IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タカハシ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-プランタ 図1
  • 特開-プランタ 図2
  • 特開-プランタ 図3
  • 特開-プランタ 図4
  • 特開-プランタ 図5
  • 特開-プランタ 図6
  • 特開-プランタ 図7
  • 特開-プランタ 図8
  • 特開-プランタ 図9
  • 特開-プランタ 図10
  • 特開-プランタ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144746
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】プランタ
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20241003BHJP
【FI】
A01G9/02 103T
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024130493
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2021129489の分割
【原出願日】2020-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】505278975
【氏名又は名称】タカハシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 代吉
(57)【要約】
【課題】排水による擁壁の汚損を抑制でき、擁壁への設置も容易に行うことができるプランタを提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係るプランタは、排水口を有する擁壁に設置される擁壁用プランタであって、プランタ本体と、取付け部とを具備する。上記プランタ本体は、客土を収容可能な空間部を有する。上記取付け部は、上記プランタ本体に設けられ、上記空間部を上記排水口に連通させる通孔を有し、上記排水口の周囲又は上記排水口の内部に嵌合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を有する擁壁に設置されるプランタであって、
客土を収容可能な空間部を有するプランタ本体と、
前記プランタ本体に設けられ、前記空間部を前記排水口に連通させる通孔を有し、前記排水口の内部に嵌合する取付け部と
を具備し、
前記取付け部は、前記通孔に接続される第1端部と、前記排水口の内部に嵌合する第2端部とを有する筒状部をさらに有し、
前記第2端部は、前記筒状部の周方向に配列された複数の分割片を含み、前記プランタ本体の自重で前記複数の分割片を横方向に拡径させることで、前記筒状部の外周面を前記排水口の内壁に密着させる
プランタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプランタであって、
前記プランタ本体は、前記擁壁に対向する背面部と、前記背面部から前記擁壁に向かって突出する脚部と、をさらに有する
プランタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石積み擁壁の壁面に設置可能に構成されたプランタに関する。
【背景技術】
【0002】
宅地造成や道路建設等の土木工事において形成された盛土あるいは切土の法面は、石積み、ブロック積み、コンクリートの打設等で構築された擁壁で保護される。近年、擁壁の美化や擁壁全体の付加価値の向上を目的として、擁壁に埋め込まれた排水口にプランタ(植栽鉢)を設置する技術が提案されている。例えば特許文献1には、擁壁の排水口に挿入される挿入部と、挿入部と一体化された蓋部と、蓋部の外側に固定されたプランタとを備えた擁壁排水口の化粧蓋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2920009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載の化粧蓋は、蓋部の下方に設けられた開口部を通して排水口からの排水を排出するため、排水による擁壁の表面の汚損が化粧蓋による擁壁の美化を損ねるという問題がある。また、化粧蓋の挿入部に設けられた固定爪に嵌挿される爪穴を排水口に形成する必要があるため、化粧蓋の設置に伴う排水口の加工に手間とコストがかかる。しかも、擁壁の施工後の爪穴の形成は容易でないため、擁壁の築造段階で爪穴を排水口にあらかじめ形成する必要があるという問題がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、排水による擁壁の汚損を抑制でき、爪穴が形成されていない既存の擁壁への設置も容易に行うことができるプランタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るプランタは、排水口を有する擁壁に設置されるプランタであって、プランタ本体と、取付け部とを具備する。
