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特開2024-144646血管アクセスのためのイントロデューサシース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144646
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】血管アクセスのためのイントロデューサシース
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20241003BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20241003BHJP
   A61M 25/098 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61M25/00 630
A61M25/06 550
A61M25/098
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124675
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2022065444の分割
【原出願日】2017-07-05
(31)【優先権主張番号】16178169.5
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】アボウルホーセン ワリド
(72)【発明者】
【氏名】キルヒホッフ フランク
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、患者の血管に対する損傷を減少させるイントロデューサシースを提供することである。
【解決手段】患者の体内に血管アクセスを提供するためのイントロデューサシース(10)は、近位端(12)と遠位端(13)とを有する管状ボディ(11)を備え、遠位端(13)が、患者の血管(50)内に挿入されて、医療機器(100)を近位端(12)から管状ボディ(11)を通して遠位端(13)から患者の血管(50)内に挿入できるように構成される。管状ボディ(11)は、リコイル部(31)を備え、当該リコイル部(31)の半径方向の圧縮性は、当該リコイル部(31)に対して遠位である、管状ボディ(11)の少なくとも一部の半径方向の圧縮性よりも高い。これにより、患者の血管(50)および周囲の組織(51)が穿刺部位(52)でリコイル可能になり、患者にとって、例えば、傷の治癒などに関して、好都合である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内に血管アクセスを提供するためのイントロデューサシース(10)であって、
近位端(12)と遠位端(13)とを有する管状ボディ(11)を備え、
前記遠位端(13)が、患者の血管内に挿入されて、医療機器(100)を前記近位端(12)から前記管状ボディ(11)を通して前記遠位端(13)から前記患者の血管内に挿入できるように構成され、
前記管状ボディ(11)は、リコイル部(31)を備え、前記リコイル部(31)の半径方向の圧縮性は、前記リコイル部(31)に対して遠位である、前記管状ボディ(11)の少なくとも一部の半径方向の圧縮性よりも高い、イントロデューサシース。
【請求項2】
請求項1に記載のイントロデューサシースであって、前記リコイル部(31)は、前記管状ボディ(11)の前記遠位端(13)よりも前記近位端(12)の近くに配置される、イントロデューサシース。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイントロデューサシースであって、
前記リコイル部(31)は近位端(32)と遠位端(33)とを有し、
前記リコイル部(31)の前記遠位端(33)は、前記管状ボディ(11)の前記遠位端(13)から離間し、前記リコイル部(31)の前記近位端(32)は、前記管状ボディ(11)の前記近位端(12)から離間し、前記リコイル部(31)は、前記患者の血管の穿刺部位の領域に留置されるように構成される前記管状ボディ(11)の領域においてのみ、前記管状ボディ(11)の長手方向に延びることが好ましい、イントロデューサシース。
【請求項4】
