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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144769
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20241003BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E03D11/08
E03D11/13
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024131193
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2023026613の分割
【原出願日】2019-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】陳 晶
(57)【要約】
【課題】水洗大便器の汚物の排出性を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る水洗大便器は、ボウル部と、リム部と、吐水口と、溜水部とを備える。ボウル部は、汚物を受ける。リム部は、ボウル部の上部に形成される。吐水口は、洗浄水を吐水する。溜水部は、ボウル部の下部に形成される。溜水部には、底面部に接続される排水路の上部の領域である第1領域と、第1領域よりも前方に位置する第2領域とが形成される。吐水口からリム部に沿って吐水された洗浄水の主流は、運動エネルギーを連続的に低減させながらボウル部を旋回して第1領域に流入する。洗浄水の主流の一部は、第2領域に流入する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受けるボウル部と、
前記ボウル部の上部に形成されるリム部と、
洗浄水を吐水する吐水口と、
前記ボウル部の下部に形成される溜水部と
を備え、
前記溜水部には、底面部に接続される排水路の上部の領域である第1領域と、前記第1領域よりも前方に位置する第2領域とが形成され、
前記吐水口から前記リム部に沿って吐水された前記洗浄水の主流は、運動エネルギーを連続的に低減させながら前記ボウル部を旋回して前記第1領域に流入し、
前記洗浄水の主流の一部は、前記第2領域に流入する
ことを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記吐水口から吐水される洗浄水が前記リム部に沿って流れる通水路を形成する底面壁は、吐水口側の端部からボウル部の前端に向けて高さが高くなる
ことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記第1領域では、第1旋回流が形成され、
前記第2領域では、前記第1旋回流とは異なる第2旋回流が形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記吐水口は、
前記リム部に沿って前記洗浄水を吐水する第1吐水口と、
前記第1吐水口とは異なる箇所に設けられ、前記洗浄水を吐水する第2吐水口と
を備え、
前記第1吐水口から吐水された前記洗浄水の一部は、前記主流から分岐し、前記第2吐水口から吐水された前記洗浄水と合流し、前記第2領域に流入する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リム部に沿って旋回する洗浄水の主流をボウル部の前方から溜水部に流入させる水洗大便器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5553188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記する水洗大便器では、水洗大便器の小型化のため、ボウル部の前後方向の長さを短くすると、洗浄水の流速が大きくなり、ボウル部の前方から溜水部に流入せず、汚物の排出性が低下するおそれがある。
【0005】
実施形態の一態様は、汚物の排出性を向上させる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、ボウル部と、リム部と、吐水口と、溜水部とを備える。ボウル部は、汚物を受ける。リム部は、ボウル部の上部に形成される。吐水口は、洗浄水を吐水する。溜水部は、ボウル部の下部に形成される。溜水部には、底面部に接続される排水路の上部の領域である第1領域と、第1領域よりも前方に位置する第2領域とが形成される。吐水口からリム部に沿って吐水された洗浄水の主流は、運動エネルギーを連続的に低減させながらボウル部を旋回して第1領域に流入する。洗浄水の主流の一部は、第2領域に流入する。
【0007】
これにより、水洗大便器は、大きい旋回力を有する洗浄水の主流を第1領域に流入させ、第1領域において汚物を攪拌しながら排水路に押し込み、汚物を排出する。そのため、水洗大便器は、汚物の排出性を向上させることができる。また、水洗大便器は、洗浄水の主流の一部を第2領域に流入させることで、第2領域における旋回流の勢いを大きくすることができ、第2領域における汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。また、水洗大便器は、汚物を排出する際に、大きな勢いを有する第2領域の旋回流を、第2領域から第1領域に流入させ、汚物を排出路に押し込むことができる。そのため、水洗大便器は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0008】
また、前記吐水口から吐水される洗浄水が前記リム部に沿って流れる通水路を形成する底面壁は、吐水口側の端部からボウル部の前端に向けて高さが高くなることを特徴とする。
【0009】
これにより、水洗大便器では、第1洗浄水の主流が有する運動エネルギーが小さくなり、第1洗浄水の主流の旋回力が調整される。そのため、水洗大便器は、第1洗浄水の主流が旋回し過ぎることを抑制することができる。従って、水洗大便器は、第1洗浄水がリム部11を乗り上げて溢れてしまうことを抑制することができる。
【0010】
また、前記第1領域では、第1旋回流が形成され、前記第2領域では、前記第1旋回流とは異なる第2旋回流が形成されることを特徴とする。
【0011】
これにより、水洗大便器は、各領域においてそれぞれ旋回流を形成し、各旋回流によって汚物を攪拌する。そのため、水洗大便器は、例えば、溜水部において1つの大きな旋回流によって汚物を攪拌する場合と比較して、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。また、水洗大便器は、第1領域と第2領域との境界付近において、第1旋回流、および第2旋回流によって、汚物を攪拌することができる。そのため、水洗大便器は、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0012】
