(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014461
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】走査光学装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240125BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B26/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117301
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】ニデックコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊井戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 佑希
【テーマコード(参考)】
2H045
5J084
【Fターム(参考)】
2H045AA03
2H045AA62
5J084AA05
5J084BA11
5J084BA48
5J084BB26
5J084EA01
(57)【要約】
【課題】 ミラーに対する仕切り板の装着が容易であり、ミラーの形状の複雑化を防止することが可能な走査光学装置を提供する。
【解決手段】 第1ミラー11は、光源からの光を走査空間に反射する複数の反射面11aを有する。第2ミラー12は、走査空間からの反射光を受光素子に反射させる複数の反射面を有する。軸13は、第1ミラーと第2ミラーとの間に設けられ、第1ミラーと第2ミラーとを繋ぎ、モータの回転軸に連結される。仕切り板14は、第1ミラーと第2ミラーに対して光が入射される側で、第1ミラーと第2ミラーの間の少なくとも一部に挿入され、第1ミラー及び第2ミラーとは別の部分に固定される。仕切り板は、前記第1ミラー、前記第2ミラー、及び前記軸に対して非接触である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を走査空間に反射する複数の反射面を有する第1ミラーと、
前記走査空間からの反射光を受光素子に反射させる複数の反射面を有する第2ミラーと、
前記第1ミラーと前記第2ミラーとの間に設けられ、前記第1ミラーと前記第2ミラーとを繋ぎ、モータの回転軸に連結される軸と、
前記第1ミラーと前記第2ミラーに対して光が入射される側で、前記第1ミラーと前記第2ミラーの間の少なくとも一部に挿入され、前記第1ミラー及び前記第2ミラーとは別の部分に固定された仕切り板と、
を具備し、
前記仕切り板は、前記第1ミラー、前記第2ミラー、及び前記軸に対して非接触であること
を特徴とする走査光学装置。
【請求項2】
前記軸は、円筒形であり、前記仕切り板は、前記軸の周囲に対応した円弧状の切欠きを有することを特徴とする請求項1に記載の走査光学装置。
【請求項3】
前記仕切り板は、前記第1ミラーに光が入射される部分と、前記第2ミラーに光が入射される部分との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の走査光学装置。
【請求項4】
前記仕切り板は、第1仕切り板と第2仕切り板とを含み、前記第1仕切り板と前記第2仕切り板は、前記第1ミラーと前記第2ミラーとの間に非接触に挿入されることを特徴とする請求項1に記載の走査光学装置。
【請求項5】
前記仕切り板は、印刷基板により構成され、前記印刷基板は、光源と受光素子とを具備することを特徴とする請求項1に記載の走査光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば3次元測距画像センサに適用される走査光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に搭載され、物体までの距離を測定するLiDAR((Light Detection and Ranging)は、例えば光を空間に放射して走査し、空間内の物体からの反射光を受けて物体までの距離を測定する。
【0003】
空間を走査するため、ポリゴンミラーを用いた装置が開発されている(例えば特許文献1,特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-221001号公報
【特許文献2】特開2020-3658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば第1ポリゴンミラーにより空間に光を放射し、第1ポリゴンミラーと同軸に配置された第2ポリゴンミラーにより物体からの反射光を受ける場合、隣接する第1ポリゴンミラーの光と第2ポリゴンミラーの光とが干渉することがある。このため、第1ポリゴンミラーと第2ポリゴンミラーとの間に仕切り板を設ける必要がある。
【0006】
しかし、第1ポリゴンミラーと第2ポリゴンミラーとを別々に製造した場合、仕切り板の装着は、容易であるが、ミラー同士の角度にずれが生じることがある。また、第1ポリゴンミラーと第2ポリゴンミラーとを一体に製造した場合、各ミラーの間に仕切り板を固定することが難しく、さらに、仕切り板を装着するために、ミラー側の形状が複雑化し、製造コストが高騰する傾向があった。
【0007】
