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特開2024-144718半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144718
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/302 20060101AFI20241003BHJP
   G01R 31/303 20060101ALI20241003BHJP
   G01R 31/311 20060101ALI20241003BHJP
   G01R 31/3177 20060101ALI20241003BHJP
   G01R 31/3183 20060101ALI20241003BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20241003BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20241003BHJP
   G01N 25/72 20060101ALI20241003BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20241003BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01R31/302
G01R31/303
G01R31/311
G01R31/3177
G01R31/3183
G01R31/28 L
G01R31/26 G
G01N25/72 G
G01N21/47 B
G01N21/49 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024129090
(22)【出願日】2024-08-05
(62)【分割の表示】P 2020014907の分割
【原出願日】2020-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】活洲 政敬
(72)【発明者】
【氏名】荒田 育男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 能弘
(72)【発明者】
【氏名】石塚 利道
(57)【要約】
【課題】半導体故障解析装置の分解能を向上させる。
【解決手段】半導体故障解析装置は、半導体デバイス100に刺激信号を印加するテスタ2と、半導体デバイス100に照射される照射光L1を生成する光源3と、照射光L1の光路上に配置される固浸レンズ4と、反射光L2を受け、反射光L2に応じる検出信号を出力する光検出部5と、光源3と固浸レンズ4との間に配置されて固浸レンズ4を介して半導体デバイス100に照射光L1を出射すると共に、固浸レンズ4と光検出部5との間に配置されて固浸レンズ4を介して受けた反射光L2を光検出部5に出射する光学系6と、検出信号を利用して半導体デバイス100の故障箇所に関する情報を得るコンピュータ7と、を備える。光源3は、中心波長が880nm以上980nm以下である照射光L1を出射する。固浸レンズ4は、GaAsによって形成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺激信号に対する応答を利用して半導体デバイスが含む故障箇所を解析する半導体故障解析装置であって、
前記半導体デバイスに刺激信号を印加する信号生成部と、
前記半導体デバイスに照射されるCW光である照射光を生成する光源と、
前記照射光の光路上に配置される固浸レンズと、
前記照射光が前記半導体デバイスで反射されて生成された反射光を受け、前記刺激信号に対する前記半導体デバイスの応答の影響を受けた前記反射光に応じる検出信号を出力する光検出部と、
前記光源と前記固浸レンズとの間に配置されて前記固浸レンズを介して前記半導体デバイスに前記照射光を出射すると共に、前記固浸レンズと前記光検出部との間に配置されて前記固浸レンズを介して受けた前記反射光を前記光検出部に出射する光学系と、
前記検出信号から前記半導体デバイスの故障箇所に関する情報を得る解析部と、を備え、
前記光源は、中心波長が880nm以上980nm以下である前記照射光を出射し、前記固浸レンズは、ガリウムヒ素(GaAs)によって形成されている、半導体故障解析装置。
【請求項2】
前記照射光は、中心波長が900nm以上960nm以下である、請求項1に記載の半導体故障解析装置。
【請求項3】
前記照射光は、中心波長に対して20nmの帯域を有する、請求項1又は2に記載の半導体故障解析装置。
【請求項4】
前記解析部は、熱源位置特定部を有し、
前記熱源位置特定部は、前記検出信号及び前記刺激信号に基づいて、前記刺激信号に対する応答として前記半導体デバイスに生じる熱源の位置を特定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体故障解析装置。
