(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014477
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20240125BHJP
A61B 5/256 20210101ALI20240125BHJP
A61B 5/282 20210101ALI20240125BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240125BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61B5/022 B
A61B5/256 220
A61B5/282
A61B5/33 200
A61B5/02 D
A61B5/022 300F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117328
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】久保 大
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】東狐 義秀
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅規
(72)【発明者】
【氏名】阿部 康輔
(72)【発明者】
【氏名】岩田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 佳彦
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA19
4C017AB02
4C017AC03
4C017AC16
4C017AD01
4C017FF08
4C127AA02
4C127BB03
4C127BB05
4C127LL13
4C127LL15
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、安定した生体情報の測定が可能な生体情報測定装置を提供する。
【解決手段】生体情報測定装置であって、被測定部位の周方向に巻き付けられる流体袋と、ポンプと、弁と、流体袋を膨張させることにより被測定部位を圧迫し、又は、流体袋を収縮させることにより被測定部位に対する圧迫を解除し、被測定部位の血圧を測定する血圧測定部と、被測定者の第一部位に接触する第一電極と、第二部位に接触する第二電極であって、流体袋に接続され、流体袋の周方向の端部からさらに周方向に延びる支持部材に支持され、端部から周方向に所定距離を隔てた位置に配置された第二電極と、第一電極及び第二電極を通じて被測定者の心電波形を測定する心電測定部と、流体袋の外周側に巻かれて、生体情報測定装置を被測定部位に固定するベルト部と、流体袋の体積変化に伴う、第二電極の第二部位との接触状態の変化を抑制する接触状態安定化手段と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の血圧及び心電波形を測定する生体情報測定装置であって、
前記被測定者の被測定部位の周方向に巻き付けられる流体袋と、
前記流体袋内に流体を供給するポンプと、
前記流体袋に連通する前記流体の流路に設けられた弁と、
前記ポンプから前記流体を供給して前記流体袋を膨張させることにより前記被測定部位を圧迫し、又は、前記弁を制御して前記流体袋内の前記流体を排出して前記流体袋を収縮させることにより前記被測定部位に対する圧迫を解除し、前記被測定部位の血圧を測定する血圧測定部と、
前記被測定者の第一部位に接触する第一電極と、
前記第一部位とは異なる前記被測定者の第二部位に接触する第二電極であって、前記周方向に延びる前記流体袋に接続され、該流体袋の該周方向の端部からさらに該周方向に延びる支持部材に支持され、該端部から該周方向に所定距離を隔てた位置に配置された第二電極と、
前記第一電極及び前記第二電極を通じて前記被測定者の心電波形を測定する心電測定部と、
前記流体袋の外周側に巻かれて、前記生体情報測定装置を前記被測定部位に固定するベルト部と、
前記流体袋の体積変化に伴う、前記第二電極の前記第二部位との接触状態の変化を抑制する接触状態安定化手段と、
を備えたことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
前記接触状態安定化手段は、前記第二電極を覆うとともに、前記第二電極の一部が露出する開口部を有する絶縁性の被覆部であって、
前記開口部から露出する前記第二電極の一部は、前記流体袋の前記体積変化の前後を通じて前記第二部位に接触することを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記接触状態安定化手段は、前記流体袋の前記体積変化に伴う前記支持部材の移動による前記第二電極と前記第二部位との前記接触状態の変化を所定範囲に制限しうる前記位置に該第二電極を支持する前記支持部材であることを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記第二電極を支持する第二電極支持部と、該第二電極支持部を、前記周方向に直交する方向に回転可能に支持するヒンジ部と、を含む前記支持部材であることを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記ベルト部の一部を構成することを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記第二電極の前記周方向に直交する方向の断面形状が、半円、楕円、長円又は前記第二部位に向けて凸となる曲線であることを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
前記流体袋と前記ベルト部とを一体に設けたことを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
前記支持部材を含み、前記被測定部位の前記周方向に倣って湾曲するカーラーを備え、
該カーラーと前記ベルト部とを一体に設けたことを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項9】
前記被測定者の第三部位に接触し、基準電位を設定する第三電極を有し、
前記第三電極は、絶縁性部材を介して前記第二電極とともに、前記支持部材に支持され、
