(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144606
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】インビボ器官形成の発生を誘導するための最小侵襲の細胞移植手技
(51)【国際特許分類】
A61K 35/407 20150101AFI20241003BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241003BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20241003BHJP
A61K 35/22 20150101ALI20241003BHJP
A61K 35/26 20150101ALI20241003BHJP
A61K 35/42 20150101ALI20241003BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241003BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241003BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20241003BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241003BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20241003BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241003BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K35/407
A61P43/00 107
A61K35/12
A61K35/39
A61K35/22
A61K35/26
A61K35/42
A61P1/16
A61P13/12
A61P1/18
A61P11/00
A61P37/00
A61P11/06
A61P37/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024119461
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2021559803の分割
【原出願日】2020-04-10
(31)【優先権主張番号】62/832,492
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506339556
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】University of Pittsburgh - Of the Commonwealth System of Higher Education
【住所又は居所原語表記】1st Floor Gardner Steel Conference Center,130 Thackeray Avenue,Pittsburgh,PA 15260(US)
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エリック ラガッセ
(72)【発明者】
【氏名】パウロ アルトゥール チャベス フォンテス
(57)【要約】
【課題】インビボ器官形成の発生を誘導するための最小侵襲の細胞移植手技の提供。
【解決手段】被験体のリンパ節に細胞を移植し、異所性組織を生育する方法およびシステムが本明細書中に提供される。ある特定の実施形態では、本明細書中に提供される方法およびシステムにより、細胞移植を必要とする患者を処置する最小侵襲の細胞移植が可能になる。ある特定の実施形態において、本明細書中に提供される方法およびシステムは、超音波内視鏡検査法の使用を含む。ある特定の形態では、本開示は、被験体において1つまたはそれを超える細胞を移植し、異所性組織を生育する最小侵襲の方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、2019年4月11日出願の米国仮出願第62/832,492号に基づく優先権を主張する。この仮出願の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
緒言
本開示は、被験体のリンパ節に細胞を移植して、機能的な異所性の組織および器官を生成するための最小侵襲の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
臓器移植および/または臓器再生の需要は大きい。しかしながら、末期患者への移植に利用可能な臓器が不足していることは、世界規模での大きな医学的、社会的および経済的課題となっている。さらに、全臓器移植では、レシピエント自身の健康状態に関する要件が厳しい場合がある。例えば、米国には現在、標準的な肝移植に不適格な末期肝疾患(ESLD)患者が年間およそ30,000人いる。
【0004】
全臓器移植に代わるアプローチには、不全臓器を再生させる細胞移植が含まれ得る。例えば、肝細胞移植(HT)は、さらなる治療法の選択肢がない、標準的な肝移植に適さないとみなされ得るESLD患者を延命し、その生活の質を向上させることができる。しかしながら、罹患臓器を対象とした同所性細胞療法は、末期疾患の硬変した肝臓および線維化した肝臓には適切な環境が失われている可能性があること、完全型ディジョージ症候群では胸腺が失われていることなど、多くの理由により実行不可能である場合がある。
【0005】
ESLDに罹患している患者の場合、重大な課題があり得る:ほとんどの細胞療法は、罹患している生まれ持った肝臓への細胞の生着を促すことを目的としている。移植される肝臓細胞は、一般に、門脈を介して脾臓(患者の脾動脈またはげっ歯類の脾臓実質)または肝臓内に注射される。脾動脈に移植された肝臓細胞は、最初の脾臓注射の後、罹患した肝臓に能動的または受動的に素早く遊走することができ、移植された肝細胞による肝臓の再生が起きると期待される。しかしながら、移植の解剖学的部位が理由で、このアプローチにはかなり大きな制約がある。これらのESLD患者のほとんど(Takahashiら、2014)が、脾腫および脾機能亢進症を有し、その場合、脾臓では、脾動脈血行路を通じて脾臓実質に進入するあらゆる細胞(例えば、赤血球、白血球および血小板)に対して、攻撃的な細胞捕捉に続いて食作用および細胞破壊が生じ得る。その上、移植された肝細胞はさらに、肝実質への門脈供給の主要な構成要素として、脾静脈を通じて肝臓に向けられ得る。これらの細胞は、門脈三管から肝類洞へ循環し得、肝細胞によって小門脈枝および肝類洞が部分的に閉塞すると、一過性の門脈圧亢進および初期虚血が生じ、移植された多くの細胞が死ぬ(da Fonsecaら、2008)。移植された肝細胞が類洞内皮細胞障壁を乗り越える能力および肝実質内で生着する能力は、非常に限定的であり得る。さらに、ESLD患者は、かなりの程度の肝線維症および肝硬変を有し得、これは、進行性の乱雑な細胞構築によってすでに制限されているその後の肝小葉内での細胞成長に対する主要な制限因子であり得る。
【0006】
したがって、妥当な解剖学的特徴を有する機能的な臓器を生成することができる、細胞に基づいた新規の臓器再生方法が必要とされている。ESLD、代謝性肝疾患および急性肝不全に対する新規の処置も必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
ある特定の形態では、本開示は、被験体において1つまたはそれを超える細胞を移植し、異所性組織を生育する最小侵襲の方法を提供する。ある特定の実施形態では、本方法は、内視鏡を、管腔内アプローチによって被験体の例えば、胃腸管、気道または尿路に前進させる工程、経管腔的アプローチを用いて、内視鏡に取り付けられた針を、臓側壁を貫通して被験体のリンパ節に挿入する工程、および1つまたはそれを超える細胞を、針を介してリンパ節内に送達することにより、1つまたはそれを超える細胞がリンパ節に生着し、リンパ節中に異所性組織を生成することが可能になる、工程を含む。
【0008】
ある特定の実施形態では、内視鏡を前進させる工程、針を挿入する工程またはその両方は、放射線イメージングまたは超音波イメージングを利用して行われる。ある特定の実施形態では、放射線イメージングは、動的放射線イメージング、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)またはその両方を含む。ある特定の実施形態では、リンパ節は、被験体の腹腔または胸腔内に存在する。ある特定の実施形態では、リンパ節は、被験体の縦隔または後腹膜領域に存在する。
【0009】
ある特定の実施形態では、本開示の被験体において1つまたはそれを超える細胞を移植し、異所性組織を生育する最小侵襲の方法は、超音波または放射線イメージングを利用して被験体の腹腔または胸腔内のリンパ節に針を挿入する工程、および針を介して1つまたはそれを超える細胞をリンパ節に送達することにより、1つまたはそれを超える細胞がリンパ節に生着し、拡大増殖(expand)し、分化してリンパ節中の異所性組織となることが可能になる工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、被験体の胃腸管、気道または尿路を通って内視鏡を前進させる工程、および被験体のリンパ節に到達するように、経管腔的アプローチを用いて針を、臓側壁を貫通して挿入する工程をさらに含み、ここで、針は、内視鏡に取り付けられている。ある特定の実施形態では、内視鏡を前進させる工程、針を挿入する工程またはその両方は、リンパ節の超音波イメージングを利用して行われる。ある特定の実施形態では、放射線イメージングは、動的放射線イメージング、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)またはその両方を含む。ある特定の実施形態では、内視鏡は、リンパ節を検知するように構成された超音波プローブを備えている。
【0010】
ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、肝細胞、膵臓細胞もしくは膵島、腎臓細胞もしくは断片、胸腺細胞もしくは断片、または肺細胞もしくは断片を含む。ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、被験体に対して自己、同種異系または異種である。ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、被験体に対して同系である。
【0011】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、1つまたはそれを超える細胞を生存ドナー組織から単離する工程をさらに含む。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、送達の前に1つまたはそれを超える細胞を凍結保存から回復させる工程をさらに含む。ある特定の実施形態では、本方法は、免疫抑制剤を被験体に投与して、1つまたはそれを超える細胞の免疫拒絶を低減させる工程をさらに含む。
【0012】
ある特定の実施形態では、本方法は、1つまたはそれを超える細胞を腹腔内または胸腔内の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれを超えるリンパ節に送達する工程を含む。
【0013】
ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、約20μmの平均直径の細胞を含む。ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、単一リンパ節への1送達あたり少なくとも約1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を含む。ある特定の実施形態では、針は、1mLあたり少なくとも約1000万、2000万、2500万、3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を有する懸濁液中の1つまたはそれを超える細胞を送達する。ある特定の実施形態では、針は、1mLあたり少なくとも約1000万、2000万、3000万、4000万または5000万個の生存細胞を有する懸濁液中の1つまたはそれを超える細胞を送達する。ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、細胞集団としてリンパ節に送達され、細胞集団は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、85%、90%、95%または約100%の生存細胞を有する。ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、細胞集団としてリンパ節に送達され、1つまたはそれを超える細胞が針を通過したとき、送達によって、細胞集団における細胞生存百分率が約20%、15%、10%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%または0.5%未満の低下に至る。
【0014】
ある特定の実施形態では、針の内径は、最大で約700μm、600μm、500μm、450μm、400μm、300μm、260μm、250μmまたは200μmである。ある特定の実施形態では、針の内径は、最大で約260μmである。ある特定の実施形態では、針の外径は、最大で約1mm、900μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、520μm、510μm、500μm、480μm、450μmまたは400μmである。ある特定の実施形態では、針の外径は、最大で約510μmである。ある特定の実施形態では、針のサイズは、最大で約19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5または27ゲージである。ある特定の実施形態では、針のサイズは、最大で約25ゲージである。ある特定の実施形態では、針は、約25ゲージを超えず、針が、1mLあたり少なくとも約5000万個の生存細胞を有する懸濁液中の1つまたはそれを超える細胞を送達し、1つまたはそれを超える細胞は、少なくとも約65%の生存細胞を含む。
【0015】
ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、腎臓細胞を含み、異所性組織は、異所性腎組織である。ある特定の実施形態では、方法は、被験体の肝疾患または症状を処置する。ある特定の実施形態では、肝疾患または症状は、アルコール消費に関係する末期肝疾患もしくは肝線維症、A、B、CもしくはD型肝炎感染症、非アルコール性脂肪性肝疾患、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、胆道閉鎖症、嚢胞性線維症、アラジール症候群、梅毒、ブルセラ症、寄生虫感染症、化学物質曝露、慢性胆道疾患、バッド・キアリ症候群、オスラー病または右心不全である。ある特定の実施形態では、肝疾患または症状が、チロシン血症、メープルシロップ尿症、フェニルケトン尿症、クリグラー・ナジャー症候群、シュウ酸症、高シュウ酸尿症、ヘモクロマトーシス、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、ウィルソン病、家族性肝内胆汁うっ滞症候群、ガラクトース血症、糖原病または家族性アミロイドポリニューロパチーを含む代謝障害に関連する。ある特定の実施形態では、被験体は、被験体の肝臓への血液供給を減少させ、被験体の肝細胞機能障害を誘導する、門脈大静脈シャント外科手技または経頸静脈的肝内門脈大循環シャント術(TIPS)を受けたことがあり、門脈大静脈シャント外科手技は、端側門脈大静脈シャント術、側々門脈大静脈シャント術、H型もしくはC型グラフトの間置による腸間膜静脈下大静脈シャント術、または中位もしくは遠位脾腎シャント術を含む。ある特定の実施形態では、方法は、被験体の末期肝疾患を処置する。
【0016】
ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、腎臓細胞または腎組織断片を含み、異所性組織は、異所性腎組織である。ある特定の実施形態では、方法は、被験体の腎疾患または症状を処置する。ある特定の実施形態では、腎疾患または症状は、末期腎疾患である。
【0017】
ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、膵臓細胞または膵島を含み、異所性組織が、異所性膵組織である。ある特定の実施形態では、方法は、被験体のインスリン分泌を減少させるか、または無くすに至る内分泌膵疾患または症状を処置する。ある特定の実施形態では、膵疾患または症状は、被験体のインスリン分泌を減少させるに至る、I型糖尿病、II型糖尿病または慢性膵炎である。
【0018】
ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、肺細胞または肺組織断片を含み、異所性組織は、異所性肺組織である。ある特定の実施形態では、方法は、被験体の肺疾患または症状を処置する。ある特定の実施形態では、肺疾患または症状は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。ある特定の実施形態では、COPDは、タバコの煙、汚染物質および煙霧、アルファ-1-アンチトリプシン、嚢胞性線維症、慢性喘息、気腫、慢性気管支炎または特発性肺線維症によって引き起こされる。
【0019】
ある特定の実施形態では、1つまたはそれを超える細胞は、胸腺細胞または胸腺断片を含み、異所性組織が、異所性胸腺組織である。ある特定の実施形態では、胸腺細胞または断片は、ドナー被験体から得られ、異所性胸腺組織は、ドナー被験体由来の細胞の移植に対して被験体においてドナー特異的寛容を誘導する。ある特定の実施形態では、疾患または症状は、加齢性免疫系機能不全であり、異所性胸腺組織が、被験体の免疫機能を調節する。
【0020】
ある特定の実施形態では、リンパ節は胃腸管に近接しており、内視鏡を胃腸管に沿って前進させる。ある特定の実施形態では、リンパ節は、十二指腸周囲リンパ節、胃周囲リンパ節、膵周囲リンパ節、腸間膜リンパ節、回結腸リンパ節、結腸間膜リンパ節、胃リンパ節、肝脾リンパ節、脾門リンパ節、傍食道リンパ節、傍噴門リンパ節、傍大動脈リンパ節、後大動脈リンパ節、大動脈外側リンパ節、大動脈前リンパ節、小彎リンパ節、総肝リンパ節、脾動脈リンパ節、腹腔動脈幹リンパ節、腸骨リンパ節または後腹膜リンパ節のうちの1つまたはそれを超えるリンパ節を含む。ある特定の実施形態では、リンパ節は、十二指腸周囲リンパ節を含む。ある特定の実施形態では、リンパ節は気道に近接しており、内視鏡を気道に沿って前進させる。ある特定の実施形態では、リンパ節は、縦隔領域における1つまたはそれを超えるリンパ節を含む。ある特定の実施形態では、リンパ節は、胸骨傍リンパ節、肋間リンパ節、横隔膜上リンパ節、上気管気管支リンパ節、下気管気管支リンパ節、気管支肺リンパ節、気管傍リンパ節または肺内リンパ節のうちの1つまたはそれを超えるリンパ節を含む。ある特定の実施形態では、リンパ節が尿路に近接しており、内視鏡を尿路に沿って前進させる。ある特定の実施形態では、リンパ節は、後腹膜領域における1つまたはそれを超えるリンパ節を含む。ある特定の実施形態では、リンパ節は、外腸骨リンパ節、内腸骨リンパ節、腰部大静脈リンパ節、腰部大動脈リンパ節、浅鼡径リンパ節、深鼡径リンパ節、膀胱周囲大動静脈間リンパ節、膀胱周囲閉鎖リンパ節または膀胱周囲仙骨前リンパ節のうちの1つまたはそれを超えるリンパ節を含む。
【0021】
ある特定の実施形態では、被験体は、ヒトである。ある特定の実施形態では、被験体は、非ヒト動物である。
【0022】
ある特定の実施形態では、異所性組織は、リンパ節内への1つまたはそれを超える(one of more)細胞の送達後、約5日、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、90日、95日、100日、110日、120日、130日、140日、150日、160日、170日、180日、190日または約200日以内に形成される。
