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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144716
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】耐力壁
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04B2/56 622H
E04B2/56 604F
E04B2/56 622C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024129005
(22)【出願日】2024-08-05
(62)【分割の表示】P 2020173183の分割
【原出願日】2020-10-14
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】599118919
【氏名又は名称】株式会社AQ Group
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 俊哉
(57)【要約】
【課題】柱の連設方向に作用する外力に対する抵抗力の高い耐力壁を提供することを目的とする。
【解決手段】一対の柱4,5と、一対の柱4,5と、間受材6に複数の連結部材Nを用いて連結される面材9と、を備える耐力壁10であって、一対の柱4,5には、柱の立設方向に沿って面材9の辺9L,9Rおよび背面9Bが当接する凹部41,51がそれぞれ形成され、面材9は、一対の凹部41,51の間に挿嵌されて複数の連結部材Nにより一対の柱4,5、および間受材6のそれぞれに連結され、連結部材Nが一対の柱4,5に対して打設されるピッチは、連結部材Nが間受材6に対して打設されるピッチよりも短いことを特徴とする。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の柱と、
前記一対の柱に複数の連結部材を用いて連結される面材と、
前記一対の柱の間に配置される間受材と、を備える耐力壁であって、
前記一対の柱には、該柱の立設方向に沿って前記面材の辺および背面が当接する凹部がそれぞれ形成され、
前記面材は、一対の前記凹部の間に挿嵌されて前記複数の連結部材により、前記一対の柱及び前記間受材のそれぞれに連結され、前記連結部材が前記一対の柱に対して打設されるピッチは、前記連結部材が前記間受材に対して打設されるピッチよりも短いことを特徴とする耐力壁。
【請求項2】
一対の柱と、
前記一対の柱に複数の連結部材を用いて連結される面材と、
前記一対の柱の間に配置される間受材と、を備える耐力壁であって、
前記一対の柱には、該柱の立設方向に沿って前記面材の辺および背面が当接する凹部がそれぞれ形成され、
前記面材は、一対の前記凹部の間に挿嵌されて前記複数の連結部材により、前記一対の柱及び前記間受材のそれぞれに連結され、前記連結部材が前記一対の柱に対して打設される数は、前記連結部材が前記間受材に対して打設される数の2倍以上であることを特徴とする耐力壁。
【請求項3】
一対の柱と、
前記一対の柱に複数の連結部材を用いて連結される面材と、を備える耐力壁であって、
前記一対の柱には、該柱の立設方向に沿って前記面材の辺および背面が当接する凹部がそれぞれ形成され、
前記面材は、一対の前記凹部の間に挿嵌されて前記複数の連結部材により連結され、
前記複数の連結部材は、
前記柱に対して打設され、かつ前記柱の延在方向に沿って配置される複数の第1連結部材と、
前記複数の第1連結部材に対して水平方向内側で前記柱に対して打設され、かつ前記柱の延在方向に沿って配置される複数の第2連結部材と、を含み、
前記複数の第1連結部材と前記複数の第2連結部材とが、水平方向に並ばないように配置されていることを特徴とする耐力壁。
【請求項4】
一対の前記凹部の間に挿嵌されている前記面材は、互いに対向配置される上方横設材および下方横設材の間に挿嵌されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の耐力壁。
【請求項5】
前記面材は、前記上方横設材に固定されて前記凹部の端面と略同一平面をなす上方横設材側受材、および前記下方横設材に固定されて前記凹部の端面と略同一平面をなす下方横設材側受材それぞれに複数の連結部材で連結されていることを特徴とする請求項4に記載の耐力壁。
【請求項6】
前記複数の連結部材は、前記上方横設材側受材、および前記下方横設材のそれぞれにおいて、
各受材の延在方向に沿って配置される複数の第3連結部材と、