前記接触状態安定化手段は、前記第三電極と前記第三部位との前記接触状態の変化を抑制することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項10】
前記第二電極と、前記第一電極又は前記被測定者の第三部位に接触し、基準電位を設定する第三電極とにより前記被測定者の身体との接触抵抗を測定する接触抵抗測定部と、
前記接触抵抗に基づいて、前記被測定者による前記ベルト部の巻き方の適否を判定する巻き方判定部と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血圧値、心電波形などの個人の身体・健康に関する情報(以下、生体情報ともいう)を、個人が自ら日常的に測定機器によって測定し、当該測定結果を健康管理に活用することが一般的に行われるようになってきている。このことから、携帯性を重視した機器の需要が高まっており、多くの携帯型測定装置が提案され、血圧値と心電波形の両方を測定できる携帯型の機器も提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、腕時計型心電計の本体部の裏面(使用者の身体に接する面)に電極を配置している。
【0004】
特許文献2には、使用者の腕に周回されるベルト状のカフの表面(使用者の身体に接する面)に電極を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-6230号公報
【特許文献2】特開2014-36843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術のように、本体部の裏面に電極を配置する構成では、本体部の裏面にカフを配置することができないために、血圧測定のための使用者に対する圧迫力が不足する。特許文献2記載の技術のように、カフの表面に電極配置する構成では、電極への配線が難しく、カフの膨張に伴う電極の移動を考慮した配線設計とする必要があり、設計上複雑な構成となる。また、剛体電極を用いる場合には、カフ内に設けられた空気袋の圧迫を阻害してしまう。
【0007】
上記のような従来の技術に鑑み、本発明は、簡易な構成で、安定した生体情報の測定が可能な生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、被測定者の血圧及び心電波形を測定する生体情報測定装置であって、
前記被測定者の被測定部位の周方向に巻き付けられる流体袋と、
前記流体袋内に流体を供給するポンプと、
前記流体袋に連通する前記流体の流路に設けられた弁と、
前記ポンプから前記流体を供給して前記流体袋を膨張させることにより前記被測定部位を圧迫し、又は、前記弁を制御して前記流体袋内の前記流体を排出して前記流体袋を収縮させることにより前記被測定部位に対する圧迫を解除し、前記被測定部位の血圧を測定する血圧測定部と、
前記被測定者の第一部位に接触する第一電極と、
前記第一部位とは異なる前記被測定者の第二部位に接触する第二電極であって、前記周方向に延びる前記流体袋に接続され、該流体袋の該周方向の端部からさらに該周方向に延びる支持部材に支持され、該端部から該周方向に所定距離を隔てた位置に配置された第二
電極と、
前記第一電極及び前記第二電極を通じて前記被測定者の心電波形を測定する心電測定部と、
前記流体袋の外周側に巻かれて、前記生体情報測定装置を前記被測定部位に固定するベルト部と、
前記流体袋の体積変化に伴う、前記第二電極の前記第二部位との接触状態の変化を抑制する接触状態安定化手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
これによれば、被測定者の心電波形を測定するために用いられる第一電極と、第一電極が接触する被測定者の第一部位とは異なる第二部位に接触する第二電極が、被測定者の血圧測定のために、被測定者の被測定部位の周方向に巻きつけられた流体袋が膨張する際に、周方向に延びる流体袋に接続され、流体袋の周方向の端部からさらに周方向に延びる支持部材に支持され、この端部から周方向に所定距離を隔てた位置に配置されている場合には、支持部材が流体袋の膨張に伴って外径側に移動することにより、第二電極の被測定者の第二部位に対する姿勢(接触角度)が変化したり、接触位置がずれたり、接触面積が変化したりする可能性がある。このような第二電極と第二部位との接触状態の変化は、心電波形の安定的な測定に影響を与える。そこで、流体袋の体積変化に伴う、第二電極の第二部位との接触状態の変化を抑制する接触状態安定化手段を備えることにより、簡易な構成で、心電波形の安定的な測定を実現することができる。
【0010】
また、本発明において、前記接触状態安定化手段は、前記第二電極を覆うとともに、前記第二電極の一部が露出する開口部を有する絶縁性の被覆部であって、
前記開口部から露出する前記第二電極の一部は、前記流体袋の前記体積変化の前後を通じて前記第二部位に接触するようにしてもよい。
【0011】
これによれば、第二電極の一部を露出するように絶縁性の被覆部で覆うという簡易な構成で、心電波形の安定的な測定を実現することができる。
【0012】
また、本発明において、前記接触状態安定化手段は、前記流体袋の前記体積変化に伴う前記支持部材の移動による前記第二電極と前記第二部位との前記接触状態の変化を所定範囲に制限しうる前記位置に該第二電極を支持する前記支持部材であるようにしてもよい。
【0013】
これによれば、第二電極を流体袋に接続された支持部材により、流体袋の体積変化に伴う支持部材の移動による第二電極と第二部位との接触状態の変化を所定範囲に制限しうるような、流体袋の周方向の端部から所定距離を隔てた位置に配置するという簡易な構成で、心電波形の安定的な測定を実現することができる。
【0014】
また、本発明において、前記支持部材は、前記第二電極を支持する第二電極支持部と、該第二電極支持部を、前記周方向に直交する方向に回転可能に支持するヒンジ部と、を含む前記支持部材であるようにしてもよい。
【0015】
このようにすれば、流体袋の膨張に伴う支持部材の移動に対して、ヒンジ部によって、第二電極支持部の周方向に直交する方向の自由度が得られるので、ヒンジ部と第二電極支持部という簡易な構成で、第二電極の第二部位に対する接触状態の変化を抑制することができる。
【0016】
また、本発明において、前記支持部材は、前記ベルト部の一部を構成するようにしてもよい。
【0017】
