(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144684
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】針組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61M5/158 500H
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024126487
(22)【出願日】2024-08-02
(62)【分割の表示】P 2019182707の分割
【原出願日】2019-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(72)【発明者】
【氏名】石倉 弘三
(57)【要約】
【課題】針ハブに対する組み付け易さと組付状態の安定した維持とを、選択的に或いは両立して実現し得る、新規な針組立体を提供すること。
【解決手段】基端側に針ハブ18が設けられた穿刺針16と、針ハブ18に外挿装着されて、穿刺針16が露出する穿刺位置から穿刺針16の針先20を覆う保護位置へ針軸方向で移動可能とされた針先プロテクタ10とを有する針組立体12であって、針先プロテクタ10には、針軸交差方向の撓み変形を許容する少なくとも1つの可撓片68が設けられており、可撓片68は、針ハブ18の一部に対して相互に嵌め合わされて周方向で位置決めされる嵌合部74と、内側面において針軸方向と針軸交差方向の少なくとも一方へ傾斜する内側傾斜部76とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側に針ハブが設けられた穿刺針と、
該針ハブに外挿装着されて、該穿刺針が露出する穿刺位置から該穿刺針の針先を覆う保護位置へ針軸方向で移動可能とされた針先プロテクタとを有する針組立体であって、
前記針先プロテクタには、針軸交差方向の撓み変形を許容する少なくとも1つの可撓片が設けられており、
該可撓片は、前記針ハブの一部に対して相互に嵌め合わされて周方向で位置決めされる嵌合部と、内側面において針軸方向と針軸交差方向の少なくとも一方へ傾斜する内側傾斜部とを備えている針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺針に対して針軸方向に移動することで穿刺針の針先を覆う針先プロテクタを備えた針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液や採血、血液透析などを行う際に用いられる留置針などの穿刺用針体が知られている。穿刺用針体は、例えば、鋭利な針先を有する穿刺針の基端側に針ハブが固定された構造を有している。そして、穿刺用針体が患者の血管などの体内管腔に穿刺されて留置され、針ハブに外部管路が接続されることにより、穿刺用針体の内腔と外部管路とを通じて輸液や採血、血液透析などが実施される。
【0003】
また、穿刺用針体は、使用後の誤穿刺や頻回使用の防止、或いは、廃棄処理の容易化などの目的で、体内管腔から抜去された穿刺針の針先を保護する針先プロテクタと組み合わされて針組立体を構成するものがある。針先プロテクタ及びそれを備える針組立体としては、例えば、特開2017-196060号公報(特許文献1)に開示されている。即ち、特許文献1のプロテクタ付き医療用針によれば、針管を血管等から引き抜く際に、針管がプロテクタに対して基端側へ移動し、患者から抜去された針管がプロテクタの内周へ収容されて、針管の針先が外部に露出しないようにされる。
【0004】
ところで、特許文献1のプロテクタ付き医療用針は、ハブのプロテクタに対する針軸方向の移動を許容するスライド機構を備えている。特許文献1のスライド機構は、プロテクタに設けられた側壁部のスリットが、ハブに設けられた突条に対して、針軸方向にスライド可能に嵌合することによって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構造では、ハブに対してプロテクタを相対回転させることで、ハブとプロテクタを組み付ける。その際、側壁部が可撓性を有するため、ハブの回転により突条と側壁部とが当接することで、側壁部が針軸交差方向に撓む。その後、突条が側壁部に設けられたスリットに差し入れられることにより、ハブとプロテクタの組み付けが完了する。
【0007】
ところが、本発明者が更に詳細に検討したところ、特許文献1では、プロテクタをハブに対して相対回転させてハブに組み付ける際に、側壁部が突条と全体的に当接しながら撓むため、側壁部が損傷するおそれがあった。また、ハブとプロテクタの組み付け作業に大きな力が必要になるなど、組み付けやすさが考慮されたものではなかった。一方、ハブとプロテクタの組付け状態は、ハブとプロテクタの相対回転によって解除され得ることから、ハブとプロテクタをより相対回転し難くすることで、ハブとプロテクタの組み付けが解除され難くすることも求められる場合があった。
【0008】
本発明の解決課題は、針ハブに対する組み付け易さと、針ハブに対する組付状態の安定した維持とを、選択的に或いは両立して実現し得る、新規な針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0010】
第1の態様は、基端側に針ハブが設けられた穿刺針と、該針ハブに外挿装着されて、該穿刺針が露出する穿刺位置から該穿刺針の針先を覆う保護位置へ針軸方向で移動可能とされた針先プロテクタとを有する針組立体であって、前記針先プロテクタには、針軸交差方向の撓み変形を許容する少なくとも1つの可撓片が設けられており、該可撓片は、前記針ハブの一部に対して相互に嵌め合わされて周方向で位置決めされる嵌合部と、内側面において針軸方向と針軸交差方向の少なくとも一方へ傾斜する内側傾斜部とを備えているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、例えば、可撓片に針軸方向に傾斜する内側傾斜部を設けることによって、針先プロテクタと針ハブの組み付けにおいて針ハブが可撓片を外周側へ押し広げながら針先プロテクタに対して相対回転する場合に、針ハブと可撓片との接触面積や可撓片の断面積を減らすことができる。その結果、針先プロテクタと針ハブとの組み付けにおいて、針先プロテクタと針ハブを相対回転させるために必要とされる力が小さくなり、組み付けやすさの向上が図られる。