本発明の実施形態は、ミラーに対する仕切り板の装着が容易であり、ミラーの形状の複雑化を防止することが可能な走査光学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の走査光学装置は、光源からの光を走査空間に反射する複数の反射面を有する第1ミラーと、前記走査空間からの反射光を受光素子に反射させる複数の反射面を有する第2ミラーと、前記第1ミラーと前記第2ミラーとの間に設けられ、前記第1ミラーと前記第2ミラーとを繋ぎ、モータの回転軸に連結される軸と、前記第1ミラーと前記第2ミラーに対して光が入射される側で、前記第1ミラーと前記第2ミラーの間の少なくとも一部に挿入され、前記第1ミラー及び前記第2ミラーとは別の部分に固定された仕切り板と、を具備し、前記仕切り板は、前記第1ミラー、前記第2ミラー、及び前記軸に対して非接触である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る走査光学装置を示す斜視図。
【
図3】本実施形態に係る走査光学装置の軸を示すものであり、
図2のIII-III線に沿った断面図。
【
図4】本実施形態に係る仕切り板の第1変形例を示す平面図。
【
図5】本実施形態に係る仕切り板の第2変形例を示す平面図。
【
図6】本実施形態に係る仕切り板の第3変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面において、同一部分には、同一符号を付している。
【0011】
(実施形態)
図1乃至
図3は、本実施形態に係る走査光学装置10を示している。
走査光学装置10は、第1ポリゴンミラー(以下、単に第1ミラーと称す)11と、第2ポリゴンミラー(以下、単に第2ミラーと称す)12と、第1ミラー11を第2ミラー12とを接続する軸13と、仕切り板14と、を具備している。
【0012】
第1ミラー11は、側面に例えば4つの反射面11aを有し、第2ミラー12も側面に例えば4つの反射面12aを有している。反射面の数は、4つに限定されるものではなく、5つ以上であってもよい。第1ミラー11及び第2ミラー12の各反射面は、例えば長方形であるが、長方形に限定されるものではなく、台形又は正方形であっても良い。
【0013】
第1ミラー11は、例えば光源からの光を反射して走査空間に照射する反射鏡として用いられ、第2ミラーは、走査空間内の物体から反射された光を例えば受光素子に導く反射鏡として用いられる。第1ミラー11の各反射面の面積は、走査空間に2次元に放射される光ビームの照射角度の範囲により定められ、第2ミラー12の各反射面の面積は、走査空間の広い範囲からの光を受けるため、第1ミラー11の各反射面の面積より大きくされている。しかし、第2ミラー12の各反射面の面積は、第1ミラー11の各反射面の面積と同等であってもよい。
【0014】
第1ミラー11と第2ミラー12は、例えば円筒形の軸13(
図3に示す)によって接続されており、軸13は、図示せぬモータの回転軸に連結される。このため、モータが駆動されると、第1ミラー11及び第2ミラー12は、例えば図示矢印A方向に回転される。
【0015】
第1ミラー11、第2ミラー12、及び軸13は、例えば同一材料により一体的に製造されている。しかし、第1ミラー11と第2ミラー12の各反射面の角度を正確に一致させることができる場合、これらは別々に製造されていてもよい。
【0016】
第1ミラー11と第2ミラー12との間には、軸13の長さに対応する隙間15が設けられている。この隙間15内に、仕切り板14が挿入される。具体的には、仕切り板14は、第1ミラー11の反射面に光が入射される部分と、第2ミラー12の反射面に光が入射される部分との間に配置される。
【0017】
図3に示すように、仕切り板14は、例えば矩形状であり、長手方向の長さL1は、第1ミラー11又は第2ミラー12の1つの反射面の長さL2より長い(L1>L2)。仕切り板14は、長手方向に沿った一側面の一部が第1ミラー11と第2ミラー12、及び軸13に非接触で隙間15内に挿入される。
【0018】
図2に示すように、仕切り板14の軸方向に沿った厚みW1は、第1ミラー11と第2ミラー12との間の隙間15の軸方向に沿った幅W2より薄い(W1<W2)。
【0019】
図3に示すように、第1ミラー11と第2ミラー12との間の隙間15の深さDに対して、仕切り板14は浅く挿入される。このため、仕切り板14が隙間15の中に挿入される距離をL3とすると、仕切り板14の一方の側面と軸13の表面との間に距離L4の隙間が生じる。このため、仕切り板14の表面及び裏面は、第1ミラー11の図示下面と第2ミラー12の図示上面とから離れており、仕切り板14の側面は、軸13の側面から離れている。すなわち、仕切り板14は、第1ミラー11、第2ミラー12、及び軸13に対して非接触の状態で第1ミラー11と第2ミラー12との間の隙間15に配置される。この状態において、仕切り板14は、第1ミラー11と第2ミラー12とは別の部分に固定される。
【0020】
具体的には、
図1に示すように、走査光学装置10は、筐体16内に配置され、仕切り板14の例えば長手方向の両端は、筐体16内に固定される。固定手段としては、例えばネジ、ボルト、接着剤などを適用することが可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
図1、
