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特開2024-144598加飾シート、加飾シート付き表示装置、及び、シート状部材の巻取体
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  • 特開-加飾シート、加飾シート付き表示装置、及び、シート状部材の巻取体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144598
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】加飾シート、加飾シート付き表示装置、及び、シート状部材の巻取体
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/12 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G09F13/12
B32B33/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024119356
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2020106280の分割
【原出願日】2020-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】高倉 翼
(72)【発明者】
【氏名】山内 賢一
(72)【発明者】
【氏名】水落 雅人
(72)【発明者】
【氏名】山中 直人
(57)【要約】
【課題】加飾シートの縞模様を効果的に目立たなくさせることを目的とする。
【解決手段】加飾シート20は、複数の網点を含む意匠層31を有した絵柄部24と、絵柄部24の非形成部である複数の透過部26と、を有する。透過部は、加飾シートの端辺20a~20dに対して傾斜した方向LDTに線状に延びている。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の網点を含む意匠層を有した絵柄部と、
前記絵柄部の非形成部である複数の透過部と、を備える加飾シートであって、
前記透過部は、前記加飾シートの端辺に対して傾斜した方向に線状に延びている、加飾シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シート、加飾シート付き表示装置、及び、シート状部材の巻取体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、表示装置に重ねて用いられる加飾シート(スクリーン)が公知となっている。この加飾シートは、絵柄部と、絵柄部に設けられた開口部からなる透過部と、を有している。透過部は、加飾シートの背面に配置された表示装置からの画像光を通過させる。絵柄部は、表示装置の表示が停止している際に意匠を表示する。この加飾シートによれば、表示装置による所望の表示を可能としながら、表示を行っていない場合に表示装置を隠蔽して意匠を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-331132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような加飾シートにおいて種々の意匠を試したところ、絵柄部に表示される意匠に依存して、縞模様が観察されることがあった。このような外観上の不具合について鋭意検討を重ねたところ、透過部の配置の規則性と意匠を形成する絵柄部における網点の配置の規則性との干渉に起因したモアレが、縞模様の発生原因であること、更には、透過部の構成によって縞模様を効果的に目立たなくさせ得ることを確認した。すなわち、本発明は、加飾シートの縞模様を効果的に目立たなくさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による第1の加飾シートは、
複数の網点を含む意匠層を有した絵柄部と、
前記絵柄部の非形成部である複数の透過部と、を備える加飾シートであって、
前記透過部は、前記加飾シートの端辺に対して傾斜した方向に線状に延びている。
【0006】
本発明による第1の加飾シートにおいて、前記透過部は、前記端辺に対して10°以上80°以下の角度をなす方向に線状に延びていてもよい。
【0007】
本発明による第2の加飾シートは、
複数の網点を含む意匠層を有した絵柄部と、
前記絵柄部の非形成部である複数の透過部と、を備える加飾シートであって、
前記透過部は、前記複数の網点に含まれる同一色の網点の配列方向に対して傾斜した方向に線状に延びている。
【0008】
本発明による第2の加飾シートにおいて、前記透過部は、前記複数の網点に含まれる同一色の網点の配列方向に対して10°以上80°以下の角度をなす方向に線状に延びていてもよい。
【0009】
本発明による第1及び第2の加飾シートにおいて、前記複数の透過部の配列ピッチと、前記複数の網点に含まれる同一色の網点の配列ピッチとの差の大きさが、5μm以上となっていてもよい。
【0010】
本発明による第1及び第2の加飾シートにおいて、
各透過部は、互いに対向して当該透過部の長手方向に延びる第1長手方向縁および第2長手方向縁を有し、
前記第1長手方向縁および前記第2長手方向縁は、非直線部分を含んでいてもよい。
【0011】
本発明による第1及び第2の加飾シートにおいて、各透過部の幅は、その長手方向に沿って変化するようにしてもよい。
【0012】
本発明による第1及び第2の加飾シートにおいて、
各透過部は、互いに対向して当該透過部の長手方向に延びる第1長手方向縁および第2長手方向縁を有し、
前記第1長手方向縁および前記第2長手方向縁は、蛇行しながら前記長手方向に延びていてもよい。
【0013】
本発明による第1及び第2の加飾シートにおいて、
前記第1長手方向縁は、前記長手方向に直交する方向における前記第2長手方向縁から離間する側に突出した複数の外側凸部と、前記長手方向に直交する方向における前記第2長手方向縁に近接する側に突出した複数の内側凸部と、を含み、
前記第1長手方向縁の前記長手方向において隣り合う二つの外側凸部の前記長手方向に沿った離間長さは、前記複数の網点に含まれる同一色の網点の配列ピッチよりも小さく、 前記第2長手方向縁は、前記長手方向に直交する方向における前記第1長手方向縁から離間する側に突出した複数の外側凸部と、前記長手方向に直交する方向における前記第1長手方向縁に近接する側に突出した複数の内側凸部と、を含み、
前記第2長手方向縁の前記長手方向において隣り合う二つの外側凸部の前記長手方向に沿った離間長さは、前記複数の網点に含まれる同一色の網点の配列ピッチよりも小さくなっていてもよい。
【0014】
本発明による第1及び第2の加飾シートは、
前記絵柄部および前記透過部に対面して位置し且つ少なくとも前記絵柄部を支持する透明な基材部を、更に備え、
前記透過部の少なくとも一方の端部は、前記基材部の縁部まで延びていてもよい。
【0015】
本発明による加飾シート付き表示装置は、上述した本発明による第1及び第2の加飾シートのいずれかを備える。
【0016】
本発明による加飾シート付き表示装置は、前記加飾シートを重ねられた表示装置を更に備えるようにしてもよい。
【0017】
本発明による加飾シート付き表示装置において、前記透過部は、前記表示装置に含まれる同一色の画素の配列方向と非平行な方向に線状に延びていてもよい。
【0018】
本発明による加飾シート付き表示装置において、前記透過部は、前記同一色の画素の前記配列方向に対して10°以上80°以下の角度をなす方向に線状に延びていてもよい。
【0019】
本発明による加飾シート付き表示装置において、前記複数の透過部の配列ピッチと、前記表示装置に含まれる同一色の画素の配列ピッチとの差の大きさが、5μm以上となっていてもよい。
【0020】
本発明による加飾シート付き表示装置において、
各透過部は、互いに対向して当該透過部の長手方向に延びる第1長手方向縁および第2長手方向縁を有し、
前記第1長手方向縁は、前記長手方向に直交する方向における前記第2長手方向縁から離間する側に突出した複数の外側凸部と、前記長手方向に直交する方向における前記第2長手方向縁に近接する側に突出した複数の内側凸部と、を含み、
前記第1長手方向縁の前記長手方向において隣り合う二つの内側凸部の前記長手方向に沿った離間長さは、同一色の画素の配列ピッチよりも小さく、
前記第2長手方向縁は、前記長手方向に直交する方向における前記第1長手方向縁から離間する側に突出した複数の外側凸部と、前記長手方向に直交する方向における前記第1長手方向縁に近接する側に突出した複数の内側凸部と、を含み、
前記第2長手方向縁の前記長手方向において隣り合う二つの内側凸部の前記長手方向に沿った離間長さは、同一色の画素の配列ピッチよりも小さくなっていてもよい。
【0021】
本発明による巻取体は、
複数の網点を含む意匠層を有した絵柄部と、前記絵柄部の非形成部である複数の透過部と、を有するシート状部材を備え、
巻取軸線を中心として前記シート状部材を巻き取ってなり、
前記透過部は、前記シート状部材の長尺方向と非平行な方向に線状に延びている。
【0022】
本発明による巻取体において、前記透過部は、前記長尺方向に対して10°以上80°以下の角度をなす方向に線状に延びていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、加飾シートに観察され得る縞模様を効果的に目立たなくさせることできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、一実施の形態を説明するための図であって、加飾シート付き表示装置の一例を概略的に示す分解斜視図である。
図2図2は、図1の加飾シート付き表示装置の横断面図である。
図3図3は、図1の加飾シート付き表示装置を示す平面図であって、表示装置を表示状態とした状態を示している。