また、前記吐水口は、前記リム部に沿って前記洗浄水を吐水する第1吐水口と、前記第1吐水口とは異なる箇所に設けられ、前記洗浄水を吐水する第2吐水口とを備え、前記第1吐水口から吐水された前記洗浄水の一部は、前記主流から分岐し、前記第2吐水口から吐水された前記洗浄水と合流し、前記第2領域に流入することを特徴とする。
【0013】
これにより、水洗大便器は、第1吐水口から吐水された洗浄水と、第2吐水口から吐水された洗浄水とを合流させて、大きな勢いを有する洗浄水によって第2領域において第2旋回流を形成する。そのため、水洗大便器は、第2領域における第2旋回流の勢いを大きくすることができ、第2領域における汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。また、水洗大便器は、汚物を排出する際に、大きな勢いを有する第2旋回流を第2領域から第1領域に流入させ、汚物を排出路に押し込むことができる。そのため、水洗大便器は、汚物の排出性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
実施形態の一態様によれば、汚物の排出性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係る水洗大便器の左側面図である。
図2図2は、実施形態に係る便器本体の平面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、図3のIV-IV断面における便器本体の断面図である。
図5図5は、図2のV-V断面図である。
図6図6は、図3のVI-VI断面における溜水部の断面図である。
図7図7は、図3のVII-VII断面における溜水部の断面図である。
図8図8は、図4のA~Gに示す断面における第1ガイド部、および第2ガイド部の表面形状を重ねた図である。
図9図9は、ボウル部における第1洗浄水、および第2洗浄水の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0017】
<水洗大便器の全体構成>
まず、図1を参照して実施形態に係る水洗大便器1の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係る水洗大便器1の左側面図である。また、図1では、壁面8および床面9を断面で示している。
【0018】
また、図1には、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、他の図においても図示している場合がある。かかる直交座標系では、Y軸の負方向を前方、Y軸の正方向を後方、X軸の正方向を右方、X軸の負方向を左方と規定している。このため、以下の説明において、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0019】
また、実施形態に係る水洗大便器1は、壁面8に取り付けられる、いわゆる壁掛け式の水洗大便器である。なお、水洗大便器は、床面9に設置される、いわゆる床置き式の水洗大便器であってもよい。
【0020】
水洗大便器1は、便器本体2と、局部洗浄装置3とを備える。実施形態に係る水洗大便器1は、洗浄水源から供給される洗浄水により便器本体2を洗浄して汚物を排出する洗い落とし式大便器(ウォッシュダウン式便器)である。また、便器本体2は、例えば、陶器製である。便器本体2の詳細については、後述する。
【0021】
局部洗浄装置3は、洗浄ノズル、ノズル駆動用モータ、モータ制御装置(いずれも不図示)などを備える。局部洗浄装置3は、使用者の局部洗浄用として便器本体2の上部に設けられ、洗浄ノズルから噴出させた洗浄水によって使用者の局部を洗浄する。
【0022】
水洗大便器1では、貯水タンク4に接続された給水配管4aを経て、便器本体2に洗浄水が供給される。また、水洗大便器1は、汚物を洗浄水と共に排水配管5へ排出する。なお、貯水タンク4は便器本体2の後方に載置され、貯水タンク4から便器本体2へ直接洗浄水を供給するものであってもよい。
【0023】
また、水洗大便器1は、局部洗浄装置3に局部洗浄用の洗浄水を供給する給水ホース6aと、局部洗浄装置3に電力を供給する電源ケーブル6bとを備える。
【0024】
<便器本体>
次に、実施形態に係る便器本体2について図2図5を参照し説明する。図2は、実施形態に係る便器本体2の平面図である。図3は、図2のIII-III断面図である。図4は、図3のIV-IV断面における便器本体2の断面図である。図5は、図2のV-V断面図である。
【0025】
便器本体2は、ボウル部10と、リム部11と、第1吐水口12(吐水口)と、第2吐水口13(吐水口)と、溜水部14とを備える。便器本体2は、左方に形成された第1吐水口12、および右方に形成された第2吐水口13から洗浄水をそれぞれ吐水し、汚物を排出する。以下では、第1吐水口12から吐水される洗浄水を「第1洗浄水」と称し、第2吐水口13から吐水される洗浄水を「第2洗浄水」と称する場合がある。
【0026】
ボウル部10は、ボウル形状に形成され、汚物を受ける。ボウル部10は、第1ガイド部20と、第2ガイド部21(旋回部)とを備える。第1ガイド部20、および第2ガイド部21の詳細については、後述する。
【0027】
リム部11は、ボウル部10の上部に設けられる。リム部11は、ボウル部10の上端から上方に延びる側壁部11aと、側壁部11aの上端からボウル部10の内側に延びる上壁部11bとを備える。側壁部11a、および上壁部11bは、ボウル部10の周縁に沿って形成される。リム部11は、第1洗浄水が外に飛び出さないように、オーバーハングした形状に形成される。
【0028】
便器本体2ではリム部11とボウル部10とによって、第1吐水口12から吐水された第1洗浄水の主流が流れる通水路15が形成される。具体的には、通水路15は、リム部11の側壁部11a、および上壁部11bと、ボウル部10の第2ガイド部21の一部(以下、「底面壁21a」と称する。)とによって形成される。なお、通水路15の底面壁21aは、リム部11によって形成されてもよい。通水路15は、第1吐水口12から吐水された第1洗浄水の主流をボウル部10の後方まで旋回させるように形成される。
【0029】
本明細書において、主流とは、吐水口からボウル部10に吐水された洗浄水の内、ボウル部10の中で水勢が大きい流れである。また、水勢が大きいとは、流量の大きさや流速がボウル部10の中で、より大きいことを指す。
