(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144787
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】溶接システム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20241004BHJP
B23K 37/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B23K9/12 310D
B23K37/02 B
B23K37/02 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056898
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】305017815
【氏名又は名称】十一屋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 剛
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】大附 和敬
(72)【発明者】
【氏名】西羅 康平
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】相馬 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】二村 倫也
(72)【発明者】
【氏名】大棟 康亜
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一道
(57)【要約】
【課題】切断装置のみを駆動させる動力源を要することなく、簡単な装置構成で、ワイヤの先端を切断することができる切断装置を備えた溶接システムを提供する。
【解決手段】
溶接システム10は、一対の鋼管柱1A、1Bの開先に、トーチ88の先端から、ワイヤWを供給しながらトーチ88を開先1aに沿って移動させ、一対の鋼管柱1A、1Bを溶接する溶接用ロボット80と、トーチ88の先端から送り出されたワイヤWの先端を切断するワイヤ切断装置50と、溶接時に溶接用ロボット80と一対の鋼管柱1A、1Bとの相対的な動作を行う台車90と、を備える。ワイヤ切断装置50は、ワイヤWを切断する一対の切断刃51A、51Bを有している。ワイヤ切断装置50は、台車90による相対的な動作により、一対の切断刃51A、51Bの開閉動作が実行される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鋼管柱の開先に、トーチの先端から、溶接用のワイヤを供給しながら前記トーチを前記開先に沿って移動させ、一対の鋼管柱を溶接する溶接用ロボットと、
前記トーチの先端から送り出された前記ワイヤの先端を切断するワイヤ切断装置と、
溶接時に前記溶接用ロボットと前記一対の鋼管柱との相対的な動作を行う作動装置と、
を備えた溶接システムであって、
前記ワイヤ切断装置は、前記ワイヤを切断する一対の切断刃を有しており、
前記作動装置による前記相対的な動作により、前記一対の切断刃の開閉動作が実行されることを特徴とする溶接システム。
【請求項2】
前記一対の鋼管柱は、上部鋼管柱と下部鋼管柱とであり、
前記作動装置は、前記一対の鋼管柱に対向しかつ水平方向に延在したレールに沿って自走する台車であり、
前記台車には、前記溶接用ロボットが搭載されており、
前記ワイヤ切断装置は、前記レールの端部に取り付けられており、
前記レールの端部まで移動した前記台車の押圧により、前記一対の切断刃が閉じるよう前記ワイヤ切断装置が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項3】
前記一対の切断刃は、固定刃と、前記固定刃に対して、前記一対の切断刃が開閉する方向に可動する可動刃と、で構成され、
前記ワイヤ切断装置には、前記固定刃に対して、前記可動刃が開く方向に、前記可動刃を付勢する付勢部材が、設けられており、
前記ワイヤ切断装置は、前記レールの端部まで移動した前記台車の押圧により、前記一対の切断刃が閉じるように、前記固定刃に向かって前記可動刃を移動させることを特徴とする請求項2に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記作動装置は、
前記一対の鋼管柱を拘束した状態で、前記一対の鋼管柱を軸周りに回転させるギア部と、
前記ギア部に噛合し、前記ギア部を回転させるピニオン部と、
前記ピニオン部とともに回転するカム部とを、備えており、
前記ワイヤ切断装置は、前記カム部の回転により、前記カム部の外周面に押圧された状態で、前記一対の切断刃が閉じ、前記カム部の外周面に非押圧の状態で、前記一対の切断刃が開くように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記一対の切断刃は、固定刃と、前記固定刃に対して、前記一対の切断刃が開閉する方向に可動する可動刃と、で構成され、