図4図4は、図1の加飾シート付き表示装置に含まれる遮光シートを示す平面図である。
図5図5は、図1の加飾シート付き表示装置に含まれる加飾シートの一例を示す部分平面図である。
図6図6は、図5の加飾シートの絵柄部を示す部分平面図である。
図7A図7Aは、図6の絵柄部における第1網点の配列を説明するための平面図である。
図7B図7Bは、図6の絵柄部における第2網点の配列を説明するための平面図である。
図7C図7Cは、図6の絵柄部における第3網点の配列を説明するための平面図である。
図8図8は、図2に対応する図であって、加飾シート付き表示装置の他の例を示す図である。
図9図9は、図1の加飾シート付き表示装置に含まれる加飾シートの製造方法の一例を説明するための図である。
図10図10は、図1の加飾シート付き表示装置に含まれる加飾シートの製造方法の一例を説明するための図である。
図11図11は、図1の加飾シート付き表示装置に含まれる加飾シートに用いられる巻取体を、巻取体から切り出された加飾シートとともに示す斜視図である。
図12図12は、第1網点および第3網点を省略して図5の加飾シートを示す部分拡大平面図である。
図13図13は、図5の加飾シートに含まれる透過部の一例を示す部分拡大平面図である。
図14図14は、図1に対応する図であって、加飾シート付き表示装置の更に他の例を示す斜視図である。
図15図15は、図2に対応する図であって、図14の加飾シート付き表示装置の横断面図である。
図16図16は、図14の加飾シート付き表示装置に含まれる表示装置の画素配列を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について、図示された具体例を参照して説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0026】
なお、本明細書において、「層」、「シート」及び「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「層」という用語は、シート或いはフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0027】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0028】
図1は、本発明による一実施の形態の加飾シート付き表示装置1を概略的に示す分解斜視図である。図1に示されるように、加飾シート付き表示装置1は、表示面11を有する表示装置10と、表示面11に対面して配置された加飾シート20と、を有している。なお、図示されている例では、加飾シート付き表示装置1は、平板状に示されているが、加飾シート付き表示装置1の各構成要素が湾曲することで、加飾シート付き表示装置1が湾曲形状を有するようにしてもよい。例えば、加飾シート20のみが湾曲するようにしてもよいし、加飾シート20及び表示装置10の少なくとも表示面11が湾曲するようにしてもよい。
【0029】
この加飾シート付き表示装置1は、図1に示された非表示状態と、図3に示された表示状態と、をとることができる。図1に示された非表示状態では、加飾シート20の絵柄部24に形成された意匠を表示することができる。図3に示された表示状態では、表示装置10によって形成される画像を表示することができる。そして、本実施の形態に係る加飾シート付き表示装置1及び加飾シート20では、網点パターンを用いて表現される優れた意匠を表示することを可能にするための工夫がなされている。
【0030】
まず、加飾シート付き表示装置1の構成について、図示された具体例を参照して説明する。
【0031】
表示装置10として画像を表示するための種々の装置を用いることができる。表示装置10は、典型的には、表示面11から画像光を射出することで画像を表示する装置とすることができる。
【0032】
図2に示された一例において、表示装置10は、面光源装置12及び遮光シート14を有している。面光源装置12は、面状に光を発光する装置である。面光源装置12は、光を発光する発光面13を有している。面光源装置12として、特に限定されることなく、種々の型式、例えばエッジライト型や直下型の装置を用いることができる。
【0033】
遮光シート14は、面光源装置12の発光面13上に配置されている。遮光シート14は、表示装置10の表示面11を形成する。遮光シート14の平面図である図4に示すように、遮光シート14は、表示したい画像のパターンと同一パターンの開口領域14aと、開口領域14aに隣接する遮光領域14bと、に平面分割されている。遮光領域14bは、可視光吸収性を有し、面光源装置12で発光された光を遮蔽する。遮光領域14bは、黒色顔料等を含んだ樹脂材料を用いて作製され得る。より具体的には、後述する絵柄部24の遮光層32と同様の材料を用いて作製され得る。開口領域14aは、面光源装置12で発光された光を透過させる透明または開口した領域である。すなわち、遮光シート14は、所望のパターンで光を透過させる遮光マスクとして機能する。図4に示された遮光シート14の一例において、開口領域14aはアルファベットの「D」の形状を有している。
【0034】
なお、本明細書で用いる「透明」とは、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される可視光透過率が、50%以上であることを意味し、好ましくは80%以上である。
【0035】
以上の構成からなる図示された表示装置10は、面光源装置12が光を発光した場合に、静止画としてアルファベットの「D」を表示することができる。また、遮光シート14を変更することによって、すなわち別の遮光シート14を用いることによって、発光面13の外輪郭の内部に種々の画像を表示することができる。この点から、図示された表示装置10の表示面11は、発光面13に対面する領域と言える。
【0036】
ただし、表示装置10は、図2に示された例に限られない。例えば、面光源装置12の発光面13が、表示した画像のパターンと同一パターンを有するようにして、遮光シート14を省略するようにしてもよい。また、遮光シート14が、面光源装置12から離間して、加飾シート20と積層されていてもよい。この例において、遮光シート14は、粘着層や接着層等の接合層を介して加飾シート20に接合されて加飾シート20と一体化されていてもよい。さらに、表示装置10として、例えば動画を表示する装置を用いるようにしてもよい。具体的には、後に言及するようにドットマトリックス方式の表示装置を用いることができる。ドットマトリックス方式の表示装置では、ドットを形成する画素の発光状態を個別に制御することで所望の画像を形成することができる。
【0037】
次に、加飾シート20について説明する。加飾シート20は、表示装置10の表示面11に対面して配置され、表示面11が外部から直接観察されないよう、少なくとも表示面11の全体を覆っている。加飾シート20は、表示装置10の表示面11の全体を覆うことができるよう、表示面11の寸法以上の寸法を有している。図示された加飾シート20は、表示面11と、表示面11の周囲に位置する周囲領域11aと、を含む表示装置10の前面の全領域を覆う寸法を有している。すなわち、加飾シート20は、表示装置10の全体を隠蔽している。図1に示す例において、加飾シート20は、全体として表示装置10の表示面11と同一の方向に広がる平板状の部材となっている。加飾シート20の厚さは、例えば20μm以上550μm以下とすることができる。
【0038】
図示された例において、加飾シート20は平面視において矩形形状を有している。加飾シート20は、長辺として互いに平行に延びる第1端辺20a及び第2端辺20bと、短辺として互いに平行に延びる第3端辺20c及び第4端辺20dと、を含んでいる。図1に示すように、第1端辺20a及び第2端辺20bは、第1基準方向DS1に直線状に延び、第3端辺20c及び第4端辺20dは、第1基準方向DS1に垂直な第2基準方向DS2に直線状に延びている。
【0039】
なお、図面間での方向関係を明確化するため、いくつかの図面には、第1基準方向DS1及び第2基準方向DS2、さらに第1基準方向DS1及び第2基準方向DS2の両方に直交する法線方向ND等を、図面間で共通する方向として示している。また、図4には、遮光シート14が加飾シート付き表示装置1に組み込まれた状態における加飾シート20に対する相対位置を明確にするため、加飾シート付き表示装置1において遮光シート14と積層された加飾シート20に関する各方向を示している。
【0040】
加飾シート20は、意匠を表示して、加飾シート付き表示装置1に意匠性を付与する。本実施の形態において、加飾シート20は、図2及び図5に示すように絵柄が形成された絵柄部24と、絵柄部24の開口部として設けられた透過部26と、を有している。透過部26は、表示装置10からの画像光を透過させる。絵柄部24は、複数の網点を用いて意匠を表示する意匠層31を含んでいる。図示された例において、絵柄部24は、意匠層31に加えて、遮光層32を更に含んでいる。また、図示された加飾シート20は、絵柄部24及び透過部26と法線方向NDに対面する位置に、基材部22を有している。以下、加飾シート20の各構成要素について説明する。
【0041】
まず、絵柄部24を支持する基材部22について説明する。基材部22は、透明なフィルム状の部材である。図2に示された例において、基材部22は、加飾シート付き表示装置1の最も表示装置10に近接する側に位置している。基材部22として、樹脂製のフィルムを用いることができる。基材部22は、可視光を透過し、絵柄部24を適切に支持し得るものであればいかなる材料でもよいが、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)等を挙げることができる。基材部22は、可視光透過性や、絵柄部24及び透過部26の適切な支持性等を考慮すると、10μm以上500μm以下の厚さを有していることが好ましい。