前記第3連結部材に対して上下方向内側で、各受材の延在方向に沿って配置される複数の第4連結部材と、を含み
前記複数の第3連結部材と前記複数の第4連結部材とが、上下方向に並ばないように配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の耐力壁。
【請求項7】
前記下方横設材と前記下方横設材側受材との間には、床材が配設されていることを特徴とする請求項5に記載の耐力壁。
【請求項8】
互いに対向配置された前記面材を備え、
前記一対の柱には、一方の前記面材が連結される一方側、および他方の前記面材が連結される他方側に前記凹部がそれぞれ形成され、
各前記面材は、一対の前記凹部の間にそれぞれ挿嵌されて前記複数の連結部材により連結されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の耐力壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造の建築物に利用される耐力壁に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な木造の建築物においてその構造強度を高めるために利用されている耐力壁は、立設された一対の柱を接合部材により接合されることでその構造強度が高められており、このような耐力壁には、接合部材として筋交いが用いられているもの、面材が用いられているものに大別される。近年では、耐力壁の組立てや断熱材の敷設等の施工性が筋交いよりも容易である面材を用いた耐力壁が注目されている。
【0003】
面材を用いた耐力壁の一例として、特許文献1等が挙げられ、ここに示される耐力壁は、基礎上に立設された一対の柱と、面材としての構造用合板から主に構成されている。構造用合板は、各柱の側端面に対向配置された端面が当接されて重ね合わされた端部に、連結部材としての釘を縦方向に複数打設することで接合されている。これにより、一対の柱と構造用合板との一体性が増してその剛性が高められているばかりでなく、例えば地震、風等により一対の柱の連設方向において一方側から他方側に外力が作用した場合に、一方側の柱の頂部が他方側の柱に向かって傾動しようとしても、力が構造用合板によって面方向に分散された後、他方側の柱に打設され複数の釘を通じて他方側の柱に作用するため、力が集中して作用することにより柱から釘が抜け出すこと、柱や面材が破断することが抑止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-3592公報 (第2,3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように特許文献1のような耐力壁にあっては、一対の柱と構造用合板とを連結するにあたって、釘の数を増やす、より太い釘を使用することにより、柱の連設方向に作用する外力に対する抵抗力が向上されることが一般的に知られている。しかしながら、単に釘の数を増やしたり、太い釘を使用した場合には、面材や柱に亀裂、欠け等の破損が生じる虞があるため、このような破損を防止しつつ抵抗力を向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、柱の連設方向に作用する外力に対する抵抗力の高い耐力壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の耐力壁は、
一対の柱と、
前記一対の柱に複数の連結部材を用いて連結される面材と、
前記一対の柱の間に配置される間受材と、を備える耐力壁であって、
前記一対の柱には、該柱の立設方向に沿って前記面材の辺および背面が当接する凹部がそれぞれ形成され、
前記面材は、一対の前記凹部の間に挿嵌されて前記複数の連結部材により、前記一対の柱及び前記間受材のそれぞれに連結され、前記連結部材が前記一対の柱に対して打設されるピッチは、前記連結部材が前記間受材に対して打設されるピッチよりも短いことを特徴としている。
また、前記課題を解決するために、本発明の耐力壁は、
一対の柱と、
前記一対の柱に複数の連結部材を用いて連結される面材と、
前記一対の柱の間に配置される間受材と、を備える耐力壁であって、
前記一対の柱には、該柱の立設方向に沿って前記面材の辺および背面が当接する凹部がそれぞれ形成され、
前記面材は、一対の前記凹部の間に挿嵌されて前記複数の連結部材により、前記一対の柱及び前記間受材のそれぞれに連結され、前記連結部材が前記一対の柱に対して打設される数は、前記連結部材が前記間受材に対して打設される数の2倍以上であることを特徴としている。