前記ワイヤ切断装置には、前記固定刃に対して、前記可動刃が開く方向に、前記可動刃を付勢する付勢部材が、設けられており、
前記ワイヤ切断装置は、前記カム部の外周面に前記ワイヤ切断装置が押圧された状態で、前記一対の切断刃が閉じるように、前記可動刃を前記固定刃に向かって移動させることを特徴とする請求項4に記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接用ロボットのトーチ先端から送り出されるワイヤの先端を切断するワイヤ切断装置を備えた溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アーク溶接ロボットと、アーク溶接ロボットの溶接ワイヤの先端を切断する切断装置を備えた溶接システムが提案されている(たとえば特許文献1参照)。切断装置は、一対の切断刃を備えており、一対の切断刃は、固定刃と、固定刃に接近し溶接ワイヤを切断する可動刃と、を備えている。可動刃は、モータに連結されており、モータの回転駆動により、固定刃に離接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の溶接システムでは、切断装置は、モータの駆動により、一対の切断刃の開閉を行っており、切断装置には、一対の切断刃を開閉させるモータなどの動力源が必要となり、装置構成が煩雑なものとなる。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切断装置のみを駆動させる動力源を要することなく、簡単な装置構成で、ワイヤの先端を切断することができる切断装置を備えた溶接システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係る溶接システムは、一対の鋼管柱の開先に、トーチの先端から、溶接用のワイヤを供給しながら前記トーチを前記開先に沿って移動させ、一対の鋼管柱を溶接する溶接用ロボットと、前記トーチの先端から送り出された前記ワイヤの先端を切断するワイヤ切断装置と、溶接時に前記溶接用ロボットと前記一対の鋼管柱との相対的な動作を行う作動装置と、を備えた溶接システムであって、前記ワイヤ切断装置は、前記ワイヤを切断する一対の切断刃を有しており、前記作動装置による前記相対的な動作により、前記一対の切断刃の開閉動作が実行されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、溶接時に、たとえば多関節ロボットなどの溶接用ロボットと一対の鋼管柱とを相対的に移動させる作動装置を備えており、この作動装置による相対的な動作により、一対の切断刃の開閉動作が実行される。したがって、切断装置のみを駆動させる動力源を要することなく、簡単な装置構成で、トーチ先端から送り出されるワイヤの先端を切断することができる。
【0008】
より好ましい態様としては、前記一対の鋼管柱は、上部鋼管柱と下部鋼管柱とであり、前記作動装置は、前記一対の鋼管柱に対向しかつ水平方向に延在したレールに沿って自走する台車であり、前記台車には、前記溶接用ロボットが搭載されており、前記ワイヤ切断装置は、前記レールの端部に取り付けられており、前記レールの端部まで移動した前記台車の押圧により、前記一対の切断刃が閉じるよう前記ワイヤ切断装置が配置されている。
【0009】
この態様によれば、一対の鋼管柱に対向するように、レールが配置されており、このレールは水平方向に沿って延在している。溶接用ロボットは、レールを自走する台車に搭載されている。この台車を作動装置として、台車を走行(自走)させて、溶接用ロボットは、一対の鋼管柱に対して相対的に移動し(動作し)ながら、上部鋼管柱と下部鋼管柱との溶接を行うことができる。
【0010】
ここで、ワイヤ切断装置は、レールの端部に取り付けられている。ワイヤの先端を切断する際に、まず、ワイヤ切断装置に取り付けられたレールの端部まで台車を移動させた後、溶接用ロボットを作動させ、開いた状態の一対の切断刃の間に、ワイヤの先端を配置する。この状態で、台車をワイヤ切断装置に押圧することにより、一対の切断刃が閉じ、ワイヤの先端が、一対の切断刃に挟圧されて、ワイヤの先端を切断することができる。このように、ワイヤ切断装置のみを駆動させる動力源を要することなく、台車により、トーチ先端から送り出されるワイヤの先端を切断することができる。
【0011】
さらに好ましい態様としては、前記一対の切断刃は、固定刃と、前記固定刃に対して、前記一対の切断刃が開閉する方向に可動する可動刃と、で構成され、前記ワイヤ切断装置には、前記固定刃に対して、前記可動刃が開く方向に、前記可動刃を付勢する付勢部材が、設けられており、前記ワイヤ切断装置は、前記レールの端部まで移動した前記台車の押圧により、前記一対の切断刃が閉じるように、前記固定刃に向かって前記可動刃を移動させる。