【請求項5】
前記解析部は、動作周波数特定部を有し、
前記動作周波数特定部は、前記検出信号及び前記刺激信号に基づいて、前記刺激信号に対する応答として前記半導体デバイスに生じる所定の周波数で動作する位置を特定する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体故障解析装置。
【請求項6】
刺激信号に対する応答を利用して半導体デバイスが含む故障箇所を解析する半導体故障解析方法であって、
前記半導体デバイスに刺激信号を印加する信号印可ステップと、
中心波長が880nm以上980nm以下であり、CW光である照射光を前記半導体デバイスに照射する光照射ステップと、
前記照射光が前記半導体デバイスで反射されて生成された反射光を受け、前記刺激信号に対する前記半導体デバイスの応答の影響を受けた前記反射光に応じる検出信号を出力する光検出ステップと、
前記検出信号から前記半導体デバイスの故障箇所に関する情報を得る解析ステップと、を備え、
前記光照射ステップにおいて、前記照射光の光路上に配置された固浸レンズを介して前記半導体デバイスに前記照射光を出射し、
前記光検出ステップにおいて、前記固浸レンズを介して前記反射光を検出し、
前記固浸レンズは、ガリウムヒ素(GaAs)によって形成されている、半導体故障解析方法。
【請求項7】
前記照射光は、中心波長が900nm以上960nm以下である、請求項6に記載の半導体故障解析方法。
【請求項8】
前記照射光は、中心波長に対して20nmの帯域を有する、請求項6又は7に記載の半導体故障解析方法。
【請求項9】
前記半導体デバイスは、厚さが50nm以上200nm以下の基板を有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の半導体故障解析方法。
【請求項10】
前記刺激信号に対する前記半導体デバイスの応答は、前記半導体デバイスの屈折率の変化である、請求項6~9のいずれか一項に記載の半導体故障解析方法。
【請求項11】
前記解析ステップは、前記検出信号及び前記刺激信号に基づいて、前記半導体デバイスに生じる熱源の位置を特定する、請求項10に記載の半導体故障解析方法。
【請求項12】
前記刺激信号に対する前記半導体デバイスの応答は、前記半導体デバイスに生じる所定の周波数の動作である、請求項6~9のいずれか一項に記載の半導体故障解析方法。
【請求項13】
前記解析ステップは、前記検出信号及び前記刺激信号に基づいて、前記半導体デバイスに生じる所定の周波数で動作する位置を特定する、
請求項12に記載の半導体故障解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化が進んでいる。半導体デバイスの微細化にあっては、半導体デバイスを製造するための露光技術やパターニング技術の向上が望まれる。また、これらの技術によって製造された半導体デバイスが正常に動作するか否か、さらには、正常に動作しない場合には、不具合を生じている原因を明らかにする技術も重要である。
【0003】
特許文献1、2は、半導体デバイスを検査する装置を開示する。これらの検査装置は、電気信号が与えられた半導体デバイスに光を照射する。半導体デバイスに照射された光は、半導体デバイスの状態に応じた反射光となる。そして、これらの検査装置は、反射光を利用して、半導体デバイスの動作状態に関する情報を得る。特許文献1の検査装置は、所定の周波数で動作している半導体デバイスの部位に関する情報を得る。特許文献2の検査装置は、半導体デバイスの故障箇所に生じる熱源に関する情報を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-92514号公報
【特許文献2】国際公開第2016/056110号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体故障解析装置の技術分野でも、より微細な領域を解析するために、分解能のさらなる向上が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、分解能を向上させることが可能な半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、刺激信号に対する応答を利用して半導体デバイスが含む故障箇所を解析する半導体故障解析装置であって、半導体デバイスに刺激信号を印加する信号生成部と、半導体デバイスに照射される照射光を生成する光源と、照射光の光路上に配置される固浸レンズと、照射光が半導体デバイスで反射されて生成された反射光を受け、反射光に応じる検出信号を出力する光検出部と、光源と固浸レンズとの間に配置されて固浸レンズを介して半導体デバイスに照射光を出射すると共に、固浸レンズと光検出部との間に配置されて固浸レンズを介して受けた反射光を光検出部に出射する光学系と、検出信号から半導体デバイスの故障箇所に関する情報を得る解析部と、を備え、光源は、中心波長が880nm以上980nm以下である照射光を出射し、固浸レンズは、ガリウムヒ素(GaAs)によって形成されている。