請求項1または2に記載のイントロデューサシースであって、前記リコイル部(31)は、前記管状ボディ(11)の前記近位端(12)から前記管状ボディ(11)の前記遠位端(13)に向かって延びる、イントロデューサシース。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のイントロデューサシースであって、前記リコイル部(31)は、近位端(32)と遠位端(33)とを有し、前記近位端(32)および前記遠位端(33)の少なくとも1つが放射線不透過物質でマークされる、イントロデューサシース。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のイントロデューサシースであって、前記リコイル部(31)は、前記管状ボディ(11)の周囲を均一に前記管状ボディ(11)の円周方向に延びる、イントロデューサシース。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のイントロデューサシースであって、前記リコイル部(31)は、前記リコイル部(31)と遠位方向に隣接する、前記管状ボディ(11)の一部の壁厚(D)より薄い壁厚(d)を有する、イントロデューサシース。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のイントロデューサシースであって、前記リコイル部(31)は、前記管状ボディ(11)のリコイル部以外の部分の壁厚(D)より薄い壁厚(d)を有する、イントロデューサシース。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のイントロデューサシースであって、前記リコイル部(31)は、0.3mm以下、好ましくは0.2mm未満、さらに好ましくは0.15mm未満、より一層好ましくは0.1mm未満の壁厚(d)を有する、イントロデューサシース。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のイントロデューサシースであって、前記リコイル部(31)は、前記管状ボディ(11)の前記リコイル部以外の部分と同じ材料から成る、イントロデューサシース。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか1項に記載のイントロデューサシースであって、前記リコイル部(31)は、前記管状ボディ(11)の前記リコイル部以外の部分の壁厚とほぼ同じである壁厚を有する、イントロデューサシース。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のイントロデューサシースであって、前記リコイル部(31)は、前記管状ボディ(11)の前記リコイル部以外の部分の材料の剛性よりも低い剛性を有する材料から作られる、イントロデューサシース。
【請求項13】
イントロデューサセットであって、
請求項1から12のいずれか1項に記載のイントロデューサシースと、医療機器(100,101)とを備え、
前記イントロデューサシース(10)は、前記医療機器(100,101)を患者の血管(50)に導入するよう構成され、
前記医療機器は、カテーテル(100)と、好ましくは、前記カテーテル(101)の遠位端に配置される血管内血液ポンプ(101)とを備える、イントロデューサセット。
【請求項14】
患者の体内に血管アクセスを提供する方法であって、
穿刺部位(52)を通って患者の血管(50)内にイントロデューサシース(10)を留置するステップを含み、
前記イントロデューサシース(10)は、近位端(12)と遠位端(13)とを有する管状ボディ(11)を備え、
前記遠位端(13)が、前記患者の血管(50)内に挿入されて、医療機器(100)を前記近位端(12)から前記管状ボディ(11)を通して前記遠位端(13)から前記患者の血管(50)内に挿入できるように構成され、
前記管状ボディ(11)は、リコイル部(31)を備え、前記リコイル部(31)の半径方向の圧縮性は、前記リコイル部(31)に対して遠位である、前記管状ボディ(11)の少なくとも一部の半径方向の圧縮性よりも高く、
前記方法は、前記リコイル部(31)が前記穿刺部位(52)を横切って延びるように、前記患者の血管(50)内に前記イントロデューサシース(10)を留置するステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記医療機器(101)または拡張器(20)により、前記穿刺部位(52)を拡張させるステップをさらに含み、
前記医療機器(101)または前記拡張器(20)の最大径部分が前記イントロデューサシース(10)から後退した後、または、前記イントロデューサシース(10)を通って前進し、前記穿刺部位(50)を通過した後、前記イントロデューサシース(10)を前記患者の血管(50)に挿入した状態で、前記穿刺部位(52)における組織を少なくとも部分的にリコイル可能にする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体内に血管アクセスを提供するためのイントロデューサシースに関する。
【背景技術】
【0002】
長期間の血管アクセスは、頻繁な透析治療、化学療法、または心室補助装置の使用を必要とする患者のための、透析を含むいくつかの医療的状況で用いられる一般的な医療処置である。患者の必要性に応じて、異なる装置および異なる方法が用いられる。心室補助装置を必要とする患者の長期間の血管アクセスは、開胸手術および直接的な心臓血管アクセスを介することが一般的である。