【0012】
この態様によれば、台車をワイヤ切断装置に押圧することにより、ワイヤの先端を切断した後、台車の押圧を解除すれば、付勢部材により、固定刃に対して、可動刃を開けることができる。これにより、台車による押圧および押圧の解除により、一対の切断刃の開閉を行うことができ、ワイヤの切断を繰り返し行うことができる。
【0013】
より好ましい別の態様としては、前記作動装置は、前記一対の鋼管柱を拘束した状態で、前記一対の鋼管柱を軸周りに回転させるギア部と、前記ギア部に噛合し、前記ギア部を回転させるピニオン部と、前記ピニオン部とともに回転するカム部とを、備えており、前記ワイヤ切断装置は、前記カム部の回転により、前記カム部の外周面に押圧された状態で、前記一対の切断刃が閉じ、前記カム部の外周面に非押圧の状態で、前記一対の切断刃が開くように配置されている。
【0014】
この態様によれば、ピニオン部を回転させることにより、ギア部に拘束された一対の鋼管柱を、溶接用ロボットに対して一対の鋼管柱を軸周りに回転させながら、溶接用ロボットは、一対の鋼管柱の溶接を行う。ワイヤの先端を切断する際には、まず、ワイヤ切断装置がカム部の外周面に非押圧の状態で、溶接用ロボットを駆動して、開いた状態の一対の切断刃の間に、ワイヤの先端を配置する。この状態で、カム部の回転により、カム部の外周面に押圧されたワイヤ切断装置により、一対の切断刃が閉じ、ワイヤの先端が、一対の切断刃に挟圧されて、ワイヤの先端を切断することができる。このように、ワイヤ切断装置のみを駆動させる動力源を要することなく、カム部により、トーチ先端から送り出されるワイヤの先端を切断することができる。
【0015】
さらに好ましい態様としては、前記一対の切断刃は、固定刃と、前記固定刃に対して、前記一対の切断刃が開閉する方向に可動する可動刃と、で構成され、前記ワイヤ切断装置には、前記固定刃に対して、前記可動刃が開く方向に、前記可動刃を付勢する付勢部材が、設けられており、前記ワイヤ切断装置は、前記カム部の外周面に前記ワイヤ切断装置が押圧された状態で、前記一対の切断刃が閉じるように、前記可動刃を前記固定刃に向かって移動させる。
【0016】
この態様によれば、カム部の外周面をワイヤ切断装置に押圧することにより、ワイヤの先端を切断した後、カム部の外周面の押圧を解除すれば、付勢部材により、固定刃に対して、可動刃を開けることができる。これにより、カム部の外周面による押圧および押圧の解除により、一対の切断刃の開閉を行うことができ、ワイヤの切断を繰り返し行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、切断装置のみを駆動させる動力源を要することなく、簡単な装置構成で、ワイヤの先端を切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る溶接システムを説明するための模式的斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る溶接システムのワイヤ切断装置の模式的斜視図である。
【
図4】(a)は、
図3のA-A線に沿った矢視方向の断面図であり、(b)は、(a)の状態から、一対の切断刃が閉じた状態の断面図である。
【
図5】(a)は、ワイヤ切断前の状態の溶接システムの側面図であり、(b)は、ワイヤ切断時の状態の溶接システムの側面図である。
【
図6】第2実施形態に係る溶接システムを説明するための模式的側面図であり、(a)は、ワイヤ切断前の状態の溶接システムの側面図であり、(b)は、ワイヤ切断時の状態の溶接システムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図6を参照しながら、以下に、本発明の実施形態に係る溶接システム10を説明する。
【0020】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、柱1は、鋼管柱であり、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bとから構成されている。下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bとの開先1aに溶融した溶接用のワイヤWを供給することにより、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bとが一体化される。下部鋼管柱1Aおよび上部鋼管柱1Bの外面は、対向する(反対側に位置する)外面1b、1bと、これらの間に形成された外面1c、1cの4つの外面で構成され、4つの平面部と4つの湾曲部によって形成されている。
【0021】
下部鋼管柱1Aおよび上部鋼管柱1Bの外面1b、1cの平面部の所定位置には、複数(ここでは4つ)の突片2(エレクションピースともいう)が溶接されている。この突片2は、上下に隣接する下部鋼管柱1Aおよび上部鋼管柱1Bを仮固定するために設けられている。上下に配置された2つの突片2には、仮固定治具3が取り付けられている。
