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特開2024-14459炭素繊維強化樹脂の製造装置、およびそのサイドフィーダー、ならびに炭素繊維強化樹脂の製造方法
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  • 特開-炭素繊維強化樹脂の製造装置、およびそのサイドフィーダー、ならびに炭素繊維強化樹脂の製造方法 図1
  • 特開-炭素繊維強化樹脂の製造装置、およびそのサイドフィーダー、ならびに炭素繊維強化樹脂の製造方法 図2
  • 特開-炭素繊維強化樹脂の製造装置、およびそのサイドフィーダー、ならびに炭素繊維強化樹脂の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014459
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】炭素繊維強化樹脂の製造装置、およびそのサイドフィーダー、ならびに炭素繊維強化樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/55 20060101AFI20240125BHJP
   B29B 7/38 20060101ALI20240125BHJP
   B29B 7/58 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
D06M15/55
B29B7/38
B29B7/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117298
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】594146179
【氏名又は名称】株式会社新菱
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】佐坂 涼
【テーマコード(参考)】
4F201
4L033
【Fターム(参考)】
4F201AB01
4F201AD16
4F201AL02
4F201BA01
4F201BC01
4F201BC02
4F201BC37
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC12
4L033CA49
(57)【要約】
【課題】表面処理剤を効率よく使用し、表面処理した炭素繊維を樹脂に混練できるサイドフィーダー等を提供する。
【解決手段】混練押出機41に表面処理した炭素繊維を供給するサイドフィーダー101であり、炭素繊維を投入する投入口21と、投入口21から投入された炭素繊維を移送するための移送シリンダ22と、移送シリンダ22内の炭素繊維を押し出すスクリューと、移送シリンダ22と混練押出機41とを接続し、混練押出機41の混練シリンダ61に前記スクリューで押し出された炭素繊維を移送するための接続部35と、投入口21と接続部35との間に、移送シリンダ22内の炭素繊維に表面処理剤を添加するための添加部34と、を有するサイドフィーダー101。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維を投入する投入口と、
前記投入口から投入された前記炭素繊維を移送するための移送シリンダと、
前記移送シリンダ内の前記炭素繊維を押し出すスクリューと、
前記移送シリンダと混練押出機とを接続し、前記混練押出機の混練シリンダに前記スクリューで押し出された炭素繊維を移送するための接続部と、
前記投入口と前記接続部との間に、前記移送シリンダ内の前記炭素繊維に表面処理剤を添加するための添加部と、を有するサイドフィーダー。
【請求項2】
前記添加部に接続され、前記表面処理剤を収容する収容タンクを有する請求項1に記載のサイドフィーダー。
【請求項3】
前記収容タンクから前記表面処理剤を移送する移送ポンプを有する請求項2に記載のサイドフィーダー。
【請求項4】
前記添加部が表面処理剤の導入管を有する請求項1に記載のサイドフィーダー。
【請求項5】
前記導入管が、前記スクリューとの接触防止部を有する請求項4に記載のサイドフィーダー。
【請求項6】
前記添加部と、前記投入口との前記移送シリンダにおける距離が30mm以上である請求項1に記載のサイドフィーダー。
【請求項7】
前記添加部と、前記接続部との前記移送シリンダにおける距離が30mm以上である請求項1に記載のサイドフィーダー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のサイドフィーダーと、