【0008】
この半導体故障解析装置は、刺激信号が与えられた半導体デバイスの故障箇所を特定するにあたり、中心波長が880nm以上980nm以下である照射光をガリウムヒ素によって形成された固浸レンズを介して、半導体デバイスに照射する。中心波長が880nm以上980nm以下である照射光によれば、解析対象である半導体デバイスを十分に透過するので、故障箇所を特定し得る光強度を持った反射光を得ることができる。さらに、ガリウムヒ素によって形成された固浸レンズの屈折率は、空気の屈折率よりも高いので開口数(NA)を高めることができる。その結果、照射光のスポット径を小さくすることが可能になるので、分解能を向上させることができる。
【0009】
一形態において、光源は、中心波長が900nm以上960nm以下である照射光を出射してもよい。この構成によれば、分解能を好適に向上させることができる。
【0010】
一形態において、解析部は、解析部は、熱源位置特定部を有し、熱源位置特定部は、検出信号及び刺激信号に基づいて、刺激信号に対する応答として半導体デバイスに生じる熱源の位置を特定してもよい。この構成によれば、半導体デバイスの内部に発生した熱源の位置を特定することができる。
【0011】
一形態において、解析部は、動作周波数特定部を有し、動作周波数特定部は、検出信号及び刺激信号に基づいて、刺激信号に対する応答として半導体デバイスに生じる所定の周波数で動作する位置を特定してもよい。この構成によれば、半導体デバイスに生じる所定の周波数で動作する位置を特定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分解能を向上させることが可能な半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、半導体故障解析装置の構成要素を示すブロック図である。
図2図2は、半導体デバイスの故障箇所を特定する手段の例を説明するための図である。
図3図3は、固浸レンズを構成する材料ごとに、光の波長と光透過率との関係を示すグラフである。
図4図4は、固浸レンズを構成する材料ごとに、光の波長と屈折率との関係を示すグラフである。
図5図5は、ガリウムヒ素によって形成された固浸レンズが有する光の波長と光透過率との関係を示すグラフである。
図6図6は、シリコンが有する光透過性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に示すように、半導体故障解析装置は、被検査体である半導体デバイス100などの被検査体における故障箇所を特定する。以下の説明では、半導体故障解析装置を単に解析装置1と称する。
【0016】
半導体デバイス100としては、例えば、トランジスタ等のPNジャンクションを有する集積回路(例えば、小規模集積回路(SSI:Small Scale Integration)、中規模集積回路(MSI:Medium Scale Integration)、大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)、超大規模集積回路(VLSI:Very Large Scale Integration)、超々大規模集積回路(ULSI:Ultra Large Scale Integration)、ギガ・スケール集積回路(GSI:Giga Scale Integration))、大電流用/高圧用MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタ等のパワーデバイス、及びメモリ・ストレージデバイス等が挙げられる。
【0017】
なお、被検査体としては、固片化された半導体デバイス100に限定されない。被検査体は、複数の半導体デバイス100が形成されている半導体ウェハであってもよい。
【0018】
図2は、故障箇所を特定する手法を概念的に示す図である。図2に示す半導体デバイス100は、解析装置1に配置された状態に合わせており、照射光L1を受ける面を上側にして図示している。半導体デバイス100は、一例として、保護層101、配線層102、プロセス層103、絶縁層104、基板105を含む積層構造を有する。配線層102は、金やアルミニウムといった金属製の配線パターンを含む。プロセス層103は、MOSトランジスタ103aといった複数の電気的機能部を含む。基板105は、シリコンによって形成されており、その厚さは50nm以上200nm程度であり、一例として80nmである。この半導体デバイス100に光を照射すると、ある層では光が透過する。また、別の層では光が反射する。例えば、基板105側から光を照射すると、基板105及び絶縁層104において光が透過し、プロセス層103において光が反射することがあり得る。
