの頂点となる時の温度を取得した。任意の5箇所について上記測定を行った。得られた温度の平均値を、軟化点とした。結果を表1に示す。
【0143】
<融解ピーク温度の測定>
融解ピーク温度は、以下の方法により測定した。結果を表1に示す。各接着性フィルム1について、JIS K7121:2012(プラスチックの転移温度測定方法(JIS K7121:1987の追補1))の規定に準拠して融解ピーク温度を測定した。測定は、示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント製の示差走査熱量計Q200)を用いて行った。測定サンプルを、-50℃で15分間保持した後、10℃/分の昇温速度で-50℃から210℃まで昇温させて、1回目の融解ピーク温度P(℃)を測定した後、210℃にて10分間保持した。次に、10℃/分の降温速度で210℃から-50℃まで降温させて15分間保持した。さらに、10℃/分の昇温速度で-50℃から210℃まで昇温させて2回目の融解ピーク温度Q(℃)を測定した。なお、窒素ガスの流量は50ml/分とした。以上の手順によって、1回目に測定される融解ピーク温度P(℃)と、2回目に測定される融解ピーク温度Q(℃)を求めた。以上の手順によって、1回目に測定される融解ピーク温度P(℃)の値を採用した。
【0144】
<シール後の着色層の流れ量の測定>
金属端子として、縦50mm,横45mm、厚み0.4mmのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8079H-O)を用意した。また、実施例及び比較例で得られた各接着性フィルムを長さ70mm、幅10mmに裁断した。次に、接着性フィルムを金属端子の上に置き、金属端子/接着性フィルムの積層体を得た。このとき、金属端子の縦方向及び横方向が、それぞれ、接着性フィルムの幅方向及び長さ方向と一致させ、かつ、金属端子と接着性フィルムの中心が一致するように積層した(図10参照)。また、接着性フィルムの第1層が金属端子側に配置されている。次に、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム、厚さ100μm)を、当該積層体の接着性フィルムの上に置いた(PTFEフィルムで接着性フィルムの表面を覆った)状態で、シリコンシート/PTFE/当該積層体/PTFE/シリコーンスポンジシートの状態で、200℃に加熱されたプレス機上に載置すると共に、圧力0.25MPa、16秒間静置して、接着性フィルムを金属端子に熱融着させた。熱融着後の積層体を25℃まで自然冷却した。積層体からPTFEをはがし、接着性フィルムの幅方向(すなわちアルミニウムの縦方向)の接着界面をリトラトームを用いて裁断して断面を露出させた。断面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK-9510)で観察し、熱融着前のフィルム端部の位置Pから、熱融着後の着色層が流出した部分の長さL(図11参照)を測定して、シール後の着色層の流れ量(μm)とした。接着性フィルムの長さ方向の中央部の断面の両側を観察し、流れ量の大きい方の値を採用した。結果を表1に示す。
【0145】
<着色層の海島構造の島部比率の測定>
接着性フィルムの着色層の海島構造の島部比率は、以下の方法により測定した。熱硬化性のエポキシ樹脂内に接着性フィルムを包埋し硬化させた。市販品の回転式ミクロトーム(LEICA製 UC6)と、ダイヤモンドナイフを用いて目的とする方向の断面(TDに平行な方向かつ厚みの方向の断面)を作製し、その際、液体窒素を用いたクライオミクロトームにて、-70℃にて断面作製を行った。包埋樹脂ごと四酸化ルテニウムにて12時間染色した。染色すると、ポリプロピレンが膨張するため、膨張部分をミクロトームでトリミングし、MDの方向に向かって100nmから300nmずつ切り進め、合計で1μmから2μmほど切断したところで、着色層の露出している断面を次のようにして観察した。染色した断面について、電界放出形走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製 S-4800 TYPE1,測定条件:3kV 20mA High WD6mm 検出器(Upper))で観測して画像(倍率は10000倍)を取得した。次に、画像を二値化できる画像処理ソフト(三谷商事製画像解析ソフトWinROOF(Ver7.4)を用い、当該画像について、海島構造の島の部分と海の部分とを二値化して、島の部分の合計面積の割合(島の部分の合計面積/画像の測定範囲の面積)を求めた。結果を表1に示す。なお、本測定では、島部分が海部分よりも染色されたため、島部分が海部分よりも明るく観察された。
【0146】
[画像処理条件]