【0012】
また、例えば、可撓片に針軸交差方向である周方向に傾斜する内側傾斜部を設けて、嵌合部に向かって可撓片を薄肉とすれば、針先プロテクタを針ハブに対して相対回転させる際の針ハブと可撓片の当接圧が低減されて、針先プロテクタと針ハブを相対回転させるために必要な力が小さくなる。
【0013】
また、例えば、可撓片に針軸交差方向である周方向に傾斜する内側傾斜部を設けて、嵌合部に向かって可撓片を厚肉とすれば、嵌合部における針ハブと可撓片の嵌合が解除され難くなる。その結果、針ハブと針先プロテクタの組み付け状態からの相対回転が防止されることから、針ハブの針先プロテクタからの抜けなどが防止されて、針先プロテクタと針ハブの組み付け状態が安定して維持される。
【0014】
以上のように、第1の態様に係る構造によれば、針ハブに対する組み付け易さと、針先プロテクタと針ハブの組付状態の維持とを、選択的に或いは両立して実現することができる。
【0015】
第2の態様は、第1の態様に記載された針組立体において、前記可撓片は、前記針先プロテクタの前記保護位置において前記針ハブと針軸方向で当接して該針ハブの該針先プロテクタに対する基端側への抜けを防止する当接部を備えているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、可撓片に設けられた当接部が針ハブに当接することによって、針ハブの針先プロテクタから基端側への抜けを防止することができる。
【0017】
第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された針組立体において、前記少なくとも1つの可撓片は、前記内側面に突出する突出部を備えており、前記傾斜部が該突出部を含んで構成されているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、突出部が設けられた部分において可撓片の強度を高めることができる。それ故、突出部の形状、大きさ、形成位置、形成数などによって、可撓片の強度や針ハブと針先プロテクタの相対回転時における針ハブと可撓片の当接態様などを大きな自由度で調節することができる。
【0019】
第4の態様は、第1~第3の何れか1つの態様に記載された針組立体において、前記針先プロテクタの基端側には、前記可撓片として少なくとも1つの第1可撓片と少なくとも1つの第2可撓片が形成されており、該第1可撓片が針軸方向で基端側へ突出していると共に、該第2可撓片が針軸方向で先端側へ突出しているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、穿刺針の針先が針先プロテクタで保護された状態において、例えば、第1可撓片によって針先の先端側への再露出を防止すると共に、第2可撓片によって針先の基端側への再露出、換言すれば、針ハブの針先プロテクタに対する基端側への抜けを防止することができる。
【0021】
第5の態様は、第1~第4の何れか1つの態様に記載された針組立体において、前記針先プロテクタが筒状の周壁を備えており、該周壁の軸直角方向の外寸が周方向において異ならされて、外寸が大きい幅広部と外寸が小さい幅狭部との各軸直角方向でそれぞれ対向して各一対の前記可撓片が設けられており、それら各一対の可撓片は互いに形状が異なっているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた針先プロテクタによれば、幅広部と幅狭部の各軸直角方向で対向するように各一対の可撓片が設けられていることにより、例えば、可撓片が針ハブ側に当接して針ハブの針先プロテクタからの抜けや針先の再露出を阻止する際に、可撓片と針ハブ側との係止によって針ハブと針先プロテクタの間に作用する力が周方向でバランスよく作用して、針ハブと針先プロテクタの相対的な傾動が生じ難い。
【0023】
また、幅広部が設けられた軸直角方向で対向する一対の可撓片は、外周側にスペースを設け易く、外周側への変形が許容され易い。一方、幅狭部が設けられた軸直角方向で対向する一対の可撓片は、外周側のスペースが制限されることから、外周側への変形が規制され易い。そこで、各一対の可撓片が互いに異なる形状とされることによって、各可撓片による針ハブの抜け防止作用を、それぞれ有効に得ることができる。
【0024】
ところで、特許文献1の構造では、スリットに差し入れられたハブの一部と、スリットとの接触面積が十分ではなく、ハブとプロテクタとを組み付けた後に相対回転させると、ハブとプロテクタとが外れてしまうおそれがあるにも関わらず、十分な検討がなされていないことも明らかとなった。
【0025】
このような課題を解決するためになされた本発明とは別の発明の1態様は、基端側に針ハブが設けられた穿刺針と、該針ハブに外挿装着されて、該穿刺針が露出する穿刺位置から該穿刺針の針先を覆う保護位置へ針軸方向で移動可能とされた針先プロテクタとを有する針組立体であって、前記針先プロテクタには、針軸交差方向の撓み変形を許容する少なくとも1つの可撓片が設けられており、該可撓片は、前記針ハブの一部に対して相互に嵌め合わされて周方向で位置決めされる嵌合部と、外側面において針軸方向と針軸交差方向の少なくとも一方へ傾斜する外側傾斜部とを備えているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、針ハブと針先プロテクタが組み付けられて、可撓片が針ハブに対して嵌合部において嵌合した状態において、針ハブと可撓片の嵌合部との接触面積が広くなる。その結果、針ハブと針先プロテクタの組み付け状態において、針ハブと針先プロテクタの相対回転が防止されやすくなって、針ハブの針先プロテクタに対する抜けなどが防止される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、針組立体において、針ハブに対する組み付け易さと、針ハブに対する組付状態の安定した維持とを、選択的に或いは両立して実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態としての針組立体を示す斜視図
【
図2】
図1に示す針組立体の縦断面図であって、
図3のII-II断面に相当する図
【
図5】
図1に示す針組立体を構成する針先プロテクタの斜視断面図
【
図6】
図1に示す針組立体において針先プロテクタによる針先の保護状態を示す断面図
【
図7】参考実施形態としての針先プロテクタの斜視断面図
