(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014479
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】金属加工方法および金属加工システム
(51)【国際特許分類】
B30B 15/00 20060101AFI20240125BHJP
B21D 22/00 20060101ALI20240125BHJP
B30B 13/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B30B15/00 G
B21D22/00
B30B13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117331
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】306019122
【氏名又は名称】株式会社エイチワン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 大介
(72)【発明者】
【氏名】村野 達也
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 顕秀
(72)【発明者】
【氏名】梅津 輝
【テーマコード(参考)】
4E090
4E137
【Fターム(参考)】
4E090AA01
4E090AB01
4E090EB01
4E090EC04
4E090HA02
4E090HA03
4E090HA04
4E137AA11
4E137AA17
4E137BB01
4E137CA24
4E137CA26
4E137CA30
4E137CB03
4E137EA01
4E137EA22
4E137EA23
4E137EA40
(57)【要約】
【課題】製品となる材料の材料特性を実質的に計測して不良品の発生原因を絞り込んで生産性を向上させることができる金属加工方法および金属加工システムを提供する。
【解決手段】金属加工方法は、素材3を準備する準備工程S1を備える。素材3は、プレス成形されて製品となる成形対象部9と、最終的に切り離されてスクラップとなるスクラップ部12と、スクラップ部12に設けられて材料特性試験の対象となる試験体部16と、を一体に備える。金属加工方法は、成形対象部9とスクラップ部12とが切り離されていない状態で、試験体部16を押圧して材料特性試験を開始する材料特性試験工程S2と、材料特性試験工程S2の測定データを成形対象部9と関連付けて記録する記録工程S3と、成形対象部9とスクラップ部12とを切り離す切離し工程S4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形されて製品となる成形対象部と、前記成形対象部と最終的に切り離されてスクラップとなるスクラップ部と、前記スクラップ部に設けられて材料特性試験の対象となる試験体部と、を一体に備える素材を準備する準備工程と、
前記成形対象部と前記スクラップ部とが切り離されていない状態で、前記試験体部を押圧して材料特性試験を開始する材料特性試験工程と、
前記材料特性試験工程の測定データを前記成形対象部と関連付けて記録する記録工程と、
前記成形対象部と前記スクラップ部とを切り離す切離し工程と、
を備える金属加工方法。
【請求項2】
前記準備工程は、前記スクラップ部に所定形状の加工を施して前記試験体部を形成する試験体部形成工程を含む、
請求項1に記載の金属加工方法。
【請求項3】
前記試験体部形成工程、前記材料特性試験工程、前記切離し工程のうち少なくとも何れか二工程は、それぞれの工程に設置された各前記素材に対して、プレス加工機における一回のサイクルの間で実施される、
請求項2に記載の金属加工方法。
【請求項4】
前記試験体部形成工程、前記材料特性試験工程、前記切離し工程は、それぞれの工程に設置された各前記素材に対して、プレス加工機における一回のサイクルの間で実施される、
請求項2に記載の金属加工方法。
【請求項5】
前記成形対象部に対してプレス成形を行うプレス成形工程を備え、
前記材料特性試験工程は、前記プレス成形工程と同時に行われる、
請求項1に記載の金属加工方法。
【請求項6】
前記材料特性試験工程は、所定形状に形成された前記試験体部を押圧した際の反力または変形量のうち少なくとも何れか一方を測定データとして測定する、
請求項1又は請求項2に記載の金属加工方法。
【請求項7】
前記試験体部形成工程において、レーザー加工装置を用いて前記スクラップ部に前記試験体部を形成することを特徴とする請求項2に記載の金属加工方法。
【請求項8】
プレス成形されて製品となる成形対象部と、前記成形対象部と最終的に切り離されてスクラップとなるスクラップ部と、前記スクラップ部に設けられ材料特性試験の対象となる試験体部と、を一体に備える素材に対してプレス成形を行うプレス成形システムであって、
前記成形対象部と前記スクラップ部とが切り離されていない状態の前記試験体部を押圧して材料特性試験を行う材料特性試験部と、
前記材料特性試験部の測定データを前記成形対象部と関連付けて記録する記録部と、
前記記録部で記録した前記成形対象部と前記スクラップ部とを切り離す切離し部と、
前記素材に対して前記材料特性試験部及び前記切離し部を近接・離間させる駆動部と、
を備える金属加工システム。
【請求項9】
前記スクラップ部に所定形状の加工を施して前記試験体部を形成する試験体部形成部をさらに備え、
前記駆動部は、前記素材に対して前記試験体部形成部を近接・離間させる、
請求項8に記載の金属加工システム。
【請求項10】
前記試験体部形成部、前記材料特性試験部、前記切離し部のうち少なくともニつでは、前記駆動部による一回のサイクルの間で、それぞれに設置された各前記素材に対してそれぞれ試験または加工を実施する、
請求項9に記載の金属加工システム。
【請求項11】
前記試験体部形成部、前記材料特性試験部、前記切離し部の試験または加工を、前記駆動部による一回のサイクルの間で、それぞれに設置された各前記素材に対してそれぞれ実施する、
請求項9に記載の金属加工システム。
【請求項12】
前記材料特性試験部は、所定形状に形成された前記試験体部を押圧する押圧部と、前記試験体部の押圧による反力または変形量のうち少なくとも何れか一方を測定データとして測定する変形量測定部と、を有する、
請求項8~11のうち何れか一項に記載の金属加工システム。