画像処理は、画像解析ソフトImageJを用いて行った。具体的には、SEM画像をグレースケール画像(JPEG)のデジタルファイルとして取得し、下記の二値化処理手順とパラメーターに沿って処理を行い、閾値以上の階調(明るい)のピクセルを1、閾値未満の階調(暗い)のピクセルを0として出力し、各々を島部、海部と規定した。
<二値化処理>
1.スパイクノイズ除去 (Despeckle)
2.島部の輪郭除去 (Remove Outliers radius=4 threshold=1 which=Bright)
3.海部の輪郭除去 (Remove Outliers radius=4 threshold=1 which=Dark)
4.スパイクノイズ除去 (Despeckle)
5.X軸(サンプル短手)方向にガウスぼかし (閾値 = 3ピクセル)
6.コントラスト強調 (saturated = 0.2)
7.島部の輪郭除去 (Remove Outliers radius=4 threshold=1 which=Bright)
8.海部の輪郭除去 (Remove Outliers radius=4 threshold=1 which=Dark)
9.大津の二値化
【0147】
<加熱後のソフトセグメント成分の比率の測定>
接着性フィルムを温度200℃、面圧0.25Pa、16秒間の条件で加熱した。接着性フィルムを直径10mmのガラス製のサンプル管に導入し、サンプル管をパルスNMR装置(BRUKER製the minispec mq20)に設置して40℃で5分間保持した後、40℃でSolid Echo法で1Hのスピン-スピン緩和の自由誘導減衰曲線を得た。Solid Echo法におけるScan回数は64回に設定した。得られた減衰曲線を、ハードセグメント成分、中間セグメント成分、ソフトセグメント成分の3成分に由来する3つの曲線に波形分離した。波形分離は、BRUKER社製の解析ソフトウェア「TD-NMRA(Version 4.3 Rev 0.8)」を用いて、ハードセグメント成分はガウシアン型、中間セグメント成分及びソフトセグメント成分はエクスポーネンシャル型を関数としてフィッティングすることで得た。解析には緩和曲線の0.6msecまでの測定点を用いる。フィッティングには以下の式を用いた。
Y=A1×exp(-(t/τ1w1)+A2×exp(-(t/τ2w2)+A3×exp(-(t/τ3w3
ここで、w1~w3はワイブル係数であり、w1は2、w2及びw3は1の値を取る。A1はハードセグメント成分の、A2は中間セグメント成分、A3はソフトセグメント成分のそれぞれ成分比であり、τ1はハードセグメント成分の、τ2は中間セグメント成分の、τ3はソフトセグメント成分のそれぞれ緩和時間を示す。tは時間である。成分比A1、A2、A3は同一水準の測定を3回実施した平均値を採用した。
【0148】
<接着性フィルムの水蒸気透過度の測定>
まず、次の手順により、蓄電デバイス用外装材(以下、単に「外装材」と表記することがある)を用意した。基材層として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)及び延伸ナイロン(ONy)フィルム(厚さ15μm)を用意した。PETフィルムとONyフィルムとを、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を用いて接着し、エージング処理を実施することにより、PETフィルム(厚さ12μm)/接着剤層(硬化後の厚みは3μm)/ONyフィルム(厚さ15μm)が外側から順に積層された基材層(厚さ30μm)を得た。また、バリア層として、アルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H-O(厚さ40μm))を用意した。次に、基材層のONyフィルム側の表面と、バリア層とを、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を用いて接着し、エージング処理を実施することにより、基材層(厚み30μm)/接着剤層(硬化後の厚みは3μm)/バリア層(厚み40μm)の積層体が順に積層された蓄電デバイス用外装材(総厚み73μm)を得た。
【0149】
次に、図9の模式図に示すように、得られた外装材3を、縦(MD)120mm、横(TD)120mmの正方形に裁断した(図9a)。また、接着性フィルム1を縦(MD)120mm、横(TD)10mmの長方形に裁断した2枚と、縦(MD)100mm、横(TD)10mmの長方形に裁断した2枚とを準備した。外装材3のバリア層側の上に、外装材3の周辺に沿って、縦の長さが同じ接着性フィルムを対向に配置した(図9b)。このとき、接着性フィルムの第2層側が、外装材3のバリア層側になるようにした。次に、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム、厚さ100μm)を、当該積層体の接着性フィルムの上に置き(PTFEフィルムで接着性フィルムの表面を覆い)、シリコンシート/PTFE/当該積層体/PTFE/シリコーンスポンジシートの状態で、200℃に加熱されたプレス機上に載置すると共に、圧力0.25MPaの条件で、16秒間静置して、接着性フィルムを外装材3に熱融着させた。