【0022】
仮固定治具3は、上下方向に延設されており、上側の端部はボルト4等を用いて上側の突片2に締結されており、下側の端部はボルト4等を用いて下側の突片2に締結されている。仮固定治具3は、ここでは詳細な説明を省略するが、上下に配置された2つの突片2同士の間の距離を調節可能に構成されていてもよい。これにより、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bとの隙間を調節することが可能であるとともに、上部鋼管柱1Bの傾きを調節することが可能である。なお、仮固定治具3は、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bの突合せ部分の溶接が完了した際、又は突合せ部分の溶接途中であっても、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bとの間の接合強度が建設中の建物を支持するのに十分な大きさになった際に、突片2から取り外される。
【0023】
溶接用ロボット80は、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bとの開先に、トーチ88の先端から、溶接用のワイヤWを供給しながらトーチ88を開先1aに沿って移動させる。この際、ワイヤWと柱1との間にアーク放電を発生させることにより、溶接用のワイヤWの先端を溶融させながら、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bが溶接される。ワイヤWの先端は、溶接後には、丸みを帯びているため、溶接開始時には、アーク放電の発生がし難いことが想定される。特に、本実施形態の如く、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bを溶接する場合には、仮固定治具3を挟んで、開先1aに沿った溶接経路に溶接する。このため、溶接用ロボット80による溶接を一旦中断し、溶接用ロボット80の姿勢を変更して、溶接を再開する。開先1aに沿った溶接経路を往復するように、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bとの溶接を繰り返して行うため、アーク放電を安定して発生させることは、重要である。溶接開始時には、ワイヤWの先端の形状が尖った形状である方が、アーク放電が安定して生成され易ことから、後述するワイヤ切断装置50により、ワイヤWの先端が切断される。
【0024】
溶接用ロボット80は、補強プレート30に取り付けられたレール40に沿って案内される。補強プレート30は、下部鋼管柱1Aの外面1bに取り付けられた、一対の支持部材20、20に支持されている。
【0025】
支持部材20は、固定ユニット11を介して、下部鋼管柱1Aの外面1bに着脱自在に支持されている。一対の支持部材20、20は、柱1を挟むように下部鋼管柱1Aに取り付けられている。一対の補強プレート30、30は、柱1を挟むように一対の支持部材20、20ごとに渡されている。各レール40は、直線状のレールであり、補強プレート30ごとに取り付けられ、鋼管柱1(一対の鋼管柱(1A、1B))に対向するように水平方向に延在している。各レール40は、リニアガイドであり、各溶接用ロボット80の走行を案内している。
【0026】
次に、溶接システム10について説明する。本実施形態では、溶接システム10は、溶接用ロボット80と、ワイヤ切断装置50と、台車(作動装置)90とを備えている。溶接用ロボット80は、上部鋼管柱1Bと下部鋼管柱1Aと開先1aに、トーチ88の先端から、溶接用のワイヤWを供給しながらトーチ88を開先1aに沿って移動させる多関節ロボットである。
【0027】
図1に示すように、溶接用ロボット80は、レール40上に載置され、レール40に沿って走行移動する台車90に搭載される。台車90には、台車90の走行および溶接用ロボット80の動作のための電力と制御信号を送るケーブル89が接続されている。溶接用ロボット80は、台車90上に配置され上下方向に延びる軸を中心として旋回可能な旋回台82と、旋回台82上に配置され上方向に延びる基台部83とを備えている。
【0028】
さらに、溶接用ロボット80は、基台部83上に配置され水平方向に延びる軸を中心として回動可能な第1アーム84と、第1アーム84に連設され、水平方向に延びる軸を中心として回動可能な第2アーム85とを備えている。
【0029】
第2アーム85は、その軸方向に沿って回転するアーム本体86を備えており、アーム本体86の先端には、第3アーム87が旋回自在に取り付けられている。第3アーム87には、トーチ88が取り付けられており、溶接用のトーチ88は、ケーブル99に接続されている。
【0030】