【
図8】本発明の第2の実施形態としての針先プロテクタの斜視断面図
【
図9】参考実施形態としての針先プロテクタの横断面図
【
図10】本発明の第3の実施形態としての針先プロテクタの横断面図
【
図11】参考実施形態としての針先プロテクタの横断面図
【
図12】本発明の第4の実施形態としての針先プロテクタの横断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1~4には、本発明の第1の実施形態としての針先プロテクタ10を備える針組立体12が示されている。針組立体12は、
図2,3に示すように、留置針などの穿刺用針体14が、針先プロテクタ10に対して、後述する穿刺針16の針軸方向で移動可能に挿通された構造を有している。針先プロテクタ10は、少なくとも穿刺用針体14の針先20(後述)を覆うことができる。なお、以下の説明において、原則として、先端側とは穿刺用針体14の後述する針先20側である
図2中の左方を、基端側とは穿刺用針体14の穿刺方向後方となる
図2中の右方を、それぞれ言う。また、原則として、上下方向とは縦方向である
図3中の上下方向を、左右方向とは横方向である
図2中の上下方向を、それぞれ言う。
【0031】
より詳細には、穿刺用針体14は、穿刺針16の基端側に針ハブ18が固定された構造を有している。穿刺針16は、例えばステンレス鋼などの金属で形成されており、一端が鋭利な先細形状を有する針先20とされている。
【0032】
針ハブ18は、全体として略円筒形状とされており、先端に穿刺針16の基端部分が挿入状態で固定されている。これにより、針ハブ18の内腔と穿刺針16の内腔が針軸方向で連通されている。
【0033】
針ハブ18は、先端部分22を備えている。先端部分22は、略円筒形状とされており、穿刺針16の基端部分が先端側から挿入されて固定される針固定部24を有している。針固定部24の先端側には、縦方向の両側へ突出する先端係止部26,26が設けられている。また、針固定部24における先端係止部26,26よりも基端側には、横方向の両側に突出する一対の係止突起28,28が設けられている。係止突起28は、先端側の面が軸直角方向に広がっていると共に、基端側の面が傾斜面とされて基端側に向かって突出高さが小さくなっている。
【0034】
先端部分22は、縦方向の両側へ向けて突出する一対のガイド突条30,30を備えている。ガイド突条30は、略矩形板状とされており、先端係止部26よりも基端側において先端部分22の基端まで直線的に延びている。ガイド突条30は、先端が先端係止部26につながっていると共に、基端が後述する基端部分32につながっている。
【0035】
針ハブ18における先端部分22よりも基端側には、基端部分32が設けられている。基端部分32は、本実施形態において先端部分22と一体形成されている。尤も、基端部分32は、先端部分22とは別体として形成されて、接着等の手段で先端部分22に固定されていても良い。基端部分32は、軸直角方向の外寸が先端部分22よりも大きくされており、それによって針ハブ18は、軸直角方向の外寸が先端側よりも基端側において大きくされている。
【0036】
針ハブ18の基端部分32は、略円筒形状とされた管路接続部34を有している。管路接続部34は、基端部分32の基端側を構成している。管路接続部34は、針ハブ18の先端部分22よりも軸直角方向の外寸が大きくされている。管路接続部34には、基端面に開口する接続穴36が形成されている。接続穴36は、略円形断面を有している。接続穴36は、開口と反対側である先端側に底部38を有している。管路接続部34の内孔は、底部38を軸方向に貫通しており、後述する接続ポート40の内孔に連通されている。接続穴36は、開口側である基端側が、底部38側である先端側よりも大径とされている。接続穴36は、底部38側が基端側である開口端に向かって次第に大径となっており、接続穴36の周壁内面が底部38側においてテーパ筒形状とされている。
【0037】
接続穴36の底部38には、接続ポート40が設けられている。接続ポート40は、筒状とされており、底部38から接続穴36の開口に向かって基端側へ突出している。接続ポート40の内周面は、軸方向で略一定の径寸法を有する円筒面とされている。接続ポート40の外周面は、径寸法が軸方向で基端側へ向かって次第に小さくなっており、先細のテーパ状外周面とされている。接続ポート40は、管路接続部34と別体でも良いが、本実施形態では管路接続部34と一体形成されている。
【0038】
針ハブ18の基端部分32には、一対の腕部42,42が設けられている。腕部42は、管路接続部34の基端部から横方向(
図2中の上下方向)の両側へ延び出していると共に、湾曲して先端側へ向かって延びており、基端部分32に対して所定の隙間を隔てて横方向の両側に設けられている。腕部42,42は、管路接続部34との接続部分が湾曲形状且つ幅狭とされており、外力の作用によって相互に接近する方向への弾性変形が許容されている。また、腕部42,42の先端部には、それぞれフック44が形成されている。
【0039】
基端部分32は、管路接続部34の接続穴36に外部管路46の先端が挿入されて、外部管路46の先端が接続ポート40に外挿状態で取り付けられる。外部管路46は、例えば、合成樹脂などで形成されたチューブとされている。外部管路46は、接続穴36の内周面及び接続ポート40に対して、必要に応じて接着や溶着される。
【0040】
外部管路46が管路接続部34に接続されることにより、基端部分32の両側に先端部分22と外部管路46が接続されて、穿刺針16の内腔と針ハブ18の内腔とが外部管路46に連通されている。これにより、穿刺針16の先端開口から外部管路46に至る流体流路48が穿刺用針体14に設けられている。
【0041】
針先プロテクタ10は、
図1~5に示すように、全体として針軸方向に延びる略筒形状とされている。針先プロテクタ10は、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、MBS樹脂などの硬質の合成樹脂により一体成形されている。針先プロテクタ10は、好適には、可視光の透過を許容する透明乃至は半透明とされている。針先プロテクタ10は、筒状の周壁50を備えており、周壁50の内周には針軸方向に貫通する内孔52が形成されている。
【0042】
周壁50は、先端側が略真円環形状の断面を有する円筒状部54とされていると共に、基端側が円筒状部54よりも大径で外周に広がる拡大部56とされており、針軸方向で形状が異ならされている。