熱融着後の積層体を25℃まで自然冷却し、積層体からPTFEフィルムをはがした。この加熱処理は、接着性フィルムが蓄電デバイス用外装材と金属端子との間に配され、熱融着された後の物性を想定した加熱である。次に、接着性フィルムが内側になるようにして、外装材3を縦方向に半分に折り曲げた(図9c)。縦(MD)120mmの金属端子用接着性フィルムは、後述のヒートシールされる長辺に沿って外装材3の間に2枚重ねて配置され、縦(MD)100mmの金属端子用接着性フィルムは、後述のヒートシールされる短辺に沿って外装材3の間に半分に折り曲げて配置された。外装材3の周辺部は、外装材/接着性フィルム/接着性フィルム/外装材が順に積層された積層体となる(図9c)。
【0150】
次に、ヒートシールバー(ステンレス鋼板)を用い、積層体の長辺と短辺の位置において、積層体の各層間を熱融着させて、1つの短辺が熱融着されていない袋状とした(図9c)。熱融着の条件は、長辺については、幅7mmのヒートシールバーを用い、温度190℃、面圧0.5MPa、1.5秒間、1回ヒートシールした(図9cのs1)。また、短辺については、幅7mmのヒートシールバーを用い、温度190℃、面圧0.5MPa、1.5秒間の条件で1回ヒートシールした(図9cのs2)。ドライルーム内にて1日乾燥させた。次に、熱融着されていない短辺の位置から、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(容積比)の液(水分率0%)を約3.0g注入し(図9d)、熱融着されていない短辺についても、前記の短辺と同様にヒートシールして(図9eのs3)密封袋とした(図9e)。この密封袋を、温度65℃、相対湿度90%の環境で30日間静置した後、ドライルーム内にて、密封袋から取り出した液の水分率をカールフィッシャー法により測定して含有水分(ppm)を得た。得られた含有水分から投入した電解液量(g)、透過距離(mm)、透過断面積(m2)、保管日数(day)から計算し、水蒸気透過度(g・mm/(m2・day))を求めた。
水蒸気透過度(g・mm/(m2・day))=[得られた含有水分(ppm)×投入した電解液(g)×透過距離(mm)]/[透過断面積(m2)×保管日数(day)]
・得られた含有水分(ppm):カールフィッシャー法より得られる。
・投入した電解液(g):3.0g
・透過距離(mm):シール幅7mm
・透過断面積(m2):残存厚み(μm)×シール内側周囲200(mm)
・保管日数(day):30日
【0151】
<接着性フィルムの熱収縮率の測定>
接着性フィルムを長さ120mm(MD)×120mm(TD)のサイズに切り出して試験片とした。次に、金尺にて試験片の長さM(mm)を計測した。次に、試験片のMD方向の端部を金網にテープで固定し、試験片を金網から吊るした状態にした。この状態で、175℃に加熱されたオーブン内に30分置いた後、試験片を金網ごと取出して、室温(25℃)環境で自然冷却した。次に、室温まで自然冷却した試験片の長さN(mm)を金尺にて測定した。下の式により、金属端子用接着性フィルムの熱収縮率を算出し、n3の平均値を測定結果とした。結果を表1に示す。
熱収縮率(%)=(長さN/長さM)×100
【0152】
【表1】
【0153】
以上のとおり、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、
前記金属端子用接着性フィルムは、少なくとも、前記蓄電デバイス用外装材側に配される第1層と、着色層と、前記金属端子側に配される第2層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記着色層の厚みが50μm以下である、金属端子用接着性フィルム。
項2. 前記着色層の軟化点が、前記第2層の軟化点よりも高い、項1に記載の金属端子用接着性フィルム。
項3. 前記着色層のTDに平行な方向かつ厚み方向の断面について、走査型電子顕微鏡を用いて取得した断面画像に海島構造が観察され、
前記着色層の前記海島構造の島部比率が30%以下である、項1または2に記載の金属端子用接着性フィルム。
項4. 前記着色層の融解ピーク温度が、135℃以上である、項1~3のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルム。
項5. 前記接着性フィルムは、前記金属端子用接着性フィルムを温度200℃、面圧0.25MPa、16秒間の条件で加熱した後、温度40℃環境において、パルスNMRを用いたSolid Echo法によって測定される、ソフトセグメント成分の比率が、20%以下である、項1~4のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルム。