【0003】
近年、トラウマ的な開胸手術を避けるために、末梢血管を使用して心臓血管システムにアクセスする動きがある。中枢心臓血管ではなく、末梢血管を使用する動きは、特に末梢血管での使用用途に設計された、多くの具体的なデバイスおよびツールの開発に伴うものである。より大きなデバイスが導入されると、より大きなイントロデューサシースが必要になる。血管イントロデューサは、末梢血管アクセスを可能にするために開発された最も一般的なデバイスである。血管へのアクセスを提供するために、イントロデューサシースは、通常、例えば、拡張器の助けを得て穿刺部位で血管に直接穿刺される。
【0004】
患者の体内に血管アクセスを提供するイントロデューサシースは、通常、遠位端と近位端とを有する管状ボディを備え、遠位端が、患者の血管内に挿入されて、医療機器を近位端から管状ボディを通して遠位端から患者の血管内に挿入できるように構成される。「近位」という用語は、医師などの使用者に向かう方向を指し、「遠位」という用語は、使用者から離れる方向を指すことが理解される。
【0005】
イントロデューサシースの直径は、血管アクセスを設ける際の制限要因である。一方で、外径は、アクセスしようとする患者および血管により限定される。大きすぎる直径を有するイントロデューサシースは、血管に導入することができない、または、患者を傷つけ大量出血につながる可能性がある。通常、イントロデューサの直径が大きくなると、患者の合併症の危険がさらに高まる。したがって、特にシースの直径が比較的大きい場合、イントロデューサシースの直径を最小化する必要がある。一方で、イントロデューサシースは、カテーテルまたは血管内血液ポンプが付いたカテーテルなどの医療機器が患者の血管内を通過できる最小内径を設けなくてはならない。例えば、14フレンチの寸法を有する医療機器は、16フレンチまたは17フレンチの寸法のイントロデューサシースを必要とする。特に、直径が大きいイントロデューサシースは、穿刺部位での血管および周囲の組織の開口部を拡張させる。
【0006】
血管組織は、穿刺されたときリコイルする性質がある、つまり、少なくとも一部が、元の形状に戻りやすい性質がある。長期間、血管組織が引き伸ばされた状態が続くと、このリコイルの性質は少なくなる。通常、血管組織は引き伸ばされた時間に応じて、普通約2から3フレンチ、一定程度リコイルする。さらに、穿刺直径が大きいと、より大きいリコイルが認められる。したがって、より大きい直径のイントロデューサを使用した場合、組織のリコイルは、小さいイントロデューサを使用したときよりも大きくなる。特に、長期間の使用では、穿刺部位において組織がリコイルしない性質があり、これは、出血や、閉鎖されるべき比較的大きい傷につながることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、特に穿刺部位で、患者の血管に対する損傷を減少させるイントロデューサシースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項で定義されるイントロデューサシースおよび方法による、本発明によって実現される。本発明の好ましい実施形態、および、さらなる発展は、独立請求項に従属する従属請求項により特定される。
【0009】
本発明によれば、イントロデューサシースの管状ボディは、リコイル部を備え、当該リコイル部の半径方向の圧縮性は、リコイル部に対して遠位である、管状ボディの少なくとも一部の半径方向の圧縮性よりも高い、好ましくは、管状ボディのリコイル部以外の部分の半径方向の圧縮性よりも高い。半径方向の圧縮性とは、半径方向に圧縮される管状ボディの性能を指し、半径方向の圧縮性が低いことは、「堅い」性質と関連するのに対し、半径方向の圧縮性が高いことは、「柔軟」な性質と関連する。患者の血管にイントロデューサシースを留置する際に、リコイル部は、穿刺部位を横切って延びるように配置される。この構成にはいくつかの利点がある。管状ボディは、穿刺部位の領域に留置されるリコイル部を有するため、周囲の皮膚および血管組織をリコイルさせることができる、つまり、少なくとも一部が元の形状に戻る。これはリコイル部の半径方向の圧縮性が高いことにより実現される。したがって、穿刺部位における開口部は、少なくとも部分的に閉鎖することができ、これにより穿刺部位の治癒を高め、出血の可能性を少なくし、さらに患者の血管への損傷を減少させる。さらに、管状ボディの遠位端は、通常の方法で患者の血管内に挿入されるのに十分な固さである。
【0010】