【0043】
拡大部56は、略楕円筒形状とされており、小径方向である
図4中の上下方向(縦方向)における外周面の幅寸法(外寸)に比べて、大径方向である
図4中の左右方向(横方向)における外周面の幅寸法の方が大きくされている。拡大部56を構成する壁部のうち、縦方向の壁部を構成する部分が幅狭部58,58とされている一方、横方向の壁部を構成する部分が幅広部60,60とされている。そして、幅狭部58,58の対向方向と、幅広部60,60の対向方向とが、互いに略直交している。拡大部56の内周には、縦方向寸法より横方向寸法の方が大きい扁平形状の断面を有する内部空間62が、針先プロテクタ10を貫通する内孔52の基端部分に形成されている。内部空間62は、横方向の内法寸法が基端側に向かって次第に大きくなっている。なお、拡大部56は、本実施形態において幅狭部58,58と幅広部60,60を有しているが、例えば、全周に亘って略一定の幅寸法を有していても良い。
【0044】
幅広部60,60には、板厚方向で貫通する係合部としての貫通窓64,64が形成されている。貫通窓64,64の周方向寸法は、フック44,44の周方向寸法よりも大きくされている。
【0045】
針先プロテクタ10の周壁50には、円筒状部54から基端側へ向かって突出する一対の突片66,66が設けられている。突片66,66は、幅広部60,60に対応する位置に配置されており、横方向で対向して設けられて、周方向で相互に離隔している。突片66,66は、円筒状部54につながる先端部分が略針軸方向と平行に延びている。突片66,66は、横方向の内外両面が基端側に向かって横方向の内側へ傾斜するテーパ形状とされている。突片66,66は、それぞれ周方向に湾曲している。突片66,66の突出先端における径方向での対向面間距離は、先端部分22の外径寸法よりも僅かに大きくされている。
【0046】
また、突片66,66の突出先端(針軸方向の基端)は、拡大部56の基端よりも針軸方向で先端側に位置している。従って、突片66,66の全体が、拡大部56の内部空間62に収容されており、換言すれば、突片66,66の外側に拡大部56が位置している。
【0047】
拡大部56は可撓片としての側壁部68,68を含んで構成されており、拡大部56の内周に側壁部68,68が設けられている。側壁部68は、
図3,4に示すように、それぞれ縦方向と交差する方向に広がる板状とされている。側壁部68は、幅狭部58,58の内周側にそれぞれ設けられており、幅狭部58,58が設けられた縦方向で所定の距離を隔てて対向配置されている。従って、側壁部68,68の対向方向は、突片66,66の対向方向と略直交している。
【0048】
側壁部68,68は、拡大部56の幅狭部58,58に対して内周側に離れて設けられている。これにより、側壁部68,68と幅狭部58,58との間には、少なくとも幅狭部58,58の周方向中央部分において隙間70,70が形成されている。側壁部68,68は、突片66,66の基端(突出先端)よりも先端側に設けられている。本実施形態の側壁部68,68の距離は、針ハブ18の先端部分22の外径寸法と略等しくされている。更に、側壁部68の先端側の端部は、針先プロテクタ10が後述する保護位置に位置する状態において、先端係止部26と針軸方向で当接する当接部71とされている。
【0049】
各側壁部68は、一対の板ばね72,72によって構成されており、厚さ方向に弾性変形可能とされている。板ばね72,72は、拡大部56の幅広部60,60に一体形成されており、幅広部60,60から横方向の内側に向かって突出している。板ばね72,72は、突出先端が横方向で相互に離隔している。側壁部68における板ばね72,72の突出先端間には、軸方向に延びる嵌合部としてのスリット74が形成されている。後述する穿刺用針体14が針先プロテクタ10に挿通された状態において、針ハブ18の一部であるガイド突条30がスリット74に差し入れられている。ガイド突条30は、スリット74内を軸方向に案内された状態で移動可能とされており、それによって針ハブ18の針先プロテクタ10に対する軸方向の移動が許容されている。また、ガイド突条30は、スリット74に対して周方向の変位を位置決めされた嵌合状態でスリット74に差し入れられている。
【0050】
側壁部68を構成する各板ばね72には、内側傾斜部76が設けられている。即ち、
図3,5に示すように、板ばね72の外周側の面である縦方向の外面が、縦方向に対して略直交して広がっていると共に、板ばね72の内周側の面である縦方向の内面が、縦方向の外面に対して傾斜する内側傾斜部76とされている。内側傾斜部76が軸方向の先端側に向かって縦方向の内側へ傾斜しており、板ばね72が先端側へ行くに従って略一定の割合で次第に厚肉となっている。換言すれば、板ばね72の内周側の面において縦方向の内側へ突出する突出部が設けられており、傾斜形状とされた突出部の表面によって内側傾斜部76が構成されている。一対の側壁部68,68は、内側傾斜部76が設けられていることによって、対向間距離が基端側に向かって次第に大きくなっている。
【0051】
針先プロテクタ10の先端部分には、
図1に示すように、翼状部78が設けられている。翼状部78は、例えば軟質の合成樹脂により形成されている。翼状部78は、筒状の嵌合筒部80に対して、板状の連結部82,82が嵌合筒部80の接線方向に突出して一体形成されていると共に、連結部82,82の嵌合筒部80からの突出先端側にそれぞれ翼本体84が一体形成されている。翼状部78は、嵌合筒部80が円筒状部54の先端部分に外嵌されることによって、針先プロテクタ10の周壁50に取り付けられている。
【0052】
針先プロテクタ10の内孔52に対して穿刺用針体14が基端側の開口部から挿通されることにより、針先プロテクタ10が穿刺用針体14に外挿装着されて、針組立体12が構成されている。即ち、穿刺用針体14は、針先プロテクタ10に対して周方向で90°回転した向きで、先端係止部26が一対の側壁部68,68よりも先端側に位置すると共に、係止突起28が一対の突片66,66の基端よりも先端側に位置するまで挿入される。そして、穿刺用針体14が針先プロテクタ10に対して周方向で90°回転されて、予め回転した状態で挿入された穿刺用針体14が針先プロテクタ10に対して組み付けられる向きに戻される。これにより、先端係止部26,26と側壁部68,68が軸方向で重なり合う周方向位置において、先端係止部26,26の基端面が側壁部68,68の先端面よりも先端側に位置せしめられる。また、係止突起28,28が突片66,66の対向間に挿入されて、係止突起28,28の先端面が突片66,66の基端面よりも先端側に位置せしめられる。その結果、先端係止部26,26と側壁部68,68の係止及び係止突起28,28と突片66,66の係止を生じることなく、穿刺用針体14が針先プロテクタ10に対して先端側へ挿入される。
