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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144639
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20241003BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01B7/08
H02G1/14
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024122354
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2023014529の分割
【原出願日】2019-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 心優
(72)【発明者】
【氏名】大森 康雄
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(57)【要約】
【課題】シートのある位置において電線同士が接続されることが容易になる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】配線部材10は、少なくとも1本の第1被覆電線20と、少なくとも1本の第2被覆電線20と、少なくとも前記第1被覆電線20が固定された第1シート30と、を備え、前記第1シート30に第1孔32が形成され、前記第1被覆電線20の芯線22と前記第2被覆電線20の芯線22とが接続された接続部26が、前記第1孔32が形成された領域に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の第1被覆電線と、
少なくとも1本の第2被覆電線と、
少なくとも前記第1被覆電線が固定された第1シートと、
を備え、
前記第1シートに第1孔が形成され、
前記第1被覆電線の芯線と前記第2被覆電線の芯線とが接続された接続部が、前記第1孔が形成された領域に位置する、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記接続部において芯線同士が溶接されている、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記接続部が前記第1被覆電線の中間部に設けられている、配線部材。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記接続部が前記第1被覆電線の端部に設けられている、配線部材。
【請求項5】
請求項4に記載の配線部材であって、
前記第1被覆電線の端部において芯線より先端側に被覆層があり、
前記被覆層が前記第1シートに固定されている、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第1被覆電線の芯線と前記第2被覆電線の芯線とが交差している、配線部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第2被覆電線が前記第1シートに固定されている、配線部材。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第2被覆電線が固定された第2シートをさらに備え、
前記第2シートに第2孔が形成され、
前記第1孔と前記第2孔とが重なるように前記第1シートと前記第2シートとが積層されている、配線部材。
【請求項9】
請求項8に記載の配線部材であって、
前記第1シートと前記第2シートとが前記接続部の位置から相互に交差する方向に延びている、配線部材。
【請求項10】
請求項9に記載の配線部材であって、
前記接続部が複数設けられ、
前記複数の接続部が階段状に並んでいる、配線部材。
【請求項11】
請求項10に記載の配線部材であって、
少なくとも1本の線状伝送部材をさらに備え、
前記線状伝送部材は、前記第1シートに固定されており、前記第1被覆電線及び前記第2被覆電線とは接続されておらず、
前記接続部から一方側に前記第2被覆電線が延び、前記接続部に対して他方側に前記線状伝送部材が配置されている、配線部材。
【請求項12】
請求項8に記載の配線部材であって、
前記第1シートと前記第2シートとが前記接続部の位置から同方向に延びている、配線部材。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記接続部を覆う絶縁カバー部が設けられている、配線部材。
【請求項14】
請求項13に記載の配線部材であって、
前記絶縁カバー部は、前記第1シートの一部が折り返されて形成された部分を含む、配線部材。
【請求項15】
請求項14に記載の配線部材であって、
前記第1シートには前記第1被覆電線に沿って曲がって延びている部分を含む曲げ領域部が設けられ、
前記曲げ領域部のうち内向きに曲がる部分に前記絶縁カバー部が設けられている、配線部材。
【請求項16】
請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第1シートに前記第1孔が複数形成され、
前記絶縁カバー部は、前記複数の第1孔の間の位置において前記接続部を仕切っている、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状に形成された機能性外装部材に電線が溶着されたワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-137208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートのある位置において電線同士が接続されることが望まれている。