【0042】
次に、絵柄部24及び透過部26について順に説明する。図2に示すように、絵柄部24は、加飾シート20の法線方向NDに基材部22上に順に積層された遮光層32及び意匠層31を有している。このうち、遮光層32が、加飾シート20の法線方向NDに沿って表示装置10に近接し、意匠層31が、法線方向NDに沿って表示装置10から離間する。図示された例において、意匠層31は、絵柄部24における最も観察者側の層を形成している。
【0043】
意匠層31は、加飾シート20が表示する意匠を形成する。意匠層31は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などの絵柄を、意匠として形成することができる。意匠層31は、背景を表示する意匠表現を行うこともできる。例えば、加飾シート付き表示装置1が設けられる周辺環境と調和させることができる意匠として、木目調や大理石調の絵柄や幾何学模様を、意匠層31が表示するようにしてもよい。
【0044】
本実施の形態において、意匠層31は、多数の網点41,42,43を含んでおり、網点41,42,43によって意匠を表示する。この意匠層31は、同一色の網点41,42,43を規則的に配置するとともに、各網点41,42,43の大きさを変化させることで、意匠(画像)を表示することができる。網点41,42,43を用いることで、網点41,42,43の遮光層32上での密度分布(各網点の大きさの分布)を調整することで、濃度や明るさを調節することができる。また、図示された例のように、異なる色の網点41,42,43を有する場合には、異なる色で密度分布(配列や各網点の大きさの分布)を調整することで、色味を調節することができる。図示された例において、意匠層31を形成する網点41,42,43は、遮光層32上に設けられている。
【0045】
一例として、図6に示された意匠層31は、シアンのドットパターンを形成する第1網点41と、マゼンタのドットパターンを形成する第2網点42と、イエローのドットパターンを形成する第3網点43と、を含んでいる。この意匠層31によれば、フルカラーで意匠を表示することも可能となる。
【0046】
ここで、図7Aは、意匠層31を示す拡大平面図であって、遮光層32上における第1網点41の配列パターンを示している。図7Aでは、遮光層32上における第2網点42及び第3網点43の図示を省略している。同様に、図7Bは、意匠層31を示す拡大平面図であって、遮光層32上における第2網点42の配列パターンを示している。図7Bでは、遮光層32上における第1網点41及び第3網点43の図示を省略している。さらに、図7Cは、意匠層31を示す拡大平面図であって、遮光層32上における第3網点43の配列パターンを示している。図7Cでは、遮光層32上における第1網点41及び第2網点42の図示を省略している。
【0047】
図7Aに示すように、第1網点41は、第1網点配列方向AD1及び第2網点配列方向AD2に配列されている。すなわち、第1網点41は、遮光層32上に二次元配列されている。第1網点41は、第1網点配列方向AD1に一定の第1網点配列ピッチP1で配列されている。また、第1網点41は、第2網点配列方向AD2に一定の第2網点配列ピッチP2で配列されている。複数の第1網点41の各々は、所望の意匠表現を行うため遮光層32上での位置に応じて大きさ(面積)を変化させている。
【0048】
なお、図示された例において、第1網点配列方向AD1は第2網点配列方向AD2に対して垂直となっている。そして、第1網点配列方向AD1は第1基準方向DS1と平行になっている。したがって、第1網点41は、第1端辺20a及び第2端辺20bと平行な方向に配列されている。また、第2網点配列方向AD2は第2基準方向DS2と平行になっている。したがって、第1網点41は、第3端辺20c及び第4端辺20dと平行な方向に配列されている。
【0049】
同様に、図7Bに示すように、第2網点42は、第3網点配列方向AD3及び第4網点配列方向AD4に配列されている。すなわち、第2網点42は、遮光層32上に二次元配列されている。第2網点42は、第3網点配列方向AD3に一定の第3網点配列ピッチP3で配列されている。また、第2網点42は、第4網点配列方向AD4に一定の第4網点配列ピッチP4で配列されている。複数の第2網点42の各々は、所望の意匠表現を行うため遮光層32上での位置に応じて大きさ(面積)を変化させている。図示された例において、第3網点配列方向AD3は第4網点配列方向AD4に対して垂直となっている。
【0050】
さらに、図7Cに示すように、第3網点43は、第5網点配列方向AD5及び第6網点配列方向AD6に配列されている。すなわち、第3網点43は、遮光層32上に二次元配列されている。第3網点43は、第5網点配列方向AD5に一定の第5網点配列ピッチP5で配列されている。また、第3網点43は、第6網点配列方向AD6に一定の第6網点配列ピッチP6で配列されている。複数の第3網点43の各々は、所望の意匠表現を行うため遮光層32上での位置に応じて大きさ(面積)を変化させている。図示された例において、第5網点配列方向AD5は第6網点配列方向AD6に対して垂直となっている。
【0051】
第1網点配列方向AD1、第3網点配列方向AD3及び第5網点配列方向AD5は、互いに傾斜している。すなわち、第1網点配列方向AD1、第3網点配列方向AD3及び第5網点配列方向AD5は、0°より大きく90°より小さい角度を互いに対してなしている。同様に、第2網点配列方向AD2、第4網点配列方向AD4及び第6網点配列方向AD6は、互いに傾斜している。すなわち、第2網点配列方向AD2、第4網点配列方向AD4及び第6網点配列方向AD6は、0°より大きく90°より小さい角度を互いに対してなしている。このように第1網点41、第2網点42及び第3網点43の配列方向を傾斜させることで、第1網点41の配列の規則性、第2網点42の配列の規則性および第3網点配列方向AD3の配列の規則性に起因して生じるモアレを効果的に目立たなくさせることができる。図示された例において、第3網点配列方向AD3は、第1網点配列方向AD1に対して図面において時計回り方向に30°傾斜している。第5網点配列方向AD5は、第3網点配列方向AD3に対して図面において時計回り方向に30°傾斜している。
【0052】
網点41,42,43は、種々の印刷方法によって、例えばグラビア印刷によって、遮光層32上に形成することができる。図6に示された例において、第1網点41、第2網点42及び第3網点43は、この順番で遮光層32上に印刷されている。
【0053】
なお、図示された意匠層31における網点41,42,43に関する構成は例示に過ぎず、種々の変更が可能である。例えば、意匠層31は、単色の網点のみを有するようにしてもよいし、二色の網点を有するようにしてもよいし、四色以上の網点を有するようにしてもよい。また、第1網点41、第2網点42及び第3網点43の遮光層32上における積層順も、図示された例に限定されず、種々の変更が可能である。
【0054】
さらに、図示された例において、意匠層31を形成する網点41,42,43は、遮光層32上に設けられている。しかしながら、この例に限られず、意匠層31が、遮光層32上に設けられた下地層を更に含み、この下地層上に網点41,42,43が設けられるようにしてもよい。下地層は、種々の色の層として構成され得る。すなわち、下地層を設けることで、網点41,42,43が配置される面の色を遮光層32に制約されることなく選択することができる。この点において、遮光層32の存在が意匠層31での意匠表現に影響を及ぼすことを防止する観点から、下地層は白色であることが好ましい。白色の意匠層31によれば、反射率(とりわけ散乱反射率)も高くなり、意匠を明瞭に表示することもできる。
【0055】
次に、遮光層32について説明する。遮光層32は、表示装置10に対面する側から意匠層31を覆うように設けられている。遮光層32は、表示装置10からの可視光が意匠層31に入射しないよう、可視光遮光性を有している。したがって、遮光層32の可視光透過率は、意匠層31の可視光透過率よりも低くなっていることが好ましい。遮光層32は、例えば光吸収粒子をバインダー樹脂中に含み得る。光吸収粒子としては、カーボンブラックやチタンブラック等の黒色顔料を例示することができる。十分な厚さの遮光層32が意匠層31を覆っていると、意匠層31によって形成される意匠を濃く明瞭に表示することができる。具体的な例として、遮光層32の厚さを、1μm以上20μm以下とすることができる。
【0056】
次に、透過部26について説明する。透過部26は、加飾シート20のうちの表示装置10からの画像光が透過する部位となる。したがって、透過部26は、高い可視光透過性を有する部位となっている。透過部26は、絵柄部24に設けられた開口部として構成されている。言い換えると、透過部26は、絵柄部24の非形成部として構成されている。図2に示された例において、透過部26は、表示装置10側へ向けて開口している。
【0057】
しかしながら、この例に限られず、図8に示すように、隣り合う絵柄部24の間に透明樹脂が充填され、この透明樹脂によって透過部26が形成されるようにしてもよい。図8に示された例において、加飾シート20は、法線方向NDに沿って最も表示装置10から離間する側の層として、カバー層33を更に有している。カバー層33が、透過部26を形成している。カバー層33は、隣り合う絵柄部24の間だけでなく、法線方向NDから絵柄部24を覆うように設けられている。カバー層33は、加飾シート20の観察者側の表面層を形成している。このカバー層33は、絵柄部24を保護し、かつ、透過部26に埃等の異物が混入することを効果的に防止することができる。
【0058】