マトリックス樹脂を供給するメインフィーダーと、
前記メインフィーダーから供給されたマトリックス樹脂と、前記サイドフィーダーから供給された表面処理炭素繊維とを混練する混練シリンダを有する炭素繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の製造装置を用いる炭素繊維強化樹脂の製造方法であって、
前記サイドフィーダーの前記投入口に炭素繊維を供給する工程と、
前記添加部から前記移送シリンダ内の前記炭素繊維に表面処理剤を添加する工程と、
前記移送シリンダ内のスクリューで前記炭素繊維と、前記表面処理剤とを混合する工程と、
前記メインフィーダーから、前記混練シリンダにマトリックス樹脂を供給する工程と、
前記接続部から、前記混練シリンダ内の前記マトリックス樹脂に、前記炭素繊維と前記表面処理剤とを混合した表面処理炭素繊維を供給する工程と、
前記マトリックス樹脂と、前記表面処理炭素繊維を混練する工程と、を有する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化樹脂の製造装置に関する。また、そのためのサイドフィーダーに関する。また、炭素繊維強化樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は経済的価値の高さ、廃棄処理時の環境負荷の観点から、使用済みの炭素繊維強化樹脂の成形品や、製造工程で排出される中間基材の端材の再利用の検討が盛んに行われている。通常、炭素繊維表面には、樹脂との接着性を高めるためにサイジング剤が塗布されているが、再生炭素繊維については、再生処理の過程でサイジング剤の大部分が失われるため、サイジング剤を再度塗布する場合がある。
【0003】
特許文献1は、炭素繊維をリサイクルする方法であって、炭素繊維及び樹脂を含む炭素繊維強化樹脂を有する炭素繊維強化樹脂成型品を用意する工程、炭素繊維強化樹脂成型品中の樹脂を第一の加熱処理又は第一の溶解処理により熱分解又は溶解させる工程、及び第一の加熱処理又は第一の溶解処理後の炭素繊維強化樹脂成型品から炭素繊維を引き出して巻き取る工程を含み、巻き取り工程が、炭素繊維に付着する樹脂の残渣を第二の加熱処理又は第二の溶解処理により熱分解又は溶解させる工程、及び第二の加熱処理又は第二の溶解処理後の炭素繊維にサイジング剤を付与する工程をさらに含む、方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、炭素繊維と熱硬化性樹脂とからなる繊維強化プラスチックのリサイクル方法であって、前記繊維強化プラスチックを熱処理して熱硬化性樹脂を燃焼させて無害化材を製造する第1の工程と、前記無害化材にサイジング材を塗布もしくは散布した後、前記無害化材と熱可塑性樹脂を混練しながらリサイクル材を製造する第2の工程と、からなる繊維強化プラスチックのリサイクル方法を開示している。
【0005】
特許文献3は、複数の炭素繊維及びウレタン樹脂系サイジング剤あるいは共重合ポリアミド樹脂系サイジング剤を溶媒と共に予め混合した上で湿式押出造粒法によって作製される円柱形状を有し、炭素繊維の全長を母線の長さよりも短いことを特徴とする炭素繊維集合体について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-15366号公報
【特許文献2】特開2009-138143号公報
【特許文献3】特開2021-55198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献3の方法は、再生炭素繊維を浸漬させるために過剰な量の表面処理剤が必要となる場合が多い。特許文献2の方法は、再生炭素繊維に表面処理剤を散布した面にしか塗布できないという問題点がある。
【0008】
本発明は、表面処理剤を効率よく使用し、表面処理した炭素繊維を樹脂に混練できるサイドフィーダー等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0010】
<1> 炭素繊維を投入する投入口と、
前記投入口から投入された前記炭素繊維を移送するための移送シリンダと、
前記移送シリンダ内の前記炭素繊維を押し出すスクリューと、
前記移送シリンダと混練押出機とを接続し、前記混練押出機の混練シリンダに前記スクリューで押し出された炭素繊維を移送するための接続部と、
前記投入口と前記接続部との間に、前記移送シリンダ内の前記炭素繊維に表面処理剤を添加するための添加部と、を有するサイドフィーダー。
<2> 前記添加部に接続され、前記表面処理剤を収容する収容タンクを有する前記<1>に記載のサイドフィーダー。