【0023】
本開示は、肝疾患の処置を必要とする被験体において肝疾患を処置する方法をさらに提供する。ある特定の実施形態では、本方法は、内視鏡を、管腔内アプローチによって被験体の胃腸管、気道または尿路に前進させる工程、経管腔的アプローチを用い、超音波イメージングを利用して、内視鏡に取り付けられた針を、臓側壁を貫通して被験体のリンパ節に挿入する工程、および1つまたはそれを超える細胞を、針を介してリンパ節に送達することにより、1つまたはそれを超える細胞がリンパ節に生着し、リンパ節中に異所性肝組織を生成することが可能になる、工程を含む。非限定的な実施形態では、異所性組織は、リンパ節内への1つまたはそれを超える細胞の送達後、約5日、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、90日、95日、100日、110日、120日、130日、140日、150日、160日、170日、180日、190日または200日以内に形成される。
【0024】
本開示は、被験体において肝細胞を移植し、異所性肝臓を生育するためのシステムであって、システムは、内視鏡、および細胞集団を含む懸濁液が入った針付きの注射器を備え、懸濁液は、1mLあたり約2500万~約1億個の生存肝細胞を有し、針は、大きくとも約25ゲージである、システムを提供する。ある特定の実施形態では、内視鏡と針とは、被験体の胃腸管、気道または尿路に沿って共に前進するように構成されている。ある特定の実施形態では、注射器は、針を介して1つまたはそれを超える細胞を送達するように構成されている。ある特定の実施形態では、内視鏡は、超音波プローブを備えている。ある特定の実施形態では、超音波プローブは、被験体の腹腔内のリンパ節を検知するように構成されている。ある特定の実施形態では、懸濁液は、1mLあたり少なくとも約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を有する。ある特定の実施形態では、注射器内の細胞集団は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、85%、90%、95%または約100%の生存細胞を有する。ある特定の実施形態では、注射器内の細胞集団は、少なくとも約65%の生存細胞を有する。ある特定の実施形態では、注射器内の細胞集団は、少なくとも約1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を含む。ある特定の実施形態では、注射器内の細胞集団は、1mLあたり少なくとも約5000万個の生存細胞を含み、細胞集団が、少なくとも約65%の生存細胞を含む。
【0025】
参照による援用
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が参照により援用されると明確かつ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の新規の特徴を添付の請求項に詳細に示す。本開示の特徴および利点のより良い理解は、本開示の原理が利用された例証的な実施形態を示す以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより得られるだろう。
【0027】
【
図1A】
図1Aは、リンパ節へのEUSガイド下の細胞送達のために実験動物に対して超音波内視鏡検査を行っている内視鏡医の写真である。
【0028】
【
図1B】
図1Bは、近くのリンパ節(LN)に到達した細針吸引針の超音波像を示している超音波検査法の写真である。
【0029】
【
図2】
図2は、外科手術医が行っている、実験動物の十二指腸周囲リンパ節への肝細胞の直接注射の絵を示している。
【0030】
【
図3】
図3は、ドナー動物から単離され、種々のゲージの針を通過した種々のバッチの肝細胞の細胞生存百分率を要約している棒グラフである。
【0031】
【
図4】
図4は、門脈大静脈シャント手技の前および後の実験動物の腹腔が開いた状態の写真、ならびに門脈大静脈シャント手技の図(右端)を示している。
【0032】
【
図5】
図5は、本開示に係る前臨床試験の実験計画を示している流れ図である。
【0033】
【
図6A】
図6Aは、正常な肝組織における、肝細胞のマーカーであるCK-18のポジティブ染色を示している。
【0034】
【
図6B】
図6Bは、前臨床試験において肝細胞の超音波内視鏡(EUS)注射を行った6日後のリンパ節における、CK-18免疫染色シグナルの存在を示している。
【0035】
【
図6C】
図6Cは、前臨床試験において肝細胞の直接注射を行った6日後のリンパ節における、CK-18免疫染色シグナルの存在を示している。
【0036】
【
図7A】
図7Aは、超音波内視鏡(EUS)注射によって自家肝細胞をリンパ節に移植した約90日後のリンパ節における肝組織の存在を示している。
【0037】
【
図7B】
図7Bは、超音波内視鏡(EUS)注射によって同種異系肝細胞をリンパ節に移植した約90日後のリンパ節における肝組織の存在を示している。
【0038】
【
図7C】
図7Cは、超音波内視鏡(EUS)注射によって自家肝細胞をリンパ節に移植した約60日後のリンパ節における肝組織およびフマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH)陽性肝細胞の存在を示している。
【0039】
【
図7D】
図7Dは、超音波内視鏡(EUS)注射によって同種異系肝細胞をリンパ節に移植した約150日後のリンパ節における肝組織およびFAH陽性肝細胞の存在を示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
限定目的ではなく明確にする目的で、本開示の主題の詳細な説明を以下のサブセクションに分ける:
1.概要;
2.定義;
3.細胞送達手技;
4.移植された細胞からの異所性組織の生成;
5.疾患および症状;
6.被験体;
7.システム;および
8.キット。
【0041】
1.概要
概要として、本開示は、インビボ器官形成の発生を誘導する最小侵襲手技のための方法およびシステムに関する。被験体のリンパ節に細胞を送達することによって細胞を移植し、被験体において異所性組織を生育するための方法およびシステムが、本明細書中に提供される。送達された細胞または組織断片から、適切な解剖学的特徴および機能的特徴を有する異所性組織をリンパ節内で生育するプロセスを、インビボ器官形成と呼ぶ。本開示によって可能になる最小侵襲手技により、被験体に対する1つまたはそれを超える器官の正常な機能を補完または増強することができる異所性組織を生成できる。
【0042】
上で論じられたように、現行の移植療法、特に同所性臓器移植に関連する問題の1つは、末期肝疾患または末期腎疾患などの末期疾患を有する多くの患者が、同所性臓器移植または他のタイプの細胞移植に必要であり得る大手術にもはや適していないことであり得る。大手術に関連する重大なリスクが存在する場合があり、これらの患者の健康状態が悪化していることを考えると、予後は不良になり得る。1つの態様において、本開示は、最小侵襲手技(例えば、超音波内視鏡(EUS))を提供することにより、この問題を解決する。本方法およびシステムは、リンパ節を天然のバイオリアクターとして用いて、異所性部位において、解剖学的にインタクトかつ完全にまたは少なくとも部分的に機能的な器官を生成できる。本明細書中に提供される方法およびシステムは、しばしば追加の外科手技に関連し得る、末期の臓器疾患を有する患者の罹患率および死亡率を最小限に抑え得る。本開示は、本明細書中に記載される外科手技のうちの少なくともいくつかを外来ベースで行うことも可能にし得るので、初期の手技のコストを下げることができる。
【0043】
本明細書中で使用されるとき、用語「異所性組織」とは、身体の異所性(非天然)の位置に存在する組織であって、身体の天然の位置に通常見られる健康な器官または組織と類似のまたは同じ1つまたはそれを超える形態学的特性および/または機能的特性を有する、組織のことを指し得る。用語「機能的な異所性組織」とは、身体の天然の位置に通常見られる健康な器官または組織の1つまたはそれを超える機能を有する異所性組織のことを指し得る。用語「異所性の位置」は、被験体の天然の位置を基準とした位置を説明するために使用され得、例えば、異所性の位置とは、被験体の身体内の天然の位置とは異なる位置のことを指し得る。例えば、肝臓組織は、通常、リンパ節内に見られないので、リンパ節内の肝臓は、健康で正常な哺乳動物の身体において異所性であり、すなわち、異所性肝臓である。本開示のいくつかの態様によると、形態学的に肝細胞に似ている細胞集団を含み、健康な天然の肝臓が発揮し得る1つまたはそれを超える機能を集団で発揮できる異所性組織が、リンパ節内で成長できる。
【0044】
ある特定の実施形態において、上記方法は、被験体の体内管腔または閉鎖性体腔に内視鏡を前進させる工程を含む。ある特定の実施形態において、上記方法は、被験体の胃腸(GI)管、気道または尿路に内視鏡を前進させる工程を含む。
【0045】
ある特定の実施形態では、内視鏡を、管腔内アプローチによって被験体の体内管腔に前進させる。本明細書中で使用されるとき、本明細書中で使用される用語「管腔内アプローチ」とは、内視鏡を被験体の体内管腔に挿入するための当該分野で公知の任意のアプローチ、例えば、方法およびデバイスのことを指す。例えば、限定目的ではないが、上記方法は、管腔内アプローチによって被験体の胃腸(GI)管、気道または尿路に内視鏡を前進させる工程を含む。
【0046】
ある特定の実施形態において、上記方法は、被験体のリンパ節に針を挿入する工程をさらに含み得、その針は、内視鏡に取り付けられている。ある特定の実施形態において、内視鏡に取り付けられた針は、臓側壁を貫通してリンパ節に挿入される。臓側壁の非限定的な例としては、管腔臓器および/または管伝いの器官、例えば、胃、十二指腸、気管、気管支または膀胱を囲っている解剖学的構造が挙げられる。ある特定の実施形態において、上記方法は、経管腔的アプローチによって針を挿入する工程をさらに含む。本明細書中で使用されるとき、用語「経管腔的アプローチ」とは、内視鏡を使用することによって内腔に作用機器(working instrument)(例えば、針)を挿入するための当該分野で公知の任意のアプローチ、例えば、方法およびデバイスのことを指す。
【0047】
ある特定の実施形態において、上記方法は、針を介して1つまたはそれを超える細胞をリンパ節に送達する工程をさらに含む。ある特定の実施形態において、上記方法は、単一の細胞をリンパ節に送達する工程を含む。ある特定の実施形態において、上記方法は、細胞集団をリンパ節に送達する工程を含む。ある特定の実施形態において、細胞集団は、1つの細胞型を含む。ある特定の実施形態において、細胞集団は、少なくとも2つの細胞型を含む。ある特定の実施形態において、リンパ節に送達される1つまたはそれを超える細胞は、リンパ節内に生着し、異所性組織を生成し得る。
【0048】
ある特定の実施形態において、内視鏡を前進させる工程、針を挿入する工程またはその両方が、最小侵襲の方法または非侵襲性の方法によって実施される。例えば、超音波を介したイメージングまたは他の検出方法が、標的リンパ節の位置を突き止めるために本明細書中に提供される方法において適用され得る。上記プロセスにおいて、超音波イメージングまたは他の方法、例えば、最小侵襲の検出アプローチまたは非侵襲性の検出アプローチが、内視鏡を前進させること、好適な標的リンパ節の位置を突き止めること、または臓側壁を貫通した針の挿入もしくは標的リンパ節への針の挿入をモニタリングすることのうちのいずれかのために適用され得る。
【0049】
別の態様において、本開示は、超音波を利用して被験体の腹腔、骨盤腔または胸腔のリンパ節に針を挿入する工程を含む方法を提供する。その方法は、針を介してそれらのリンパ節に1つまたはそれを超える細胞を送達する工程をさらに含み得る。超音波ガイド下のリンパ節の位置特定は、利用可能な任意の技術によって実施され得る。例えば、限定目的ではないが、細胞の注射に好適なリンパ節を特定し、その位置を突き止めるために超音波イメージングが使用され得る。ある特定の実施形態では、リンパ節を検知するために超音波分光法が利用され得る。ある特定の実施形態では、リンパ節の位置推定のための他の検出方法とともに、超音波イメージングまたは超音波分光法が使用され得る。
【0050】
ある特定の実施形態において、上記方法は、細胞集団を被験体のリンパ節に送達する工程を含み、肝細胞の集団が、そのリンパ節に生着し、異所性肝臓を生成する。ある特定の実施形態において、上記方法は、被験体の肝臓への血液供給を減少させる工程をさらに含む。被験体の肝臓への血液供給を減少させることが、リンパ節内での異所性肝臓の成長のためになることが本開示によって発見された。
【0051】
2.定義
本願では、別段具体的に述べられない限り、単数形の使用は、複数形を含む。明細書において使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。
【0052】
本願では、別段述べられない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。本明細書中で使用される用語「および/または」と「それらの任意の組み合わせ」とそれらの文法上の等価物とは、交換可能に使用され得る。これらの用語は、任意の組み合わせを明確に企図すると示唆し得る。単に例証目的で、以下の句「A、Bおよび/またはC」または「A、B、Cまたはそれらの任意の組み合わせ」は、「個別的にA;個別的にB;個別的にC;AおよびB;BおよびC;AおよびC;ならびにA、BおよびC」を意味し得る。用語「または」は、文脈が離接的な使用を明確に指さない限り、接続的にまたは離接的に使用され得る。
【0053】
さらに、用語「~を含む(including)」ならびに他の形態(例えば、「~を含む(include)」、「~を含む(includes)」および「含まれる」)の使用は、非限定的である。
【0054】
本明細書における「いくつかの実施形態」、「ある特定の実施形態」、「ある実施形態」、「1つの実施形態」または「他の実施形態」に対する言及は、当該実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本開示の少なくともいくつかの実施形態に含まれるが、必ずしもすべての実施形態に含まれるわけではないことを意味する。
【0055】
本明細書および請求項において使用されるとき、語「~を含む(comprising)」(および~を含む(comprising)の任意の形態(例えば、「~を含む(comprise)」および「~を含む(comprises)」))、「~を有する(having)」(および~を有する(having)の任意の形態(例えば、「~を有する(have)」および「~を有する(has)」))、「~を含む(including)」(および~を含む(including)の任意の形態(例えば、「~を含む(includes)」および「~を含む(include)」))または「~を含む(containing)」(および~を含む(containing)の任意の形態(例えば、「~を含む(contains)」および「~を含む(contain)」))は、包括的またはオープンエンドであり、記載されていないさらなるエレメントまたは方法工程を排除しない。本明細書において論じられるいずれの実施形態も、本開示の任意の方法または組成物に対して実施され得ること、およびその逆も同様であることが企図される。さらに、本開示の組成物は、本開示の方法を達成するために使用され得る。
【0056】
本明細書中で使用される基準となる数値およびその文法上の等価物に対する用語「約」は、その数値自体およびその数値からプラスまたはマイナス10%の値の範囲を含み得る。
【0057】
用語「約」または「およそ」は、当業者が判断する特定の値に対して許容され得る誤差範囲内を意味するが、それは、その特定の値が計測または測定される方法、すなわち、計測システムの限度に部分的に依存する。例えば、「約」は、当該分野の慣例に従って、1標準偏差以内または1標準偏差超以内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、最大10%、最大5%または最大1%の範囲を意味し得る。別の例では、「約10」という量は、10および9~11の任意の量を含む。さらに別の例では、基準となるある数値に関する用語「約」は、その値からプラスまたはマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%の値の範囲も含み得る。あるいは、特に生体系または生物学的プロセスに関して、用語「約」は、ある値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。特定の値が、本願および請求項に記載されている場合、別段述べられない限り、その特定の値に対して許容され得る誤差範囲内を意味する用語「約」が想定されるべきである。
【0058】
3.細胞送達手技
ある特定の実施形態において、本開示の方法およびシステムは、被験体のリンパ節に細胞を経管腔的に送達するために内視鏡を利用する。ある特定の実施形態において、そのリンパ節は、内視鏡の使用によって到達可能な体内管腔もしくは閉鎖性体腔に近接して位置するか、または体内管腔内もしくは閉鎖性体腔内に位置する。ある特定の実施形態において、そのリンパ節は、被験体の腹腔、骨盤腔または胸腔に位置する。
【0059】
本明細書中で使用されるとき、用語「内視鏡」とは、被験体、例えば、ヒト被験体または非ヒト哺乳動物被験体、例えば、イヌ、ブタ、ウマ、ロバ、ウサギ、ウシ、マウスまたはラットの身体に差し込むことができ、被験体の内部を見せる任意の装置のことを指し得る。時折、その視野は、例えば、内視鏡に照明光学部品が備え付けられているとき、またはその他の方法で照明が補助されているとき、視覚的な検査を提供する。ある特定の実施形態において、本開示の内視鏡は、1つもしくはそれを超える検知プローブを備えるか、あるいは1つもしくはそれを超える検知プローブに取り付けられているか、または1つもしくはそれを超える検知プローブを伴っており、被験体の内部を調べるための種々の検知モードを提供する。例えば、内視鏡は、視覚的検査用の照明光学部品、超音波によって媒介される検出(例えば、超音波イメージング)用の超音波プローブ、または放射線照射、赤外線信号、高周波信号もしくは蛍光信号用の検知器を有し得る。
【0060】
本明細書中に記載される内視鏡は、以下の部品のうちの1つ以上を備え得る:被験体の管腔路(例えば、胃腸管、気道または尿路)に沿って移動する剛性または可撓性のチューブ;検査中の器官または物体を照らすための光送達系;対物レンズから観察者に像を伝えるレンズ系、接眼レンズ、または体内の内視鏡が捕捉した像を表示するビデオシステム;医療機器または遠隔操縦装置を進入させるための1つまたはそれを超える通路。光源は、身体の外に存在し得るか、または小型で、内視鏡内に備え付けられ得る。光源が身体の外に存在するとき、光は、光ファイバー系を介して伝達され得る。捕捉された身体内の光学像を伝達するための光学系、例えば、光ファイバーが存在し得る。さらにまたはあるいは、本明細書中に提供される内視鏡には、種々の目的の他の検出装置が備え付けられ得る(例えば、それを一部として備えるか、またはそれに取り付けられている)。
【0061】
本明細書中に提供される方法は、被験体の体内管腔または閉鎖性体腔において内視鏡を前進させる工程を含み得る。体内管腔の非限定的な例としては、胃腸(GI)管(例えば、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、結腸、胆管、直腸、肛門)、気道(例えば、鼻、下気道)、耳、尿路、子宮頸部、子宮およびファロピウス管が挙げられる。閉鎖性体腔の非限定的な例としては、腹腔および骨盤腔が挙げられる。ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法は、被験体の胃腸管、気道または尿路において内視鏡を前進させる工程を含む。