カバー層33は、基材部22との屈折率が小さい材料によって形成されることが好ましい。カバー層33と基材部22との屈折率差を小さくすることで、カバー層33と基材部22との界面での屈折を効果的に抑制することができる。これにより、表示装置10によって表示される画像の歪みを効果的に防止することができる。例えば、加飾シート20の基材部22として1.53から1.57の屈折率を有するアクリル樹脂が使用される場合、カバー層33の好ましい材料として、1.33から1.77の屈折率を有するポリメタクリル酸メチル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、エポキシ、ポリカーボネート、ポリスチレンなどを用いることができる。
【0059】
図5に示すように、平面視における加飾シート20は、絵柄部24及び透過部26に区分けされている。
【0060】
ここで、図5は、加飾シート20を示す部分平面図である。図5に示すように、複数の透過部26は配列方向ADTに配列されている。各透過部26は、配列方向ADTと非平行な方向に線状に延びている。図示された例において、各透過部26は、配列方向ADTと垂直な長手方向LDTに直線状に延びている。また、各透過部26は、長手方向LDTに沿って概ね一定の幅を有している。また、図示された例において、透過部26の両端部は、基材部22上を基材部22の縁部まで延びている。
【0061】
図5に示された例において、平面視における加飾シート20は、絵柄部24及び透過部26に区分けされている。そして、絵柄部24及び透過部26は、配列方向ADTに交互に隙間無く配列されている。したがって、複数の絵柄部24は、透過部26と同様に、配列方向ADTに配列されている。各絵柄部24は、配列方向ADTと非平行な方向に線状に延びている。図示された例において、各絵柄部24は、配列方向ADTと垂直な長手方向LDTに直線状に延びている。また、各絵柄部24は、長手方向LDTに沿って概ね一定の幅を有している。
【0062】
平面視における加飾シート20の面積に対する透過部26の面積の割合(以下、「開口率」という。)は、観察者が表示装置10からの画像光を実用に耐える程度に観察することを可能とするために、1%以上とするのが好ましく、3%以上とするのがより好ましく、5%以上とするのが更に好ましい。一方、表示装置10の表示面11に画像を表示していない状態では、加飾シート20は絵柄部24の意匠を表示する。加飾シート20の開口率は、加飾シート20の意匠を観察者が実用に耐える程度に明確に観察できるようにするために、60%以下とするのが好ましく、40%以下とするのがより好ましく、20%以下とするのが更に好ましい。
【0063】
次に、以上のような構成からなる加飾シート20の製造方法の一例について説明する。
【0064】
まず、基材部22をなすようになるフィルム材22A(図9参照)を用意する。このようなフィルム材22Aとして上述した透明な樹脂製フィルム材を用いることができる。このフィルム材22A上に、遮光層32をなすようになるインクを塗布する。次に、フィルム材22A上のインクを乾燥して固化することで、フィルム材22Aからなる基材部22上に遮光膜32Aが形成される。得られた遮光膜32Aは、遮光層32とは異なり、ベタ膜として形成されている。その後、遮光膜32A上に網点パターンを設けることで、意匠膜31Aを形成する。網点パターンは、一例としてグラビア印刷により、予め設定されたパターン及び大きさ分布の網点を、遮光膜32A上に設けることによって得られる。このようにして、多数の網点41,42,43を含んだ意匠膜31Aが、遮光膜32A上に形成される。以上の手順により、図9に示すように、フィルム材22A上に遮光膜32A及び意匠膜31Aをこの順番で積層してなる積層体35が得られる。
【0065】
次に、積層体35における意匠膜31A及び遮光膜32Aをパターニングすることで、絵柄部24及び絵柄部24の非形成部としての透過部26を形成する。一例として、図10に示すように、積層体35の透過部26を形成すべき位置にレーザー光を照射して、照射領域における意匠膜31A及び遮光膜32Aを除去することで、透過部26を形成することができる。このとき、積層体35にフィルム材22Aの側からレーザー光を照射することができる。レーザー光は、フィルム材22Aを透過して、遮光膜32Aに効率的に吸収される。これにより、遮光膜32Aが溶融し、隣接する意匠膜31Aとともに、蒸発する。レーザー光の照射によって開口が形成され、開口を形成された意匠膜31Aから意匠層31が得られ、開口を形成された遮光膜32Aから遮光層32が得られる。このようにして、フィルム材22A上に絵柄部24及び透過部26を有した加飾シート20が得られる。
【0066】
ここで、生産効率を考慮すると、長尺の積層体35を作製し、長尺の積層体35に対してレーザー光を照射して透過部26を形成することが好ましい。すなわち、いわゆるロール・トゥ・ロールで、図11に示すように、絵柄部24及び透過部26を有した長尺のシート状部材18を作製することが、生産効率に照らして好ましい。図11に示されたシート状部材18は、長尺方向LLDに細長く延びるシート状の部材である。シート状部材18は、長尺方向LLDに非平行な巻取軸線RAを中心として、とりわけ長尺方向LLDに垂直な巻取軸線RAを中心として、巻き取りコア19に巻き取られ、巻取体17として取り扱われ得る。巻取体17からシート状部材18を巻きほどき、巻きほどかれたシート状部材18を断裁することで、加飾シート20が得られる。このとき、シート状部材18の歩留まりを考慮すると、シート状部材18を長尺方向LLDに直交する方向に沿った断裁線CLに沿って断裁することが好ましい。なお、図11に示された例では、シート状部材18の長手方向縁18aは、加飾シート20の長辺である第1端辺20a及び第2端辺20bとなる。
【0067】
図11に示された例において、シート状部材18における絵柄部24及び透過部26は、長尺方向LLDと非平行な方向、とりわけ長尺方向LLDに対して時計回りに45°傾斜した方向に線状に延びている。このシート状部材18を長尺方向LLDに垂直な方向に断裁することで得られた加飾シート20において、絵柄部24及び透過部26は、シート状部材18の長手方向縁18aに相当する加飾シート20の端辺20a,20bに対して傾斜、とりわけ、時計回りに45°傾斜する。同様に、得られた加飾シート20において、絵柄部24及び透過部26は、断裁線CLに沿った加飾シート20の端辺20c,20dに対して傾斜、とりわけ、反時計回りに45°傾斜する。
【0068】
なお、本実施の形態の加飾シート20では、透過部26が線状に延びている。このような透過部26は、積層体35及びレーザー照射装置100を相対移動させながら、レーザー照射装置100からレーザー光を連続的または高速パルス状に断続的に射出することで、作製され得る。
【0069】
また、図8に示された加飾シート20の製造では、作製された絵柄部24及び透過部26上に、カバー層33をなすようになるインクを塗布する。次に、基材部22及び絵柄部24上のインクを乾燥して固化することで、基材部22及び絵柄部24上にカバー層33を作製することができ、カバー層33が透過部26を形成するようになる。
【0070】
次に、本実施の形態の加飾シート付き表示装置1の作用について説明する。
【0071】
表示装置10が非表示状態にあり表示面11から画像光が発光されていない状態では、図1に示されているように、表示装置10の表示面11に重ねた配置された加飾シート20が視認される。そして、加飾シート20において遮光層32よりも観察者側に位置する意匠層31が、図2に示された例では直接、図8に示された例では透明なカバー層33越しに、観察される。意匠層31は、網点41,42,43を用いた豊かな表現力により、優れた意匠を明瞭に表示することができる。すなわち、画像の非表示状態において、通常、黒く観察される表示装置を隠蔽することができることから、周囲環境との意匠の調和や統一性を確保しながら表示装置10を設置することができる。また昨今では表示装置10の適用範囲が急速に広がっており、加飾シート20を用いることによって、意匠性が重要視される自動車や家具、住宅建材の表面部材等へ、表示装置10を適用することも可能となる。
【0072】
表示面11が表示状態にある場合、表示面11から画像光が射出する。表示面11から射出した画像光は、加飾シート20の基材部22を透過し、絵柄部24又は透過部26に向かう。透過部26に入射する画像光は、透過部26を透過して加飾シート20から観察者側へ出射する。透過部26を通過した画像光は、図3に示すように、表示面11上に観察される画像を形成する。
【0073】
一方、絵柄部24へ向かった画像光は、絵柄部24の最も表示装置10の側に位置する遮光層32で吸収される。すなわち、表示装置10からの画像光は、絵柄部24を透過することはない。したがって、画像光が意匠層31を背面側から照明することもない。これにより、表示装置10によって表示される画像が、加飾シート20の絵柄部24に形成された意匠と混色してしまうことを効果的に防止することができる。また、表示装置10によって画像を表示している際に、絵柄部24の意匠が目立ってしまうことも効果的に防止することができる。これにより、表示装置10が表示状態にある場合、表示装置10によって表示される画像を明瞭に観察することができる。
【0074】
ところで、加飾シート20の意匠層31に形成する種々の意匠を試したところ、絵柄部に表示される意匠に依存して、加飾シート20上に縞模様が観察されることがあった。このような外観上の不具合は、加飾シート20の用途に照らして致命的な不具合になりかねない。この点について本件発明者等が鋭意検討を重ねたところ、縞模様の発生原因が、透過部26の配置の規則性と意匠を形成する絵柄部24の意匠層31における網点41,42,43の配置の規則性との干渉に起因したモアレであることが推測された。この推定に基づいて更に鋭意検討を重ねたところ、透過部26が以下に説明する構成を有することで、縞模様を効果的に目立たなくさせ得ることを確認した。