上記プランタ本体は、客土を収容可能な空間部を有する。
上記取付け部は、上記プランタ本体に設けられ、上記空間部を上記排水口に連通させる通孔を有し、上記排水口の周囲又は上記排水口の内部に嵌合する。
【0007】
上記プランタにおいては、排水口に取り付けられる取付け部の通孔を介して排水口からの排水がプランタ本体の空間部へ導かれるため、上記排水による擁壁の汚損を抑制することができる。また、取付け部は、排水口の周囲又は排水口の内部との嵌合によりプランタ本体を排水口へ取り付ける構成であるため、排水口に特段の加工を施すことなくプランタを排水口へ設置することができる。
【0008】
上記取付け部は、上記通孔に接続される第1端部と、上記排水口の内部に嵌合する第2端部とを有する筒状部をさらに有してもよい。これにより、プランタを擁壁へ安定に保持することができる。
【0009】
上記第2端部は、上記筒状部の周方向に配列された複数の分割領域を有し、上記取付け部は、上記筒状部の内部に設けられ上記第2端部を拡径させるネジ機構をさらに有してもよい。これにより、擁壁に対するプランタの保持力が高められる。
【0010】
あるいは、上記第2端部は、上記筒状部の周方向に配列された複数の分割領域を有し、上記複数の分割領域は、上記筒状部の径方向であって上記プランタ本体の高さ方向に交差する方向に対向する少なくとも一対の分割片を含んでもよい。これにより、筒状部に対して上記高さ方向に加わる応力が各分割片を横方向へ拡げる応力に変換されるため、排水口と筒状部との密着性が高められる。
【0011】
前記プランタ本体は、前記空間部に連通するドレン孔を有する底部を含んでもよい。
【0012】
この場合、プランタ本体は、前記空間部に立設され前記空間部内の所定の水位以上の液体を前記ドレン孔に導く通水管をさらに有してもよい。これにより、プランタ内の液面の高さが所定水位Lw以下に維持されるため、排水口からの排水量が多いときや雨天時において必要以上の水がプランタ10内に溜まることがなくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排水による擁壁の汚損を抑制でき、擁壁へのプランタの設置も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係るプランタの全体図であり、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は擁壁に設置された状態を示す概略側断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態によるプランタの擁壁への設置状態を示す側断面図である。
図3】本発明の第3の実施形態によるプランタの擁壁への設置状態を示す側断面図である。
図4】上記プランタの側面図である。
図5】上記プランタにおける要部の側断面図である。
図6】本発明の第4の実施形態によるプランタの擁壁への設置状態を示す側断面図である。
図7】上記プランタの筒状部の構成を示す背面部側の概略斜視図である。
図8】排水口とその内部に挿通された上記筒状部の分割片との関係を示す正面方向から見た要部断面図である。
図9】上記筒状部の構成の変形例を示す図8と同様な断面図である。
図10】上記プランタの構成の変形例を示す要部側断面図である。
図11】本発明の第5の実施形態によるプランタの擁壁への設置状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプランタ100の全体図であり、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は擁壁Wに設置された状態を示す概略側断面図である。
なお、図においてX軸、Y軸及びZ軸は相互に直交する3軸方向を示しており、X軸は奥行き方向、Y軸は幅方向、Z軸は高さ方向にそれぞれ相当する。
【0017】
本実施形態のプランタ100は、擁壁Wに設置される擁壁用プランタとして構成される。プランタ100は、客土Cを収容する空間部Sを有するプランタ本体10と、擁壁Wに埋設された排水管(あるいは水抜き管)Wpの先端(排水口Wh)に取り付けられる取付け部11とを有する。なお、客土Cは、空間部Sに直接的に収容されてもよいし、客土Cを受容可能なポットあるいは鉢(植木鉢)などの容器(図示略)を介して空間部Sに間接的に収容されてもよい。
【0018】
プランタ本体10は、前面部10fと、背面部10bと、2つの側面部10sとを有する。プランタ本体10の上面10aは開放され、前面部10f及び背面部10bは、Y軸方向から見たときに略V字形状をなすように底部10vに連結される。前面部10f及び両側面部10sの上面10a側端部には、水切りとしての垂下部13が設けられている。
【0019】