また、前記課題を解決するために、本発明の耐力壁は、
一対の柱と、
前記一対の柱に複数の連結部材を用いて連結される面材と、を備える耐力壁であって、
前記一対の柱には、該柱の立設方向に沿って前記面材の辺および背面が当接する凹部がそれぞれ形成され、
前記面材は、一対の前記凹部の間に挿嵌されて前記複数の連結部材により連結され、
前記複数の連結部材は、
前記柱に対して打設され、かつ前記柱の延在方向に沿って配置される複数の第1連結部材と、
前記複数の第1連結部材に対して水平方向内側で前記柱に対して打設され、かつ前記柱の延在方向に沿って配置される複数の第2連結部材と、を含み、
前記複数の第1連結部材と前記複数の第2連結部材とが、水平方向に並ばないように配置されていることを特徴としている。
これらの特徴によれば、面材は、その面に対して直交方向に作用する力に対する耐久性よりも、その辺に対して直交方向に作用する力に対する耐久性の方が高いため、柱の連設方向に外力が作用した場合に、柱の凹部から面材の辺に力が作用しても破損し難く、その耐久性により一対の柱同士の相対的な傾動を抑止できることから、複数の連結部材による抵抗力に加えて、柱の連設方向に作用する外力に対する抵抗力を高めることができる。
また、例えば、面材と柱等とを一般的に使用される倍以上の連結部材によって連結することができ、面材から一つの連結部材に伝達される力が分散されて弱まることに加え、連結部材自身の耐久性や抜け出しに対する抵抗力も高いため、連結部材の破断、柱及び受材からの連結部材の抜け出し、柱及び受材や面材の破断に対する抵抗力が高められている。
さらに、柱に対して打設された複数の連結部材と受材に対して打設された複数の連結部材とが水平方向に並ばないように配置されている場合、柱及び受材に打設する連結部材の数を増やした場合でも、面材に亀裂が生じることを抑制することができる。
【0008】
前記柱は、前記面材の背面が当接する前記凹部の端面と略同一平面をなす受材が固定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、面材が略同一平面をなす凹部の端面と受材の端面とに当接した状態で一対の柱に固定されており、面材が受材側に押し込まれるような力が作用した場合の支持強度を高めることができる。
【0009】
前記面材は、前記受材に複数の前記連結部材により連結されていることを特徴としている。
この特徴によれば、面材と受材との一体性が増すことで支持強度がより高められるばかりでなく、面材がその面に対して直交方向に撓み変形することを抑止することができる。
【0010】
前記面材は、前記一対の柱の間に立設される間受材に複数の前記連結部材により連結されていることを特徴としている。
この特徴によれば、面材と一対の柱から離間した位置で立設される間受材との一体性が増すため、面材がその面に対して直交方向に撓み変形することを抑止することができる。
【0011】
一対の前記凹部の間に挿嵌されている前記面材は、互いに対向配置される上方横設材および下方横設材の間に挿嵌されていることを特徴としている。
この特徴によれば、柱の立設方向に外力が作用した場合に、上方横設材または下方横設材から面材の辺に力が作用しても破損し難く、その耐久性により上方横設材および下方横設材の相対的な傾動を抑止できることから、柱の立設方向に作用する外力に対する抵抗力を高めることができる。
【0012】
前記面材は、前記上方横設材に固定されて前記凹部の端面と略同一平面をなす上方横設材側受材、および前記下方横設材に固定されて前記凹部の端面と略同一平面をなす下方横設材側受材それぞれに複数の連結部材で連結されていることを特徴としている。
この特徴によれば、面材と上方横設材および下方横設材との一体性が増すため、柱の立設方向に作用する外力に対する抵抗力をさらに高めることができる。
【0013】
前記下方横設材と前記下方横設材側受材との間には、床材が配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、床材の支持強度を向上させることができる。
【0014】
互いに対向配置された前記面材を備え、
前記一対の柱には、一方の前記面材が連結される一方側、および他方の前記面材が連結される他方側に前記凹部がそれぞれ形成され、
各前記面材は、一対の前記凹部の間にそれぞれ挿嵌されて前記複数の連結部材により連結されていることを特徴としている。
この特徴によれば、耐力壁としての一体性がさらに高められて構造強度を高めることができるばかりでなく、柱の連設方向に作用する外力に対する抵抗力も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施例の耐力壁を示す斜視図である。