【0053】
穿刺用針体14が針先プロテクタ10に途中まで挿入された状態で回転させられる際に、針ハブ18の先端部分22に設けられたガイド突条30,30が側壁部68,68の各一方の板ばね72,72を弾性変形させながら、スリット74,74に挿入される。本実施形態の板ばね72は、基端側が薄肉とされていることによって変形剛性が小さくされており、穿刺用針体14の針先プロテクタ10に対する回転が比較的に小さな力で実現される。
【0054】
図1などに示す針組立体12の使用前の初期状態では、針先プロテクタ10は、穿刺用針体14に対して、穿刺針16の針先20が針先プロテクタ10よりも先端側に露出する穿刺位置に位置している。この初期状態では、
図2に示すように、針先プロテクタ10の拡大部56に設けられた貫通窓64,64に対して、針ハブ18の腕部42,42に設けられたフック44,44が入り込んで係合されている。これにより、針先プロテクタ10と針ハブ18が連結状態とされて、針先20の突出状態が維持されると共に、例えば翼状部78を持って穿刺を行う際に、穿刺時の抵抗等による穿刺針16の針軸方向基端側への移動が規制される。
【0055】
針組立体12の初期状態では、針先プロテクタ10の突片66,66の突出先端部が、先端部分22の外周面に対して僅かに離隔している。なお、突片66,66は、先端部分22の外周面に当接していても良く、それによって僅かに外周側に押されていても良い。
【0056】
針組立体12は、穿刺針16を患者の血管に穿刺して穿刺用針体14を留置することにより、流体流路48を通じての輸液や採血、血液透析に供される。なお、本実施形態の針組立体12では翼状部78が設けられていることから、例えば翼状部78を摘まみつつ、穿刺用針体14の穿刺針16を穿刺することが可能となる。穿刺用針体14を穿刺状態で留置する際には、翼状部78の位置でテープ固定することにより、皮膚に対して広い接触面積をもって固定することができる。
【0057】
穿刺用針体14を抜去する場合には、翼状部78において針先プロテクタ10がテープ固定された状態のまま、針ハブ18における腕部42,42が手指で内側へ押圧される。これにより、フック44,44と貫通窓64,64との係合が解除されて、穿刺用針体14を針先プロテクタ10に対して基端側へ移動させることが可能となる。穿刺用針体14を針先プロテクタ10に対して基端側へ移動させて穿刺針16を皮膚から抜去することで、針先プロテクタ10が穿刺用針体14に対して針先20側に移動する。このように、穿刺位置における穿刺用針体14と針先プロテクタ10の腕部42,42による連結は、腕部42,42の操作によって解除可能とされており、連結の解除によって穿刺用針体14と針先プロテクタ10が軸方向で相対的に移動可能とされる。
【0058】
図6に示すように、穿刺用針体14を針先プロテクタ10に対して所定の保護位置まで後退移動させる(穿刺用針体14の針先20側へ針先プロテクタ10を前進移動させる)ことにより、穿刺針16の針先20が針先プロテクタ10の内周へ収容されて周壁50によって覆われる。
【0059】
針ハブ18の一部であるガイド突条30,30が、針先プロテクタ10の側壁部68,68に設けられたスリット74,74に差し入れられている。そして、ガイド突条30,30が側壁部68,68によって案内されながらスリット74,74内を軸方向に移動可能とされている。これにより、穿刺用針体14が針先プロテクタ10に対して基端側へ移動する際に、穿刺用針体14の針先プロテクタ10に対するがたつきが抑えられて、穿刺用針体14が針先プロテクタ10に対してスムーズに移動し得る。
【0060】
針先プロテクタ10が穿刺用針体14に対して保護位置まで移動する際に、突片66,66の自由端が係止突起28,28を乗り越えて先端側に移動することで、弾性的に形状復元した突片66,66が係止突起28,28に対して先端側に位置する。そして、穿刺用針体14が針先プロテクタ10に対して先端側へ相対移動しようとすると、突片66,66の基端面が係止突起28,28の先端面に当接して係止される。これにより、穿刺用針体14の針先プロテクタ10に対する先端側への移動が、突片66,66と係止突起28,28の係止によって制限されて、穿刺用針体14の針先20の再露出が阻止される。
【0061】
穿刺用針体14が保護位置にある針先プロテクタ10に対して更に基端側へ移動しようとすると、穿刺用針体14の針ハブ18に設けられた先端係止部26,26が、針先プロテクタ10の側壁部68,68の当接部71に対して軸方向で当接して係止される。これにより、穿刺用針体14の基端側への移動が制限されて、穿刺用針体14の針先プロテクタ10に対する基端側への抜けが阻止される。
【0062】
側壁部68,68は、内側傾斜部76が設けられることで先端の厚さ寸法が基端の厚さ寸法よりも大きくされている。それ故、先端係止部26,26の基端面と側壁部68,68の先端面との当接面積が、より大きく確保される。その結果、穿刺用針体14の針先プロテクタ10に対する基端側への移動が、先端係止部26,26と側壁部68,68の係止によって、より確実に規制される。
【0063】
このように、穿刺針16の針先20が針先プロテクタ10によって保護された状態において、穿刺用針体14の針先プロテクタ10に対する移動が、先端側と基端側の両側において制限されており、針先プロテクタ10による針先20の保護状態が維持される。
【0064】
本実施形態では一対の突片66,66が設けられており、突片66,66が針先プロテクタ10の周壁50に一体成形されていることとも相俟って、突片66,66と係止突起28,28が係止される際に、針先プロテクタ10の穿刺用針体14に対するがたつき等が防止される。このように、突片66を2つ、又は3つ以上設けることで、針先プロテクタ10における穿刺用針体14に対する基端側への後退がより確実に阻止されて、針先20の再露出防止効果が一層安定して発揮され得る。この場合、複数の突片66は、針先プロテクタ10の中心軸に対して略対称に配置されることが好ましい。