このように、第二電極を支持する支持部材をベルト部の一部によって構成すれば、第二電極を支持するために特別の部材を設ける必要がなく、部品点数の削減が可能となる。
【0018】
また、本発明は、前記第二電極の前記周方向に直交する方向の断面形状が、半円、楕円、長円又は前記第二部位に向けて凸となる曲線であるようにしてもよい。
【0019】
このように、第二電極の周方向に直交する方向の断面形状を、半円、楕円、長円又は第二部位に向けて凸となる曲線とすることにより、流体袋の膨張に伴う第二電極と第二部位との接触状態との急激な変化を抑制することができる。
【0020】
また、本発明において、前記流体袋と前記ベルト部とを一体に設けてもよい。
【0021】
このようにすれば、生体情報測定装置の構成を簡略化でき、取り扱いも容易になる。
【0022】
また、本発明において、前記支持部材を含み、前記被測定部位の前記周方向に倣って湾曲するカーラーを備え、
該カーラーと前記ベルト部とを一体に設けてもよい。
【0023】
このようにすれば、カーラーと一体にベルト部を設けることにより、ベルト部が被測定部の周方向に倣った湾曲形状に保持することができ、生体情報測定装置の構成を簡略化でき、取り扱いも容易になる。
【0024】
また、本発明において、前記被測定者の第三部位に接触し、基準電位を設定する第三電極を有し、
前記第三電極は、絶縁性部材を介して前記第二電極とともに、前記支持部材に支持され、
前記接触状態安定化手段は、前記第三電極と前記第三部位との前記接触状態の変化を抑制するようにしてもよい。
【0025】
このように第三電極を設けることにより、心電波形のより安定した測定が可能となる。
【0026】
また、本発明において、前記第二電極と、前記第一電極又は前記被測定者の第三部位に接触し、基準電位を設定する第三電極とにより前記被測定者の身体との接触抵抗を測定する接触抵抗測定部と、
前記接触抵抗に基づいて、前記被測定者による前記ベルト部の巻き方の適否を判定する巻き方判定部と、
を備えるようにしてもよい。
【0027】
これによれば、血圧測定を開始する前であっても、心電波形測定のための第二電極と第一電極又は第三電極を利用してベルト部の巻き方の適否を判定することができるので、利便性が高い。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、簡易な構成で、安定した生体情報の測定が可能な生体情報測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、実施例1に係る生体情報測定装置の外観を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係る生体情報測定装置の装着時の外観を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る生体情報測定装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、実施例1に係る生体情報測定装置のカフアッシー部の断面図である。
【
図5】
図5(A)、(B)は、実施例1に係る生体情報測定装置の使用状態を示す図である。
【
図6】
図6(A)、(B)は、実施例1に係る電極の接続構造を示す図である。
【
図7】
図7(A)、(B)は、実施例1に係る電極の接続構造を示す図である。
【
図8】
図8(A)~(C)は、実施例1の変形例1に係る電極の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例1の変形例2に係る生体情報測定装置の使用状態を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例2に係る生体情報測定装置の使用状態を示す図である。
【
図11】
図11(A)は実施例3に係る生体情報測定装置の電極の構成を示す図であり、
図11(B)、(C)は、実施例3に係る生体情報測定装置の使用状態を示す図である。
【
図12】
図12は、実施例4に係る生体情報測定装置の構成を示す図である。
【
図13】
図13は、実施例5に係る生体情報測定装置の機能ブロック図である。
【
図14】
図14は、実施例5に係る生体情報測定装置の巻き方判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
【0031】
<実施例1>
以下に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0032】
(装置の全体構成)
図1及び
図2は、本実施例に係る生体情報測定装置1の外観構成を示す概略図である。
図3は、本実施例に係る生体情報測定装置1の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0033】
図1乃至3に示すように、生体情報測定装置1は概略、本体部100と、カフアッシー部200と、ベルト部400を有する構成であり、被測定者の手首Tに装着した状態で血圧値及び心電波形の測定を行うことができる。ベルト部400は、フックを備える面ファスナー411を備える。本体部100には、ベルト部400を挿通するための環状のベルト通し環を備えるベルト通し部150が設けられている。生体情報測定装置1を装着する際には、ベルト部400を手首Tに巻き付けたうえでベルト通し部150に挿通させ、面ファスナー411をベルト部400(フックが係合するループが形成されている)の任意の位置に貼りつけることで固定を行う。また、生体情報測定装置1は、本体部100の心電測定部130と、カフアッシー部200の第二電極241及び第三電極242とを電気的に接続するための配線が配置されるFPC(Flexible Printed Circuits)300(
図1及び
図2では不図示)を有している。ここでは、手首が本発明の被測定部位に相当する。
【0034】
本体部100は、
図3に示すように、ハウジング101と、電源部110、表示部111、操作部112、血圧測定部120、心電測定部130、及び第一電極140を備えている。ここでは、第一電極140は、本体部100のハウジング101の全体及び操作ボタン1121、1122を含む。第一電極140の構成は、これに限られず、ハウジング101の一部としてもよいし、ハウジング101と独立した構造としてもよい。
【0035】
電源部110は、装置の稼働に必要な電力を供給するバッテリーを含んで構成される。バッテリーは、例えばリチウムイオンバッテリーなどの二次電池であっても良いし、一次電池としても良い。