【0062】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法は、被験体の体内管腔もしくは閉鎖性体腔に近接して位置するまたは体内管腔もしくは閉鎖性体腔に位置する少なくとも1つのリンパ節に細胞を送達するために、体内管腔に沿ってまたは閉鎖性体腔において内視鏡を前進させる工程を含む。ある特定の実施形態において、リンパ節の位置は、細胞移植の目的に基づいて選択される。ある特定の実施形態において、その管腔および/または閉鎖性体腔は、細胞移植に適したリンパ節に基づいて選択される。
【0063】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法は、胃腸管に近接した1つまたはそれを超えるリンパ節に細胞を送達するために胃腸管に沿って内視鏡を前進させる工程を含む。胃腸管の上部または下部に近接したリンパ節に細胞を送達するために、内視鏡(例えば、食道鏡または胃鏡)が使用され得る。例えば、食道に近いリンパ節に細胞を送達するために食道鏡が使用され得、胃周囲リンパ節および/または十二指腸周囲リンパ節に細胞を送達するために胃鏡が使用され得る。本明細書中に提供される方法を用いて細胞を送達することができる、胃腸管に近接したリンパ節の非限定的な例としては、十二指腸周囲リンパ節、胃周囲リンパ節、膵周囲リンパ節、腸間膜リンパ節、回結腸リンパ節、結腸間膜リンパ節、胃リンパ節、肝脾リンパ節、脾門リンパ節、傍食道リンパ節、傍噴門リンパ節、傍大動脈リンパ節、後大動脈リンパ節、大動脈外側リンパ節、大動脈前リンパ節、小彎リンパ節、総肝(common hepatic)リンパ節、脾動脈リンパ節、腹腔動脈幹(coeliac axis)リンパ節、腸骨リンパ節および後腹膜リンパ節が挙げられる。内視鏡は、被験体の口から、またはある特定の実施形態では被験体の鼻から差し込まれ得る。あるいは、内視鏡は、被験体の肛門から差し込まれ得、例えば、直腸または結腸に近いリンパ節に細胞を送達するために、直腸鏡、S状結腸鏡または結腸鏡が使用され得る。ある特定の実施形態において、内視鏡は、胃腸管に沿って移動できるように柔軟であり、細胞移植の目的に好適なリンパ節の位置を突き止めるための研究的検査が行われる。
【0064】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法は、気道に近接した1つまたはそれを超えるリンパ節に細胞を送達するために被験体の気道に沿って内視鏡を前進させる工程を含む。例えば、限定目的ではないが、被験体の肺の気管もしくは気管支または喉頭に近いリンパ節を標的化するために気管支鏡または喉頭鏡が使用される。本明細書中に提供される方法を用いて細胞を送達することができる、気道に近接したリンパ節の非限定的な例としては、胸骨傍リンパ節、肋間リンパ節、横隔膜上リンパ節、上気管気管支リンパ節、下気管気管支リンパ節、気管支肺リンパ節、気管傍リンパ節および肺内(intrapumonary)リンパ節が挙げられる。気管支鏡または喉頭鏡は、被験体の口から、またはある特定の実施形態では被験体の鼻から差し込まれ得る。
【0065】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法は、被験体の尿路に近接した1つまたはそれを超えるリンパ節(lymph modes)に細胞を送達するために、尿路に沿って内視鏡を前進させる工程を含む。例えば、限定目的ではないが、尿道または膀胱に近いリンパ節を標的化するために、膀胱鏡が使用される。膀胱鏡は、被験体の尿道から差し込まれ得る。本明細書中に提供される方法を用いて細胞を送達することができる、尿路に近接したリンパ節の非限定的な例としては、外腸骨リンパ節、内腸骨リンパ節、腰部大静脈(caval lumbar)リンパ節、腰部大動脈(aortic lumbar)リンパ節、浅鼡径リンパ節、深鼡径リンパ節、膀胱周囲大動静脈間リンパ節、膀胱周囲閉鎖リンパ節または膀胱周囲仙骨前リンパ節のうちの1つまたはそれを超えるリンパ節が挙げられる。
【0066】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法は、閉鎖性体腔(例えば、腹腔、骨盤腔)の内部または近くの少なくとも1つのリンパ節に細胞を送達するために、閉鎖性体腔において内視鏡を前進させる工程を含む。ある特定の実施形態において、内視鏡は、小さな切り込み、例えば、腹部の表面上の小さな切り込みを通じて、閉鎖性体腔に差し込まれる。ある特定の実施形態において、閉鎖性体腔は、腹腔または骨盤腔である。腹腔または骨盤腔の内部または近くのリンパ節の非限定的な例としては、脾リンパ節、肝リンパ節、胆嚢リンパ節、網嚢孔リンパ節、右/左胃リンパ節、幽門リンパ節、幽門上(super pyloric)リンパ節、幽門下リンパ節、幽門後リンパ節リンパ節、上膵リンパ節、下膵リンパ節(inferior lymph node)、上/下膵十二指腸リンパ節、下腸間膜リンパ節、S状結腸リンパ節、上直腸リンパ節、結腸間膜リンパ節、左結腸リンパ節、右結腸リンパ節、中結腸リンパ節、虫垂リンパ節、回結腸リンパ節、盲腸後(retrocaecal)リンパ節、盲腸前(pretectal)リンパ節、上腸間膜リンパ節、左腰リンパ節、大動脈外側リンパ節および大動脈前リンパ節が挙げられる。
【0067】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法およびシステムは、細胞を移植するリンパ節の位置を突き止めるために、および/あるいは体内管腔もしくは閉鎖性体腔を通じて内視鏡を前進させること、針を挿入することまたはそれらの任意の組み合わせをガイドするために、超音波を使用する。超音波は、ヒトの聴覚の可聴上限より高い周波数を有する音波であり、約20kHz超~数ギガヘルツであり得る。超音波イメージング(または超音波検査)は、本明細書中に提供される方法およびシステムを適用する意図された目的に応じて種々の形式で行われ得る。超音波検査の非限定的な例としては、超音波ドップラー法、造影超音波検査、分子的超音波検査、エラストグラフィー、介入的超音波検査および圧迫超音波検査が挙げられ得る。ある特定の実施形態において、本明細書中で使用される超音波イメージング技術は、国際特許公開番号WO2018222724A1およびWO2018134729A1(これらの各々が参照により本明細書中に援用される)に記載されているものなどの技術を用いて注射に適したリンパ節の位置を突き止める目的で、高い空間分解能および/または時間分解能を有する。
【0068】
本開示のある特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法は、超音波イメージングと組み合わせて内視鏡検査法を使用し、ここで、その内視鏡は、超音波プローブに取り付けられている(例えば、内視鏡の一部としてまたは別個の部分として)。本明細書中で交換可能に使用される用語「超音波内視鏡検査法」、「超音波内視鏡検査」または「EUS」とは、胸部、腹部および骨盤における内部器官または他の任意の身体の内部構造を検知する(例えば、その画像を得る)および/または操作するために超音波と内視鏡検査法を組み合わせた医学的手技のことを指し得る。本明細書中に提供される方法およびシステムにおいて使用されるEUS装置およびEUS技術は、現在商業的に入手可能なもの、および/または米国特許公開番号US20060106306A1およびUS20070237373A1ならびに国際特許公開番号WO1998009247A1(これらの各々は、その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されているようなものであり得る。
【0069】
ある特定の実施形態において、標的リンパ節(例えば、1つまたはそれを超える細胞が送達されるリンパ節)の超音波イメージングは、放射線イメージングなどの他のイメージング技術を利用して行われる。放射線イメージングには、動的放射線イメージング(透視)、コンピュータ断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)が含まれ得る。例えば、限定目的ではないが、被験体の全身またはいくつかの局所器官もしくは局所組織の解剖学的情報を得るために、コンピュータ断層撮影法(CT)が行われる。ある特定の実施形態において、磁気共鳴または他の任意の利用可能な医学的技術が、被験体の腹腔、骨盤腔または胸腔における標的リンパ節の位置を突き止めるために、超音波イメージングとともにまたはその代わりに使用される。
【0070】
本明細書中に提供される方法およびシステムは、1つまたはそれを超える細胞をリンパ節に送達するために針を使用することを含み得る。その針は、送達される細胞を収容し、送達用針を通ってその細胞を押し出すように構成され得る、注射器の一部であり得る。本明細書中に提供される針は、ある特定の鋭度および剛性を有するように構成され得る。例えば、針は、リンパ節に挿入される。ある特定の実施形態において、針は、胃腸管の壁(例えば、食道、胃、腸または結腸の壁)、気道の壁、尿路の壁(例えば、尿道または膀胱の壁)を穿通するようにも構成されており、その結果、その針は、その路の外側のリンパ節に到達できる。当該分野で公知の任意の好適な針を、本明細書中に開示される方法とともに使用することができる。
【0071】
ある特定の実施形態において、針は、例えば、内視鏡の一部としてまたは別個の装置として、内視鏡に取り付けられる。その針は、細針吸引(FNA)手技において使用される針であり得る。FNA針は、商業的に入手可能であり得るか、または本開示の教示を適用する目的で特別に設計され得る。FNA針は、通常、生検目的で、例えば、診断目的で組織に切れ目を入れて組織断片を吸引するために、使用される。本明細書中に提供される方法およびシステムではそうではなく、FNA針は、細胞送達目的で使用され得る。ある特定の実施形態において、FNA針は、直線的配列の超音波内視鏡(echoendoscope)EUS/FNA装置を介して操作される。例示的なEUS/FNA装置は、半剛性保護シース内のFNA針(例えば、取り外し可能な固いスタイレットを備える中空針)の前進を制御かつ計測して行えるように構成され得る。そのEUS/FNA装置は、スタイレットの挿入または挿抜のためおよび生存細胞を挿入できるシリンジを取り付けるための、ポートを備えるハンドルも有し得る。ある特定の実施形態では、超音波内視鏡装置のEUSプローブを用いて音響学的に特定されたリンパ節に、保護シース内に入った状態で針を挿入する。次いで、その針を、シースから前進させ、直接超音波誘導下で標的リンパ節に経管腔的に挿入することができる。シリンジの先端に取り付けられたコックは、針本体内に真空を作り、保持するのを助け得る。針の先端が標的リンパ節に到達し、スタイレットが抜去されると、培養液中の生存細胞を含むシリンジを、針のハンドルに接続できる。コックを開くと、直視下において、リンパ節実質内に留置された針から細胞が直ちに注入される。針は、内視鏡から出るシースの長さを変更できる調整可能なスペーサー/スライダーをハンドルの遠位部に有し得、これにより、リンパ節の近くに注入するときのさらなる安全度および精度が保証され得る。
【0072】
ある特定の実施形態において、例えば、針のサイズは、リンパ節に細胞を注射しやすいように設定されるなど、針が設定される。ある特定の実施形態において、針のサイズ(例えば、ゲージ)は、標的リンパ節の位置、送達される細胞型および送達される細胞量に基づいて選択される。ある特定の実施形態において、針が細いほど、標的リンパ節への到達および挿入が自在になる。ある特定の実施形態では、小さい標的リンパ節には比較的細い針を挿入するほうが容易であり、そうでなければ、比較的太い針の周囲がテント状になり得る。ある特定の実施形態において、針のサイズ、例えば、針の内径は、針を詰まらせることなく細胞を押し出せるように設定される。本明細書中に記載されるとき、針のサイズとは、針の中心部ではなく針の先端のサイズのことを指し、その針は、注射器の他の部分に連結される。本明細書中に開示されるとき、針の外径とは、先端から針の壁の外側の第1の完全直径のことを指し、針の内径とは、先端から針の壁の内側の第1の完全直径のことを指す。
【0073】
ある特定の実施形態において、針は、大きくとも約700μm、600μm、500μm、450μm、400μm、300μm、260μm、250μmまたは200μmの内径を有する。ある特定の実施形態において、針は、大きくとも約260μmの内径を有する。ある特定の実施形態において、針の内径は、約700μm、600μm、500μm、450μm、400μm、300μm、260μm、250μmまたは200μmであり得る。ある特定の実施形態において、針の内径は、約260Jimである。針は、大きくとも約1mm、900μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、520μm、510μm、500μm、480μm、450μmまたは400μmの外径を有し得る。ある特定の実施形態において、針の外径は、大きくとも約510μmである。ある特定の実施形態において、針の外径は、約1mm、900μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、520μm、510μm、500μm、480μm、450μmまたは400μmである。ある特定の実施形態において、針の外径は、約510μmである。ある特定の実施形態において、針は、ISO7864:2016に従って規定されたある特定のゲージである。例えば、限定目的ではないが、針は、約19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5または27ゲージ(ga)である。ある特定の実施形態において、針は、大きくとも約19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5または27gaである。針は、大きくとも約25gaであり得る。本明細書中に記載されるように、特定のゲージサイズを基準として針のサイズについて比較するとき、その比較は、その針の外径と、ISO7864:2016が規定する特定のゲージの標準皮下針の外径との間で行われる。ある特定の他の実施形態において、針は、比較的小さい外径および比較的大きい内径を有する。ある特定の実施形態において、針は、例えば、大きい内径および小さい外径を維持しながら薄い壁を有する、非標準サイズを有する。
【0074】
針の注射器内の細胞の総数および細胞の濃度は、いくつかの因子、例えば、注射される細胞のサイズ、生成する異所性組織のタイプ、細胞の増殖能、異所性組織の目標質量、注射用針のサイズ、および標的リンパ節のサイズに基づいて選択される。
【0075】
ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、注射のための少なくとも約1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、30億、50億、80億、100億、200億、500億または1000億個の細胞を収容する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、注射のための約1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、30億、50億、80億、100億、200億、500億または1000億個の細胞を有する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、注射のための多くとも約1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、30億、50億、80億、100億、200億、500億または1000億個の細胞を有する。ある特定の実施形態において、注射器は、注射のための約5000万~約2億個の細胞を収容する。
【0076】
ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、異所性肝臓を生成するための少なくとも約1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の肝細胞を収容する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、異所性肝臓を生成するための約1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の肝細胞を有する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、異所性肝臓を生成するための多くとも約1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の肝細胞を有する。ある特定の実施形態において、注射器は、異所性肝臓を生成するための約5000万~約2億個の細胞を収容する。
【0077】
ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、1mLあたり少なくとも約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、30億、50億、80億または100億個の細胞を有する細胞懸濁液を有する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、1mLあたり約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、30億、50億、80億または100億個の細胞を有する細胞懸濁液を有する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、1mLあたり多くとも約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、30億、50億、80億または100億個の細胞を有する細胞懸濁液を有する。
【0078】
ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、異所性肝臓を生成するための、1mLあたり少なくとも約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を有する肝細胞懸濁液を収容する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、異所性肝臓を生成するための、1mLあたり約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を有する肝細胞懸濁液を収容する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、異所性肝臓を生成するための、1mLあたり多くとも約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を有する肝細胞懸濁液を収容する。
【0079】
ある特定の実施形態において、肝細胞を注射するための針は、大きくとも約25ゲージであるように選択され、その針は、1mLあたり少なくとも約5000万個の生存細胞を有する懸濁液中の肝細胞を含む細胞を送達する。ある特定の実施形態において、注射器内の細胞集団は、少なくとも約65%の生存細胞を有する。
【0080】
ある特定の理論に拘束されることを望むものではないが、リンパ節に送達される細胞の生存率は、異所性組織の形成および機能にとって重要であり得る。ある特定の実施形態において、細胞集団における生存百分率は、制御される必要がある。注射器、例えば、針は、送達プロセス中に細胞の生存率を維持するように構成され得る。例えば、針のサイズおよび懸濁液の細胞濃度は、細胞送達プロセス中に細胞が針を通過したとき、生存百分率が有意に低下しないように設定され得る。ある特定の実施形態では、細胞が針を通過したとき、細胞送達によって、細胞集団における細胞生存百分率が約20%、15%、10%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%または0.5%未満の低下に至る。ある特定の実施形態において、細胞送達中に細胞が針を通過したときの細胞生存百分率の低下は、約10%未満である(例えば、注射前の細胞生存率と比べて)。
【0081】
