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特開2024-144721疲労感軽減剤および疲労感軽減用飲食品組成物
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  • 特開-疲労感軽減剤および疲労感軽減用飲食品組成物 図1
  • 特開-疲労感軽減剤および疲労感軽減用飲食品組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144721
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】疲労感軽減剤および疲労感軽減用飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20241003BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241003BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L2/00 F
A23L2/38 R
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024129570
(22)【出願日】2024-08-05
(62)【分割の表示】P 2018144156の分割
【原出願日】2018-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】馬場 吉武
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 隼
(72)【発明者】
【氏名】瀧原 孝宣
(72)【発明者】
【氏名】越智 貴之
(57)【要約】
【課題】疲労感軽減作用を有するものを見出し、それを有効成分とする疲労感軽減剤、および当該疲労感軽減剤を含む疲労感軽減用飲食品組成物を提供する。
【解決手段】疲労感軽減剤であって、食酢由来の酢酸を有効成分とし、疲労感は就寝前の身体的疲労感を含む、疲労感軽減剤。また、疲労感を軽減するための飲食品組成物であって、上記疲労感軽減剤を含み、疲労感は就寝前の身体的疲労感を含む、疲労感軽減用飲食品組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疲労感軽減剤であって、食酢由来の酢酸を有効成分とし、前記疲労感は就寝前の身体的疲労感を含む、疲労感軽減剤。
【請求項2】
前記疲労感は起床後の精神的疲労感を含む、請求項1に記載の疲労感軽減剤。
【請求項3】
前記食酢は黒酢である、請求項1または2に記載の疲労感軽減剤。
【請求項4】
1日1回以上、酢酸に換算して1日当たり620mg以上投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の疲労感軽減剤。
【請求項5】
一週間以上連続して投与される、請求項4に記載の疲労感軽減剤。
【請求項6】
前記疲労感はVAS(Visual Analogue Scale)検査によって評価される、請求項1~5のいずれか一項に記載の疲労感軽減剤。
【請求項7】
疲労感を軽減するための飲食品組成物であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の疲労感軽減剤を含み、前記疲労感は就寝前の身体的疲労感を含む、疲労感軽減用飲食品組成物。
【請求項8】
飲料の形態である、請求項7に記載の疲労感軽減用飲食品組成物。
【請求項9】
酢酸含有量が500~3500mgである、請求項7または8に記載の疲労感軽減用飲食品組成物。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の疲労感軽減剤または請求項7~9のいずれか一項に記載の飲食品組成物を投与することを含む、疲労感軽減作用を発揮させる方法(医療行為を除く)であって、前記疲労感は就寝前の身体的疲労感を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食酢由来の酢酸を有効成分とする疲労感軽減剤に関し、特に就寝前の身体的疲労感を軽減することのできる疲労感軽減剤に関するものである。また、本発明は、当該疲労感軽減剤を含む疲労感軽減用飲食品組成物、とりわけ飲料の形態をとる疲労感軽減用飲食品組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
現代の日本社会においては、疲労や倦怠感を自覚する人が増えている。特に、近年はIT化・24時間社会化が進むにつれ、ストレスを受ける機会も多く、休息や睡眠をとっても疲労感が容易に回復しない症状に悩む人の増加が問題となっている。