図2】実施例の耐力壁を示す分解斜視図である。
図3】実施例の耐力壁において面材を取り付ける前の状態を示す正面図である。
図4図3におけるA-A断面図である。
図5図3におけるB-B断面図である。
図6】実施例の耐力壁を示す正面図である。
図7図6におけるC-C断面図である。
図8】本発明に掛かる耐力壁の変形例1を示す斜視図である。
図9】本発明に掛かる耐力壁の変形例2を示す正面図である。
図10】本発明に掛かる耐力壁の他の変形例を示しており、図7に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る耐力壁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0017】
実施例に係る耐力壁につき、図1から図9を参照して説明する。以下、図1に示す矢印方向を耐力壁の前後上下左右として説明する。
【0018】
図1に示されるように、本実施例の耐力壁10は、木造軸組構法によって造られる木造の建築物において必要な構造強度を確保するために使用されるものである。尚、耐力壁10は、木造枠組壁構法、木質ラーメン構法等、他の木構造に使用されてもよく、木造軸組構法に限定されるものではない。
【0019】
図1図2に示されるように、耐力壁10は、基礎1に固定された下方横設材としての土台2と、上方横設材としての梁3と、基礎1の上方に立設されている通柱4と、通柱4から左右方向に離間して立設されている管柱5と、間受材としての間柱6と、2つの縦受材7と、4つの横受材8と、正面視長方形状の平板状に形成され、前後方向に1枚ずつ対向配置された面材としての構造用合板9と、床材としての床合板11と、複数の連結部材としての複数の釘Nから主に構成されている。
【0020】
図2図3に示されるように、土台2は、通柱4または管柱5を支持する一対の柱脚金物20と、一対の柱脚金物20の間、または外側に配設される土台材21,22から主に構成されている。尚、耐力壁10の構成に直接関わるのは、一対の柱脚金物20とこれらの間に配設されている土台材21である。
【0021】
柱脚金物20は、立方体状に形成された基部と、基部の左右方向中央にて立設する板状の立設部20aを備え、基礎1に埋設されている図示しないアンカーに固定されている。土台材21,22は、木製の四角柱状に形成され、柱脚金物20と同様にアンカーに固定されており、前後上下端面が柱脚金物20の前後上下端面と略同一平面をなしている。
【0022】
図2図5に示されるように、通柱4および管柱5(以下、単に「柱4,5」と記載)は、木製の四角柱である所謂四寸柱であり、下端部に形成されたスリットに柱脚金物20の立設部20aが挿嵌され、その下端面が柱脚金物20の基部の上面に当接された状態でドリフトピンによって固定されている。また、柱4,5は接続金具を用いて梁3に固定されている。これにより、柱4,5は、互いに略平行かつ、土台2および梁3に略直交して配設され、前後端面が柱脚金物20および梁3の前後端面と略同一平面をなし、左右端面が柱脚金物20の左右端面と略同一平面をなしている。
【0023】
図4図5を参照して、通柱4には、管柱5に対向配置されている側端部40における前後両端部それぞれに、連結部45の下端から下方向に亘って略直線状に切削形成された凹部41を備えている。凹部41は、側端部40における前後の凹部41の間の前後方向に延びる端面40aに略直交して左右方向に延びる左右面42と、左右面42の左端に略直交して前後方向に延びる前後面43を有し、上下方向の寸法が土台2および梁3の間の離間寸法と略同一であり、前後方向の寸法、すなわち前後面43の前後方向の寸法が構造用合板9の前後方向の寸法と略同一である。
【0024】
管柱5には、通柱4に対向配置されている側端部50における前後両端部それぞれに、管柱5の上下端に亘って略直線状に切削形成された凹部51を備えている。凹部51は、側端部50における前後の凹部51の間の前後方向に延びる端面50aに略直交して左右方向に延びる左右面52と、左右面52の左端に略直交して前後方向に延びる前後面53を有し、上下方向の寸法が土台2および梁3の間の離間寸法と略同一であり、前後方向の寸法、すなわち前後面53の前後方向の寸法が構造用合板9の前後方向の寸法と略同一である。
【0025】
対向配置された凹部41,51は、左右面42,52が略同一平面をなし、前後面43,53の間の離間寸法が構造用合板9の左右方向の寸法と略同一である。尚、本実施例における同一平面とは、同一の平面に沿って配置されていればよく、直接連続しておらずに離間していてもよい。