【0075】
すなわち、本実施の形態において、加飾シート20は以下の構成を有しており、この構成に起因して、縞模様を目立たなくさせることができる。したがって、本実施の形態による加飾シート20は、表示装置10による画像の表示を可能としながら、非表示状態にある表示装置10を隠蔽して予め期待された優れた意匠を表示することができる。このように表示装置10の設置にあたって周囲環境との調和や統一性を確保し得る本実施の形態は、とりわけ意匠性が重要視される物品、例えば自動車や家具、住宅建材等の表面部材に好適である。
【0076】
まず、本実施の形態において、透過部26は、複数の網点41,42,43に含まれる同一色の網点の配列方向に対して傾斜した方向に延びている。このとき、複数の透過部26の配列方向ADTは、通常、複数の網点41,42,43に含まれる同一色の網点の配列方向に対して傾斜した方向に延びやすくなる。とりわけ直線状に延びる透過部26の配列方向ADTは透過部26の長手方向LDTと垂直となり、複数の網点41,42,43に含まれる同一色の網点の配列方向に対して傾斜する。一般的にモアレを目立たなくさせるには、干渉を生じさせる二つの要素が規則性を呈する方向を互いに対して傾斜させることが有効とされている。本実施の形態による加飾シート20によれば、網点の配列の規則性と透過部26の配列の規則性との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。
【0077】
図示された例において、透過部26の長手方向LDTは、いずれの色の網点41,42,43の配列方向AD1~AD6に対しても傾斜している。したがって、図示された例によれば、縞模様をより効果的に目立たなくさせることができる。
【0078】
また図示された例において、透過部26は、複数の網点41,42,43に含まれる同一色の網点の配列方向に対して10°以上80°以下の角度をなす方向に線状に延びている。このような加飾シート20によれば、縞模様をより効果的に目立たなくさせることができる。とりわけ図示された例において、透過部26は、複数の網点41,42,43に含まれるいずれの色の網点の配列方向に対しても10°以上80°以下の角度をなす方向に線状に延びている。したがって、図示された例によれば、縞模様をより効果的に目立たなくさせることができる。
【0079】
ところで、加飾シート20の絵柄部24において、表示対象となる意匠のいずれかの色成分を表示する網点は、通常、加飾シート20の端辺20a~20dと平行な方向に配列される。枚葉状の加飾シート20を作製する際、加飾シート20の端辺20a~20dは、加飾シート20の外形状上における網点の配列パターンの基準とし易いからである。また、加飾シート20が長尺のシート状部材18として製造される場合には、表示対象となる意匠のいずれかの色成分を表示する網点は、通常、シート状部材18の長尺方向LLDに配列される。シート状部材18の長尺方向LLDは、シート状部材18の外形状上における網点の配列パターンの基準とし易いからである。そして上述したように歩留まりを考慮すると、加飾シート20は、シート状部材18を長尺方向LLDに垂直な断裁線CLに沿って断裁することによって、作製される。このようにしてシート状部材18から得られた加飾シート20においても、いずれかの色成分を表示する網点は、加飾シート20の端辺20a~20dと平行な方向に配列される。
【0080】
この点に関連して、本実施の形態による加飾シート20において、透過部26は、加飾シート20の端辺20a~20dに対して傾斜した方向に線状に延びている。この結果、複数の透過部26の配列方向ADTも、加飾シート20の端辺20a~20dに対して傾斜した方向に線状に延びるようになる傾向が生じる。そして直前で説明したように、網点の位置決めのし易さから、表示対象となる意匠のいずれかの色成分を表示する網点は、通常、加飾シート20の端辺20a~20dと平行な方向に配列される。図示された例では、第1網点41が加飾シート20の端辺20a~20dと平行な方向AD1,AD2に配列されている。したがって、加飾シート20の端辺に対して傾斜した方向に線状に延びる透過部26の配列方向ADTは、いずれかの色成分を表示する網点の配列方向に対して傾斜するようになる。結果として、透過部26の長手方向LDTを加飾シート20の端辺に対して傾斜させることで、網点の配列の規則性と透過部26の配列の規則性との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。
【0081】
とりわけ図示された例において、透過部は、加飾シート20の四つの端辺20a~20dに対して10°以上80°以下の角度をなす方向に線状に延びている。この具体例によれば、複数の透過部26の配列方向ADTも、透過部26によって表示される意匠のいずれかの色成分を表示する網点41の配列方向に対して10°以上80°以下の角度をなしやすくなる。したがって、網点41の配列の規則性と透過部26の配列の規則性との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。
【0082】
また図12に示すように、複数の透過部26の配列ピッチPTは、複数の網点41,42,43に含まれる同一色の網点の配列ピッチと同程度であることが好ましい。具体的には、複数の透過部26の配列ピッチPTと、複数の網点41,42,43に含まれる同一色の網点の配列ピッチとの差が、-5μm以下または5μm以上であることが好ましい。さらに言い換えると、複数の透過部26の配列ピッチPTと、複数の網点41,42,43に含まれる同一色の網点の配列ピッチとの差の大きさが、5μm以上であることが好ましい。ここで、図12は、加飾シート20を示す拡大部分平面図である。ただし図12において、第1網点41及び第3網点43の図示を省略し、第2網点42と絵柄部24及び透過部26との位置関係が示されている。
【0083】
透過部26の配列ピッチPTは、複数の透過部26の配列方向に隣り合う任意の二つの透過部26の当該配列方向に沿った距離の平均値のことである。そして、複数の透過部26の配列方向は、当該方向に隣り合う任意の二つの透過部26の当該方向に沿った距離の平均値が最小となる方向のことである。そして、透過部26の配列ピッチPTを特定する上で用いられる「二つの透過部26の当該配列方向に沿った距離」は、後述するように、対象となる二つの透過部26についての配列方向における中心位置の配列方向に沿った距離として特定される。
【0084】
同一色の網点の配列ピッチは、当該同一色の複数の網点の配列方向に隣り合う任意の二つの同一色の網点の当該配列方向に沿った距離の平均値のことである。「二つの同一色の網点の当該配列方向に沿った距離」は、対象となる二つの同一色の網点についての重心位置の配列方向に沿った距離として特定される。
【0085】
ただし、網点については、意匠層によって表示するべき意匠の濃淡や色等に応じて、大きさが異なるだけでなく、規則的な配列により配置されるべき位置に配置されないこともある。このような網点の省略は、同一色の網点の全体的な配列から、把握することができる。そして、対象となる網点の配列方向において省略された網点の両側に位置する二つの網点の距離は、特定すべき網点の配列ピッチの概ね整数倍となる。網点のピッチを特定する際には、省略された網点の両側に位置する二つの網点間の距離は、省略された網点の個数に1を足すことで得られた数で実際に測定された距離を除した値として用いる。
【0086】
さらに、複数の網点が用いられている場合、対象とする色の網点が、他の色の網点によって、完全に覆われる場合や、部分的に覆われることが想定される。完全に覆われて対象となる網点が観察され得なくなっている場合は、上述した網点が省略された場合と同様の取り扱いにより、当該色の網点の配列ピッチを特定する。一方、対象とする網点が他の色の網点によって部分的に覆われている場合には、部分的に覆われた網点が、全体として円形状を有するものとして全体形状を特定し、更に配列ピッチを特定する上で必要となる当該網点の重心位置を全体形状に基づいて特定する。
【0087】
なお、各網点の重心位置の特定や、部分的に他の色の網点で覆われた網点の全体形状の特定は、画像処理により実現され得る。
【0088】
図12に示された例において、複数の透過部26の配列ピッチPTは、複数の網点41,42,43に含まれる同一色の網点42の第3網点配列ピッチP3及び第4網点配列ピッチP4よりも5μm以上小さく又は5μm以上大きくなっている。言い換えると、複数の透過部26の配列ピッチPTと同一色の網点42の第3網点配列ピッチP3との差の大きさは5μm以上となっており、複数の透過部26の配列ピッチPTと同一色の網点42の第4網点配列ピッチP4との差の大きさが5μm以上となっている。この具体例によれば、各第2網点42が絵柄部24に残りやすくなる。言い換えると、透過部26と完全に重なってしまう第2網点42の発生を効果的に抑制することができる。したがって、絵柄部24の意匠層31によって、予め期待した濃淡や配色にて意匠を表示することが可能となる。また、透過部26の配列ピッチPTと同一色の網点42の網点配列ピッチとの差の大きさを5μm以上とすることで、透過部26の配列と網点の配列との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。
【0089】
なお、図示された例では、図12での図示は省略されているものの、複数の透過部26の配列ピッチPTは、いずれの網点のいずれの方向に沿った配列ピッチに対しても5μm以上異なる大きさを有している。具体的には図示された例において、複数の透過部26の配列ピッチPTと、第1網点41の第1網点配列方向AD1に沿った第1網点配列ピッチP1との差の大きさが5μm以上となっている。同様に、図示された例において、複数の透過部26の配列ピッチPTと、第1網点41の第2網点配列方向AD2に沿った第2網点配列ピッチP2との差の大きさが5μm以上となっている。また、図示された例において、複数の透過部26の配列ピッチPTと、第3網点43の第5網点配列方向AD5に沿った第5網点配列ピッチP5との差の大きさが5μm以上となっている。同様に、図示された例において、複数の透過部26の配列ピッチPTと、第3網点43の第6網点配列方向AD6に沿った第6網点配列ピッチP6との差の大きさが5μm以上となっている。
