(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144797
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法および作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056910
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】畠 一尋
(72)【発明者】
【氏名】西郷 雄祐
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003BA01
2D003BA03
2D003BA04
2D003BA06
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003DC07
(57)【要約】
【課題】旋回体が旋回する方向を自動で判断することができる制御装置、制御方法および作業機械を提供する。
【解決手段】制御装置は、旋回中心周りに旋回する旋回体と、作業具を有し前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える作業機械の制御装置であって、前記作業具を目標位置へ移動させるために前記旋回体が旋回する方向を設定する旋回方向設定部を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回中心周りに旋回する旋回体と、作業具を有し前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える作業機械の制御装置であって、
前記作業具を目標位置へ移動させるために前記旋回体が旋回する方向を設定する旋回方向設定部
を備える制御装置。
【請求項2】
積込対象との干渉を回避するための干渉回避点を設定する基準点設定部を備え、
前記旋回方向設定部は、前記干渉回避点を向く方向に前記旋回方向を設定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記旋回方向設定部は、上方からの平面視で運搬車両の運転室と作業具とが重ならない方向に前記旋回方向を設定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記旋回方向設定部は、旋回最小角となる方向に前記旋回方向を設定する
請求項1または3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記旋回方向設定部は、前記運搬車両の前方が前記作業機械を向く場合、旋回を実施させない
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記作業具を目標位置へと移動させるための操作指令信号を生成して出力する操作指令信号生成部を備え、
前記操作指令信号生成部は、前記作業具を荷下ろしの前記目標位置に対応する第1目標点へ移動させる第1旋回制御または前記作業具を荷積みの前記目標位置に対応する第2目標点へ移動させる第2旋回制御を行うための操作指令信号を生成する
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
旋回中心周りに旋回する旋回体と、作業具を有し前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える作業機械の制御方法であって、
前記作業具を目標位置へ移動させるために前記旋回体が旋回する方向を設定するステップ
を含む制御方法。
【請求項8】
旋回中心周りに旋回する旋回体と、
作業具を有し前記旋回体に取り付けられた作業機と、
前記旋回体と前記作業機を制御する制御装置と
を備える作業機械であって、
前記制御装置は、前記作業具を目標位置へ移動させるために前記旋回体が旋回する方向を設定する旋回方向設定部
を備える作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法および作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、旋回体と作業機を備える積み込み機械の制御装置であって、積み込み位置および掘削位置間の作業機の移動を自動化することができる制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に変更例として記載されているように、特許文献1に記載されている制御装置は、手動操作による積み込み作業および掘削作業と、積み込み位置および掘削位置間の旋回及び作業機の移動の自動化とを組み合わせることができる。ところで、積み込み作業または掘削作業を行った後、掘削位置または積み込み位置へ向けて、左右の旋回方向を特定することは容易でない。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、旋回体が旋回する方向を自動で判断することができる制御装置、制御方法および作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、旋回中心周りに旋回する旋回体と、作業具を有し前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える作業機械の制御装置であって、前記作業具を目標位置へ移動させるために前記旋回体が旋回する方向を設定する旋回方向設定部を備える制御装置である。
【0007】
また、本開示の一態様は、旋回中心周りに旋回する旋回体と、作業具を有し前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える作業機械の制御方法であって、前記作業具を目標位置へ移動させるために前記旋回体が旋回する方向を設定するステップを含む制御方法である。
【0008】
また、本開示の一態様は、旋回中心周りに旋回する旋回体と、作業具を有し前記旋回体に取り付けられた作業機と、前記旋回体と前記作業機を制御する制御装置とを備える作業機械であって、前記制御装置は、前記作業具を目標位置へ移動させるために前記旋回体が旋回する方向を設定する旋回方向設定部を備える作業機械である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の制御装置、制御方法および作業機械は、旋回体が旋回する方向を自動で判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る作業機械の構成を示す概略図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る運転室の内部の構成を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図11】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図12】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図13】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図14】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図15】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図16】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図17】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図18】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図19】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図20】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図21】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図22】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図23】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図24】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図25】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図26】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図27】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図28】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図29】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図30】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図31】本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