リコイル部は、穿刺部位における血管の損傷を減少させることに加え、出血のリスクを減少させることができる。リコイル部の半径方向の圧縮性が高められることにより、管状ボディはリコイル部の領域で収縮される。したがって、リコイル部に対して遠位である一部は、半径方向に圧縮しないため、血管から部分的に後退されるとき、血管の内壁に作用し、血管の開口部をシールする、プラグのような効果が得られる。同時に、リコイル部は、患者の血管内でイントロデューサシースを支持することを助けるアンカー(anchor)として作用してもよい。リコイル部の遠位端が、穿刺部位において血管内側から組織に対して位置する円周の段差またはひだとして形成されると、これらの効果は高められる。リコイル部の近位端は、イントロデューサシースを挿入しやすくするために滑らかであってよい、または、段差を設けてもよい。
【0011】
さらに、リコイル部は、イントロデューサシースが留置されるとき、外科医や循環器専門医などの医師が、管状ボディの近位部分、つまり、患者の体外に位置する管状ボディの実質的に一部の枢動を可能にする、柔軟なピボット点を備える。これにより、例えば、スペースがほとんどない場合でも、使用中の柔軟性が高まり、外科医は管状ボディの近位端を異なる方向へ移動させることができ、つまり、リコイル部を中心として管状ボディの近位端を枢動させることにより挿入方向を選択することができる。
【0012】
本発明のイントロデューサシースにより、穿刺部位のリコイルが可能になる、つまり、穿刺部位において開口部の収縮が可能になる。例えば、イントロデューサシースを通ってまたは拡張器により挿入される医療機器により穿刺部位が拡張されると、医療機器または拡張器の最大径部分がイントロデューサシースから後退した後、または、イントロデューサシースを通って穿刺部位の先へ前進した後、イントロデューサシースを患者の血管に挿入した状態で、穿刺部位における組織が少なくとも部分的にリコイル可能になる。この場合も、リコイル部を取り囲む組織は、イントロデューサシースが定位置に留置されたままであってもリコイルすることがある。組織は、例えば、2から3フレンチ、リコイルすることがある。リコイル部を備えない、一般的なイントロデューサシースにおいて、イントロデューサシースが挿入されている限り、穿刺部位において組織はリコイルすることができない。イントロデューサシースが患者の血管に挿入されたままより長くとどまると、イントロデューサシースが抜去された後に、組織のリコイルする性質が失われるリスクが増大する。
【0013】
リコイル部は、管状ボディの遠位端よりも近位端の近くに配置されることが好ましい。通常、イントロデューサシースは、穿刺部位が管状ボディの近位部分に位置するように患者の血管に留置される。リコイル部は、穿刺部位の領域に留置されることから、リコイル部が管状ボディの遠位端よりも近位端に近ければ都合がよい。しかし、別の実施形態において、具体的には、患者の血管内に挿入される管状ボディの一部が、患者の体外にとどまる管状ボディの一部よりも短い場合、リコイル部は、管状ボディの近位端よりも遠位端の近くに配置されてもよい。さらに別の実施形態において、リコイル部は、両端から同等に離間してもよく、つまり、管状ボディの長さに沿って、管状ボディの近位端と遠位端とのほぼ中間に配置されてもよい。
【0014】
一実施形態によると、リコイル部は、遠位端と近位端とを有し、リコイル部の遠位端は、管状ボディの遠位端から離間し、リコイル部の近位端は、管状ボディの近位端から離間する。つまり、リコイル部は管状ボディの両端から離間する。結果として、リコイル部に対して遠位である管状ボディの一部、および、リコイル部に対して近位である管状ボディの一部の両方は、半径方向の圧縮性が、リコイル部の半径方向の圧縮性よりも低い。言い換えると、管状ボディのより堅いまたはより剛性が高い部分で取り囲まれた半径方向の圧縮性に対して、リコイル部は柔軟な部分を形成する。リコイル部は、患者の血管の穿刺部位の領域に留置されるように構成された管状ボディの領域内のみに、管状ボディの長手方向に延びることが好ましい。
【0015】
別の実施形態において、リコイル部は、管状ボディの近位端から管状ボディの遠位端に向かって延びる。上述した実施形態とは対照的に、リコイル部は、代替的に管状ボディの近位端に直接配置されてもよい。しかし、本実施形態でも同様に、リコイル部は穿刺部位の領域に位置するように管状ボディの長さに沿って配置される。リコイル部を長くすると、医師が挿入深さをより柔軟に選択できる。管状ボディの近位端は、患者の血管内に挿入されないため、近位端へ向かって延びる管状ボディの一部は、リコイル部のように半径方向の圧縮性を有する、または、管状ボディの遠位部分のように、より低い半径方向の圧縮性を有してもよい。
【0016】