溶接用ロボット80は、台車90によって所定位置に移動され、旋回台82、第1アーム84、第2アーム85、および第3アーム87を駆動することによって、トーチ88の先端を下部鋼管柱1Aおよび上部鋼管柱1Bの開先1aの所望の位置に配置して溶接を行う。
【0031】
台車90は、溶接時に溶接用ロボット80と、一対の鋼管柱(1A、1B)との相対的な動作を行う装置である。台車90には、溶接用ロボット80が搭載されており、台車90は、水平方向に沿って延在したレール40に沿って自走する(直動する)。具体的には、台車90には、モータ(図示せず)が内蔵されており、ケーブル89からの電力および制御信号により、台車90は、レール40上の所定の位置に、移動することができる。
【0032】
ワイヤ切断装置50は、トーチ88の先端から送り出されたワイヤWの先端を切断する装置である。
図2および
図3に示すように、ワイヤ切断装置50は、各レール40の端部に取り付けられており、ワイヤWを切断する一対の切断刃を有している。具体的には、一対の切断刃は、装置架台52に固定された固定刃51Aと、固定刃51Aに対して、一対の切断刃が開閉する方向に可動する可動刃51Bと、で構成されている。装置架台52は、一対の支持部材71、71に支持されており、各支持部材71は、ブラケット72を介して、レール40の端部に取り付けられている。
【0033】
ワイヤ切断装置50には、固定刃51Aに対して、可動刃51Bが開く方向に、可動刃51Bを付勢するバネ部材(付勢部材)58が、設けられている。具体的には、装置架台52には、一対のエンドプレート54A、54Bが、一対の切断刃の刃幅方向に二組設けられている。各エンドプレート54A、54Bは、装置架台52から立設するように固定されている。一対のエンドプレート54A、54Bには、保持部材55A、55Bを介して、円柱状のロッド56が移動自在に挿通されている。
【0034】
ロッド56は、一対の切断刃の両側に、2つ設けられている2つのロッド56、56の基端(一端)は、台車90を受ける受け部53により連結されている。各ロッド56の先端側(他端側)には、ナット59A、59Bが螺着されており、エンドプレート54Aからのロッド56の抜けが防止される。受け部53には、可動刃51Bが取り付けられている。
【0035】
保持部材55A、55Bは、一対のエンドプレート54A、54Bの間において、バネ部材58を保持する部材である。
図4(a)、(b)に示すように、保持部材55A、55Bは、筒状部55a、55cに、鍔状の部分55b、55dを有した部材である。鍔状の部分55b、55dが、各エンドプレート54A、54Bに対向するように、一対のエンドプレート54A、54Bの間に配置されている。
【0036】
ロッド56の先端側に位置する保持部材55Aは、エンドプレート54Aに固定され、ロッド56が軸方向に沿って移動自在にとなるように、ロッド56を案内している。ロッド56の基端側に位置する保持部材55Bは、ロッド56とともに、エンドプレート54Bに対して、軸方向に沿って移動自在にとなるように、ロッド56に固定されている。
【0037】
バネ部材58は、各保持部材55A、55Bの鍔状の部分55b、55dに当接しており、受け部53が台車90に押圧されると、ロッド56とともに一方の保持部材55Bが移動し、バネ部材58が圧縮される。これにより、
図4(a)に示す、一対の切断刃51A、51Bが開いた状態から、
図4(b)に示す、一対の切断刃51A、51Bが閉じた状態に変化する。具体的には、台車90の押圧により、一対の切断刃51A、51Bが閉じるように、固定刃に51A向かって可動刃51Bが移動する。
【0038】
受け部53に対する台車90からの押圧が解除されると、固定刃51Aに対して、可動刃51Bが開く方向に、可動刃51Bを付勢したバネ部材58の復元力により、
図4(b)に示す、一対の切断刃51A、51Bが閉じた状態から、
図4(a)に示す、一対の切断刃51A、51Bが開いた状態に戻る。
【0039】
このように、本実施形態では、台車(作動装置)90による移動(相対的な動作)により、一対の切断刃51A、51Bの開閉動作が実行される。これにより、ワイヤ切断装置50のみを駆動させる動力源を要することなく、簡単な装置構成で、トーチ88の先端から送り出されるワイヤWの先端を切断することができる。
【0040】
具体的には、ワイヤWの先端を切断する際に、まず、
図4(a)に示すように、ワイヤ切断装置50に取り付けられたレール40の端部まで台車90を移動させた後、溶接用ロボット80を作動させ、開いた状態の一対の切断刃51A、51Bの間に、ワイヤWの先端を配置する。
【0041】
この状態で、
図4(b)に示すように、台車90をワイヤ切断装置50の受け部53に押圧することにより、一対の切断刃51A、51Bが閉じ、ワイヤWの先端が、一対の切断刃51A、51Bに挟圧されて、ワイヤの先端を切断することができる。このように、ワイヤ切断装置50のみを駆動させる動力源を要することなく、台車90により、トーチ88の先端から送り出されるワイヤWの先端を切断することができる。