【請求項13】
前記素材を前記材料特性試験部から前記切離し部に搬送する搬送部をさらに備える、
請求項8~11の何れか一項に記載の金属加工システム。
【請求項14】
前記駆動部は、前記素材に対して前記材料特性試験部を近接・離間させる第一の駆動部と、前記素材に対して前記切離し部を近接・離間させる第二の駆動部と、を有する、
請求項8に記載の金属加工システム。
【請求項15】
前記成形対象部に対してプレス成形を行うプレス成形部を備え、
前記プレス成形部が前記成形対象部に対してプレス成形を行うのと同じタイミングで、前記材料特性試験部が前記試験体部を押圧して材料特性試験を行う、
請求項8または9に記載の金属加工システム。
【請求項16】
前記スクラップ部に所定形状の加工を施して前記試験体部を形成する試験体部形成部を備え、前記試験体部形成部は、前記スクラップ部に前記試験体部を形成するレーザー加工装置を有することを特徴とする請求項8に記載の金属加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工方法および金属加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属加工を行うプレス加工装置は、板状の金属材料を加圧して製品に成形する金型を有する加圧部と、加圧部の状態を計測するセンサと、センサで計測された検査データを処理する処理部と、を備えている。たとえば、処理部は、計測された検査データからプレス加工装置の劣化の傾向を判断する(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイル材等の長尺の金属材料を用いて複数の製品を成形する場合、同一規格範囲内の材料であっても強度や伸び等の材料特性に差が生じることにより不良品が発生することがある。
しかしながら、不良品の発生原因が金型にあるのか、加圧の問題であるのか、あるいは材料そのものの特性にあるのかについて、究明することは困難である。
【0005】
本発明は、製品となる材料の材料特性を実質的に計測して不良品の発生原因を絞り込んで生産性を向上させることができる金属加工方法および金属加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属加工方法は、プレス成形されて製品となる成形対象部と、成形対象部と最終的に切り離されてスクラップとなるスクラップ部と、スクラップ部に設けられて材料特性試験の対象となる試験体部と、を一体に備える素材を準備する準備工程を備える。金属加工方法は、成形対象部とスクラップ部とが切り離されていない状態で、試験体部を押圧して材料特性試験を開始する材料特性試験工程を備える。そして金属加工方法は、材料特性試験工程の測定データを成形対象部と関連付けて記録する記録工程と、成形対象部とスクラップ部とを切り離す切離し工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製品となる材料の材料特性を実質的に計測して不良品の発生原因を絞り込んで生産性を向上させることができる金属加工方法および金属加工システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態における金属加工方法および金属加工システムで、基本的な工程を示す模式的な側面図である。
【
図2】金属加工システムに備わる主な工程を説明した模式的な側面図である。
【
図3】金属加工方法の各工程同士の関連を説明するブロック図である。
【
図4】金属加工方法の各工程を順序に沿って説明するフローチャートである。
【
図5】本発明の第二実施形態の金属加工方法および金属加工システムの工程を示し
図1に相当する模式的な側面図である。
【
図6】本発明の第三実施形態の金属加工方法および金属加工システムの工程を示し模式的な側面図である。
【
図7】本発明の第四実施形態の金属加工方法および金属加工システムの工程を示し、模式的な側面図である。
【
図8】本発明の第五実施形態の金属加工方法および金属加工システムの工程を示し、模式的な側面図である。
【
図9】本発明の第六実施形態の金属加工方法および金属加工システムの工程を示すブロック図である。
【
図10】第六実施形態の金属加工方法および金属加工システムの工程を示す模式的な側面図である。
【
図11】第七実施形態の金属加工方法および金属加工システムの工程を説明する模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の金属加工方法および金属加工システムについて、適宜図面を参照しながら説明する。なお、以下の各図面では、主に各部分間の配置関係を模式的に示している。このため、各部分が示す相対的な大きさは、実際と相違する場合がある。また、同一の構成要素には同一の符号を付し重複する説明を省略する。
【第一実施形態】
【0010】
第一実施形態の金属加工システム1は、
図1に示すように、金属製の原材料を保持するアンコイラー4と、第一のプレス加工機100と、第二のプレス加工機200と、搬送部104と、を主に備えている。
金属加工システム1のアンコイラー4は、回転自在な円筒状の筒体を有している。筒体には、原材料としての金属製のコイル材2が巻付けられている。アンコイラー4から引き出されたコイル材2は、展開されて平板状の素材3となる。
【0011】
搬送部104は、アンコイラー4および第一のプレス加工機100間に第一の搬送部104aを有している。第一の搬送部104aは、レベラーフィーダー等を有していて平板状に展開された素材3をプレス加工機100へ搬送する。プレス加工機100内には、後述する試験体部形成部105,材料特性試験部112,切離し部114が配置されている。
素材3は、プレス加工機100内で試験体部形成部105,材料特性試験部112,切離し部114へ第一の搬送部104aにより順次搬送されて中間製品11となる。
【0012】
また、搬送部104は、第一のプレス加工機100と第二のプレス加工機200間に第二の搬送部104bを有している。第二の搬送部104bは、コンベア等を有していてプレス加工機100から第二のプレス加工機200内へ中間製品11を搬送する。
プレス加工機200には、プレス成形部130が配置されている。プレス成形部130は、中間製品11を順次プレス加工して複数の製品10を製造する。ここで、プレス加工には、プレス成形およびブランキングのうち少なくとも何れか一方が含まれる。以下、プレス成形またはブランキングを単にプレス加工とも記す場合がある。さらに搬送部104は、第二のプレス加工機200内からプレス加工された製品10を搬出するように構成されていてもよい。