疲労感には、身体的な疲労感だけでなく、精神的な疲労感、さらには身体的な疲労感と精神的な疲労感とが複合的に関与したものも存在すると考えられており、特に現代人で増えている疲労感は、睡眠の質の低下やストレスの増加がその一因となっているものと考えられている。しかし、現代社会において睡眠の質を高めるのは難しく、一方でストレスを解消するために運動を行うことが考えられるが、かえってさらなる身体的疲労を蓄積してしまうといった新たな問題が生まれている。
【0003】
疲労感の軽減効果を標榜するものとして、医薬品、医薬部外品やサプリメント等が上市されているが、現代人にとっては、より自然な方法で疲労感を解消することが重要となっている。
【0004】
食酢は抗疲労効果を有すると言われているが(例えば、特許文献1参照)、人において試験した報告は少なく、どのような疲労が軽減されるかについての十分な知見が存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-204445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、疲労感軽減作用を有するものを見出し、それを有効成分とする疲労感軽減剤、および当該疲労感軽減剤を含む疲労感軽減用飲食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記問題を解決すべく研究を行った結果、食酢由来の酢酸が、疲労感軽減作用、とりわけ就寝前の身体的疲労感を軽減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的には、本発明は以下のとおりである。
【0008】
〔1〕 疲労感軽減剤であって、食酢由来の酢酸を有効成分とし、前記疲労感は就寝前の身体的疲労感を含む、疲労感軽減剤。
〔2〕 前記疲労感は起床後の精神的疲労感を含む、〔1〕に記載の疲労感軽減剤。
〔3〕 前記食酢は黒酢である、〔1〕または〔2〕に記載の疲労感軽減剤。
〔4〕 1日1回以上、酢酸に換算して1日当たり620mg以上投与される、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の疲労感軽減剤。
〔5〕 一週間以上連続して投与される、〔4〕に記載の疲労感軽減剤。
〔6〕 前記疲労感はVAS(Visual Analogue Scale)検査によって評価される、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の疲労感軽減剤。
〔7〕 疲労感を軽減するための飲食品組成物であって、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の疲労感軽減剤を含み、前記疲労感は就寝前の身体的疲労感を含む、疲労感軽減用飲食品組成物。
〔8〕 飲料の形態である、〔7〕に記載の疲労感軽減用飲食品組成物。
〔9〕 酢酸含有量が500~3500mgである、〔7〕または〔8〕に記載の疲労感軽減用飲食品組成物。
〔10〕 〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の疲労感軽減剤または〔7〕~〔9〕のいずれかに記載の飲食品組成物を投与することを含む、疲労感軽減作用を発揮させる方法(医療行為を除く)であって、前記疲労感は就寝前の身体的疲労感を含む、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る疲労感軽減剤および疲労感軽減用飲食品組成物によれば、食酢由来の酢酸を有効成分とすることにより、手軽に摂取することが可能でありながら、疲労感を軽減することができ、とりわけ就寝前の身体的疲労感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例飲料群およびプラセボ飲料群における身体的疲労感のVAS検査評価結果を表したグラフである。
図2図2は、実施例飲料群およびプラセボ飲料群における精神的疲労感のVAS検査評価結果を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔疲労感軽減剤〕
本実施形態に係る疲労感軽減剤は、食酢由来の酢酸を有効成分とするものである。本実施形態により軽減される疲労感は、就寝前の身体的疲労感を含む。
【0012】
ここで、本実施形態において、「疲労」とは、主に肉体的および精神的活動によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体活動能力や思考能力の減退状態をいう。「疲労感」とは、疲労が存在することを自覚する感覚をいい、多くの場合不快感と活動意欲の低下が認められる。