項6. 前記着色層は、着色顔料を含む、項1~5のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルム。
項7. 前記着色層は、黒色、灰色、又は白色である、項1~6のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルム。
項8. 前記金属端子用接着性フィルムの厚みに対する前記着色層の厚みの比率が、0.30以下である、項1~7のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルム。
項9. 基材を含む、項1~8のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルム。
項10. 前記金属端子用接着性フィルムの水蒸気透過度が、4.20g・mm/(m2・day)以下である、項1~9のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルム。
項11. 蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムの製造方法であって、
前記金属端子用接着性フィルムは、少なくとも、前記蓄電デバイス用外装材側に配される第1層と、着色層と、前記金属端子側に配される第2層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記着色層の厚みが50μm以下である、金属端子用接着性フィルムの製造方法。
項12. 金属端子に、項1~10のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムが取り付けられてなる、金属端子用接着性フィルム付き金属端子。
項13. 少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した前記金属端子とを備える蓄電デバイスであって、
前記金属端子と前記蓄電デバイス用外装材との間に、項1~10のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムが介在されてなる、蓄電デバイス。
項14. 少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する前記蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した前記金属端子とを備える蓄電デバイスの製造方法であって、
前記金属端子と前記蓄電デバイス用外装材との間に、項1~10のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムを介在させて、前記蓄電デバイス素子を前記蓄電デバイス用外装材で封止する工程を備える、蓄電デバイスの製造方法。
項15. 蓄電デバイスに用いるための蓄電デバイス用外装材であって、
前記蓄電デバイスは、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する前記蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した前記金属端子とを備え、前記金属端子と前記蓄電デバイス用外装材との間に、金属端子用接着性フィルムが介在されてなり、
前記金属端子用接着性フィルムは、項1~10のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムであり、
前記蓄電デバイス用外装材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されている、蓄電デバイス用外装材。
項16. 蓄電デバイスに用いるための蓄電デバイス用外装材と、項1~10のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムとを含む、キットであって、
前記蓄電デバイスは、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する前記蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した前記金属端子とを備え、
用時に、前記金属端子と前記蓄電デバイス用外装材との間に、前記金属端子用接着性フィルムを介在させるように用いられる、キット。
【符号の説明】
【0154】
1 金属端子用接着性フィルム
2 金属端子
3 蓄電デバイス用外装材
3a 蓄電デバイス用外装材の周縁部
4 蓄電デバイス素子
10 蓄電デバイス
11 着色層
12a 第1層
12b 第2層
12c 第3層
12d 第4層
14 基材
31 基材層
32 接着剤層
33 バリア層
34 接着層
35 熱融着性樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11