【0005】
そこで、シートのある位置において電線同士が接続されることが容易になる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、少なくとも1本の第1被覆電線と、少なくとも1本の第2被覆電線と、少なくとも前記第1被覆電線が固定された第1シートと、を備え、前記第1シートに第1孔が形成され、前記第1被覆電線の芯線と前記第2被覆電線の芯線とが接続された接続部が、前記第1孔が形成された領域に位置する、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シートのある位置において電線同士が接続されることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1にかかる配線部材を示す平面図である。
図2図2図1のII-II線に沿って切断された断面図である。
図3図3は実施形態1にかかる配線部材を製造する様子を示す説明図である。
図4図4は実施形態2にかかる配線部材を示す平面図である。
図5図5図4のV-V線に沿って切断された断面図である。
図6図6は実施形態2にかかる配線部材を製造する様子を示す説明図である。
図7図7は実施形態3にかかる配線部材を示す平面図である。
図8図8は実施形態3にかかる配線部材を製造する様子を示す説明図である。
図9図9は実施形態1にかかる配線部材の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)少なくとも1本の第1被覆電線と、少なくとも1本の第2被覆電線と、少なくとも前記第1被覆電線が固定された第1シートと、を備え、前記第1シートに第1孔が形成され、前記第1被覆電線の芯線と前記第2被覆電線の芯線とが接続された接続部が、前記第1孔が形成された領域に位置する配線部材である。第1孔が形成された領域において第1被覆電線と第2被覆電線とを接続できる。シートのある位置において被覆電線同士が接続されることが容易になる。
【0012】
(2)前記接続部において芯線同士が溶接されていてもよい。これにより、接続部において、芯線同士を接続するための部品が不要となる。
【0013】
(3)前記接続部が前記第1被覆電線の中間部に設けられていてもよい。これにより、シートのある位置に簡易に中間スプライスを設けることができる。
【0014】
(4)前記接続部が前記第1被覆電線の端部に設けられていてもよい。これにより、電線端部を接続することができる。
【0015】
(5)前記第1被覆電線の端部において芯線より先端側に被覆層があり、前記被覆層が前記第1シートに固定されていてもよい。これにより、第1被覆電線の端部における芯線を第1孔の位置に位置決めしやすい。
【0016】
(6)前記第1被覆電線の芯線と前記第2被覆電線の芯線とが交差していてもよい。これにより、芯線同士を接続しやすい。
【0017】
(7)前記第2被覆電線が前記第1シートに固定されていてもよい。これにより、同じシートに固定された電線同士を接続できる。
【0018】
(8)前記第2被覆電線が固定された第2シートをさらに備え、前記第2シートに第2孔が形成され、前記第1孔と前記第2孔とが重なるように前記第1シートと前記第2シートとが積層されていてもよい。これにより、異なるシートに固定された電線同士を接続できる。
【0019】
(9)前記第1シートと前記第2シートとが前記接続部の位置から相互に交差する方向に延びていてもよい。これにより、異なる方向に延びる分岐が簡易に形成される。
【0020】
(10)前記接続部が複数設けられ、前記複数の接続部が階段状に並んでいてもよい。これにより、第1被覆電線の被覆層と第2被覆電線の被覆層とが交差することを抑制できる。これにより、配線部材の厚み寸法が大きくなることを抑制できる。
【0021】
(11)少なくとも1本の線状伝送部材をさらに備え、前記線状伝送部材は、前記第1シートに固定されており、前記第1被覆電線及び前記第2被覆電線とは接続されておらず、前記接続部から一方側に前記第2被覆電線が延び、前記接続部に対して他方側に前記線状伝送部材が配置されていてもよい。これにより、線状伝送部材が第1被覆電線及び第2被覆電線と交差することを抑制できる。これにより、配線部材の厚み寸法が大きくなることを抑制できる。
【0022】
(12)前記第1シートと前記第2シートとが前記接続部の位置から同方向に延びていてもよい。これにより、同じ方向に延びる電線のうち異なる層に配置された電線同士を接続できる。
【0023】
(13)前記接続部を覆う絶縁カバー部が設けられていてもよい。これにより、接続部において短絡を抑制できる。
【0024】
(14)前記絶縁カバー部は、前記第1シートの一部が折り返されて形成された部分を含んでいてもよい。これにより、絶縁カバー部を簡易に設けることができる。
【0025】
(15)前記第1シートには前記第1被覆電線に沿って曲がって延びている部分を含む曲げ領域部が設けられ、前記曲げ領域部のうち内向きに曲がる部分に前記絶縁カバー部が設けられていてもよい。曲げ領域部はシートの歩留まりが悪くなりやすい。曲げ領域部のうち内向きに曲がる部分に絶縁カバー部が設けられることによってシートの歩留まりの改善を図ることができる。
【0026】
(16)前記第1シートに前記第1孔が複数形成され、前記絶縁カバー部は、前記複数の第1孔の間の位置において前記接続部を仕切っていてもよい。これにより、複数の接続部が短絡することが抑制される。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかる配線部材10について説明する。図1は実施形態1にかかる配線部材10を示す平面図である。図2図1のII-II線に沿って切断された断面図である。図3は実施形態1にかかる配線部材10を製造する様子を示す説明図である。なお図1においてカバー40が省略されている。