【0065】
穿刺用針体14の針先20が針先プロテクタ10で保護された状態において、翼状部78のテープ固定を解除して、針組立体12を患者から取り外す。尤も、針先20の保護の手順は上記の手順に限定されるものではない。具体的には、例えば、翼状部78におけるテープ固定を解除し、針組立体12の全体を後退移動させて穿刺針16を血管から抜去した後、穿刺用針体14を針先プロテクタ10に対して後退移動させることで、穿刺針16の針先20が保護されるようにしても良い。
【0066】
図7には、参考実施形態としての針組立体を構成する針先プロテクタ90が示されている。針先プロテクタ90は、一対の側壁部92,92を備えている。以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0067】
側壁部92は、板ばね94によって構成されている。
図7では明示されていないが、側壁部92は、前記実施形態の側壁部68と同様に、一対の板ばね94,94がスリット74を挟んで設けられた構造を有している。板ばね94は、
図7に示すように、縦方向(
図7中の上下方向)の外面である外周側の面が、先端側に向かって縦方向の内側へ傾斜する外側傾斜部96とされている。板ばね94は、外側傾斜部96が設けられていることによって、縦方向の厚さ寸法が先端側に向かって略一定の割合で小さくなっている。
【0068】
このような本実施形態の針先プロテクタ90においても、図示しない穿刺用針体を挿通して組み付ける際に、ガイド突条30に押された板ばね94を変形し易くすることができる。しかも、板ばね94の全体を薄肉にする場合に比して、板ばね94の厚さが基端側において確保されることから、板ばね94に要求される変形剛性も確保されて、穿刺用針体の針先プロテクタ90に対する基端側への抜けを有効に防止することもできる。
【0069】
図8には、本発明の第2の実施形態としての針組立体を構成する針先プロテクタ100が示されている。針先プロテクタ100は、一対の側壁部102,102を備えている。
【0070】
側壁部102は、板ばね104によって構成されている。
図8には明示されていないが、側壁部102は、前記実施形態の側壁部68と同様に、一対の板ばね104,104がスリット74を挟んで設けられた構造を有している。板ばね104は、
図8に示すように、縦方向(
図8中の上下方向)の内面が先端側に向かって縦方向の内側へ傾斜する内側傾斜部76とされていると共に、縦方向の外面が先端側に向かって縦方向の内側へ傾斜する外側傾斜部96とされている。内面に設けられた内側傾斜部76と外面に設けられた外側傾斜部96は、互いに略同じ傾斜角度で傾斜している。尤も、内側傾斜部76と外側傾斜部96の傾斜角度は、互いに異なっていても良く、それによって、板ばね104の縦方向の厚さ寸法が軸方向で変化していても良い。
【0071】
このような本実施形態の針先プロテクタ100では、針先プロテクタ100に挿入された図示しない穿刺用針体を回転させて、図示しないガイド突条をスリット74へ差し入れる際に、板ばね104の先端側がガイド突条に部分的に当接して変形する。それ故、板ばね104の軸方向全体を変形させる場合に比して、必要な力が小さくなり得て、穿刺用針体と針先プロテクタ100の組み付け作業が容易になることが期待できる。
【0072】
なお、本実施形態では、側壁部102の内面に設けられた内側傾斜部76と外面に設けられた外側傾斜部96が、互いに同じ方向に傾斜しているが、例えば、内側傾斜部と外側傾斜部が互いに異なる向きに傾斜していても良い。
【0073】
図9には、参考実施形態としての針組立体110が示されている。針組立体110は、穿刺用針体14に針先プロテクタ112が外挿状態で装着された構造を有している。
【0074】
針先プロテクタ112は、一対の側壁部114,114を備えている。また、側壁部114は、一対の板ばね116,116によって構成されている。本実施形態の板ばね116は、突出先端側である横方向(
図9中の左右方向)の内側に向かって次第に厚肉となっている。即ち、板ばね116の下面が上下方向に対して略直交して広がる非傾斜の平面とされていると共に、板ばね116の外周側の面である縦方向の外面が、周方向の内側である横方向の内側に向かって縦方向の外側へ傾斜する外側傾斜部118とされている。これにより、板ばね116は、スリット74側である横方向内端の上下厚さ寸法が、横方向外端の上下厚さ寸法よりも大きくされている。なお、本実施形態において、スリット74に差し入れられる針ハブ18のガイド突条30は、突出高さ寸法が、板ばね116の横方向内端の上下厚さ寸法と略同じとされている。
【0075】
このような本実施形態の針組立体110は、穿刺用針体14と針先プロテクタ112が組み合わされた使用前の初期状態において、針ハブ18のガイド突条30,30が側壁部114,114のスリット74,74に差し入れられている。また、側壁部114を構成する板ばね116,116の厚さ寸法が横方向で変化しており、横方向の内側に向かって厚肉となっていると共に、ガイド突条30の突出寸法が板ばね116,116の横方向内端の厚さ寸法と略同じとされている。それ故、針ハブ18に針先プロテクタ112に対する回転力を作用させた場合に、ガイド突条30,30と板ばね116,116の横方向内端との当接面積が大きくなって、ガイド突条30がスリット74から抜け難い。従って、針ハブ18と針先プロテクタ112が、図示しない先端係止部と側壁部114,114及び図示しない係止突起と突片66,66が軸方向で係止可能な向きに保持され易く、図示しない針先の針先プロテクタ112による保護状態が安定して実現される。
【0076】
図10には、本発明の第3の実施形態としての針組立体120が示されている。針組立体120は、穿刺用針体14に針先プロテクタ122が外挿状態で装着された構造を有している。
【0077】
針先プロテクタ122は、一対の側壁部124,124を備えている。また、側壁部124は、一対の板ばね126,126によって構成されている。側壁部124を構成する一対の板ばね126,126は、一方の板ばね126aが略一定の厚さ寸法を有していると共に、他方の板ばね126bが突出先端側である横方向(