図1は、本開示の実施形態に係る作業機械の構成を示す概略図である。
図2は、本開示の実施形態に係る運転室の内部の構成を示す図である。
図3は、本開示の実施形態に係る制御システムの構成例を示すブロック図である。
図4~
図11は、本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
図12は、本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図15、
図22、
図24、
図26、および
図28~
図31は、本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図13、
図14、
図16~
図21、
図23、
図25および
図27は、本開示の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
【0012】
(作業機械100の構成)
図1は、本開示の実施形態に係る作業機械100の構成を示す。作業機械100は、施工現場にて稼働し、土砂などの施工対象を施工する。本開示の実施形態に係る作業機械100は、例えば油圧ショベルである。ただし、本開示の作業機械は、例えば、旋回体と作業機とを備える作業機械であれば限定はなく、例えばフェースショベルやロープショベルなどの他の作業機械であってもよい。作業機械100は、走行体110、旋回体120、作業機130および運転室140を備える。
【0013】
走行体110は、作業機械100を走行可能に支持する。走行体110は、左右に設けられた2つの履帯111と、各履帯111を駆動するための2つの走行モータ112を備える。旋回体120は、走行体110に旋回中心回りに旋回可能に支持される。
【0014】
作業機130は、油圧により駆動する。作業機130は、旋回体120の前部に上下方向に駆動可能に支持される。運転室140は、オペレータが搭乗し、作業機械100の操作を行うためのスペースである。運転室140は、旋回体120の左前部に設けられる。なお、本実施形態では、
図1に示すように、旋回体120を基準として、上下方向(Z方向)、左右方向(Y方向)、および、前後方向(X方向)を定める。本実施形態では、この座標系をショベル座標系という。また、旋回体120のうち作業機130が取り付けられる部分を前部という。また、旋回体120について、前部を基準に、反対側の部分を後部、左側の部分を左部、右側の部分を右部という。
【0015】
(旋回体120の構成)
旋回体120は、エンジン121、油圧ポンプ122、EPC(Electromagnetic Proportional Control)弁123-1、メインバルブ123-2、旋回モータ124、および、燃料噴射装置125を備える。エンジン121は、油圧ポンプ122を駆動する原動機である。エンジン121は、動力源の一例である。エンジン121にはセルモータ1211が設けられる。エンジン121は、セルモータ1211の回転により起動する。EPC弁123-1は、制御装置61が出力した操作指令信号に基づき、メインバルブ123-2に流れる作動油を制御する。
【0016】
油圧ポンプ122は、エンジン121により駆動される可変容量ポンプである。油圧ポンプ122は、メインバルブ123-2を介して各アクチュエータに作動油を供給する。各アクチュエータは、ブームシリンダ131C、アームシリンダ132C、バケットシリンダ133C、走行モータ112、および旋回モータ124を含む。メインバルブ123-2は、油圧ポンプ122から供給される作動油の流量を制御する。
【0017】
旋回モータ124は、メインバルブ123-2を介して油圧ポンプ122から供給される作動油によって駆動し、旋回体120を旋回軸120C(旋回中心)周りに旋回させる。燃料噴射装置125は、燃料をエンジン121に噴射する。
【0018】
(作業機130の構成)
作業機130は、ブーム131、アーム132、作業具としてのバケット133、ブームシリンダ131C、アームシリンダ132C、およびバケットシリンダ133Cを備える。なお、ブームシリンダ131C、アームシリンダ132C、およびバケットシリンダ133Cは、
図3に示すシリンダ130Cに含まれる。なお、アタッチメントである作業具として、バケットのほか、法面バケット、チルトローテータ、クイックカプラ、グラップル、マグネット、ブレーカなどが挙げられる。
【0019】
ブーム131の基端部は、旋回体120にブームピンを介して取り付けられる。アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にアームピンを介して取り付けられる。バケット133は、土砂などを掘削するための刃と掘削した土砂を収容するための収容部とを備える。バケット133の基端部は、アーム132の先端部にバケットピン133Pを介して取り付けられる。
【0020】
ブームシリンダ131Cは、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ131Cの基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ131Cの先端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ132Cは、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ132Cの基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ132Cの先端部は、アーム132に取り付けられる。バケットシリンダ133Cは、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ133Cの基端部は、アーム132に取り付けられる。バケットシリンダ133Cの先端部は、バケット133に接続されるリンク部材に取り付けられる。
【0021】
(運転室140の構成)
図2は、本開示の実施形態に係る運転室140の内部の構成を示す。運転室140内には、運転席142、操作装置143等が設けられる。
【0022】
操作装置143は、オペレータの手動操作によって走行体110、旋回体120および作業機130を駆動させたり、各種設定値を設定したり、変更したり、オペレータに対して情報を提供したりするための装置である。操作装置143は、例えばレバー、スイッチおよびペダルにより構成される。操作装置143は、左操作レバー143LO、右操作レバー143RO、左フットペダル143LF、右フットペダル143RF、左走行レバー143LT、右走行レバー143RT、および、表示入力装置143Dを備える。スイッチは、例えば押ボタンスイッチ、ロッカースイッチ、トグルスイッチなど、さまざまなスイッチが用いられてもよい。また、スイッチはオペレータの操作可能な範囲内に設けられていればよい。スイッチは、運転室140あるいは、遠隔操作室などに設けられた運転席の周辺に配置される。例えば、運転席142の側方のコンソール、作業機械100の外から作業機械100に操作指令を出力する送信機などに設けられていてもよい。
【0023】
左操作レバー143LOは、運転席142の左側に設けられる。右操作レバー143ROは、運転席142の右側に設けられる。
【0024】