【0029】
配線部材10は、複数の被覆電線20とシート30とカバー40とを備える。シート30は、全体として扁平な形状に形成されている。複数の被覆電線20がシート30上に固定されることによって、配線部材10が扁平な形態に保たれる。被覆電線20がシート30に固定されたものは配線体12と称されることがある。カバー40はシート30とは反対側から被覆電線20を覆っている。
【0030】
複数の被覆電線20は、車両における部品同士を電気的に接続する部材である。被覆電線20の端部には、例えばコネクタが設けられる。このコネクタが相手側部品に設けられたコネクタと接続されることで、被覆電線20が相手側部品に接続される。つまり、本配線部材10は、車両等において各種部品同士を電気的に接続する配線部材10として用いられる。コネクタは、シート30に固定されていてもよい。
【0031】
複数の被覆電線20の経路は、接続先となる部品の位置等に応じて設定される。複数の被覆電線20がシート30に固定されることによって、複数の被覆電線20がそれぞれの接続先となる部品の位置等に応じた配線経路に沿った状態に保たれる。複数の被覆電線20は、幹線部から枝線部が分岐する態様で、シート30に固定されていてもよい。
【0032】
被覆電線20は、芯線22と被覆層24とを備える。芯線22は1本又は複数本の素線を有する。素線は、銅、アルミニウムなどの導体が線状に形成されたものである。被覆層24は芯線22の周囲を覆う。被覆層24は、樹脂などの絶縁体である。被覆層24は例えば軟化した絶縁材料が芯線22の周囲に押出成形されて形成される。
【0033】
被覆電線20は、各種信号線、各種電力線であってもよい。被覆電線20の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0034】
図1には、6本の被覆電線20が図示されている。6本の被覆電線20について区別が必要な場合は、被覆電線20a1-20a6と称されることがある。
【0035】
シート30は複数の被覆電線20を並んだ状態に保つ。シート30の主面上に複数の被覆電線20が固定されている。シート30は、樹脂シートであってもよい。例えば、シート30は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂によって形成されていてもよい。また、シート30は、不織布又は発泡シート等であることも考えられる。また、シート30は、1層構造を有していてもよく、複数層構造を有していてもよい。また、シート30は、金属層を有していてもよい。シート30は第1シートの一例である。
【0036】
被覆電線20は、シート30に固定されればよく、シート30に対する被覆電線20の固定態様は特に限定されない。かかる固定態様としては、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、被覆電線20とシート30とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様であり、例えば、縫糸、カバー、粘着テープなどが、被覆電線20をシート30に向けて押え込んだり、被覆電線20とシート30とを挟み込んだりして、その状態に維持するものである。以下では、被覆電線20とシート30とが、接触部位固定の状態にあるものとして説明する。
【0037】
係る接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、被覆電線20とシート30とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどを介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、被覆電線20とシート30とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば被覆電線20とシート30とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。
【0038】
係る接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0039】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって接触部位直接固定の状態が形成されると、被覆電線20とシート30とは、その手段による接触部位直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって接触部位直接固定の状態が形成されると、被覆電線20とシート30とは、超音波溶着による接触部位直接固定の状態とされる。
【0040】
以下では、被覆電線20とシート30とが、接触部位直接固定の状態にあるものとして説明する。
【0041】
各被覆電線20は、シート30と長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所で固定されていてもよい。各被覆電線20は、シート30と長手方向に沿って全体に連続的に固定されていてもよい。なお、ここでは、被覆電線20における被覆層24がとシート30とが接触部位直接固定されているため、被覆電線20のうちシート30と固定される部分は、被覆層24が設けられた部分である。
【0042】
シート30には、孔32が形成されている。孔32はシート30のうち被覆電線20が真っすぐ延びる経路から側方にずれた位置に形成されている。シート30のうち孔32が形成される部分において、孔32が形成されない部分と比べて、部分的に幅寸法が大きくなっている。また複数の孔32が1箇所に集中して配置されている。これにより複数の孔32が1つの絶縁カバー部によってカバーされやすい。もちろん孔32は被覆電線20が真っすぐ延びる経路上にあってもよい。また複数の孔32が分散して配置されていてもよい。図1には4つの孔32が図示されている。4つの孔32について区別が必要な場合、孔32a1-32a4と称されることがある。