<3> 前記収容タンクから前記表面処理剤を移送する移送ポンプを有する前記<2>に記載のサイドフィーダー。
<4> 前記添加部が表面処理剤の導入管を有する前記<1>~<3>のいずれかに記載のサイドフィーダー。
<5> 前記導入管が、前記スクリューとの接触防止部を有する前記<4>に記載のサイドフィーダー。
<6> 前記添加部と、前記投入口との前記移送シリンダにおける距離が30mm以上である前記<1>~<5>に記載のサイドフィーダー。
<7> 前記添加部と、前記接続部との前記移送シリンダにおける距離が30mm以上である前記<1>~<6>に記載のサイドフィーダー。
<8> 前記<1>~<7>のいずれかに記載のサイドフィーダーと、
マトリックス樹脂を供給するメインフィーダーと、
前記メインフィーダーから供給されたマトリックス樹脂と、前記サイドフィーダーから供給された表面処理炭素繊維とを混練する混練シリンダを有する炭素繊維強化樹脂の製造装置。
<9> 前記<8>に記載の製造装置を用いる炭素繊維強化樹脂の製造方法であって、
前記サイドフィーダーの前記投入口に炭素繊維を供給する工程と、
前記添加部から前記移送シリンダ内の前記炭素繊維に表面処理剤を添加する工程と、
前記移送シリンダ内のスクリューで前記炭素繊維と、前記表面処理剤とを混合する工程と、
前記メインフィーダーから、前記混練シリンダにマトリックス樹脂を供給する工程と、
前記接続部から、前記混練シリンダ内の前記マトリックス樹脂に、前記炭素繊維と前記表面処理剤とを混合した表面処理炭素繊維を供給する工程と、
前記マトリックス樹脂と、前記表面処理炭素繊維を混練する工程と、を有する製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のサイドフィーダーによれば、表面処理剤を効率よく使用し、表面処理した炭素繊維を樹脂に混練できる。また、本発明の製造装置や本発明の製造方法によれば、表面処理した炭素繊維を混練した樹脂組成物である炭素繊維強化樹脂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のサイドフィーダーを有する本発明の製造装置の実施形態例を示す概要図である。
図2】本発明のサイドフィーダーの添加部の実施形態例を示す概要図である。
図3】本発明の製造方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0014】
[本発明のサイドフィーダー]
本発明のサイドフィーダーは、炭素繊維を投入する投入口と、前記投入口から投入された前記炭素繊維を移送するための移送シリンダと、前記移送シリンダ内の前記炭素繊維を押し出すスクリューと、前記移送シリンダと混練押出機とを接続し、前記混練押出機の混練シリンダに前記スクリューで押し出された炭素繊維を移送するための接続部と、前記投入口と前記接続部との間に、前記移送シリンダ内の前記炭素繊維に表面処理剤を添加するための添加部と、を有する。
【0015】
[本発明の製造装置]
本発明の炭素繊維強化樹脂の製造装置は、本発明のサイドフィーダーと、マトリックス樹脂を供給するメインフィーダーと、前記メインフィーダーから供給されたマトリックス樹脂と、前記サイドフィーダーから供給された表面処理炭素繊維とを混練する混練シリンダと、を有する。本発明の炭素繊維強化樹脂の製造装置を、単に本発明の製造装置と記載する場合がある。
【0016】
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、本発明の製造装置を用いる炭素繊維強化樹脂を製造する方法であって、前記サイドフィーダーの前記投入口に炭素繊維を供給する工程と、前記添加部から前記移送シリンダ内の前記炭素繊維に表面処理剤を添加する工程と、前記移送シリンダ内のスクリューで前記炭素繊維と、前記表面処理剤とを混合する工程と、前記メインフィーダーから、前記混練シリンダにマトリックス樹脂を供給する工程と、前記接続部から、前記混練シリンダ内の前記マトリックス樹脂に、前記炭素繊維と前記表面処理剤とを混合した表面処理炭素繊維を供給する工程と、前記マトリックス樹脂と、前記表面処理炭素繊維を混練する工程と、を有する。
【0017】
本発明のサイドフィーダーは、表面処理剤の使用量を最小限に抑え、低コストで、表面処理した炭素繊維を混練押出機に供給できる。また、本発明の製造装置や本発明の製造方法によれば、表面処理された炭素繊維を含む炭素繊維強化樹脂を得ることができる。
【0018】