【0013】
[プレス加工機]
図2に示すように第一実施形態の第一のプレス加工機100は、平板状の素材3をプレス加工して中間製品11を製造する第一の金型111を備えている。また、プレス加工機100は、一または二以上の複数の金型等をプレス加工機100に着脱自在に装着する金型支持部107と、金型支持部107とともに第一の金型111等を上下方向に開閉駆動する第一の駆動部110と、を主に備えている。
第一の金型111は、上型111aおよび下型111bを有して構成される。上型111aおよび下型111bは、金型支持部107を構成する各上スライド107aおよびボルスター107bにそれぞれ支持されている。なお、
図2では、各部分の相対的な配置関係が模式的に示されている。このため、金型支持部107、第一の駆動部110第一の金型111の上型111aおよび下型111bに対する上スライド107aおよびボルスター107bの大きさの比率は実際と異なる。例えば、上スライド107aおよびボルスター107bは、第一の金型111と比較してさらに大きい。
【0014】
また、
図1に示す第二のプレス加工機200は、主に第二の金型121と、第二の金型121を上下方向に開閉駆動する第二の駆動部210とを主に備えている。このうち第二の金型121は、中間製品11の成形対象部9に対してプレス成形を行うプレス成形部130を含んでいる。プレス成形部130は、なお、プレス加工機200は、第一のプレス加工機100と同様に金型121を着脱自在に装着するスライドを備えてもよい。そして、プレス加工機200は、駆動部210により第二の金型121を開閉駆動して中間製品11を所望の形状の製品10として製造する。
【0015】
[駆動部]
駆動部110,210は、例えば上型111aを下降させて下型111bに近接させることにより閉動作を行なう。また、駆動部110は、上型111aを上昇させて下型111bから離間させる開動作を行う。これにより、金型111は、介装された素材3に対して上下方向で上型111a,下型111bの対向面を近接・離間させてプレス加工を行う。プレス加工では、閉動作に伴い素材3を上下方向から押圧してプレス成形としての曲げ成形加工(フォーム加工)、絞り加工(ドロー加工)が行なわれる。また、プレス加工として、打ち抜き加工(以下、ブランキングまたはブランキング加工ともいう)、せん断加工等が行なわれる。駆動部110,210の駆動方式としては、機械式、油圧式、サーボ式の3方式の何れでもよい。
なお、これに限らず、駆動部110,210が上型111a,下型111bをそれぞれ駆動して対向面を近接・離間させることによりプレス加工を行ってもよい。
【0016】
[記録部]
また、
図1に示すようにプレス加工機100は、記録部120と、計測ユニット140と、を備えている。計測ユニット140は、上型・下型間の距離を計測することで金型111の開閉動作を検出する。そして、記録部120は、材料特性試験部112の測定データを成形対象部9と関連付けて記録する。具体的には、駆動部110の開閉動作に伴い、計測ユニット140にて測定された試験体部16の変形量の測定データと、切り離される前に近接して配置されている成形対象部9と、が記録部120により関連付けて記録する。
なお、
図1に示すように第二のプレス加工機200等に材料特性試験部112および記録部220を設けてもよい。同様に後述する第三実施形態等の第二のプレス加工機300(
図6等参照)等に記録部220を設けることにより測定データを関連付けて記録することができる。例えば、生産された製品10または中間製品となる成形対象部9(
図2参照)を順番に積層して、生産順に保存された計測データと一対一で照合させることができる。
【0017】
第一実施形態の金属加工システム1のプレス加工機100,200は、それぞれの金型111,121を開閉駆動してプレス加工を行う際に後述する各工程を実施する。
プレス加工機100は、材料特性試験の準備工程S1を行う試験体部形成部105と、材料特性試験工程S2を行う材料特性試験部112と、切離し工程S4を行う切離し部114と、を備えている。
そして、第一の搬送部104aによって搬送された素材3はアンコイラー4側から順次配置された試験体部形成部105、材料特性試験部112、切離し部114間に順次介挿される。
【0018】
第一実施形態の駆動部110は、プレス加工機100の一回のサイクルの間に金型111を一回または複数回、開閉駆動する。そして、プレス加工機100は、一回の開閉駆動によって、素材3の複数の部位(第一実施形態では3つの部位)に対して、試験体部形成部105による試験体部16の形成と、材料特性試験部112による試験体部16の特性試験と、切離し部114による切離し加工と、を同時に行うことができる。
ここで「一回のサイクル」とは、次のものが含まれる。すなわち駆動部110のサーボモータ等駆動源による開閉駆動で加工の為に金型111が複数回開閉駆動される場合が含まれる。またプレスモーションのタイミングがずれている、例えば個別にまたは同時に一旦停止するような動きが行われることが含まれる。このように「一回のサイクル」には、素材3がたとえば準備工程S1から材料特性試験工程S2に移動するまでなど、各工程に搬入されてから次の工程に移動するまでの間に行われる一連の動作を示すものである。
【0019】
[試験体部形成部]
第一実施形態の第一のプレス加工機100は、金型111内の試験体部形成部105で準備工程S1を行なう。準備工程S1には、素材3から材料特性試験に適した形状の試験体部16を形成する試験体部形成工程が含まれている。
図2に示すように、試験体部形成工程では、プレス加工機100が駆動部110を駆動して金型111を閉駆動する。これにより、素材3には、製品10または中間製品11となる所定の形状の成形対象部9と、成形対象部9にならないスクラップ部12とが加工される。
【0020】
図2に示すように準備工程S1の試験体部形成工程では、製品10として成形される前の成形対象部9に連続するスクラップ部12に試験体部16が形成されている。試験体部16は、例えばスクラップ部12の長手方向略中央で成形対象部9と近接する位置に形成される。