イントロデューサシースの位置決めを助けるために、リコイル部の近位端および遠位端のうち少なくとも1つ、好ましくは、それらの両端に、放射線不透過物質で印を付けてもよい。こうすることにより、医師がX線撮影でイントロデューサシースの位置を観察することができる。放射線不透過物質を、例えば、金属リングまたは添加剤の形で、管状ボディの材料に加えてもよい。イントロデューサシースの正しい留置に役立ち得る別の特徴は、圧力検知手段の形で設けてもよい。例えば、管状ボディの近位端からリコイル部の遠位端に延び、そこで管状ボディを終了する第1ルーメンを設けてもよい。したがって、リコイル部の遠位端が血管に入ると、血液がルーメンに入り、外部から検出される。好ましくは、第2ルーメンが管状ボディの近位端からリコイル部の近位端に延び、そこで管状ボディを終了する。したがって、リコイル部の遠位端と近位端との圧力差が測定される。圧力が同じまたはほぼ同じ場合、両方のルーメンが血管と流体連通するため、イントロデューサシースは、血管の相当遠くに挿入される。リコイル部の遠位端で終了する第1ルーメンが血圧を示すものの、リコイル部の近位端で終了する第2ルーメンが血圧を示さない場合、リコイル部は穿刺部位の領域に配置された状態で、イントロデューサシースが正しく留置される。
【0017】
リコイル部は、管状ボディの周囲を均一に、管状ボディの円周方向に延びる、つまり、管状ボディの円周の周りを完全に途切れずに延びることが都合がよい。しかし、リコイル部は、高い半径方向の圧縮性が確保される限り、管状ボディの円周方向に沿う方向に非均一に形成されてもよい。例えば、リコイル部は、管状ボディの円周の周りに交互に配置される、第1部分と第2部分とを備えてもよく、第1部分は、高い半径方向の圧縮性を備え、第2部分は、管状ボディのリコイル部以外の部分とほぼ同じ性質を有する。結果として、リコイル部が半径方向に圧縮されるとき、管状ボディが非均一な形状になり、具体的には、管状ボディが非円形断面になる。さらに、第2部分は管状ボディの軸方向の剛性を備えるが、これは、特に患者の血管内にイントロデューサシースが挿入される間、好都合である。あらゆる数が想定されるが、例えば、2つの第1部分と2つの第2部分があってもよい。第1端部の第2部分は、具体的には管状ボディの円周方向に対して、同一のサイズまたは異なるサイズを有してもよい。
【0018】
リコイル部の半径方向の圧縮性は、リコイル部に対して遠位である、管状ボディの少なくとも一部の半径方向の圧縮性よりも高く、形状、具体的には、管状ボディの壁厚と管状ボディの材料との一方または両方を変更させることにより実現される。
【0019】
一実施形態において、リコイル部は、リコイル部と遠位方向に隣接する管状ボディの一部の壁厚よりも薄い壁厚を有する。好ましくは、リコイル部は、管状ボディのリコイル部以外の部分の壁厚より薄い壁厚を有する。管状ボディのリコイル部は、0.3mm以下の壁厚、好ましくは、0.2mm以下、より好ましくは、0.15mm以下、より一層好ましくは、0.1mm以下の壁厚を有してもよい。本実施形態において、具体的には、リコイル部は、管状ボディのリコイル部以外の部分、または、リコイル部に対して遠位である、管状ボディの少なくとも一部と同じ材料から作られる、または、構成されることが好ましい。
【0020】
別の実施形態によると、リコイル部は、管状ボディのリコイル部以外の部分の壁厚とほぼ同じの壁厚を有する。そして、リコイル部は、管状ボディのリコイル部以外の部分の材料の剛性、または、リコイル部に対して遠位である、管状ボディの少なくとも一部の材料の剛性よりも低い剛性を有する材料から形成されることが好ましい。
【0021】
イントロデューサシースは、患者の血管内に医療機器を導入するために構成されてもよい。医療機器は、例えば、カテーテルを備え、カテーテルの遠位端に配置される血管内血液ポンプを備えることが好ましい。管状ボディは、約10cmから約30cmの長さ、好ましくは、約20cmの長さを有してもよい。管状ボディの直径は、約12フレンチから約18フレンチの範囲、好ましくは、14フレンチであってもよい。管状ボディは、ポリエチレンから作られることが好ましい。代わりにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの他の好ましい材料が選択されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下の好ましい実施形態の詳細な記載と同様に、上述した発明の概要は、添付される図面と併せて読むとよく理解される。本開示を例示する目的で、図面を参照する。しかし、本開示の範囲は、図面に開示される特定の実施形態に限定されるものではない。
図1A】組み立てた構成のイントロデューサシースと拡張器とを備えるイントロデューサシースセットを示す図である。
図1B図1Aのイントロデューサシースと拡張器とが互いに分離している図である。
図2A】組み立てた構成のイントロデューサシースと拡張器とを備える、別の実施形態によるイントロデューサシースセットを示す図である。
図2B図2Aのイントロデューサシースと拡張器とが互いに分離している図である。
図3】イントロデューサシースの実施形態を示す図である。