【0030】
通水路15は、第1吐水口12側からボウル部10の前端に向けて上り傾斜となるように形成される。具体的には、通水路15では、底面壁21aが、第1吐水口12側からボウル部10の前端に向けて高さが高くなるように形成される。底面壁21aは、第1吐水口12側からボウル部10の前端に向けて高さが連続して高くなるように形成される。また、側壁部11aの上下方向の長さはボウル部10の前端に向けて短くなるように構成されている。
【0031】
第1吐水口12側の底面壁21aの端部は、第1吐水口12よりも下方に設けられる。底面壁21aの端部は、第1洗浄水が吐水される吐水領域を拡大させる。以下では、第1吐水口12よりも下方に位置する底面壁21aの端部を「領域拡大部21b(拡大部)」と称する場合がある。
【0032】
また、領域拡大部21bは、リム部11側、具体的には、リム部11の側壁部11a側よりも溜水部14側が低くなるように形成される。
【0033】
また、リム部11には、第2吐水口13の前方に突出部11cが形成される。突出部11cは、通水路15を遮るように、ボウル部10の内側に向けて突出する。突出部11cは、第1洗浄水の主流の向きを変えて、第1洗浄水の主流を溜水部14に流入させる。
【0034】
第1吐水口12は、左後方側のボウル部10の上部に形成される。第1吐水口12は、共通導水路16から分岐する第1導水路16aを介して供給される第1洗浄水をリム部11に沿って吐水する。共通導水路16は、給水配管4a(図1参照)が接続され、給水配管4aを介して洗浄水が供給される。第1吐水口12は、第1洗浄水をリム部11に沿って後方から前方に向けて吐水する。
【0035】
第2吐水口13は、右後方側のボウル部10の上部に形成される。第2吐水口13は、共通導水路16から分岐する第2導水路16bを介して供給される第2洗浄水をボウル部10に吐水する。
【0036】
第2吐水口13は、ボウル部10の後端に形成された後壁部22に沿って第2洗浄水を吐水する。第2吐水口13は、洗浄水を右方から左方に向けて吐水する。後壁部22は、後方側に窪むように形成され、第2吐水口13から吐水された第2洗浄水を旋回させる。
【0037】
<溜水部>
次に、溜水部14について、図3図6および図7を参照し説明する。図6は、図3のVI-VI断面における溜水部14の断面図である。図7は、図3のVII-VII断面における溜水部14の断面図である。
【0038】
溜水部14は、ボウル部10の下方に設けられる。溜水部14は、洗浄水の一部を溜水として貯留する。溜水部14は、排出路17が接続され、汚物を洗浄水とともに排出路17に排出する。排出路17は、排水配管5(図1参照)に接続される。溜水部14は、前端の高さが最も低くなるように形成される。
【0039】
溜水部14は、前面部30と、後面部31と、一対の側面部32と、底面部33とを備える。前面部30は、前方に突出するように湾曲して形成される。また、後面部31は、後方に突出するように湾曲して形成される。また、底面部33には、排出路17が接続される。
【0040】
一対の側面部32は、後端間の距離が前端間の距離よりも長く、前方から後方に広がるように形成される。すなわち、溜水部14は、平面視において、後方側が前方側よりも大きくなるように形成される。
【0041】
一対の側面部32には、向かい合う側面部32に向けて突出する凸面32aが形成される。凸面32aは、側面部32が全体的に、他方の側面部32に向けて突出するように湾曲して形成される。なお、凸面32aは、側面部32の一部が、他方の側面部32に向けて突出するように湾曲して形成されてもよい。凸面32aは、上下方向に沿って形成される。凸面32aの下端は、底面部33よりも上方に位置する。すなわち、凸面32aは、底面部33に接続されておらず、凸面32aと底面部33との間には隙間が形成される。なお、凸面32aの下端は、底面部33まで形成されてもよい。
【0042】
なお、前面部30と一対の側面部32とは、曲面によって接続される。また、後面部31と一対の側面部32とは、曲面によって接続される。
【0043】
溜水部14には、排出路17の上部の領域である第1領域100と、第1領域100よりも前方の領域である第2領域101とが形成される。第1領域100、および第2領域101は、平面視における凸面32aの頂点によって区画される。凸面32aの頂点よりも後方側の溜水部14が第1領域100であり、凸面32aの頂点よりも前方側の溜水部14が第2領域101である。凸面32aは、第1領域100、および第2領域101に渡り形成される。
【0044】
第1領域100には、排出路17側である下方領域100aと、下方領域100aよりも上方の上方領域100bとが形成される。溜水部14は、上方領域100bにおいて、下方領域100aよりも旋回流の流速の変化が大きくなるように形成される。具体的には、上方領域100bを形成する曲面の曲率は、下方領域100aを形成する曲面の曲率よりも大きい。
【0045】
例えば、後面部31と側面部32とを接続する曲面において、上方領域100bを形成する曲面の曲率は、下方領域100aを形成する曲面の曲率よりも大きい。なお、上方領域100bを形成する後面部31の曲率を、下方領域100aを形成する後面部31の曲率よりも大きくしてもよい。
【0046】
なお、上方領域100bから下方領域100aへ遷移する領域においては、曲面の曲率が連続して変化するように形成される。
【0047】
また、第1領域100は、第2領域101よりも大きい旋回半径を有する旋回流が生じるように形成される。具体的には、第1領域100の水平方向における断面積は、第2領域101の水平方向における断面積よりも大きい。
【0048】
また、第1領域100、および第2領域101は、上方領域100b、および第2領域101において、異なる流速の旋回流が生じるように形成される。具体的には、上方領域100bを形成する曲面の曲率は、第2領域101を形成する曲面の曲率とは異なっている。例えば、上方領域100bを形成する後面部31の曲率は、第2領域101を形成する前面部30の曲率とは異なっている。また、上方領域100bを形成する後面部31と側面部32とを接続する曲面の曲率は、第2領域101を形成する前面部30の曲率とは異なっている。
【0049】
また、第1領域100、および第2領域101は、下方領域100aにおいて第2領域101よりも流速が小さい旋回流が生じるように形成される。具体的には、下方領域100aを形成する曲面の曲率は、第2領域101を形成する曲面の曲率よりも小さい。例えば、下方領域100aを形成する後面部31の曲率は、第2領域101を形成する前面部30の曲率よりも小さい。
【0050】
<第1ガイド部、および第2ガイド部>