【0019】
反射光の強度は、照射光L1の強度よりも基本的に小さい。つまり、反射光の強度は、基板105及び絶縁層104を透過する間に光が受ける要因によって減衰する。例えば、基板105を構成する材料の光透過性の影響を受ける。また、光の強度は、光路を構成する材料の屈折率の影響を受けることもある。さらに、光の強度は、光路を構成する層に形成される電界の影響を受けることもある。そこで、入射光の強度に対する反射光の強度の割合を見かけの反射率として定義する。反射率の変化が屈折率の変化や電界の影響を反映しているので、反射率の分布を得ることにより、半導体デバイス100の内部の状態を知ることができる。例えば、配線層102に抵抗値が高い箇所102aが発生しており、当該箇所においてジュール熱が生じているとき、ジュール熱によって温度が上昇した絶縁層104及び基板105の屈折率に変化が生じた箇所105aが生じる。この屈折率の変化は、反射率の変化として現れる。つまり、反射率の分布を知ることにより、異常な発熱を生じている箇所の位置(つまり、故障箇所の位置)を特定することが可能になる。
【0020】
再び図1を参照する、解析装置1は、テスタ2(信号生成部)と、光源3と、固浸レンズ4と、光検出部5と、光学系6と、コンピュータ7と、を有する。また、解析装置1は、その他の付加的な構成要素を有していてもよい。例えば、解析装置1は、半導体デバイス100を光学系6に対して相対的に移動させるステージを有してもよい。
【0021】
テスタ2は、刺激信号を出力する。テスタ2は、半導体デバイス100に接続されており、刺激信号を半導体デバイス100に印加する。テスタ2は、コンピュータ7から入力される制御信号に基づいて刺激信号を生成する。そして、テスタ2は、制御信号に基づいて刺激信号の出力の開始と停止とを行う。刺激信号は、解析の態様によってその特性を決定してよい。また、電源やパルスジェネレータ等をテスタ2として用いてもよい。
【0022】
例えば、解析の一態様として熱源位置を特定する解析がある。この場合には、テスタ2は、刺激信号として比較的低い周波数の変調電流を与える。例えば、半導体デバイス100の内部にショート箇所が含まれている場合には、変調電流に起因してショート箇所が発熱する。その結果、半導体デバイス100には、熱源が生じる。変調電流に起因して発熱する熱源の温度は、変調電流の周波数に応じて周期的に変化する。温度の変化は、熱源の周囲であって照射光及び反射光が通過する部材の屈折率に変化を及ぼす。この屈折率の変化は、反射光の強度に変化をもたらすので、その結果、照射光の強度に対する反射光の強度の度合いである反射率が変化する。この熱源の温度変化に起因する反射率の変化を刺激信号に対する応答として利用することにより、半導体デバイス100が含む故障箇所の一例であるショート箇所を特定できる。
【0023】
例えば、解析の別の態様として、目的とした周波数で動作している回路の位置を特定する解析がある。このような解析技術として、EOP(Electro Optical Probing)やEOFM(Electro-Optical Frequency Mapping)と称される光プロービング技術が知られている。光プロービング技術では、光源から出射された光を集積回路に照射し、集積回路で反射された反射光を光センサで検出して、検出信号を取得する。そして、取得した検出信号において、目的とする周波数を選び出し、その振幅エネルギーを時間的な経過として表示したり、2次元のマッピングとして表示したりする。つまり、光プロービング技術では、駆動中の半導体デバイス100からの光の強度変調に基づいて、半導体デバイス100の故障解析が行われる。そこで、テスタ2は、所定の変調周波数を有する電気信号を半導体デバイス100に印加する。この場合の変調周波数は、熱源位置を特定する解析の態様における刺激信号の周波数よりも高いことが多い。例えば、テスタ2は、刺激信号として半導体デバイス100の駆動信号と同等の周波数の駆動電流を与える。
【0024】
上記のように、解析の態様にはいくつか種類があり得る。しかし、その違いは、半導体デバイス100に印加する刺激信号の態様と、刺激信号に応じて得られる検出信号の処理内容である。つまり、解析の態様が異なったとしても、解析装置1の構成としては、おおむね相違はない。
【0025】
光源3は、照射光L1を発生する。照射光L1の中心波長は、880nm以上980nm以下であってよい。このような中心波長に対して、照射光L1は、20nm程度の帯域を有してもよい。さらには、照射光L1の中心波長は、900nm以上960nm以下であってよい。このような中心波長に対して、照射光L1は、20nm程度の帯域を有してもよい。