第一実施形態の試験体部16は、長板状の試験片16aと、試験体部16を固定するダイ接触部16cと、試験片16aが開口内に配置される試験孔16dと、を有している。このうち、試験片16aの長手方向両端部は、試験孔16dの周縁のうち対向する各側縁に接続している。そして、試験片16aは、後記するパンチ部115の下端115aによって押圧されると、撓んで延びるように構成されている。なお、試験体部16の試験片16aは、一定の幅でなくてもよく、例えば、十字形状あるいは菱形状等、どのような形状であってもよい。この場合、試験片16aは、試験孔16dの何れかの側縁に少なくとも一つの端部が接続される。
また、第一実施形態の試験孔16dは、平面視略方形の孔である。しかしながら試験孔16dの形状は、例えば丸穴形状や楕円、長円形状あるいは多角形形状等、どのような形状であってもよい。すなわち、試験片16aおよび試験孔16dは、どのような形状、個数および配置位置であってもよい。
【0021】
[材料特性試験部]
第一実施形態の材料特性試験部112は、
図2に示すように第一のプレス加工機100で、試験体部形成部105よりも素材3の進行方向下流側へ隣接して他の金型等と同様に配置されている。
そして、成形対象部9とスクラップ部12とが切り離されていない状態で素材3が試験体部形成部105から材料特性試験部112内に搬送される。スクラップ部12は、材料特性試験部112の所定の位置に位置決めされる。
【0022】
材料特性試験部112は、所定形状に形成された試験体部16を押圧する押圧部としてのパンチ部115と、パンチ部115に対向配置されるダイ部113と、を有する。また、材料特性試験部112は、試験体部16の押圧による反力または変形量のうち少なくとも何れか一方を測定する計測ユニット140を有する。
このうち、パンチ部115は、軸方向を上下に沿わせて上型111aの開閉駆動とともに上下方向へ移動可能である。そして、パンチ部115の下端115aは、所定の位置に位置決めされた試験体部16の試験片16aに接触するように構成されている。また、パンチ部115またはダイ部113の形状は、特に実施形態で図示された形状に限らない。すなわち、試験片16aに少なくとも一部が接触して押圧するものであれば他の形状を用いてもよく、パンチ部115またはダイ部113の形状、数量および配置位置はどのように構成されていてもよい。
【0023】
計測ユニット140は試験片16aの変形量を計測する変位センサ142を備えている。このとき、変位センサ142は試験片16aとパンチ部115の位置関係を間接的に計測するように設けられてもよい。すなわち、上型111aおよび下型111b間の距離、上スライド107aおよびボルスター107b間の距離等、試験片16aとパンチ部115の位置関係を間接的に計算出来る位置であれば、どの二点間の距離を計測してもよい。
また、計測ユニット140は、荷重センサ116を備えている。荷重センサ116は、パンチ部115の下端115aが試験片16aに当接する際に生じる押圧力を測定する。
変位センサ142及び荷重センサ116により測定された変形量と押圧力は、測定データとして電気的に接続される収集装置143に送られて記録部120により記憶される。
計測ユニット140は変形量と押圧力の少なくとも何れか一方を計測すればよく、例えば変形量についてはプレス機のストローク量より計算する等の手法を用いてもよい。
【0024】
一方、パンチ部115の下方であって下型111bには、一対のダイ部113,113が一定の間隔を置いて平行に設けられている。
一対のダイ部113,113は、試験孔16dの内周縁に形成された一対のダイ接触部16c,16cをそれぞれ下側から支持している。そして、材料特性試験部112では、パンチ部115を下降させると試験片16aの上面に下端115aを当接させて試験片16aを下方へ撓ませながら押し下げる(
図2参照)。
この際、一対のダイ部113,113の間には、空間150が形成されている。このため、試験体部16は、周囲の部材に干渉することなく空間150内に沈み込む変形が許容される。計測ユニット140は、試験片16aの変形量と荷重センサ116の計測値を測定する。
【0025】
[切離し部]
図1に示すように、切離し部114は、記録部120で測定データを成形対象部9に関連付けて記録した後、成形対象部9とスクラップ部12とを切り離す切離し工程を行う。
第一実施形態では、成形対象部9とスクラップ部12とが分離される。記録部120では、予め試験体部16の測定データが対応する成形対象部9と関連付けて記録されている。切り離された成形対象部9は、管理された状態で次の工程に搬送される。一方、スクラップ部12は、不図示のシュートに落下して廃棄される。
このため、本実施形態の金属加工システムは、容易に成形対象部9で成形された製品10を測定データと対応させて、材料特性の良否を判別できる。
【0026】
次に、本実施形態の金属加工方法および金属加工システムの各工程について
図3を参照しつつ、
図4のフローチャートに沿って説明する。
[準備工程]
まず、
図4中、ステップS1では、準備工程が開始されると試験体部形成部105を設けた第一のプレス加工機100(
図1,2参照)が用いられて準備工程で試験体部が形成される。
準備工程では、スクラップ部12には、試験体部形成部105によって、材料特性試験の対象となる試験体部16が加工される。
この際、素材3は、プレス加工機100内を連続して搬送されながら、複数並べられて異なる加工を行なう試験体加工領域により順次、試験体部16を加工するようにしてもよい。
このように、プレス加工機100における一回のサイクルの間に成形対象部9およびスクラップ部12の試験体部16が加工される。
【0027】
そして、試験体部16を含むスクラップ部12と成形対象部9とは、切り離されることなく一体のまま、搬送部104aによって材料特性試験部112に搬送される。
[材料特性試験工程]
ステップS2では、第一のプレス加工機100に設けられている材料特性試験部112により材料特性試験工程が行われる。第一実施形態の材料特性試験部112は、搬送されたスクラップ部12の試験体部16を用いて材料特性の測定試験を行う。
材料特性試験工程では、一対のダイ部113,113に試験体部16のそれぞれダイ接触部16c,16cが係止されて、パンチ部115の下端115aと対向する位置に試験片16aが配置される(
図2参照)。
【0028】