【0043】
当該孔32が形成された領域に接続部26が位置している。接続部26は、複数の被覆電線20における芯線22同士が電気的に接続された部分である。図1には、接続部26が2つ図示されている。2つの接続部26について区別が必要な場合、接続部26a1、26a2と称されることがある。
【0044】
接続部26a1において、被覆電線20a1、20a2、20a3が接続されている。被覆電線20a1、20a2、20a3は、中間部において接続されている。ここで、被覆電線20が中間部において接続されるとは、被覆電線20の両端部がそれぞれ別の接続先に接続される場合を言う。被覆電線20a1、20a2、20a3それぞれの中間部において、皮剥ぎされるなどして芯線22が露出している。そしてこの露出する芯線22同士が接続されて、接続部26をなしている。接続部26a1は、孔32a1の形成された領域に位置している。
【0045】
接続部26が孔32の形成された領域に位置しているとは、平面視で接続部26が孔32の位置に位置していることのほか、平面視で接続部26が孔32の周縁に位置していることを言う。露出する芯線22に近い位置において、被覆層24がシート30のうち孔32の周縁に固定されている。接続部26を含む露出する芯線22は、シート30に固定されておらず、動くことができる。このため、接続部26は、平面視で孔32から若干ずれた位置に位置していることもあり得る。なお、接続部26は、シート30の厚み方向において、孔32の中に位置していてもよいし、孔32の外に位置していてもよい。
【0046】
接続部26a2において、被覆電線20a4、20a5が接続されている。被覆電線20a4、20a5は、中間部において接続されている。被覆電線20a4、20a5それぞれの中間部において、皮剥ぎされるなどして芯線22が露出している。そしてこの露出する芯線22同士が接続されて、接続部26a2をなしている。接続部26a2は、孔32a3の形成された領域に位置している。
【0047】
各接続部26において複数の被覆電線20の芯線22同士が交差している。ここでは複数の被覆電線20が配列を変えつつ孔32を横切っていることによって、芯線22同士が交差している。以下、接続部26a1の例で説明する。
【0048】
図1に示す例では、接続部26a1に関し、孔32a1の左側では、被覆電線20a1、20a2、20a3が上からこの順に並んでいる。孔32a1の右側では、被覆電線20a1、20a2、20a3が上から被覆電線20a3、20a2、20a1の順に並んでいる。これにより、各被覆電線20a1、20a2、20a3が孔32a1を横切る方向が異なることができ、被覆電線20a1、20a2、20a3の芯線22が孔32a1の位置で交差することができる。被覆電線20a3、20a2、20a1は、孔32a1の右側より先の部分において上から被覆電線20a1、20a2、20a3の順に戻っている。このため、被覆電線20a1、20a2、20a3同士は、配列順を戻すために、被覆層24のある部分において交差している。もっとも、被覆電線20a3、20a2、20a1は、孔32a1の右側より先の部分において上からこの順で延びていてもよい。
【0049】
各接続部26において芯線22同士が溶接されている。これにより、芯線22同士が接続された状態に維持されている。かかる溶接方法は特に限定されるものではなく、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接など各種溶接方法が採用できる。また芯線22同士の接続態様は溶接に限られず、各種接続態様が採用可能である。例えば、芯線22に端子が圧着されることによって、芯線22同士が接続されてもよい。
【0050】
接続部26において芯線22同士は例えば以下のように接続される。接続部26a2の例で説明する。まず被覆電線20a4、20a5が所定の経路に沿ってシート30上に配線されて固定される。このとき所定の経路には、孔32a3を横切る経路が含まれる。つまり被覆電線20a4、20a5は孔32a3を横切るように配置される。被覆電線20a4、20a5のうち孔32a3を横切る部分はシート30に固定されない。被覆電線20a4、20a5のうち孔32a3の周縁部分がシート30に固定される。また各被覆電線20a4、20a5のうち孔32a3を横切る部分が皮剥ぎされる。これにより、各被覆電線20a4、20a5のうち孔32a3を横切る部分において芯線22が露出した状態となる。また、露出する芯線22が孔32a3を横切るように位置決めされる。この状態で、接続用の治具が被覆電線20a4、20a5の芯線22にあてられて、被覆電線20a4、20a5の芯線22が接続される。
【0051】
かかる治具は、接続方法によって異なる。例えば接続方法が超音波溶接の場合、治具は超音波溶接機のホーン及びアンビルである。また例えば接続方法が端子の場合、治具は端子圧着機のクリンパ及びアンビルである。孔32の位置に芯線22が位置しているため、孔32の位置において、これらの治具がシート30の厚み方向両側から芯線22を挟むことができる。
【0052】
図1において被覆電線20のうち芯線22が露出する領域は、孔32よりも大きい。つまり、被覆電線20のうち孔32の周縁に位置する部分においても芯線22が露出している。被覆電線20のうち芯線22が露出する領域は、孔32と同じかそれよりも小さくてもよい。
【0053】
被覆電線20a1、20a2、20a3のうち1つが第1被覆電線であり、別の1つが第2被覆電線である。同様に被覆電線20a4、20a5のうち1つが第1被覆電線であり、別の1つが第2被覆電線である。第1被覆電線は少なくとも1本含まれていればよい。第2被覆電線は、少なくとも1本含まれていればよい。