前面部10fと背面部10bとのなす角θ(図1(C)参照)は特に限定されず、例えば30°以下である。特に、背面部10bの角度を擁壁Wの勾配に合わせて形成することにより、上面10aが水平に維持された状態でプランタ100を擁壁Wへ設置することができる。また、底部10vが略V字形状に形成されることで、前面部10fによる擁壁Wの法尻面(勾配の下端ライン)の越境を抑制することができる。なお、擁壁Wの水平方向に対する勾配は、例えば、70度~80度である。
【0020】
なお、プランタ本体10の形状は上述の例に限られない。例えば、底部10vは平面形状であってもよいし、前面部10fは外方へ凸なる湾曲形状などに形成されてもよい。
【0021】
プランタ本体10の大きさは特に限定されず、例えば、X軸方向に沿った奥行き寸法が150~250mm、Y軸方向に沿った幅寸法が300~400mm、Z軸方向に沿った高さ寸法が150~250mmである。プランタ本体10の材質も特に限定されず、典型的には、ポリプロピレン、塩化ビニル等の合成樹脂材料であるが、金属、陶器などの他の材料であってもよい。プランタ本体10の各部の厚みも特に限定されず、プランタ本体10が合成樹脂材料製の場合、その厚みは、例えば3mmである。
【0022】
取付け部11は、プランタ本体10を擁壁Wの排水口Whに取り付けるためのものであり、プランタ本体10の背面部10bに設けられる。本実施形態において取付け部11は、排水口Whの周囲に嵌合する円形の通孔11hで形成される。通孔11hは、背面部10bの幅方向(Y軸方向)の中央部に形成され、排水管Wpの外径(約80mm)よりも大きな内径を有する。
【0023】
本実施形態において、排水管Wpは、その先端部が擁壁Wの表面から所定量突出するように擁壁Wの内部に埋め込まれている。プランタ100は、通孔11hに排水管Wpの先端部を貫通させ、排水管Wpの先端部から吊り下げられるようにして擁壁Wに設置される(図1(C)参照)。このとき、背面部10bは、擁壁Wの表面に接触する接触部として機能し、プランタ100を擁壁W上において所定の姿勢に保持する。
【0024】
通孔11hはさらに、プランタ本体10の空間部Sを排水口Whに連通させる機能を有する。これにより、排水口Whを介して排出される擁壁Wの背面土の含水が空間部Sへ導かれ、空間部Sに収容された客土Cに受容される。
【0025】
さらに、プランタ本体10の底部10vには、ドレン孔12が設けられる。これにより、客土C内の余剰な水を底部10vから排出することができる。ドレン孔12は、プランタ本体10の幅方向(Y軸方向)に所定の間隔をおいて複数箇所(本例では3箇所)に設けられる。なお、ドレン孔12の数や配列形態は特に限定されない。
【0026】
以上のように本実施形態のプランタ100においては、プランタ本体10を擁壁Wの排水口Whへ取り付けるための取付け部11が、排水口をプランタ本体10の内部に連通させる通孔を有する。これにより、排水口Whからの排水がプランタ100の空間部S内の客土Cで受容されるため、当該排水による擁壁Wの表面の汚損が防止される。また、客土Cへの水遣りに排水口Whからの排水を利用することができるため、水遣りを不要にし、あるいはその回数を低減できる。
【0027】
また、本実施形態によれば、通孔11aに排水管Wpの先端(排水口Wh)を嵌め通すだけで、プランタ100を容易に擁壁Wへ設置することができる。したがって、排水口Whに特段の加工を施すことなく、プランタ100を排水口Whへ設置することができる。これにより、既存の擁壁Wに埋め込まれている排水口Whにも容易にプランタ100を設置することができる。
【0028】
さらに、プランタ100は、客土Cを含む自重を利用して、擁壁Wの表面に安定に保持される。しかも、擁壁Wとの間に大きな隙間を生じさせることなく、プランタ100を擁壁Wへ密着させることができるので、プランタ100と擁壁Wとの一体感が高められる。これにより擁壁Wの美観を向上させることができる。
【0029】
<第2の実施形態>
図2は、本発明の第2の実施形態によるプランタ200の擁壁Wへの設置状態を示す側断面図である。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0030】
本実施形態のプランタ200は、プランタ本体10と取付け部21とを有し、取付け部21の構成が上述の第1の実施形態と異なる。本実施形態において、取付け部21は、通孔11aと、通孔11aの上縁部に設けられた固定片15と、排水口Wh及び通孔11aのそれぞれに挿通される筒状部としての差込管16と、固定片15と差込管16とを一体的に固定する固定具17とを有する。
【0031】
固定片15は、通孔11aの上縁部から空間部Sに向かって水平に延びる平面状あるいは部分湾曲面状の板部である。差込管16は、排水口Whとプランタ本体10との接続を担う中継部材としての機能と、排水口Whをプランタ本体10の空間部Sへ連通させる連絡通路としての機能とを有する。固定具17は、典型的には、ネジ、ボルト・ナット等の締結具である。
【0032】