図3に示すように、仕切り板14が第1ミラー11と第2ミラー12との間の隙間15に配置された状態において、仕切り板14の長手方向に沿った他方の側面と第1ミラー11又は第2ミラー12の反射面との間の距離L5は、第1ミラー11から放射された光の軸方向の走査角度の範囲と、第2ミラー12へ入射される光の軸方向の走査角度の範囲に従って定められる。すなわち、第1ミラー11から放射される光と、第2ミラー12へ入射される光との干渉を防止することが可能な範囲に定められる。このため、仕切り板14の短手方向(長手方向と交差し、軸方向と交差する方向)の長さL6は、仕切り板14の長手方向に沿った他方の側面と第1ミラー11又は第2ミラー12の反射面との間の距離L5と、隙間15内への挿入距離L3との和(L6=L5+L3)として定められる。
【0022】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、第1ミラー11と第2ミラー12との間に隙間15が設けられ、仕切り板14は、隙間15内に非接触で挿入され、第1ミラー11及び第2ミラー12とは、別の部分に保持される。このため、第1ミラー11と第2ミラー12が一体的に形成される場合であっても、別体に形成される場合であっても仕切り板14を第1ミラー11,第2ミラー12及び軸13に対して簡単に装着することができるため、組み立て作業を容易化することが可能である。
【0023】
また、仕切り板14は、回転する第1ミラー11及び第2ミラー12とは別の固定された部分に取り付けられるため、仕切り板14の取り付けが容易である。
【0024】
(第1変形例)
図4は、本実施形態に係る仕切り板の第1変形例を示している。第1変形例において、仕切り板14は、長手方向に沿った一方の側面の一部に切欠き14aを有している。切欠き14aは、軸13の側面に対応した円弧状である。
【0025】
仕切り板14が第1ミラー11と第2ミラー12との間の隙間15に挿入された状態において、切欠き14aは、軸13の側面から僅かに離れており、仕切り板14は、第1ミラー11、第2ミラー12、及び軸13に対して非接触である。
【0026】
仕切り板14の長手方向に沿った他方の側面と第1ミラー11又は第2ミラー12の反射面との間の距離は、例えばL5に保持される。
【0027】
第1変形例のように、仕切り板14に円弧状の切欠き14aを設けることにより、仕切り板14を第1ミラー11と第2ミラー12との間の隙間15に挿入した状態において、仕切り板14と第1ミラー11及び第2ミラー12とのオーバラップした範囲を増加することができる。このため、回転する第1ミラー11及び第2ミラー12に対して入射光と反射光の干渉を一層防止することが可能である。
【0028】
(第2変形例)
図5は、本実施形態に係る仕切り板の第2変形例を示している。第2変形例において、仕切り板14は、第1仕切り板14bと第2仕切り板14cとを具備している。第1仕切り板14bは切欠き14dを含み、第2仕切り板14cは、切欠き14eを含んでいる。切欠き14d及び切欠き14eは、軸13の側面に対応してそれぞれ半円形である。
【0029】
第1仕切り板14bと第2仕切り板14cが第1ミラー11と第2ミラー12との間の隙間15に切欠き14dと切欠き14eが対向するように挿入され、第1仕切り板14bと第2仕切り板14cが接触された状態において、第1仕切り板14bの切欠き14dと第2仕切り板14cの切欠き14eは、円形となる。円形となった、切欠き14dと切欠き14eは、軸13の側面から僅かに離れており、第1仕切り板14bと第2仕切り板14cは、第1ミラー11、第2ミラー12、及び軸13に対して非接触である。
【0030】
第2変形例においても、第1仕切り板14bの長手方向に沿った他方の側面と第1ミラー11又は第2ミラー12の反射面との間の距離は、例えばL5に保持される。
【0031】
第2変形例によっても、実施形態及び第1変形例と同様の効果を得ることが可能である。
しかも、第2変形例によれば、第1仕切り板14bと第2仕切り板14cとにより、軸13の全周囲を覆っているため、より一層、放射光と反射光の干渉を防止することが可能である。
【0032】
(第3変形例)
図6は、本実施形態に係る仕切り板の第3変形例を示している。第3変形例において、仕切り板14は、例えば印刷基板20により構成されている。印刷基板20の表面には、光源としての発光素子、例えばレーザダイオード21が配置される。さらに、レーザダイオード21から発生されたレーザ光を軸方向に沿って走査する例えば光学系が配置されてもよい。印刷基板20の裏面には、受光素子としての例えばフォトダイオードアレイ22が配置されている。印刷基板20上にその他の電子回路が配置されてもよい。
【0033】
レーザダイオード21から照射されたレーザ光は、第1ミラー11の反射面で反射されて、筐体16の外部の走査空間に放射され、走査空間内の物体から反射された光は、第2ミラー12で反射され、フォトダイオードアレイ22で受光される。
【0034】
第3変形例によれば、仕切り板14として印刷基板20を用い、印刷基板20に少なくともレーザダイオード21及びフォトダイオードアレイ22が配置される。このため、印刷基板20は、仕切り板と回路基板を兼用することが可能であるため、筐体内部のスペースを有効に利用することが可能であり、走査光学装置10の小型化が可能である。
【0035】
尚、レーザダイオード21とフォトダイオードアレイ22は、どちらか一方だけでもよい。
【0036】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…走査光学装置、11…第1ミラー、11a…反射面、12…第2ミラー、12a…反射面、13…軸、14…仕切り板、14a、14d、14e…切欠き、14b…第1仕切り板、14c…第2仕切り板、15…隙間、20…印刷基板。