図2に示すようにパンチ部115の下降により下端115aが試験片16aに当接して押圧すると、荷重センサ116により押圧力が測定される。この際、試験体部16は、成形対象部9と隣接配置されて切り離されていない状態のスクラップ部12の一部に形成されている。このため、金属加工システムは製品10となる成形対象部9と実質的に同等の材料特性を有する試験体部16の材料特性試験を行う。これにより、金属加工システムは、成形対象部9と同等の材料特性をスクラップ部12から測定することができる。
【0029】
さらに
図2に示す第一実施形態の金属加工システム1は、材料特性試験部112にて材料特性試験工程が実施される。材料特性試験部112は、プレス加工機100の金型内に設けられている。このため、プレス加工機100による金型の型締め動作を用いて試験体部16の材料特性を測定できる。
したがって、試験体部16をプレス加工機100から取り出す必要がない。また、別の材料特性試験装置が不要となり製造コストを抑制できる。
【0030】
[記録工程]
ステップS3では、記録部120により記録工程が行なわれる。記録工程では、プレス加工機100の材料特性試験工程S2で測定された測定データを対応する成形対象部9と関連付けて記録部120が記録する。
また、第一実施形態では、
図2に示す駆動部110の開閉駆動量に応じて試験片16aは、撓み変形しながら押圧方向へ移動する。そして、変形量と押圧力の両方をパンチ接触直前より試験体部16が破断に至るまで連続的に計測し、計測されたデータ全体から複数の材料特性値を算出して記録部120が記録する。これにより、変形量と押圧力の関係が求められて素材3の材料特性を得ることができる。
【0031】
[切離し工程]
ステップS4では、切離し部114を用いて切離し工程が行なわれる。切離し部114は、駆動部110により素材3に対して近接・離間するように金型111を開閉駆動される。
第一実施形態のプレス加工機100は、駆動部110の駆動により金型111が閉じられると、記録部120で測定データがすでに記録された中間製品11とスクラップ部12とが切離し部114により切り離される。中間製品11には、成形対象部9が含まれている。
この際、素材3は、プレス加工機100内を連続して搬送されながら、複数並べられて異なる切離し加工を行なう複数の切離し加工領域によって順次切離し加工される。なお、切離し加工領域は、試験体加工領域と重複して一つの加工領域内に設けられていてもよい。
このように
図1に示す第一実施形態の金属加工システム1では、第一のプレス加工機100の駆動部110が金型111を開閉駆動する一回のサイクル間に準備工程、材料特性試験工程、切離し工程を行なうことができる。
【0032】
[成形工程]
ステップS5では、第二のプレス加工機200を用いて中間製品11を製品10として加工する成形工程が行われる。
図1に示す第一実施形態のプレス加工機200は、金型121に設けられたプレス成形部130を駆動部210により近接・離間方向へ開閉駆動する。金型121間に搬送された成形対象部9は、プレス成形されて製品10として完成する。なお、材料特性試験工程S2あるいは切離し工程S4において、成形対象部9にプレス加工を行うようにしてもよい。
【0033】
このように第一実施形態の金属加工システムおよび金属加工方法は、製品10となる材料の材料特性を実質的に計測して不良品の発生原因を絞り込んで、究明に必要となる時間を短縮し、不良の発生を減少させることにより全体として生産性を向上させることができる。
詳しくは、
図1に示す試験体部16は、製品10となる成形対象部9と一体に形成されて切り離されていない状態のスクラップ部12に設けられている。さらに第一実施形態では、
図2に示すようにスクラップ部12の試験体部16は、成形対象部9に近接して形成されている。
このため、金属加工システム1は、試験体部16を計測することにより、製品10となる成形対象部9の材料特性に近い材料特性を得られる。計測された測定データは、成形対象部9と関連付けられて記録部120に記録される。
【0034】
たとえばコイル材2等の長尺の金属材料を用いて複数の製品10を成形する場合、同一規格範囲内の材料であっても強度や伸び等の材料特性に差が生じることにより不良品が発生することがある。
このような場合でも第一実施形態の金属加工システムおよび金属加工方法は、測定された測定データが製品10ごとに対応して記録部120に記録されている。このため、第一実施形態の金属加工システムでは、まず材料による不具合であるか否かについて不良品の発生の原因を一つ排除できる。
そして、容易に不良品の発生原因が金型121にあるのか、プレス加工機200の加圧の問題であるのかに絞り込んで究明することが可能となり生産性を向上させることができる。
【0035】
金属加工システム1は、一回のサイクル間の金型111の開閉駆動で、準備工程による素材3の準備、材料特性試験工程による材料特性試験、切離し工程による成形対象部9からのスクラップ部12の切り離しを行える。このため、金属加工システム1は、生産性を低下させることなく材料特性試験を実施できる。
【0036】
そして、金属加工システム1では、二台目のプレス加工機200を用いて中間製品11の成形対象部9のみをプレス成形出来る。このため、スクラップ部12を同時加圧することにより生じる応力等の影響がない。
しかも、成形対象部9に対して材料特性の押圧試験が直接行なわれないため、製品に計測の痕跡が残らない。したがって金属加工システム1は、製品10の外観品質を損なわずに材料特性を計測できる。
【0037】
また、別途、開閉する金型以外に他の計測装置を設ける必要がない。よって、製造ラインが簡略なものとなり製造コストの増大を抑制できる。
通常、材料の特性を評価する方法としては、中間製品11の抜き取りを行い製造ライン外の加工機にて試験片形状に加工し、さらに万能材料試験機にて引張試験を実施する方法などがある。このように、現状の加工工程では別途試験を行うために材料特性を知りたければ、材料を切り取って別のところで試験しなければならない。
実施形態の金属加工システムでは、従来の金型や工程の空きスペースを利用してスクラップ部12に試験片16aを設けることにより、加工工程中に材料試験を行うことが出来る。このように実施形態では、特別に試験を行わなくてもすぐに材料特性を知ることができ、不良品の発生時などに直ちに材料特性を検証して発生原因を絞り込むことができる。
【0038】