【0036】
表示部111は、液晶ディスプレイなどの表示装置を含んで構成され、LEDインジケータなどを備えていてもよい。操作部112は、具体的には、本体部100のハウジング101の側面に配置された操作ボタン1121、1122を含む。タッチパネルディスプレイなど表示部111と操作部112が一体となった構成としてもよい。
【0037】
血圧測定部120は、後述するカフアッシー部200を制御するとともに、これによって得られる情報に基づいてユーザーの血圧を測定する機能部であり、制御部121、演算部122、ポンプ123、排気弁124を含んでいる。制御部121、演算部122は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などによって構成され、図示しないが、RAM(Random Access Memory)などによって構成される記憶部を有していてもよい。ここでは、ポンプ123、排気弁124がそれぞれ本発明のポンプ及び弁に相当する。
【0038】
制御部121は、血圧測定部120の制御を司る機能部であり、演算部122、ポンプ123などを介して、カフアッシー部200のカフ圧を制御し、生体情報測定装置1が装着された手首Tにある動脈から、ユーザーの血圧を測定するための情報を取得する。演算部122は、このようにして取得された情報に基づいて、血圧値を測定する。ポンプ123、排気弁124は、空気が流通する流路125を介して後述する圧迫カフ220、センシングカフ230に連通し、圧迫カフ220、センシングカフ230への空気の供給と排出を担う機構である。
【0039】
心電測定部130は、人体表面に接触した第一電極140及び第二電極241の電位差に基づいて、ユーザーの心電波形を測定する機能部であり、制御部131、演算部132を含んでいる。制御部131、演算部132は、上述のCPUなどによって構成される。ハードウェアの観点からは、制御部131、演算部132は血圧測定部120の制御部121、演算部122と共通の構成であっても構わない。
【0040】
なお、血圧測定部120、心電測定部130は共に、上述のCPUやRAMなどの他に、図示しないAD変換回路、アンプ、フィルタなどを含んでいるが、これらは既知の技術で構成されるため、説明は省略する。
【0041】
カフアッシー部200は、カーラー210、圧迫カフ220、センシングカフ230、第二電極241、第三電極242、背板250を備えている。カーラー210は圧迫カフ220を保持するための土台となる部材である。
図4は、カフアッシー部200のうち
図1の点線で囲った領域の内部構造を模式的に示す断面図である。カフアッシー部200は、カーラー210を最も外側として、圧迫カフ220、背板250、センシングカフ230の順に積層された構成となっている。ここでは、圧迫カフ220(及びセンシングカフ230)が本発明の流体袋に相当する。
【0042】
圧迫カフ220は、ポンプ123から送られた空気によって膨張することで装着部の手首Tを締め付け、手首Tに存在する動脈(図示せず)に外圧を加える役割を有する。また、センシングカフ230(図示せず)は、圧迫カフ220によって圧迫された部位に掛かる圧力を検出するための流体袋であり、センシングカフ230内に少量の空気が入った状態でその内圧を圧力計(図示せず)によって検出することにより、圧迫部位に掛かる圧力を測定する。また、背板250(図示せず)は、圧迫カフ220とセンシングカフ230の間に配置される可撓性を有する平板状部材であり、圧迫カフ220による圧迫時におけ
るセンシングカフ230の過度な屈曲を抑制し、センシングカフ230内の圧力分布を均整化する。ここでは、空気が本発明の流体に相当する。
【0043】
第二電極241、第三電極242はいずれも人体表面に接触可能な位置に配置される電極であり、第二電極241は心電波形測定用の電極、第三電極242は基準電位を設定するGND(グランド)電極として機能する。
【0044】
(カフアッシー部の構造)
生体情報測定装置1をユーザーの手首Tに装着した状態を示す
図5に基づいてカフアッシー部200の構造について説明する。本実施例では、手首Tの周方向に倣って湾曲するC字状に形成されたカーラー210の延長方向(手首Tの周囲を回る方向)に沿って圧迫カフ220が設けられている。カーラー210は、本体部100が設けられた位置を基準として、延長方向により長い第一カーラー部211と、延長方向により短い第二カーラー部212を有する。第一カーラー部211は、手首Tの甲側に位置する本体部100から手首Tの動脈側を覆うように延びている。一方、第二カーラー部212は、手首Tの周方向に対して第一カーラー部211とは反対側に延びている。圧迫カフ220はカーラー210の第一カーラー部211に沿って設けられ、圧迫カフ220の、周方向(第一カーラー部211の延長方向)の先端部220aは、第一カーラー部211の延長方向の先端部211a近傍に位置する。また、圧迫カフ220は、第一カーラー部211側から連続して、第二カーラー部212に沿っても設けられるが、圧迫カフ220の、周方向(第二カーラー部212の延長方向)の先端部220bは、カーラー210の第二カーラー部212の延長方向の先端部212aとは離間して位置する。カーラー210は本発明のカーラーに相当する。
【0045】
このように、カーラー210の第二カーラー部212の先端側には、内側に圧迫カフ220が設けられていない電極支持部2121が設けられている。
図6(A)は、生体情報測定装置1を電極支持部2121の外側から見た斜視図であり、
図6(B)は
図6(A)の破線で囲った部分を周方向に直交する方向から見た断面図である。この電極支持部2121の内側に第二電極241と第三電極242が配置されている。第二電極241及び第三電極242は、周方向に直交する断面が略半円形状、周方向には長円形状を二分割した形状をそれぞれ有するステンレス等の導電性部材からなり、周方向に直交する方向に所定間隔をおいて配置されている。
図6(A)に示すように、カーラー210の第二カーラー部212に沿って、本体部100から第二電極241及び第三電極242に向けてFPC300が配置されている。FPC300の周方向(第二カーラー部212の延長方向)の端部と第二電極241及び第三電極242とは板バネ上のコンタクトピン310及び320でそれぞれ接続されている。
図7(A)は、生体情報測定装置1の表示部111の正面から見て、本体部100の内部構造の一部を示した図であり、