ある特定の実施形態において、本明細書中に提供される方法は、被験体の肝臓への血液供給を減少させる工程、および1つまたはそれを超える肝細胞を被験体のリンパ節に送達する工程を含む。被験体の肝臓への血液供給の減少は、肝細胞機能障害、例えば、少なくともいくつかの肝臓細胞の機能不全または死を誘導し得、結果として、肝機能の低下または喪失を誘導し得る。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、肝臓への血液供給を減少させた後の被験体における肝機能の低下または喪失は、リンパ節に肝細胞を移植した後のリンパ節における異所性肝臓の成長に対して代償的な影響を及ぼし得る。換言すれば、肝臓への血液供給を減少させる工程は、ある特定の実施形態では、リンパ節における異所性肝臓の形成を促進し、および/またはある特定の実施形態では、リンパ節における異所性肝臓の機能性能を改善する。上記方法のある特定の実施形態において、細胞送達は、肝臓への血液供給を減少させる工程とともに行われるとき、肝細胞の直接注射(例えば、大手術または経皮注射を介して)または肝細胞のEUSガイド下注射によって行われる。
【0082】
肝臓への血液供給を減少させるために、外科的方法を用いることができ、それは、門脈からの血液流入を向け直すことを含み得る。例えば、流入門脈と流出肝静脈との間に直接の連絡を確立するための経頸静脈的肝内門脈大循環シャント(TIPS)手技が行われ、ゆえに、肝臓を通る血流を減少させることができる。TIPSとは、門脈と肝静脈との間に連絡を確立する肝臓内の人工的な流路のことを指す。TIPSは、末期肝疾患に起因する進行性の門脈圧亢進症の内臓への悪影響および全身性の血行力学的影響を緩和するための独立型の治療として用いられている。ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法は、リンパ節における肝細胞移植と併用してTIPSを使用して、リンパ節において異所性肝臓を生成する工程を含む。
【0083】
経頸静脈的肝内門脈大循環シャント術は、腹腔の開放を必要とする大手術または最小侵襲の手技によって、外科的に肝臓に設置され得る。ある特定の実施形態において、経頸静脈的肝内門脈大循環シャント術は、透視下で設置される。肝臓へのアクセスは、頚部の内頸静脈を介して得ることができる。頸静脈へのアクセスが確認されたら、シャントの設置を容易にするために、ガイドワイヤーおよび導入器シースを設置し得る。この工程により、上大静脈から下大静脈を通って最終的には肝静脈に進むことによって、患者の肝静脈へのアクセスが可能になり得る。カテーテルが肝静脈に留置されたら、楔入圧が得られ、肝臓における圧力勾配を計算することができる。この後、二酸化炭素を注入して、門脈の位置が突き止められ得る。次いで、Colapintoとして知られる特別な針を、肝実質を通って前進させて、肝静脈を肝臓の中心付近の大門脈に接続し得る。次に、針が作った通路に沿って血管形成用バルーンを肝臓内で膨らませることによって、シャントのための流路を作ることができる。シャントは、より高圧の門脈とより低圧の肝静脈との間の路を維持するために、ステントまたはエンドグラフトとして知られる特別な網状チューブを留置することによって、完成され得る。この手技の後、設置を明らかにするために、蛍光透視像を得ることができる。
【0084】
ある特定の他の実施形態では、肝臓への血液供給を減少させるために、門脈と下大静脈との間に連絡を確立する門脈大静脈シャント手技が行われる。門脈大静脈シャントは、外科的方法(例えば、実施例2に記載される手技であるがこれに限定されない)によって設置され得る。使用され得る他の外科手技としては、端側門脈大静脈シャント術または側々門脈大静脈シャント術(SSPCS)、H型またはC型グラフトの間置による腸間膜静脈下大静脈シャント術(MCS)、および脾腎シャント術(SRS)(中位または遠位)が挙げられ得る。
【0085】
ある特定の実施形態では、肝臓への血液供給を減少させた後、肝細胞がリンパ節に送達される。ある特定の実施形態では、肝臓への血液供給を減少させる工程の直後に、肝細胞移植が行われる。ある特定の実施形態では、肝臓への血液供給を減少させる工程の、例えば、約1時間、2時間、6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、2日、3日、4日、5日、7日、10日、2週間、3週間または4週間後に、肝細胞移植が行われる。ある特定の実施形態では、生命を脅かす可能性のある完全な肝不全を回避するために、そのような間隔は、ある特定の時間より長くすることはできない。例えば、限定目的ではないが、その間隔は、約12時間、18時間、24時間、36時間、2日間、3日間、4日間、5日間、7日間、10日間、2週間、3週間または4週間より短い。あるいは、肝細胞移植は、肝臓への血液供給を減少させる工程の直前に行われ得る。ある特定の実施形態において、その間隔は、約1時間、2時間、6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、2日間、3日間、4日間、5日間、7日間、10日間、2週間または3週間より短い場合がある。2つの工程の間の間隔は、肝臓への血液供給の減少の程度および手技を受ける被験体の健康状態に依存し得る。本明細書中に記載されるような2つの工程の間の間隔の決定には、個別に医師の医学的評価が必要になり得る。
【0086】
移植片拒絶は、非自己の器官または細胞の移植片が関わるどの移植手技にも付随する問題であり得る。本開示の方法に係る手技によって誘導される移植片拒絶を予防するためまたは寛解させるために、免疫抑制を適用することができる。例えば、細胞移植の直前もしくは細胞移植が完了した直後、または当該手技の約1時間、2時間、6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、2日、3日、4日、5日、7日、10日、2週間、4週間、6週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、2年、3年、4年またはそれより後に、免疫抑制薬を被験体に投与できる。
【0087】
種々の免疫抑制アプローチが、本明細書中で適用され得る。例えば、限定目的ではないが、被験体に、誘導免疫抑制のための免疫抑制剤が投与され、その免疫抑制剤には、急性拒絶反応を予防する目的で強化用量にて移植直後に投与されるあらゆる免疫抑制性の薬剤が含まれ得る。関連薬剤の非限定的な例としては、メチルプレドニゾロン、Atgam、サイモグロブリン、OKT3、バシリキシマブ、ソルメドロールおよびダクリズマブが挙げられ得る。被験体には、維持免疫抑制のための免疫抑制剤も投与され得、その免疫抑制剤には、長期間維持することを意図して移植前、移植中または移植後に投与されるあらゆる免疫抑制性の薬剤が含まれ得る。例えば、限定目的ではないが、プレドニゾン、シクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、プログラフまたはラパマイシンが、本明細書中に記載されるように維持免疫抑制のために使用され得る。ある特定の実施形態において、被験体には、抗拒絶反応免疫抑制のための免疫抑制剤も投与され得、その免疫抑制剤には、移植後の初期または特定の追跡調査期間において、例えば、急性拒絶反応の診断の30日後まで、急性拒絶反応エピソードを処置する目的で投与されるあらゆる免疫抑制性の薬剤が含まれ得る。関連薬剤の非限定的な例としては、メチルプレドニゾロン、Atgam、OKT3、サイモグロブリン、バシリキシマブまたはダクリズマブが挙げられ得る。本方法において使用され得る免疫抑制剤の他の例としては、他のステロイド(例えば、コルチコステロイド、デキサメタゾンおよびプレドニゾン)、Cox-1阻害剤およびCox-2阻害剤、マクロライド抗生物質(例えば、ラパマイシンおよびタクロリムス)ならびにB細胞、T細胞および/または他の自然免疫の活性を制限する、低下させるまたは抑制する他の物質も挙げられ得る。
【0088】
4.移植された細胞からの異所性組織の生成
本明細書中に提供される方法およびシステムは、肝細胞、腎臓細胞もしくは腎組織断片、膵臓細胞もしくは膵島、胸腺細胞もしくは胸腺断片または肺細胞もしくは肺組織断片を含むがこれらに限定されない様々な細胞型を移植するために適用され得る。リンパ節に移植された細胞は、生着して、被験体の正常な器官の1つまたはそれを超える機能を補完または増強し得る異所性組織を形成し得る。
【0089】
リンパ節に移植される細胞は、細胞移植の目的に応じて、均一な(homogenous)細胞集団または不均一な細胞集団であり得る。例えば、ある特定の実施形態では、均一な肝細胞の集団をリンパ節に送達して、異所性肝臓を生成する。ある特定の実施形態では、異所性肝臓を生育するとき、不均一な細胞集団、例えば、肝細胞およびさらなる他の肝実質細胞をリンパ節に送達する。ある特定の実施形態では、リンパ節において異所性腎臓を生成する目的で、不均一な腎臓細胞または腎臓断片の集団をリンパ節に送達する。ある特定の実施形態では、ドナー被験体由来の胎児腎、またはインビトロ分化法(例えば、国際特許公開番号WO2014182885A2、WO2019006127A1およびWO2018227101A1(これらの各々が参照により本明細書中に援用される)に記載されている方法)によって生成された腎臓オルガノイドを入手し、小断片に処理し(例えば、刻むまたはすりつぶし)、液体に再懸濁して、リンパ節に送達される溶液を得る。その溶液は、胎児腎または腎臓オルガノイドを構成する種々の細胞型を含む。ある特定の実施形態では、異所性膵臓を生成するために、不均一な膵臓細胞の集団をリンパ節に送達する。
【0090】
本明細書中に提供される方法およびシステムは、治療有効量の細胞を被験体のリンパ節に送達することを含み得る。本明細書中で使用される用語「治療有効量」は、移植または送達される細胞集団に対して言及するとき、任意の医学的処置に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比で、リンパ節に細胞移植を受けた被験体において所望の治療効果をもたらすのに有効な、細胞集団内の適切な細胞の量、例えば、移植される細胞の量、または移植される細胞を含む組成物の量を意味し得る。例えば、限定目的ではないが、被験体に移植される細胞集団の量は、処置のために移植が意図される疾患または症状(例えば、末期肝疾患または末期腎疾患)の1つまたはそれを超える症候の、統計学的に有意かつ計測可能な変化をもたらすのに十分な量である。治療有効量の決定は、本方法または本システムを適用する意図された医学的な目的に依存する。治療有効量は、被験体の病歴、年齢、症状、性別、ならびに被験体の病状の重症度およびタイプ、および他の薬学的に活性な作用物質の投与によって変化し得る。
【0091】
本明細書中に提供される方法およびシステムを適用する意図された目的に応じて、種々の量の細胞が、異所性組織を生育するためにリンパ節に送達され得る。リンパ節1つあたり少なくとも約100万、200万、300万、400万、500万、700万、900万、1000万、1500万、2000万、3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、1億5000万、2億、3億、5億、7億5000万、8億、9億、10億、50億、100億、200億、300億、500億個またはそれより多い細胞が送達され得る。ある特定の実施形態では、約1000万、1500万、2000万、3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞が、単一のリンパ節に送達され得る。ある特定の実施形態において、約5000万~約2億個の細胞が、単一のリンパ節に送達され得る。
【0092】
送達される細胞集団は、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、85%、90%、95%または約100%の生存細胞を有し得る。送達される細胞集団における細胞生存レベルを維持するために、細胞生存率を高めるために利用可能な措置が適用され得る。ある特定の実施形態では、生存可能な細胞集団が送達されること、およびその結果として機能的な異所性組織がリンパ節において生成され得ることを確保するために、細胞の送達前に、細胞集団の生存状態(例えば、生存百分率または他の細胞生存率パラメータ)が計測され得る。
【0093】
非限定的な実施形態では、開示される様々な細胞型をリンパ節に移植した少なくとも約5日、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、90日、95日、100日、110日、120日、130日、140日、150日、160日、170日、180日、190日または約200日後に、異所性組織が形成され得る。例えば、限定目的ではないが、肝細胞が、EUSによってリンパ節に送達され得、生着した肝細胞は、肝細胞移植の約60、約90または約150日後に肝臓組織を形成し得る。非限定的な実施形態では、開示される様々な細胞型をリンパ節に移植した後、約5日、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、90日、95日、100日、110日、120日、130日、140日、150日、160日、170日、180日、190日または約200日以内に、異所性組織が形成され得る。例えば、限定目的ではないが、肝細胞が、EUSによってリンパ節に送達され得、生着した肝細胞は、肝細胞を移植した後、約60、約90または約150日以内に肝臓組織を形成し始め得る。
【0094】
送達される細胞は、異なる起源から異なるいくつかの方法によって得ることができる。それらの細胞は、被験体にとって同種異系、異種または自己であり得る。それらの細胞は、生存ドナー組織から直接得ることができる。例えば、米国特許第9125891B2号および同第6610288B1号、米国特許公開番号20120045764A1および同20040110289A1(これらの各々が参照により本明細書中に援用される)に記載されている方法に従って、肝細胞が単離され、移植に向けて調製される。ある特定の実施形態において、送達される細胞は、インビトロの起源から得られる。幹細胞(例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、トロホブラスト幹細胞または他の任意のタイプの多能性もしくは複能性幹細胞)が、インビトロで培養され得、本明細書中に提供される方法およびシステムを適用する目的に適したある特定の細胞型または細胞集団に分化され得る。例えば、上に記載されたように、腎臓オルガノイドまたは膵島が、インビトロ分化方法を用いて得られ、本明細書中に記載される移植手技に向けて調製される。送達される細胞は、移植の前に、保存、例えば、凍結保存され得る。細胞生存率レベルが、その後の細胞送達およびリンパ節における異所性組織形成に適している限り、標準的な凍結保存および回復プロトコルを使用できる。ある特定の実施形態では、送達される細胞の1つまたはそれを超える遺伝子が改変されるように、またはそれらの細胞が1つまたはそれを超える外来性遺伝子を発現するように改変されるように、送達される細胞が遺伝的に改変される。送達される細胞の遺伝子改変のために、任意の利用可能な遺伝子編集方法(例えば、相同組換え、トランスポザーゼ/トランスポゾン、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENおよびCRIPSR、例えば、CRISPR-Cas9技術)を適用することができる。
【0095】
上記細胞は、移植に向けて調製され得、溶液に懸濁され得る。ある特定の実施形態において、細胞集団を含む懸濁液は、薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤またはキャリアをさらに含み得る。本明細書中で使用されるとき、用語「薬学的に許容され得る」とは、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を起こすことなく、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、被験体(例えば、ヒト被験体または非ヒト動物)の組織との接触における使用に適した、化合物、材料、組成物および/または剤形のことを指し得る。
【0096】
本明細書中で使用されるとき、用語「溶液」には、本発明の細胞が生存可能でいられる薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤が含まれ得る。薬学的に許容され得るキャリアおよび希釈剤には、食塩水、水性緩衝液、溶媒および/または分散媒が含まれる。そのようなキャリアおよび希釈剤の使用は、当該分野で周知である。この溶液は、好ましくは、滅菌されており、容易に注入可能である程度に流動性である。この溶液は、製造および貯蔵の条件下において安定であり得、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどを使用することによって、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護され得る。本開示の溶液は、薬学的に許容され得るキャリアまたは希釈剤に、本明細書中に記載されるような生存可能な機能細胞、および必要に応じ、上に列挙した他の成分を組み込んだ後、濾過滅菌することによって、調製され得る。
【0097】
本開示の目的のために薬学的に許容され得る賦形剤として働き得る物質または材料の非限定的な例としては、糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロースおよび酢酸セルロース);トラガント末;麦芽;ゼラチン;滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルク);カカオバターおよび坐剤用ワックス;油(例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油);グリコール(例えば、プロピレングリコール);ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール(PEG));エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンガー液;エチルアルコール;pH緩衝液;ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;増量剤(例えば、ポリペプチドおよびアミノ酸);血清の構成要素(例えば、血清アルブミン、HDLおよびLDL);C2-C12アルコール(例えば、エタノール);ならびに薬学的製剤において使用される他の無毒性の適合性物質が挙げられる。湿潤剤、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存剤および酸化防止剤も、製剤中に存在し得る。「賦形剤」、「キャリア」、「薬学的に許容され得るキャリア」などのような用語は、本明細書中で交換可能に使用される。本明細書中で使用されるとき、用語「薬学的に許容され得る賦形剤」とは、本化合物、材料または細胞を保持することまたは身体の器官もしくは部分に運搬することに関与する、薬学的に許容され得る材料、組成物またはビヒクル(例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、キャリア、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルク ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛またはステアリン酸)または溶媒封入材料のことを指し得る。各賦形剤は、製剤の他の成分、例えば、移植される細胞と適合し、被験体にとって有害でないという意味において、「許容され得る」ものでなければならない。
【0098】