図9中の左右方向)の内側に向かって次第に薄肉となっている。板ばね126bは、外周側の面である縦方向の外面が縦方向に対して略直交して広がる非傾斜の平面とされていると共に、内周側の面である縦方向の内面が、周方向の内側である横方向の内側に向かって縦方向の外側へ傾斜する内側傾斜部128とされている。
【0078】
このように、一対の板ばね126a,126bの片方だけに内側傾斜部128が設けられていることにより、一対の板ばね126a,126bの変形剛性が相互に異なっている。従って、針ハブ18のガイド突条30,30を側壁部124,124のスリット74,74に差し入れる際に、針ハブ18を
図10中の右回りに回転させることによって、ガイド突条30,30をスリット74,74に容易に差し入れることができる。即ち、針ハブ18を針先プロテクタ122に対して
図10中の右回りに回転させると、ガイド突条30,30が比較的に薄肉とされた板ばね126bを変形させながらスリット74,74に差し入れられる。ガイド突条30,30が板ばね126,126を押して変形させることで生じる回転抵抗は、左回りよりも右回りで小さく、針ハブ18を右回りさせることで針ハブ18と針先プロテクタ122の組付けに必要な力を小さくすることができる。
【0079】
また、針ハブ18と針先プロテクタ122が組み付けられた状態では、針ハブ18を針先プロテクタ122に対して右回りに回転させようとすると、ガイド突条30が比較的に厚肉とされた板ばね126aを変形させて乗り越える必要がある。それ故、針ハブ18を針先プロテクタ122に対して右回りに回転させる場合には、ガイド突条30のスリット74からの抜け出しにより大きな力が必要となって、針ハブ18を回転させることが難しい。従って、針ハブ18を右回りに回転させてガイド突条30をスリット74へ差し入れる際に、一方の板ばね126aの内側傾斜部128によって容易に回転操作できると共に、他方の板ばね126bによって過回転がより確実に防止されて、ガイド突条30がスリット74へ位置決めされ得る。
【0080】
また、例えば、本実施形態の針組立体120において針ハブ18と針先プロテクタ122の左回りの相対回転(逆回転操作)を阻止する機構を設けることによって、針ハブ18と針先プロテクタ122を容易に組み付け可能であり、且つ、組み付けられた針ハブ18と針先プロテクタ122の分離が生じ難い針組立体120を実現することができる。かかる逆回転操作の阻止機構として、ラチェット等の機構を別途に設けることもできるが、例えば内側傾斜部128の傾斜を例示の如き滑らかに連続した傾斜面とすることに代えて、階段状の段階的な傾斜面とすることで、当該階段状の段差を降りる方向の回転(右回転)を容易に許容する一方、反対方向の回転(左回転)では段差に突き当たって回転を阻止される機構を構成することも可能である。
【0081】
なお、本実施形態では、針ハブ18が右回りによって針先プロテクタ122に組み付けられる構造を例示したが、針ハブ18が左回りによって針先プロテクタ122に組み付けられる構造とすることもできる。
【0082】
図11には、参考実施形態としての針組立体130が示されている。針組立体130は、穿刺用針体14に針先プロテクタ132が外挿状態で装着された構造を有している。
【0083】
針先プロテクタ132は、一対の側壁部134,134を備えている。また、側壁部134は、一対の板ばね136,136によって構成されている。本実施形態の板ばね72は、突出先端側である横方向(
図11中の左右方向)の内側端部において縦方向の外側へ向かって突出する突出部138を備えている。突出部138は、略半円形断面を有しており、板ばね72の外周側の面である縦方向の外面に突出して形成されている。突出部138は、突出先端である縦方向の外側に向かって横方向の幅寸法が小さくなっており、突出部138の表面が横方向の中央に向かって縦方向の外側へ傾斜する傾斜形状とされて、突出部138によって本実施形態の外側傾斜部が構成されている。なお、板ばね72は、突出部138が設けられた横方向の内側端部において部分的に厚肉とされている。また、スリット74に挿入される針ハブ18のガイド突条30,30の突出高さ寸法は、厚肉とされた板ばね72の横方向内端の厚さ寸法と略同じとされている。
【0084】
このような本実施形態の針組立体130は、穿刺用針体14と針先プロテクタ132が組み合わされた状態において、針ハブ18のガイド突条30,30が側壁部134,134のスリット74,74に差し入れられている。また、側壁部134を構成する板ばね136,136の厚さ寸法は、突出部138が設けられた横方向の内側端部において厚肉となっていると共に、ガイド突条30の突出寸法が板ばね136,136の横方向の内側端部の厚さ寸法と略同じとされている。それ故、針ハブ18に針先プロテクタ132に対する回転力を作用させた場合に、ガイド突条30,30と板ばね136,136の横方向内端との当接面積が大きくなって、ガイド突条30がスリット74から抜け難い。従って、針ハブ18と針先プロテクタ132が、図示しない先端係止部と側壁部134,134及び図示しない係止突起と突片66,66が軸方向で係止可能な向きに保持され易く、図示しない針先の針先プロテクタ132による保護状態が安定して実現される。
【0085】
なお、本実施形態では、突出部138が板ばね72の外周側の面である縦方向の外面に突出して外側傾斜部を構成するように設けられているが、このような突出部は、板ばねの内側面に突出して内側傾斜部を構成するようにも設けられ得る。このように、突出部を板ばねの内側面に突出するように設けることで、針先プロテクタと針ハブの組み付け状態において、針先プロテクタが針ハブに対して相対回転し難くなる。その結果、針ハブの針先プロテクタから基端側への抜けが防止され易くなる。
【0086】
突出部は、可撓片としての側壁部の内周面と外周面の少なくとも一方において、全面に設けられていても良い。突出部は、スポット的に設けられた突起状であっても良いし、ある程度の長さを有するリブ状であっても良い。また、可撓片に部分的な凹部を設けることで、凹部の内面をもって内側傾斜部を構成することもできる。
【0087】
図12には、本発明の第4の実施形態としての針組立体140が示されている。針組立体140は、穿刺用針体14に針先プロテクタ142が外挿状態で装着された構造を有している。
【0088】