また、「身体的疲労感」とは、上記疲労の中でも特に身体の活動能力の減退状態があり、それを自覚している感覚をいう。かかる感覚は、「身体の疲れ」として評価できるほか、全体倦怠感、だるさ、脱力感等といった身体の活動意欲の低下としても評価することができる。
「就寝前の身体的疲労感」とは、就寝前30分以内に自覚される身体的疲労感をいうものとする。
【0013】
本実施形態に係る疲労感軽減剤は、運動負荷を受けた当日であって就寝前の身体的疲労感に対し、特に好適に適用することができる。ここで、運動負荷とは、上記身体的疲労感を付与する肉体的活動をいう。本実施形態の適用対象となる運動負荷は、例えば、カルボーネン法の計算式にもとづき、運動強度が50%以上(好ましくは50~70%)となる心拍数が10分以上(好ましくは30~60分程度)維持される程度の運動負荷であることが好ましい。また、運動負荷は、就寝前7~14時間の間に行われていることが好ましい。
ここで、運動負荷後の身体的疲労感は、通常、運動負荷からの時間経過とともに回復し、クレアチンキナーゼや乳酸等の各種疲労物質についても時間経過による代謝により減少し、さらに心拍、血流等も定常状態に近づくものと考えられている。しかし、本発明者らが得た知見によれば、一旦回復したと思われる疲労感が就寝前にぶり返すという事象が認められた。かかる事象に対し、本実施形態の疲労感軽減剤によれば、運動負荷後であって就寝前の身体的疲労感が軽減されるため、適用対象として特に好適である。
【0014】
本実施形態により軽減される疲労感は、起床後の精神的疲労感をさらに含むことが好ましい。
本実施形態において、「精神的疲労感」とは、上記疲労の中でも特に精神的活動能力の減退状態があり、それを自覚している感覚をいう。かかる感覚は、「精神的な疲れ」として評価できるほか、集中力・思考力の低下や感情の不安定化等としても評価することができる。さらに、精神的な疲労が身体的な疲労と複合化した状態となっている場合には、全体倦怠感、だるさ、脱力感等の身体の活動意欲の低下としても評価することもできる。
「起床後の精神的疲労感」とは、起床後30分以内に自覚される精神的疲労感である。
【0015】
本実施形態の一態様により軽減される、起床後の精神的疲労感は、上記運動負荷を受けた翌朝の起床後における精神的疲労感を含むことがさらに好ましい。
運動負荷等により身体的な疲労感が蓄積すると、活動能力の減退や活動意欲の低下により、動きたくても動きづらい状態となってしまって精神的なストレスが蓄積し、身体的な疲労感と精神的な疲労感と複合化した状態に陥ってしまうことがある。精神的な疲労感だけであれば、その原因となるストレスを解消するために運動を行うことが考えられるが、身体的な疲労感と精神的な疲労感とが複合的に関与している場合、運動によりかえってさらなる疲労感を蓄積してしまうといった新たな問題が生じ得る。
本実施形態の好ましい一態様によれば、運動負荷を受けた翌朝の起床後における精神的疲労感をも好適に軽減することができる。
【0016】
ここで、精神的疲労感は、外部から受ける精神的ストレスの他、睡眠の質の低下もその一因と考えられている。本実施形態において起床後の精神的疲労感が軽減される作用機序は必ずしも明らかでないが、本実施形態に係る疲労感軽減剤は就寝前の身体的疲労感を軽減することができるため、これにより、睡眠の質が改善され、起床後の精神的疲労感が軽減される可能性が考えられる。ただし、本実施形態の好ましい一態様による、起床後の精神的疲労感の軽減効果は、かかる作用機序に限定されるものではない。
【0017】
上記疲労感は個人の主観的な感覚ではあるが、可能な限り客観的に評価することが好ましく、例えば、抗疲労臨床評価ガイドライン(日本疲労学会)に準拠して評価することができる。また、上記疲労感は、被投与者の感覚を数値化することで評価されることが好ましく、VAS(Visual Analogue Scale)検査によって評価されることが好ましい。より具体的には、VASに基づき身体的疲労感を評価する場合、0~10.0cmのスケールにおいて(通常、長さ10.0cmの線の上で)、身体的疲労感が全くない状態を「0」cm、経験しうる最大の身体的疲労感を「10.0」cmとし、特定の時点(運動直後、運動後の所定時間経過後、就寝前、起床後)で被投与者自らが感じる身体的疲労感を、0(全くない)~10.0(経験しうる最大の身体的疲労感)の範囲内で評価させる。かかるVASによれば、疲労等の症状とその回復の程度をパラメーターとして評価することが可能になる。
【0018】