図7(B)はポゴピン161、162の中心を通る断面で基板160とFPC300との接続構造を示す図である。
図7(A)及び
図7(B)に示すように、本体部100の内部に収容された基板160と、FPC300は、ポゴピン161、162によって電気的に接続されている。
図6(A)、
図6(B)、
図7(A)、
図7(B)では、説明に不要な構成は適宜省略して記載している。
【0046】
図5(A)を参照して説明したように、本実施例では、第二電極241及び第三電極242を圧迫カフ220の周方向(第二カーラー部212の延長方向)の先端部220bを越え、先端部220bから所定距離だけ離間した位置に配置している。ベルト部400をカーラー210の外周側で、手首Tに巻き付け、ベルト通し部150を挿通させ、面ファスナー411によって固定し、圧迫カフ220を膨張させる前の状態を
図5(A)、圧迫カフ220を膨張させた後の状態を
図5(B)に示している。このように、内側に配置された圧迫カフ220を膨張させると、C字形状のカーラー210は押し広げられて外径側
に移動する。しかし、本実施例に係る生体情報測定装置1では、第二電極241及び第三電極242は、膨張する圧迫カフ220の周方向(第二カーラー部212の延長方向)の先端部220bを越えて延びる電極支持部2121に設けられている。従って、圧迫カフ220の膨張に伴って電極支持部2121の基端部2121aが外径側に移動しても、この基端部2121aから所定距離だけ離間した位置に設けられた第二電極241及び第三電極242の移動及び姿勢変化が所定範囲に制限されるので、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触状態の変化は抑制される。ここでは、接触状態の変化とは、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触位置、接触角度、接触面積等の接触状態の変化である。
図4(A)及び(B)では、カーラー210の電極支持部2121の外側には、カーラー210の第一カーラー部211の先端部211aの内側に配置された圧迫カフ220が位置するため、圧迫カフ220の膨張によって電極支持部2121が内径側に押圧される。この圧迫カフ220の内径側への押圧によっても、第二電極241及び第三電極242が手首Tとの接触圧が増すので、第二電極241及び第三電極242と手首Tに対する接触状態の変化はより抑制される。手首Tの太さによっては、電極支持部2121の外径側にまで、周方向(第一カーラー部211の延長方向)の圧迫カフ220の先端部220aが達しない場合もあるが、このような場合でも、手首Tに巻き付けられたベルト部400により、電極支持部2121の外径側への移動は抑制されるので、圧迫カフ220の膨張による第二電極241及び第三電極242の移動及び姿勢変化が抑制され、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触状態の変化は抑制される。ここでは、電極支持部2121が、本発明の支持部材及び接触状態安定化手段に相当する。圧迫カフ220の膨張が本発明の流体袋の体積変化に相当する。
【0047】
第二電極241及び第三電極242の形状は、周方向に直交する方向の断面形状が
図5に示すように半円形状に限定されず、半楕円形状や、半長円形状や、手首Tに向かって凸となる曲線等の他の湾曲形状であってもよい。
【0048】
(生体情報の測定)
以上のような構成を有する生体情報測定装置1により生体情報の測定を行うには、まず、本体部100が手の甲側を向くようにして、カフアッシー部200とベルト部400を手首Tに巻き付ける。そして、ベルト部400をベルト通し部150に通したうえで折り返し、ベルト部400の面ファスナー411をベルト部400の任意の位置に貼り付けて、手首Tに生体情報測定装置1を装着する。この際、センシングカフ230が手首Tの手の平側に位置するように装着を行う。
【0049】
そして、操作ボタン1121(又は1122)を操作することで測定が開始される。具体的には、圧迫カフ220に空気が注入して膨張させることで手首T(の動脈)を圧迫し、動脈を閉塞させて血流を一旦止めた後に徐々に圧迫カフ220から空気を排出して収縮させて圧迫を解除し動脈の血流を戻し、その際の圧力をセンシングカフ230によって測定する。すなわち、いわゆるオシロメトリック法による血圧測定が行われる。
【0050】
そして、上記血圧測定時、圧迫カフ220により手首Tが圧迫されている際には、第二電極241及び第三電極242は手首Tの表面T1、T2(
図5(A)参照)に接触している(押し付けられている)状態となっている。このため、生体情報測定装置1を装着していない方の手指で、本体部100のハウジング101に設けられている第一電極140に触れることにより、第一電極140と第二電極241との電位差に基づいて、いわゆるI誘導の方式により心電波形の測定を行うことができる。ここでは、生体情報測定装置1を装着していない方の手指が本発明の第一部位に相当し、手首Tの表面T1、T2がそれぞれ本発明の第二部位、第三部位に相当する。
【0051】
以上のように、本実施例に係る生体情報測定装置1によれば、手首Tに装着するタイプ
の携帯型の装置で、血圧値と心電波形を同時に精度よく測定することが可能になる。
【0052】
(変形例1)
図8(A)及び
図8(B)は、第二電極241及び第三電極242が設けられたカーラー210の電極支持部2121を内側から見た図である。
実施例1では、第二電極241と第三電極242とを離間させて配置しているが、
図8(A)に示すように、第二電極241と第三電極242との間に絶縁性の部材からなるセパレータ260を配置してもよい。このように、セパレータ260を隔てて第二電極241と第三電極242を配置することにより、第二電極241と第三電極242の間を絶縁するとともに、第二電極241及び第三電極242の間隔を小さくすることができる。このとき、
図5(A)では、第二電極241が向かって左側に配置され、第三電極242が向かって右側に配置されているが、第二電極241及び第三電極242の位置を入れ替え、第二電極241を向かって右側、第三電極242を向かって左側に配置してもよい。ここでは、セパレータ260が本発明の絶縁性部材に相当する。
【0053】
第二電極241及び第三電極242の配置方向は、周方向に直交する方向に限定されない。
図8(B)に示すように、周方向に沿って、基端側(
