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特開2024-144804水位調整管、落水口および水管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144804
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水位調整管、落水口および水管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
A01G25/00 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056925
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】竹村 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 道浩
(57)【要約】
【課題】水位調整機能を確保しつつ田んぼダム化すること。
【解決手段】圃場の落水口20に用いられる水位調整管22であって、水位調整管22の側面に、水位調整管22を径方向に貫通するオリフィス22bが設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の落水口に用いられる水位調整管であって、
前記水位調整管の側面に、前記水位調整管を径方向に貫通するオリフィスが設けられている、水位調整管。
【請求項2】
前記オリフィスの上端は、前記水位調整管の上端に位置している、請求項1に記載の水位調整管。
【請求項3】
前記オリフィスの周方向の大きさは、下方から上方に向かうに従い大きくなる、請求項1に記載の水位調整管。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の水位調整管を備える、落水口。
【請求項5】
前記オリフィスを径方向の外側から覆うスクリーンを更に備える、請求項4に記載の落水口。
【請求項6】
請求項4に記載の落水口を含む、水管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水位調整管、落水口および水管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載された水管理システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-183293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の水管理システムにおいて、水位調整機能を確保しつつ田んぼダム化が望まれている。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、水位調整機能を確保しつつ田んぼダム化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の一態様に係る水位調整管は、圃場の落水口に用いられる水位調整管であって、前記水位調整管の側面に、前記水位調整管を径方向に貫通するオリフィスが設けられている。
【0007】
水位調整管の側面に、水位調整管を径方向に貫通するオリフィスが設けられている。したがって、圃場の水がオリフィスから水位調整管内に流れ込んで落水される。よって、例えば、雨が降っていないときや、雨が降っていても降雨量が少ないとき等には、圃場の水位がオリフィスの下端の高さ位置に保たれる。一方、例えば豪雨時などには、降雨量が、オリフィスからの落水量よりも多くなる。すると、圃場の水位が、オリフィスの下端の高さ位置から徐々に上がり、圃場に雨水が貯留される。なおこのとき、水位が上昇することで、圃場の水面下に位置するオリフィスの流路断面積が徐々に大きくなり、水位調整管内にオリフィスから流れ込む水の量が徐々に多くなる。その後、例えば、圃場の水位が、水位調整管の上端まで上昇すると、圃場の水が、オリフィスだけでなく、水位調整管の上端の開口からも水位調整管内に流れ込む。よって、圃場からの落水量が多くなる。その結果、圃場の水位の更なる上昇が抑えられる。
以上より、この水位調整管によれば、水位調整機能を確保しつつ田んぼダム化することができる。
【0008】
<2>上記<1>に係る水位調整管では、前記オリフィスの上端は、前記水位調整管の上端に位置している構成を採用してもよい。
【0009】
オリフィスの上端が、水位調整管の上端に位置している。よって、圃場の水位がオリフィスの下端の高さ位置から上昇する過程で、水位が水位調整管の上端の高さ位置に至るまで、圃場の水面下に位置するオリフィスの流路断面積を徐々に大きくすることができる。
【0010】
<3>上記<1>または<2>に係る水位調整管では、前記オリフィスの周方向の大きさは、下方から上方に向かうに従い大きくなる構成を採用してもよい。
【0011】
オリフィスの周方向の大きさが、下方から上方に向かうに従い大きくなる。よって、圃場の水位がオリフィスの下端の高さ位置から上昇する過程で、水位が高くなるほど、水位が単位高さ上昇する度に増加するオリフィスの流路断面積の大きさを大きくすることができる。
【0012】
<4>本発明の一態様に係る落水口は、上記<1>から<3>のいずれか1項に係る水位調整管を備える。
【0013】
<5>上記<4>に係る落水口では、前記オリフィスを径方向の外側から覆うスクリーンを更に備える構成を採用してもよい。
【0014】
スクリーンが、オリフィスを径方向の外側から覆う。よって、例えば、水面を浮遊するゴミがオリフィスに到達するのをスクリーンによって規制すること等ができる。その結果、例えば、オリフィスにゴミが詰まるのを効果的に抑えること等ができる。