そして、試験体部形成工程、材料特性試験工程、切離し工程のうち少なくとも何れか二工程は、それぞれの工程に設置された各素材3に対して、プレス加工機100における一回のサイクルの間で実施される。第一実施形態では、準備工程に含まれる試験体部形成工程、材料特性試験工程、切離し工程の三工程を一台のプレス加工機100における一回のサイクルの間に実施している。
したがって工程が増加してもプレス加工機100の台数を増大させることなく抑制できる。
【0039】
さらに材料特性試験工程では、プレス成形を行うプレス成形工程の型締め動作を用いて試験体部16の材料特性を測定できる。
よって、別途、試験体部16を押圧等する装置等の他の計測機器が不要となり装置の台数を減少させてコストを抑制できる。
【0040】
また、搬送部104の第一の搬送部104aは、素材3を材料特性試験部112から切離し部114に搬送する。
図1に示す第一実施形態の金属加工システム1では、第一の搬送部104aがアンコイラー4から引き出された素材3をプレス加工機100の試験体部形成部105、材料特性試験部112及び切離し部114に順次搬送する。
また、第二の搬送部104bは、第一のプレス加工機100でスクラップ部12が分離された複数の中間製品11を第二のプレス加工機200まで搬送する。中間製品11は、第二のプレス加工機200の駆動部210による開閉駆動によって第二の金型121間でそれぞれプレス成形されて複数の製品10として製造される。
金属加工システム1の記録部120,220には、それぞれの製品10に対応する材料特性が測定データとして記憶されている。このため、発生した不良品の測定データを他の製品10の測定データと取り違えることなく、搬送部104は、複数の製品10を順次搬出できる。
【第二実施形態】
【0041】
図5は、第二実施形態の金属加工方法および金属加工システムを示している。なお、第一実施形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して相違する部分を中心に説明する。
なお、第二実施形態の第一のプレス加工機100および第二のプレス加工機300は、それぞれ
図1に示す第一の駆動部110および第二の駆動部210と同様の駆動部(図示せず)を有している。また、説明の簡略化のため図示省略するが後述する第三~七実施形態についても同様である。さらに各第三~七実施形態の第二のプレス加工機300には、
図1に示す駆動部210とともに適宜第一実施形態の記録部220および変形量測定部240に相当するものが材料特性試験部112に設けられている。
【0042】
第二実施形態は、成形対象部19とスクラップ部10aとが連結したまま第二のプレス加工機300に搬送される。そして、第二のプレス加工機300で成形対象部19をプレス加工する際にスクラップ部10aが切り離される点を第一実施形態と相違させている。
図5に示すように、第一のプレス加工機100では、素材3に対して材料特性試験部112を近接・離間させる。試験体部形成部105による試験体部16の形成および材料特性試験部112で材料特性試験工程を終えた成形対象部19は、試験体部16を有したまま、第二のプレス加工機300に搬送される。なお、この際、試験体部16が形成されていない一部のスクラップ部13については切断により切り離されてもよい。
第二実施形態の第二のプレス加工機300は、切り離し工程を行う切離し部114および成形工程を行うプレス成形部130を有している。第二のプレス加工機300は、切離し部114およびプレス成形部130を複数の金型321を用いて構成している。そして第二のプレス加工機300は、成形対象部19に対して切離し部114を近接・離間させる。
【0043】
このうち、プレス成形部130は、成形対象部19から製品10をプレス成形する。また、第二のプレス加工機300の切離し部114で製品10から試験体部16が形成されている残りのスクラップ部10aが製品10から分離される。このため、製品10には試験体部16が残らない。
【0044】
第二実施形態の金属加工方法および金属加工システムでは、第一のプレス加工機100にて試験体部形成部105により素材3に試験体部16が形成されて、材料特性試験部112により材料特性試験工程が行われる。
また、第二のプレス加工機300は、プレス成形工程および切離し工程の二工程を一回のサイクルの間に実施する。
このため、材料特性試験工程と切離し工程とが第一,第二のプレス加工機100,300の各駆動部をそれぞれ駆動させて個別にそれぞれの工程を実施することにより生産効率を低下させることがない。
このように第二実施形態では、第一実施形態と同様に、プレス加工機100,300の台数が増大しないように抑制できる。
他の構成および作用効果については第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【第三実施形態】
【0045】
図6に示す第三実施形態の金属加工システムは、材料特性試験部112を第二のプレス加工機300に設けている。そして、第二のプレス加工機300が材料特性試験部112、プレス成形部130および切離し部114を一回のサイクル間の開閉駆動で、同時に実施できるように構成されている。なお、第一および第二実施形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して相違する部分を中心に説明する。
【0046】
第三実施形態では、
図6に示すように成形対象部19に対してプレス成形を行うプレス成形部130を備えた第二のプレス加工機300に材料特性試験部112が設けられている。このため、プレス成形部130が成形対象部19に対してプレス成形を行うのと同じタイミングで試験体部16を押圧して材料特性試験を行うことが出来る。
これにより、製品10が金型で成形される際、同時に製品10を構成する素材3と同等の材料特性を計測することができる。
【0047】
第三実施形態の材料特性試験工程は、プレス成形を行うプレス成形工程の型締め動作を用いて試験体部16の材料特性を測定できる。したがって、別途、試験体部を押圧等する装置が不要となり装置の台数を減少させてコストを抑制できる。
他の構成および作用効果については第一および第二実施形態と同様であるため説明を省略する。
【第四実施形態】
【0048】
図7は、第四実施形態の金属加工システムを示すものである。なお、第一実施形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して相違する部分を中心に説明する。