次に、第1ガイド部20、および第2ガイド部21について図3図4、および図8を参照し説明する。図8は、図4のA~Gに示す断面における第1ガイド部20、および第2ガイド部21の表面形状を重ねた図である。図8のA~Gは、図4のA~Gに示す断面における第1ガイド部20、および第2ガイド部21の表面形状に対応する。
【0051】
第1ガイド部20は、溜水部14の上部に形成される。第2ガイド部21は、第1ガイド部20の上部に形成される。第2ガイド部21は、第1ガイド部20とリム部11との間に形成される。第1ガイド部20と第2ガイド部21とは、曲面で形成される稜線部23によって接続される。また、稜線部23は第1ガイド部20と第2ガイド部21が接続される曲面の頂点である。
【0052】
第1ガイド部20は、ボウル部10の前方から後方に向かうにつれて広がるように形成される。具体的には、第1ガイド部20は、ボウル部10の前方から後方に向かうにつれて第1ガイド部20の上端が左右方向の外側に位置するように形成される。すなわち、稜線部23は、ボウル部10の前方から後方に向けて広がるように形成される。換言すると、稜線部23は、前方から後方に向かうにつれて、左右方向におけるボウル部10の中心線Oからの距離が長くなる。
【0053】
また、第1ガイド部20は、ボウル部10の前方に向かうにつれて溜水部14の上端から第1ガイド部20の上端までの長さが長くなる。具体的には、第1ガイド部は、ボウル部10の前方に向かうにつれて溜水部14の上端から第1ガイド部20の上端までの表面の長さが長くなる。
【0054】
第1ガイド部20は、左右方向におけるボウル部10の中心線Oに対し、非対称である。以下においては、中心線Oに対して左方の第1ガイド部20を「第1ガイド部20a」とし、ボウル部10の左右方向における中心線Oに対して右方の第1ガイド部20を「第1ガイド部20b」として説明することがある。すなわち、第1吐水口12側の第1ガイド部20を「第1ガイド部20a」とし、第2吐水口13側の第1ガイド部20を「第1ガイド部20b」として説明することがある。
【0055】
第1ガイド部20aは、第1吐水口12よりも後方からボウル部10の前端にかけて形成される。第1ガイド部20は、領域拡大部21bから下方に流れる第1洗浄水、および第2洗浄水を第1領域100に流入させるように形成される。
【0056】
第1ガイド部20aは、後方から前方に向かうにつれて傾斜が大きくなるように形成される。具体的には、第1ガイド部20aは、図4、および図8においてA~Cに示すように、前後方向において、第1吐水口12付近から溜水部14の第2領域101付近まで、後方から前方に向かうにつれて傾斜が大きくなるように形成される。なお、第1ガイド部20aは、第1吐水口12付近から第2領域101の前端付近まで、後方から前方に向かうにつれて傾斜が大きくなるように形成されてもよい。傾斜は、床面9(図1参照)からの角度である。そのため、第1ガイド部20が垂直に近づくほど、傾斜が大きくなる。
【0057】
また、第1ガイド部20aは、溜水部14の前端付近から前方に向かうにつれて傾斜が小さくなるように形成される。
【0058】
第1ガイド部20bは、突出部11cの下方からボウル部10の前端にかけて形成される。第1ガイド部20bは、溜水部14よりも前方の第1ガイド部20(第1ガイド部20a、および第1ガイド部20bを含む。)に流入した第1洗浄水が、第1領域100まで旋回し、第1領域100に流入するように形成される。
【0059】
また、第1ガイド部20は、溜水部14よりも前方の第1ガイド部20に流入した第1洗浄水が、稜線部23によって第1ガイド部20bよりも上方の第2ガイド部21に流入することを抑制するように設けられる。
【0060】
また、第1ガイド部20bは、図4、および図8のA~Gに示すように、前方から後方に向けて傾斜が大きくなるように形成される。すなわち、第1ガイド部20bは、前方の傾斜が小さい。
【0061】
また、溜水部14よりも前方の第1ガイド部20は、図4、および図8のF~Gに示すように、前方から後方に向かうにつれて第1ガイド部20を形成する曲面、具体的には第1ガイド部20の底部を形成する曲面の曲率が大きくなるように形成される。
【0062】
第2ガイド部21は、第1ガイド部20よりも傾斜が小さい。第2ガイド部21は、領域拡大部21bよりも前方側の通水路15において、第1洗浄水が通水路15から外れて流れることを抑制する。
【0063】
右方側の稜線部23は、溜水部14における前後方向の中間地点よりも後方で終端する。また、左方側の稜線部23は、第1吐水口12よりも後方に始端を有する。稜線部23の曲率は、前方から後方に向かうにつれて大きくなる。
【0064】
<洗浄水の流れ>
次に、ボウル部10における洗浄水の流れについて図9を参照し説明する。図9は、ボウル部10における第1洗浄水、および第2洗浄水の流れを説明する図である。図9では、第1洗浄水の流れを実線で示し、第2洗浄水の流れを破線で示す。なお、図9で示した洗浄水は、単にボウル部10を流下するような洗浄水とは異なり、一定の水勢を有しているものである。
【0065】
第1吐水口12から吐水された第1洗浄水の主流は、通水路15を旋回する。具体的には、第1洗浄水の主流は、第1吐水口12から通水路15を通り、前方に向けて流れ、通水路15の前端、もしくは溜水部14よりも前方側において向きが後方に変更される。後方に向けて流れる第1洗浄水の主流は、突出部11cによって向きが変更されて、溜水部14の第1領域100に流入する。具体的には、第1洗浄水の主流は、後方、および左方から第1領域100に流入する。
【0066】
通水路15は、第1吐水口12からボウル部10の前端に向けて底面壁21aの高さが高くなるように形成されている。そのため、第1洗浄水の主流が有する運動エネルギーが小さくなり、第1洗浄水の主流の旋回力が調整され、第1洗浄水の主流が旋回し過ぎることが抑制される。これにより、第1洗浄水がリム部11を乗り上げて溢れてしまうことが抑制される。
【0067】
また、第1洗浄水の一部は、第1吐水口12から吐水された直後に領域拡大部21bから第1ガイド部20aに分岐して流れ、第1ガイド部20aに沿って第2領域101に流入する。第1ガイド部20aは、前方となるにつれて傾斜が大きくなる。そのため、分岐した第1洗浄水は、溜水部14よりも前方の第1ガイド部20に流入せずに、左方から第2領域101に流入する。
【0068】
また、通水路15が上り傾斜となるように形成されているため、第1洗浄水の一部は、領域拡大部21bよりも前方の通水路15を流れる途中に、第1洗浄水の主流から第2ガイド部21に外れる。この第2ガイド部21に外れた第1洗浄水は、溜水部14よりも前方の第1ガイド部20に流入する。