針先プロテクタ142は、可撓片としての一対の突片144,144を備えている。突片144は、前記第1の実施形態の突片66と同様に、周壁50から軸方向で基端側に向かって突出している。突片144は、横方向の内外両面、即ち突片144の内周側の面と外周側の面が、突出先端に向かって内周側である横方向の内側へ針ハブ18に向かって傾斜する内側傾斜部146とされている。突片144の突出先端部分には、スリット148が形成されている。スリット148は、横方向の内面に開口する凹状断面を有しており、突片144の縦方向の中央部分において軸方向に延びている。
【0089】
本実施形態では、一対の側壁部68,68に加えて、一対の突片144,144が内側傾斜部146と嵌合部としてのスリット148を備える可撓片とされている。従って、本実施形態では、4つの可撓片が設けられている。また、形状の異なる2種類の可撓片が設けられており、第1可撓片である突片144,144と第2可撓片である側壁部68,68が、互いに異なる形状とされている。第1可撓片である突片144,144が、幅広部60,60が設けられた横方向において対向して配置されていると共に、第2可撓片である側壁部68,68が、幅狭部58,58が設けられた縦方向において対向して配置されている。このように、可撓片は、必ずしも一対に限定されず、3つ以上の複数であっても良いし、1つであっても良い。また、可撓片に形成されるスリットは、可撓片を貫通するスリット74のような構造であっても良いし、スリット148のような凹溝状の構造であっても良い。本実施形態では、同形状の可撓片が相互に対向して設けられた構造を例示したが、対向して配置された可撓片を相互に異なる形状とすることもできる。更に、全ての可撓片が同じ形状であっても良いし、全ての可撓片がそれぞれ相互に異なる形状であっても良い。
【0090】
穿刺用針体14の針ハブ18には、縦方向に突出する一対のガイド突条30,30に加えて、横方向に突出する一対のガイド突条150,150が設けられている。ガイド突条150,150は、穿刺用針体14の針先プロテクタ142への装着状態において、突片144,144のスリット148,148に差し入れられており、それによって針ハブ18と針先プロテクタ142が周方向で位置決めされている。
【0091】
このような針組立体140によれば、側壁部68,68とガイド突条30,30との係止によって針ハブ18の回転が規制されるだけでなく、突片144,144とガイド突条150,150との係止によっても針ハブ18の回転が規制される。それ故、針ハブ18の針先プロテクタ142からの抜けがより優れた信頼性で防止される。
【0092】
第1可撓片としての突片144,144によって針ハブ18の針先プロテクタ142に対する先端側への移動が制限されると共に、第2可撓片としての側壁部68,68によって針ハブ18の針先プロテクタ142に対する基端側への移動が制限される。このように、針先20の先端側への再露出と基端側への再露出が、2種類の可撓片によってそれぞれ防止される。
【0093】
第1可撓片としての突片144,144が横方向で対向して設けられていると共に、第2可撓片としての側壁部68,68が縦方向で対向して設けられている。このように、同じ形状の可撓片が径方向で対向して配されていると共に、形状の異なる2種類の可撓片が互いに直交する径方向に配されている。それ故、針ハブ18の針先プロテクタ142に対する軸方向の変位が可撓片によって制限される際に、針ハブ18と針先プロテクタ142の当接部分に及ぼされる力が周方向でバランスよく作用して、針ハブ18の針先プロテクタ142に対する傾動などが防止される。
【0094】
なお、本実施形態では、側壁部68,68と突片144,144の両方が傾斜部及びスリットを備える可撓片とされているが、例えば、傾斜部とスリットの少なくとも一方が側壁部68,68に設けられず、突片144,144だけが可撓片とされていても良い。
【0095】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、1つの可撓片に1つのスリットが形成されている例を示したが、1つの可撓片に複数のスリットが形成されていても良い。
【0096】
内側傾斜部は、軸方向と周方向の両方に傾斜していても良い。また、内側傾斜部の傾斜角度は、徐々に或いは段階的に変化していても良い。なお、外側傾斜部についても同様である。
【0097】
内側傾斜部は、可撓片の内周側の面における略全体に設けられていても良いが、可撓片の内周側の面において部分的に設けられ得る。また、内側傾斜部は、可撓片の内周側の面において複数箇所に設けられていても良く、その場合に、複数の内側傾斜部は互いに異なる方向に傾斜していても良いし、互いに異なる傾斜角度で同じ方向に傾斜していても良い。これらは外側傾斜部についても同様である。
【0098】
前記実施形態では、針ハブ18を針先プロテクタ10に組み付ける際に、針ハブ18の先端係止部26,26と係止突起28,28が針先プロテクタ10の突片66,66と側壁部68,68に係止されることなく組み付けるために、針ハブ18を針先プロテクタ10に対して相対回転させる方法を例示した。しかしながら、針ハブ18は、針先プロテクタ10に対して相対回転されることなく、針先プロテクタ10に組み付け可能とすることもできる。具体的には、例えば、先端係止部26,26と係止突起28,28を備える針ハブ18の先端部分22が、針ハブ18の基端部分32と別体とされており、先端部分22が針先プロテクタ10の先端側の開口から挿入されて、基端において基端部分32と固定されるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0099】
10,90,100,112,122,132,142 針先プロテクタ
12,110,120,130,140 針組立体
14 穿刺用針体
16 穿刺針
18 針ハブ
20 針先
22 先端部分
24 針固定部
26 先端係止部
28 係止突起
30,150 ガイド突条
32 基端部分
34 管路接続部
36 接続穴
38 底部
40 接続ポート
42 腕部
44 フック
46 外部管路
48 流体流路
50 周壁
52 内孔
54 円筒状部
56 拡大部
58 幅狭部
60 幅広部
62 内部空間
64 貫通窓
66,144 突片
68,92,102,114,124,134 側壁部(可撓片)
70 隙間
71 当接部
72,94,104,116,126,136 板ばね
74,148 スリット(嵌合部)
76,128,146 内側傾斜部
78 翼状部
80 嵌合筒部
82 連結部
84 翼本体
96,118 外側傾斜部
138 突出部