【0054】
ここでは接続部26が位置していない孔32a2、32a4が存在している。もっとも接続部26が位置していない孔32a2、32a4がなくてもよい。すべての孔32に接続部26が位置していてもよい。
【0055】
被覆電線20a6は、シート30のある位置において被覆電線20a1、20a2、20a3、20a4、20a5とは接続されていない。被覆電線20a6は、シート30がある位置において第1被覆電線及び第2被覆電線とは接続されていない線状伝送部材の一例である。線状伝送部材は、上記被覆電線20のほか、裸導線、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、同軸線、光ファイバ等であってもよい。線状伝送部材は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。線状伝送部材は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。線状伝送部材は、少なくとも1本含まれていればよい。
【0056】
カバー40は、シート30に対して全体的に重ねられてもよいし、一部に重ねられてもよい。カバー40は、樹脂シートであってもよい。例えば、カバー40は、シート30と同様に、PVC、PE、PP、PET等の樹脂によって形成されていてもよい。シート30及びカバー40の一方は、他方よりも柔らかくてもよい。ここでの柔らかさ、逆にいえば、硬さは、例えば、ロックウェル硬さによって評価されてもよい。例えば、カバー40は、硬質PVC、ナイロン、PET、PPなどの材料によって形成され、シート30が軟質PVCによって形成されたシート状部材とPETによって形成された不織布とが積層された柔らかい部材であってもよい。
【0057】
配線部材10には、接続部26を覆う絶縁カバー部が設けられている。絶縁カバー部は、シート30の一部が折り返されて形成された部分を含む。本例では、シート30に対して被覆電線20が配置される側をカバー40が覆っている。シート30に対して被覆電線20が配置されない側をシート30の折り返し片34が覆っている。従って絶縁カバー部は、カバー40と、シート30の折り返し片34とを含む。
【0058】
折り返し片34は、折目Lに沿って折り返される。シート30のうち被覆電線20が固定される部分は電線固定部と称されることがある。ここでは折り返し片34は、シート30において幅方向に沿って孔32が形成された部分の隣に設けられている。折り返し片34は、シート30において長手方向に沿って孔32が形成された部分の隣に設けられていてもよい。また折り返し片34が2つ設けられて、2つの折り返し片34が両側からシート30のうち孔32が形成された部分を覆っていてもよい。
【0059】
シート30とカバー40との固定態様は特に限定されるものではなく、シート30と被覆電線20との上記各種固定態様が採用可能である。シート30とカバー40との固定態様は、シート30と被覆電線20との固定態様と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0060】
電線固定部と、折り返し片34との固定態様は特に限定されるものではなく、シート30と被覆電線20との上記各種固定態様が採用可能である。電線固定部と折り返し片34との固定態様は、シート30と被覆電線20との固定態様、及びシート30とカバー40との固定態様と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
以上のように構成された配線部材10によると、孔32が形成された領域において被覆電線20同士を接続できる。シート30のある位置において被覆電線20同士が接続されることが容易になる。また同じシート30に固定された被覆電線20同士を接続できる。また被覆電線20の芯線22同士が交差しているため、芯線22同士を接続しやすい。
【0062】
また接続部26において芯線22同士が溶接されているため、接続部26において、芯線22同士を接続するための部品が不要となる。もっとも接続部26において、端子などの別部品を用いて芯線22同士が接続されていてもよい。
【0063】
接続部26が被覆電線20の中間部に設けられているため、シート30のある位置に簡易に中間スプライスを設けることができる。なお被覆電線20a1-20a3のうち1本は接続部26において端部が接続されるものであってもよい。同様に被覆電線20a4、20a5のうち1本は接続部26において端部が接続されるものであってもよい。
【0064】
また絶縁カバー部が設けられているため、接続部26において短絡を抑制できる。また絶縁カバー部は、シート30の一部が折り返されて形成されている部分を含むため、絶縁カバー部を簡易に設けることができる。
【0065】
[実施形態2]
実施形態2にかかる配線部材について説明する。図4は実施形態2にかかる配線部材110を示す平面図である。図5図4のV-V線に沿って切断された断面図である。図6は実施形態2にかかる配線部材110を製造する様子を示す説明図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0066】
配線部材110は、複数の配線体12b、12cを備える。配線体12bは、複数の被覆電線20b1-20b12と、シート30bとを備える。配線体12cは、複数の被覆電線20c1-20c11と、シート30cとを備える。複数の配線体12b、12cは一部で積層されている。
【0067】