なお、本願においても本発明のサイドフィーダーは本発明の製造装置に用いることができ、本発明の製造装置で本発明の製造方法を行うこともでき、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0019】
[製造装置111]
図1は、本発明の製造装置の実施形態例を示す概要図である。製造装置111は、サイドフィーダー101と、混練押出機41とを有する。
【0020】
[サイドフィーダー101]
図1は、本発明のサイドフィーダーの実施形態例を示す概要図である。また、図2は、本発明のサイドフィーダーの添加部の実施形態例を示す概要図である。サイドフィーダー101は、投入口21と、移送シリンダ22と、スクリュー241、242と、添加部34と、接続部35とを有する。サイドフィーダー101は、混練押出機41に表面処理した炭素繊維である表面処理炭素繊維を供給する装置である。
【0021】
[投入口21]
投入口21は、炭素繊維を投入するための部分である。投入口21は、移送シリンダ22に連続的に炭素繊維を送り出すための構造である。投入口21は、移送シリンダ22の開口部と接続し、逆円錐形や逆四角推形の漏斗状の形状や、筒状の部分を有するものなどを用いることができる。
【0022】
[炭素繊維]
炭素繊維は、アクリルを原料とする炭素繊維や、ピッチを原料とする炭素繊維等を用いることができ、特に、ポリアクリロニトリル繊維を原料として製造されるPAN系炭素繊維を用いることが好ましい。再生炭素繊維は、炭素繊維を含む樹脂組成物などをリサイクルしたものであり、樹脂などを熱分解などして回収した炭素繊維である。本発明は、炭素繊維を対象とできるが、特に、再利用するにあたって表面処理がより重要となる再生炭素繊維を対象とすることが好ましい。
【0023】
炭素繊維は、短繊維を用いることが好ましい。短繊維は、リサイクル原料としても入手しやすく、かつ、成形加工のための搬送を行いやすく、マトリックス樹脂との混練や成形などが行いやすい。炭素繊維の長さは、例えば、200mm以下や、150mm以下、100mm以下のものなどを用いてもよい。下限は特に設定しないでもよいが、繊維状であることを利用する観点から1mm以上や、3mm以上、6mm以上、10mm以上、20mm以上のものなどを用いることが好ましい。
【0024】
[移送シリンダ22]
移送シリンダ22は、投入口21から投入された炭素繊維を移送するための部分である。本実施形態のサイドフィーダー101は、二軸のスクリュー241、242により炭素繊維を移送する構造のものである。このため、移送シリンダ22は、二軸のスクリュー241、242が回転し、炭素繊維が通過するための空間が設けられている。
【0025】
[スクリュー241、242]
スクリュー241、242は、シリンダ22内の炭素繊維を押し出すためのスクリューである。サイドフィーダー101は、これらの二軸のスクリューにより炭素繊維を移送する。サイドフィーダー101は、炭素繊維や表面処理剤を移送するためのものであり、移送シリンダ22やスクリュー241、242は、常温程度の温度でも移送できる。
【0026】
[接続部35]
接続部35は、サイドフィーダー101の移送シリンダ22と混練押出機41の混練シリンダ61とを接続する部分である。接続部35は、混練押出機41内の混練シリンダ61内に、サイドフィーダー101のスクリュー241、242で押し出された炭素繊維を移送するためのものである。混練押出機41の混練シリンダ61内のスクリューの長さ方向に対してその側面となる位置に開口部などを設け、この開口部を覆うようにサイドフィーダー101の先端を取り付けることで、接続部35とすることができる。
【0027】
[添加部34]
添加部34は、投入口21と接続部35との間に配置される部分である。添加部34は、移送シリンダ22内の炭素繊維に表面処理剤を添加するための部分である。添加部34は、移送シリンダ22の開口部と接続し、配管状の部分を有するものなどを用いることができる。
【0028】
[表面処理剤]
表面処理剤は、マトリックス樹脂との濡れ性、接着性を向上させる目的で、炭素繊維の表面を処理するためのものである。表面処理剤は、サイジング剤やカップリング剤などを用いることができる。表面処理剤は、液状や、スラリー状、パウダー状、フレーク状、固体状のもの等を用いることができる。表面処理剤は、添加部34から供給するために流動性を有するものであることが好ましく、常温程度で液状やスラリー状とするために、適宜、媒質を併用してもよい。安全面から媒質は水が好ましい。また必要に応じて、媒質の水由来の水蒸気をサイドフィーダーの下流にベント口を設置して抜いてもよいし、混練押出機のベント口で抜いてもよい。