図4】イントロデューサシースの別の実施形態を示す図である。
図5】イントロデューサシースのさらに別の実施形態を示す図である。
図6】イントロデューサシースのさらに別の実施形態を示す図である。
図7】イントロデューサシースの別の実施形態の詳細を示す図である。
図8】イントロデューサシースの別の実施形態の詳細を示す図である。
図9】イントロデューサシースのさらに別の実施形態の詳細を示す図である。
図10】別の実施形態による管状シースの斜視図を示す図である。
図11】患者の血管内に挿入されるイントロデューサシースを示す図である。
図12】イントロデューサシースの応用例を示す図である。
図13】イントロデューサシースの別の応用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1Aから図2Bを参照すると、イントロデューサセット1の異なる図が示される。イントロデューサセット1は、イントロデューサシース10と拡張器20とを備え、これらを組み立てたものが図1A図2Aそれぞれに示され、分離されたものが図1B図2Bにそれぞれ示される。イントロデューサシース10は、近位端12と遠位端13とを有する、管状ボディ11を備える。可撓性膜18を有する止血弁14は、近位端12に設けられる。しかし、止血弁は、異なって構成されてもよく、または、いくつかの応用例において、止血弁は省略されてもよいことが理解される。止血弁14の例示的な実施形態において、2つのハンドル15、16は、イントロデューサシース10を操作するために設けられ、および必要時または所望時にイントロデューサシース10を分離するために、具体的には、止血弁14を分割するために設けられる。長手方向の切り欠き17が、止血弁14に設けられ、破断予定線を形成する。以下により詳細に示されるように、弁14と管状ボディ11に通して延びる、ルーメン34、35が設けられる。
【0024】
図示の拡張器20は、例示的な拡張器である。本発明のイントロデューサシース、具体的には、バルーンが付いていない拡張器と組み合わせて、他の適切な拡張器が使用されてもよいことが理解される。拡張器20は、近位部22と遠位部23とを有するボディ21を有する。遠位部23は、患者の血管内への挿入を容易にするテーパ端部24を備える。図1Aおよび図1Bの実施形態において、ポート26、28が、近位部22に設けられる。ポート28は、その中を通過するガイドワイヤ(図示せず)を受け入れるように構成される内部ルーメンに接続される。つまり、拡張器20は、例えばセルジンガー法(Seldinger technique)を用いて患者の血管内に挿入されたガイドワイヤ上に留置することができる。バルーン25は、テーパ端部24とボディ21の遠位の大半部分を除き、拡張器20のボディ21の上に配置され、その大部分に延びる。バルーン25は、ボディ21の近位部22にあるルーメン27を介してバルーン25に接続されるポート26を通じて膨張し、収縮することができる。バルーン25は、ナイロンなどのノンコンプライアント(non-compliant)材料から作られる。
【0025】
拡張器20のバルーン25は、患者の血管内に挿入される間、イントロデューサシース10を支持するために利用される。拡張器20は、収縮したバルーン25とともにイントロデューサシース10内に挿入される。つまり、バルーンは、手術前に予め装着される。空気などの流体が、ポート26を介してバルーン25に充填され、バルーン25がイントロデューサシース10の内面と接触するように、バルーン25を膨張させる。それにより、拡張器20とイントロデューサシース10との間の摩擦は増加し、患者の血管内に挿入される間、イントロデューサシース10が安定し、イントロデューサシース10の座屈を防ぐ。アセンブリが患者の血管内に挿入された後、拡張器20が後退されるとき、バルーン25は、収縮して、拡張器20とイントロデューサシース10との間の表面摩擦が減少する。そして、拡張器20は、実質的には干渉なく、イントロデューサシース10から後退させることができる。拡張器20およびイントロデューサシース10は、自由に動くことができる。上述するように、また、図2Aおよび2Bに示すように、バルーンが付いていない拡張器20を代替的に設けることができ、バルーンがなくても、図1Aおよび図1Bに示す拡張器20と同等または同様に構成される。イントロデューサシース10は、常にバルーンなどの手段により支持されることを常に必要としないよう十分に固くしてもよいことが理解される。
【0026】
図3から図9は、リコイル部31を有する管状ボディ11を備えるイントロデューサシース10の異なる実施形態を示し、リコイル部31は、管状ボディ11のリコイル部以外の部分と比べて、半径方向の圧縮性が高い部分である。あるいは、リコイル部31は、