配線体12bにおいて、12本の被覆電線20b1-20b12が図示されている。12本の被覆電線20b1-20b12は、以下の被覆電線群G1、G2、G3の3つのグループに分けられる。すなわち被覆電線群G1は、中間部において芯線22が露出する被覆電線20のグループである。1本の被覆電線20b1が被覆電線群G1に属する。被覆電線群G2は、端部において芯線22が露出する被覆電線20のグループである。9本の被覆電線20b2-20b10が被覆電線群G2に属する。被覆電線20b2-20b7と被覆電線20b8-20b10とは接続部26から相互に反対向きに延びている。被覆電線群G3は、シート30のある位置において芯線22が露出していない被覆電線20のグループである。なお被覆電線群G3の端部が接続されたコネクタがシート30上に配置されることはあり得る。2本の被覆電線20b11、20b12が被覆電線群G3に属する。
【0068】
シート30bには、孔32bが形成されている。図6には11個の孔32bが図示されている。11個の孔32bは、被覆電線20b1-20b10における露出する芯線22に対応する位置に形成されている。被覆電線20b1における露出する芯線22に対応する位置に孔32bが2つ形成されている。
【0069】
配線体12cにおいて、11本の被覆電線20c1-20c11が図示されている。11本の被覆電線20c1-20c11は、すべて被覆電線群G2に属する。シート30cには、孔32cが形成されている。図6には11個の孔32cが図示されている。11個の孔32cは、被覆電線20c1-20c11における露出する芯線22に対応する位置に形成されている。孔32bと、孔32cとは同じ配列で並んでいる。これにより、対応する孔32b、32c同士がすべて重なるように、シート30b及びシート30cが積層可能である。
【0070】
被覆電線20b1に、被覆電線20c1、20c2が接続されている。被覆電線20b2-20b10に、被覆電線20c3-20c11がそれぞれ接続されている。各接続部26は、被覆電線20の端部に設けられている。被覆電線20の端部とはそれより先に接続先が設けられない部分を言う。
【0071】
複数の接続部26が階段状に並んでいる。被覆電線20b1と、被覆電線20c1、20c2との接続部26が頂部となっている。頂部の左側に被覆電線20b2-20b7及び被覆電線20c3-20c8の各接続部26が並んでいる。被覆電線20b2-20b7及び被覆電線20c3-20c8の各接続部26は、シート30bの幅方向に沿って頂部から離れるに従って、シート30bの長手方向に沿って頂部から離れる。また頂部の右側に被覆電線20b8-20b10及び被覆電線20c9-20c11の各接続部26が並んでいる。被覆電線20b8-20b10及び被覆電線20c9-20c11の各接続部26は、シート30bの幅方向に沿って頂部から離れるに従って、シート30bの長手方向に沿って頂部から離れる。
【0072】
頂部の両側に配置される接続部26の数が異なっているが、同じであってもよい。またシート30bにおいて、頂部の両側に延びる部分の幅寸法が異なっている。つまり、図4に示す例では、頂部の右側の接続部26の数が少ないため、シート30bのうち頂部の右側に延びる部分の幅寸法が、頂部の左側に延びる部分の幅寸法よりも小さい。シート30bにおいて、頂部の両側に延びる部分の幅寸法が、同じであってもよい。
【0073】
シート30bとシート30cとが接続部26の位置から相互に交差する方向に延びている。これにより、配線体12bと配線体12cとを異なる方向に分岐させることが容易となる。ここでは、シート30bのうち長手方向中間部に孔32bが形成されている。シート30cのうち長手方向端部に孔32cが形成されている。シート30cが、シート30bの長手方向と交差する方向(ここでは直交する方向)に延びている。もちろん、シート30bにおいて、孔32bがシート30bの端部の位置に形成されていてもよい。この場合、複数の配線体12が端部同士の位置において接続される。またシート30cにおいて、孔32cがシート30cの中間部の位置に形成されていてもよい。この場合、複数の配線体12が中間部同士の位置において接続される。
【0074】
シート30cの端部に位置する被覆電線20c1-20c11がすべて被覆電線20b1-20b10と接続されている。これにより、配線体12bと配線体12cとの接続部26は、コネクタを用いていわゆるワイヤートゥワイヤー接続された部分の代わりをなすことができる。
【0075】
接続部26から一方側(図4における下側)に被覆電線20c1-20c11が延びている。接続部26に対して他方側(図4における上側)に被覆電線20b11、20b12が配置されている。つまり、配線体12bにおいて、配線体12cとの接続に用いられるすべての孔32bに対して長手方向からみて側方にずれた位置に配線体12cとの接続に用いられない被覆電線20b11、20b12が配置されている。これにより、配線体12cとの接続に用いられない被覆電線20b11、20b12が被覆電線20c1-20c11と交差することが抑制される。
【0076】
絶縁カバー部は、1つのシート30における複数の孔32の間の位置において接続部26を仕切っている。ここでは図5に示すように、カバー40がシート30cにおける孔32の間の部分に接合されている(接合部A1)。またシート30bにおける折り返し部分が、シート30bにおける孔32の間の部分に接合されている(接合部A2)。さらにここではシート30bにおける孔32の間の部分と、シート30cにおける孔32の間の部分とが接合されている(接合部A3)。これらより、複数の接続部26同士が直接的に接触して短絡することが抑制される。さらに、複数の接続部26同士が水等を介して短絡することも抑制される。
【0077】
以上のように構成された配線部材110によっても、孔32が形成された領域において被覆電線20同士を接続できる。シート30のある位置において被覆電線20同士が接続されることが容易になる。
【0078】