左操作レバー143LOは、旋回体120の旋回動作、および、アーム132の掘削/ダンプ動作を行うための操作機構である。具体的には、作業機械100のオペレータが左操作レバー143LOを前方に倒すと、アーム132がダンプ動作する。また、作業機械100のオペレータが左操作レバー143LOを後方に倒すと、アーム132が掘削動作する。また、作業機械100のオペレータが左操作レバー143LOを右方向に倒すと、旋回体120が右旋回する。また、作業機械100のオペレータが左操作レバー143LOを左方向に倒すと、旋回体120が左旋回する。なお、他の実施形態においては、左操作レバー143LOを前後方向に倒した場合に旋回体120が右旋回または左旋回し、左操作レバー143LOを左右方向に倒した場合にアーム132が掘削動作またはダンプ動作してもよい。左操作レバー143LOには操作スイッチ1433が設けられている。なお、操作スイッチ1433は、運転席142に着座したオペレータの近傍に位置するように配置されればよい。なお、操作スイッチ1433は、操作レバーの上部、あるいは側方に設けられている。
【0025】
右操作レバー143ROは、バケット133の掘削/ダンプ動作、および、ブーム131の上げ/下げ動作を行うための操作機構である。具体的には、作業機械100のオペレータが右操作レバー143ROを前方に倒すと、ブーム131の下げ動作が実行される。また、作業機械100のオペレータが右操作レバー143ROを後方に倒すと、ブーム131の上げ動作が実行される。また、作業機械100のオペレータが右操作レバー143ROを右方向に倒すと、バケット133のダンプ動作が行われる。また、作業機械100のオペレータが右操作レバー143ROを左方向に倒すと、バケット133の掘削動作が行われる。なお、他の実施形態においては、右操作レバー143ROを前後方向に倒した場合に、バケット133がダンプ動作または掘削動作し、右操作レバー143ROを左右方向に倒した場合にブーム131が上げ動作または下げ動作してもよい。右操作レバー143ROには、例えば操作スイッチ1431および1432が設けられている。本実施形態では、操作スイッチ1431にティーチングスイッチとしての機能が設定され、操作スイッチ1432に自動開始スイッチとしての機能が設定されているものとする(以下、各スイッチをティーチングスイッチ1431および自動開始スイッチ1432(あるいは単に「スイッチ」)ともいう)。スイッチ1431および1432は、操作レバーの上部、あるいは側方に設けられている。なお、ティーチングスイッチ、自動開始スイッチは自動制御用のスイッチの一例である。自動開始スイッチは、例えば、スイッチをONにすると自動動作を開始する指示信号を出力する。また、スイッチは、自動開始に限らず自動動作に関わる信号であればよく、例えば自動停止の信号を出力するものであってもよい。また、例えば、スイッチの機能の割り付けは、積込旋回、戻り旋回の自動制御に限らず、バケット133による排土動作を自動的に行う自動排土や、掘削動作を自動的に行う自動掘削などの自動制御に行われてもよい。例えば、2つ以上のスイッチに自動掘削、積込旋回、戻り旋回、自動排土の自動運転をそれぞれ割り付けるようにしてもよい。また、一つの操作レバーに複数のスイッチを設けたり、複数の操作レバーに分けて、各操作レバーに一または複数のスイッチを設けたりしてもよい。
【0026】
左フットペダル143LFは、運転席142の前方の床面の左側に配置される。右フットペダル143RFは、運転席142の前方の床面の右側に配置される。左走行レバー143LTは、左フットペダル143LFに軸支され、左走行レバー143LTの傾斜と左フットペダル143LFの押し下げが連動するように構成される。右走行レバー143RTは、右フットペダル143RFに軸支され、右走行レバー143RTの傾斜と右フットペダル143RFの押し下げが連動するように構成される。
【0027】
左フットペダル143LFおよび左走行レバー143LTは、走行体110の左側履帯の回転駆動に対応する。具体的には、作業機械100のオペレータが左フットペダル143LFまたは左走行レバー143LTを前方に倒すと、左側履帯は前進方向に回転する。また、作業機械100のオペレータが左フットペダル143LFまたは左走行レバー143LTを後方に倒すと、左側履帯は後進方向に回転する。
【0028】
右フットペダル143RFおよび右走行レバー143RTは、走行体110の右側履帯の回転駆動に対応する。具体的には、作業機械100のオペレータが右フットペダル143RFまたは右走行レバー143RTを前方に倒すと、右側履帯は前進方向に回転する。また、作業機械100のオペレータが右フットペダル143RFまたは右走行レバー143RTを後方に倒すと、右側履帯は後進方向に回転する。
【0029】
表示入力装置143Dは、表示装置と表示画面に対するタッチ操作を検知するセンサとを組み合わせた装置である。例えばオペレータは、表示入力装置143Dを用いて、各種設定値等を設定したり、変更したりすることができる。例えば、表示入力装置143Dは、表示部を有する表示装置とオペレータの操作を受け付ける入力部等とが別体でもよい。
【0030】
(センサ等)
図3に示すように、作業機械100の制御システム60は、制御装置61と、操作装置143等と、各種センサとを備える。なお、
図3では、油圧系統の回路を太線で示している。
図3に示す例では、制御システム60は、姿勢角センサ151と、GNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)センサ152と、IMU(Inertial Measurement Unit;慣性計測装置)153とを備える。
【0031】
姿勢角センサ151は、ブーム姿勢角センサ、アーム姿勢角センサ、およびバケット姿勢角センサを含む。ブーム姿勢角センサは、ブーム131の姿勢角を計測する。アームス姿勢角センサは、アーム132の姿勢角を計測する。バケット姿勢角センサは、バケット133の姿勢角を計測する。
【0032】
GNSSセンサ152は、旋回体120の位置および旋回体120が向く方位を演算する。GNSSセンサ152は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器161および162を備える。2つの受信器161および162は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。GNSSセンサ152は、受信器161および162が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(ショベル座標系の原点)の位置を検出する。GNSSセンサ152は、2つの受信器161および162が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位角を演算する。旋回体120が向く方位角(車体方位角ともいう)とは、旋回体120の正面方向(X方向)であって、作業機130のブーム131からバケット133へ伸びる直線の延在方向の水平成分に等しい。
【0033】
IMU153は、旋回体120の加速度および角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角およびピッチ角)を検出する。IMU153は、例えば旋回体120の下面に設置される。
【0034】
なお、作業機械100が備える他のセンサの例としては、ステレオカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)装置、レーザスキャナなどが挙げられる。これらのセンサは、例えば検出方向が作業機械100の運転室140の前方を向くように設けられる。これらのセンサは、対象物の3次元位置を、各センサの位置を基準とした座標系で特定する。なお、これらのセンサは、作業機械の側方を向くように作業機械の左側方あるいは右側方のいずれか一方、または両側方に設けられていてもよい。
【0035】
また、作業機械100は、例えば、周辺の他車両等と車車間通信を行うための近距離通信装置、遠隔地のサーバ等と通信接続するための移動体通信装置等を備えている。
【0036】
(制御装置の基本的動作)
まず、
図4~
図11を参照して、本開示の実施形態に係る制御装置61の基本的動作について説明する。なお、本実施形態では、掘削対象の掘削によって積込対象の外側にバケット133が位置する状態から、自動的にブーム131を上げながら積込対象を向く方位まで旋回し、排土点へ移動させる旋回動作を「積込旋回」という。また、積み込みによって積込対象の上にバケット133が位置する状態から、自動的にブーム131を下げながら 所定の方位まで旋回し、掘削開始点へ移動させる動作を「戻り旋回」という。排土点は、積込旋回を行う目標の点であり、例えば、運搬車両であるダンプトラックの荷台や土地改良機、ホッパ等の投入口に設定される。ダンプトラック、土地改良機、ホッパ等は積込対象の一例である。ただし、これらに限定されず、例えば、掘削した土砂等を他の地面の上に移動させるような場合の移動先も排土点として設定することができる。本開示では、排土点は、バケット133等に収容された荷物の荷下ろしの目標位置に対応する第1目標点(以下、積込旋回目標点TLPともいう)の一例である。また、掘削開始点は、排土完了後、自動で戻る動作の目標の点であり、例えば、掘削を開始するための点に設定される。本開示では、掘削開始点は、例えば、バケット133等で掘削対象を掘削するための荷積みの目標位置に対応する第2目標点(以下、戻り旋回目標点TRPともいう)の一例である。なお、本実施形態では、排土点(積込旋回目標点TLP)、掘削開始点(戻り旋回目標点TRP)および後述する干渉回避点を総称する場合、基準点という。また、本実施形態では、作業機械100において基準点に対応する部位は、バケットピン133Pである。制御装置61は、各基準点の位置や方位を目標値とし、バケットピン133Pの位置を制御する。また、積荷旋回目標点TLPと戻り旋回目標点TRPを総称する場合、目標点という。
【0037】
図4は、手動掘削、積込旋回、手動排土および戻り旋回の一連の流れを模式的に示す。
図4に示す作業機械100は、例えば、左上の図に示すように、オペレータによる手動掘削によってバケット133に土砂等の荷物を積載した後、オペレータが自動開始スイッチ1432を操作すると右上の図に示すように積込旋回が開始され、積込旋回目標点TLPまで作業機130と旋回体120との複合動作が自動で実現する。ここで、右下の図に示すように、オペレータが手動排土によってバケット133内の土砂等を排土する。排土終了後、オペレータが自動開始スイッチ1432を押下すると左下の図に示すように戻り旋回が開始され、戻り旋回目標点TRPまで作業機130と旋回体120との複合動作が自動で実現する。
【0038】
なお、
図2および
図3に示す例では、自動開始スイッチ1432を積込旋回と戻り旋回とで共通として1個としているが、2個以上の複数のスイッチでもよい。例えば、積荷旋回用の自動開始スイッチを
図2に示す自動開始スイッチ1432(以下、積込旋回自動開始スイッチ1432ともいう)とし、戻り旋回用の自動開始スイッチを
図2に示す自動開始スイッチ1433(以下、戻り旋回自動開始スイッチ1433ともいう)として、独立に2個の自動開始スイッチを設けてもよい。スイッチの設け方については、例えばオペレータが任意に設定できるようにすることができる。
【0039】
次に
図5を参照して干渉回避点について説明する。
図5は、作業機械100と土砂等の荷物の積み込み対象であるダンプトラック200との位置関係を模式的に示す。ダンプトラック200は、運転室201、荷台202、アオリ203を備える。
図5は積込旋回の動作例を示す。作業機械100は、自動開始スイッチ1432の操作によって自動旋回開始点(SP)にあるバケット133(133a)を干渉回避点(EVP)を経由して積込目標点(TLP)に移動させている。積込目標点(TLP)到達時のバケット133(133b)の姿勢は、抱え込み姿勢(本実施形態では、掘削対象を掘削した荷がバケット133に収容された姿勢であり、荷積み姿勢ともいう)である。ここで、オペレータは、バケット133の姿勢をダンプ姿勢(本実施形態では、バケット133に収容された荷を全て排土することができる荷下ろし姿勢であり、排土姿勢ともいう)とし(バケット133(133c))、排土作業を実施する。ここで、干渉回避点(EVP)は、ダンプトラック200の荷台202等にぶつからないように設定するエリアの境界を表す点(位置情報)である。例えば、干渉回避点(EVP)は、ダンプトラック200の荷台202等にぶつからないようにするための位置または旋回体120が向く方位を設定する点である。本実形態では、この境界よりも排土点側(積荷旋回目標点TLP)では旋回動作しか行わない。干渉回避点(EVP)は、例えば、オペレータが実際に作業機を操作して旋回体120が向く方位および作業機130の姿勢を設定するティーチングに基づいて設定することができる。その際、例えば、
図5に示すように、オペレータが登録した干渉回避点(ティーチング位置)に対して、垂直および水平方向に一定の余裕を持たせて干渉回避点(EVP)が設定される。なお、自動旋回開始点(SP)は、積込旋回または戻り旋回の開始時のバケットピン133Pの位置であり、オペレータが自動開始スイッチ1432を操作したときの位置である。また、以下では、自動旋回開始点(SP)を開始点ともいう。なお、自動旋回開始点(SP)は、積込旋回または戻り旋回の開始時の作業機130のある特定の位置であってもよく、例えばバケット133の左右端や、刃先などの位置であってもよい。
【0040】
図6は積込旋回における旋回角度とバケットピンの高さの位置の例を示す。横軸は旋回角度、縦軸はバケットピンの高さである。
図6では、自動旋回開始点(SP)の旋回角度を開始角度、干渉回避点(EVP)の旋回角度を干渉回避点角度、また、積込旋回目標点(TLP)の旋回角度を目標角度として示している。また、自動旋回開始点(SP)の高さを開始高さ、干渉回避点EVPの高さを干渉回避点高さ、また、積込旋回目標点(TLP)の高さを目標高さとして示している。また、ダンプトラックとの干渉領域を網掛けして示している。
図6に示す例では、自動旋回開始点(SP)から干渉回避点(EVP)までは、旋回体120の制御と作業機130のブーム131上げ制御とを複合的に実行することで、旋回角度が干渉回避点角度に達する前にバケットピン高さが干渉開始点高さに到達している。また、干渉回避点到達後は、旋回体120の単独制御によって、旋回角度が目標角度に到達している。
図6では、積込旋回における自動旋回開始点(SP)の開始高さが積込旋回目標点(TLP)の目標高さよりも低いが、例えば、自動旋回開始点(SP)の開始高さが積込旋回目標点(TLP)の目標高さまたは干渉回避点(EVP)の高さの少なくとも一方よりも高くてもよい。その場合、自動旋回開始点(SP)から積込旋回目標点(TLP)または干渉回避点(EVP)までは、旋回体120の制御と作業機130のブーム131下げ制御とを複合的に実行する。
【0041】
一方、
図7および
図8は、戻り旋回における旋回角度とバケットピンの高さの位置の例を示す。
図7は自動旋回開始点(SP)の高さが干渉回避点(EVP)の高さと等しい場合の例を示し、
図8は自動旋回開始点(SP)の高さが干渉回避点(EVP)の高さより低い場合の例を示す。
図7に示す例では、干渉回避点(EVP)に到達するまで、バケットピン高さは開始高さのまま維持され、旋回体120の単独制御によって、旋回体120は開始角度から干渉回避点角度へと移動する。そして、干渉回避点(EVP)に到達後は、旋回体120の旋回制御と作業機130のブーム131下げ制御とを複合的に実行することで、バケットピンは、目標高さと目標角度にまで到達する。また、
図8に示す例では、まず、バケットピンの高さが干渉回避点高さに到達するまで、ブーム上げによる作業機130の単独制御をする。干渉回避点高さに到達した後は、干渉回避点(EVP)に到達するまで、バケットピン高さは干渉回避点高さのまま維持され、旋回体120の単独制御によって、旋回角度が開始角度から干渉回避点角度まで移動する。そして、干渉回避点(EVP)に到達後は、旋回体120の制御と作業機130のブーム131下げ制御とを複合的に実行することで、バケットピン高さは、目標高さと目標角度まで到達する。なお、本実施形態では、戻り旋回においては、目標角度および目標高さに到達するまでに作業機130の姿勢が目標姿勢となるように制御される。
図7および
図8では、戻り旋回における自動旋回開始点(SP)の開始高さが戻り旋回目標点(TRP)の目標高さよりも高いが、例えば、自動旋回開始点(SP)の開始高さが戻り旋回目標点(TRP)の目標高さまたは干渉回避点(EVP)の高さの少なくとも一方よりも低くてもよい。その場合、自動旋回開始点(SP)から戻り旋回目標点(TRP)または干渉回避点(EVP)までは、旋回体120の制御と作業機130のブーム131上げ制御とを複合的に実行する。
【0042】
図9は、積込旋回における動作例を、斜視図で示した例である。なお、運搬車両であるダンプトラック200は、アオリ203に加え、コボレーン(飛散防止装置)204を備え、また、ヒンジ205を備えている。コボレーン204やヒンジ205は干渉物の例である。
図9に示す例では、バケットピンの軌跡は、自動旋回開始点(SP)から作業機130と旋回体120の両方の動作(以下、複合動作という)によって干渉回避点(EVP)まで延び、干渉回避点(EVP)から積込旋回目標点(TLP)まで旋回体120の単独の動作によって続いている。
【0043】
図10は、戻り旋回における動作例を、斜視図で示した例である。
図10に示す例では、自動旋回開始点(SP)の高さは干渉回避点(EVP)の高さより高い。また、自動旋回開始点(SP)と干渉回避点(EVP)の位置が異なっている。この場合、本実施形態では、旋回体120の旋回軸120Cと干渉回避点(EVP)を含む垂直な平面(干渉回避縦面(VS))を基準として、積込対象との干渉回避を担保する。なお、本実施形態では、干渉回避縦面(VS)と後述する干渉回避平面(HS)を総称して干渉回避面という。この例では、バケットピンの軌跡は、自動旋回開始点(SP)から干渉回避縦面(VS)を通過するまで旋回体120の単独の動作によって延び、干渉回避縦面(VS)通過後は、作業機130と旋回体120の複合動作によって戻り旋回目標点(TRP)まで続いている。
【0044】
図11は、戻り旋回における動作例を、斜視図で示した例である。
図11に示す例では、自動旋回開始点(SP)の高さは干渉回避点(EVP)の高さより低い。また、自動旋回開始点(SP)と干渉回避点(EVP)の位置が異なっている。この場合、本実施形態では、干渉回避点(EVP)を含む水平な平面(干渉回避平面(HS))を基準として、バケットピン133Pの高さが干渉回避平面(HS)の高さ以上となるまで、作業機130を制御する。その後は、
図10に示す例と同様に、干渉回避縦面(VS)を基準として、積込対象との干渉回避を担保する。この例では、バケットピンの軌跡は、自動旋回開始点(SP)から干渉回避平面(HS)に到達するまで上昇し、その後、干渉回避縦面(VS)を通過するまで旋回体120の単独の動作によって延び、干渉回避縦面(VS)通過後は、作業機130と旋回体120の複合動作によって戻り旋回目標点(TRP)まで続いている。
【0045】
(制御装置の構成)
図3に示すように制御装置61は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを用いて構成することができ、コンピュータ、コンピュータの周辺装置、周辺回路等のハードウェアと、そのコンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせ等から構成される機能的構成として、自動旋回制御部62と、記憶部63と、操作指令切替部64とを備える。また、自動旋回制御部62は、情報入出力部621と、基準点設定部622と、旋回方向設定部623と、開始指示受付部624と、操作指令切替制御部625と、操作指令信号生成部626とを備える。また、記憶部63は、目標の作業機姿勢・車体方位角(排土点、干渉回避点、掘削開始点)を示す情報631等を記憶する。
【0046】
自動旋回制御部62は、操作指令信号(自動)を生成し、操作指令切替部64を介してEPC弁123-1へ出力することで、旋回体120と作業機130を駆動する。
【0047】
情報入出力部621は、操作装置143、姿勢角センサ151、GNSSセンサ152、IMU153等が出力した所定の情報を入力したり、表示入力装置143Dに対して所定の表示情報を出力したりする。
【0048】
基準点設定部622は、積込旋回目標点TLP(排土点)、戻り旋回目標点TRP(掘削開始点)および干渉回避点(EVP)を設定する。本実施形態では、これらの基準点をオペレータがティーチングすることで設定したり、特許文献1に記載されているように3次元マップ等を作成し、作成した3次元マップ等に基づいて設定したりすることができる。設定の仕方は、例えば、オペレータが任意に選択できるようにすることができる。ここでは、オペレータがティーチングすることで設定する例について説明する。
基準点設定部622は、表示入力装置143Dにバケット133を掘削開始点へ移動させる指示を表示させる。オペレータは、操作装置143を操作してバケット133を掘削開始点へ移動させ、表示入力装置143Dに掘削開始点への移動完了を入力する。
次に、基準点設定部622は、表示入力装置143Dにバケット133を、干渉回避点に移動させる指示を表示させる。オペレータは、操作装置143を操作してバケット133を干渉回避点へ移動させ、表示入力装置143Dに干渉回避点への移動完了を入力する。
次に、基準点設定部622は、表示入力装置143Dにバケット133を排土点に移動させる指示を表示させる。オペレータは、操作装置143を操作してバケット133を排土点へ移動させ、表示入力装置143Dに排土点への移動完了を入力する。
【0049】
基準点設定部622は、表示入力装置143Dに基準点へ移動させる指示を表示するとともに、オペレータの表示入力装置143Dに対する入力操作と、情報入出力部621が入力した情報に基づいて、各基準点におけるショベル座標系基準で取得した作業機130の位置と姿勢、旋回体120の旋回角度についての情報等を記憶部63に情報631として記憶する。なお、基準点設定部622は、基準点の設定を任意のタイミングで変更することができる。すなわち、基準点設定部622は、例えば、自動旋回を実行する前に一度、積込旋回目標点TLP(排土点)、戻り旋回目標点TRP(掘削開始点)および干渉回避点(EVP)を設定した後は、任意のタイミングで例えば作業中に行うことができる。この場合、基準点の微調整を適宜調整することができる。例えば、積荷旋回目標点TLP(排土点)や戻り旋回目標点TRP(掘削開始点)等の微調整を適宜行うことができる。
【0050】
旋回方向設定部623は、目標位置へ移動するための作業機130の旋回方向を設定する。旋回方向設定部623は、例えば、積込対象と作業機械の位置関係に基づいて、積込旋回制御(第1旋回制御)および戻り旋回制御(第2旋回制御)における旋回方向を設定する。
【0051】
旋回方向設定部623は、例えば、干渉回避点(EVP)をまたいでバケット133を排土位置(荷下ろしの目標位置)に対応する積込旋回目標点TLP(第1目標点)またはバケット133を掘削開始位置(荷積みの目標位置)に対応する戻り旋回目標点TRP(第2目標点)へ至る方向に旋回方向を設定する。
図12は、この場合の旋回方向設定部623の動作例を示す。
図12に示す処理は、自動開始スイッチが操作された場合に開始される。
図12に示す処理が開始されると、旋回方向設定部623は、まず、
図6または
図7等を参照して説明した目標角度を取得する(ステップS101)。次に、旋回方向設定部623は、干渉回避点角度を取得する(ステップS102)。次に、旋回方向設定部623は、左旋回をした場合に干渉回避点角度をまたいで目標角度に至るか否かを判定する(ステップS103)。左旋回をした場合に干渉回避点角度をまたいで目標角度に至る場合(ステップS103:YES)、旋回方向設定部623は、旋回方向を左旋回に設定して(ステップS104)、
図12に示す処理を終了する。左旋回をした場合に干渉回避点角度をまたいで目標角度に至らない場合(ステップS103:NO)、旋回方向設定部623は、旋回方向を右旋回に設定して(ステップS105)、
図12に示す処理を終了する。
図13は、左旋回に設定される場合の例を示す。
図14は、右旋回に設定される場合の例を示す。この場合、ティーチングしていた干渉回避点がある方向に積込旋回または戻り旋回が行われることになるので、例えば180度近くの旋回を行う場合にどちらに旋回するのか不明になるということを防止することができる。つまり、旋回したい方向に基準点を設定し、基準点へ向けて旋回することができる。
【0052】
また、旋回方向設定部623は、例えば、荷下ろし(積込、排土等)の対象(積込対象)がダンプトラックであり、ダンプトラック200の運転室201とバケット133とが干渉する場合、ダンプトラック200の運転室201との干渉が発生しない方向に旋回方向を設定する。干渉が発生しない方向とは、運搬車両を上方からの上面視でみて、バケット133と運搬車両の運転室201とが重ならない方向のことである。例えば、上方からの上面視で運搬車両をみた場合、バケット133が運転室201の上方を通過しない方向に旋回方向を設定する。
図15は、この場合の旋回方向設定部623の動作例を示す。なお、
図15に示す動作例は、作業機械100と作業機械100の積込対象であるダンプトラック200とがおおむね平行状態(X方向(作業機械100の前後方向)と後述するベクトルb(ダンプトラック200の前後方向)とがおおむね平行)であることを前提とした動作例である。ここで、おおむね平行とは、平行から所定の角度範囲内ということである。
図15に示す処理は、自動開始スイッチ1432が操作された場合に開始される。
図15に示す処理が開始されると、旋回方向設定部623は、
図16または
図17に示す排土点P0の位置情報とトラック輪郭点4点P1~P4の位置座標をショベル座標系基準で取得する(ステップS201)。なお、トラック輪郭点4点P1~P4の位置座標は、例えば、車車間通信で取得したり、例えば、作業機械100に設けられたLiDAR装置、レーダスキャナ、カメラ等の外界センサを利用して取得したりすることができる。次に、旋回方向設定部623は、ショベル座標系の原点(旋回軸120C)と排土点P0を結ぶベクトル(ベクトルa)を算出する(ステップS202)。次に、旋回方向設定部623は、トラック座標系X軸のベクトル(ベクトルb)を算出する(ステップS203)。トラック座標系は、ダンプトラック200の位置および向きを基準とした座標系である。またベクトルbが向く方位は、ダンプトラック200の運転室201前方とし、荷台側を後方とした場合、荷台から運転室201へ向く方位である。次に、旋回方向設定部623は、上方からの平面視で視たベクトルaとベクトルbのなす角度が0度より大きいか否かを判定する(ステップS204)。ベクトルaとベクトルbのなす角度が0度より大きい場合、旋回方向設定部623は、右旋回に設定し(ステップS205)、
図15に示す処理を終了する。ベクトルaとベクトルbのなす角度が0度より大きくない場合、旋回方向設定部623は、左旋回に設定し(ステップS206)、
図15に示す処理を終了する。
図16に示す例では、なす角が0より大きいので旋回方向は右方向に設定される。
図17に示す例では、なす角が0より大きくないので旋回方向は左方向に設定される。この場合、ダンプトラック200の荷台202の後ろ側から作業機130を近づけることができるので、運転室201の上方を通る場合と比べて好ましい。なお、ベクトルaとベクトルbのなす角度が予め設定された0度から所定の範囲内となる0度近傍の場合(
図18参照)、旋回最小角となる方向で自動旋回するようにしてもよい。また、ベクトルaとベクトルbのなす角度が-180度と対向する場合、または-180度から予め設定された所定の範囲内で、つまりダンプトラック200が作業機械100に対向している場合(
図19および
図20参照)、旋回方向を決定せず、自動旋回を作動させず、表示入力装置143Dにバケット133の位置または姿勢が不適切である旨を、例えば、所定時間、表示や音を出力する。ただし、
図21に示すように、ダンプトラック200が作業機械100の方を向いていない場合には、旋回できる場合があり、このような場合には自動旋回できるようにすることができる。
【0053】
なお、旋回方向設定部623は、例えば、表示入力装置143Dに対するオペレータの入力操作に基づいて手動で設定してもよい。また、旋回方向設定部623は、例えば、干渉する物が存在しないホッパや地面への作業機への排土作業の場合は、最小旋回角となる方向で旋回方向を設定してもよい。例えば、運搬車両を上方からの上面視でみて、バケット133と運搬車両の運転室201とが重ならなければ、目標方位までの旋回角が最小旋回角となる方向に旋回方向を設定してもよい。また、設定の仕方は、例えば、オペレータが入力画面のタッチ操作などで任意に選択できるようにすることができる。以上のように、旋回方向設定部623は、バケット133を目標位置へ移動させるために旋回体120が旋回する旋回方向を設定する。その際、旋回方向設定部623は、例えば、積込対象との干渉を回避するための干渉回避点を設定する基準点設定部622が設定した干渉回避点を向く方向に旋回方向を設定する。あるいは、旋回方向設定部623は、上方からの平面視で運搬車両であるダンプトラック200の運転室201と作業具であるバケット133とが重ならない方向に旋回方向を設定する。また、旋回方向設定部623は、所定の条件に応じて、旋回最小角となる方向に旋回方向を設定する。また、旋回方向設定部623は、運搬車両の前方が作業機械100を向く場合、旋回を実施させないようにする機能を有することができる。
【0054】
開始指示受付部624は、自動開始スイッチ1432が1つの操作スイッチである場合に、自動開始スイッチ1432(所定の操作部)の操作がなされた場合に、積込旋回制御(作業具を荷下ろしの目標位置に対応する第1目標点へ移動させる第1旋回制御)の開始指示、または、戻り旋回制御(作業具を掘削のための目標位置に対応する第2目標点へ移動させる第2旋回制御)の開始指示として受け付ける。この構成によれば、1つの操作スイッチを用いて、旋回の開始を指示することができる。
【0055】
また、開始指示受付部624は、自動開始スイッチ1432が1つの操作スイッチである場合に、自動開始スイッチ1432に操作がなされたとき、例えば、
図23に示すように、バケット133がダンプトラック200の荷台202あるいはベッセル206の上方にあるとき(作業具が第1目標点から所定の範囲内にあるとき)、戻り旋回制御(第2旋回制御)の開始指示として受け付ける。または、バケット133がダンプトラック200の荷台202あるいはベッセル206の上方にないとき(作業具が第1目標点から所定の範囲内にないとき)、積込旋回制御(第1旋回制御)の開始指示として受け付ける。なお、
図23において位置P5およびP6は運転室201の端部の位置である。
図22は、この場合の開始指示受付部624の動作例を示す。
図22に示す処理は、自動開始スイッチ1432が操作された場合に開始される。
図22に示す処理が開始されると、開始指示受付部624は、ベッセル206の位置情報を取得する(ステップS301)。次に、開始指示受付部624は、バケット133の位置情報を取得する(ステップS302)。例えば、バケット133の位置は、ショベル座標系におけるバケットピン133Pの位置であり、旋回体120が向く方位も含む。次に、開始指示受付部624は、バケット133がベッセル206の上方にあるか否かを判定する(ステップS303)。バケット133がベッセル206の上方にある場合(ステップS303:YES)、開始指示受付部624は、旋回モード(旋回制御の種別)を戻り旋回に設定し(ステップS304)、
図22に示す処理を終了する。バケット133がベッセル206の上方にない場合(ステップS303:NO)、開始指示受付部624は、旋回モードを積込旋回に設定し(ステップS305)、
図22に示す処理を終了する。
【0056】
また、開始指示受付部624は、自動開始スイッチ1432が1つの操作スイッチである場合に、自動開始スイッチ1432に操作がなされたときに、例えば、
図25に示すようにバケット133がダンプ姿勢(作業具が所定の荷下ろし姿勢)であるとき、戻り旋回制御(第2旋回制御)の開始指示として受け付ける。または、自動開始スイッチ1432に操作がなされたときに、
図27に示すようにバケット133が抱え込み姿勢(作業具が所定の荷積み姿勢)であるとき、積込旋回制御(第1旋回制御)の開始指示として受け付ける。この場合、作業機械100単独で旋回モードを設定することができる。この場合の動作例を
図24と
図26に示す。ダンプ姿勢は、バケット133内の荷を排土している姿勢である。ダンプ姿勢は、例えば
図25に示されるようにバケット133の刃先133Tが鉛直方向をさす姿勢よりもバケット133の刃先133Tが作業機械100から遠くなる方向に向いている姿勢(
図25の破線DL)である。また、抱え込み姿勢は、バケット133に荷物が積込まれている姿勢である。抱え込み姿勢は、例えば
図27の破線DLで示されるようにバケット133の刃先133Tが鉛直方向をさす姿勢よりもバケット133の刃先133Tが作業機械100に近づく方向に向いている姿勢である。近づく方向は、
図25の破線DLに示すよう鉛直方向に直交する以上に刃先133Tが上方に向いているのが好ましい。なお、バケット133の姿勢は、作業機械100のピッチ角にて補正されてもよい。
【0057】
図24に示す処理は、自動開始スイッチ1432が操作された場合に開始される。
図24に示す処理が開始されると、開始指示受付部624は、バケット133の姿勢情報を取得する(ステップS401)。次に、開始指示受付部624は、バケット133がダンプ姿勢になっているか否かを判定する(ステップS402)。バケット133がダンプ姿勢になっている場合(ステップS402:YES)、開始指示受付部624は、旋回モードを戻り旋回に設定し(ステップS403)、
図24に示す処理を終了する。バケット133がダンプ姿勢になっていない場合(ステップS402:NO)、開始指示受付部624は、旋回モードを積込旋回に設定し(ステップS404)、
図24に示す処理を終了する。また、開始指示受付部624で特定したバケット133の姿勢情報は、車体のIMUに基づいて計測された車体(走行体110)のピッチ角やロール角などの車体傾斜情報を加味して補正してもよい。
【0058】
図26に示す処理は、自動開始スイッチ1432が操作された場合に開始される。
図26に示す処理が開始されると、開始指示受付部624は、バケット133の姿勢情報を取得する(ステップS501)。次に、開始指示受付部624は、バケット133が抱え込み姿勢になっているか否かを判定する(ステップS502)。バケット133が抱え込み姿勢になっている場合(ステップS502:YES)、開始指示受付部624は、旋回モードを積込旋回に設定し(ステップS503)、
図26に示す処理を終了する。バケット133が抱え込み姿勢になっていない場合(ステップS502:NO)、開始指示受付部624は、旋回モードを戻り旋回に設定し(ステップS504)、
図26に示す処理を終了する。
【0059】
また、開始指示受付部624は、自動開始スイッチ1432が1つの操作スイッチである場合に、スイッチの操作がなされたときに、例えば、
図23に示すように、バケット133がダンプトラック200の荷台202あるいはベッセル206の上方にあるときであっても(作業具が第1目標点から所定の範囲内にあるときであっても)、バケット133がダンプ姿勢でないとき(作業具が所定の荷下ろし姿勢でないとき)、スイッチの操作を受け付けない。または、スイッチの操作がなされたときに、バケット133がダンプトラック200の荷台202あるいはベッセル206の上方にないときであっても(作業具が第1目標点から所定の範囲内にないときであっても)、バケット133が抱え込み姿勢でないとき(作業具が所定の荷積み姿勢でないとき)、スイッチの操作を受け付けないようにしてもよい。この場合の動作例を
図28に示す。
【0060】
図28に示す処理は、自動開始スイッチ1432が操作された場合に開始される。
図28に示す処理が開始されると、開始指示受付部624は、ベッセル206の位置情報を取得するとともに(ステップS601)、バケット133の位置および姿勢情報を取得する(ステップS602)。例えば、バケット133の位置は、ショベル座標系におけるバケットピン133Pの位置であり、旋回体120が向く方位も含む。開始指示受付部624は、作業機械100の位置情報と、ステップS601で取得したベッセル206の位置情報と、ステップS602で取得したバケット133の位置および姿勢情報に基づいて、ベッセル206とバケット133の位置関係を表す情報を取得することができる。なお、バケット133の位置および姿勢情報は、例えば旋回体120の方位角情報と作業機130(ブーム、アーム、バケット)の姿勢情報に基づいて算出することができる。次に、開始指示受付部624は、バケット133がベッセル206の上方にあるか否かを判定する(ステップS603)。バケット133がベッセル206の上方にある場合(ステップS603:YES)、開始指示受付部624は、バケット133がダンプ姿勢になっているか否かを判定する(ステップS604)。バケット133がダンプ姿勢になっている場合(ステップS604:YES)、開始指示受付部624は、旋回モードを戻り旋回に設定し(ステップS607)、
図28に示す処理を終了する。バケット133がダンプ姿勢になっていない場合(ステップS604:NO)、開始指示受付部624は、自動旋回を作動させず(ステップS605)、表示入力装置143Dにバケット133の位置または姿勢が不適切である旨を例えば所定時間、表示や音を出力し(ステップS606)、
図28に示す処理を終了する。なお、ステップS601のステップは有してなくてもよい。
【0061】
バケット133がベッセル206の上方にない場合(ステップS603:NO)、開始指示受付部624は、バケット133が抱え込み姿勢になっているか否かを判定する(ステップS608)。バケット133が抱え込み姿勢になっている場合(ステップS608:YES)、開始指示受付部624は、旋回モードを積込旋回に設定し(ステップS609)、
図28に示す処理を終了する。バケット133が抱え込み姿勢になっていない場合(ステップS608:NO)、開始指示受付部624は、自動旋回を作動させず(ステップS610)、表示入力装置143Dにバケット133の位置または姿勢が不適切である旨を例えば所定時間、表示や音を出力し(ステップS611)、
図28に示す処理を終了する。この構成によれば、バケット133の位置や姿勢が不適切な状態で自動旋回制御が実行されることを防止することができる。
【0062】
また、開始指示受付部624は、自動開始スイッチ1432が2つの操作スイッチである場合(例えば、積込旋回自動開始スイッチ1432と、戻り旋回自動開始スイッチ1433を設ける場合)、バケット133の位置または姿勢の少なくとも一方が所定の条件を満たす場合に限って(作業具の位置または姿勢の少なくとも一方が所定の条件を満たす場合に限って)、積込旋回自動開始スイッチ1432または戻り旋回自動開始スイッチ1433(第1操作部または第2操作部)の操作を、積込旋回制御(第1旋回制御)の開始指示または戻り旋回制御(第2旋回制御)の開始指示として受け付けるようにしてもよい。この場合、オペレータが例えば積込旋回自動開始スイッチ1432と戻り旋回自動開始スイッチ1433の操作を間違えた場合に、自動旋回制御を開始しないようにすることができる。
【0063】
開始指示受付部624は、例えば、戻り旋回自動開始スイッチ1433(第2操作部)の操作がなされた場合に、バケット133がベッセル206の上方にあるときに限って(作業具が第1目標点から所定の範囲内にあるときに限って)、戻り旋回制御(第2旋回制御)の開始指示として受け付ける。または、積込旋回自動開始スイッチ1432(第1操作部)の操作がなされた場合に、バケット133がベッセル206の上方にないときに限って(作業具が第1目標点から所定の範囲内にないときに限って)、積込旋回制御(第1旋回制御)の開始指示として受け付けるようにすることができる。この場合の動作例を
図29に示す。
【0064】
図29に示す処理は、積込旋回自動開始スイッチ1432が操作された場合に開始される。
図29に示す処理が開始されると、開始指示受付部624は、ベッセル206の位置情報を取得するとともに(ステップS701)、バケット133の位置情報を取得する(ステップS702)。例えば、バケット133の位置は、ショベル座標系におけるバケットピン133Pの位置であり、旋回体120が向く方位も含む。次に、開始指示受付部624は、バケット133がベッセル206の上方にあるか否かを判定する(ステップS703)。バケット133がベッセル206の上方にある場合(ステップS703:YES)、開始指示受付部624は、自動旋回を作動させず(ステップS704)、表示入力装置143Dにバケット133の位置または姿勢が不適切である旨を例えば所定時間、表示や音を出力し(ステップS705)、
図29に示す処理を終了する。バケット133がベッセル206の上方にない場合(ステップS703:YES)、開始指示受付部624は、旋回モードを積込旋回に設定し(ステップS706)、
図29に示す処理を終了する。なお、ステップS701のステップは有してなくてもよい。
【0065】
また、開始指示受付部624は、例えば、積込旋回自動開始スイッチ1432(第1操作部)の操作がなされた場合に、バケット133が抱え込み姿勢(作業具が所定の荷積み姿勢)であるときに限って、スイッチの操作を、積込旋回制御(第1旋回制御)の開始指示として受け付けるか、または、戻り旋回自動開始スイッチ1433(第2操作部)の操作がなされた場合に、バケット133がダンプ姿勢(作業具が所定の荷下ろし姿勢)であるときに限って、スイッチの操作を、戻り旋回制御(第2旋回制御)の開始指示として受け付けるようにしてもよい。この場合の動作例を
図30に示す。
【0066】
図30に示す処理は、積込旋回自動開始スイッチ1432が操作された場合に開始される。
図30に示す処理が開始されると、開始指示受付部624は、バケット133の姿勢情報を取得する(ステップS801)。次に、開始指示受付部624は、バケット133がダンプ姿勢になっているか否かを判定する(ステップS802)。バケット133がダンプ姿勢になっている場合(ステップS802:YES)、開始指示受付部624は、自動旋回を作動させず(ステップS803)、表示入力装置143Dにバケット133の姿勢が不適切である旨を例えば所定時間、表示や音を出力し(ステップS804)、
図30に示す処理を終了する。バケット133がダンプ姿勢になっていない場合(ステップS802:NO)、開始指示受付部624は、旋回モードを積込旋回に設定し(ステップS805)、
図30に示す処理を終了する。
【0067】
なお、上述した複数の開始指示受付部624の動作の仕方については、例えば、オペレータが任意に選択できるようにすることができる。
【0068】
操作指令切替制御部625は、操作指令切替部64を制御して、操作装置143に対するオペレータの操作に応じて生成された操作指令信号(手動)と、操作指令信号生成部626が生成された操作指令信号(自動)とのいずれか一方を操作指令切替部64から出力させる。操作指令切替制御部625は、例えば、操作指令信号生成部626が操作指令信号(自動)を生成して出力した場合に、操作指令信号(自動)を選択して操作指令切替部64から出力させる。
【0069】
操作指令信号生成部626は、本開示に係る制御部の一構成例である。操作指令信号生成部626(制御部)は、所定の指示(例えば自動開始スイッチ1432の操作)に応じて、積込旋回制御または戻り旋回制御を行うための操作指令信号を生成して出力する。操作指令信号生成部626は、例えば、干渉回避点に基づき、積込旋回制御および戻り旋回制御におけるバケット133の移動を制御する。
【0070】
また、操作指令信号生成部626は、開始指示受付部624によって自動開始スイッチ1432の操作が積込旋回制御の開始指示として受け付けられた場合に積込旋回制御を実行し、開始指示受付部624によって自動開始スイッチ1432の操作が戻り旋回制御の開始指示として受け付けられた場合に前戻り旋回制御を実行する。
【0071】
また、操作指令信号生成部626は、積込旋回目標点TLPと干渉回避点EVPとに基づいて積込旋回制御を実行するとともに、戻り旋回目標点TRPと干渉回避点EVPを含む干渉回避縦面VS(干渉回避面)とに基づいて戻り旋回制御を実行する。
【0072】
また、操作指令信号生成部626は、干渉回避面が、旋回中心を通る旋回軸120Cと干渉回避点EVPとを含む干渉回避縦面VSである場合に、戻り旋回制御の開始時から干渉回避縦面VSを通過するまでの間、バケット133のバケットピン133Pの高さ(作業具の所定の高さ)を干渉回避点EVPの高さ以上とする。
【0073】
また、操作指令信号生成部626は、干渉回避面を境界とする第1領域と第2領域の一方において作業機130の姿勢の制御と旋回体120の旋回の制御とを組み合わせて実行し、他方において旋回体120の旋回の制御のみを実行する。
【0074】
また、操作指令信号生成部626は、開始指示受付部624が、積込旋回自動開始スイッチ1432の操作を積込旋回制御の開始指示として受け付けた場合、積込旋回制御を実行し、戻り旋回自動開始スイッチ1433の操作を戻り旋回制御の開始指示として受け付けた場合、戻り旋回制御を実行する。本実施形態において、操作指令信号生成部626は、作業具であるバケット133を目標位置へと移動させるための操作指令信号を生成して出力する。その際、操作指令信号生成部626は、バケット133を荷下ろしの目標位置に対応する第1目標点へ移動させる第1旋回制御またはバケット133を荷積みの目標位置に対応する第2目標点へ移動させる第2旋回制御を行うための操作指令信号を生成して出力する。
【0075】
図31は、操作指令信号生成部626の動作例を示す。
図31に示す動作は、自動開始スイッチ1432が操作された後、旋回方向と旋回モードが設定された場合に開始される。
図31に示す処理が開始されると、操作指令信号生成部626は、旋回モードが積込旋回に設定されているか否かを判定する(ステップS901)。旋回モードが積込旋回に設定されている場合(ステップS901:YES)、操作指令信号生成部626は、設定された旋回方向で、干渉回避点まで旋回制御および作業機制御を複合的に実行し(ステップS902)、干渉回避点通過後は、積込旋回目標点まで旋回制御を単独で実行し(ステップS903)、
図31に示す処理を終了する。
【0076】
旋回モードが積込旋回に設定されていない場合(ステップS901:NO)、操作指令信号生成部626は、開始高さが干渉回避点高さ以上であるか否かを判定する(ステップS904)。開始高さが干渉回避点高さ以上でない場合(ステップS904:NO)、操作指令信号生成部626は、干渉回避点高さまで作業機制御を単独で実行する(ステップS907)。ステップ907の後、または、開始高さが干渉回避点高さ以上である場合(ステップS904:YES)、操作指令信号生成部626は、設定された旋回方向で、干渉回避縦面(VS)まで旋回制御を単独で実行し(ステップS905)、干渉回避点通過後は、戻り旋回目標点(戻り旋回目標姿勢)まで旋回制御および作業機制御を複合的に実行して(ステップS906)、
図31に示す処理を終了する。
【0077】
(作用・効果)
本実施形態によれば、自動旋回制御において旋回方向を自動で決定できたりする。したがって、本実施形態によれば、自動旋回制御において、使い勝手を向上させることができる。
【0078】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、操作装置143と制御装置61の一部の構成等を遠隔地に設置し、遠隔地にてオペレータがモニタの画面を見ながら無線通信を介して作業機130や旋回体120を制御するようにした遠隔操作システムであってもよい。また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【0079】
[付記]
実施形態に記載の制御装置61は次のように把握することができる。
【0080】
(1)本開示の第1の態様に係る制御装置は、旋回中心周りに旋回する旋回体と、作業具を有し前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える作業機械の制御装置であって、前記作業具を目標位置へ移動させるために前記旋回体が旋回する方向を設定する旋回方向設定部を備える。
【0081】
(2)本開示の第2の態様に係る制御装置は、(1)の制御装置であって、積込対象との干渉を回避するための干渉回避点を設定する基準点設定部を備え、前記旋回方向設定部は、前記干渉回避点を向く方向に前記旋回方向を設定する。
【0082】
(3)本開示の第3の態様に係る制御装置は、(1)または(2)の制御装置であって、前記旋回方向設定部は、上方からの平面視で運搬車両の運転室と作業具とが重ならない方向に前記旋回方向を設定する。
【0083】
(4)本開示の第4の態様に係る制御装置は、(1)~(3)の制御装置であって、前記旋回方向設定部は、旋回最小角となる方向に前記旋回方向を設定する。
【0084】
(5)本開示の第5の態様に係る制御装置は、(1)~(4)の制御装置であって、前記旋回方向設定部は、前記運搬車両の前方が前記作業機械を向く場合、旋回を実施させない。
【0085】
(6)本開示の第6の態様に係る制御装置は、(1)~(5)の制御装置であって、前記作業具を目標位置へと移動させるための操作指令信号を生成して出力する操作指令信号生成部を備え、前記操作指令信号生成部は、前記作業具を荷下ろしの前記目標位置に対応する第1目標点へ移動させる第1旋回制御または前記作業具を荷積みの前記目標位置に対応する第2目標点へ移動させる第2旋回制御を行うための操作指令信号を生成する。
【符号の説明】
【0086】
100…作業機械、110…走行体、120…旋回体、130…作業機、133…バケット、140…運転室、143D…表示入力装置、60…制御システム、61…制御装置、622…基準点設定部、623…旋回方向設定部、624…開始指示受付部、626…操作指令信号生成部(制御部)