差込管16は、通孔11aに接続される第1端部16aと、排水口Whの内部に嵌合する第2端部16bとを有する。典型的には、第1端部16aを通孔11a(固定片15)に固定した後、第2端部16bを排水口Whへ挿通することで、プランタ200が擁壁Wに設置される。なおこれに限らず、第2端部16bを排水口Whに挿通した後、第1端部16aを通孔11aに固定することで、プランタ200を擁壁Wに設置するようにしてもよい。
【0033】
差込管16は、排水口Whの内径よりも小さい外径(例えば、75mm以下)を有する合成樹脂製あるいは金属製の円筒パイプである。差込管16の長さは、プランタ200を擁壁Wに安定に保持できる長さであれば特に限定されず、例えば、150mm~200mmである。なお、差込管16は、プランタ本体10とは別部材で構成される例に限られず、プランタ本体10と一体的に形成されてもよい。この場合、プランタ本体10の背面部10bに通孔11aと同心的な円筒状の筒状部が形成される。
【0034】
本実施形態のプランタ200は、脚部14をさらに有する。脚部14は、背面部10bから擁壁Wに向かって突出するようにプランタ本体10の底部10vに設けられる。脚部14は、擁壁Wの表面に接触する接触部として機能し、プランタ200を擁壁W上において所定の姿勢に保持する。なお、脚部14の数は特に限定されず、単数でもよいし複数でもよい。脚部14の形態も特に限定されず、棒状、リブ状等の適宜の形状が採用可能である。
【0035】
なお、脚部14は必要に応じて省略されてもよい。例えば、プランタ本体10に対する差込管16の固定位置の変更などによって、擁壁Wの表面とプランタ本体200の背面部10bとの間の距離を任意に設定することが可能である。この場合、第1の実施形態と同様に、背面部10bが擁壁Wの表面に接触するようにプランタ200が設置されてもよい。
【0036】
本実施形態においても上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に本実施形態によれば、排水口Whに挿通される差込管16を備えているため、プランタ200を排水口Whへ安定に保持することができる。これにより、擁壁Wからのプランタ200の不用意な落下を防止することができる。また、排水管Wpの先端部が擁壁Wの表面から突出していない排水口に対してもプランタ200を設置することができる。
【0037】
<第3の実施形態>
図3は、本発明の第3の実施形態によるプランタ300の擁壁Wへの設置状態を示す側断面図である。以下、第1及び第2の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1及び第2の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0038】
本実施形態のプランタ300は、プランタ本体10と取付け部31とを有し、取付け部31の構成が上述の第1及び第2の実施形態と異なる。本実施形態において、取付け部31は、通孔11aと、通孔11aと同心的に形成された筒状部18と、筒状部18の内部に設置されたネジ機構部30とを有する。本実施形態では、排水口Whに挿通された筒状部18をネジ機構部30によって拡径させることで、筒状部18の外周面を排水口Wh(排水管Wp)の内周面に密着させることが可能に構成される。
【0039】
図4は、プランタ300の側面図である。筒状部18は、通孔11aに接続される第1端部18aと、排水口Whに嵌合する第2端部18bとを有する円筒形状を有する。筒状部18は、プランタ本体10と一体的に形成され、典型的には、プランタ本体10と同一の樹脂材料で一体成形される。筒状部18は、排水口Whとプランタ本体10との接続を担う中継部材としての機能と、排水口Whをプランタ本体10の空間部Sへ連通させる連絡通路としての機能とを有する。
【0040】
筒状部18の第2端部18bは、筒状部18の周方向に配列された複数の分割領域を有する。本実施形態では、筒状部18の軸方向(図においてX軸方向)に沿って形成されたスリット部180により、上下方向(図においてZ軸方向)に2つの領域(上部領域181、下部領域182)に分割される。スリット部180の長さは特に限定されず、第2端部18bが排水管Wpの内周面に向かって弾性変形することが可能な長さであればよい。
【0041】
ネジ機構部30は、図3に示すように、上下方向(Z軸方向)に対向する第1及び第2軸部301,302と、これら第1及び第2軸部301,302に螺合するバックル303とを有する。第1軸部301は、筒状部18の上部領域181の内周面に固定され、下端がバックル303に螺合するネジ部材である。第2軸部302は、上端がバックル303に螺合し、下端が筒状部18の下部領域182の内周面に固定されるネジ部材である。第1軸部301のネジ溝は、第2軸部302のネジ溝とは逆方向に形成される。したがって、バックル303の一方向への回転操作により、第1軸部301及び第2軸部302が互いに離間する方向へ移動することで筒状部18の第2端部18bが拡径する。一方、バックル303の他の一方向への回転操作により、第1軸部301及び第2軸部302が互いに近接する方向へ移動することで筒状部の第2端部18bが縮径する。