【0026】
光源3は、上記の波長特性を有する照射光L1が出射可能な構成を適宜採用してよい。例えば、光源3はSLD(Super Luminescent Diode)やLED(Light EmittingDiode)、又はランプ光源とバンドパスフィルタ等の光学フィルタを組み合わせたインコヒーレント光源等で構成されていてもよい。また、光源3は、LD(Laser Diode)等のレーザー光源等であってもよい。また、照射光L1はCW光であってもよいし、パルス光であってもよい。
【0027】
光源3から出力された照射光L1は、まず、光学系6に入射される。光学系6は、照射光L1を固浸レンズ4に導く。例えば、光学系6は、偏光ビームスプリッタ61及び対物レンズ62を含んでいる。さらに、光学系6は、これらの他に、照射光L1のための光学系品を適宜採用してよい。例えば、光学系6は、半導体デバイス100における照射光L1の照射位置を変更するための光スキャナを含んでもよい。光スキャナは、例えば、ガルバノミラースキャナやポリゴンミラースキャナ、MEMSミラースキャナなどであり、照射光L1を半導体デバイス100の所望の位置に導く。光学系6から出力された照射光L1は、固浸レンズ4を介して半導体デバイス100に照射される。より詳細には、照射光L1は半導体デバイス100に対して設定された計測点に照射される。
【0028】
固浸レンズ4は、半球形状または超半球形状であり、半導体デバイス100に対して光学的に密着するように配置されている。固浸レンズ4は、半導体デバイス100における解析対象となる位置に対して照射光L1を集光しながら照射する。従って、固浸レンズ4は、半導体デバイス100へと照射される照射光L1と、半導体デバイス100から出射される反射光L2と、に対して透過性を有する材料により構成されている。
【0029】
このような材料として、固浸レンズ4は、ガリウムヒ素(GaAs)を採用する。以下、GaAsの光学的な特性としての光透過性について説明する。図3は、GaAsの光透過率を示す。また、図3には、比較例として、ガリウムリン(GaP)及びシリコン(Si)の光透過率も併せて示す。横軸は、光の波長であり、縦軸は光透過率を示す。グラフG3a~G3eは、GaAsの光透過率を示す。グラフG3fは、GaPの光透過率を示す。グラフG3gは、Siの光透過率を示す。
【0030】
グラフG3a~G3eを参照すると、GaAsは、850nmより長い波長の光を透過する性質を有することがわかる。さらに詳細には、GaAsは、光透過率と光の波長との関係において、光透過率が急激に変化する帯域を有する。このような帯域に含まれる波長を、単にカットオフ波長とも呼ぶ。GaAsのカットオフ波長は、例えば880nm以上980nm以下の範囲に存在する。光の波長が短波長から長波長側にシフトすると、光透過率は、0%から80%以上にまで急激に増加する。さらに、光透過率と光の波長との関係は、GaAsの温度によっても変化する。グラフG3a~G3eは、それぞれ温度が0℃(グラフG3a)、50℃(グラフG3b)、100℃(グラフG3c)、150℃(グラフG3d)、200℃(グラフG3e)であるときの光透過率を示す。つまり、GaAsの温度が高くなるにしたがって、光透過率が急激に変化するカットオフ波長は、長波長側に移動する。
【0031】
固浸レンズの材料として、例えば、GaPが採用されることもある。グラフG3fを参照すると、GaPは、500nmより長い波長の光を透過することがわかる。例えば、GaPのカットオフ波長は、おおむね500nm以上600nmの範囲に含まれる。つまり、GaPのカットオフ波長は、GaAsのカットオフ波長よりも短い。換言すると、GaAsのカットオフ波長は、GaPのカットオフ波長よりも長い。
【0032】
また、固浸レンズの材料として、例えば、Siが採用されることもある。グラフG3gを参照すると、Siは、1000nmより長い波長の光を透過することがわかる。例えば、固浸レンズとして有効に使用可能な厚さのSiのカットオフ波長は、おおむね1000nm以上1200nmの範囲に含まれる。つまり、Si固浸レンズのカットオフ波長は、GaAsのカットオフ波長よりも長い。換言すると、GaAsのカットオフ波長は、Siのカットオフ波長よりも短い。
【0033】
GaAsの別の光学的な特性である屈折率について説明する。図4は、GaAs、GaP及びSiの屈折率と波長との関係を示す。グラフG4aは、GaAsの屈折率を示す。グラフG4bは、GaPの屈折率を示す。グラフG4cは、Siの屈折率を示す。例えば、グラフG4aによれば、GaAsの屈折率は、3.40以上4.40以下程度である。例えば、入射される光の波長が1064nmであるとき、GaAsの屈折率は、3.47である。また、入射される光の波長が940nmであるとき、GaAsの屈折率は、3.57である。