また配線部材110によると、異なるシート30b、30cに固定された被覆電線20同士を接続できる。また接続部26が被覆電線20の端部に設けられているため、電線端部を接続することができる。またシート30bとシート30cとが接続部26の位置から相互に交差する方向に延びているため、異なる方向に延びる分岐が簡易に形成される。
【0079】
また接続部26が複数設けられ、複数の接続部26が階段状に並んでいるため、被覆電線20b1-20b10と被覆電線20c1-20c11とが被覆層24の位置で交差することが抑制される。これにより、配線部材110の厚み寸法が大きくなることを抑制できる。もっとも、複数の接続部26が階段状に並んでいなくてもよい。また複数の接続部26が頂部から両側に階段状に並んでいるが、頂部から一方側のみに階段状に並んでいてもよい。
【0080】
接続部26から一方側に被覆電線20c1-20c11が延び、接続部26に対して他方側に被覆電線20b11、20b12が配置されているため、被覆電線20b11、20b12が被覆電線20c1-20c11と交差することが抑制される。これにより、配線部材110の厚み寸法が大きくなることを抑制できる。
【0081】
絶縁カバー部は、複数の孔32の間の位置において接続部26を仕切っているため、複数の接続部26が短絡することが抑制される。
【0082】
なお配線体12bと配線体12cとは、厚み方向に沿って、被覆電線20b1-20b12と被覆電線20c1-20c11の間にシート30cが介在するように重ねられている。配線体12bと配線体12cとは、厚み方向に沿って、被覆電線20b1-20b12と被覆電線20c1-20c11の間にシート30b、30cが介在しないように重ねられていてもよい。配線体12bと配線体12cとは、厚み方向に沿って、被覆電線20b1-20b12と被覆電線20c1-20c11の間にシート30bが介在するように重ねられていてもよい。配線体12bと配線体12cとは、厚み方向に沿って、被覆電線20b1-20b12と被覆電線20c1-20c11の間にシート30b、30cの両方が介在するように重ねられていてもよい。
【0083】
[実施形態3]
実施形態3にかかる配線部材について説明する。図7は実施形態3にかかる配線部材210を示す平面図である。図8は実施形態3にかかる配線部材210を製造する様子を示す説明図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0084】
配線部材210は、積層された2つの配線体12d、12eが重ねられている。配線体12dは複数の被覆電線20d1-20d4とシート30dとを備える。配線体12eは複数の被覆電線20e1-20e4とシート30eとを備える。本例では、シート30dとシート30eとが接続部26の位置から同方向に延びている。
【0085】
4本の被覆電線20d1-20d4には被覆電線群G1に属する2本の被覆電線20d1、d2と、被覆電線群G2に属する1本の被覆電線20d3と、被覆電線群G3に属する1本の被覆電線20d4とが含まれる。4本の被覆電線20e1-20e4には被覆電線群G1に属する1本の被覆電線20e1と、被覆電線群G2に属する2本の被覆電線20e2、20e3と、被覆電線群G3に属する1本の被覆電線20e4とが含まれる。被覆電線20d1、20e1が接続されている。被覆電線20d2、20e2が接続されている。被覆電線20d3、20e3が接続されている。
【0086】
被覆電線20d3、20e2、20e3の端部において芯線22より先端側に被覆層24がある。被覆電線20の端部において芯線22より先端側にある被覆層24は、先端被覆層25と称されることがある。先端被覆層25がシート30d、30eに固定されている。これにより、露出する芯線22に対して両隣の位置において、被覆層24、25がシート30に固定されることによって、被覆電線20の端部においても露出する芯線22が孔32を横切る位置に位置決めされやすい。
【0087】
先端被覆層25は例えば以下のように形成される。すなわち通常、被覆電線20の端部において被覆層24が皮剥ぎされる際、まず被覆層24の中間位置に切れ込みが形成されて、先端側の被覆層24が切り離される。そしてこの切り離された先端側の被覆層24が芯線22の先端側にずらされてやがて芯線22から抜ける。ここでは、切り離された先端側の被覆層24が芯線22から抜き取られずに、芯線22の先端側にずらされた状態で止められている。これにより、先端被覆層25が形成される。なおこの場合、先端被覆層25には、長手方向に沿って芯線22の先端側に突出し、芯線22を覆っていない部分があってもよい。ずらされた先端側の被覆層24のうち、芯線22を覆っていない部分が切除されてもよい。この場合、先端被覆層25は長手方向に沿ったすべての部分において芯線22を覆っていてもよい。
【0088】
以上のように構成された配線部材210によっても、孔32が形成された領域において被覆電線20同士を接続できる。シート30のある位置において被覆電線20同士が接続されることが容易になる。
【0089】
また配線部材210によると、被覆電線20d3、20e2、20e3の端部において芯線22より先端側に先端被覆層25がある。先端被覆層25がシート30に固定されているため、被覆電線20の端部における芯線22を孔32の位置に位置決めしやすい。
【0090】
またシート30dとシート30eとが接続部26の位置から同方向に延びているため、同じ方向に延びる被覆電線20のうち異なる層に配置された被覆電線20同士を接続できる。
【0091】
なお、本例では接続部26において接続される芯線22同士が交差していない。接続部26において接続される芯線22同士が交差していてもよい。
【0092】
[変形例]
図9は実施形態1にかかる配線部材10の変形例を示す平面図である。変形例にかかる配線部材310は積層された配線体12fと配線体12gとを備える。