【0026】
図2図5を参照して、間柱6は、木製の四角柱であり、複数の釘によって下端部が床合板11を介して土台材21に、上端部が梁3に固定され、前後の左右面60が柱4,5の左右面42,52と略同一平面をなしている。縦受材7は、木製の四角柱であり、複数の木ネジによって通柱4の側端部40または管柱5の側端部50に固定され、前後の左右面70が柱4,5の左右面42,52と連続する略同一平面をなしている。横受材8は、木製の四角柱状に形成されており、複数の木ネジによって土台材21側の横受材8が床合板11を介して土台材21に、梁3側の横受材8が梁3に固定され、前後の左右面80が間柱6の前後の左右面60、および各縦受材7の前後の左右面70と連続する略同一平面をなしている。
【0027】
床合板11は、左右方向の寸法が柱4,5の端面40a,50aの間の離間寸法と略同一に形成された矩形状の板材であり、複数の釘によって土台材21に固定されている。
【0028】
図6図7を参照して、構造用合板9は、ベイマツから形成された合板であり、上下方向の寸法が床合板11および梁3の間の離間寸法と略同一となっており、床合板11、梁3および柱4,5の前後面43,53の内側に嵌合された後、複数の釘Nを用いて、柱4,5、間柱6、各縦受材7、各横受材8に連結されている。
【0029】
これにより、その上下の側辺9T,9Dは床合板11、梁3に当接し、左右の側辺9L,9Rが前後面43,53に当接し、その裏面9Bは同一平面をなす左右面42,52,60,70,80(図3参照)に当接し、その表面9Fは土台2、梁3および柱4,5の前端面または後端面と略同一平面をなしている。尚、構造用合板9の裏面9Bとは、対向配置されている構造用合板9側に位置する面であり、その反対の面が表面9Fである。また、構造用合板9の表面9F側を正面に見て、上側が9T、下側が9D、左側が側辺9L、右側が側辺9Rである。
【0030】
釘Nは、一般的に使用されるものより比較的その頭部や胴部の太さが太い釘であり、構造用合板9越しに、一般的に釘が打設される150ピッチで左右面60の左右方向中央部に沿って上下方向かつ直線状に打設され、その半分にあたる75ピッチで左右面42,52,70それぞれの左右方向中央部に沿って上下方向かつ直線状に打設され、左右面80の上端部および下端部に沿って左右方向かつ直線状に打設されている。
【0031】
以上説明したように、本実施例の耐力壁10は、構造用合板9が複数の釘Nによって土台2、梁3、柱4,5に連結されて構造強度が高められているばかりでなく、一般的に使用される倍以上の釘Nによって連結されているため、構造用合板9から一つの釘Nに伝達される力が分散されて弱まることに加え、釘N自身の耐久性や抜け出しに対する抵抗力も高いため、釘Nの破断、柱4,5からの釘Nの抜け出し、柱4,5や構造用合板9の破断に対する抵抗力が高められている。
【0032】
また、構造用合板9は、表面9F、裏面9B(以下、単に「面9F,9B」と記載)に対して前後方向に作用する力に対する耐久性よりも、左右の側辺9L,9Rに対して左右方向に作用する力、上下の側辺9T,9Dに対して上下方向に作用する力に対する耐久性の方が高いため、柱4,5の連設方向に外力が作用し、例えば土台2および梁3が互いに略平行を保ちながら左右方向に相対移動しようとして柱4,5にせん断力が作用した場合に、柱4,5の凹部41,51から構造用合板9の左右の側辺9L,9Rに対して力が作用して構造用合板9にせん断力が作用しても破損し難く、その耐久性により一対の柱4,5同士の相対的な傾動を抑止できる。このように、耐力壁10は、複数の釘Nによる抵抗力に加えて、柱4,5の連設方向に作用する外力に対する抵抗力が高められている。
【0033】
また、耐力壁10は、構造用合板9が略同一平面をなす凹部41,51の左右面42,52と各縦受材7の左右面70とに当接した状態で柱4,5に固定されているため、構造用合板9が縦受材7側に押し込まれるような力が作用した場合の支持強度が高められている。
【0034】
また、耐力壁10は、構造用合板9が各縦受材7に複数の釘Nにより連結されているため、構造用合板9と各縦受材7との一体性が増すことで支持強度がより高められるばかりでなく、面9F,9Bに対して前後方向に撓み変形することを抑止することができる。
【0035】
また、複数の釘Nは、構造用合板9越しに柱4,5および各縦受材7に打設されることで、左右方向に略一定の間隔離間されるため、釘Nを多用すること、太さを太くすることによる、柱4,5および構造用合板9の破損を防止することができる。
【0036】