【0042】
さらに、台車90をワイヤ切断装置50に押圧することにより、ワイヤWの先端を切断した後、台車90の押圧を解除すれば、バネ部材58により、固定刃51Aに対して、可動刃51Bを開ける(引き離す)ことができる。これにより、台車90による押圧および押圧の解除により、一対の切断刃51A、51Bの開閉を行うことができ、ワイヤWの切断を繰り返し行うことができる。
【0043】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る溶接システム10が、第1実施形態のものと相違する点は、作動装置と、ワイヤ切断装置の一部の構造であり、それ以外の同じ機能を有する構成は、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0044】
本実施形態では、
図6(a)および(b)に示すように、固定台70に固定された溶接用ロボット80に対して、作動装置60により、一対の鋼管柱1A、1Bを、回転軸周りに、相対的に回転させながら(動作させながら)、溶接用ロボット80で、一対の鋼管柱1A、1Bを溶接する。一対の鋼管柱1A、1Bは、水平方向に沿った回転軸と、柱1(一対の鋼管柱1A、1B)の軸が一致している。
【0045】
本実施形態では、作動装置60は、一対の鋼管柱1A、1Bを拘束した状態で、一対の鋼管柱1A、1Bを軸周りに回転させるギア部61を備えている。具体的には、ギア部61は、一対の鋼管柱1A、1B同士の開先が周方向に露出し、かつ、回転軸と、柱1(一対の鋼管柱1A、1B)の軸が一致するように、拘束部64で鋼管柱1A、1Bのそれぞれを拘束している。
【0046】
作動装置60は、ギア部61に噛合し、ギア部61を回転させるピニオン部62と、ピニオン部62とともに回転するカム部63と、ピニオン部62とともにカム部63を回転させるモータ65と、をさらに備えている。
【0047】
本実施形態のワイヤ切断装置50が、第1実施形態のものと相違する点は、ワイヤ切断装置50の固定刃51Aが、エンドプレート54Aを含む装置本体に固定され、ワイヤ切断装置50の可動刃51Bが、ロッド56とともに移動する保持部材55Bに取り付けられている点である。
【0048】
ワイヤ切断装置50は、カム部63の回転により、カム部63の外周面63aの受け部53が押圧された状態で、一対の切断刃51A、51Bが閉じ、カム部63の外周面63aに受け部53が非押圧の状態で、一対の切断刃51A、51Bが開くように配置されている。
【0049】
本実施形態も、第1実施形態と同様に、ワイヤ切断装置50には、固定刃51Aに対して、可動刃51Bが開く方向に、可動刃51Bを付勢するバネ部材58が、設けられている。ワイヤ切断装置50は、カム部63の外周面63aにワイヤ切断装置50が押圧された状態で、一対の切断刃51A、51Bが閉じるように、可動刃51Bを固定刃51Aに向かって移動させる。
【0050】
本実施形態によれば、モータ65でピニオン部62を回転させることにより、ギア部61に拘束された一対の鋼管柱1A、1Bを、溶接用ロボット80に対して一対の鋼管柱1A、1Bの軸周りに回転させながら、溶接用ロボット80を用いて、一対の鋼管柱1A、1Bの溶接を行うことができる。
【0051】
図6(a)に示すように、ワイヤWの先端を切断する際には、まず、ワイヤ切断装置50の受け部53が、カム部63の外周面63aに非押圧の状態で、溶接用ロボット80を駆動して、開いた状態の一対の切断刃51A、51Bの間に、ワイヤWの先端を配置する。
【0052】
この状態で、
図6(b)に示すように、カム部63の回転により、カム部63の外周面63aに押圧されたワイヤ切断装置50により、一対の切断刃51A、51Bが閉じ、ワイヤWの先端が、一対の切断刃51A、51Bに挟圧されて、ワイヤWの先端を切断することができる。このように、本実施形態でも、ワイヤ切断装置50のみを駆動させる動力源を要することなく、カム部63により、トーチ88の先端から送り出されるワイヤWの先端を切断することができる。
【0053】
さらに、カム部63の外周面63aをワイヤ切断装置50に押圧することにより、ワイヤWの先端を切断した後、カム部63の外周面63aの押圧を解除すれば、バネ部材58により、固定刃51Aに対して、可動刃51Bを開けることができる。これにより、カム部63の外周面63aによる押圧および押圧の解除により、一対の切断刃51A、51Bの開閉を行うことができ、ワイヤWの切断を繰り返し行うことができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0055】
1:柱、1A:下部鋼管柱、1B:上部鋼管柱、1a:開先、10:溶接システム、50:ワイヤ切断装置、40:レール、51A:固定刃(切断刃)、51B:可動刃(切断刃)、60:作動装置、61:ギア部、62:ピニオン部、63:カム部、90:台車(作動装置)