本実施形態の効果を評価する場合、2群における評点(通常は平均値)の差異が有意な差異であるか否かについて、有意確率(p)を算出することにより評価することができる。なお有意確率pの算出は、統計学上で既知の方法、例えばt検定により行ってもよい。一般的に有意差はp<0.05(5%)であるとされるが、有意差を示唆する数値としてp≦0.1を基準として評価を行うこともできる。
【0019】
本実施形態に係る疲労感軽減剤の有効成分は、食酢由来の酢酸である。
上記食酢は、食酢品質表示基準により定義されるものであり、醸造酢および合成酢が含まれ、醸造酢には、米酢、米黒酢、大麦黒酢等の穀物酢;りんご酢、ぶどう酢等の果実酢;などがさらに含まれる。これらの中でも、黒酢(米黒酢および大麦黒酢)であることが好ましい。
本実施形態においては、有効量の酢酸を含むものであれば、食酢をそのまま有効成分として用いてもよく、食酢から粗精製した酢酸を用いてもよい。
【0020】
本実施形態の疲労感軽減剤は、食酢由来の酢酸のみからなるものでも良いし、食酢由来の酢酸を製剤化したものでもよい。製剤化する場合は、水、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、液状、カプセル、粉末、顆粒、錠剤等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。また、疲労感軽減剤は、他の組成物(例えば、後述する飲食品組成物等)に配合して使用することができる。なお、本実施形態の疲労感軽減剤は、必要に応じて、疲労感軽減作用を有する他の成分等を、食酢由来の酢酸とともに配合して有効成分として用いることができる。
【0021】
本実施形態の疲労感軽減剤を製剤化した場合、食酢由来の酢酸の含有量は、特に限定されるものではなく、目的、投与方法、投与量等に応じて適宜設定することができる。
【0022】
本実施形態に係る疲労感軽減剤の投与方法は、経口投与であることが好ましい。
疲労感軽減剤の投与回数等は、疲労感の症状に応じて適宜設定することができるが、例えば、投与回数は1日1回以上とすることが好ましい。投与量は、酢酸に換算して1日当たり500mg以上とすることが好ましく、620mg以上とすることが特に好ましい。投与量の上限は特に限定されないが、酢酸に換算して1日当たり3500mg以下とすることができる。
【0023】
疲労感軽減剤の投与期間は、2日以上連続して投与することが好ましく、一週間以上連続して投与することが特に好ましい。投与のタイミングは、身体的疲労感の原因となる肉体的活動や運動負荷の後またはその最中のみならず、疲労感等の症候を予防する観点から、活動前であってもよい。例えば、身体的疲労感を生じせしめる運動負荷の前に、被投与者に予め疲労感軽減剤を投与することもできる。
【0024】
以上述べた本実施形態に係る疲労感軽減剤によれば、就寝前の身体的疲労感を軽減することができ、好ましくは起床後の精神的疲労感をも軽減することができる。また、かかる疲労感軽減剤を投与することにより、疲労感(とりわけ就寝前の身体的疲労感)の軽減作用を発揮させる方法(医療行為を除く)とすることができる(本発明に係る疲労感軽減作用を発揮させる方法の一態様に該当)。
【0025】
〔疲労感軽減用飲食品組成物〕
本実施形態に係る疲労感軽減用飲食品組成物は、上記実施形態に係る疲労感軽減剤を含むものである。本実施形態により軽減される疲労感は、就寝前の身体的疲労感を含む。
飲食品組成物の摂取方法、摂取回数、摂取量、摂取期間等は特に限定されないが、前述した疲労感軽減剤と同様であることが好ましい。
【0026】
ここで、飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいう。したがって、本実施形態における「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品,栄養機能食品)等を幅広く含むものである。本実施形態に係る飲食品は、当該飲食品またはその包装に、食酢由来の酢酸が有する疲労感軽減作用を表示することのできる飲食品であることが好ましく、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品,栄養機能食品)であることが特に好ましい。
【0027】
飲食品組成物の形態は特に限定されないが、摂取の容易さから、飲料またはカプセルの形態であることが好ましく、飲料の形態であることが特に好ましい。飲料の中でも、酢飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク、果実飲料、野菜飲料、野菜果汁混合飲料、機能性飲料、炭酸飲料、乳性飲料、コーヒー飲料、茶飲料等を例示することができ、特に種々の生理効果を有し、健康に寄与する飲料として、酢飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク等とするならば、呈味がよく、疲労感軽減効果も期待されるため好ましい。