また、耐力壁10は、構造用合板9が間柱6に複数の釘Nにより連結されていることで、構造用合板9と一対の柱4,5から離間した位置で立設される間柱6との一体性が増すため、面9F,9Bに対して前後方向に撓み変形することを抑止することができる。
【0037】
また、耐力壁10は、土台2と梁3との間に挿嵌された構造用合板9の上下の側辺9T,9Dが凹部41,51に略直交して延びる床合板11または梁3に当接しているため、柱4,5の上下方向、すなわち立設方向に外力が作用し、例えば土台2および梁3が略平行を保ちながら右肩上がりに傾動しようとした場合に、構造用合板9の側辺9T,9Dに力が作用して構造用合板9にせん断力が作用しても破損し難く、その耐久性により梁3および土台2の相対的な傾動を抑止できることから、柱4,5の立設方向に作用する外力に対する抵抗力が高められている。
【0038】
また、構造用合板9は、梁側の横受材8、土台側の横受材8それぞれに複数の釘Nで連結されていることから、構造用合板9と梁3および土台2との一体性が増すため、柱4,5の立設方向に作用する外力に対する抵抗力がさらに高められている。
【0039】
また、耐力壁10は、前方側および後方側に構造用合板9がそれぞれ連結されていることから、耐力壁10としての一体性がさらに高められて構造強度を高められているばかりでなく、柱4,5の連設方向に作用する外力に対する抵抗力も高められている。
【0040】
また、土台材21側の横受材8と土台材21との間に床合板11が配設されていることから、耐力壁10の高い耐久力を利用して床合板11が支持されるため、床合板11の支持強度を向上させることができる。
【0041】
また、耐力壁10は、所謂床勝ちであるため、所謂壁勝ちの構成と比較して、床合板11を載置・固定するために必要となる根太等の数を減じてコストを低減することができる。
【0042】
また、柱脚金物20は、金属で形成され、木製の柱4,5よりも高い剛性を備えるため、柱4,5が柱脚金物20に対して沈み込むように軸力が作用しても、柱4,5を安定して支持することが可能である。
【0043】
また、構造用合板9は、表面9Fが土台2、梁3、柱4,5の前端面または後端面と略同一平面をなしているため、構造用合板9が同前端面または同後端面から前後方向に突出している構成と比較して、凹部41,51から構造用合板9に伝達される力と、構造用合板9から凹部41,51に伝達される力との差が生じ難く、捻じれ方向の力が発生することが防止されている。この観点から、凹部41,51の前後方向の寸法は、構造用合板9の前後方向の寸法、すなわち厚み寸法以上であることが好ましく、前後面43,53についても捻じれ方向の力が生じ難くなる点で略同一であることがより好ましい。
【0044】
これらによって、耐力壁10は、構造用合板を用いた一般的な耐力壁の壁倍率である2.5倍の6倍にあたる15倍の壁倍率を達成できるばかりでなく、四寸柱、柱脚金物等の一般的な規格で流通している資材を利用して構成することができるため、建築物全体の製造コストを低減することができる。
【0045】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0046】
例えば、前記実施例では、本発明の耐力壁は、構造用合板9を縦受材7、横受材8を介して、土台2、梁3、柱4,5、間柱6に連結する所謂耐力壁であるとして説明したが、これに限らず、例えば柱4,5、間柱6に連結するような所謂準耐力壁であってもよい。
【0047】
つまり、上記の段落[0046]の記載は、前記実施例の耐力壁が、図10に示すように、「一対の柱(柱4,5)と、前記一対の柱に複数の連結部材(釘N)を用いて連結される面材(構造用合板9)と、前記一対の柱の間に配置される間受材(間柱6)と、を備える耐力壁120」であっても良いことを示している。
【0048】
図10に示す耐力壁120は、構造用合板9と一対の柱4,5とを連結する複数の釘Nが、構造用合板9の裏面9B(背面)と凹部41,51とが当接する部位に打設されている。従って、上記実施例を適用すると、上記の段落[0046]の記載は、前記実施例の耐力壁が、下記の(付記)に示す構成であってもよいことを示しいている。
【0049】
(付記)
(1)
一対の柱(柱4,5)と、
前記一対の柱に複数の連結部材(釘N)を用いて連結される面材(構造用合板9)と、
前記一対の柱の間に配置される間受材(間柱6)と、を備える耐力壁であって、
前記一対の柱には、該柱の立設方向に沿って前記面材の辺および背面(裏面9B)が当接する凹部(凹部41,51)がそれぞれ形成され、