第四実施形態では、第一のプレス加工機100に準備工程のうち、成形対象部形成工程を実施する成形対象部形成部103を配置する。また、第四実施形態は、第二のプレス加工機300に準備工程のうち、試験体部形成工程を実施する試験体部形成部105を配置する。
これにより同一の第二のプレス加工機300では、一回の開閉駆動で中間製品11に対して試験体部形成工程および材料特性試験工程を同時に実施することができる。
他の構成および作用効果については第三実施形態とほぼ同様であるため説明を省略する。
【第五実施形態】
【0049】
図8は、第五実施形態の金属加工システムを示すものである。なお、第一実施形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して相違する部分を中心に説明する。第五実施形態では、第一のプレス加工機100に、試験体部形成部105、材料特性試験部112および切離し部114が備えられている。第一実施形態とは、第一のプレス加工機100に一体となって動作する複数の金型または、各工程を実行する部分が独立して装脱着可能となることにより相違する。
このように構成された第五実施形態では、第一のプレス加工機100が製品10となる成形対象部29を形成する各工程を一回のサイクルの間に実施する。各金型または、各工程を実行する部分は、個別に装脱着可能で、メンテナンス性が良好である。
他の構成および作用効果については第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【第六実施形態】
【0050】
図9および
図10に示す第六実施形態の金属加工システムは、準備工程を実施する試験体部形成部105にレーザー加工装置500が備えられている。
第六実施形態では、レーザー加工装置500によりスクラップ部10aとなる成形対象部19の一部分に試験体部16を形成することができる。
このため、一台のプレス加工機300に試験体部16の測定を実施する材料特性試験部112、プレス成形部および切離し部114を設けた複数の金型321を配置することが出来る。したがって、材料特性試験工程、プレス加工工程、および切離し工程が一台のプレス加工機300により一回の開閉駆動で同時に実施でき、製造設備の増大を抑制することが出来る。
他の構成および作用効果については第一~五実施形態と同様であるため説明を省略する。
【第七実施形態】
【0051】
図11は、第七実施形態の金属加工システムを示すものである。なお、第一~六実施形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して相違する部分を中心に説明する。
第七実施形態の金属加工システムでは、レーザー加工装置500は、準備工程の一部として、成形対象部形成部103にて素材3から成形対象部29を切り出す。
また、第二のプレス加工機300には、第六実施形態にプレス加工機300に加えてさらに試験体部形成部105が設けられている。試験体部形成部105では、スクラップ部10aとなる部分に試験体部16を形成することができる。
【0052】
このように構成された第七実施形態では、第二のプレス加工機300に備えられた試験体部形成部105によりスクラップ部10aとなる部分に試験体部16が形成される。
このため、試験体部形成工程、材料特性試験工程、プレス加工工程、および切離し工程が一台のプレス加工機300により一回の開閉駆動で同時に実施できる。
他の構成および作用効果については第一~六実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0053】
上述してきたように、実施形態の金属加工方法および金属加工システムでは、プレス成形されて製品10となる成形対象部9と、成形対象部9と最終的に切り離されてスクラップとなるスクラップ部12と、スクラップ部12に設けられて材料特性試験の対象となる試験体部16と、を一体に備える素材3を準備する準備工程S1を備える。金属加工方法は、成形対象部9とスクラップ部12とが切り離されていない状態で、試験体部16を押圧して材料特性試験を開始する材料特性試験工程S2とを備える。そして金属加工方法は、材料特性試験工程S2の測定データを成形対象部9と関連付けて記録する記録工程S3と、成形対象部9とスクラップ部12とを切り離す切離し工程S4と、を備える。
このように構成された実施形態の金属加工方法および金属加工システムは、材料特性試験工程S2で測定された試験体部16の測定データと、切離される前に近接して配置されている成形対象部9とを関連付けて記録する。
このため、製品10となる材料の材料特性を実質的に計測して不良品の発生原因を絞り込んで生産性を向上させることができる。
【0054】
また、準備工程は、スクラップ部12に所定形状の加工を施して試験体部16を形成する試験体部形成工程を含む。
図1に示すように準備工程では、試験体部形成工程を行う試験体部形成部105にて、素材3のスクラップ部に試験体部16が成形される。第一のプレス加工機100によって駆動部110が金型111を一回閉じる一回のサイクルの間に試験体部形成部105は素材3に対して近接・離間して試験体部16を加工する。このため、加工工数や素材の移動距離が増加せず、生産性を低下させることがない。
【0055】
試験体部形成工程、材料特性試験工程、切離し工程のうち少なくとも何れか二工程は、それぞれの工程に設置された各素材3に対して、プレス加工機100における一回のサイクルの間で実施される。
したがってプレス加工機100の台数が増大しないように抑制できる。
【0056】
また、
図1に示す第一のプレス加工機100は、第一の金型111間の一回の開閉駆動で試験体部形成部105、材料特性試験部112、切離し部114の三か所で同時にプレス加工および測定試験を行うことができる。
このため、さらにプレス加工機100の台数が増大しないように抑制できる。
【0057】
また、
図6に示すように金属加工システム1は、成形対象部19に対してプレス成形を行うプレス成形工程を備える。材料特性試験工程は、プレス加工機における一回のサイクルの間にプレス成形工程と同時に行われる。
したがってプレス加工機の台数が増大しないように抑制できる。
【0058】
さらに
図2に示す材料特性試験部112は、プレス加工を行うプレス成形工程あるいは試験体部16を形成する試験体部形成工程などの型締め動作を実施することにより同時に試験体部16の材料特性を測定できる。したがって、別途、試験体部を押圧する装置等が不要となり装置の台数を減少させてコストを抑制できる。