飲料の形態とする場合は、そのまま飲用することができる、いわゆるRTD(Ready to Drink)形態の飲料として提供できるほか、水などで希釈して飲料する、いわゆる濃縮タイプの飲料としても提供することができる。
【0028】
本実施形態に係る飲食品組成物の形態が、RTD形態の飲料である場合には、例えば、150~600mLまたは150~600g入り容器に1回当たりの摂取量を添加すると、短時間で効率的な摂取が可能となる。かかる容器として、例えば、500mLまたは500g入り容器、350mLまたは350g入り容器、200mL容器または200g入り容器などが例示される。
また、本実施形態に係る飲食品組成物における酢酸含有量は、1回当たりの摂取量を考慮し、1本または1個装あたり500~3500mgであることが好ましく、620~1000mgであることが特に好ましい。
【0029】
本実施形態に係る飲食品組成物は、上記疲労感軽減剤のほか、飲食品の製造に用いられる一般的な食品素材を適宜添加することができる。かかる食品素材としては、各種糖質、甘味料、酸味料、食塩、乳化剤、増粘剤、香料、アミノ酸、果汁等が挙げられる。
糖質としては、蔗糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース等の糖類;ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール類;などが挙げられ、黒糖蜜等の糖蜜を用いてもよい。
甘味料としては、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム等の高甘味度甘味料が挙げられる。
このほか、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等の酸味料;蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、ペクチン、ローカストビーンガム等の増粘(安定)剤;レモン果汁、オレンジ果汁、ベリー系果汁等の果汁類等を添加してもよい。
さらに、これらの他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類;カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛等のミネラル類;などを添加することが可能である。
【0030】
本実施形態に係る飲食品組成物は、常法に従って製造することができる。例えば、飲料の形態であれば、食酢をそのまま、または食酢から粗精製した酢酸を添加し、さらにそのほかの食品素材を適宜添加して飲料原液を調製し、その後、殺菌し容器充填すればよい。
殺菌方法としては、気流式殺菌、高圧殺菌、加熱殺菌などを挙げることができる。加熱殺菌する場合には、例えば、110~130℃、さらには115~125℃で殺菌することができる。
容器としては、紙容器、PETボトル、缶(アルミニウム、スチール)、瓶(ガラス)、レトルトパウチ等が挙げられる。
【0031】
以上述べた本実施形態に係る疲労感軽減用飲食品組成物によれば、手軽に摂取することのできる飲食品組成物により、就寝前の身体的疲労感を軽減することができ、好ましくは起床後の精神的疲労感をも軽減することができる。また、かかる飲食品組成物を摂取させることにより、疲労感(とりわけ就寝前の身体的疲労感)の軽減作用を発揮させる方法(医療行為を除く)とすることができる(本発明に係る疲労感軽減作用を発揮させる方法の一態様に該当)。
【実施例0032】
以下、製造例、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の製造例、試験例等に何ら限定されるものではない。
【0033】
〔製造例〕実施例飲料およびプラセボ飲料の製造
表1に示す配合の飲料原液を調製し、加熱殺菌して200mL紙パックに充填し、2種類の黒酢飲料(実施例飲料およびプラセボ飲料)を製造した。
なお、実施例飲料においては黒酢(横井醸造工業社製,商品名「玄米黒酢No.2」)を用い、一方プラセボ飲料においては当該黒酢から酢酸を除去したもの(8倍濃縮酢酸低減黒酢)を同等量配合し香味等が実施例飲料と同等となるように調整した。
【0034】
【表1】
【0035】
〔試験例〕黒酢飲料摂取による疲労感軽減効果の検証