【0090】
透過部26の配列ピッチPTと同一色の網点42の網点配列ピッチとの差の大きさは、上述したように5μm以上であることが好ましいが、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましい。この場合、上述した作用効果、すなわち、意匠層31が意匠性をより効果的に発揮することができ、透過部26と網点42との規則性に起因したモアレを効果的により目立たなくさせることができる。
【0091】
ところで図13に示すように、各透過部26は、互いに対向して当該透過部26の長手方向LDTに延びる第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28を有している。図13に示すように、第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28の各々は、非直線部分を含むこと、言い換えると直線でない部分を含むことが好ましい。第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28は、当該透過部26の長手方向LDTに沿った同一の領域に、共に直線部分を含まないことが好ましい。第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28の各々は、その全長に亘って非直線であること、言い換えるとその全長に亘って直線でないことが好ましい。第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28は、互いに異なることが好ましい。第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28は、当該透過部26の長手方向LDTに沿った任意の領域において、互いに異なることが好ましい。第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28は、対称でないことが好ましい。例えば、第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28は、線対称でないことが好ましく、または回転対称でないことが好ましい。透過部26の長手方向LDTに直交する方向に沿った第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28の離間距離で表される透過部26の幅が一定ではないことが好ましい。透過部26の幅は、段階的または断続的に変化するのではなく連続的に変化することが好ましく、当該透過部26の全長にわたって連続的に変化することが好ましい。
【0092】
線状に延びる透過部26は、透過部を二次元配列させる場合と比較して、より大きな開口面積を持つようになる。第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28のこれらの構成によれば、透過部26の存在を視認されにくくすることができる。また、透過部26の配列の規則性を弱くすることができるので、透過部26の配列と網点の配列との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。これにより、絵柄部24によって優れた意匠を表示することができる。
【0093】
さらに図示された例において、第1長手方向縁27は、蛇行しながら、言い換えると透過部26の長手方向LDTと直交する配列方向ADTにおける両側に曲がりながら、透過部26の長手方向LDTに延びている。このような例によれば、透過部26の第1長手方向縁27をより不明瞭にして、透過部26の存在をさらに視認されにくくすることができる。また、透過部26の配列の規則性を弱くすることができるので、透過部26の配列と網点の配列との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。これにより、絵柄部24によって優れた意匠を表示することができる。
【0094】
同様に図示された例において、第2長手方向縁28は、蛇行しながら、言い換えると透過部26の長手方向LDTと直交する配列方向ADTにおける両側に曲がりながら、透過部26の長手方向LDTに延びている。この例によれば、透過部26の第2長手方向縁28をより不明瞭にして、透過部26の存在をさらに視認されにくくすることができる。また、透過部26の配列の規則性を弱くすることができるので、透過部26の配列と網点の配列との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。これにより、絵柄部24によって優れた意匠を表示することができる。
【0095】
図11に示すように、第1長手方向縁27は、透過部26の長手方向LDTに垂直な配列方向ADTにおける第2長手方向縁28から離間する側に突出した複数の外側凸部27Aと、配列方向ADTにおける第2長手方向縁28に近接する側に突出した複数の内側凸部27Bと、を含んでいる。図示された例においては、長手方向LDTに沿って、外側凸部27A及び内側凸部27Bが交互に位置している。このような例において、第1長手方向縁27の長手方向LDTにおいて隣り合う二つの外側凸部27Aの長手方向LDTに沿った離間長さD1Xは、複数の網点41,42,43に含まれるいずれかの同一色の網点の配列ピッチよりも小さくなっていることが好ましく、いずれかの同一色の網点の配列ピッチの半分よりも小さくなっていることがより好ましい。またより好ましくは、離間長さD1Xが、複数の網点41,42,43に含まれるいずれの色の網点の配列ピッチよりも小さくなっており、より好ましくは、いずれの色の網点の配列ピッチの半分よりも小さくなっている。
【0096】
同様に、図11に示された例において、第2長手方向縁28は、長手方向LDTに垂直な配列方向ADTにおける第1長手方向縁27から離間する側に突出した複数の外側凸部28Aと、配列方向ADTにおける第1長手方向縁27に近接する側に突出した複数の内側凸部28Bと、を含んでいる。図示された例においては、長手方向LDTに沿って、外側凸部28A及び内側凸部28Bが交互に位置している。このような例において、第2長手方向縁28の長手方向LDTにおいて隣り合う二つの外側凸部28Aの長手方向LDTに沿った離間長さD2Xは、複数の網点41,42,43に含まれるいずれかの同一色の網点の配列ピッチよりも小さくなっていることが好ましく、いずれかの同一色の網点の配列ピッチの半分よりも小さくなっていることがより好ましい。またより好ましくは、離間長さD2Xが、複数の網点41,42,43に含まれるいずれの色の網点の配列ピッチよりも小さくなっており、より好ましくは、いずれの色の網点の配列ピッチの半分よりも小さくなっている。
【0097】
このような例によれば、網点41,42,43の配列ピッチP1~P6に対して、第1長手方向縁27の蛇行の周期が長くなり過ぎることを防止することができ、また、第2長手方向縁28の蛇行の周期が長くなり過ぎることを防止することができる。このような例とは異なり、第1長手方向縁27の外側凸部27Aや第2長手方向縁28の外側凸部28Aが長手方向LDTに沿って長く延びていると、当該領域において、網点41,42,43が設けられる領域、すなわち絵柄部24の領域が狭くなってしまう。すなわち、上述した離間長さD1X,D2Xを短く設定しておくことで、視認可能な長さに亘る目立った透過部26の幅の増減を効果的に回避することができ、局所的な網点41,42,43の密度低下を効果的に回避することもできる。これにより、透過部26を効果的に視認されにくくすることができ、あわせて絵柄部24によって優れた意匠を表示することもできる。
【0098】
なお、離間長さD1X,D2Xの調節は、一例として、上述した製造方法での透過部26を形成するためのレーザー光の照射条件、より具体的にはレーザー光をパルス照射する際の照射条件を制御することで実現され得る。
【0099】
また、例えば図13に示す例のように、第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28が透過部26の長手方向LDTに沿って配列方向ADTの位置を変化する場合、透過部26の配列方向ADTに沿った幅WTは、長手方向LDTに沿った各位置において変動する。このような透過部26についての幅WTは、第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28の位置を次のように仮に想定し、仮想の第1長手方向縁27V及び第2長手方向縁28Vの配列方向ADTに沿った離間長さとして、特定する。
【0100】
幅WTを特定する上での仮想の第1長手方向縁27Vは、図13に示すように、当該第1長手方向縁27に含まれる複数の外側凸部27Aのうちの当該第1長手方向縁27を含む透過部26の第2長手方向縁28から配列方向ADTに沿って最も離間する一つの外側凸部27AXと、複数の内側凸部27Bのうちの当該第1長手方向縁27を含む透過部26の第2長手方向縁28に配列方向ADTに沿って最も近接する一つの内側凸部27BXと、の配列方向ADTにおける中間位置に位置するものと仮定する。幅WTを特定する上での仮想の第2長手方向縁28Vは、当該第2長手方向縁28に含まれる複数の外側凸部28Aのうちの当該第2長手方向縁28を含む透過部26の第1長手方向縁27から配列方向ADTに沿って最も離間する一つの外側凸部28AXと、複数の内側凸部28Bのうちの当該第2長手方向縁28を含む透過部26の第1長手方向縁27に配列方向ADTに沿って最も近接する一つの内側凸部28BXと、の配列方向ADTにおける中間位置に位置するものと仮定する。