図8(B)では下側)に第二電極241を配置し、先端側に第三電極242を配置してもよく、第二電極241と第三電極242との間に絶縁性の部材からなるセパレータを配置してもよい。
【0054】
また、
図8(C)は、第三電極242を省略し、電極支持部2121に第二電極241のみを設けた変形例を示す。このように、GND電極として機能する第三電極242を省略することにより、部材点数の削減及び構造の簡略化を図ることができる。
【0055】
(変形例2)
図9は、実施例1の変形例2に係る生体情報測定装置11の構成を示す側面図である。実施例1に係る生体情報測定装置1と同様の構成については同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
生体情報測定装置11は、第二電極241及び第三電極242の配置を除いて、生体情報測定装置1と同様の構成を有する。
【0056】
生体情報測定装置1では、第二電極241及び第三電極242をカーラー210の第二カーラー部212の先端側に設けた電極支持部2121に配置しているが、変形例2に係る生体情報測定装置11では、第二電極241及び第三電極242をカーラー210の第一カーラー部211の先端側に設けた電極支持部2111に配置している。
【0057】
生体情報測定装置11では、圧迫カフ220の周方向(第一カーラー部211の延長方向)の先端部220aは、カーラー210の延長方向の先端部211aとは所定距離を隔てて位置している。そして、カーラー210の第一カーラー部211は、第一カーラー部211に沿ってカーラー210の内側に配置された圧迫カフ220の周方向(第一カーラー部211の延長方向)の先端部220aを越えて延びており、カーラー210の、圧迫カフ220の先端部220aを越えた位置に、電極支持部2111が設けられている。この電極支持部2111の内側に第二電極241及び第三電極242が配置されている。生体情報測定装置11においても、第二電極241及び第三電極242は、周方向の断面が略半円形状、周方向に直交する方向に長円形状を有するステンレス等の導電性部材からなり、周方向に直交する方向に並んで配置されている。図示は省略するが、第二電極241及び第三電極242と本体部100の内部に収容された基板160とは、FPC300を介して電気的に接続されている。
【0058】
このように本変形例2では、第二電極241及び第三電極242を圧迫カフ220の周
方向(第一カーラー部211の延長方向)の先端部220aを越え、先端部220aから所定距離だけ離間した位置に配置している。ベルト部400をカーラー210の外周側で、手首Tに巻き付け、ベルト通し部150を挿通させ、面ファスナー411によって固定し、圧迫カフ220を膨張させていない状態を
図9に示す。内側に配置された圧迫カフ220を膨張させると、
図5(A)及び
図5(B)を参照して説明したように、C字形状のカーラー210は押し広げられて外径側に移動する。しかし、本変形例2に係る生体情報測定装置11では、第二電極241及び第三電極242は、膨張する圧迫カフ220の周方向(第一カーラー部211の延長方向)の先端部220aを越えて延びる電極支持部2111に設けられている。従って、圧迫カフ220の膨張に伴って電極支持部2111の基端部2111aが外径側に移動しても、この基端部2111aから所定距離だけ離間した位置に設けられた第二電極241及び第三電極242の移動及び姿勢変化が抑制されるので、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触状態の変化は抑制される。
図9では、カーラー210の電極支持部2111の外径側には、カーラー210の第二カーラー部212の先端部212aに配置された圧迫カフ220が位置するため、圧迫カフ220の膨張によって電極支持部2111が内径側に押圧される。この圧迫カフ220の内径側への押圧によっても、第二電極241及び第三電極242が手首Tとの接触圧が増すので、第二電極241及び第三電極242と手首Tに対する接触状態はより抑制される。手首Tの太さによっては、電極支持部2111の外径側にまで、周方向(第二カーラー部212の延長方向)の圧迫カフ220の先端部220bが達しない場合もあるが、このような場合でも、手首Tに巻きつけられたベルト部400により、電極支持部2111の外径側への移動は抑制されるので、圧迫カフ220の膨張による第二電極241及び第三電極242の移動及び姿勢変化は所定範囲に制限され、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触状態の変化は抑制される。ここでは、電極支持部2111が本発明の支持部材及び接触状態安定化手段に相当する。
【0059】
なお、変形例2においても、第二電極241及び第三電極242の構成に対して、
図5(A)~(C)に示した変形例1の構成を適用してもよい。
【0060】
<実施例2>
以下に、図面を参照して本発明の実施例2に係る生体情報測定装置12について説明する。実施例1に係る生体情報測定装置1と同様の構成については同様の符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0061】
図10は、実施例2に係る生体情報測定装置12の構成を示す側面図である。
図10では、生体情報測定装置12では、カーラー210のうち、本体部100から手首Tの動脈側を覆うように延びる第一カーラー部211のみを示しているが、手首Tの周方向に対して第一カーラー部211とは反対側に延び、適宜の延長を有する第二カーラー部212を設けてもよい。また、
図10では、圧迫カフ220は、本体部100に対して第一カーラー部211の内周側にのみ設けられているが、カーラー210の構成に応じて、手首Tの周方向に適宜の位置まで設けてもよい。
【0062】
生体情報測定装置12では、第二電極241及び第三電極242がベルト部400の本体部100側の端部401とは反対側の電極支持部410の内周面412に配置されている。ベルト部400の電極支持部410は圧迫カフ220の周方向(第一カーラー部211の延長方向)の先端部220aから所定距離だけ離間した位置に設けられている。第二電極241及び第三電極242は、ベルト部400に設けられたFPCにより、本体部100の内部に収容された基板160と電気的に接続されている。
【0063】
図10は、圧迫カフ220を膨張させる前の状態を示している。圧迫カフ220を膨張させると、