リコイル部31に対して遠位である管状ボディ11の少なくとも一部と比べて、半径方向の圧縮性が高い部分である。図3から図9はそれぞれ、近位端12と遠位端13とを有する管状ボディ11を有するイントロデューサシース10を示す。止血弁14は、管状ボディ11の近位端12で概略的に示される。上で説明するように、止血弁14は、省略することができる、または、出血を防ぐ他の手段を用いることができる。
【0027】
図3に示す実施形態において、リコイル部31は、壁厚dを有する管状ボディ11の一部から形成され、壁厚dは管状ボディ11のリコイル部以外の部分の壁厚Dよりも小さい。これにより、リコイル部31の半径方向の圧縮性が高まる。壁厚dは、0.3mm以下であってよい。管状ボディ11の壁厚の変更は、管状ボディ11の外径を変更させることにより実現されることが好ましい。具体的には、内径は、管状ボディ11の長さに沿って一定であるが、管状ボディ11の外径はリコイル部31で小さくしてもよい。代替的に、外径を一定のまま、内径はリコイル部31で大きくしてもよいことが理解される。また、管状ボディ11の壁厚の変更は、それらの組み合わせであってもよい。本実施形態において、管状ボディ11は、例えば1つの材料の単層から作られる、単一材料から一体形成される。
【0028】
リコイル部31は、管状ボディ11の近位端12から離間する近位端32と、管状ボディ11の遠位端13から離間する遠位端33を有する。これは、イントロデューサシース10の管状ボディ11は、全体的に比較的剛性が高く扱いやすいことを意味する。血管の穿刺部位の領域に配置される管状ボディ11の部位であるリコイル部31のみ剛性が低く(つまり、半径方向の圧縮性が高い)穿刺部位において組織がリコイル可能になる、つまり、少なくとも、部分的に元の構造に戻ることが可能になる。
【0029】
図4に示す実施形態において、管状ボディ11の壁厚は、管状ボディ11の長さに沿って実質的に一定である。しかし、リコイル部31に半径方向の高い圧縮性を持たせるために、リコイル部31は、管状ボディ11のリコイル部以外の部分の材料の剛性よりも低い剛性を有する材料から作られる。図3図4の実施形態は、組み合わされてもよく、つまり、リコイル部31は、異なる壁厚から形成されてもよく、具体的には、管状ボディ11のリコイル部以外の部分と比べて、薄い壁厚、異なる材料、具体的には、より柔軟な材料から形成されてもよいことが理解される。
【0030】
図5の実施形態において、リコイル部31は、管状ボディ11の近位端12と遠位端13との離間する領域のみに延在するわけではない。リコイル部31は、管状ボディ11の近位端12から、管状ボディ11の遠位端13に向かって延在する。つまり、リコイル部31の近位端32は、管状ボディ11の近位端12と合致するが、リコイル部31の遠位端33は、管状ボディ11の遠位端13から離間する。患者の体外のイントロデューサシース10の一部の剛性は、血管内に留置される部分の剛性と比べると重要性が低い。リコイル部31を長くすると、医師は挿入深さをより柔軟に選択しやすくなる。本実施形態において、図3の実施形態と同様に、リコイル部31は、薄い壁厚を有する管状ボディ11の一部から形成される。代替的に、または追加的に、管状ボディ11は、図4の実施形態のように、管状ボディ11よりも圧縮性が高い、異なるかつ柔軟な材料から作られるリコイル部31で一定の壁厚を有してもよいことが理解される。
【0031】
図6に示す実施形態において、リコイル部31は、縮径された内径を有する管状ボディ11の一部を形成する。つまり、前に述べた実施形態とは異なり、管状ボディ11の内径は、その長さに沿って一定ではない。さらに、示されるすべての実施形態において、管状シース11の内径は、その長さに沿って一定である必要はないことが理解される。リコイル部31は、例えば、図3または図4のいずれかの実施形態により形成されてもよく、つまり、半径方向の圧縮性を高めることは、管状ボディ11の形状と材料とのいずれかまたは両方を変更させることにより実現されてもよい。
【0032】
図7に示す実施形態のイントロデューサシース10において、図1に関連して簡潔に説明された、第1ルーメン34および第2ルーメン35が設けられる。第1ルーメン34は、止血弁14などのイントロデューサシース10の近位端から管状ボディ11へ、リコイル部31の近位端32を通って延び、実質的にリコイル部31の遠位端33で管状ボディ11を終了する。ルーメン34は、例えば、適切な圧力センサなどの手段により、圧力を感知するために用いられる。イントロデューサシース10が十分に深く挿入されリコイル部31の遠位端33が患者の血管と流体連通して留置されると、血液がルーメン34に入る。第2ルーメン35は、第1ルーメン34と類似しているが、実質的にリコイル部31の近位端32で管状ボディ11を終了する。リコイル部31の近位端32と遠位端33との両端が患者の血管内に配置されると、実質的に圧力差は検知されない。近位端32が患者の体外にあり、遠位端33が患者の血管内にあるとき、近位端32と遠位端33との圧力差が検知される。これは、イントロデューサシース10が正しい位置に配置されていることを示す。