前記面材は、一対の前記凹部の間に挿嵌されて前記複数の連結部材により、前記一対の柱及び前記間受材のそれぞれに連結され、前記連結部材が前記一対の柱に対して打設されるピッチは、前記連結部材が前記間受材に対して打設されるピッチよりも短いことを特徴とする耐力壁(120)。

(2)一対の柱(柱4,5)と、
前記一対の柱に複数の連結部材(釘N)を用いて連結される面材(構造用合板9)と、
前記一対の柱の間に配置される間受材(間柱6)と、を備える耐力壁であって、
前記一対の柱には、該柱の立設方向に沿って前記面材の辺および背面(裏面9B)が当接する凹部(凹部41,51)がそれぞれ形成され、
前記面材は、一対の前記凹部の間に挿嵌されて前記複数の連結部材により、前記一対の柱及び前記間受材のそれぞれに連結され、前記連結部材が前記一対の柱に対して打設される数は、前記連結部材が前記間受材に対して打設される数の2倍以上であることを特徴とする耐力壁(120)。

(3)一対の柱(柱4,5)と、
前記一対の柱に複数の連結部材(釘N)を用いて連結される面材(構造用合板9)と、を備える耐力壁であって、
前記一対の柱には、該柱の立設方向に沿って前記面材の辺および背面(裏面9B)が当接する凹部(凹部41,51)がそれぞれ形成され、
前記面材は、一対の前記凹部の間に挿嵌されて前記複数の連結部材により連結され、
前記複数の連結部材は、
前記柱に対して打設され、かつ前記柱の延在方向に沿って配置される複数の第1連結部材と、
前記複数の第1連結部材に対して水平方向内側で前記柱に対して打設され、かつ前記柱の延在方向に沿って配置される複数の第2連結部材と、を含み、
前記複数の第1連結部材と前記複数の第2連結部材とが、水平方向に並ばないように配置されていることを特徴とする耐力壁。

(4)一対の前記凹部の間に挿嵌されている前記面材は、互いに対向配置される上方横設材(梁3)および下方横設材(土台材21)の間に挿嵌されていることを特徴とする付記(1)~(3)のいずれかに記載の耐力壁。

(5)前記面材は、前記上方横設材(梁3)に固定されて前記凹部の端面と略同一平面をなす上方横設材側受材(横受材8)、および前記下方横設材(土台材21)に固定されて前記凹部の端面と略同一平面をなす下方横設材側受材(横受材8)それぞれに前記複数の連結部材(釘N)で連結されていることを特徴とする付記(4)に記載の耐力壁。

(6)前記複数の連結部材(釘N)は、前記上方横設材側受材(横受材8)、および前記下方横設材(横受材8)のそれぞれにおいて、
各受材(横受材8)の延在方向に沿って配置される複数の第3連結部材と、
前記第3連結部材に対して上下方向内側で、各受材(横受材8)の延在方向に沿って配置される複数の第4連結部材と、を含み
前記複数の第3連結部材と前記複数の第4連結部材とが、上下方向に並ばないように配置されていることを特徴とする、付記(5)に記載の耐力壁120。

(7)前記下方横設材(土台材21)と前記下方横設材側受材(横受材8)との間には、床材(床合板11)が配設されていることを特徴とする付記(5)に記載の耐力壁120。

(8)互いに対向配置された前記面材(構造用合板9)を備え、
前記一対の柱(柱4,5)には、一方の前記面材が連結される一方側、および他方の前記面材が連結される他方側に前記凹部(凹部41,51)がそれぞれ形成され、
各前記面材は、一対の前記凹部の間にそれぞれ挿嵌されて前記複数の連結部材(釘N)により連結されていることを特徴とする付記(1)~(7)のいずれかに記載の耐力壁120。
【0050】
なお、付記(3)において、「前記複数の第1連結部材と前記複数の第2連結部材とが、水平方向に並ばないように配置されている」とは、複数の第1連結部材と複数の第2連結部材とが、水平方向に並ばないように互い違いに配置されていることであり、所謂千鳥打ちの工法で打設されていることを意図している。
【0051】
また、付記(6)において、「前記複数の第3連結部材と前記複数の第4連結部材とが、上下方向に並ばないように配置されている」とは、複数の第3連結部材と複数の第4連結部材とが、上下方向に並ばないように互い違いに配置されていることであり、所謂千鳥打ちの工法で打設されていることを意図している。
【0052】
上記の付記(1)~(3)の構成によれば、例えば、面材と柱等とを一般的に使用される倍以上の連結部材によって連結することができ、面材から一つの連結部材に伝達される力が分散されて弱まることに加え、連結部材自身の耐久性や抜け出しに対する抵抗力も高いため、連結部材の破断、柱及び受材からの連結部材の抜け出し、柱及び受材や面材の破断に対する抵抗力が高められている。
【0053】