【0042】
以上のように構成される本実施形態のプランタ300においても、上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。本実施形態においては、筒状部18を排水口Whへの挿通により嵌合した後、バックル303の回転により第1軸部301及び第2軸部302を互いに離間する方向へ移動させることで、筒状部18の上部領域181及び下部領域182をそれぞれ排水管Wpの内周面に密着させる。これにより、排水口Whに対するプランタ300の保持強度が向上し、プランタ300を擁壁Wに対してより安定に設置することができる。また、排水管Wpの先端部が擁壁Wの表面から突出していない排水口に対してもプランタ300を設置することができる。
【0043】
バックル303の回動操作は、通孔11aを介しての作業者の手指により行われてもよいし、適宜の工具が用いられてもよい。この場合、バックル303の外周面を多角形状とすることで、スパナ等で容易にバックル303を操作することができる。また、筒状部18と排水管Wpとの密着性を高めるために、図5に示すように、筒状部18の外周面にゴム等の弾性材料で構成された被覆層310がコーティングされてもよい。
【0044】
さらに、筒状部18の第2端部18bは、上下方向に拡径可能に構成される例に限られず、横方向あるいは斜め方向に拡径可能に構成されてもよい。また、第2端部18bの分割数は2に限られず、3以上であってもよく、このうち少なくとも2つの領域が排水管Wpの内周面に向けて変形可能であればよい。
【0045】
なお、筒状部18は、プランタ本体10に一体成形される例に限られず、上述の第2の実施形態(図2)と同様に、プランタ本体10とは別部材で構成されてもよい。
【0046】
<第4の実施形態>
図6は、本発明の第4の実施形態によるプランタ400の擁壁Wへの設置状態を示す側断面図である。以下、第1~第3の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0047】
本実施形態のプランタ400は、プランタ本体10と取付け部41とを有し、取付け部41の構成が上述の第1~第3の実施形態と異なる。本実施形態において、取付け部41は、通孔11aと、通孔11aと同心的に形成された筒状部19とを有する。本実施形態では、排水口Whに挿通された筒状部19をプランタ400(客土を含む)の自重によって拡径させることで、筒状部19の外周面を排水口Wh(排水管Wp)の内周面に密着させることが可能に構成される。
【0048】
図7は、プランタ400の筒状部19の構成を示す背面部10b側の概略斜視図である。筒状部19は、通孔11aに接続される第1端部19aと、排水口Whに嵌合する第2端部19bとを有する部分円筒形状を有する。筒状部19は、第1端部19aから第2端部19bに向かって外径が漸次大きくなるように形成され、第2端部19bの開口径は排水口Whの開口径よりもやや大きく形成される。筒状部19は、プランタ本体10と一体的に形成され、典型的には、プランタ本体10と同一の樹脂材料で一体成形される。筒状部19は、排水口Whとプランタ本体10との接続を担う中継部材としての機能と、排水口Whをプランタ本体10の空間部Sへ連通させる連絡通路としての機能とを有する。
【0049】
筒状部19の第2端部19bは、筒状部19の周方向に配列された複数の分割領域を有する。本実施形態においては、筒状部19の軸方向に沿って形成されたスリット部190により、径方向に対向する一対の分割片191,192が形成される。これら一対の分割片191,192は、筒状部19の径方向であってプランタ本体10の高さ方向に交差する方向に対向する。スリット部190の形状は特に限定されず、本実施形態では、第1端部19a側から第2端部19b側へ向かってスリット幅が広くなるように形成される。これにより、各分割片191,192が筒状部19の径方向だけでなく、その周方向にも変形しやすくなる。
【0050】
図8は、排水口Wh(排水管Wp)とその内部に挿通された筒状部19の分割片191,192との関係を示す正面方向(X軸方向)から見た要部断面図である。
【0051】
筒状部19は、各分割片191,192を径内方側へ弾性変形させた状態(筒状部19の第2端部19bを縮径させた状態)で排水口Whへ挿通される。これにより、筒状部19の外周面は、各分割片191,192の径外方側への復元力により、排水口Whの内周面に密着する。さらに、筒状部19は、図8に示すように、プランタ400(客土を含む)の自重により、排水口Whの内部において高さ方向(Z軸方向)に応力(曲げ応力)F1が加わる。筒状部19の各分割片191,192は、高さ方向に対して傾斜する方向に形成されているため、高さ方向に作用する応力F1の一部が各分割片191,192を横方向(Y軸方向)に拡径させる応力F2に変換される。
【0052】