【0059】
また、
図9~11に示すように、準備工程でスクラップ部10aに所定形状の試験体部16を形成するレーザー加工装置500を用いて、試験体部形成工程では、スクラップ部10aに試験体部16を形成することができる。
このため、容易に精度の高い試験体部16を形成することができる。
【0060】
また、たとえば、成形対象部の外形形状に沿う切込み線を形成するレーザー加工装置500と同じレーザー加工装置500を用いて試験体部16を加工することができる。このため、試験体部16を加工する専用のレーザー加工装置500を設ける必要がない。
【0061】
さらに第一実施形態の金属加工システム1は、素材3を材料特性試験部112から切離し部114に搬送する搬送部104を備える。
図1に示す第一実施形態の金属加工システム1では、第一の搬送部104aがアンコイラー4から引き出された素材3をプレス加工機100の試験体部形成部105、材料特性試験部112及び切離し部114に順次搬送する。
これにより、第一のプレス加工機100は、第一の金型111間の一回のプレス成形で同時に試験体部形成部105、材料特性試験部112、切離し部114の三か所で同時に加工および測定試験を行うことができる。
【0062】
また、
図1に示す金属加工システム1は、第二の搬送部104bをさらに備える。第二の搬送部104bは、第一のプレス加工機100でスクラップ部12が分離された複数の中間製品11を第二のプレス加工機200まで搬送する。中間製品11は、第二のプレス加工機200の駆動部210による開閉駆動によって第二の金型121間でそれぞれプレス成形されて複数の製品10として加工される。このように、作業性を低下させずに生産を行うことができる。
【0063】
そして、
図5に示すように駆動部は、素材3に対して材料特性試験部112を近接・離間させる第一のプレス加工機100と、素材3に対して切離し部114を近接・離間させる第二のプレス加工機300とを備える。第一のプレス加工機100および第二のプレス加工機300は第一の駆動部110と第二の駆動部210(
図1参照)とを有する。
このため、材料特性試験と切り離しとを別の駆動部110,120で実施することができる。
【0064】
さらに、
図6に示すように金属加工システムは、成形対象部19に対してプレス成形を行うプレス成形部130を備える。そして、プレス成形部130が成形対象部19に対してプレス成形を行うのと同じタイミングで材料特性試験部112が試験体部16を押圧して材料特性試験を行う。
これにより、プレス加工機300では、金型が製品10を成形する際、一回の開閉駆動で同時に製品10を構成する素材3と同等の材料特性を計測することができる。
【0065】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば以下のようなものである。
【0066】
第一実施形態では、
図1に示すように切離し工程S4を行う切離し部114は、第一のプレス加工機100に備えられている。また、第二実施形態では、
図5に示すように、第二のプレス加工機300に切り離し工程を行う切離し部114が設けられている。
しかしながら、特にこれに限らず、第一のプレス加工機100および第二のプレス加工機300以外に他のプレス加工機またはレーザー加工機等を設けて、これらの他のプレス加工機またはレーザー加工機にて切離し部を構成してもよい。
例えば、第一のプレス加工機100および第二のプレス加工機300の間に他のプレス加工機等を設け、第一のプレス加工機100から第二のプレス加工機300に搬送される際に他のプレス加工機等の切離し部にてスクラップ部10aを切り離すようにしてもよい。
また、例えば、第二のプレス加工機300の後工程に他のプレス加工機等を設け、第二のプレス加工機300から搬出される際に他のプレス加工機等の切離し部にてスクラップ部10aを切り離すようにしてもよい。
【0067】
なお、第一のプレス加工機100と同様に第二のプレス加工機200に記録部220を設けてもよい(
図1参照)。そして、金属加工システム1は、第一のプレス加工機100の記録部120と、この記録部220との間を連携させる。これにより記録部220は、駆動部210および変形量測定部240から開閉駆動に伴う製品10の測定データを記録することができる。そして、記録部120に記憶された試験体部16の測定データは、直接、各製品10に結び付けられる。
このため、中間製品11に測定データを関連付けた場合に加えて、さらに製造の際に検知された不良品の発生原因を容易に絞り込むことができる。
【0068】
さらに、第一実施形態では、
図1に示すように第二のプレス加工機200にプレス成形部130が設けられているが特にこれに限らない。たとえば、第一のプレス加工機100にプレス成形部130を設けてもよい。この場合、本願発明の金属加工システムは、一つのプレス加工機100にて構築でき、製造コストの増大を抑制できる。
【0069】
また、各試験体部形成部105、材料特性試験部112、切離し部114またはプレス成形部130やこれらの各工程を実施する部分がいずれかのプレス加工機等に複数設けられていてもよい。よって、プレス加工機や金型および各工程の台数、数量、形状および組み合わせが各第一~七実施形態の金属加工システムにより限定されるものではない。すなわち、材料特性試験工程の測定データを成形対象部9と関連付けて記録する記録工程を有していればどのような組み合わせのプレス加工システムであってもよい。
【0070】
そして、実施形態の第一の搬送部104aにレベラーフィーダー等を、また第二の搬送部104bにコンベア等を有しているものを示して説明してきたが特にこれに限らない。すなわち、搬送装置は、材料特性試験部から切離し部やあるいはいすれかの工程の前,後など、金属加工システムの何れかの箇所にて素材3等を搬送するものであればどのようなものでもよい。例えば、フォークリフト、各種フィーダーあるいは、一つのプレス加工機に支持された複数の金型や工程間を搬送するフィンガー等、どのような搬送装置を適用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
3 素材
9 成形対象部
10 製品
11 中間製品
12 スクラップ部
16 試験体部
S1 準備工程
S2 材料特性試験工程
S3 記録工程
S4 切離し工程