本開示の細胞は、リンパ節に送達された後、リンパ節に生着し、増殖し、異所性組織を生成することができる。本明細書中で使用されるとき、用語「生着する」またはその文法上の等価物は、1つまたはそれを超える細胞が標的リンパ節に移植され、リンパ節内で生き残って、生物学的に活性になる(例えば、細胞機能を発揮するようになる)プロセスのことを指し得る。本明細書中で使用されるとき、用語「増殖する」またはその文法上の等価物は、細胞が1回またはそれを超える有糸分裂を経験し、いくつかの子孫細胞を産生するプロセスのことを指し得、この増殖プロセスは、細胞数を指数関数的に増加させ得る。ある特定の実施形態において、細胞は、高レベルで増殖し、最終的に生成される異所性組織の質量は、リンパ節に送達された元の細胞質量よりもかなり大きくなる。ある特定の実施形態において、細胞増殖は、中程度のレベルである。ある特定の実施形態において、質量の増加は、例えば、最初に移植された細胞の質量と比べて、少なくとも約1.2倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、7.5倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、17.5倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、120倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍または1000倍である。ある特定の実施形態において、細胞数は、例えば、最初に移植された細胞の質量と比べて、少なくとも約1.2倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、7.5倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、17.5倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、120倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍または1000倍増加する。
【0099】
ある特定の実施形態では、細胞移植を受けたリンパ節に血管新生が起こることがあり、例えば、そのリンパ節内、ある特定の実施形態では異所性組織内に、浸潤して血管構造網を形成する血管が存在し得る。ある特定の実施形態において、浸潤性の血管構造網は、異所性組織への血液供給の基盤を築き得る。ある特定の実施形態において、浸潤性の血管構造網は、代謝産物または代謝材料を異所性組織へおよび/または異所性組織から運搬するのを助け得る。例えば、限定目的ではないが、異所性肝臓は、グリコーゲン、グルコースおよび/または胆汁を産生でき、それらは、移植部位(リンパ節)内に形成された血管構造網によって主要な血流に運搬され得る。ある特定の実施形態において、異所性膵臓は、インスリン、グルカゴンおよび/またはソマトスタチンを産生および分泌でき、それらも、リンパ節内に形成された血管構造網によって被験体の身体の主要な血流に取り入れられ得る。ある特定の実施形態では、リンパ循環系も、異所性組織が産生した物質に対する輸送路として働く。ゆえに、ある特定の実施形態において、リンパ系は、そのような物質を、それらのクロストークを介して身体の他の部分の血液循環系に供給し得る。
【0100】
5.疾患および症状
上記方法およびシステムは、被験体の疾患または症状を処置するために適用され得る。ある特定の実施形態において、上記方法およびシステムは、1つまたはそれを超える異所性組織をリンパ節において生育する際に使用され、それらの異所性組織は、被験体に対して器官の機能を補完または増強し、結果として、被験体が罹患している疾患または症状の1つまたはそれを超える症候を寛解させ得るか、または治癒し得る。
【0101】
A.肝疾患および肝症状
ある特定の実施形態において、上記方法およびシステムは、被験体のリンパ節に肝細胞を送達するために使用され得、それにより、その肝細胞がそのリンパ節に生着し、異所性肝臓を生成することが可能になる。異所性肝臓は、正常で健康な肝臓器官が発揮し得る1つまたはそれを超える機能を有し得、それらの機能としては、例えば、消化中の小腸において廃棄物の除去および脂肪の分解を助け得る胆汁の産生;血漿タンパク質、例えば、アルブミンの産生;身体中への脂肪の輸送を助ける、コレステロール、リン脂質およびリポタンパク質の産生;過剰なグルコースから貯蔵用のグリコーゲンへの変換(グリコーゲン合成)、およびグルコースが必要なときのグリコーゲンの脱重合(グリコーゲン分解(glyconolysis))による血糖の制御;過剰な炭水化物およびタンパク質から脂肪酸およびトリグリセリドへの変換;アミノ酸の脱アミノ化およびアミノ基転移;アミノ酸の窒素非含有部分からグルコースまたは脂質への変換;トリグリセリドの酸化によるエネルギーの産生;鉄含有物を使用するためのヘモグロビンの処理(肝臓が鉄を貯蔵する);有毒なアンモニアから尿素への変換;ある特定の薬物および他の有毒な物質を除去するための血液透析;血液凝固に必要な凝固因子の合成;免疫性因子を産生することおよび血流から細菌を除去することによる感染に対する抵抗;赤血球からのビリルビンのクリアランスであるがこれらに限定されない。
【0102】
ある特定の実施形態において、上記方法およびシステムは、いくつかの異なる肝疾患または肝症状を処置するために使用され得る。そのような肝疾患または肝症状は、肝不全または1つもしくはそれを超える肝機能の低下を含み得る。本開示の方法によって処置され得る肝疾患および/または肝障害の非限定的な例としては、急性肝不全、肝硬変、肝臓癌、肝炎、脂肪肝疾患および非アルコール性脂肪肝疾患が挙げられる。肝症状は、チロシン血症、メープルシロップ尿症、フェニルケトン尿症、クリグラー・ナジャー症候群、シュウ酸症、高シュウ酸尿症、ヘモクロマトーシス、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、ウィルソン病、家族性肝内胆汁うっ滞症候群および家族性アミロイドポリニューロパチーを含むがこれらに限定されない代謝障害(例えば、小児の代謝障害)に関連し得る。本方法および本システムは、末期肝疾患および/または肝線維症、例えば、B型肝炎感染、C型肝炎感染、アルコール消費、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝炎またはヘモクロマトーシスによって引き起こされるものを処置する際に特に使用され得る。
【0103】
ある特定の実施形態において、本明細書中に提供される方法およびシステムは、肝疾患または肝症状に関連する1つまたはそれを超える症候の寛解を必要とする被験体に適用されたとき、そのような症候を寛解させ、例えば、1つまたはそれを超える肝機能を回復させ、かつ/またはある特定の実施形態では、細胞移植前に生命を脅かす肝疾患または肝症状を経験した被験体の生存時間を延長する。例えば、本開示に係る肝細胞移植を受けた被験体は、肝機能検査(例えば、アラニントランスアミナーゼ(ALT)検査、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)検査、アルカリホスファターゼ(ALP)検査、アルブミン検査、ビリルビン検査)の結果を改善し得る。そのような改善は、他の健康な被験体または肝疾患もしくは肝症状を有する前の同じ被験体の検査結果と比べたときの、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または約100%の回復であり得る。ある特定の実施形態において、肝細胞移植を受けた被験体の寿命は、少なくとも約6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、12年、15年、18年、20年、25年、30年、40年、50年、60年またはそれより長く延長する。
【0104】
B.腎疾患および腎症状
ある特定の実施形態において、上記方法およびシステムは、被験体のリンパ節に腎臓細胞または腎組織断片を送達するために使用され得、それにより、その腎臓細胞がそのリンパ節に生着し、異所性腎臓を生成することが可能になる。異所性腎臓は、正常で健康な腎臓器官が発揮し得る1つまたはそれを超える機能を有し得る。例えば、異所性腎臓は、腎臓の主な機能:血液から低分子量の物質(例えば、代謝廃棄物)を濾過して、血液中に細胞および大きなタンパク質を残しつつ、最終的に尿になる限外濾過液を産生することを含み得る、尿の産生;および限外濾過液から尿細管周囲毛細血管へのある特定の物質(例えば、イオン、グルコース)の再吸収を、ある程度または存分に発揮し得る。ある特定の実施形態において、異所性腎臓は、正常な腎臓が行うことができるような全身のホメオスタシス(例えば、酸塩基平衡、電解質濃度、細胞外液体積および血圧であるがこれらに限定されない)の維持にも関与し得る。
【0105】
ある特定の実施形態において、上記方法およびシステムは、いくつかの異なる腎疾患または腎症状を処置する際に使用される。そのような腎疾患または腎症状は、腎不全または1つもしくはそれを超える腎機能の低下を含み得る。本開示の方法によって処置され得る腎疾患および/または腎障害の非限定的な例としては、急性腎不全、慢性腎疾患、糸球体腎炎、ループス、多発性嚢胞腎、腎症、ネフローゼ、腎奇形および腎臓癌が挙げられる。本方法および本システムは、末期腎疾患(腎不全)、例えば、糖尿病、自己免疫疾患(例えば、ループス腎症およびIgA腎症)、遺伝性疾患(例えば、多発性嚢胞腎)、ネフローゼ症候群および尿路の問題によって引き起こされるものを処置する際に特に使用され得る。
【0106】
ある特定の実施形態において、本明細書中に提供される方法およびシステムは、腎疾患または腎症状に関連する1つまたはそれを超える症候の寛解を必要とする被験体に適用されたとき、そのような症候を寛解させ、例えば、1つまたはそれを超える腎機能を回復させ、かつ/またはある特定の実施形態では、細胞移植前に生命を脅かす腎疾患または腎症状を経験した被験体の生存時間を延長する。例えば、限定目的ではないが、本開示に係る腎臓細胞または腎臓断片の移植を受けた被験体は、腎機能検査(例えば、血清クレアチニン、糸球体濾過率(GFR)、血中尿素窒素(BUN)についての血液検査)の結果を改善する。そのような改善は、他の健康な被験体または腎疾患もしくは腎症状を有する前の同じ被験体の検査結果と比べたときの、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または約100%の回復であり得る。ある特定の実施形態において、腎臓細胞または腎臓断片の移植を受けた被験体の寿命は、少なくとも約6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、12年、15年、18年、20年、25年、30年、40年、50年、60年またはそれより長く延長し得る。
【0107】
C.膵疾患および膵症状
ある特定の実施形態において、上記方法およびシステムは、被験体のリンパ節に膵臓細胞(例えば、膵β、α、δ、ζまたはγ細胞)または膵島を送達するために使用され、それにより、その膵臓細胞または膵島がそのリンパ節に生着し、異所性膵臓を生成することが可能になる。異所性膵臓は、正常で健康な膵臓器官が発揮し得る1つまたはそれを超える機能を有し得る。例えば、限定目的ではないが、異所性膵臓は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチンまたは膵ポリペプチドのうちの1つまたはそれを超えるものを分泌する。ある特定の実施形態において、異所性膵臓は、生理学的刺激に適切に応答して1つまたはそれを超える内分泌性ホルモンを分泌する。ある特定の実施形態において、異所性膵臓は、血糖濃度の上昇に応答してインスリンを分泌し、かつ/または血糖濃度の低下に応答してグルカゴンを分泌する。これは、血糖値の恒常性の維持を助け得る。そのような分泌応答は、生理学的刺激の変化に比例し得る。例えば、血糖の増加が大きいほど、異所性膵臓が分泌するインスリンは増え、その比率は、他の健康な被験体の正常で健康な膵臓または膵疾患に罹患する前の同じ被験体の膵臓と少なくとも部分的に等価または類似であり得る。
【0108】
ある特定の実施形態において、上記方法およびシステムは、いくつかの異なる膵疾患または膵症状を処置する際に使用される。そのような膵疾患または膵症状は、膵不全または1つもしくはそれを超える膵機能の低下を含み得る。本明細書中に提供される方法およびシステムによって処置される膵疾患または膵症状は、膵内分泌部の疾患または症状であり得る。本開示の方法によって処置され得る膵疾患および/または膵障害の非限定的な例としては、急性膵炎、慢性膵炎、遺伝性膵炎および膵癌が挙げられる。本方法および本システムは、膵臓不全または膵臓移植が必要とされる他の状況を処置する際に特に使用され得る。
【0109】
ある特定の実施形態において、本明細書中に提供される方法およびシステムは、膵疾患または症状に関連する1つまたはそれを超える症候の寛解を必要とする被験体に適用されたとき、そのような症候を寛解させ、例えば、1つまたはそれを超える膵機能を回復させ、かつ/またはある特定の実施形態では、細胞移植前に生命を脅かす膵疾患または膵症状を経験した被験体の生存時間を延長する。例えば、限定目的ではないが、本開示に係る膵臓細胞または膵島の移植を受けた被験体は、血糖のコントロールを改善し得る。そのような改善は、他の健康な被験体または膵疾患もしくは膵症状を有する前の同じ被験体の検査結果と比べたときの、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または約100%の回復であり得る。ある特定の実施形態において、膵臓細胞または膵島の移植を受けた被験体の寿命は、少なくとも約6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、12年、15年、18年、20年、25年、30年、40年、50年、60年またはそれより長く延長し得る。
【0110】
D.免疫系機能不全/免疫不全障害および免疫不全症状
ある特定の実施形態において、上記方法およびシステムは、被験体のリンパ節に胸腺細胞または胸腺断片を送達するために使用され、それにより、その胸腺細胞または胸腺断片がそのリンパ節に生着し、異所性胸腺を生成することが可能になる。ある特定の実施形態において、異所性胸腺は、正常で健康な胸腺器官が発揮し得る1つまたはそれを超える機能を補完または増強する。例えば、限定目的ではないが、異所性胸腺は、T細胞の成長、発生、成熟および選択に関与することで身体の免疫調節に関与し得る。本開示に係る異所性胸腺の生成は、免疫系機能不全を有する被験体、例えば、高齢もしくは老齢の被験体(例えば、50、55、60、65、70、75、80または85歳より上の被験体)または免疫不全障害もしくは免疫不全症状(例えば、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)、分類不能型免疫不全(CVID)、重症複合免疫不全(SCID)、重度のやけど、化学療法、放射線照射、糖尿病、栄養失調、後天性免疫不全症候群(AIDS)、白血病、重症のウイルス感染症および多発性骨髄腫)を有する被験体において免疫系の機能を増強または調節する際に使用され得る。
【0111】
ある特定の実施形態では、ドナー被験体由来の胸腺細胞または胸腺断片が、同じドナー被験体からの臓器移植または他の細胞移植の前に、レシピエント被験体のリンパ節に導入される。リンパ節における異所性胸腺の生成によって、ドナー被験体に対する寛容がレシピエント被験体において誘導され得、これは、その後の臓器移植または細胞移植にとって有益であり得る。これらの実施形態において、胸腺細胞移植は、臓器移植または他の細胞移植の少なくとも約5日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月または1年前に行われ得、その結果、ドナー被験体に対する適切な免疫寛容がレシピエントに確立され得る。胸腺細胞移植は、本明細書中に記載され得、任意のタイプの臓器移植または他の任意の細胞型の移植とともに適用され得、本開示に係る胸腺細胞移植を行わずに別の方法で同じ臓器移植または細胞移植を受けたレシピエントに見られる移植片拒絶応答を低減し得る。
【0112】
本開示に係る細胞移植を受けた被験体の寿命は、少なくとも約6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、12年、15年、18年、20年、25年、30年、40年、50年、60年またはそれより長く延長し得る。
【0113】
E.肺疾患および肺症状
ある特定の実施形態において、上記方法およびシステムは、被験体のリンパ節に肺細胞または肺組織断片を送達するために使用され、それにより、その肺細胞または肺断片がそのリンパ節に生着し、異所性肺を生成することが可能になる。異所性肺は、正常で健康な膵臓 肺が発揮し得る1つまたはそれを超える機能を有し得る。例えば、異所性肺は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者であり得る。異所性肺は、COPD患者における進行性の線維症によって著しく減少している可能性がある肺機能質量を増加させ得る。ある特定の実施形態では、標準的な肺移植の候補にならないであろう肺縮小手技を受けた患者が、気管支周囲リンパ節内への肺細胞の移植に好適であり得る。
【0114】
ある特定の実施形態において、上記方法およびシステムは、いくつかの異なる肺疾患または肺症状を処置する際に使用される。そのような肺疾患または肺症状は、肺不全または1つもしくはそれを超える肺機能の低下を含み得る。本開示の方法によって処置され得る肺疾患および/または肺障害の非限定的な例としては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられる。COPDは、タバコの煙ならびにさらには喫煙、タバコの汚染物質(化学物質、粉塵または有毒物質)および煙霧、遺伝的障害(例えば、アルファ-1-アンチトリプシン(antiytrypsin)、嚢胞性線維症)、慢性喘息、気腫、慢性気管支炎または特発性肺線維症によって引き起こされ得る。
【0115】
ある特定の実施形態において、本明細書中に提供される方法およびシステムは、肺疾患または肺症状に関連する1つまたはそれを超える症候を寛解させ得、例えば、1つまたはそれを超える肺機能を回復させ得、かつ/またはある特定の実施形態では、細胞移植前に生命を脅かす肺疾患または肺症状を経験した被験体の生存時間を延長し得る。
【0116】
6.被験体
本開示に係る細胞移植を受けることができる被験体は、任意のヒト患者(例えば、ESLD患者、腎不全患者、I型糖尿病患者または臓器移植待機患者)であり得る。ある特定の実施形態において、被験体は、特定の医学的処置段階にある。
【0117】
本開示に係る細胞移植を受ける被験体は、任意の年齢であってよく、成人、新生児、乳児または小児であり得る。ある特定の実施形態において、被験体は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99歳、またはこの中の範囲内(例えば、2~20歳、20~40歳または40~90歳)である。さらに、被験体は、男性であっても女性であってもよい。
【0118】
本開示に係る細胞移植を受けるための被験体の適格性は、認定医師が判定できる。ある特定の実施形態では、細胞移植を行う前に被験体の健康状態の包括的評価が必要になり得る。ある特定の実施形態において、被験体の健康状態についての要件は、他の臓器移植または細胞移植の手技よりもかなり低いことがある。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本開示に係る最小侵襲の手技は、臓器移植のために通常行われる大手術と比べて、外科手技のリスクを大幅に低下させ得る。さらに、細胞が、罹患器官ではなく1つまたはそれを超えるリンパ節に移植されることを考えると、罹患器官に対する前提条件がない可能性があるので、要件はさらに大幅に低くなり得る。
【0119】
本明細書中に開示される方法およびシステムのいずれもが、研究目的または獣医学の目的で、実験動物または家畜などの非ヒト被験体に対しても使用され得る。非ヒト被験体の非限定的な例としては、イヌ、ヤギ、モルモット、ハムスター、マウス、ブタ、非ヒト霊長類(例えば、ゴリラ、類人猿、オランウータン、キツネザルまたはヒヒ)、ラット、ヒツジまたはウシが挙げられる。
【0120】
7.システム
本開示はさらに、細胞をリンパ節に移植し、機能的な異所性組織を生育するためのシステムを提供する。そのシステムは、内視鏡、および1つまたはそれを超える細胞を含む懸濁液が入った針付きの注射器を備え得る。その内視鏡と針は、被験体の体内管腔(例えば、胃腸管、気道または尿路)または閉鎖性体腔(例えば、腹腔、骨盤腔または胸腔)に沿って共に前進するように構成され得、注射器は、針を介して1つまたはそれを超える細胞を送達するように構成され得る。
【0121】