【0069】
溜水部14よりも前方の第1ガイド部20は、前方から後方となるにつれて第1ガイド部20を形成する曲面の曲率が大きくなるように形成される。そのため、溜水部14の前方の第1ガイド部20に流入した第1洗浄水のうち、溜水部14側に流入した第1洗浄水は、曲率が大きい第1ガイド部20によって急激に流れ方向が変更され、第1ガイド部20bに沿って後方に旋回する。従って、溜水部14の前方の第1ガイド部20に流入した第1洗浄水のうち、溜水部14側に流入した第1洗浄水は、第2領域101への流入が抑制され、第1ガイド部20bを旋回し、第1領域100に右方から流入する。
【0070】
また、溜水部14よりも前方の第1ガイド部20に流入した第1洗浄水のうち、前方側に流入した第1洗浄水は、第1ガイド部20を大きく旋回する。溜水部14よりも前方の第1ガイド部20に流入した第1洗浄水のうち、前方側に流入した第1洗浄水は、長さが長い第1ガイド部20を旋回することで、運動エネルギーが低減され、第2ガイド部21、および通水路15に流入することが抑制される。さらに、第1ガイド部20を旋回する洗浄水は稜線部23によって第2ガイド部21に乗り上げることが抑制される。すなわち、一旦、第1洗浄水の主流から外れた第1洗浄水が、再び第1洗浄水の主流に合流することが抑制される。
【0071】
第1洗浄水の主流から外れた第1洗浄水は、第1洗浄水の主流とは流れ方向が大きく異なっている場合があり、このような第1洗浄水が第1洗浄水の主流に合流すると、第1洗浄水の主流の勢いが低減し、第1洗浄水の主流が旋回不足となることがある。第1ガイド部20は、第1洗浄水の主流の旋回不足の発生を抑制することができる。
【0072】
また、溜水部14よりも前方の第1ガイド部20に流入した第1洗浄水のうち、前方側に流入した第1洗浄水は、旋回しつつ流下する際に、運動エネルギーが大きくなる。溜水部14よりも前方の第1ガイド部20に流入した第1洗浄水のうち、前方側に流入した第1洗浄水は、第2領域101への流入が抑制され、第1ガイド部20bを旋回し、第1領域100に右方から流入する。
【0073】
第2洗浄水は、後壁部22に沿って旋回した後に、第1ガイド部20aに沿って流れ、第2領域101に流入する。また、第2洗浄水は、第2吐水口13から吐出された直後や、後壁部22に沿って旋回する途中に、分岐し、第1領域100にも流入する。
【0074】
上記するように、第1洗浄水の主流、および第1洗浄水の主流から外れた第1洗浄水は、第1領域100に流入し、第1洗浄水の一部は、第2領域101に流入する。また、第2洗浄水は、第1領域100、および第2領域101に流入する。
【0075】
第1領域100、および第2領域101に流入する洗浄水は、第1領域100において第1旋回流を形成し、第2領域101において第1旋回流とは異なる第2旋回流を形成する。
【0076】
次に、第1旋回流、および第2旋回流について、図6、および図7を参照し説明する。
【0077】
溜水部14の一対の側面部32には、図6に示すように、それぞれ凸面32aが形成されている。そのため、ボウル部10を旋回しながら溜水部14に流入した洗浄水は、平面視において、溜水部14を構成する壁面(前面部30、後面部31、側面部32)に沿った流れを形成するが、凸面32aによって壁面から分離した流れとなり、凸面32aの頂点よりも後方の第1領域100において第1旋回流を形成し、凸面32aの頂点よりも前方の第2領域101において第2旋回流を形成する。
【0078】
なお、凸面32aは、上下方向に沿って形成されており、第1領域100の全体に第1旋回流が形成され、第2領域101の全体に第2旋回流が形成される。
【0079】
第1領域100では、第1旋回流によって汚物が攪拌される。また、第2領域101では、第2旋回流によって汚物が攪拌される。これにより、平面視方向で第1旋回流と第2旋回流の異なる旋回成分が溜水部14に生成され、溜水部14全体で汚物の攪拌性能を高めることができる。
【0080】
また、溜水部14から排出路17に汚物を排出する際には、第1旋回流によって汚物が排出路17に押し込まれ、排出路17から排出される。また、溜水部14から排出路17に汚物を排出する際には、第2旋回流が第1領域100に流入し、第2旋回流によって汚物が排出路17に押し込まれ、排出路17から排出される。
【0081】
また、第1領域100の水平方向における断面積は、第2領域101の水平方向における断面積よりも大きい。
【0082】
これにより、第1領域100では、旋回半径が大きい第1旋回流が形成され、第2領域101では、第1旋回流よりも旋回半径が小さい第2旋回流が形成される。そのため、第2領域101では、小さい旋回流によって汚物が攪拌されやすく、また、第1領域100では、大きな旋回流が排出路17でスムーズに流れるため汚物が排出されやすくなる。
【0083】
また、第1領域100を形成する曲面の曲率と、第2領域101を形成する曲面の曲率とは異なっている。具体的には、第1領域100の上方領域100bを形成する曲面の曲率と、第2領域101を形成する曲面の曲率とは異なっている。
【0084】
これにより、上方領域100b、および第2領域101では、異なる流速の旋回流が形成される。
【0085】
また、第1領域100では、上方領域100bを形成する曲面の曲率と、下方領域100aを形成する曲面の曲率とは異なっている。具体的には、上方領域100bを形成する曲面の曲率は、下方領域100aを形成する曲面の曲率よりも大きい。
【0086】
これにより、上方領域100bにおいては、上方領域100bを形成する曲面の曲率が大きいため第1旋回流の流速の変化が大きく、汚物が攪拌される。また下方領域100aにおいては、下方領域100aを形成する曲面の曲率が小さいため第1旋回流の流速の変化が小さく、第1旋回流の流れが滑らかになり、汚物が排出路17に排出されやすくなる。すなわち、第1領域100では、主に汚物を攪拌する第1旋回流が形成される上方領域100bと、主に汚物を排出する第1旋回流が形成される下方領域100aとが形成される。
【0087】
<効果>
次に、実施形態に係る水洗大便器1の効果について説明する。
【0088】
水洗大便器1は、ボウル部10と、リム部11と、第1吐水口12と、溜水部14とを備える。ボウル部10は、汚物を受ける。リム部11は、ボウル部10の上部に形成される。第1吐水口12は、第1洗浄水を吐水する。溜水部14は、ボウル部10の下部に形成される。溜水部14には、排出路17が接続される第1領域100と、第1領域100よりも前方に位置する第2領域101とが形成される。第1吐水口12からリム部11に沿って吐水された第1洗浄水の主流は、ボウル部10を旋回して第1領域100に流入する。