【0033】
図8は、特に図3の実施形態に類似する実施形態を示す。しかし、リコイル部31は、その遠位端33において、管状ボディ11の遠位部にスムーズに移行しないものの、段差またはひだ形状などの急傾斜の移行部を形成する。これは、イントロデューサシース10が患者の血管から後退することを防止するのに役立つが、その段差によりイントロデューサシース10の遠位方向への移動のためのストップが形成されるためである。近位端32においてリコイル部31の移行はスムーズであるため、患者の血管にイントロデューサシース10が挿入しやすくなる。しかし、近位端32と遠位端33の両方が段差として形成されてよいことが理解される。
【0034】
別の実施形態が図9に示され、これは、上記の実施形態と実質的に類似し、記載されたあらゆる実施形態と組み合わせてもよい。医師が患者の血管に正しくイントロデューサシース10を配置することを助けるために、つまり、穿刺部位の領域でリコイル部31を用いて、リコイル部31の近位端32と遠位端33は、管状ボディ11の材料内で金属リング36、37などの放射線不透過物質または放射線不透過性添加剤を用いてマークされてもよい。例えば、リコイル部31の領域内の管状ボディ11の壁に放射線不透過物質を提供することにより、端部32、33のうち1つだけが放射線不透過物質でマークされる、または、リコイル部31の全体がマークされてもよいことが理解される。
【0035】
図10は、別の実施形態によるイントロデューサシースの管状ボディ11の斜視図を示す図である。他の実施形態とは異なり、リコイル部31は、管状ボディ11の円周の周りに均一に形成されていないが、別々の部分31a、31bを備える。部分31a、31bは、例えば、2つの部分31aと2つの部分31bを、交互に配置されてもよい。部分31aと31bは同じサイズまたは異なるサイズにしてもよい。例えば、部分31aは、管状ボディ11のリコイル部以外の部分と同一のまたは実質的に同一の半径方向の圧縮性を有してもよく、特に軸方向で、管状ボディ11の剛性および安定性が得られる。部分31bは、例えば、管状ボディ11のリコイル部以外の部分と比べて、この領域により薄い壁またはより柔らかい材料を用いることにより、半径方向の高い圧縮性を有してもよい。結果として、リコイル部31が非円形に圧縮される。
【0036】
図11を参照して、患者の血管50に挿入されたイントロデューサシース10が概略的に示される。管状ボディ11の遠位端13は、血管50内に配置され、近位端12は、患者の体外にとどまらせる。イントロデューサシース10は、穿刺部位52および皮膚組織などの他の組織51を通じて血管50内に挿入される。リコイル部31により、穿刺部位52における組織51および血管50の開口部のリコイルが可能になり、つまり、管状ボディ11は、周囲の組織によって加えられる力により、リコイル部31の領域で収縮される。管状ボディ11の縮小された形状がプラグ効果をもたらすため、組織51のリコイルおよびリコイル部31で生じる管状ボディ11の縮小もまた出血の危険性を減少させる。さらに、図11の矢印で示されるように、リコイル部31は、リコイル部31に対して近位であるイントロデューサシース10の一部が、その周りをある程度枢動できる柔軟なピボット点を提供し、これにより、医師はより柔軟に、血管内血液ポンプを有するカテーテルなどの医療機器がイントロデューサシース10を通って血管50内に挿入される挿入方向を選択することができる。
【0037】
気圧に対してリコイル部31内部で血圧がより高くなるため、リコイル部31は円形またはほぼ円形を保ち、穿刺部位52に当接する。または、具体的に図10の実施形態を考慮すると、リコイル部31は、楕円形などの非円形になる、より柔軟な部分およびより固い部分で形成されてもよく、それにより特定の方向へ枢動しやすくしてもよい。図11に示すように、ゴムリングなどのストップ38を設けて、イントロデューサシース10が血管50へ入り込むのを防止してもよい。イントロデューサシース10の位置決めを行いやすくするために、ストップ38をリコイル部31の近位端32に配置することが好都合である。
【0038】
図12および図13を参照すると、イントロデューサシース10の応用例が示される。イントロデューサシース10は、上記に開示された実施形態のいずれか1つに基づいてもよい。それを用いて、血管内血液ポンプ101をカテーテル100により患者の血管を通って患者の心臓内に挿入し、心室補助装置を提供する。血管アクセスは、患者の鼠径部(図12)または患者の胸部(図13)の末梢血管に留置されてもよい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13