【0101】
なお、上述したように、透過部26の配列ピッチPTは、「二つの透過部26の当該配列方向に沿った距離」の平均値として特定される。「二つの透過部26の当該配列方向に沿った距離」は、対象となる二つの透過部26についての配列方向における中心位置の配列方向に沿った距離として特定される。そして、複数の透過部26の配列方向ADTにおける透過部26の中心位置は、直前に説明した方法で特定された仮想の第1長手方向縁27V及び第2長手方向縁28Vの配列方向ADTにおける中心位置とする。
【0102】
以上に説明してきた一実施の形態において、加飾シート20は、複数の網点41,42,43を含む意匠層31を有した絵柄部24と、絵柄部24の非形成部である複数の透過部26と、を有している。このような加飾シート20の絵柄部24において、意匠のいずれかの色成分を表示する網点は、通常、加飾シート20の端辺20a~20dに沿って配列される。一方、本実施の形態において、透過部26は、加飾シート20の端辺20a~20dに対して傾斜した長手方向LDTに線状に延びている。したがって、複数の透過部26の配列方向ADTも、加飾シート20の端辺20a~20dに対し傾斜し、結果として、絵柄部24によって表示される意匠のいずれかの色成分を表示する網点の配列方向に対して傾斜しやすくなる。一般的にモアレを目立たなくさせるには、干渉を生じさせる二つの要素が規則性を呈する方向を傾斜させることが有効とされている。したがって、本実施の形態によれば、網点の配列の規則性と透過部26の配列の規則性との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。この結果、本実施の形態による加飾シート20は、表示装置10による画像の表示を可能としながら、非表示状態にある表示装置10を隠蔽して予め期待された優れた意匠を表示することができる。このように表示装置10の設置にあたって周囲環境との調和や統一性を確保し得る本実施の形態は、とりわけ意匠性が重要視される物品、例えば自動車や家具、住宅建材等の表面部材に好適である。
【0103】
また以上に説明してきた一実施の形態において、加飾シート20は、複数の網点41,42,43を含む意匠層31を有した絵柄部24と、絵柄部24の非形成部である複数の透過部26と、を有している。そして、透過部26は、複数の網点41,42,43に含まれる同一色の網点の配列方向に対して傾斜した長手方向LDTに線状に延びている。したがって、複数の透過部26の配列方向ADTは、絵柄部24によって表示される意匠のいずれかの色成分を表示する網点の配列方向に対して傾斜しやすくなる。一般的にモアレを目立たなくさせるには、干渉を生じさせる二つの要素が規則性を呈する方向を傾斜させることが有効とされている。したがって、本実施の形態によれば、網点41,42,43の配列の規則性と透過部26の配列の規則性との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。この結果、本実施の形態による加飾シート20は、表示装置10による画像の表示を可能としながら、非表示状態にある表示装置10を隠蔽して予め期待された優れた意匠を表示することができる。このように表示装置10の設置にあたって周囲環境との調和や統一性を確保し得る本実施の形態は、とりわけ意匠性が重要視される物品、例えば自動車や家具、住宅建材等の表面部材に好適である。
【0104】
なお、本実施の形態において、意匠層31は複数色の網点を含む必要はなく、単一色の網点のみを含むようにしてもよい。このような例において、「複数の網点に含まれる同一色の網点」とは、意匠層31の含まれる単一色の網点のことを意味する。
【0105】
上述した一実施の形態の一具体例において、加飾シート20は、絵柄部24及び透過部26に対面して位置し且つ少なくとも絵柄部24を支持する透明な基材部22を、更に有している。透過部26の少なくとも一方の端部は、基材部22の縁部まで延びている。この具体例によれば、透過部26が加飾シート20の縁部まで延びるようにすることができる。これにより、加飾シート20が、その全面に亘ってより均一な構成を有するようになり、表示装置10を効果的に隠蔽することができる。その一方で、基材部22上において透過部26が複数の部分に分断されたとしても、当該複数に分断された透過部26を基材部22によって纏めて保持することができる。したがって、加飾シート20の取り扱い性を維持しながら、加飾シート20の表示装置隠蔽能を向上させることができる。
【0106】
以上に説明してきた一実施の形態において、巻取体17は、複数の網点を含む意匠層31を有した絵柄部24と、絵柄部24の非形成部である複数の透過部26と、を含むシート状部材18を有している。シート状部材18は加飾シート20として用いられる。巻取体17は、シート状部材18の長尺方向LLDと非平行な巻取軸線RAを中心としてシート状部材18を巻き取ってなる。このようなシート状部材18の絵柄部24において、意匠のいずれかの色成分を表示する網点41,42,43は、通常、シート状部材18の長尺方向LLDに沿って配列される。一方、本実施の形態において、透過部26は、シート状部材18の長尺方向LLDと非平行な長手方向LDTに線状に延びている。したがって、このシート状部材18から歩留りを考慮して切り出された加飾シート20において、透過部26の配列方向ADTは、絵柄部24によって表示される意匠のいずれかの色成分を表示する網点41,42,43の配列方向P1~P6に対して傾斜しやすくなる。一般的にモアレを目立たなくさせるには、干渉を生じさせる二つの要素が規則性を呈する方向を傾斜させることが有効とされている。したがって、本実施の形態によれば、網点41,42,43の配列の規則性と透過部26の配列の規則性との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。
【0107】
上述した一実施の形態の一具体例において、透過部26は、シート状部材18の長尺方向LLDに対して10°以上80°以下の角度をなす長手方向LDTに線状に延びている。この具体例によれば、シート状部材18から切り出された加飾シート20において、複数の透過部26の配列方向ADTも、絵柄部24によって表示される意匠のいずれかの色成分を表示する網点41,42,43の配列方向P1~P6に対して10°以上80°以下の角度をなしやすくなる。したがって、網点の配列の規則性と透過部26の配列の規則性との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。
【0108】
一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0109】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0110】
上述した具体例において、加飾シート付き表示装置1が、表示装置10と、表示装置10の表示面11上に配置された加飾シート20と、を有する例を示したが、この例に限られない。例えば図14及び図15に示すように、加飾シート付き表示装置1が、パネル部材15を有するようにしてもよい。パネル部材15は、表示装置10の表示面11に対面する位置に透過領域15aを有している。透過領域15aは、パネル部材15に設けられた開口や透明部分として構成され、画像光の透過を可能としている。パネル部材15は、一例として、表示装置10が設置される場所での壁材やケーシングとして構成され得る。
【0111】
図14に示された例において、パネル部材15は、表示装置10及び加飾シート20の間に位置している。この例において、パネル部材15の透過領域15aの全域に表示面11が露出している。また、加飾シート20は、パネル部材15の透過領域15aの全域を覆っている。すなわち、表示装置10の表示面11及び加飾シート20は、それぞれ、パネル部材15の透過領域15aと同一又は透過領域15aを内包可能な形状および大きさを有している。したがって、パネル部材15の透過領域15aの面積は、表示面11の面積以下となっており、加飾シート20の面積以下となっている。
【0112】
その一方で、パネル部材15は、図示された例とは異なり、加飾シート20の表示装置10とは反対側に配置されてもよい。すなわち、加飾シート20が、パネル部材15と表示装置10との間に位置するようにしてもよい。この例では、加飾シート20が表示装置10を隠蔽しているため、パネル部材15の透過領域15aは、加飾シート20によって内包されるような大きさ及び形状を有していればよい。
【0113】
また、上述した実施の形態において、表示装置10が面光源装置12及び遮光シート14を有する例を示したが、既に言及したように、この例に限られない。ドットマトリックス方式の表示装置、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置等を加飾シート20とともに用いることができる。ドットマトリックス方式の表示装置10では、ドットを形成する画素の発光状態を個別に制御することで所望の画像を表示することができる。図15及び図16に示された例において、表示装置10は、液晶表示パネルとして構成され、面光源装置12及び面光源装置12によって照明される表示パネル16(例えば、液晶表示パネル)を有している。
【0114】
一具体例として、図16は、画素配列の一例を示している。図16に示された例において、表示装置10は、互いに異なる色を発光する第1画素51、第2画素52及び第3画素53を含んでいる。複数の第1画素51は、互いに非平行な第1画素配列方向ADP1及び第2画素配列方向ADP2に配列されている。とりわけ図示された例において、第1画素配列方向ADP1及び第2画素配列方向ADP2は互いに垂直となっている。複数の第1画素51は、第1画素配列方向ADP1に第1画素配列ピッチPP1で配列され、第2画素配列方向ADP2に第2画素配列ピッチPP2で配列されている。
