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特開2024-144632仮固定用組成物、仮固定用接着剤、及び薄型ウエハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144632
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】仮固定用組成物、仮固定用接着剤、及び薄型ウエハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20241003BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20241003BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/06
C08F20/20
C08F20/00 510
C08F2/50
C08F4/00
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121253
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2024509810の分割
【原出願日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2022048913
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】谷川(星野) 貴子
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】栗村 啓之
(57)【要約】
【課題】本発明は、低出力でのレーザー照射でも剥離性が優れる仮固定用組成物を提供する。
【解決手段】仮固定用組成物は、(A)(メタ)アクリレートを含む重合性成分;(B)光ラジカル重合開始剤;(C)重合性官能基を有する紫外線吸収剤を含有し、以下の手順により測定されるアウトガスの量が0.75%以上であることを特徴とする。
予め質量(A0)を測定した丸板ガラスの上に50mm×50mm×0.07mmの仮固定用組成物を成形し、窒素雰囲気下にて波長365nmのブラックライトにより照度100mW/cm2、照射時間50秒、積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させ、試験片を得る。当該試験片の質量(A1)を測定した後、355nmUVレーザー(出力:6W、スポット径:200μm、照射ピッチ:200μm、スキャン速度:8m/sec、周波数:40Hz)を照射し、照射後の試験片の質量(A2)を測定する。これらの手順で得られた質量および下式より、アウトガス発生量を算出する。
アウトガス発生量(%)=((A1-A2)/(A1-A0))×100
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮固定用組成物であって、以下の(A)~(C)を含有し、
(A)(メタ)アクリレートを含む重合性成分
(B)光ラジカル重合開始剤
(C)重合性官能基を有する紫外線吸収剤
以下の手順により測定されるアウトガスの量が0.75%以上であることを特徴とする仮固定用組成物。
予め質量(A0)を測定した丸板ガラスの上に50mm×50mm×0.07mmの仮固定用組成物を成形し、窒素雰囲気下にて波長365nmのブラックライトにより照度100mW/cm2、照射時間50秒、積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させ、試験片を得る。当該試験片の質量(A1)を測定した後、355nmUVレーザー(出力:6W、スポット径:200μm、照射ピッチ:200μm、スキャン速度:8m/sec、周波数:40Hz)を照射し、照射後の試験片の質量(A2)を測定する。これらの手順で得られた質量および下式より、アウトガス発生量を算出する。
アウトガス発生量(%)=((A1-A2)/(A1-A0))×100
【請求項2】
前記(A)成分が、ベンゾフェノン骨格、トリアゾール骨格、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格、及びフェノール骨格のいずれも有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する重合性成分である、請求項1に記載の仮固定用組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、及び1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の仮固定用組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が、ベンゾフェノン骨格、トリアゾール骨格、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格、及びフェノール骨格からなる群から選択される1種以上を有し、かつ重合性官能基を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の仮固定用組成物。
【請求項5】
前記(A)成分の合計100質量部に対して、前記(B)成分を0.01~5質量部含有し、前記(C)成分を0.01~12質量部含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の仮固定用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の仮固定用組成物を含む仮固定用接着剤。
【請求項7】