上で論じられたように、ある特定の実施形態において、懸濁液は、1mLあたり少なくとも約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、30億、50億、80億または100億個の細胞を有し得る。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、1mLあたり約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、30億、50億、80億または100億個の細胞を有する細胞懸濁液を有する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、1mLあたり多くとも約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、30億、50億、80億または100億個の細胞を有する細胞懸濁液を有する。
【0122】
ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、異所性肝臓を生成するための、1mLあたり少なくとも約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を有する肝細胞懸濁液を有する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、異所性肝臓を生成するための、1mLあたり約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を有する肝細胞懸濁液を有する。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるような注射器は、異所性肝臓を生成するための、1mLあたり多くとも約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を有する肝細胞懸濁液を有する。
【0123】
上で論じられたように、ある特定の実施形態において、針は、大きくとも約700μm、600μm、500μm、450μm、400μm、300μm、260μm、250μmまたは200μmの内径を有し得る。ある特定の実施形態において、針は、大きくとも約260μmの内径を有する。ある特定の実施形態において、針の内径は、約700μm、600μm、500μm、450μm、400μm、300μm、260μm、250μmまたは200μmである。ある特定の実施形態において、針の内径は、約260μmである。針は、大きくとも約1mm、900μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、520μm、510μm、500μm、480μm、450μmまたは400μmの外径を有し得る。ある特定の実施形態において、針の外径は、大きくとも約510μmである。ある特定の実施形態において、針の外径は、約1mm、900μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、520μm、510μm、500μm、480μm、450μmまたは400μmである。ある特定の実施形態において、針の外径は、約510μmである。ある特定の実施形態において、針は、ISO7864:2016に従って規定されたある特定のゲージである。例えば、限定目的ではないが、針は、約19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5または27ゲージ(ga)である。ある特定の実施形態において、針は、大きくとも約19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5または27gaである。例えば、限定目的ではないが、システムの針は、大きくとも約25gaであり得る。ある特定の実施形態において、針は、例えば、大きい内径および小さい外径を維持しながら薄い壁を有する、非標準化サイズを有する。
【0124】
本明細書中に提供されるシステムおよび方法は、平均直径が約20μmの細胞、例えば、肝細胞にとって特に有用であり得る。ある特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、送達される細胞のサイズは、懸濁液における細胞の使用濃度、細胞送達のために使用される針の内径、ならびに細胞送達前の注射器内でのおよび細胞送達後の細胞生存率レベルを決定する要因となり得る。平均直径が20μm未満の細胞の場合、針のサイズは、25gaより小さくてもよく、平均直径が約20μmの細胞と比べて、懸濁液の細胞濃度および総細胞数は高くすることができ、例えば、上で論じられたようなパラメータである。他方で、平均直径が20μmを超える細胞の場合、針のサイズは、例えば、25gaより大きくてもよく、平均直径が約20μmの細胞と比べて、懸濁液の細胞濃度および総細胞数は低くすることになり、例えば、上で論じられたようなパラメータである。
【0125】
8.キット
本開示はさらに、本明細書中に開示される方法のいずれかを行うために有用な材料を含むキットを提供する。ある特定の実施形態において、そのキットは、本明細書中に開示される1つまたはそれを超える細胞を含む容器を含む。ある特定の実施形態において、それらの細胞は、凍結された容器内に提供され得る。ある特定の実施形態において、それらの細胞は、溶液中、例えば、培地中に提供され得る。ある特定の実施形態において、その容器は、約1000万~約5億個の細胞を含み得る。ある特定の実施形態において、その容器は、均一な細胞集団を含み得る。あるいは、その容器は、不均一な細胞集団を含み得る。容器内に提供され得る細胞の非限定的な例としては、肝細胞、腎臓細胞もしくは腎組織断片、膵臓細胞もしくは膵島、胸腺細胞もしくは胸腺組織断片または肺細胞もしくは肺組織断片が挙げられる。
【0126】
ある特定の実施形態において、上記キットはさらに、本明細書中に開示されるように細胞をリンパ節に導入するための溶液を含む第2の容器を含み得る。
【0127】
ある特定の実施形態において、上記キットはさらに、本明細書中に開示されるように細胞をリンパ節に送達するためのデバイス(またはシステム)を含み得る。ある特定の実施形態において、上記キットはさらに、本明細書中に開示されるような内視鏡を含み得る。ある特定の実施形態において、その内視鏡は、針に連結される。例えば、限定目的ではないが、上記キットは、本明細書中に開示されるように細胞をリンパ節に送達するための針および/または内視鏡を含み得る。そのような送達デバイスの非限定的な例は、上記のシステムの項に開示されている。
【実施例0128】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をさらに例証するために提供されるのであって、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、それらの例示的な性質から、当業者に公知の他の手順、方法または手法を代わりに使用できることが理解されるだろう。
【0129】
実施例1.移植に向けた肝細胞の単離および生死判別試験
この実施例では、本開示に従って細胞懸濁液がある特定のサイズの針を通って送達されたとき、単離された肝細胞の生存率が有意に影響されないことを実証する。この実施例では、本開示の例示的な1つの方法に従って単離され、送達された肝細胞が、移植に適した生存率を有し得ることを実証する。
【0130】
以下のプロトコルに従って肝臓細胞を単離した。まず、ドナー犬から外科的に左肝葉を得て、二重の袋の容器に入れ、氷を用いた冷蔵手法(4℃のBelzer液を用いた静的貯蔵)の下、さらなる処理に向けて運搬した。Seglenが報告した2工程コラゲナーゼ灌流法(Seglen PO,Preparation of isolated rat liver cells.Methods Cell Biol,1976;13:29-63)を用いて、肝臓細胞を単離した。簡潔には、門脈カニューレまたは任意の大血管にカニューレを設置した。培養皿において、肝臓に37℃のEDTA溶液(0.02%)を50ml/分の流速で10分間灌流した。続いて、コラゲナーゼ溶液(37℃)を同じ流速で肝臓サンプルに再循環させた。10分後、肝臓被膜を破り、消化された肝実質を、グルコン酸カルシウムおよびヒト血清アルブミンを含む氷冷されたハンクス液またはPlasma-Lyte A溶液に懸濁した。得られた肝臓細胞懸濁液を濾過し、3回洗浄した。
【0131】
トリパンブルー排除試験を用いて、下記に記載される実験全体にわたる種々の工程において、懸濁液中の単離された肝細胞の生存率を確かめた。これらの実験では、異なる細胞濃度を有する異なるバッチの懸濁液を、種々のゲージのEUS FNA針を通過する前および通過した後の細胞生存率について試験した。
図3は、2バッチの細胞の実験から得られた細胞生存率の結果を要約しているプロットである。この図に示されているように、試験されたすべての溶液ではないがほとんどの溶液が、試験されたいずれのEUS針を通過する前および通過した後でも、類似の細胞生存率レベルを有した。
【0132】
実験において使用された針:
19ゲージ(19ga)針(Covidien:Ref#DSN-19-01):およそのデッドボリュームは、1.2mLである。
22ゲージ(22ga)針(Covidien:Ref#N22-05):およそのデッドボリュームは、0.5mLである。
25ゲージ(25ga)針(Covidien:Ref#DSN-25-01):およそのデッドボリュームは、1.1mLである。
【0133】
バッチ#1:
ドナーID#:6303。
肝臓を消化し、肝細胞を単一細胞に単離した後の最初の生存率:59.5%。合計42億4000万個の生肝細胞(合計800mL溶液において5.3M/mL)。
【0134】
洗浄を3サイクル行い、移植の準備が整った後の細胞生存率:72.04%。合計4億2900万個の生肝細胞(800mLのうち使用された合計150mL溶液において2.86M/mL)。
【0135】
その4億2900万個の生肝細胞をおよそ20mlに再懸濁し、19、22および25gaのEUS針を用いて生存率について試験した。表1に、この実験において試験された種々の群において得られた生存率スコアを要約する。コントロールは、試験後の生存率の評価の前に、いかなるEUS針も通過しておらず、その他の点では同じように取り扱われた溶液のことである。
【0136】
【0137】
バッチ#2:
ドナーID#:6302。
肝臓を消化し、肝細胞を単一細胞に単離した後の最初の生存率:67.5%。合計約50億個の単離された生肝細胞(合計900mL溶液において5.5M/mL)について、600mlの溶液(約33億個の細胞)を本実験に使用した。
【0138】
洗浄を3サイクル行い、移植の準備が整った後の細胞生存率:
合計6億2400万個の生肝細胞(150mL溶液において4.16M/mL)において、71.7%の生存率。
翌日の移植に向けてUW中で一晩保存する。
合計5億6700万個の生肝細胞(70ml溶液において8.1M/ml)において、76.3%の生存率。
107肝細胞/mlで14本のチューブ、チューブ1本あたり2mlを凍結保存した。
合計13億個の細胞(150ml溶液において9.1M/ml)において、69.7%の生存率。
【0139】
肝細胞を25M/mlおよび50M/mlで再懸濁し、19、22および25gaのEUS針を用いて生存率について試験した。表2および3に、この実験において試験された種々の群において得られた生存率スコアを要約する。コントロールは、試験後の生存率の評価の前に、いかなるEUS針も通過しておらず、その他の点では同じように取り扱われた溶液のことである。
【0140】
【0141】
【0142】
実施例2.肝不全のモデルとしてのイヌにおける門脈大静脈シャント術
この実施例では、肝不全を処置するための再生医学を研究するための動物モデルを作製する例示的な外科手技を説明する。
【0143】
図4に示されるように、肝臓への主要な血流を遮断するための完全門脈大静脈シャント術を行うことができ、これにより、肝損傷が誘導され得る。適切な外科用ステープラーを使用すると、この手技は、ほとんど失血なく行うことが可能である。肝門内の主門脈(PV)の可動化に続いて、総胆管(CBD)および主肝動脈(HA)を分離する。上腸間膜静脈(SMV)と脾静脈(SV)との間の合流点に向かう主PVの近位切開も行う。遠位切開部を有する、腎静脈に向かう肝臓下の下大静脈(IVC)をさらに可動化する。関節式血管内ステープルを用いて分岐(右枝および左枝)の手前で主PVの完全な結紮および離断を行った後、IVCに向かってPVを尾側に可動化する。PVをIVCに向かって尾側に完全に可動化し、PVとIVCとの間で端側吻合(6-0Proleneの連続縫合)を行う。この工程は、IVCの部分クランプおよび近位PVの完全クランプを含む。完全な止血が達成されたら、腹腔を閉じる。動物が全身麻酔から完全に回復した後、ORにおいて抜管した。
【0144】
実施例3.器官形成用に向けたリンパ節における肝細胞のEUSガイド下送達の前臨床研究
この実施例では、十二指腸周囲リンパ節(LN)への肝細胞のEUSガイド下送達による大動物(イヌ)モデルにおける肝不全の処置を例証する。
【0145】
本明細書中に記載される大動物モデル(イヌ)における前臨床実験は、USDAガイドラインの下、IACUCプロトコルによって承認されており、Allegheny Health Network,Highmark,Pittsburgh,PAにおける出来高払い制の研究室(fee-for-service lab)において行われる。これらの実験では、完全門脈大静脈シャント(PCS)を外科的に構築した後、肝不全を誘導したイヌモデルにおいて肝細胞移植を行う。
【0146】
簡潔には、十二指腸周囲リンパ節(PDLN)への肝細胞移植が、正常な肝臓の細胞構築および完全な機能を有する新しい異所性肝芽の発生(器官形成)を誘導することを確認するために2群の動物を試験する。コントロール群には、完全PCS術を行った後、LNに規定食塩水を偽注入する。研究群には、同じ最初のPCS手技を行った後、EUSアプローチによってPDLNへの自家肝細胞移植または同種異系肝細胞移植を行う。両群に、タクロリムスおよびプレドニゾンから構成される非特異的な免疫抑制療法を行う。最初の手技の後6ヶ月間、両群を追跡調査する。コントロール群の動物は、進行性の肝不全を経験し、本研究期間にわたって30%の死亡率を有する。研究群の動物は、肝不全の長期の徴候を示さず、死亡しない。これらの動物は、肝細胞が最初に移植されたPDLN部位の拡大の徴候を示す。研究用剖検の終了時に、これらの動物は、これらのPDLNにおいて正常な解剖学的特徴および組織学的特徴を有する異所性肝臓組織の発生を示す。このPDLNおける異所性肝臓は、本研究期間にわたって、持続可能な肝機能の臨床上および検査上のエビデンスを示す。
【0147】
図5における研究の流れ図に示されているように、群1は、肝細胞(HT)の同種異系移植を受ける群4~7に対するドナー群として働く。群2には、LNへのプラセボ注入(食塩水)とともにPCS手技を行う。群3は、自己コントロール群である。群4および5には、低用量レベル(75M HT;25M肝細胞/mL、3つのLNにそれぞれ1mLの溶液を注射する)または中用量レベル(150M HT;50M肝細胞/mL、3つのLNにそれぞれ1mLの溶液を注射する)でLNにHTの直接注射(
図2に示されているような)を行う。群6および7には、上に概説した低用量と中用量の両方で、最小侵襲の超音波内視鏡(EUS)アプローチ(
図1Aおよび1Bに示されているような)によるHT移植を行う。
【0148】
主要評価項目は、90日後におけるものであり(群2~7の各々からN=2の屠殺)、91~180日目にさらなる長期安全性追跡調査、120日目(群2~7の各々からN=1)、150日目(群2~7の各々からN=1)および180日目の研究終了時(群2~7の各々からN=1)に研究動物の屠殺を行う。
【0149】
各時点において屠殺した動物からリンパ節を収集し、パラホルムアルデヒドで固定し、最適な切断温度化合物またはパラフィンに包埋する。切片を調製し、抗フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH)免疫染色とともに、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)またはヘマトキシリンで染色する。FAHは、肝細胞において高発現されるので、肝細胞を特定するために用いることができる。切片を画像化し、生着した肝細胞の存在および異所性肝組織の形成について組織学的に評価する。
【0150】
統計解析
主要評価項目は、90日後における、新たに生着した肝細胞を有するリンパ節のサイズおよび重量(g)である。中型~大型のイヌ(23.7kg)のフルサイズの肝臓の重量は、およそ767±48gであり、これは、完全に生着した異所性肝臓の重量および処置群内の肝臓重量の標準偏差に対する推定としても働く。6つの処置群のうち4つに、同種異系肝細胞を、75M(低用量)または150M(中用量)のどちらかの用量で直接注射または内視鏡的注入によってリンパ節に投与する。動物の総重量(kg)に対して調整する、4つの同種異系群の2元配置共分散分析(ANCOVA)を用いることにより、主効果の評価項目の差および用量レベルと注入タイプとの相互作用を検証する。1処置群あたり5頭のイヌにより、α=0.05(両側)でF検定を用いたとき、各主効果の2レベル間における77gという評価項目の差(0.8の効果量(effect size))を検出する92%の検出力が提供され、効果量が0.6であるとき、用量レベルと注入タイプとの間の相互作用を検出する75%の検出力が提供される。特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、以前に報告された知見(Kamら、1987,Sohlenius-Sternbeck,2006)に基づくと、肝臓重量と総重量との間には、基本的な直線関係ならびに有意な相関関係が存在し得る。これは、共変量調整を考慮していないので、全検出力(overall power)の控えめな推定である。
【0151】
同じ評価項目および共変量を用いた1元配置分散分析を用いて、処置群の差についての全体的なF検定、ならびに6群間の妥当な対ごとの比較も行う。6群には、上に記載された4つの同種異系群に加え、内視鏡的注入によって75M個の自家肝細胞を投与された群、および生理食塩水を内視鏡的に注入されたコントロール群が含まれる。1群あたり5頭のイヌにより、α=0.05(両側)で全体的なF検定を用いたとき、平均値が等しいという帰無仮説に対して154g(20%生着)という少なくとも1つの差を検出する100%の検出力が提供され得る。このサンプルサイズは、0.05の有意水準を保つためにチューキー・クレーマー(ペアワイズ)多重比較法を用いて、あらゆるステップダウン検定に対して少なくとも230g(30%生着)という差を検出する90%の検出力を達成し得る。これらの検出力の計算は、PASS12(Hintze,2013)によって導き出される。
【0152】
外科的および実験的方法
(I)ライン設置および動物支援
右頸静脈にPEカテーテルを挿入して、0.9%NaCl IV支持性輸液を開始する。手技の期間全体にわたって、シリンジポンプまたはボーラス治療によって麻痺剤を投与し、維持する。末梢動脈にPEカテーテルを挿入する。さらに、右頸部切開および右外頸静脈への直接アクセスによって、二重管腔の長期中心静脈アクセス(上大静脈)を設置する。腹部の手技が完了した後、永久的な中心静脈アクセスを後頸部に挿入し、露出させる。動物の体表に設置した電極で、心電図(electro cardiac register)をモニターする。直腸温を継続的にモニターする。動物支援は、SOP ANI-017 Guidelines for Performing Survival Surgery in USDA Regulated SpeciesおよびANI-032 Thermal Regulation of the Anesthetized Patientに従う。
【0153】
(II)後の肝細胞単離に向けた左肝葉の部分切除