【0089】
これにより、水洗大便器1は、大きい旋回力を有する第1洗浄水の主流を第1領域100に流入させ、第1領域100において汚物を攪拌しながら排出路17に押し込み、汚物を排出する。そのため、水洗大便器1は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0090】
また、水洗大便器1は、第1吐水口12と、第2吐水口13とを備える。第1吐水口12は、リム部11に沿って第1洗浄水を吐水する。第2吐水口13は、第1吐水口12とは異なる箇所に設けられ、第2洗浄水を吐水する。第1洗浄水の主流は、第1領域100に流入する。第2洗浄水は、第2領域101に流入する。
【0091】
これにより、水洗大便器1は、第1領域100において、第1洗浄水の主流によって汚物を攪拌し、第2領域101において、第2洗浄水によって汚物を攪拌する。そのため、水洗大便器1は、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。また、水洗大便器1は、汚物を排出する際に、第2領域101から第1領域100に流入する洗浄水によって、汚物を排出路17に押し込み、汚物を排出路17から排出することができる。そのため、水洗大便器1は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0092】
また、水洗大便器1は、第1領域100では第1旋回流を形成し、第2領域101では第1旋回流とは異なる第2旋回流を形成する。
【0093】
これにより、水洗大便器1は、各領域100、101においてそれぞれ旋回流を形成し、各旋回流によって汚物を攪拌する。そのため、水洗大便器1は、例えば、溜水部14において1つの大きな旋回流によって汚物を攪拌する場合と比較して、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。また、水洗大便器1は、第1領域100と第2領域101との境界付近において、第1旋回流、および第2旋回流によって、汚物を攪拌することができる。そのため、水洗大便器1は、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0094】
また、水洗大便器1は、第1洗浄水の一部が、第1洗浄水の主流から分岐し、第2洗浄水と合流し、第2領域101に流入する。
【0095】
これにより、水洗大便器1は、第1洗浄水と、第2洗浄水とを合流させて、大きな勢いを有する洗浄水によって第2領域101において第2旋回流を形成する。そのため、水洗大便器1は、第2領域101における第2旋回流の勢いを大きくすることができ、第2領域101における汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。また、水洗大便器1は、汚物を排出する際に、大きな勢いを有する第2旋回流を第2領域101から第1領域100に流入させ、汚物を排出路17に押し込むことができる。そのため、水洗大便器1は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0096】
また、第1洗浄水がリム部11に沿って流れる通水路15を形成する底面壁21aは、第1吐水口12側の端部からボウル部10の前端に向けて高さが高くなる。
【0097】
これにより、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流が有する運動エネルギーを低減させ、第1洗浄水の主流の勢いを抑制する。すなわち、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流の旋回力を調整し、第1洗浄水の主流が旋回し過ぎることを抑制することができる。そのため、水洗大便器1は、勢いが調整された第1洗浄水の主流を第1領域100に流入させることができ、第1領域100において汚物の攪拌性に優れた第1旋回流を形成することができる。従って、水洗大便器1は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0098】
また、底面壁21aは、ボウル部10の前端まで高さが継続して高くなる。
【0099】
これにより、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流が有する運動エネルギーを連続的に低減させることができ、第1洗浄水の主流が乱れることを抑制することができる。
【0100】
また、ボウル部10は、第1洗浄水の一部が通水路15から分岐して流れる第1ガイド部20aを備える。
【0101】
これにより、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流が有する運動エネルギーを低減させ、第1洗浄水の主流の旋回力を調整することができる。そのため、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流が旋回し過ぎることを抑制し、汚物の攪拌性に優れた第1旋回流を第1領域100において形成することができる。従って、水洗大便器1は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0102】
第1ガイド部20aは、後方から前方に向かうにつれて傾斜が大きくなる。
【0103】
これにより、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流から分岐した第1洗浄水が、第1洗浄水の主流に合流することを抑制することができる。また、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流から分岐した第1洗浄水を第2領域101に流入させることができる。
【0104】
また、溜水部14の上端から第1ガイド部20bの上端までの長さは、ボウル部10の前方に向かうにつれて長くなる。
【0105】
これにより、水洗大便器1は、溜水部14よりも前方側の第1ガイド部20において、第1洗浄水の主流から外れた第1洗浄水を分散させ、第1ガイド部20を流れる第1洗浄水が有する運動エネルギーを低減させることができる。そのため、水洗大便器1は、溜水部14よりも前方側の第1ガイド部20を流れる第1洗浄水が、第1洗浄水の主流に合流することを抑制することができ、汚物の攪拌性に優れた第1旋回流を第1領域100において形成することができる。従って、水洗大便器1は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0106】
また、溜水部14の上端は、前端において高さが最も低い。
【0107】