請求項6に記載の仮固定用接着剤を用いた薄型ウエハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定用組成物、仮固定用接着剤、及び薄型ウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造にあたっては、シリコンに代表される無機系の材料を基板として用い、その表面への絶縁膜形成、回路形成、研削による薄化等の加工を施すことで得られた、厚さ数百μm程度のウエハ型の基板がよく用いられる。しかし基板には脆くて割れやすい材質のものが多いため、特に研削による薄化に際しては破損防止措置が必要である。この措置には、従来、研削対象面の反対側の面(裏面ともいう)に、加工工程終了後に剥離することが可能な、仮固定用保護テープを貼るという方法が採られている。このテープは、有機樹脂フィルムを基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不充分であり、高温となる工程での使用には適さない。
【0003】
そこで、電子デバイス用基板をシリコンやガラス等の支持部材に接着剤を介して接合することによって、裏面研削や裏面電極形成の工程の条件に対する充分な耐久性を付与するシステムが提案されている。この際に重要なのが、基板を支持部材に接合する際の接着剤層である。これは基板を支持部材に隙間なく接合でき、後の工程に耐えるだけの充分な耐久性が必要であり、最後に薄化したウエハを支持部材から簡便に剥離できる、即ち仮固定ができることが必要である。
【0004】
このようなウエハの加工では主に、スピンコート工程、真空接合と光硬化工程、研削・研磨による薄化加工工程、高温処理工程、レーザー剥離工程、仮固定剤の除去工程が行われる。
【0005】
スピンコート工程では、仮固定剤の膜をウエハ上に均一に形成できるようにするために、仮固定剤が適した粘度を有すること及びニュートン流体であること(又はせん断粘度のせん断速度非依存性を持つこと)が求められる。
【0006】
真空接合/UV硬化工程では、ガラス等の支持部材上で短時間に紫外線(UV)等光照射による硬化ができること、及びアウトガス発生が少ないこと(低アウトガス性)が仮固定剤に求められる。
【0007】
研削・研磨による薄化加工工程では、研削機の荷重が基板に局所的に掛かることによる破損を避けるため、荷重を面内方向に分散させつつ基板の局所的な沈下を防いで平面性を保てる適度な硬度が仮固定剤に求められる。さらに加えて、支持部材との接着力、エッジを保護するための弾性率の適度な高さ、及び耐薬品性も求められることになる。
【0008】
高温処理工程では、真空中での長時間に亘る高温処理(例えば300℃以上で一時間以上)に耐えうる耐熱性が仮固定剤に求められる。
【0009】
レーザー剥離工程では、UVレーザー等のレーザーにより、高速に剥離できることが仮固定剤に求められる。
【0010】
除去工程では、基板を支持部材から簡便に剥離できる易剥離性のほか、剥離後に基板上に接着剤の残渣が残らないための凝集特性、易洗浄性が求められる。
【0011】
こうした背景に鑑み、例えば特許文献1では、(A-1)側鎖が炭素数18以上のアルキル基で、ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレート、(A-2)多官能(メタ)アクリレート、(B)ポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体、及び(C)光ラジカル重合開始剤を含む仮固定用組成物を開示しており、耐熱性、低アウトガス性、剥離性に優れることが謳われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2021/235406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ウエハ上で硬化した仮固定剤(すなわち、接着剤層)を剥離するにあたっては、ガラスなどの透明な支持部材を介してレーザーを掃引照射し、照射箇所の接着剤層を分解させることで、穴(支持部材で蓋されている状態の凹部)を形成する。穴内で気化したガスが高温で膨らむことで、支持部材が押し上げられ、剥離しやすくなる。
【0014】
ところで、レーザーを照射することで放射エネルギーが吸収されるため、照射箇所が発熱し温度が上昇する。そのため、レーザー照射の出力が高ければ高いほど、硬化した仮固定剤を分解させやすいが、仮固定剤に隣接する基板の温度も上昇するため、基板の品質確保の観点から好ましくない。
【0015】
本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、一実施形態において、低出力でのレーザー照射でも剥離性が優れる仮固定用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は別の実施形態において、そのような仮固定用組成物を含む仮固定用接着剤、及び当該仮固定用接着剤を用いた薄型ウエハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者が鋭意検討の結果、従来技術とは異なる発想により、上記課題を解決できることを見出した。具体的には、前述のように、仮固定用組成物として、低アウトガス性が求められるが、剥離性を向上させる観点では、むしろアウトガスの発生量を増加させるほうが望ましい。アウトガスが支持部材と薄型ウエハの間で存在することで、剥離に必要な力が少なくなるからである。本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下に例示される。
【0017】
[1]
仮固定用組成物であって、以下の(A)~(C)を含有し、
(A)(メタ)アクリレートを含む重合性成分
(B)光ラジカル重合開始剤
(C)重合性官能基を有する紫外線吸収剤