動物を、全身麻酔下で安定した状態にした後、滅菌様式で準備し、ドレープをかける。正中切開によって腹腔に入る。まず、肝門を切開し、左外側部(LLS)を分離する。左門脈(PV)および左肝動脈(HA)を分離し、血管テープを一周させる。LLSを、関節式血管内ステープルを併用して、制御された実質の離断により切除する。左外側部の部分切除により、肝臓の総容積のおよそ20%が取り出される。肝臓の左外側部を術野から取り出したら、滅菌条件下のバックテーブル(BT)手技において検体を処理する。このBTは、左PVおよび左HAに冷乳酸リンガー液(LR)を流してすべての血液を除去した(フラッシング工程)後、後の肝臓保存に向けてBelzer液を注入することを含む。肝臓セグメントを二重のビニール袋に詰め、アイスクーラーに入れた後、研究室に輸送し、そこで細胞単離を行う(肝細胞を得るために)。
【0154】
(III)門脈大静脈シャント術
左外側部の部分切除完了後に、肝門の拡張切開術を行う。実施例2に記載されたような手順に従って、完全門脈大静脈シャント術を行う。
【0155】
(IV)移植に向けた肝細胞単離
実施例1に記載された手順に従って、肝臓細胞を単離する。得られた肝臓細胞懸濁液を濾過し、洗浄する。トリパンブルー排除試験を用いて、単離された肝細胞の生存率を確かめる。動物が自身の肝細胞を投与される自家移植群では、細胞を単離し、その後の注入のために調製している間、それらの動物をさらに5時間、全身麻酔の状態のままにする。
【0156】
(V)外科的な直接注入による肝細胞移植
品質管理用(細胞生存率、細胞数、培養および感度)のサンプルを得た後、外科手術医が肝細胞移植を行う。割り当てられた実験群ごとに決定される、直接の外科的アプローチによってまたは内視鏡的注射(下記で説明)を介して、腸間膜リンパ節および十二指腸周囲リンパ節に細胞を直接、実質内注入する(小体積(1~3ml)の注入培地中に25×106~50×106生存細胞/mlという細胞収量)。リンパ節への異所性の肝細胞注入の後、適切な止血を完全に達成する。入念な止血を達成した後、抗生物質および抗真菌剤(ネオマイシン500mg/L、ポリミキシン15,000単位/kg/L、バシトラシン1000単位/kg/LおよびアンホテリシンB 4mg/kg/L)の溶液を腹腔に大量に灌流する。腹壁を3層形式で閉じ、ドレーンは使用しない。シーリング縫合剤を皮膚閉鎖部に配置する。動物を全身麻酔手技から適切に回復させ、手術室でさらに抜管する。続いて動物を適切な設備が整った動物施設に移して、術後ケアを施す。
【0157】
(VI)腔内への内視鏡的アプローチによる肝細胞移植
PCSの完了後に、全身麻酔下の動物において内視鏡的注射を行う。EUSの経験が豊富な膵胆管の認定内視鏡医が、これらの手技を行う。リニア超音波内視鏡(Olympus GF-UCT 180)をこれらの実験に使用する。この内視鏡は、動物の口から挿入し、胃および十二指腸に前進させる。超音波内視鏡(EUS)プローブが、十二指腸周囲リンパ節(LN)の位置の突き止めを補助し、ガイドする。このLNには、経胃および/または経十二指腸アプローチによって直接到達する。細針吸引(FNA)針(Boston scientific,19~25Gの範囲の針)によって適切にLNに入ったら、このEUSガイド手順によってLNへの針挿入が成功した後、外科手術医が内視鏡医を補助して肝細胞移植を行う。予め単離された肝細胞を、25×106細胞/mLまたは50×106細胞/mLを含む溶液中に維持しておく。この溶液中の肝細胞を、細針吸引(FNA)針(Boston scientific,19~25Gの範囲の針)を用いて十二指腸周囲LNに直接移植する。この外科手技が完了したら、動物を全身麻酔手技から適切に回復させ、手術室でさらに抜管する。続いて動物を適切な設備が整った動物施設に移して、術後ケアを施す。
【0158】
(VII)回復および術後ケア
自然換気を再開しながら、適切なモニタリングを行って動物を麻酔から回復させる。手術後の最初の2~3日間(必要であればより長く)は、訓練を受けた前臨床施設職員が、動物を1日あたり24時間モニターし、次いで、研究期間中、少なくとも毎日モニターする。動物の術後ケアは、獣医師と相談して、試験責任者の指導の下で行われる。
【0159】
動物を頻繁に綿密にモニターする。疼痛の評価および軽減に対する以下の種特異的な基準:啼鳴、抑うつ状態、呼吸の>50%増加(イヌの平均呼吸数である20/分に基づいて)に基づいて、各動物を評価する。さらに、心拍数もモニターする。体温もモニターする。
【0160】
疼痛管理およびモニタリング
全体的な活動レベル、手術創、食欲および食餌に対する態度を含むがこれらに限定されない疼痛スコアリングシステムを用いて、以下の術後痛および窮迫の指標について動物を最初は1時間ごとにモニターする。
【0161】
術後痛は、以下の指標:心拍数の約10~15%の増加;および呼吸数の約40%の増加に基づいて、記載の鎮痛薬投与で処置する。疼痛は、ブプレノルフィンまたはブトルファノールおよびケトプロフェンの計画的な投与、または獣医師と相談して決定される他の補助的な痛覚消失法によって管理する。
【0162】
すべての動物に、ブプレノルフィン(0.01mg/kg IV q6~8h)による痛覚消失法を術後に施す。これは、さらなるまたは代替の痛覚消失法が必要となる場合、ケトプロフェン(1~2mg/kg IV)およびブトルファノール(0.1mg/kg
IV q6h)で補完される。
【0163】
さらなる支持的措置および予防措置
最初の1週間は、動物に抗生物質を毎日IV投与し、術後期にはさらなる薬物療法を行う。術後の動物には、臨床上および検査上のパラメータに応じて調整される維持用のIV輸液を行う。
【0164】
さらに、術後の全期間にわたって、胃の運動性(イレウスなど)をモニターする。
【0165】
手術手技の終了時に、中心ラインを設置する。このIVアクセスは、感染の徴候がないか、動物に苦痛を与えないか、またはイヌが傷つく外傷がない限り、本研究期間にわたって清潔にされ、維持される。
【0166】
免疫抑制(IS)療法:
肝細胞移植の前に手術室で動物にソルメドロール(1g IV)を投与する。手術後のISレジメンは、以下である:
本研究期間にわたってプログラフ(およそ0.3mg/kg)Po q 12時間(モニターして、毒性を予防するためにしかるべく調整する)
プレドニゾン20mg po qd×1週間
プレドニゾン10mg po qd×1週間
本研究期間にわたってプレドニゾン5mg po qd
【0167】
実施例4.器官形成に向けたリンパ節における肝細胞のEUSガイド下送達の前臨床研究
この実施例では、十二指腸周囲リンパ節(LN)への肝細胞のEUSガイド下送達による大動物(イヌ)モデルにおける肝不全の処置を例証する。
【0168】
本明細書中に記載される大動物モデル(イヌ)における前臨床実験は、USDAガイドラインの下、IACUCプロトコルによって承認されており、Allegheny Health Network,Highmark,Pittsburgh,PAにおける出来高払い制の研究室において行われた。これらの実験では、完全門脈大静脈シャント(PCS)を外科的に構築した後、肝不全を誘導したイヌモデルにおいて肝細胞移植を行った。
【0169】
簡潔には、十二指腸周囲リンパ節(PDLN)への肝細胞移植が、正常な肝臓の細胞構築および完全な機能を有する新しい異所性肝芽の発生(器官形成)を誘導できることを確認するために動物群を試験した。研究群に、完全な外科的PCS手技を行った後、EUSアプローチまたは直接注射によるPDLNへの自家肝細胞移植または同種異系肝細胞移植を行った。すべての群に、タクロリムスおよびプレドニゾンから構成される非特異的な免疫抑制療法を行った。それらの群を、最初の手技の150日後まで追跡調査した。
【0170】
動物に、直接注射によって(
図2に示されているように)、または最小侵襲の超音波内視鏡(EUS)アプローチによって(
図1Aおよび1Bに示されているように)、LNにHTを投与した。動物に、7500万個のHT(25M肝細胞/mL、3つのLNにそれぞれ1mLの溶液を注射した)、または1億5000万個のHT(50M肝細胞/mL、3つのLNにそれぞれ1mLの溶液を注射した)を投与した。
【0171】
6、60、90または150日目に動物を屠殺した。
【0172】
図6Aは、正常な肝組織における、肝細胞のマーカーであるCK-18のポジティブ染色を示しており、
図6Bおよび6Cは、それぞれEUSおよび直接注射による移植の6日後のリンパ節における、CK-18で免疫染色された肝細胞の存在を示している。これらの初期の結果は、直接注射群とEUS注射群の両方のリンパ節に肝細胞が存在することを実証している。EUSによってリンパ節に送達された初代肝細胞は、肝組織の形成に成功した。
【0173】
図7A~7Dは、EUSによる肝細胞の移植後の肝組織の形成を示している。リンパ節を、各時点において屠殺した動物から収集し、パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋した。切片を調製し、抗フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH)免疫染色とともに、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)またはヘマトキシリンで染色した。FAHは、肝細胞において高発現されるので、肝細胞を特定するために用いることができる。切片を画像化し、生着した肝細胞の存在および異所性肝組織の形成について組織学的に評価した。
【0174】
図7Aは、EUSによって自家肝細胞を移植した後のリンパ節の組織像を示している。1リンパ節あたり約25×10
6個の自家肝細胞をEUSによって移植し、移植の約90日後にリンパ節を回収した。リンパ節の切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。高倍率のH&E染色(右)は、生着した肝細胞から肝組織(矢印)が形成されたことを示している。
【0175】
図7Bは、EUSによって同種異系肝細胞を移植した後のリンパ節の組織像を示している。1リンパ節あたり約50×10
6個の同種異系肝細胞をEUSによって移植し、移植の約90日後にリンパ節を回収した。リンパ節の切片をH&Eで染色した。リンパ節の様々な部分において、生着した肝細胞から肝組織(矢印)が形成された。
【0176】
図7Cは、EUSによって自家肝細胞を移植した後のリンパ節の組織像を示している。1リンパ節あたり約50×10
6個の自家肝細胞をEUSによって移植し、移植の約60日後にリンパ節を回収した。リンパ節の切片を、H&E(右のパネル)、またはヘマトキシリンおよび抗フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH)免疫染色(左のパネル)で染色した。リンパ節の様々な部分において肝組織(矢印)が形成され、その肝組織は、FAH陽性肝細胞を含んだ。
【0177】
図7Dは、EUSによって同種異系肝細胞を移植した後のリンパ節の組織像を示している。1リンパ節あたり約25×10
6個の同種異系肝細胞をEUSによって移植し、移植の約150日後にリンパ節を回収した。リンパ節の切片を、H&E(右のパネル)、またはヘマトキシリンおよび抗フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH)免疫染色(左のパネル)で染色した。リンパ節の様々な部分において肝組織(矢印)が形成され、その肝組織は、FAH陽性肝細胞を含んだ。
【0178】
研究群の動物は、長期の肝不全の徴候または死亡を示さなかった。これらの動物は、肝細胞が最初に移植されたPDLN部位の拡大の徴候を示した。研究用剖検の終了時に、これらの動物は、正常な解剖学的特徴および組織学的特徴を有する異所性肝組織の発生をPDLNにおいて示した。PDLNにおける異所性肝臓は、研究期間中、持続可能な肝組織のエビデンスを示した。
【0179】
外科的および実験的方法
(I)ライン設置および動物支援
右頸静脈にPEカテーテルを挿入して、0.9%NaCl IV支持性輸液を開始した。手技の期間全体にわたって、シリンジポンプまたはボーラス治療によって麻痺剤を投与し、維持した。末梢動脈にPEカテーテルを挿入した。さらに、右頸部切開および右外頸静脈への直接アクセスによって、二重管腔の長期中心静脈アクセス(上大静脈)を設置した。腹部の手技が完了した後、永久的な中心静脈アクセスを後頸部に挿入し、露出させた。動物の体表に設置した電極で心電図をモニターした。直腸温を継続的にモニターした。動物支援は、SOP ANI-017 Guidelines for Performing Survival Surgery in USDA Regulated SpeciesおよびANI-032 Thermal Regulation of the Anesthetized Patientに従った。
【0180】
(II)後の肝細胞単離に向けた左肝葉の部分切除
動物を、全身麻酔下で安定した状態にした後、滅菌様式で準備し、ドレープをかけた。正中切開によって腹腔に入った。まず、肝門を切開し、左外側部(LLS)を分離した。左門脈(PV)および左肝動脈(HA)を分離し、血管テープを一周させた。LLSを、関節式血管内ステープルを併用して、制御された実質の離断により切除した。左外側部の部分切除により、肝臓の総容積のおよそ20%が取り出された。肝臓の左外側部を術野から取り出したら、滅菌条件下のバックテーブル(BT)手技において検体を処理した。このBTは、左PVおよび左HAに冷乳酸リンガー液(LR)を流してすべての血液を除去した(フラッシング工程)後、後の肝臓保存に向けてBelzer液を注入することを含んだ。肝臓セグメントを二重のビニール袋に詰め、アイスクーラーに入れた後、研究室に輸送し、そこで細胞単離を行った(肝細胞を得るために)。
【0181】
(III)門脈大静脈シャント術
左外側部の部分切除完了後に、肝門の拡張切開術を行った。実施例2に記載されたような手順に従って、完全門脈大静脈シャント術を行った。
【0182】
(IV)移植に向けた肝細胞単離
実施例1に記載された手順に従って、肝臓細胞を単離した。得られた肝臓細胞懸濁液を濾過し、洗浄した。トリパンブルー排除試験を用いて、単離された肝細胞の生存率を確かめた。動物が自身の肝細胞を投与される自家移植群では、細胞を単離し、その後の注入のために調製している間、それらの動物をさらに5時間、全身麻酔の状態のままにした。
【0183】
(V)外科的な直接注入による肝細胞移植
品質管理用(細胞生存率、細胞数、培養および感度)のサンプルを得た後、外科手術医が肝細胞移植を行った。割り当てられた実験群ごとに決定される、直接の外科的アプローチによってまたは内視鏡的注射(下記で説明)を介して、腸間膜リンパ節および十二指腸周囲リンパ節に細胞を直接、実質内注入した(小体積(1~3ml)の注入培地中に25×106~50×106生存細胞/mlという細胞収量)。リンパ節への異所性の肝細胞注入の後、適切な止血を完全に達成した。入念な止血を達成した後、抗生物質および抗真菌剤(ネオマイシン500mg/L、ポリミキシン15,000単位/kg/L、バシトラシン1000単位/kg/LおよびアンホテリシンB 4mg/kg/L)の溶液を腹腔に大量に灌流した。腹壁を3層形式で閉じ、ドレーンは使用しなかった。シーリング縫合剤を皮膚閉鎖部に配置した。動物を全身麻酔手技から適切に回復させ、手術室でさらに抜管した。続いて動物を適切な設備が整った動物施設に移して、術後ケアを施した。
【0184】
(VI)腔内への内視鏡的アプローチ(EUS)による肝細胞移植
PCSの完了後に、全身麻酔下の動物において内視鏡的注射を行った。EUSの経験が豊富な膵胆管の認定内視鏡医が、これらの手技を行った。リニア超音波内視鏡(Olympus GF-UCT 180)をこれらの実験に使用した。この内視鏡を動物の口から挿入し、胃および十二指腸に前進させた。超音波内視鏡(EUS)プローブが、十二指腸周囲リンパ節(LN)の位置の突き止めを補助し、ガイドした。このLNには、経胃および/または経十二指腸アプローチによって直接到達した。細針吸引(FNA)針(Boston scientific,19~25Gの範囲の針)によって適切にLNに入ったら、このEUSガイド手順によってLNへの針挿入が成功した後、外科手術医が内視鏡医を補助して肝細胞移植を行った。予め単離された肝細胞を、25×106または50×106細胞/mLを含む溶液中に維持しておいた。この溶液中の肝細胞を、細針吸引(FNA)針(Boston scientific,19~25Gの範囲の針)を用いて十二指腸周囲LNに直接移植した。この外科手技が完了したら、動物を全身麻酔手技から適切に回復させ、手術室でさらに抜管した。続いて動物を適切な設備が整った動物施設に移して、術後ケアを施した。
【0185】
(VII)回復および術後ケア
自然換気を再開しながら、適切なモニタリングを行って動物を麻酔から回復させた。手術後の最初の2~3日間(必要であればより長く)は、訓練を受けた前臨床施設職員が、動物を1日あたり24時間モニターし、次いで、研究の期間中、少なくとも毎日モニターした。動物の術後ケアは、獣医師と相談して、試験責任者の指導の下で行った。
【0186】
動物を頻繁に綿密にモニターした。疼痛の評価および軽減に対する以下の種特異的な基準:啼鳴、抑うつ状態、呼吸の>50%増加(イヌの平均呼吸数である20/分に基づいて)に基づいて、各動物を評価した。さらに、心拍数もモニターした。体温もモニターした。
【0187】
疼痛管理およびモニタリング
全体的な活動レベル、手術創、食欲および食餌に対する態度を含むがこれらに限定されない疼痛スコアリングシステムを用いて、以下の術後痛および窮迫の指標について動物を最初は1時間ごとにモニターした。
【0188】
術後痛は、以下の指標:心拍数の約10~15%の増加;および呼吸数の約40%の増加に基づいて、記載の鎮痛薬投与で処置した。疼痛は、ブプレノルフィンまたはブトルファノールおよびケトプロフェンの計画的な投与、または獣医師と相談して決定される他の補助的な痛覚消失法によって管理した。
【0189】
すべての動物に、ブプレノルフィン(0.01mg/kg IV q6~8h)による痛覚消失法を術後に施した。これは、さらなるまたは代替の痛覚消失法が必要となる場合、ケトプロフェン(1~2mg/kg IV)およびブトルファノール(0.1mg/kg IV q6h)で補完された。
【0190】
さらなる支持的措置および予防措置
最初の1週間は、動物に抗生物質を毎日IV投与し、術後期にはさらなる薬物療法を行った。術後の動物には、臨床上および検査上のパラメータに応じて調整される維持用のIV輸液を行った。
【0191】
さらに、術後の全期間にわたって、胃の運動性(イレウスなど)をモニターした。
【0192】
手術手技の終了時に、中心ラインを設置した。このIVアクセスは、感染の徴候がないか、動物に苦痛を与えないか、またはイヌが傷つく外傷がない限り、本研究期間にわたって清潔にされ、維持された。
【0193】
免疫抑制(IS)療法:
肝細胞移植の前に手術室で動物にソルメドロール(1g IV)を投与した。手術後のISレジメンは、以下である:
本研究期間にわたってプログラフ(およそ0.3mg/kg)Po q 12時間(モニターして、毒性を予防するためにしかるべく調整した)
プレドニゾン20mg po qd×1週間
プレドニゾン10mg po qd×1週間
本研究期間にわたってプレドニゾン5mg po qd
【0194】
本開示の好ましい実施形態を、本明細書中に示し、説明してきたが、そのような実施形態が単に例として提供されていることは、当業者には明らかだろう。当業者は、本開示から逸脱することなく、数多くのバリエーション、変更および置換を思いつくだろう。本開示の実施に際して、本開示の実施形態の様々な代替物を使用できることが理解されるべきである。以下の請求項は、本開示の範囲を定義すること、ならびにこれらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物がそれらによって包含されることが意図されている。
【0195】
様々な特許、特許出願、刊行物、製品説明書、プロトコルおよび配列アクセッション番号を、本願全体にわたって引用したが、それらの発明は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書中に援用される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
被験体において1つまたはそれを超える細胞を移植し、異所性組織を生育する最小侵襲の方法であって、前記方法は、
(a)内視鏡を、管腔内アプローチによって前記被験体の胃腸管、気道または尿路に前進させる工程、