その結果、分割片191,192と排水管Wpの内壁との密着力が高められると同時に、横方向(Y軸方向)への突っ張り力(F2)によって、排水管Wpからの筒状部19の抜け止め効果が高められる。これにより、別途の補助機構を必要とすることなく、プランタ400を擁壁Wに安定に保持することができる。なお、筒状部19と排水管Wpとの密着性を高めるために、図5に示すように、筒状部19の外周面にゴム等の弾性材料で構成された被覆層310がコーティングされてもよい。
【0053】
筒状部19の各分割片191,192の角度位置は、Z軸方向に平行な鉛直線に対してαの角度だけ傾斜する方向に相互に対向するように設定される。角度αの大きさは特に限定されず、例えば、15°以上75°以下、より好ましくは30°以上60°以下であり、本実施形態では45°である。
【0054】
分割片191,192の数は2つに限られない。例えば図9に示すように、筒状部19は分割片191,192に加えて、さらに2つの分割片193,194を有してもよい。この場合、分割片193,194は、分割片191,192の間に90°間隔をおいて配置される。この場合においても、各分割片191~194において鉛直方向に加わる応力F1を横方向への突っ張り力(F2)に変換し、排水管Wpとの密着性を高めることができる。
【0055】
さらに、図10に示すように、プランタ本体10の背面部10bには通孔11aの周囲に排水管Wpの先端部を収容する環状の凹部11bが設けられてもよい。これにより、プランタ400を擁壁Wの表面に近接させることができるため、擁壁Wに対するプランタ400の一体感を高めることができる。このような構成は、上述の第2、第3の実施形態に対しても同様に適用可能である。
【0056】
<第5の実施形態>
図11は、本発明の第5の実施形態によるプランタ500の擁壁Wへの設置状態を示す側断面図である。以下、第1~第4の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0057】
本実施形態のプランタ500は、プランタ本体10の空間部Sに立設された通水管51をさらに有する点で、上述の第1~第4の実施形態と異なる。通水管51は、空間部の複数個所に配置された直線的な管部材からなり、空間部S内の所定の水位Lw以上の液体をプランタ本体10の底部10vに設けられたドレン孔12へ導くことが可能に構成される。
【0058】
取付け部41は、上述の第4の実施形態と同様に構成されるため、ここではその説明は省略する。なお、取付け部41に代えて、第1~第3の実施形態において説明した取付け部11~31が採用されてもよい。
【0059】
本実施形態において通水管51は、プランタ本体10の底部10vの近傍に設けられた仕切板52に取り付けられる。仕切板52は、プランタ本体10の内部を、客土を収容する空間部Sとその下のドレン空間S1に区画する板材であり、その面内には客土内の余剰な水をプランタ本体10の底部10vおよびドレン孔12に導く複数の貫通孔が設けられている。各通水管51は、上端が上記所定水位Lw以上の高さに位置し、下端が仕切板52に固定される。
【0060】
所定水位Lwは特に限定されず、典型的には客土の表面あるいはそれよりも若干高い位置に設定される。また、通水管51の固定位置は特に限定されず、プランタ本体10の前後方向あるいは幅方向に所定の間隔をおいて配置される。通水管51の数は特に限定されず、単数であってもよい。
【0061】
以上のように構成される本実施形態のプランタ500においては、プランタ本体10の内部に上述した構成の通水管51を備えているため、空間部S内に溜まった所定の水位Lw以上の排水あるいは、雨水を、通水管51を介してドレン孔12へ直接排出することができる。これにより、プランタ10内の液面の高さが所定水位Lw以下に維持されるため、排水管Wpからの排水量が多いときや雨天時において必要以上の水がプランタ10内に溜まることがなくなる。その結果、プランタ500の重量増による擁壁Wからの脱落を阻止できるとともに、プランタ500内の植物を過剰な水から保護することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0063】
例えば以上の実施形態では、排水口Whが擁壁Wの表面から水平方向に突出する場合を例に挙げて説明したが、排水口Whが擁壁Wの表面から斜め下方に向けて突出していてもよい。この場合、取付け部として筒状部(差込管16、筒状部18,19)を有するプランタ200,300,400が好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10…プランタ本体
11,21,31,41…取付け部
11a…通孔
16…差込管
18,19…筒状部
30…ネジ機構部
51…通水管
100,200,300,400,500…プランタ
191,192…分割片
C…客土
S…空間部
W…擁壁
Wh…排水口
Wp…排水管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11