【0034】
このGaAsの屈折率は、例えば、グラフG4bに示されるGaPの屈折率よりも高い。より詳細には、図4の横軸に示される500nmから1500nmの範囲のすべてにおいて、GaAsの屈折率は、GaPの屈折率よりも高い。例えば、入射される光の波長が780nmであるとき、GaPの屈折率は、3.21である。また、入射される光の波長が670nmであるとき、GaPの屈折率は、3.27である。従って、GaAsは、屈折率が高いという点でGaPよりも分解能の向上に有利である。
【0035】
再び図1を参照する。照射光L1に応じて計測点で反射された光(反射光L2)は、固浸レンズ4及び対物レンズ62を経て偏光ビームスプリッタ61に入力される。この時、反射光L2の光路にショートパスフィルタを配置することにより、半導体デバイス100で発生した赤外線を遮光することができる。さらに、偏光ビームスプリッタ61に入力される光は、λ/4板を二回透過することにより、偏光方向が傾くため、偏光ビームスプリッタ61は反射光を透過する。偏光ビームスプリッタ61から出射された反射光L2は、光検出部5に入力される。
【0036】
このように、本実施形態の光学系はコンフォーカル光学系が用いられ、限られた焦点範囲からの反射光L2が検出できるように構成されている。コンフォーカル光学系を構成する要素としては、ピンホールを採用してもよいし、光ファイバを用いてコア及びクラッドの屈折率差を利用した構成を採用してもよい。
【0037】
光検出部5は、照射光L1に応じて半導体デバイス100において反射された反射光L2の光強度などを検出する。また、光検出部5は、検出した反射光L2をアナログ信号である検出信号に変換し出力する。光検出部5は、APD(Avalanche PhotoDiode)やPD(PhotoDiode)、PMT(PhotoMultiplier Tube)、SiPM(Siliconphotomultipliers)等である。
【0038】
コンピュータ7は、半導体デバイス100の故障箇所を特定するデータ解析部71と、解析装置1を構成する各種要素の動作を制御する制御部72と、を有する。コンピュータ7は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えて構成されている。かかるコンピュータ7としては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)などが挙げられる。コンピュータ7は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。さらに、データ解析部71は、解析の態様に応じた処理部を含んでよい。例えば、データ解析部71は、熱源位置特定部71a及び/又は動作周波数特定部71bを含む。熱源位置特定部71aは、熱源の位置を特定するための処理を行う。動作周波数特定部71bは、検出信号及び刺激信号に基づいて、刺激信号に対する応答として半導体デバイスに生じる所定の周波数で動作する位置を特定する処理を行う。
【0039】
また、制御部72は、例えば、光制御部72a及びテスタ制御部72bを含む。光制御部72aは、光源3及び光学系6に対して制御信号を出力する。このような制御信号として、例えば、照射光L1を走査するために光スキャナを駆動する信号が挙げられる。また、テスタ制御部72bは、テスタ2から半導体デバイス100に出力する刺激信号を制御するための制御信号を出力する。
【0040】
<作用効果>
この解析装置1は、刺激信号が与えられた半導体デバイス100の故障箇所を特定するにあたり、中心波長が880nm以上980nm以下である照射光L1をGaAsによって形成された固浸レンズ4を介して、半導体デバイス100に照射する。中心波長が880nm以上980nm以下である照射光L1によれば、解析対象であってシリコンにより形成された半導体デバイス100を十分に透過する。その結果、故障箇所を特定し得る光強度を持った反射光L2を得ることができる。さらに、GaAsによって形成された固浸レンズ4の屈折率は、空気やGaPの屈折率よりも高いので開口数(NA)を高めることができる。その結果、照射光L1のスポット径を小さくすることが可能になるので、分解能を向上させることができる。
【0041】
半導体デバイス100に刺激信号を印加すると、刺激信号の態様に関わらずパターン配線や電気的機能部において発熱が生じる。そして、故障箇所においては、発熱の程度が大きくなる傾向にある。このような発熱を利用する解析において、中心波長が880nm以上980nm以下である照射光L1と、GaAsによって形成した固浸レンズ4と、の組み合わせは、特に有利である。
【0042】