これにより、水洗大便器1は、溜水部14よりも前方側の第1ガイド部20において、左右方向の中心の第1ガイド部20の長さを長くすることができ、第1ガイド部20を流れる第1洗浄水が有する運動エネルギーを低減させることができる。そのため、水洗大便器1は、溜水部14よりも前方側の第1ガイド部20を流れる第1洗浄水が、第1洗浄水の主流に合流することを抑制することができ、汚物の攪拌性に優れた第1旋回流を第1領域100において形成することができる。従って、水洗大便器1は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0108】
また、水洗大便器1は、第1吐水口12から吐水された第1洗浄水の吐水領域を拡大させる領域拡大部21bを備える。
【0109】
これにより、水洗大便器1は、通水路15を形成する底面壁21aが第1吐水口12側からリム部11の前端に向けて高くなるように形成された場合であっても、第1洗浄水の通水路15の吐水領域が小さくなることを抑制する。そのため、水洗大便器1は、通水路15に第1洗浄水が滞留することを抑制し、スムーズに第1洗浄水を吐水することができる。従って、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流の旋回不足を抑制することができ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0110】
また、領域拡大部21bは、第1吐水口12よりも下方に形成される。
【0111】
これにより、水洗大便器1は、第1洗浄水が流れる通水路15における不意な滞留の発生を抑制し、第1洗浄水の主流の旋回不足を抑制することができる。そのため、水洗大便器1は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0112】
また、領域拡大部21bは、第1吐水口12側の底面壁21aの端部に形成される。
【0113】
これにより、水洗大便器1は、第1吐水口12から吐水された直後に第1洗浄水が滞留してしまうことを抑制することができる。
【0114】
領域拡大部21bは、リム部11側よりもボウル部10側が低くなるように傾斜する。
【0115】
これにより、水洗大便器1は、領域拡大部21bに流入した第1洗浄水の一部を素早く第1ガイド部20に流下させることができ、領域拡大部21bに第1洗浄水が滞留することを抑制することができる。そのため、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流の旋回不足を抑制することができる。従って、水洗大便器1は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0116】
また、ボウル部10は、第1洗浄水を左方から右方に旋回させるとともに、右方に旋回した第1洗浄水を第1領域100に流入させる第1ガイド部20bを備える。
【0117】
これにより、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流から外れた第1洗浄水を第1領域100に流入させることができ、第1領域100における第1旋回流の勢いを大きくすることができる。そのため、水洗大便器1は、汚物の排出性を向上させることができる。
【0118】
また、第1ガイド部20は、前方から後方に向かうにつれて広がるように形成される。
【0119】
これにより、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流から外れ、第1ガイド部20の左右方向の中央付近に流入した第1洗浄水を、第1ガイド部20に沿って旋回させながら第1流域に流入させることができる。そのため、水洗大便器1は、第1領域100における第1旋回流の勢いを大きくすることができ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0120】
また、ボウル部10は、第1ガイド部20よりも上方に、第1ガイド部20を流れる第1洗浄水とは異なる流れとなる第1洗浄水が流れる第2ガイド部21を備える。第1ガイド部20と第2ガイド部21とを接続する稜線部23は、前方から後方に向かうにつれて、左右方向におけるボウル部10の中心線Oからの距離が長くなる。
【0121】
これにより、水洗大便器1は、第1ガイド部20を流れる第1洗浄水が第2ガイド部21に流入することを抑制することができる。すなわち、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流から外れた洗浄水が第1洗浄水の主流に合流することを抑制することができる。そのため、水洗大便器1は、第1洗浄水の主流が乱れることを抑制し、第1洗浄水の主流の流速が低減することを抑制することができる。従って、水洗大便器1は、第1旋回流による汚物の排出性を向上させることができる。
【0122】
右方側の稜線部23は、溜水部14における前後方向の中間地点よりも後方で終端する。
【0123】
これにより、水洗大便器1は、後方まで旋回した第1洗浄水を第1領域100に流入させることができる。また、水洗大便器1は、第1領域100を形成する溜水部14の後面部31の形状に沿った第1旋回流を第1領域100で発生させることができる。そのため、水洗大便器1は、勢いが大きな第1旋回流によって汚物を攪拌することができ、第1領域100における汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0124】
また、溜水部14よりも前方の第1ガイド部20は、第1ガイド部20を形成する曲面の曲率が前方から後方に向かうにつれて大きくなる。
【0125】
これにより、水洗大便器1は、溜水部14よりも前方の第1ガイド部20において、溜水部14に近い箇所に流入する第1洗浄水の向きを急速に変更し、第1洗浄水が第2領域101に流入することを抑制することができる。そして、水洗大便器1は、第1洗浄水を右方に旋回させて、第1領域100に流入させることができる。また、水洗大便器1は、溜水部14よりも前方の第1ガイド部20において、ボウル部10の前方側に流入する第1洗浄水の向きが急速に変更されることを抑制する。そのため、水洗大便器1は、第1洗浄水が第2領域101に流入することを抑制し、第1洗浄水を右方に旋回させて、第1領域100に流入させることができる。
【0126】
また、溜水部14は、前面部30と、後面部31と、一対の側面部32とを備える。後面部31は、前面部30よりも後方に形成される。一対の側面部32は、前面部30と後面部31との間に形成される。一対の側面部32のうち、少なくとも一方の側面部32には、他方の側面部32に向けて突出する凸面32aが形成される。
【0127】