(b)経管腔的アプローチを用いて、前記内視鏡に取り付けられた針を、臓側壁を貫通して前記被験体のリンパ節に挿入する工程、および
(c)前記1つまたはそれを超える細胞を、前記針を介して前記リンパ節内に送達することにより、前記1つまたはそれを超える細胞が前記リンパ節に生着し、前記リンパ節中に前記異所性組織を生成することが可能になる、工程
を含む、方法。
(項目2)
前記内視鏡を前進させる工程、前記針を挿入する工程またはその両方が、放射線イメージングまたは超音波イメージングを利用して行われる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記放射線イメージングが、動的放射線イメージング、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)またはその両方を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記リンパ節が、前記被験体の腹腔または胸腔内に存在する、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記リンパ節が、前記被験体の縦隔または後腹膜領域に存在する、項目4に記載の方法。
(項目6)
被験体において1つまたはそれを超える細胞を移植し、異所性組織を生育する最小侵襲の方法であって、前記方法は、
(a)超音波または放射線イメージングを利用して前記被験体の腹腔または胸腔内のリンパ節に針を挿入する工程、および
(b)前記針を介して前記1つまたはそれを超える細胞を前記リンパ節に送達することにより、前記1つまたはそれを超える細胞が前記リンパ節に生着し、前記リンパ節中に前記異所性組織を生成することが可能になる工程
を含む、方法。
(項目7)
前記被験体の胃腸管、気道または尿路を通って内視鏡を前進させる工程、および前記被験体の前記リンパ節に到達するように、経管腔的アプローチを用いて前記針を、臓側壁を貫通して挿入する工程をさらに含み、ここで、前記針は、前記内視鏡に取り付けられている、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記内視鏡を前進させる工程、前記針を挿入する工程またはその両方が、前記リンパ節の超音波イメージングを利用して行われる、項目2~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記放射線イメージングが、動的放射線イメージング、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)またはその両方を含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記内視鏡が、前記リンパ節を検知するように構成された超音波プローブを備えている、項目1、2、7、8または9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記1つまたはそれを超える細胞が、肝細胞、膵臓細胞もしくは膵島、腎臓細胞もしくは腎組織断片、胸腺細胞もしくは胸腺組織断片、または肺細胞もしくは肺組織断片を含む、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記1つまたはそれを超える細胞が、前記被験体に対して自己、同種異系または異種である、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記1つまたはそれを超える細胞が、前記被験体に対して同系である、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記1つまたはそれを超える細胞を生存ドナー組織から単離する工程をさらに含む、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記送達の前に前記1つまたはそれを超える細胞を凍結保存から回復させる工程をさらに含む、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記方法が、前記1つまたはそれを超える細胞を腹腔内または胸腔内の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれを超えるリンパ節に送達する工程を含む、項目1~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
免疫抑制剤を前記被験体に投与して、前記1つまたはそれを超える細胞の免疫拒絶を低減させる工程をさらに含む、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記1つまたはそれを超える細胞が、約20μmの平均直径の細胞を含む、項目1~17のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記1つまたはそれを超える細胞が、肝細胞を含み、前記異所性組織が、異所性肝組織である、項目1~18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記1つまたはそれを超える細胞が、単一リンパ節への1送達あたり少なくとも約1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を含む、項目18または19に記載の方法。
(項目21)
前記針が、1mLあたり少なくとも約1000万、2000万、2500万、3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を有する懸濁液中の前記1つまたはそれを超える細胞を送達する、項目18~20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記針が、1mLあたり少なくとも約1000万、2000万、3000万、4000万または5000万個の生存細胞を有する懸濁液中の前記1つまたはそれを超える細胞を送達する、項目18~21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記1つまたはそれを超える細胞が、細胞集団として前記リンパ節に送達され、前記細胞集団は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、85%、90%、95%または約100%の生存細胞を有する、項目18~22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
前記1つまたはそれを超える細胞が、細胞集団として前記リンパ節に送達され、前記1つまたはそれを超える細胞が前記針を通過したとき、前記送達によって、前記細胞集団における細胞生存百分率が約20%、15%、10%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%または0.5%未満の低下に至る、項目23のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
前記針の内径が、約700μm、600μm、500μm、450μm、400μm、300μm、260μm、250μmまたは200μmを超えない、項目18~23のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記針の内径が、約260μmを超えない、項目18~25のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記針の外径が、約1mm、900μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、520μm、510μm、500μm、480μm、450μmまたは400μmを超えない、項目18~26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記針の外径が、約510μmを超えない、項目18~27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記針のサイズが、約19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5または27ゲージを超えない、項目18~28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記針のサイズが、約25ゲージを超えない、項目18~29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記針が、約25ゲージを超えず、前記針が、1mLあたり少なくとも約5000万個の生存細胞を有する懸濁液中の前記1つまたはそれを超える細胞を送達し、前記1つまたはそれを超える細胞が、少なくとも約65%の生存細胞を含む、項目18~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記方法が、前記被験体の肝疾患または症状を処置する、項目19~31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記肝疾患または症状が、アルコール消費に関係する末期肝疾患もしくは肝線維症、A、B、CもしくはD型肝炎感染症、非アルコール性脂肪性肝疾患、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、胆道閉鎖症、嚢胞性線維症、アラジール症候群、梅毒、ブルセラ症、寄生虫感染症、化学物質曝露、慢性胆道疾患、バッド・キアリ症候群、オスラー病または右心不全である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記肝疾患または症状が、チロシン血症、メープルシロップ尿症、フェニルケトン尿症、クリグラー・ナジャー症候群、シュウ酸症、高シュウ酸尿症、ヘモクロマトーシス、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、ウィルソン病、家族性肝内胆汁うっ滞症候群、ガラクトース血症、糖原病または家族性アミロイドポリニューロパチーを含む代謝障害に関連する、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記被験体が、前記被験体の肝臓への血液供給を減少させ、前記被験体の肝細胞機能障害を誘導する、門脈大静脈シャント外科手技または経頸静脈的肝内門脈大循環シャント術(TIPS)を受けたことがあり、前記門脈大静脈シャント外科手技は、端側門脈大静脈シャント術、側々門脈大静脈シャント術、H型もしくはC型グラフトの間置による腸間膜静脈下大静脈シャント術、または中位もしくは遠位脾腎シャント術を含む、項目19~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記方法が、前記被験体の末期肝疾患を処置する、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記1つまたはそれを超える細胞が、腎臓細胞または腎組織断片を含み、前記異所性組織が、異所性腎組織である、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記方法が、前記被験体の腎疾患または症状を処置する、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記腎疾患または症状が、末期腎疾患である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記1つまたはそれを超える細胞が、膵臓細胞または膵島を含み、前記異所性組織が、異所性膵組織である、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目41)
前記方法が、前記被験体のインスリン分泌を減少させるか、または無くすに至る内分泌膵疾患または症状を処置する、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記膵疾患または症状が、前記被験体のインスリン分泌を減少させるに至る、I型糖尿病、II型糖尿病または慢性膵炎である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記1つまたはそれを超える細胞が、肺細胞または肺組織断片を含み、前記異所性組織が、異所性肺組織である、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記方法が、前記被験体の肺疾患または症状を処置する、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記肺疾患または症状が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記COPDが、タバコの煙、汚染物質および煙霧、アルファ-1-アンチトリプシン、嚢胞性線維症、慢性喘息、気腫、慢性気管支炎または特発性肺線維症によって引き起こされる、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記1つまたはそれを超える細胞が、胸腺細胞または胸腺組織断片を含み、前記異所性組織が、異所性胸腺組織である、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目48)
前記胸腺細胞または胸腺組織断片が、ドナー被験体から得られ、前記異所性胸腺組織が、前記ドナー被験体由来の細胞の移植に対して前記被験体においてドナー特異的寛容を誘導する、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記疾患または症状が、加齢性免疫系機能不全であり、前記異所性胸腺組織が、前記被験体の免疫機能を調節する、項目47に記載の方法。
(項目50)
前記リンパ節が胃腸管に近接しており、前記内視鏡を胃腸管に沿って前進させる、項目1~49のいずれか1項に記載の方法。
(項目51)
前記リンパ節が、十二指腸周囲リンパ節、胃周囲リンパ節、膵周囲リンパ節、腸間膜リンパ節、回結腸リンパ節、結腸間膜リンパ節、胃リンパ節、肝脾リンパ節、脾門リンパ節、傍食道リンパ節、傍噴門リンパ節、傍大動脈リンパ節、後大動脈リンパ節、大動脈外側リンパ節、大動脈前リンパ節、小彎リンパ節、総肝リンパ節、脾動脈リンパ節、腹腔動脈幹リンパ節、腸骨リンパ節または後腹膜リンパ節のうちの1つまたはそれを超えるリンパ節を含む、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記リンパ節が、十二指腸周囲リンパ節を含む、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記リンパ節が気道に近接しており、前記内視鏡を気道に沿って前進させる、項目1~49のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
前記リンパ節が、縦隔領域における1つまたはそれを超えるリンパ節を含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記リンパ節が、胸骨傍リンパ節、肋間リンパ節、横隔膜上リンパ節、上気管気管支リンパ節、下気管気管支リンパ節、気管支肺リンパ節、気管傍リンパ節または肺内リンパ節のうちの1つまたはそれを超えるリンパ節を含む、項目53または54に記載の方法。
(項目56)
前記リンパ節が尿路に近接しており、前記内視鏡を尿路に沿って前進させる、項目1~49のいずれか1項に記載の方法。
(項目57)
前記リンパ節が、後腹膜領域における1つまたはそれを超えるリンパ節を含む、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記リンパ節が、外腸骨リンパ節、内腸骨リンパ節、腰部大静脈リンパ節、腰部大動脈リンパ節、浅鼡径リンパ節、深鼡径リンパ節、膀胱周囲大動静脈間リンパ節、膀胱周囲閉鎖リンパ節または膀胱周囲仙骨前リンパ節のうちの1つまたはそれを超えるリンパ節を含む、項目56または57に記載の方法。
(項目59)
前記被験体が、ヒトである、項目1~57のいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
前記被験体が、非ヒト動物である、項目1~57のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
前記異所性組織が、前記リンパ節内への前記1つまたはそれを超える(one of more)細胞の送達後、約5日、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、90日、95日、100日、110日、120日、130日、140日、150日、160日、170日、180日、190日または200日以内に形成される、項目1~60のいずれか1項に記載の方法。
(項目62)
肝疾患の処置を必要とする被験体において肝疾患を処置する方法であって、前記方法は、
(a)内視鏡を、管腔内アプローチによって前記被験体の胃腸管、気道または尿路に前進させる工程、
(b)経管腔的アプローチを用い、超音波イメージングを利用して、前記内視鏡に取り付けられた針を、臓側壁を貫通して前記被験体のリンパ節に挿入する工程、および
(c)前記1つまたはそれを超える細胞を、前記針を介して前記リンパ節に送達することにより、前記1つまたはそれを超える細胞がリンパ節に生着し、前記リンパ節中に前記異所性肝組織を生成することが可能になる、工程
を含む、方法。
(項目63)
前記異所性組織が、前記リンパ節内への前記1つまたはそれを超える細胞の送達後、約5日、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、90日、95日、100日、110日、120日、130日、140日、150日、160日、170日、180日、190日または200日以内に形成される、項目62に記載の方法。
(項目64)
被験体において肝細胞を移植し、異所性肝臓を生育するためのシステムであって、前記システムは、内視鏡、および細胞集団を含む懸濁液が入った針付きの注射器を備え、前記懸濁液は、1mLあたり約2500万~約1億個の生存肝細胞を有し、前記針は、大きくとも約25ゲージである、システム。
(項目65)
前記内視鏡と前記針とが、前記被験体の胃腸管、気道または尿路に沿って共に前進するように構成されている、項目64に記載のシステム。
(項目66)
前記注射器が、前記針を介して前記1つまたはそれを超える細胞を送達するように構成されている、項目64または65に記載のシステム。
(項目67)
前記内視鏡が、超音波プローブを備えている、項目64~66のいずれか1項に記載のシステム。
(項目68)
前記超音波プローブが、前記被験体の腹腔内のリンパ節を検知するように構成されている、項目64~67のいずれか1項に記載のシステム。
(項目69)
前記懸濁液が、1mLあたり少なくとも約3000万、4000万、4500万、5000万、5500万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を有する、項目64~68のいずれか1項に記載のシステム。
(項目70)
前記注射器内の前記細胞集団が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、85%、90%、95%または約100%の生存細胞を有する、項目64~69のいずれか1項に記載のシステム。
(項目71)
前記注射器内の前記細胞集団が、少なくとも約65%の生存細胞を有する、項目64~69のいずれか1項に記載のシステム。
(項目72)
前記注射器内の前記細胞集団が、少なくとも約1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万または1億個の細胞を含む、項目64~71のいずれか1項に記載のシステム。
(項目73)
前記注射器内の前記細胞集団が、1mLあたり少なくとも約5000万個の生存細胞を含み、前記細胞集団が、少なくとも約65%の生存細胞を含む、項目64~72のいずれか1項に記載のシステム。
(項目74)
項目1~63のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキット。