(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144790
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】バスバーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/58 20060101AFI20241004BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01R4/58 C
H01R11/01 Q
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056901
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】萩本 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】木村 賢治
(57)【要約】
【課題】第1通電対象と第2通電対象とを電気的に接続するバスバーを、端子台なしで冷却部に伝熱可能に接続する。
【解決手段】バスバーは、第1通電対象と第2通電対象とを電気的に接続する。バスバーは、第1部と第2部と第3部とを備える。第1部は、第1通電対象に電気的に接続される。第2部は、第1部から突出しており、第2通電対象に電気的に接続される。第3部は、第2部とは別に第1部から突出しており、第1部が第1通電対象に電気的に接続され且つ第2部が第2通電対象に電気的に接続された状態において、冷却部に当接する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通電対象と第2通電対象とを電気的に接続するバスバーであって、
前記第1通電対象に電気的に接続される第1部と、
前記第1部から突出しており、前記第2通電対象に電気的に接続される第2部と、
前記第2部とは別に前記第1部から突出しており、前記第1部が前記第1通電対象に電気的に接続され且つ前記第2部が前記第2通電対象に電気的に接続された状態において、冷却部に当接する第3部と、
を備えるバスバー。
【請求項2】
前記冷却部は、導電体の冷却部本体と、前記冷却部本体と前記第3部との間に介装される絶縁体の伝熱シートとを含む、請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記第1部は、前記第1通電対象に電気的に接続される部分から、所定のY方向の一方としてのY+方向に延出してから、前記Y方向に直交するZ方向の一方としてのZ-方向に延出する形状をしており、
前記第2部および前記第3部は、前記第1部における前記Z-方向に延出する部分の先端から突出しており、
前記第2部は、少なくとも前記Y+方向に延出して、前記第2通電対象に電気的に接続される部分に至る形状をしており、
前記第3部は、少なくとも前記先端から引き続き前記Z-方向に延出してから、前記冷却部に当接する部分に至る形状をしている、
請求項1又は2に記載のバスバー。
【請求項4】
前記バスバーは、1枚の金属板が折り曲げ加工されることによって形成されている、請求項1又は2に記載のバスバー。
【請求項5】
第1通電対象と第2通電対象とを電気的に接続するバスバーの製造方法であって、
前記バスバーの材料となる金属板であって、第1領域と、前記第1領域から突出する第2領域と、前記第2領域とは別に前記第1領域から突出する第3領域とを備える金属板を加工する工程と、
前記第1領域を折り曲げ加工することによって、前記第1通電対象に電気的に接続される第1部を形成する工程と、
前記第2領域を折り曲げ加工することによって、前記第2通電対象に電気的に接続される第2部を形成する工程と、
前記第3領域を折り曲げ加工することによって、前記第1部が前記第1通電対象に電気的に接続され且つ前記第2部が前記第2通電対象に電気的に接続された状態において、冷却部に当接する第3部を形成する工程と、
を含むバスバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電対象どうしを電気的に接続するバスバーに関する。
【背景技術】
【0002】
バスバーは、通常、所定の第1通電対象とそれとは別の第2通電対象とを電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、このようなバスバーにおいて、バスバーの一部を、冷却用の端子台を介して冷却部に伝熱可能に接続して、バスバーを冷却することを考えた。しかしながら、この場合、以下に示す問題がある点に本発明者らは着目した。
【0005】
すなわち、バスバーとは別に冷却用の端子台が必要になるため、当該端子台の設置スペースが必要になり、バスバーを含む装置全体の大型化を招いてしまう。さらに、部品点数が多くなることから、バスバーおよびその周辺部材の取付作業の煩雑化、コスト増加などに繋がる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、第1通電対象と第2通電対象とを電気的に接続するバスバーを、端子台なしで冷却部に伝熱可能に接続することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、バスバーが第1通電対象と第2通電対象とを電気的に接続している状態において、バスバー自体が、冷却部に当接するようにすれば、上記目的を達成できることを見出して、本発明に至った。本発明は、以下の(1)~(4)のバスバーおよび以下の(5)のバスバーの製造方法である。
【0008】
(1)第1通電対象と第2通電対象とを電気的に接続するバスバーであって、
前記第1通電対象に電気的に接続される第1部と、
前記第1部から突出しており、前記第2通電対象に電気的に接続される第2部と、
前記第2部とは別に前記第1部から突出しており、前記第1部が前記第1通電対象に電気的に接続され且つ前記第2部が前記第2通電対象に電気的に接続された状態において、冷却部に当接する第3部と、
を備えるバスバー。
【0009】
本実施形態によれば、第1部が第1通電対象に電気的に接続され且つ第2部が第2通電対象に電気的に接続された状態において、第2部とは別に第1部から突出する第3部が冷却部に当接する。そのため、第1通電対象と第2通電対象とを電気的に接続するバスバーを、端子台なしで冷却部に伝熱可能に接続できる。
【0010】
(2)前記冷却部は、導電体の冷却部本体と、前記冷却部本体と前記第3部との間に介装される絶縁体の伝熱シートとを含む、前記(1)に記載のバスバー。
【0011】
本実施形態によれば、このように冷却部本体が導電体であっても、絶縁体の伝熱シートを介装することによって、バスバーと冷却部本体との間の絶縁を保ちつつも、バスバーを冷却部本体に対して伝熱可能に接続することができる。
【0012】
(3)前記第1部は、前記第1通電対象に電気的に接続される部分から、所定のY方向の一方としてのY+方向に延出してから、前記Y方向に直交するZ方向の一方としてのZ-方向に延出する形状をしており、
前記第2部および前記第3部は、前記第1部における前記Z-方向に延出する部分の先端から突出しており、
前記第2部は、少なくとも前記Y+方向に延出して、前記第2通電対象に電気的に接続される部分に至る形状をしており、
前記第3部は、少なくとも前記先端から引き続き前記Z-方向に延出してから、前記冷却部に当接する部分に至る形状をしている、
前記(1)又は(2)に記載のバスバー。
【0013】
本構成によれば、第1部の先端から第2部および第3部がそれぞれ延出するのに加え、第1部の先端から少なくとも第3部が引き続きZ-方向に延出するため、これら第1部と第2部と第3部とを備えるバスバーのまとまりが良い。
【0014】
(4)前記バスバーは、1枚の金属板が折り曲げ加工されることによって形成されている、前記(1)又は(2)に記載のバスバー。
【0015】
本構成によれば、折り曲げる位置を調整することによって、第1部に対する第2部および第3部の位置を簡単に調整できる。
【0016】
(5)第1通電対象と第2通電対象とを電気的に接続するバスバーの製造方法であって、
前記バスバーの材料となる金属板であって、第1領域と、前記第1領域から突出する第2領域と、前記第2領域とは別に前記第1領域から突出する第3領域とを備える金属板を加工する工程と、
前記第1領域を折り曲げ加工することによって、前記第1通電対象に電気的に接続される第1部を形成する工程と、
前記第2領域を折り曲げ加工することによって、前記第2通電対象に電気的に接続される第2部を形成する工程と、
前記第3領域を折り曲げ加工することによって、前記第1部が前記第1通電対象に電気的に接続され且つ前記第2部が前記第2通電対象に電気的に接続された状態において、冷却部に当接する第3部を形成する工程と、
を含むバスバーの製造方法。
【0017】
本構成の製造方法によれば、前記(4)のバスバーを製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の通り、前記(1)のバスバーによれば、第1通電対象と第2通電対象とを電気的に接続するバスバーを、端子台なしで冷却部に伝熱可能に接続できる。さらに、前記(1)のバスバーを引用する前記(2)~(4)のバスバー、および前記(4)のバスバーを製造する前記(5)の製造方法によれば、それぞれの追加の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態のバスバーおよびその周辺を示す斜視図である。
【
図2】バスバーおよびその周辺を
図1とは異なる角度から見た斜視図である。
【
図3】バスバーおよび伝熱シートを示す斜視図である。
【
図4】バスバーの材料となる金属板を示す平面図である。
【
図5】比較形態のバスバーおよびその周辺を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【0021】
[第1実施形態]
【0022】
図1に示すように、本実施形態のバスバー50は、金属などの導電体であって、第1通電対象100と第2通電対象200とを電気的に接続する。第1通電対象100および第2通電対象200としては、例えばバッテリや各種電気機器やそれらに接続されている配線などが挙げられる。電気機器としては、例えば、変圧器やインバータや制御装置などが挙げられる。
【0023】
バスバー50は、第1部10と第2部20と第3部30とを備える。第1部10は、第1通電対象100に電気的に接続される。第2部20は、第2通電対象200に電気的に接続される。
【0024】
図2に示すように、第3部30は、第1部10が第1通電対象100に電気的に接続され且つ第2部20が前記第2通電対象200に電気的に接続された状態において、冷却部300に当接する。冷却部300は、導電体の冷却部本体340と、冷却部本体340と第3部30との間に介装される絶縁体の伝熱シート330とを含む。
【0025】
以下、
図3に示すように、互いに直交し合う所定の3方向を「X方向」「Y方向」「Z方向」という。また以下では、X方向の一方を「X+方向」といい、その反対方向を「X-方向」という。また、Y方向の一方を「Y+方向」といい、その反対方向を「Y-方向」という。また、Z方向の一方を「Z+方向」といい、その反対方向を「Z-方向」という。
【0026】
第1部10には、第1ボルトB1をZ方向に挿通させるための第1通し孔12が設けられている。この第1通し孔12の周辺が、第1通電対象100に電気的に接続される部分に相当する。第1部10は、第1通し孔12が形成されている部分から、Y+方向に延出してから、Z-方向に延出する形状をしている。以下、第1部10のZ-方向に延出する部分におけるZ-方向の端を、「第1部10の先端18」という。
【0027】
第2部20および第3部30は、第1部10の先端18からX方向に並んで、それぞれ別々に突出している。
【0028】
具体的には、第2部20は、第1部10の先端18におけるX-方向寄りの部分から、引き続きある程度Z-方向に延出してからY+方向に延出する形状をしている。ただし、これに代えて、第2部20は、第1部10の先端18から直ぐにY+方向に延出していてもよい。第2部20には、第2ボルトB2を挿通させるための第2通し孔27が設けられている。この第2通し孔27の周辺が、第2通電対象200に電気的に接続される部分に相当する。
【0029】
他方、第3部30は、第1部10の先端におけるX+方向寄りの部分から、引き続きZ-方向に第2部20よりも延出してから、Y+方向に延出する形状をしている。ただし、これに代えて、第3部30は、Z-方向に第2部20よりも延出してから、Y-方向に延出していてもよい。これらY+方向又はY-方向に延出している部分が、冷却部300に当接する部分としての当接部38に該当する。具体的には、当接部38におけるZ-方向側の面が、冷却部300の伝熱シート330に当接する。
【0030】
次に、以上に示したバスバー50の製造方法について説明する。まず、
図4に示すように、バスバー50の材料となる金属板Mを加工する。その金属板Mは、後に第1部10となる第1領域10rと、後に第2部20になる第2領域20rと、後に第3部になる第3領域30rとを有する。第1領域には、第1通し孔12が設けられており、第2領域には、第2通し孔27が設けられている。第2領域20rと第3領域30rとは、X方向に並んで互いに別に第1領域10rからZ-方向に突出している。
【0031】
次に、第1領域10rと第2領域20rと第3領域30rとを、それぞれ折り曲げ加工する。これらの工程は、同時に行ってもよいし、1つずつ行ってもよい。
【0032】
第1領域10rを折り曲げ加工する工程では、
図4に示す第1領域10rにおけるZ+方向寄りの部分をY-方向側に90°折り曲げることによって、
図3に示す第1部10を形成する。第2領域20rを折り曲げ加工する工程では、
図4に示す第2領域20rにおけるZ-方向寄りの部分をY+側に曲げることによって、
図3に示す第2部20を形成する。第3領域30rを折り曲げ加工する工程では、
図4に示す第3領域30rにおけるZ-方向寄りの部分をY+側に曲げることによって、
図3に示す第3部30を形成する。以上の工程によって、
図3に示すバスバーが加工される。
【0033】
このようにして加工されたバスバー50は、
図2に示すように、第1部10が第1ボルトB1によって第1通電対象100に電気的に接続され、第2部20が第2ボルトB2によって第2通電対象200に電気的に接続される。これによって、バスバー50は、第1通電対象100と第2通電対象200とを電気的に接続する。このとき、第3部30の当接部38が、冷却部300の伝熱シート330に当接する。これによって、第3部30が、伝熱シート330を介して冷却部本体340に伝熱可能に接続される。なお、伝熱シート330は、冷却部本体340に接着剤などによって固定されていてもよいし、第3部30と冷却部本体340との間に挟まれることによって固定されるものであってもよい。
【0034】
以下、
図3に示す本実施形態のバスバー50を、
図6に示すように変更したものを、比較形態のバスバー50cという。すなわち、比較形態のバスバー50cは、本実施形態のバスバー50から、第3部30をなくして、第2部20をY+方向およびX+方向に広げると共に、第2部20におけるX+方向寄りに、第3通し孔37を設けたものである。その第3通し孔37には、
図5に示すように、第3ボルトB3が挿通される。その第3ボルトB3が冷却用の端子台60に締結されることによって、第2部20が端子台60に接続される。端子台60におけるZ-方向側の端部は、冷却部300の伝熱シート330に当接する。そのことから、第2部20は、端子台60を介して冷却部300に伝熱可能に接続される。
【0035】
この比較形態と比較しつつ、本実施形態の構成および効果を、以下にまとめる。
【0036】
図5に示すように、比較形態によれば、第1通電対象100と第2通電対象200とを電気的に接続するバスバー50cを、端子台60を介して冷却部300に伝熱可能に接続できる。しかしながら、バスバー50cとは別に端子台60が必要になるため、バスバー50cを含む装置全体の大型化を招いてしまう。さらに、部品点数が多くなることから、バスバー50cおよびその周辺部材の取付作業の煩雑化、コスト増加などに繋がる。また、第1ボルトB1および第2ボルトB2の締結に加えて、第3ボルトB3の締結が必要になるので、この点でも取付作業が煩雑になる。
【0037】
その点、本実施形態によれば、
図2に示すように、第1部10が第1通電対象100に電気的に接続され且つ第2部20が第2通電対象200に電気的に接続された状態において、第2部20とは別に第1部10から突出する第3部30が冷却部300に当接する。そのため、第1通電対象100と第2通電対象200とを電気的に接続するバスバー50を、端子台60なしで冷却部300に伝熱可能に接続できる。そのことから、バスバー50を含む装置全体のコンパクト化に繋がる。しかも、冷却用の端子台60の設置スペースの分だけ、第1通電対象100と第2通電対象200との間の距離を短くできる。そのため、その分だけ、バスバー50の長さを短くして電気抵抗を低減できる。さらに、部品点数が少なくなることから、バスバー50およびその周辺部材の取付作業が容易になり、コスト削減に繋がる。また、第1ボルトB1および第2ボルトB2の締結だけで足りるので、この点でも取付作業が容易になる。
【0038】
図2に示すように、冷却部300は、導電体の冷却部本体340と、冷却部本体340と第3部30との間に介装される絶縁体の伝熱シート330とを含む。そのため、このように冷却部本体340が導電体であっても、伝熱シート330を介装することによって、バスバー50と冷却部本体340との間の絶縁を保ちつつ、バスバー50を冷却部本体340に伝熱可能に接続できる。
【0039】
図3に示すように、第1部10の先端18から第2部20および第3部30がそれぞれ延出するのに加え、第1部10の先端18から少なくとも第3部30が引き続きZ-方向に延出する。そのため、これら第1部10と第2部20と第3部30とを備えるバスバーのまとまりが良い。
【0040】
図4に示す1枚の金属板Mを折り曲げ加工することによって、バスバー50を形成している。そのため、折り曲げる位置を調整することによって、
図3に示す第1通し孔12に対する第2通し孔27の位置および当接部38の位置を簡単に調整できる。
【0041】
[他の実施形態]
以上に示した実施形態は、例えば次のように変更できる。
図3に示す第1通し孔12や第2通し孔27に代えて、ボルトB1,B2をZ方向に挿通させるための切欠が設けられていてもよい。第1部10や第2部20や第3部30が、90°よりも大きい角度や、小さい角度で折り曲げられていてもよい。第1部10や第2部20や第3部30が、追加の構成を有していてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 第1部
18 第1部の先端
10r 第1領域
20 第2部
20r 第2領域
30 第3部
30r 第3領域
50 バスバー
100 第1通電対象
200 第2通電対象
300 冷却部
330 伝熱シート
340 冷却部本体
M 金属板