また、付記(3)の構成によれば、柱に対して打設された複数の第1連結部材と複数の第2連結部材とが水平方向に並ばないように配置されていることにより、柱に打設する連結部材の数を増やした場合でも、面材に亀裂が生じることを抑制することができる。
【0054】
また、付記(6)の構成によれば、上方横設材側受材(横受材8)、および下方横設材(横受材8)のそれぞれに対して打設された複数の第3連結部材と複数の第4連結部材とが上下方向に並ばないように配置されていることにより、各受材に打設する連結部材の数を増やした場合でも、面材に亀裂が生じることを抑制することができる。
【0055】
また、凹部41,51は、単に柱4,5に切削形成されている構成として説明したが、これに限らず、左右面および前後面の少なくとも一方が柱に固定された弾性部材によって構成されていてもよい。同様に、土台2、梁3、間柱6、縦受材7、横受材8に弾性部材が配設されていてもよい。
【0056】
また、凹部41,51は、左右面と前後面とが略直交している構成として説明したが、これに限らず、左右面と前後面との間の角度が鋭角または鈍角に構成されていてもよく、端面40aから柱4,5の前面または後面に連続する直線状または湾曲状に構成されていてもよい。
【0057】
また、面材は、構造用合板9として説明したが、これに限らず、石膏ボード、中密度繊維板等、他の種類の面材を使用してもよく、前方側および後方側の一方に面材を複数使用してもよい。
【0058】
また、構造用合板9は、前方側および後方側それぞれに配設されている構成として説明したが、これに限らず、前方側または後方側の一方のみに配設されていてもよい。
【0059】
また、構造用合板9は、横受材8を介して土台2、梁3に連結されている構成として説明したが、これに限らず、土台2や梁3に凹部を形成して凹部内に構造用合板9の上端部または下端部を挿嵌する、土台や梁の前後方向の寸法や固定位置を調節する等により直接連結されていてもよい。
【0060】
また、前記実施例の耐力壁10は、所謂床勝ちの構成として説明したが、これに限らず、図8に示される変形例1の耐力壁100ように、土台2に間柱6、縦受材7、土台2側の横受材8が当接して直接固定されている、所謂壁勝ちであってもよい。壁勝ちであっても、土台2と梁3との間に挿嵌された構造用合板9の上下の側辺9T,9D(図6参照)が凹部41,51に略直交して延びる土台2または梁3に当接しているため、柱4,5の立設方向に作用する外力に対する抵抗力を高めることができる。
【0061】
また、柱4,5には、立設方向に沿って構造用合板9の上下方向の寸法と略同一の凹部41,51が形成されている構成として説明したが、これに限らず、構造用合板9の上下方向の寸法よりも長い凹部が立設方向に沿って一つ形成されていてもよく、構造用合板9の上下方向の寸法よりも短い凹部が立設方向に沿って一つまたは複数の凹部が形成されていてもよい。その一例として図9に示される変形例2の耐力壁110のように、柱104,105には、上下方向に所定間隔置きに複数の凹部141,151が形成され、構造用合板109には、凹部141,151に嵌合可能な複数の凸部190が形成されていてもよい。
【0062】
また、柱4,5は、通柱または管柱として説明したが、これに限らず、共に管柱を使用した梁勝ちとしてもよく、適宜変更されてもよい。
【0063】
また、上方横設材は、梁3である構成として説明したが、これに限らず、胴差し、一対の柱の上方側端部に渡設された貫等、柱の上方側を連結するものであってもよい。下方横設材は、土台2である構成として説明したが、これに限らず、基礎1、一対の柱の下方側端部に渡設された貫等、柱の下方側を連結するものであればよい。
【0064】
また、連結部材は、釘Nである構成として説明したが、これに限らず、木ネジ、ボルトナット、接着材等に適宜変更してもよく、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0065】
また、床材は、床合板11である構成として説明したが、これに限らず、石膏ボード、中密度繊維板等、他の種類の面材および板材を使用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 基礎
2 土台(下方横設材)
3 梁(上方横設材)
4,104 通柱
5,105 管柱
6 間柱(間受材)
7 縦受材
8 横受材
9,109 構造用合板(面材)
9B 裏面
9L,9R 側辺
10,100,110 耐力壁
11 床合板(床材)
40,50 側端部
41,51,141,151 凹部
42,52 左右面(凹部の端面)
N 釘(連結部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10