【0115】
同様に、複数の第2画素52は、第1画素配列方向ADP1に第1画素配列ピッチPP1で配列され、第2画素配列方向ADP2に第2画素配列ピッチPP2で配列されている。複数の第3画素53は、第1画素配列方向ADP1に第1画素配列ピッチPP1で配列され、第2画素配列方向ADP2に第2画素配列ピッチPP2で配列されている。第1画素51、第2画素52及び第3画素53は、第1画素配列方向ADP1に交互に配列されている。複数の第1画素51が第2画素配列方向ADP2に連続して配列され、複数の第2画素52が第2画素配列方向ADP2に連続して配列され、複数の第3画素53が第2画素配列方向ADP2に連続して配列されている。そして、図16において点線で囲むことによって例示しているように、第1画素配列方向ADP1に隣り合う一つの第1画素51、一つの第2画素52及び一つの第3画素53によって、単位画素が形成されている。
【0116】
ところで、このような表示装置10との組み合わせにおいて、透過部26が規則的に配列されている場合には、透過部の規則的な配列と表示装置の画素の規則的な配列との重ね合わせにより、モアレが生じてしまう。モアレは、表示装置によって表示される画像の品質を直接的に劣化させてしまうので、表示装置における重大な不具合と言える。この不具合を解決する手段として、透過部26を次のように構成することが好ましい。
【0117】
すなわち、透過部26は、表示装置10に含まれる同一色の画素51,52,53の配列方向ADP1,ADP2と非平行な長手方向LDTに線状に延びていることが好ましい。透過部26は、表示装置10に含まれるいずれの色の画素51,52,53の配列方向ADP1,ADP2とも非平行な長手方向LDTに線状に延びていることがより好ましい。このとき、複数の透過部26の配列方向ADTは、通常、複数の網点41,42,43に含まれる同一色の網点の配列方向に対して傾斜した方向に延びやすくなる。一般的にモアレを目立たなくさせるには、干渉を生じさせる二つの要素が規則性を呈する方向を互いに対して傾斜させることが有効とされている。したがって、この例によれば、画素の配列の規則性と透過部26の配列の規則性との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。
【0118】
また、図示された例において、透過部26は、同一色の画素51,52,53の配列方向ADP1,ADP2に対して10°以上80°以下の角度をなす方向に線状に延びている。とりわけ図示された例では、透過部26は、いずれの色の画素51,52,53の配列方向ADP1,ADP2に対して10°以上80°以下の角度をなす方向に線状に延びている。この例によれば、画素51,52,53の配列の規則性と透過部26の配列の規則性との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。
【0119】
なお、本実施の形態において、ドットマトリックス方式の表示装置10は複数色の画素を含む必要はなく、単一色の画素のみを含むようにしてもよい。このような例において、「複数の画素に含まれる同一色の画素」とは、意匠層31の含まれる単一色の画素のことを意味する。
【0120】
また、複数の透過部26の配列ピッチPTは、複数の画素51,52,53に含まれる同一色の画素の配列ピッチPP1,PP2よりも5μm以上小さく又は5μm以上大きくなっていることが好ましく、複数の画素51,52,53に含まれるいずれの色の画素の配列ピッチPP1,PP2よりも5μm以上小さく又は5μm以上大きくなっていることがより好ましい。言い換えると、複数の透過部26の配列ピッチPTと、複数の画素51,52,53に含まれる同一色の画素の配列ピッチPP1,PP2との差の大きさは、5μm以上であることが好ましい。また、複数の透過部26の配列ピッチPTと、複数の画素51,52,53に含まれる同一色の画素の配列ピッチPP1,PP2との差の大きさは、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましい。この具体例によれば、透過部26の配列と画素の配列との重ね合わせに起因したモアレによって生じる縞模様を効果的に目立たなくさせることができる。また、この具体例によれば、各画素がいずれかの透過部26と重なりやすくなり、各画素で発光された画像光がいずれかの透過部26に通過して画像を形成しやすくなる。言い換えると、絵柄部24に完全に覆われてしまう画素の発生を効果的に抑制することができる。
【0121】
さらに、図13を参照して説明したように、透過部26の第1長手方向縁27及び第2長手方向縁28が長手方向LDTに対して平行に延びないこともある。このような例では、第1長手方向縁27の長手方向LDTにおいて隣り合う二つの内側凸部27Bの長手方向LDTに沿った離間長さD1Yは、複数の画素51,52,53に含まれる同一色の画素の配列ピッチよりも小さいことが好ましく、同一色の画素の配列ピッチの半分よりも小さいことがより好ましい。またより好ましくは、離間長さD1Yが、複数の画素51,52,53に含まれるいずれの色の画素の配列ピッチよりも小さくなっており、より好ましくは、いずれの色の画素の配列ピッチの半分よりも小さくなっている。同様に、第2長手方向縁28の長手方向LDTにおいて隣り合う二つの内側凸部28Bの長手方向LDTに沿った離間長さD2Yは、複数の画素51,52,53に含まれるいずれかの同一色の画素の配列ピッチよりも小さくなっていることが好ましく、いずれかの同一色の画素の配列ピッチの半分よりも小さくなっていることがより好ましい。またより好ましくは、離間長さD2Yが、複数の画素51,52,53に含まれるいずれの色の画素の配列ピッチよりも小さくなっており、より好ましくは、いずれの色の画素の配列ピッチの半分よりも小さくなっている。
【0122】
このような例によれば、画素51,52,53の配列ピッチPP1,PP2に対して、第1長手方向縁27の蛇行の周期が長くなり過ぎることを防止することができ、また、第2長手方向縁28の蛇行の周期が長くなり過ぎることを防止することができる。このような例とは異なり、第1長手方向縁27の内側凸部27Bや第2長手方向縁28の内側凸部28Bが長手方向LDTに長く延びていると、この内側凸部27B,28Bが設けられている領域において、画素51,52,53が透過部26と重なって露出する領域が狭くなってしまう。すなわち、上述した離間長さD1Y,D2Yを短く設定しておくことで、透過部26の幅が狭くなっている領域を目立たなくすることができるとともに、透過部26と重なる画素51,52,53の目立った面積低下を効果的に回避することもできる。これにより、透過部26を効果的に視認されにくくすることができ、あわせて表示装置10によって明瞭かつ鮮明な画像を表示することもできる。
【0123】
なお、離間長さD1Y,D2Yの調節は、一例として、上述した製造方法での透過部26を形成するためのレーザー光の照射条件、より具体的にはレーザー光をパルス照射する際の照射条件を制御することで実現され得る。
【0124】
さらに、加飾シート20が上述した遮光シート14を含むようにしてもよい。このとき、遮光シート14は、加飾シート20のうちの絵柄部24を基準として観察者とは反対側に位置する。遮光シート14を含む加飾シート20は、単独で加飾シート付き表示装置1を構成することができ、或いは、面光源装置12との組合せによって加飾シート付き表示装置1を構成することもできる。さらに、加飾シート20の透過部26が、表示したい画像の外輪郭の内側だけに設けられるようにしてもよい。このような加飾シート20は、遮光シート14を用いることなく、単独で加飾シート付き表示装置1を構成することができ、或いは、面光源装置12との組合せによって加飾シート付き表示装置1を構成することもできる。
【0125】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0126】
DS1 第1基準方向
DS2 第2基準方向
ND 法線方向
LDT 長手方向L
ADT 配列方向A
AD1 第1網点配列方向
AD2 第2網点配列方向
AD3 第3網点配列方向
AD4 第4網点配列方向
AD5 第5網点配列方向
AD6 第6網点配列方向
ADP1 第1画素配列方向
ADP2 第2画素配列方向
LLD 長尺方向
RA 巻取軸線
CL 断裁線
PT 配列ピッチ
WT 幅
P1 第1網点配列ピッチ
P2 第2網点配列ピッチ
P3 第3網点配列ピッチ
P4 第4網点配列ピッチ
P5 第5網点配列ピッチ
P6 第6網点配列ピッチ
PP1 第1画素配列ピッチ
PP2 第2画素配列ピッチ
1 加飾シート付き表示装置
10 表示装置
11 表示面
11a 周囲領域
12 面光源装置
13 発光面
14 遮光シート
14a 開口領域
14b 遮光領域
15 パネル部材
15a 透過領域
16 表示パネル
17 巻取体
18 シート状部材
18a 長手方向縁
19 巻き取りコア
20 加飾シート
20a 第1端辺
20b 第2端辺
20c 第3端辺
20d 第4端辺
22 基材部
24 絵柄部
26 透過部
27 第1長手方向縁
27V 仮想第1長手方向縁
27A,27AX 外側凸部
27B,27BX 内側凸部
28 第2長手方向縁
28V 仮想第2長手方向縁
28A,28AX 外側凸部
28B,28BX 内側凸部
31 意匠層
31A 意匠膜
32 遮光層
32A 遮光膜
33 カバー層
35 積層体
41 第1網点
42 第2網点
43 第3網点
51 第1画素
52 第2画素
53 第3画素
100 レーザー照射装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16