【0029】
サイジング剤は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、また、これらの混合物などを含むものを用いることができる。これらの中でも、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。サイジング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、界面活性剤等の添加剤を含んでもよい。
【0030】
カップリング剤は、例えば、アミノ系、エポキシ系などのシラン系カップリング剤、リン酸エステル系カップリング剤、チタン系カップリング剤などを用いることができる。
【0031】
添加部34には、任意の手法で表面処理剤を供給することができる。例えば、本実施形態では、収容タンク31に表面処理剤を収容して、連続的に、配管331、332を通って、移送ポンプ33を介して、ポンプの供給量により表面処理剤の混合量に合わせた供給をすることができる。表面処理剤の粘性が高い場合は、収容タンク、配管等を加温してもよい。
【0032】
[収容タンク31]
収容タンク31は、添加部34に接続され、表面処理剤を収容する容器である。収容タンク31は、適宜、表面処理剤の均一性や流動性の向上のために、撹拌モーター321を回転させて撹拌軸322に取り付けた撹拌翼323で、収容している表面処理剤を撹拌させることができる。収容タンク31には配管331が接続され、配管331の他端は移送ポンプ33に接続されている。
【0033】
[移送ポンプ33]
移送ポンプ33は、収容タンク31から添加部34に表面処理剤を移送するポンプである。移送ポンプ33は、配管331と、配管332とに接続され、表面処理剤の供給量を制御することができる。移送ポンプは、ギヤポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0034】
図2は、添加部34周辺の構造例を拡大した断面図である。添加部34は、持手部341と、接触防止部342と、導入管343とを有するものとすることができる。添加部34は、配管332に接続され、配管332から供給された表面処理剤を導入管343の先端から吐出することができる。
【0035】
[導入管343]
導入管343は、移送シリンダ22内に表面処理剤を導入するための管である。移送シリンダ22には添加部34のための開口部231が設けられており、この開口部231に導入管343を抜き差しすることができる。開口部231は、例えば、二軸のスクリュー241、242が接する部分の上部に設けることができる。図2(A)は、導入管343を外した状態であり、図2(B)は導入管343を開口部231に挿入した状態である。表面処理剤は液状のものを用いることができ、液は流動性が高いことから、開口部231や導入管343は細いもので良く、例えば、直径1~10mmφや、2~5mmφ程度のものを用いることができる。
【0036】
[接触防止部342]
接触防止部342は、導入管343が、スクリューとの接触を防止するための部分である。接触防止部342は、導入管343の先端が突出して開口部231に挿入したときの挿入量を調整するために開口部231よりも幅広の部分を設けたものである。このため、接触防止部342は開口部231の上端側に引っかかった状態となって、導入管343が過剰に移送シリンダ22内に入り込むことを防止する。
【0037】
添加部34と、投入口21とは、炭素繊維や表面処理剤を常温で移送できればよいため、装置レイアウトなどの自由度を確保するために比較的近い位置に配置することができる。一方で、投入口21に近過ぎる場合、ブリッジが発生する恐れがある。例えば、添加部34と投入口21との、移送シリンダ22における距離が30mm以上とすることが好ましい。距離の上限は各部の大きさや、構造、配置、移送しやすさなどに応じて適宜設定して、できるだけ近い方が良いが、適宜、1m以下や、500mm以下、300mm以下、200mm以下のような上限を設けてもよい。添加部34、投入口21のいずれも、移送シリンダ22と接続する部分に開口部を設けており、それぞれの開口部は移送シリンダ22の上部に設けることができるため、各開口部の最短距離を上記範囲とすることができる。
【0038】