図5(A)及び
図5(B)について説明したように、C字形状のカーラー21
0は押し広げられて外径側に移動するので、カーラー210の外周側に巻き付けられるベルト部400及び電極支持部410も外径側に移動する。しかし、生体情報測定装置12では、第二電極241及び第三電極242は、膨張する圧迫カフ220の周方向(第一カーラー部211の延長方向)の先端部220aを超えて延びる電極支持部410に設けられている。従って、圧迫カフ220の膨張に伴って電極支持部410の基端部410aが外径側に移動しても、この基端部410aから所定距離だけ離間した位置に設けられた第二電極241及び第三電極242の移動及び姿勢変化が所定範囲に制限されるので、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触状態の変化は抑制される。
【0064】
ここでは、ベルト部400の一部を構成する電極支持部410が本発明の支持部材及び接触状態安定化手段に相当する。
本実施例は、後述する各実施例と組み合わせることも可能である。また、
図10に示す生体情報測定装置12では、カーラー210を設けているが、カーラー210を省略した構成としてもよい。
【0065】
<実施例3>
以下に、図面を参照して本発明の実施例3に係る生体情報測定装置13について説明する。実施例1に係る生体情報測定装置1と同様の構成については同様の符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0066】
生体情報測定装置13では、カーラー210の第二カーラー部212の周方向先端側に設けられた電極支持部2112及び第二電極241及び第三電極242の構成が生体情報測定装置1と異なり、他の構成は共通である。
【0067】
生体情報測定装置13においても、電極支持部2122は、カーラー210の第二カーラー部212の延長方向の先端側に設けられている。また、電極支持部2122は、カーラー210の内側に設けられた圧迫カフ220の周方向の先端部220bを越えて延びている。第二電極241及び第三電極242は、電極支持部2122の先端部2122aの内側に配置されているが、圧迫カフ220の周方向の先端部220aから適宜の位置に配置することができる。
【0068】
図11(A)は、周方向に直交する方向の断面における、実施例3に係る第二電極241及び第三電極242と絶縁被膜270との関係を模式的に示す図である。第二電極241及び第三電極242は、
図11(A)に示すように、基端側(電極支持部2112側又は外側)を絶縁被膜270により覆われている。このため、第二電極241及び第三電極242のうち、この絶縁被膜270によって形成される開口部271(
図11(A)において点線で示す。)から露出する部分のみが、手首Tと電気的に接触することになる。すなわち、絶縁被膜270は、第二電極241及び第三電極242の手首Tとの接触部を制限する機能を有する。絶縁被膜270による被覆部分及び開口部271の範囲は、第二電極241及び第三電極242の形状、電極支持部2122の周方向の長さや、圧迫カフ220の膨張前及び膨張前における厚さ等によっても異なり得るが、生体情報測定装置13を手首Tに装着した状態で、第二電極241及び第三電極242の、開口部271から露出した部分が、圧迫カフ220の膨張前後において共通して手首Tに接するように設定する。電極支持部2122から内側に突出する第二電極241及び第三電極242の高さを、基端側(電極支持部2122側)から内側へと定義したとき、絶縁被膜270の基端側からの高さは、周方向の先端側と、周方向の基端側(本体部100側)とで異なってもよく、例えば、周方向の先端側で低く、周方向の基端側で高くなるように設定することができる。
【0069】
図11(B)は、手首Tの周りに圧迫カフ220、カーラー210及びベルト部400
を巻き付け、ベルト通し部150に挿通したベルト部400の面ファスナー411を固定し、圧迫カフ220を膨張させていない状態を示し、
図11(C)は、
図11(B)の状態から圧迫カフ220を膨張させた状態を示す。圧迫カフ220が膨張する前の
図7(B)に示す状態に比べて、圧迫カフ220が膨張した
図7(C)に示す状態では、電極支持部2112の基端部2112aが外径方向に引っ張られ、第二電極241及び第三電極242が、図上で、時計回りに回転する。このように、圧迫カフ220の膨張の前後で、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触範囲が変化する可能性がある。しかし、第二電極241及び第三電極242のうち、開口部271から露出する部分は、圧迫カフ220の膨張の前と後のいずれの状態においても、手首Tに電気的に接触しているので、圧迫カフ220の膨張により、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触部分は変化しない。すなわち、第二電極241及び第三電極242のうち、圧迫カフ220の膨張におけるいずれかの段階でのみ、手首Tと接触する部分については、絶縁被膜270によって覆うことにより、手首Tとは電気的には接触しない絶縁された状態とすることができる。ここでは、絶縁被膜270及び開口部271が、それぞれ本発明の被覆部及び開口部に相当する。また、絶縁被膜270及び開口部271が本発明の接触状態安定化手段に相当する。
【0070】
このような絶縁被膜270を設けることにより、圧迫カフ220の膨張に関わらず、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触状態を安定化することができる。また、このような絶縁被膜270を設けることにより、第二電極241及び第三電極242を、圧迫カフ220の周方向(第二カーラー部212の延長方向)の先端部220aを越え、この先端部220aに近い位置の配置する場合にも、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触状態を安定化することができる。ただし、本実施例3における絶縁被膜270は、実施例1の変形例1に係る生体情報測定装置1に係る第二電極241及び第三電極242にも適用できる。また、本実施例3における絶縁被膜270は、実施例1の変形例2に係る生体情報測定装置13のようにカーラー210の第一カーラー部211の先端に延びる電極支持部2112に第二電極241及び第三電極242が設けられる場合にも適用できる。