【0015】
<6>本発明の一態様に係る水管理システムは、上記<4>または<5>に係る落水口を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水位調整機能を確保しつつ田んぼダム化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る水管理システムの断面図である。
図2図1に示す水管理システムを構成する落水口の正面図である。
図3図2に示す落水口の斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る水管理システムの断面図である。
図5図4に示す水管理システムを構成する落水口の正面図である。
図6図4に示す落水口を構成するスクリーンの斜視図である。
図7図6に示すスクリーンの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、図1から図3を参照し、本発明の第1実施形態に係る水管理システム10を説明する。
水管理システム10は、圃場11の水量(水位)を管理する。水管理システム10Aは、例えば、通常時には、圃場11を第1の水位11aとなるように、圃場11の水量を管理する。第1の水位11aは、圃場11の田面11bよりも高い。水管理システム10Aは、例えば、豪雨時には、圃場11を第2の水位11cとなるように、圃場11の水量を管理する。第2の水位11cは、第1の水位11aよりも高い。
【0019】
水管理システム10は、図示しない取水口と、落水口20と、を備えている。取水口は、図示しない取水路から圃場11に取水する。落水口20は、圃場11から排水路12に落水(排水)する。例えば、取水口からの取水量と、落水口20からの落水量(排水量)と、を調整すること等により、水管理システム10は、圃場11の水量を管理する。
【0020】
落水口20は、圃場11の周縁に配置されている。落水口20と排水路12とは、配管15を通して接続されている。配管15は、縦管16と、エルボ17と、横管18と、を備えている。縦管16、エルボ17、横管18は、落水口20から排水路12に向けてこの順に配置されている。
【0021】
落水口20は、マス21と、水位調整管22と、パッキン23と、を備えている。マス21は、底壁24と、周壁25と、接続口26と、を備えている。底壁24は、圃場11の水面下に配置されている。底壁24の高さ位置は、圃場11の田面11bの高さ位置よりも低い。周壁25は、底壁24の周縁から上方に延びている。周壁25の上端は、田面11bよりも上方に位置している。底壁24および周壁25は、マス21の内部空間を形成する。
【0022】
周壁25は、圃場11に向けて開口している。周壁25には、圃場11に向けて開口する開口25aが設けられているともいえる。マス21の内部空間は、開口25aを通して圃場11に連通している。以下、落水口20において、周壁25が開口している方向を前方という。落水口20において、マス21を挟んで前方の反対側(畦畔側)を後方という。
【0023】
接続口26は、底壁24に設けられている。接続口26は、管状である。接続口26は、底壁24から下方に延びている。接続口26の上端の開口は、マス21の内部空間に開口している。接続口26は、配管15に接続されている。接続口26の下端は、縦管16内に嵌合されている。
【0024】
水位調整管22の軸線は、上下方向に延びている。水位調整管22は、マス21に取り付けられている。水位調整管22は、マス21に対して上下動可能である。図示の例では、水位調整管22は、接続口26内に上下摺動可能に嵌合されている。水位調整管22の上端には、ハンドル22aが設けられている。作業者は、例えば、ハンドル22aを掴んで水位調整管22を上下動させる。ただし、ハンドル22aはなくてもよい。
【0025】
パッキン23は、マス21と水位調整管22との間をシールする。パッキン23は、マス21の内部空間の水が、マス21と水位調整管22との間を通して配管15に漏出することを規制する。パッキン23は、底壁24に設けられている。パッキン23は、環状である。パッキン23内には、水位調整管22が上下摺動可能に嵌合されている。
【0026】
そして本実施形態では、水位調整管22の側面に、オリフィス22bが設けられている。オリフィス22bは、水位調整管22を径方向に貫通している。オリフィス22bは、水位調整管22のうち、前方を向く部分に設けられている。オリフィス22bは、水位調整管22から前方に向けて開口している。
【0027】
オリフィス22bの上端は、水位調整管22の上端に位置している。オリフィス22bの下端は、水位調整管22における上下方向の中央よりも上方に位置している。オリフィス22bの下端は、田面11bよりも上方に位置している。オリフィス22bは、上下方向に連続して延びている。オリフィス22bは、水位調整管22の上端から下方に向けて連続して延びている。
【0028】
オリフィス22bの周方向の大きさは、下方から上方に向かうに従い大きくなる。オリフィス22bは、前方から見た正面視において、下方に向けて凸となる三角形状である。オリフィス22bは、前記正面視において周方向に対称である。
【0029】
なお図示の例では、オリフィス22bは、第1部分22b1と、第2部分22b2と、を含む。第1部分22b1は、第2部分22b2よりも下方に位置している。第1部分22b1は、オリフィス22bの下部を構成している。第2部分22b2は、オリフィス22bの上部を構成している。第1部分22b1と第2部分22bとでは、上下方向の単位長さあたりにおける周方向の大きさの変化量が異なっている。第1部分22b1の前記変化量は、第2部分22b2の前記変化量よりも小さい。ただし、前記変化量がオリフィス22bの上下方向の全長にわたって同等であってもよい。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る水管理システム10によれば、水位調整管22の側面に、水位調整管22を径方向に貫通するオリフィス22bが設けられている。したがって、圃場11の水Wがオリフィス22bから水位調整管22内に流れ込んで落水される。よって、例えば、雨が降っていないときや、雨が降っていても降雨量が少ないとき等には、圃場11の水位がオリフィス22bの下端の高さ位置に保たれる(すなわち、オリフィス22bの下端の高さ位置が、前述した第1の水位11aとなる)。一方、例えば豪雨時などには、降雨量が、オリフィス22bからの落水量よりも多くなる。すると、圃場11の水位が、オリフィス22bの下端の高さ位置から徐々に上がり、圃場11に雨水が貯留される。なおこのとき、水位が上昇することで、圃場11の水面下に位置するオリフィス22bの流路断面積が徐々に大きくなり、水位調整管22内にオリフィス22bから流れ込む水量が徐々に多くなる。その後、例えば、圃場11の水位が、水位調整管22の上端まで上昇すると、圃場11の水Wが、オリフィス22bだけでなく、水位調整管22の上端の開口からも水位調整管22内に流れ込む。よって、圃場11からの落水量が多くなる。その結果、圃場11の水位の更なる上昇が抑えられる(すなわち、水位調整管22の上端の高さ位置が、前述した第2の水位11cとなる)。
以上より、この水位調整管22によれば、水位調整機能を確保しつつ田んぼダム化することができる。
【0031】
オリフィス22bの上端が、水位調整管22の上端に位置している。よって、圃場11の水位がオリフィス22bの下端の高さ位置から上昇する過程で、水位が水位調整管22の上端の高さ位置に至るまで、圃場11の水面下に位置するオリフィス22bの流路断面積を徐々に大きくすることができる。
【0032】
オリフィス22bの周方向の大きさが、下方から上方に向かうに従い大きくなる。よって、圃場11の水位がオリフィス22bの下端の高さ位置から上昇する過程で、水位が高くなるほど、水位が単位高さ上昇する度に増加するオリフィス22bの流路断面積の大きさを大きくすることができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る水管理システム10Aを、図4から図6を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0034】
図4および図5に示すように、水管理システム10Aは、落水口20が、スクリーン30を更に備えている。スクリーン30は、オリフィス22bを径方向の外側から覆う。本実施形態では、スクリーン30は、オリフィス22bを前方から覆う。図示の例では、スクリーン30は、板状である。スクリーン30には、接続部材31が設けられている。接続部材31は、スクリーン30から後方に向けて突出している。接続部材31は、マス21に接続される。スクリーン30は、接続部材31を介してマスに接続される。
【0035】
スクリーン30の上下方向の大きさは、オリフィス22bの上下方向の大きさよりも大きい。スクリーン30の上下方向の大きさは、水位調整管22の上下方向の大きさよりも小さく、マス25の上下方向の大きさよりも小さく、開口25aの上下方向の大きさよりも小さい。スクリーン30は、マス25の上部に配置されている。その結果、スクリーン30は、オリフィス22b(水位調整管22の上部)を前方から覆うものの、水位調整管22の下部は前方から覆っていない。言い換えると、マス25の内部空間は、スクリーン30の下部に位置する開口25aを通して圃場11に連通している。したがって、スクリーン30によってオリフィス22bが前方から覆われた状態であっても、圃場11の水Wは落水可能である。
【0036】
なおスクリーン30は、例えば図6に示す変形例に係るスクリーン30Aのように、格子状であってもよい。この場合、スクリーン30Aそのものが通水性を具備する。よって、スクリーン30Aの下方に、通水性を確保するための開口25aが不要となる。そのため、変形例に係るスクリーン30Aは、実施形態に係るスクリーン30よりも、上下方向に大きくてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る水管理システム10Aによれば、スクリーン30が、オリフィス22bを径方向の外側から覆う。よって、例えば、水面を浮遊するゴミがオリフィス22bに到達するのをスクリーン30によって規制すること等ができる。その結果、例えば、オリフィス22bにゴミが詰まるのを効果的に抑えること等ができる。
【0038】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0039】
例えば、オリフィス22bの上端は、水位調整管22の上端に位置していなくてもよい。例えば、オリフィス22bの上端が、水位調整管22の上端より下方に位置していてもよい。
オリフィス22bの周方向の大きさが、下方から上方に向かうに従い大きくなくてもよい。例えば、オリフィス22bの周方向の大きさが、上下方向の全長にわたって同等であってもよい。
【0040】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10、10A 水管理システム
11 圃場
20 落水口
22 水位調整管
22b オリフィス
30、30A スクリーン
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7