上記製造例で得られた実施例飲料およびプラセボ飲料を用い、以下のようにして疲労感軽減効果を検証した。なお、運動負荷にはエルゴメーター(エアロバイク(登録商標)ai,コンビ社製)を用い、身体的疲労感および精神的疲労感の軽減作用の評価には自己評価尺度であるVAS(Visual Analog Scale)を用いた。
【0036】
無作為に選抜された健常な成人男女19名(39.84±3.93歳)を被験者とした。なお、被験者は、過去1年間習慣的に運動をしていない方とし、運動が週に1回以下であることを「習慣的に運動をしていない」目安とした。
被験者全員を無作為にA群およびB群の2群に分け、実施例飲料を摂取する試験とプラセボ飲料を摂取する試験との合計2回の試験を実施した(クロスオーバー試験)。被験者は、200mLの実施例飲料(酢酸量:659.4mg/本)またはプラセボ飲料(同59.0mg/本)を、1日1本、自由なタイミングで摂取させた。
【0037】
疲労感軽減作用の確認試験は次のようなスケジュールで実施した(表2参照)。
(1)A群には実施例飲料を、B群にはプラセボ飲料を、それぞれ1週間摂取させた(200mL/1本,1日1回1本の自由摂取,各回の摂取タイミングは起床~就寝まで任意の間で被験者の任意とした。)。
(2)摂取期間後の運動負荷試験
(2-1)強度60%の運動負荷を50分間実施
(2-2)運動直後の疲労感調査(VAS)
(2-3)運動60分後の疲労感調査(VAS)
(2-4)運動7~14時間後であって就寝前30分以内の疲労感調査(VAS)
(2-5)起床後30分以内の疲労感調査(VAS)
(3)実施例飲料およびプラセボ飲料を摂取させない期間(ウォッシュアウト期間)を1週間設けた。
(4)A群およびB群を入れ替え(A群:プラセボ飲料,B群:実施例飲料)、(1)および(2)の試験を実施(クロスオーバー試験)。
【0038】
【表2】
【0039】
運動負荷は、エルゴメーターを用いて行い、エアロバイク(登録商標)の運動強度は60%に設定した。この条件は有酸素運動と無酸素運動の境界域であるAT(Anaerobic Threshold:嫌気性代謝閾値)付近の運動を想定したものである。よって、軽度の運動のみならず日常生活の労作も評価の対象とした条件である。なお、試験はカルボーネン法により運動強度60%となるよう目標心拍数を設定し心拍数一定条件で実施した。より具体的には、目標心拍数={(220-年齢)-安静時心拍数}×運動強度(0.6)+安静時心拍数の計算式において運動強度が60%となる目標心拍数を設定した。
【0040】
本試験例におけるVAS検査は、被験者が、特定の時点(運動直後,運動60分後,就寝前,起床後)で「身体の疲れはありますか?」および「精神的な疲れはありますか?」との問いに対し、全くない状態を0.0cm、経験しうる最大の身体的疲労感(または精神的疲労感)を10.0cmとし、0.0cm~10.0cmの線分上に被験者自身の状態を記入させることで行った。VAS検査の評価には、被験者が記入した線分上の位置を定規により測定し、小数点第一まで計測した数値を採用した。
【0041】
実施例飲料を摂取した場合とプラセボ飲料を摂取した場合とのそれぞれについて、上記特定の時点のVAS法評価結果の数値を全被験者について集計し、平均値を算出した。また、これらの平均値の差異が有意な差異であるか否かについて、有意確率(p)を算出することにより評価した。なお、有意確率pは、SPSS14.0を使用しt検定を行うことで算出した。判断基準としては、p≦0.05を有意差ありとし、p≦0.1を有意傾向ありとして、評価を行った。
結果を図1および図2に示す。
【0042】
(結果・考察)
身体的疲労感について、就寝前の身体疲労感は、プラセボ飲料群のVAS結果の平均が4.0であるのに対し、実施例飲料群では3.0であった。両群の有意確率p=0.027であったことから、就寝前の身体疲労感は実施例飲料群において有意に軽減されていると認められた。ここで、プラセボ飲料群においては、運動負荷60分後(VAS結果平均値:3.2)と比べて就寝前(同4.0)の値が増えており、身体的疲労感が就寝前にぶり返すという事象が認められたが、実施例飲料群においてはぶり返しが観察されなかった。
【0043】
また、精神的疲労感について、起床後の精神的疲労感は、プラセボ飲料群(VAS結果平均値:1.4)と実施例飲料群(同0.9)との両群の有意確率p=0.093であり、起床後の精神的疲労感が実施例飲料群において軽減されている傾向が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、手軽に摂取することが可能でありながら、疲労感を軽減することができ、とりわけ就寝前の身体的疲労感を軽減することができる。
図1
図2