以下の手順により測定されるアウトガスの量が0.75%以上であることを特徴とする仮固定用組成物。
予め質量(A0)を測定した丸板ガラスの上に50mm×50mm×0.07mmの仮固定用組成物を成形し、窒素雰囲気下にて波長365nmのブラックライトにより照度100mW/cm2、照射時間50秒、積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させ、試験片を得る。当該試験片の質量(A1)を測定した後、355nmUVレーザー(出力:6W、スポット径:200μm、照射ピッチ:200μm、スキャン速度:8m/sec、周波数:40Hz)を照射し、照射後の試験片の質量(A2)を測定する。これらの手順で得られた質量および下式より、アウトガス発生量を算出する。
アウトガス発生量(%)=((A1-A2)/(A1-A0))×100
[2]
前記(A)成分が、ベンゾフェノン骨格、トリアゾール骨格、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格、及びフェノール骨格のいずれも有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する重合性成分である、[1]に記載の仮固定用組成物。
[3]
前記(B)成分が、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、及び1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)から選択される1種以上である、[1]又は[2]に記載の仮固定用組成物。
[4]
前記(C)成分が、ベンゾフェノン骨格、トリアゾール骨格、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格、及びフェノール骨格からなる群から選択される1種以上を有し、かつ重合性官能基を有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載の仮固定用組成物。
[5]
前記(A)成分の合計100質量部に対して、前記(B)成分を0.01~5質量部含有し、前記(C)成分を0.01~12質量部含有する、[1]~[4]のいずれか1項に記載の仮固定用組成物。
[6]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の仮固定用組成物を含む仮固定用接着剤。
[7]
[6]に記載の仮固定用接着剤を用いた薄型ウエハの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、低出力でのレーザー照射でも剥離性が優れる仮固定用組成物を提供することができる。また、本発明は別の実施形態において、そのような仮固定用組成物を含む仮固定用接着剤、及び当該仮固定用接着剤を用いた薄型ウエハの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0020】
本明細書においては別段の断わりがない限り、数値範囲はその上限値及び下限値を含むものとする。本明細書において(メタ)アクリレートとは、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。単官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。n官能(メタ)アクリレートとは、1分子中にn個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。多官能(メタ)アクリレートにおける重合性官能基としては、アクリロイル基のみを有してもよく、メタクリロイル基のみを有してもよく、アクリロイル基とメタクリロイル基の両方を有してもよい。
【0021】
(1.(A)成分)
本実施形態の仮固定用組成物が含む(A)成分である重合性成分は、(メタ)アクリル重合骨格を形成する役割を担う。また、本実施形態の仮固定用組成物には、非重合性成分を含んでいてもよいが、その非重合性成分と(A)成分との合計100質量部に対して、非重合性成分の量は15質量部未満であることが好ましい。なお、本明細書において、「非重合性成分」とは、(B)成分以外のもの、すなわち光ラジカル重合開始剤として当該技術分野で用いられないものであると定義する。
【0022】
本実施形態の仮固定用組成物が含む(A)成分である重合性成分は、(メタ)アクリロイル基を有し、(メタ)アクリル重合骨格を形成する役割を担う。重合性成分としては、重合性有機化合物成分が好ましい。(A)成分は好ましくは(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物を含んでよい。(A)成分は、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、若しくは3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、又はそれらの混合物であってよい。また好ましくは(A)成分は、多官能(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートの組み合わせ(より好ましくは2官能(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートの組み合わせ)、多官能(メタ)アクリレートと重合性ポリマーの組み合わせ(より好ましくは2官能(メタ)アクリレートと重合性ポリマーの組み合わせ)、又は多官能(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートと重合性ポリマーの組み合わせ(より好ましくは2官能(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートと重合性ポリマーの組み合わせ)を含んでよい。(A)成分は、ベンゾフェノン骨格、トリアゾール骨格、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格、及びフェノール骨格のいずれも有さない(即ち、後述する(C)成分を含まない)。(A)成分は、分子内に窒素原子を有しないことが好ましい。
【0023】
(A)成分が含みうる多官能(メタ)アクリレートとしては、剛直な構造を提供できる観点から、芳香族2官能(メタ)アクリレート、若しくは脂環式2官能(メタ)アクリレート、又はそれらの混合物が挙げられる。(A)成分は、非環式多官能(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。多官能(メタ)アクリレートは、モノマーであってもポリマーであってもよく、その混合物であってもよい。即ち、上述した重合性ポリマーは、多官能(メタ)アクリレートのポリマーであってよい。多官能(メタ)アクリレートモノマーの分子量は900以下が好ましく、700以下がより好ましく、500以下がさらにより好ましく、400以下がさらにより好ましい。
【0024】
芳香族2官能(メタ)アクリレートの例としては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシC1~C20アルコキシ)フェニル]フルオレンジ(メタ)アクリレート、C1~C20アルコキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ベンジルジ(メタ)アクリレート、1,3-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシC1~C20アルキル)ベンゼン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、又はそれらの構造異性体といったものが挙げられる。好ましくは、縮合環骨格、例えばフルオレン、インデン、インデセン、アントラセン、アズレン、トリフェニレンの骨格を有するジ(メタ)アクリレートが含まれていてよい。
【0025】
脂環式2官能(メタ)アクリレートの例としては、C1~C20アルコキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、トリシクロC10~C20アルカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロC5~C20ジ(メタ)アクリレート、又はそれらの構造異性体等が挙げられる。
【0026】
非環式2官能(メタ)アクリレートの例としては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートといったものが挙げられる。
【0027】
また、(A)成分は3官能以上の多官能(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。3官能(メタ)アクリレートとしては、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0028】
4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
また、(A)成分が含んでもよい単官能(メタ)アクリレートとしては、分子量が550以下の単官能(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0030】
当該アルキル基としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及び脂環式アルキル基から選択される一種以上が好ましく、直鎖状アルキル基、及び分岐鎖状アルキル基から選択される一種以上がより好ましい。他成分との相溶性向上の観点からは、(A)成分は長鎖かつ分岐鎖状又は環状のアルキル基を有することが好ましく、例えば炭素数18~40、より好ましくは炭素数18~32の、例えばイソステアリル基、イソテトラコサニル基(2-デシル-1-テトラデカニル基等)、イソトリアコンタニル基(2-テトラデシル-1-オクタデカニル基等)等の分岐鎖状アルキル基、又はシクロアルキル基を有することが好ましい。このような長鎖・高分子量かつ脂肪族炭化水素の性格の強い成分を用いること(更に好ましくは系全体の脂肪族炭化水素的性質を高めること)で、仮固定用組成物に求められる低揮発性、耐薬品性及び耐熱性を向上できる。
【0031】
(A)成分としては、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート、2-ドデシル-1-ヘキサデカニル(メタ)アクリレート、2-テトラデシル-1-オクタデカニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上が好ましい。(A)成分としては、下記式1の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
【化1】
式中、R1は水素原子又はメチル基であり、水素原子がより好ましい。R2はアルキル基であり、その炭素数は18~32が好ましい。これらの(メタ)アクリレートは一種以上を使用できる。
【0033】
2が炭素数18~32のアルキル基である単官能アルキル(メタ)アクリレートとしては、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート、2-テトラデシル-1-オクタデカニル(メタ)アクリレート等といった、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0034】
好ましい実施形態においては、本実施形態の仮固定用組成物が含む非重合性成分の量が0質量%以上10質量%未満、若しくは0質量%以上5質量%未満であってもよい。より好ましくは、本実施形態の仮固定用組成物は(B)成分を除き、非重合性成分を含まなくてもよい。
【0035】
(2.(B)成分)
本実施形態の仮固定用組成物が含む(B)成分である光ラジカル重合開始剤は、光照射を受けて(A)成分の重合を開始できる物質である。光ラジカル重合開始剤は例えば、紫外線或いは可視光線(例えば波長350~700nm、好ましくは365~500nm、より好ましくは385~450nm)の照射により分子が切断され、2つ以上のラジカルに分裂する化合物をいう。光ラジカル重合開始剤の例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イルフェニル)-ブタン-1-オン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン2-O-ベンゾイルオキシム、及び1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)が挙げられる。(B)成分は、これらのうち一種以上又は二種以上の組み合わせを含んでよい。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、仮固定用組成物が含む(B)成分はアシルフォスフィンオキサイド系化合物を含んでもよい。好ましいアシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、高感度であること、光褪色性を有することから深部硬化性に優れることに加え、ラジカルを発生させるための吸収波長領域が比較的長波長領域にまで拡がっていることが好ましい。上述した好ましい化合物では、吸収波長領域は波長約440nmまでの範囲であり、後述するUVレーザー剥離工程で用いるUV吸収剤の吸収波長領域との差が大きい。つまり、UV吸収剤によるUV硬化阻害の度合いが小さく、より長波長の光でラジカル重合を開始できる。そのため、UV吸収剤の共存下であっても比較的高速度で効率良くラジカル重合を開始し、硬化できるという効果が得られる。
【0037】
好ましい実施形態においては、光ラジカル重合開始剤を吸光度から選定できる。具体的には、300~500nmの波長領域に極大吸収をもたない溶媒(例えば、アセトニトリルやトルエンなど)に0.1質量%の濃度で溶解させた際に、365nmの波長において吸光度が0.5以上であること、385nmの波長において吸光度が0.5以上であること、及び405nmの波長において吸光度が0.5以上であることのいずれかひとつ以上の条件を満たすような化合物の1種以上から、光ラジカル重合開始剤を選択できる。そのような条件を満たす化合物としては例えば、溶媒としてのアセトニトリルに対して0.1質量%の濃度で溶解させた際において、365nmの波長において吸光度が0.5以上である1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)、365nmと385nmの波長において吸光度が0.5以上である1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン 2-O-ベンゾイルオキシム、365nmと385nmと405nmの波長において吸光度が0.5以上であるビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
【0038】
また、光ラジカル重合開始剤による硬化性とUVレーザー剥離を両立する観点からは、400~500nmの範囲に吸収波長領域を有するビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムも、光ラジカル重合開始剤として使用できる。
【0039】
(B)光ラジカル重合開始剤としては、反応速度、硬化後の耐熱性、低アウトガス性、後述するUVレーザー剥離に用いるUVレーザーの波長とも該UVレーザー剥離に用いるUV吸収剤の吸収波長領域とも異なる領域での吸収特性を有する点で、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、又はα-アミノアルキルフェノン系化合物から選択される1種以上が好ましい。また、後述する構造を有する仮固定用組成物の内の、UVレーザー剥離工程に対応するための層ではない、加工対象基材の支持部材との接合から加熱工程までの破損防止の仮固定用途のための樹脂組成物用光ラジカル重合開始剤としては、上記以外に、オキシムエステル系化合物を選択することもできる。
【0040】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中では、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドが特に好ましい。
【0041】
チタノセン系化合物としては、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムが挙げられる。
【0042】
α-アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イルフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0043】
オキシムエステル系化合物としては、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン2-O-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。これらの中では、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)が好ましい。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、仮固定用組成物における(B)成分が、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド及び1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)から選択される1種以上である。
【0045】
(B)光ラジカル重合開始剤の使用量は、反応速度及び硬化後の耐熱性、低アウトガス性の点で、(A)成分の合計100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.01~3質量部がより好ましく、0.1~2質量部がさらにより好ましく、0.1~1質量部がさらにより好ましい。(B)成分が0.01質量部以上であると十分な硬化性が得られ、5質量部以下だと低アウトガス性及び耐熱性が損なわれにくい効果が得られる。
【0046】
(3.(C)成分)
本実施形態の仮固定用組成物が含む(C)成分である重合性官能基を有する紫外線吸収剤(UV吸収剤)は、紫外線或いは可視光線のレーザーの照射により分子が切断されて分解・気化し、該分解・気化が支持部材と仮固定剤の界面で発生することにより、UVレーザー剥離工程直前まで維持されていた仮固定剤・支持部材間の接着力を喪失させる化合物を指す。(C)成分は、ベンゾフェノン骨格、トリアゾール骨格、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格、及びフェノール骨格(好ましくはヒンダードフェノール骨格)からなる群から選択される1種以上を有する化合物である。これらの骨格を有するのは、UV吸収波長領域のUVレーザー波長との重なりの度合い、同波長でのUV吸収特性、低アウトガス性、耐熱性を得るためである。(C)成分が有する重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0047】
(C)成分の例としては、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシ,5-メチル)フェニル-2H-ベンゾトリアゾール、1,1-ビス-[2-(メタ)アクリロイルオキシ,3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル),5-ターシャリーオクチル]メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジ(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノンからなる群の1種以上が、樹脂成分との相溶性、UV吸収特性、低アウトガス性、耐熱性の点から特に好ましい。
【0048】
(C)成分の量は、(A)成分の合計100質量部に対して0.01~12質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~7質量部がさらにより好ましい。0.01質量部以上だと十分なUVレーザー剥離速度が得られ、12質量部以下だと低アウトガス性及び耐熱性が損なわれにくい効果が得られる。
【0049】
(4.仮固定用組成物)
本発明の仮固定用組成物は、以下の手順により測定されるアウトガスの量が0.75%以上である。
予め質量(A0)を測定した丸板ガラスの上に50mm×50mm×0.07mmの仮固定用組成物を成形し、窒素雰囲気下にて波長365nmのブラックライトにより照度100mW/cm2、照射時間50秒、積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させ、試験片を得る。当該試験片の質量(A1)を測定した後、355nmUVレーザー(出力:6W、スポット径:200μm、照射ピッチ:200μm、スキャン速度:8m/sec、周波数:40Hz)を照射し、照射後の試験片の質量(A2)を測定する。これらの手順で得られた質量および下式より、アウトガス発生量を算出する。
アウトガス発生量(%)=((A1-A2)/(A1-A0))×100
【0050】
アウトガスの量が多ければ、支持部材と薄型ウエハとの間にアウトガスが豊富に存在することにより、両者を剥離するために必要な剥離力が小さくなり、剥離性が向上する。この観点から、上記手順で測定されるアウトガスの量は、1.00%以上であることが好ましく、1.25%以上であることがより好ましく、1.50%以上であることがさらにより好ましい。
【0051】
上記手順で測定されるアウトガスの量の上限は特に設定されないが、製造の容易性と剥離性の向上とのバランスから、典型的には10.0%以下であり、より典型的には5.00%以下である。
【0052】
アウトガスの量を0.75%以上とすることができれば、仮固定用組成物の組成は特に限定されないが、例えば、レーザー光を吸収する性能を持つ官能基を有する化合物の添加量を増やしたり、一分子中に含まれるレーザー光を吸収する性能を持つ官能基数が多い化合物を適用したりすることで、アウトガスの量を増加させることができる。
【0053】
(5.仮固定用接着剤)
本発明の仮固定用組成物は、仮固定用接着剤、特に薄型ウエハなどの、電子デバイス製造用仮固定用接着剤として使用できる。仮固定用接着剤は、好ましくは本発明の仮固定用組成物のみからなる。
【0054】
(6.薄型ウエハの製造方法)
本発明は別の実施形態において、本発明の仮固定用接着剤を用いた薄型ウエハの製造方法も提供される。当該方法は、仮固定用接着剤を支持部材に塗布すること、前記仮固定用接着剤が塗布された前記支持部材の面において、加工対象基材を前記支持部材と接着させること、前記加工対象基材に対して薄化加工を行うこと、UVレーザーを照射することにより前記支持部材及び前記加工対象基材を剥離することを含む。
【0055】
薄型ウエハの基材と、光学的に透明な支持部材を貼り合わせる方法は特に限定されないが、典型的には光学的に透明な支持部材に仮固定用接着剤を塗布してから、当該仮固定用接着剤が塗布された面に、基材を貼り合わせることにより行う。
【0056】
仮固定用接着剤の塗布方法としては、スピンコート、スクリーン印刷、各種コーター等の公知の塗布方法を用いることができる。本実施形態の仮固定用組成物の粘度は、23℃(大気圧下)において、塗布性や作業性の点で、500mPa・s以上が好ましく、1000mPa・s以上がより好ましい。本実施形態の仮固定用組成物の粘度は、23℃(大気圧下)において、塗布性や作業性の点で、15000mPa・s以下が好ましく、10000mPa・s以下がより好ましく、5000mPa・s以下がさらにより好ましい。500mPa・s以上だと塗布性、特にスピンコートによる塗布性に優れる。15000mPa・s以下だと作業性に優れる。粘度の測定は、公知の粘度計により行うことができる。
【0057】
スピンコートとは、例えば、支持部材に液状組成物を滴下し、支持部材を所定の回転数で回転させることにより、組成物を支持部材表面に塗布する方法である。スピンコートにより、高品質な塗膜を効率良く生産できる。
【0058】
加工対象基材と支持部材を接着する際は、可視光線若しくは紫外線(波長又は中心波長365~405nm)においてエネルギー量が1~20000mJ/cm2になるように照射することが好ましい。エネルギー量が1mJ/cm2以上だと十分な接着性が得られ、20000mJ/cm2以下だと生産性が優れ、光ラジカル重合開始剤からの分解生成物が発生しにくく、アウトガスの発生が抑制される。生産性、接着性、低アウトガス性、易剥離性の点で、1000~10000mJ/cm2であることが好ましい。
【0059】
加工対象基材と支持部材は、特に制限はないものの、少なくとも一方の基材は光を透過する透明基材が好ましい。透明基材としては、水晶、ガラス、石英、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等の無機基材、プラスチック等の有機基材等が挙げられる。これらの中では、汎用性があり、大きい効果が得られる点で、無機基材が好ましい。無機基材の中では、ガラス、及び石英から選択される1種以上が好ましい。
【0060】
加工対象基材と支持部材を接着した後、基材を加工して薄型ウエハを形成する。加工の内容としては、典型的には、研削・研磨による薄化加工、及び高温処理などがある。
【0061】
薄型ウエハを形成した後、当該接着体の光学的に透明な基材側からUVレーザーを全面に走査するように照射することにより剥離することが可能である。前述のように、本発明の仮固定用組成物を使用することで、支持体と薄型ウエハとの再固着が抑制されるので、UVレーザーによる照射と剥離の間にある程度時間が空いても、作業性の低下が防止される。
【実施例0062】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
特記しない限り、23℃、湿度50%で実験した。下記表に示す組成(単位は質量部)の硬化性樹脂組成物(以下、液状組成物ということもある)を調製し、評価した。各成分としては、以下の化合物を選択した。
【0064】
(組成)
(A)成分として、以下を用いた。
APB-001(多官能アクリレートポリマー、根上工業社製「APB-001」、重量平均分子量72,000)
A-BPEF-2:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジアクリレート(新中村化学工業社製「NKエステルA-BPEF-2」)
HBPE-4:EO変性水添ビスフェノールAジアクリレート(第一工業製薬社製「HBPE-4」、m+n≒4)
A-DOD-N:1,10-デカンジオールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製「A-DOD-N」)
M-113:ノニルフェノールEO変性アクリレート(東亞合成社製「アロニックスM-113」、n≒4)
ISTA:イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製「ISTA」)
【0065】
(B)成分として、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure 819」)を用いた。
【0066】
(C)成分として以下を用いた。
RUVA-93:2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(大塚化学社製「RUVA-93」)
P-66:2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアクリロイルオキシベンゾフェノン(大和化成社製「DAINSORB P-66」)
【0067】
(液状サンプル作製)
表1に示されるとおり、各比較例及び実施例について、材料を60℃で加温混合することで均一な液状組成物とした。
【0068】
(アウトガスの量の測定)
直径100mm、厚み0.7mmの丸板ガラス上にテフロン(登録商標)テープを用いて50mm×50mm×0.07mmの型枠を調製し、仮固定用組成物を流し込んだ。窒素雰囲気下にて波長365nmのブラックライトにより照度100mW/cm2、照射時間50秒、積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させた。硬化後の試験片の仮固定用組成物が塗布された面から355nmUVレーザー(出力:6W、スポット径:200μm、照射ピッチ:200μm、スキャン速度:8m/sec、周波数:40Hz)を全面照射した。使用した丸板ガラスの質量をA0、レーザー照射前の試験片の質量をA1、レーザー照射後の試験片の質量をA2とし、下式に従ってアウトガス発生量を算出した。
アウトガス発生量(%)=((A1-A2)/(A1-A0))×100
【0069】
(接合サンプル作製)
作製した液状組成物にて、4インチのシリコンウエハ(直径10cm×厚さ0.47mm)と4インチのガラス支持部材(直径10cm×厚さ0.7mm)を貼り合わせた。貼り合わせに際し、液状組成物の厚みは50μmとなるように調整した。貼り合わせ後、波長365nmのブラックライトにより照度100mW/cm2、照射時間50秒、積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させ、180℃に熱したホットプレートの上に載せ、30分間加熱処理を行い、レーザー剥離性評価用試験片を作製した。液状組成物は貼り合わせ面の全面に塗布した。
【0070】
(レーザー剥離性の評価)
得られた4インチ試験体のガラス支持部材側から該試験体全面を走査するように、同試験体を中心に固定した直径110mmの真円の面積に、波長355nmのUVレーザーを照射した。レーザー照射後の試験片の円周部にカミソリ刃を当て、円周部からのはみだし部を除去した。この試験片に対して、シリコンウエハを下にして、ポーラスチャックタイプの吸着テーブルに載せて固定した状態で試験片のガラス面に上から直径30mmの吸盤を3個貼り付け、その吸盤に荷重測定モジュールを取り付けて、上方へ垂直に引き上げる方法でガラス剥離にかかる荷重を測定した。剥離性を評価するパラメータとして、荷重10Nまでにガラス剥離が可能となるために必要なレーザー出力(W)を測定し、表1に示した。当該数値が小さければ小さいほど、剥離がしやすいことを意味する。
【0071】
また、前述する方法で剥離したガラス支持部材の接合されていた面をアセトンで染み込ませたウエスで綺麗にふき取った。さらに、イソプロパノールを染み込ませたウエスで綺麗にふき取った。金属顕微鏡を用いて10倍に拡大してこのガラスを観察し、ガラス面内にレーザー痕、ヒビや糊残り(仮固定剤の残留)等がないか確認した。レーザー痕、ヒビや糊残り等がない場合は「〇」と評価し、そうでない場合は「×」と評価した。結果を表1に示す。
【0072】
また、前述する方法でガラス支持部材を剥離したシリコンウエハと液状組成物の接合体について、液状組成物面の全面に剥離テープ(デンカ社製エレグリップPテープ)を貼り付けた。そのすぐ後に剥離テープを180°の角度で剥離し、液状組成物を除去した。液状組成物が除去されたシリコンウエハについて、金属顕微鏡を用いて10倍に拡大して観察し、シリコンウエハ面内に糊残りがないか確認した。糊残りがない場合は「〇」と評価し、そうでない場合は「×」と評価した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1の結果から、本発明の仮固定用組成物は、剥離が必要となるレーザー出力が低く、剥離性が高いことが分かった。これにより、発熱を抑えた状態での剥離が可能となる。
【0075】
一方、アウトガスの量が少ない比較例1及び2については、剥離が必要となるレーザー出力が高く、剥離性が劣ることがわかる。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮固定用組成物であって、以下の(A)~(C)を含有し、
(A)(メタ)アクリレートを含む重合性成分
(B)光ラジカル重合開始剤
(C)重合性官能基を有する紫外線吸収剤
以下の手順により測定されるアウトガスの量が0.75%以上であることを特徴とする仮固定用組成物。
予め質量(A0)を測定した丸板ガラスの上に50mm×50mm×0.07mmの仮固定用組成物を成形し、窒素雰囲気下にて波長365nmのブラックライトにより照度100mW/cm2、照射時間50秒、積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させ、試験片を得る。当該試験片の質量(A1)を測定した後、355nmUVレーザー(出力:6W、スポット径:200μm、照射ピッチ:200μm、スキャン速度:8m/sec、周波数:40Hz)を照射し、照射後の試験片の質量(A2)を測定する。これらの手順で得られた質量および下式より、アウトガス発生量を算出する。
アウトガス発生量(%)=((A1-A2)/(A1-A0))×100
【請求項2】
前記(A)成分が、ベンゾフェノン骨格、トリアゾール骨格、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格、及びフェノール骨格のいずれも有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する重合性成分である、請求項1に記載の仮固定用組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、ベンゾフェノン骨格、トリアゾール骨格、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格、及びフェノール骨格からなる群から選択される1種以上を有し、かつ重合性官能基を有する、請求項1又は2に記載の仮固定用組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の合計100質量部に対して、前記(B)成分を0.01~5質量部含有し、前記(C)成分を0.01~12質量部含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の仮固定用組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の仮固定用組成物を含む仮固定用接着剤。
【請求項6】
請求項に記載の仮固定用接着剤を用いた薄型ウエハの製造方法。