添加部34と、接続部35とは、表面処理剤を添加後に直ちに炭素繊維と混合でき、炭素繊維の添加部34への逆流を防止するため、装置レイアウトなどの自由度を確保するために比較的近い位置に配置することができる。混練押出機41の混練シリンダ61に近過ぎる場合、混練シリンダ61内が高温な場合もあることから、液が直ちに蒸発する恐れがある。例えば、添加部34と接続部35との、移送シリンダ22における距離が30mm以上とすることが好ましい。距離の上限は各部の大きさや、構造、配置、移送しやすさなどに応じて適宜設定して、できるだけ近い方が良いが、適宜、1m以下や、500mm以下、300mm以下、200mm以下のような上限を設けてもよい。添加部34、接続部35のいずれも、移送シリンダ22と接続する部分に開口部を設けており、それぞれの開口部は移送シリンダ22の上部に設けることができるため、各開口部の最短距離を上記範囲とすることができる。
【0039】
[表面処理炭素繊維]
表面処理炭素繊維は、炭素繊維と表面処理剤とを混合したものである。移送シリンダ22において、スクリュー241、242を用いて移送している炭素繊維に、添加部34から表面処理剤を添加することで、速やかに表面処理剤は、スクリュー内で移送されながら炭素繊維に混合される。この混合された状態のものを表面処理剤で表面処理された炭素繊維として、表面処理炭素繊維とよぶ。
【0040】
炭素繊維と表面処理剤との混合比率は、それぞれの状態や、マトリックス樹脂の種類、これらを混合して得られるものの用途や物性などによって適宜設定される。本発明によれば、表面処理剤を効率よく利用できるため、サイドフィーダー101による添加量を混合量とみなすことができる。炭素繊維に対する表面処理剤との混合比率(表面処理剤/炭素繊維)は、0.1質量%~20質量%や、0.5~10質量%、1~5質量%などとすることができる。
【0041】
[製造装置111]
製造装置111は、サイドフィーダー101と、混練押出機41とを有する。混練押出機41は、マトリックス樹脂等を供給する投入口51と、マトリックス樹脂等を送り出すメインフィーダー52と、混練シリンダ61を有する。混練シリンダ61から押し出された樹脂は、吐出口62から吐出される。
【0042】
投入口51は、マトリックス樹脂を投入するための部分である。マトリックス樹脂のほかに添加剤などを添加して供給するものとしてもよい。マトリックス樹脂などを送り出すフィーダーに投入口を複数設けておき、例えば、いずれかでマトリックス樹脂を供給し、他の投入口から、添加剤などを供給するものとしてもよい。
【0043】
[マトリックス樹脂]
マトリックス樹脂は、炭素繊維強化樹脂における主材となる樹脂である。このマトリックス樹脂は、混練押出機で成形できる熱可塑性樹脂などを主成分とするものを用いることが好ましい。
【0044】
熱可塑性樹脂として、例えば、汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、また、これらのアロイや、混合物が挙げられる。汎用プラスチックとして、例えば、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレンテレフタラート、アクリル樹脂、メタクリル樹脂が挙げられる。エンジニアリングプラスチックとして、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0045】
スーパーエンジニアリングプラスチックとして、例えば、ポリテトラフロロエチレンのようなフッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性エポキシ樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。また、一部成分として熱硬化性樹脂を用いることもできる。熱硬化性樹脂として、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂が挙げられる。
【0046】
[添加剤]
炭素繊維強化樹脂は、添加剤を含むものとすることができる。添加剤は、炭素繊維強化樹脂を構成する成分や、その用途に合わせて、適宜、選択されたものを使用することができる。添加剤としては、充填材や、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、熱安定剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、衝撃改良剤などを用いることができる。添加剤は、必要ない場合や、マトリックス樹脂自体が樹脂組成物として複数の成分を含む場合などは添加を省略してもよい。
【0047】
[炭素繊維強化樹脂]
炭素繊維強化樹脂は、マトリックス樹脂と、表面処理炭素繊維を含む樹脂組成物である。また、適宜、添加剤を含むものとすることができ、許容される範囲で製造上含まれる不純物などが含まれていてもよい。