【0071】
<実施例4>
以下に、図面を参照して本発明の実施例4に係る生体情報測定装置14について説明する。実施例1に係る生体情報測定装置1と同様の構成については同様の符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0072】
本実施例に係る生体情報測定装置14では、第二電極241及び第三電極242が配置されるカーラー210の電極支持部2123の構成が、実施例1に係る生体情報測定装置1と異なり、他の構成は共通である。
【0073】
図12に示すように、カーラー210の第二カーラー部212の先端に対し、周方向に直交する方向の軸を中心として回転可能なヒンジ部2124によって、電極支持部2123が接続されている。
図5(A)及び
図5(B)に示したように、圧迫カフ220の膨張によって、カーラー210の電極支持部2121は変形し得る。電極支持部2123をカーラー210の第二カーラー部212に対してヒンジ部2124を介して接続することにより、圧迫カフ220の膨張に伴う変形が許容されるので、電極支持部2123の剛性によって第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触状態が不安定になることを抑制できる。ここでは、電極支持部2123が本発明の支持部材及び第二電極支持部に相当し、電極支持部2123及びヒンジ部2124が本発明の接触状態探偵化手段
【0074】
上述の生体情報測定装置14では、カーラー210の第二カーラー部212の先端と電極支持部2123との間の1か所にのみ、ヒンジ部2324を設けたが、カーラー210
の周方向に沿って複数個所に、同様に周方向に直交する方向に回転可能なヒンジ部を設けてもよく、腕時計のバンドのように、カーラー210の周方向の全体にわたってヒンジ部を配置してもよい。
【0075】
<実施例5>
以下に、図面を参照して本発明の実施例5に係る生体情報測定装置15について説明する。実施例1に係る生体情報測定装置1と同様の構成については同様の符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0076】
実施例5に係る生体情報測定装置15は、ハードウェア構成は、実施例1~4と同様である。
図13に、本実施例に係る生体情報測定装置15の機能ブロック図を示す。生体情報測定装置15は、
図3に示した実施例1に係る生体情報測定装置1とは、心電測定部130の演算部132及び血圧測定部120の制御部121のブロック構成が異なる。生体情報測定装置15では、演算部132が接触抵抗測定部1321を含み、制御部121がベルトぴったり巻き判定部1221を含む。接触抵抗測定部1321及びベルトぴったり巻き判定部1221の機能については後述する。ここでは、接触抵抗測定部1321及びベルトぴったり巻き判定部1221が、それぞれ本発明の接触抵抗測定及び巻き方判定部に相当する。
【0077】
図14に、生体情報測定装置15におけるベルトぴったり判定処理の手順を説明するフローチャートを示す。
まず、ユーザーが、生体情報測定装置15を装着して血圧測定を開始する(ステップS1)。具体的には、手首Tに圧迫カフ220、カーラー210及びベルト部400を巻き付け、ベルト部400をベルト通し部150に挿通し、面ファスナー411によってベルト部400を固定し、所定の測定姿勢をとり、測定スイッチを押下するとともに、生体情報測定装置15が装着された手と反対側の手の指で第一電極140に触れる。
【0078】
次に、接触抵抗測定部1321が、第二電極241と第三電極242との導通により、第二電極241及び第三電極242と手首Tとの接触抵抗を測定する(ステップS2)。このとき、接触抵抗は、第一電極140と第二電極141との導通によって測定してもよい。また、接触抵抗を測定する被測定者の身体の部位は、手首Tに限らない。
【0079】
そして、ベルトぴったり巻き判定部1221が、接触抵抗が閾値以下であり、かつ、所定時間の接触抵抗のばらつきが閾値以下であるか否かを判定する(ステップS3)。
このとき、接触抵抗が閾値以下であり、かつ、所定時間の接触抵抗のばらつきが閾値以下であれば、ベルトぴったり巻き判定部1221は、ぴったり巻き、すなわち、ベルト部400が手首Tにぴったり巻き付けられ、生体情報測定装置15が適切に装着されていると判定され(ステップS4)、制御部121は、排気弁124を閉じ、ポンプ123を駆動して、圧迫カフ220及びセンシングカフ230による加圧を開始する(ステップS5)。
一方、接触抵抗が閾値を超え、又は、所定時間の接触抵抗のばらつきが閾値を超える場合には、ベルトぴったり巻き判定部1221は、ゆる巻き、すなわち、ベルト部400が手首Tにゆるく巻き付けられ、生体情報測定装置14が適切に装着されていないと判定し(ステップS6)、制御部121はゆる巻き処理を行う(ステップS7)。ゆる巻き処理としては、ベルト部400が手首Tにぴったり巻かれておらず、電極の接触状態が適切でない旨を表示部111に表示するようにしてもよい。このような表示を行った上で、圧迫カフ220等による加圧を開始してもよいし、加圧を開始せずにユーザーにベルト部400の巻き直しを促してもよい。ゆる巻き処理としては、ベルト部400がぴったり巻かれていない旨の表示は行わず、圧迫カフ220等の加圧を開始するようにしてもよい。
なお、ゆる巻き処理においては、表示部111の表示は、その旨のメッセージやマーク
の表示であってもよいし、ランプ等の点滅や、所定色での点灯であってもよいし、音声出力部を設け、その旨の音声メッセージを出力するようにしてもよい。
【0080】
このようにすれば、心電波形測定のための第二電極241及び第三電極242等の構成を利用して、血圧測定時のベルト部400の巻き方の適否の判定を行うことができるので、血圧測定開始前であってもベルト部400の巻き方の適否を判定することができ利便性が高い。
【0081】
上述の実施例1~4に係る生体情報測定装置1、11~15では、ベルト部400と圧迫カフ220とカーラー210を別体に構成しているが、ベルト部400と圧迫カフ220を一体に構成してもよいし、ベルト部400とカーラー210を一体に構成してもよい。このようにすれば、装置構成が簡略化され、取り扱いも容易になる。
【符号の説明】
【0082】
1、11、12、13,14,15・・・生体情報測定装置
241・・第二電極
242・・第三電極
2111、2121・・電極支持部