【0093】
配線体12fのシート30fには曲げ領域部36が設けられている。曲げ領域部36は、被覆電線20に沿って曲がって延びている部分を含む部分である。曲げ領域部36のうち内向きに曲がる部分(平面視において内周側に位置する部分)に絶縁カバー部の折り返し片34が設けられている。ここで曲げ領域部36はシート30fの歩留まりが悪くなりやすい。曲げ領域部36のうち内向きに曲がる部分に絶縁カバー部が設けられることによってシート30fの歩留まりの改善を図ることができる。同様にカバー340においても曲げ領域部36のうち内向きに曲がる部分に絶縁カバー部が設けられることによって歩留まりの改善を図ることができる。
【0094】
配線体12fにおいて曲げ領域部36が設けられている以外の構成については、実施形態1における配線体12と同様の構成が採用できる。
【0095】
配線体12gにおける被覆電線20gは、シート30gのある位置において他の配線体12fにおける被覆電線20fと接続されない。このように、配線部材310には、シート30gのある位置において他の配線体12fと接続されない配線体12gが積層されていてもよい。この配線体12gの構成は、被覆電線20がシート30に固定されたものに限られない。配線体12gは、線状伝送部材がベースに並んだ状態に保たれたものであってもよい。例えば、配線体12gは、フレキシブルフラットケーブル(FFC)、フレキシブルプリント回路基板(FPC)などであってもよい。
【0096】
[応用例]
実施形態2において、例えば配線体12bを車種、グレード等が異なる車両間で共通の配線体12とし、配線体12cを車種、グレード等が異なる車両間で異なる配線体12とすることも考えられる。この場合、複数の被覆電線20b1-20b10には、被覆電線20c1-20c11と接続されないものがあってもよい。例えば、図6において図示された11個の孔32bのうち被覆電線20b1-20b10の芯線22のみが位置し、被覆電線20c1-20c11の芯線22が位置しないものがあってもよい。
【0097】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0098】
10、110、210、310 配線部材
12、12a-12g 配線体
20、20a1-20a6、20b1-20b12、20c1-20c11、20d1-20d4、20e1-20e4、20f、20g 被覆電線
22 芯線
24 被覆層
25 先端被覆層
26、26a1、26a2 接続部
30、30a-30g シート
32、32a-32g 孔
33 折り返し片
34 曲げ領域部
40 カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の第1被覆電線と、
少なくとも1本の第2被覆電線と、
少なくとも前記第1被覆電線が固定された第1シートと、
を備え、
前記第1シートに第1孔が形成され、
前記第1被覆電線の芯線と前記第2被覆電線の芯線とが接続された接続部が、前記第1孔が形成された領域に位置し、
前記接続部を覆う絶縁カバー部が設けられており、
前記絶縁カバー部は、前記第1シートの一部が折り返されて形成された部分を含み、
前記第1シートには前記第1被覆電線に沿って曲がって延びている部分を含む曲げ領域部が設けられ、
前記曲げ領域部のうち内向きに曲がる部分に前記絶縁カバー部が設けられている、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記接続部において芯線同士が溶接されている、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記接続部が前記第1被覆電線の中間部に設けられている、配線部材。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記接続部が前記第1被覆電線の端部に設けられている、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第1被覆電線の芯線と前記第2被覆電線の芯線とが交差している、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第2被覆電線が前記第1シートに固定されている、配線部材。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第2被覆電線が固定された第2シートをさらに備え、
前記第2シートに第2孔が形成され、
前記第1孔と前記第2孔とが重なるように前記第1シートと前記第2シートとが積層されている、配線部材。
【請求項8】
請求項に記載の配線部材であって、
前記第1シートと前記第2シートとが前記接続部の位置から相互に交差する方向に延びている、配線部材。
【請求項9】
請求項に記載の配線部材であって、
前記接続部が複数設けられ、
前記複数の接続部が階段状に並んでいる、配線部材。
【請求項10】
請求項に記載の配線部材であって、
少なくとも1本の線状伝送部材をさらに備え、
前記線状伝送部材は、前記第1シートに固定されており、前記第1被覆電線及び前記第2被覆電線とは接続されておらず、
前記接続部から一方側に前記第2被覆電線が延び、前記接続部に対して他方側に前記線状伝送部材が配置されている、配線部材。
【請求項11】
請求項に記載の配線部材であって、
前記第1シートと前記第2シートとが前記接続部の位置から同方向に延びている、配線部材。
【請求項12】
請求項から請求項11のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第1シートに前記第1孔が複数形成され、
前記絶縁カバー部は、前記複数の第1孔の間の位置において前記接続部を仕切っている、配線部材。