【0048】
炭素繊維強化樹脂は、マトリックス樹脂と、表面処理炭素繊維と、添加剤との比率は、その用途などに合わせて適宜、設定することができる。例えば、マトリックス樹脂は、炭素繊維強化樹脂におけるその下限を50質量%以上や、60質量%以上、80質量%以上とでき、その上限を98質量%以下や、95質量%以下、90質量%以下などとすることができる。
【0049】
表面処理炭素繊維は、炭素繊維強化樹脂におけるその下限を2質量%以上や、5質量%以上、7質量%以上とでき、その上限を30質量%以下や、20質量%以下、15質量%以下などとすることができる。
【0050】
添加剤は、その用途に応じては含まないでもよい。添加剤を含む場合、添加剤は、炭素繊維強化樹脂におけるその下限を0.05質量%以上や、0.08質量%以上、0.1質量%以上とでき、その上限を10質量%以下や、8質量%以下、5質量%以下、2質量%以下などとすることができる。
【0051】
[混練シリンダ61]
混練シリンダ61は、メインフィーダー52から供給されたマトリックス樹脂等を流動できるように混練して押し出すためのシリンダである。混練シリンダ61内には、スクリューなどが配置されている。また、マトリックス樹脂に合わせて、適宜、その樹脂を溶融等するための加熱部などが設けられ、溶融混練等することができる。また、サイドフィーダー101から供給された表面処理炭素繊維を、マトリックス樹脂等と混練して押し出す。
【0052】
[吐出部62]
吐出部62は、混練シリンダ61の先端に設けられた部分である。吐出部62は、炭素繊維強化樹脂を成形する形状に合わせて、適宜設計することができる。例えば、ペレットや、パイプ、チューブ、シート等の形状で押し出すことができる。特に、再成形に適した形状であるペレットとするように、吐出部62からストランド状に押し出して、裁断して、ペレットとするものとすることが好ましい。
【0053】
[製造フロー]
本発明のサイドフィーダーや、本発明の製造装置は、本発明の炭素繊維強化樹脂を製造する方法(本発明の製造方法)に用いることができる。本発明の製造方法は、混練押出機41から供給するマトリックス樹脂等と、サイドフィーダーから供給する表面処理炭素繊維とを、混練シリンダ61内で混練して、吐出部62から押し出して、炭素繊維強化樹脂を得ることができる。
【0054】
例えば、図3に示すようなフローで製造することができる。図3は、本発明の製造方法の製造フローの一例である。
【0055】
ステップS11は、メインフィーダーから、混練押出機の混練シリンダにマトリックス樹脂を供給する工程である。
ステップS12は、ステップS11で供給されたマトリックス樹脂を押し出す工程である。
【0056】
ステップS21は、サイドフィーダーの投入口に炭素繊維を供給する工程である。
ステップS22は、ステップS21で供給された炭素繊維を移送する工程である。
ステップS23は、添加部からステップS21においてシリンダ内で移送されている炭素繊維に表面処理剤を添加する工程である。
ステップS24は、移送シリンダ内のスクリューで炭素繊維と、表面処理剤とを混合する工程である。
【0057】
ステップS31は、ステップS12で押し出されている混練押出機の混練シリンダ内のマトリックス樹脂に、ステップS24で混合された炭素繊維と表面処理剤とを含む表面処理炭素繊維を接続部から供給して、混練し、マトリックス樹脂と、表面処理炭素繊維を混練する工程である。
ステップS32は、混練された炭素繊維強化樹脂を、吐出部から吐出し加工したものを入手する工程である。
これにより、炭素繊維強化樹脂を得ることができる。
【0058】
本発明のサイドフィーダーを用いることで、表面処理剤を効率よく利用して炭素繊維強化樹脂を得ることができる。本発明によることで、一般的に移送しにくい炭素繊維に、効率よく表面処理剤による表面処理ができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、炭素繊維を利用した樹脂の製造等に利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0060】
101 サイドフィーダー
111 製造装置
21 投入口
22 移送シリンダ
231 開口部
241、242 スクリュー
31 タンク
321 撹拌モーター
322 撹拌軸
323 撹拌翼
33 移送ポンプ
331、332 供給ライン
34 添加部
341 持手部
342 接触防止部
343 導入管
35 接続部
41 混練押出機
51 投入口
52 メインフィーダー
61 混練シリンダ
62 吐出口
図1
図2
図3