図5は、図3と同様に、GaAsの波長と光透過率との関係を示す。図5は、890nmから960nmの範囲を拡大して示している。グラフG5a~G5fは、それぞれGaAsの温度が60℃(グラフG5a)、70℃(グラフG5b)、80℃(グラフG5c)、90℃(グラフG5d)、100℃(グラフG5e)、110℃(グラフG5f)であるときの光透過率を示す。例えば、照射光L1の波長を920nmとし、固浸レンズ4の温度が60℃から110℃の間で変化した場合を仮定する。この場合には、固浸レンズ4の光透過率は、5%から70%の範囲で変化する。つまり、固浸レンズ4の光透過率は、固浸レンズ4の温度に応じて大きく変化する。
【0043】
照射光L1及び反射光L2は、半導体デバイス100の基板105等だけでなく、固浸レンズ4も通る。そして、照射光L1及び反射光L2は、この固浸レンズ4を通る際に、固浸レンズ4の温度変化に起因する光透過率の変化の影響を受ける。つまり、照射光L1及び反射光L2は、熱源から発せられる熱によって温度が変化した半導体デバイス100の屈折率の影響に加えて、固浸レンズ4の光透過率の変化の影響も受けることになる。その結果、発熱によって反射光L2の光強度が大きく変化するので、反射率の変化も大きくなる。そうすると、計測位置ごとの温度の相違が僅かであっても、大きな反射率の変化として現れるので、温度に対する分解能を向上することが可能である。
【0044】
要するに、照射光L1の中心波長が、GaAsのカットオフ周波数の帯域に含まれているので、温度に対する分解能が向上する。つまり、照射光L1の中心周波数は、正常温度と異常温度とを包含する温度範囲において大きな光透過率の変化が得られる値に設定してよい。例えば、正常温度が60℃であり、100℃以上の温度を異常と判断するような場合には、中心波長を920nmに設定してよい。このような設定によれば、固浸レンズ4が100℃以上に加熱される熱源が存在する場合に、反射率が大幅に低下する現象が現れるからである。
【0045】
また、中心波長が880nm以上980nm以下である照射光L1と、GaAsによって形成した固浸レンズ4と、の組み合わせによれば、十分に解析に供することができる光強度を有する反射光L2を得ることができる。例えば、図2に示されるように、照射光L1及び反射光L2は、基板105を通過するときに、シリコンの光透過率に応じて減衰される。図6のグラフG6は、シリコンにより形成された基板105の厚さと、光透過率との関係を示す。また、グラフG6は、光の波長が940nmであるときの、光透過率を示す。横軸は、基板105の厚さを示す。縦軸は、光透過率を示す。図6に示すように、基板105の厚さが大きくなると、光透過率は低下する。
【0046】
例えば、半導体デバイス100の基板105の厚さとしてしばしば採用される80μmであるとき、光透過率は23%程度である。また、半導体デバイス100の基板105の厚さが40μmであるとき、48%程度である。これらの光透過率によれば、各種の解析に供し得る光強度を有する反射光L2を得ることができる。つまり、十分な光強度を有する反射光L2を得るために、基板105を研磨などによって薄くする加工を行う必要がない。その結果、半導体デバイス100の故障解析を行う際に、基板105の研磨といった付加的な作業が不要になるので、故障解析を簡易に行うことができる。さらに、基板105を薄くすると半導体ウェハのハンドリングが難しくなる。しかし、本実施形態によれば、しばしば採用される基板厚さを有する半導体デバイス100であっても、基板105の研磨なしに解析することができるので、半導体ウェハを容易に取り扱うことができる。
【0047】
以上、本発明の一形態について説明した。本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0048】
例えば、半導体デバイス100に対する光学系6及び固浸レンズ4の配置について、上記実施形態では半導体デバイス100に対して基板105側に照射光L1を提供すると共に、基板105側から出力される反射光L2の検出を行う構成を例示した。例えば、半導体デバイスに対して上側(図2の保護層101側)から照射光L1を提供してもよい。この場合、固浸レンズ4は半導体デバイス100の保護層101に設置される。あるいは、半導体デバイス100に対して上側、下側の一方から検査光の照射、他方から電磁波の検出を行う構成としても良い。この場合、固浸レンズ4は半導体デバイスの上側、下側の両方にそれぞれ設置される。
【符号の説明】
【0049】
1…解析装置(半導体故障解析装置)、2…テスタ(信号生成部)、3…光源、4…固浸レンズ、5…光検出部、6…光学系、7…コンピュータ(解析部)、61…偏光ビームスプリッタ、62…対物レンズ、71…データ解析部、71a…熱源位置特定部、71b…動作周波数特定部、72…制御部、72a…光制御部、72b…テスタ制御部、100…半導体デバイス、L1…照射光、L2…反射光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6