溜水部14に流入した洗浄水は、側面部32に沿って流れるため、側面部32の凸面32aによって旋回が分離される。これにより、水洗大便器1は、溜水部14において、第1旋回流、および第2旋回流を形成する。そのため、水洗大便器1は、各旋回流によって汚物を攪拌することができ、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0128】
また、溜水部14には、排出路17が接続される第1領域100と、第1領域100よりも前方に位置する第2領域101とが形成され、凸面32aは、第1領域100から第2領域101に渡り形成される。
【0129】
これにより、水洗大便器1は、溜水部14の形状を複雑化せずに、溜水部14に第1旋回流、および第2旋回流を発生させることができる。
【0130】
また、凸面32aの頂点は、第1領域100および第2領域101の境界に位置する。
【0131】
これにより、水洗大便器1は、凸面32aによって、排出路17が接続される第1領域100と、第2領域101とを区画することができ、第1旋回流と第2旋回流とを独立して形成することができる。そのため、水洗大便器1は、各旋回流によって、汚物を攪拌することができ、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0132】
また、凸面32aは、上下方向に沿って形成される。
【0133】
これにより、水洗大便器1は、第1領域100の全体で第1旋回流を形成し、第2領域101の全体で第2旋回流を形成することができる。そのため、水洗大便器1は、各領域100、101における汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0134】
また、水平方向における第1領域100の面積は、水平方向における第2領域101の面積よりも大きい。
【0135】
これにより、水洗大便器1は、第2領域101では小さい旋回半径を有する第2旋回流によって汚物を攪拌する。また、水洗大便器1は、排出路17が接続される第1領域100において大きい旋回半径を有する第1旋回流を発生させ、第1旋回流によって第1領域100から汚物を排出する。そのため、水洗大便器1は、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0136】
また、凸面32aは、一対の側面部32にそれぞれ形成される。
【0137】
これにより、水洗大便器1は、第1領域100において第1旋回流の形成を促進し、第2領域101において第2旋回流の形成を促進させることができる。そのため、水洗大便器1は、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0138】
また、第1領域100を形成する溜水部14の曲面は、上下方向において曲面の曲率が異なる。
【0139】
これにより、水洗大便器1は、第1領域100の上下方向において、主に汚物を攪拌させる第1旋回流と、主に汚物を排出路17に押し込み、汚物を排出させる第1旋回流とを形成することができる。そのため、水洗大便器1は、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0140】
また、第1領域100には、上方領域100bと、上方領域100bよりも下方に形成される下方領域100aとが形成される。上方領域100bを形成する曲面の曲率は、下方領域100aを形成する曲面の曲率よりも大きい。
【0141】
これにより、水洗大便器1は、上方領域100bにおいて流速の変化が大きい第1旋回流を形成し、汚物を攪拌させることができる。また、水洗大便器1は、下方領域100aにおいて流速の変化が小さい第1旋回流を形成し、汚物を排出路17に押し込み、汚物を排出することができる。
【0142】
また、第1領域100を形成する曲面の曲率は、上方領域100bから下方領域100aに向けて徐々に変化する。
【0143】
これにより、水洗大便器1は、流速の変化が大きい第1旋回流から、流速の変化が小さい第1旋回流へ変更する際のエネルギーロスを低減することができ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0144】
また、上方領域100bを形成する曲面の曲率は、第2領域101を形成する曲面の曲率とは異なる。
【0145】
これにより、水洗大便器1は、上方領域100bの第1旋回流、および第2領域101の第2旋回流を、異なる流速で旋回させることができる。そのため、水洗大便器1は、汚物の攪拌性を向上させ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0146】
また、下方領域100aを形成する曲面の曲率は、第2領域101を形成する曲面の曲率よりも小さい。
【0147】
これにより、水洗大便器1は、第2領域101から下方領域100aに第2旋回流をスムーズに誘導することができ、汚物の排出性を向上させることができる。
【0148】
<変形例>
変形例に係る水洗大便器1は、排出路17を溜水部14の前方の領域に接続してもよい。また、変形例に係る水洗大便器1は、一対の側面部32のうち、一方の側面部32に凸面32aを形成してもよい。
【0149】
また、変形例に係る水洗大便器1は、第1洗浄水が広がるように第1吐水口12をテーパ形状に形成し、第1吐水口12から第1洗浄水の吐水領域を拡大させてもよい。例えば、第1吐水口12は、上方、または右方に第1洗浄水の吐水領域を拡大するように形成される。
【0150】
また、変形例に係る水洗大便器1は、上記構成の一部を含む水洗大便器であってもよい。例えば、変形例に係る水洗大便器1は、一対の側面部32に凸面32aが形成されない溜水部14を有する水洗大便器であってもよく、第1ガイド部20が形成されないボウル部10を有する水洗大便器であってもよい。また、例えば、変形例に係る水洗大便器1は、第1吐水口12のみを有する水洗大便器であってもよい。
【0151】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0152】
1 水洗大便器
2 便器本体
10 ボウル部
11 リム部
12 第1吐水口(吐水口)
13 第2吐水口(吐水口)
14 溜水部
15 通水路
17 排出路
20 第1ガイド部(ガイド部)
21 第2ガイド部(旋回部)
21a 底面壁
21b 領域拡大部(拡大部)
23 稜線部
30 前面部
31 後面部
32 側面部
32a 凸面
33 底面部
100 第1領域
100a 下方領域
100b 上方領域
101 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9