(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144811
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ガソリン製造装置
(51)【国際特許分類】
C10L 1/06 20060101AFI20241004BHJP
C10L 1/182 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C10L1/06
C10L1/182
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056940
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】新井 琢真
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013CD02
(57)【要約】
【課題】再生可能燃料としてのガソリンを効率的に製造する。
【解決手段】ガソリン製造装置100は、所定のオレフィン含有量となるように、オレフィンを含有するFTナフサと、オレフィンを含有しないFTナフサと、を混合する混合器24を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のオレフィン含有量となるように、オレフィンを含有するFTナフサと、オレフィンを含有しないFTナフサと、を混合する混合器を備えることを特徴とするガソリン製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガソリン製造装置において、
FT合成されたFT粗油を分留して得られた粗ナフサを、水素化することなく、前記オレフィンを含有するFTナフサとして前記混合器に供給する第1供給部と、
前記粗ナフサを、水素化し、前記オレフィンを含有しないFTナフサとして前記混合器に供給する第2供給部と、をさらに備えることを特徴とするガソリン製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガソリン製造装置において、
前記第1供給部は、前記粗ナフサに酸化防止剤を添加した上で、前記オレフィンを含有するFTナフサとして前記混合器に供給することを特徴とするガソリン製造装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガソリン製造装置により製造され、
ナフサ含有量が50%以上であり、
オレフィン含有量が10%以上、かつ、25%以下であり、
エタノール含有量が20%以下であることを特徴とするガソリン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能燃料としてのガソリンを製造するガソリン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、二酸化炭素と水素とから、ガソリン等の炭化水素を製造するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。上記特許文献1記載の装置では、二酸化炭素と水素とを反応させて得られた、一酸化炭素と二酸化炭素と水素と水とを含む混合ガスから水を除去し、メタノールを経由して炭素数が2以上の炭化水素を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の装置では、メタノールを経由して炭化水素を製造するが、メタノールには毒性があり、ガソリン等の燃料として利用する場合にはメタノールの全量を変換する必要があるため、多くのエネルギーを要し、効率的に製造することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様であるガソリン製造装置は、所定のオレフィン含有量となるように、オレフィンを含有するFTナフサと、オレフィンを含有しないFTナフサと、を混合する混合器を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、再生可能燃料としてのガソリンを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】再生可能エネルギーを利用して製造される再生可能燃料について説明するための図。
【
図2】オクタン価向上剤について説明するための図。
【
図3A】本発明の実施形態に係るガソリン製造装置の分留部の構成の一例を示すブロック図。
【
図3B】本発明の実施形態に係るガソリン製造装置の分留部の構成の別の例を示すブロック図。
【
図4】
図3Aおよび
図3Bの第1蒸留塔で分留される粗ナフサのオクタン価について説明するための図。
【
図5】本発明の実施形態に係るガソリン製造装置の混合部の構成の一例を示すブロック図。
【
図6】本発明の実施形態に係るガソリン製造方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図6を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係るガソリン製造装置は、再生可能電力を用いたFT(Fischer-Tropsch)合成により得られたFT粗油をFTナフサ、FT灯油、FT軽油等に分留し、このうちのFTナフサから再生可能燃料としてのガソリンを製造する。
【0009】
地球の平均気温は、大気中の温室効果ガスにより、生物に適した温暖な状態に保たれている。具体的には、太陽光で暖められた地表面から宇宙空間へと放射される熱の一部を温室効果ガスが吸収し、地表面へと再放射することで、大気が温暖な状態に保たれている。このような大気中の温室効果ガスの濃度が増加すると、地球の平均気温が上昇する(地球温暖化)。
【0010】
温室効果ガスの中でも地球温暖化への寄与が大きい二酸化炭素の大気中における濃度は、植物や化石燃料として地上や地中に固定された炭素と、二酸化炭素として大気中に存在する炭素とのバランスによって決定される。例えば、植物の生育過程での光合成により大気中の二酸化炭素が吸収されると大気中の二酸化炭素濃度が減少し、化石燃料の燃焼により二酸化炭素が大気中に放出されると大気中の二酸化炭素濃度が増加する。地球温暖化を抑制するには、化石燃料を太陽光、風力、水力、地熱、あるいはバイオマス等の再生可能エネルギーで代替し、炭素排出量を低減することが必要となる。
【0011】
図1は、このような再生可能エネルギーを利用して製造される再生可能燃料について説明するための図である。
図1に示すように、太陽光発電や風力発電、水力発電、地熱発電等により再生可能電力が生成され、再生可能電力により水の電気分解が行われて再生可能水素が生成される。さらに、再生可能水素と、工場排ガス等から回収された二酸化炭素とを利用し、FT合成やメタノール合成により再生可能燃料が生成される。メタノールには毒性があるため、メタノールを経由してガソリンを製造する場合には、メタノールの全量を変換する必要があり、多くのエネルギーを要する。
【0012】
FT合成により得られるFT粗油には、重合反応であるFT合成プロセスの原理上、多様な成分が含まれる。このようなFT粗油は、沸点範囲に応じて分留され、FT軽油、FT灯油、FTナフサ等に分離される。このうち、FT軽油はディーゼルエンジン用の燃料として、FT灯油はジェットエンジン用の燃料として、そのまま利用することができる。
【0013】
FTナフサには、主成分として炭素数が5~9程度のノルマルパラフィンが含まれる。また、FT合成プロセスに用いられる触媒や反応温度、反応時間等に応じた含有割合で、副成分としてオレフィンが含まれる。このようなFTナフサは、蒸気圧特性(気化特性)がガソリン規格に適合するため、ガソリン基材として好適である。一方、FTナフサは、オクタン価(リサーチ法オクタン価)が50~80程度とガソリン規格(90程度)より低く、そのままガソリンエンジン用の燃料として利用するとノッキングが発生し、エンジンの燃焼性能を損なうおそれがある。
【0014】
従来、原油の分留で得られるナフサは、一部をイソパラフィンや芳香族炭化水素に接触改質するとともに、原油の分留で得られる重油成分を接触分解して得たオレフィンやアルキレーションして得たアルキレートと混合することで、オクタン価を向上させていた。しかしながら、再生可能燃料を製造するためのFT合成は、FT灯油等の収率が高くなる条件で行われるため、FT粗油には重油成分がほとんど含まれず、重油成分を接触分解して得たオレフィン等をFTナフサに混合してオクタン価を向上させることが難しい。また、ナフサを芳香族炭化水素に接触改質する割合を増やす場合、効率的にオクタン価を向上させることが難しい。
【0015】
図2は、オクタン価向上剤について説明するための図であり、イソオクタンとノルマルヘプタンとを体積割合65:35で混合したオクタン価65のPRF(Primary Reference Fuel)65に各種のオクタン価向上剤を混合して得られた混合燃料のオクタン価の測定結果の一例を示す。
図2に示すように、オクタン価向上剤としてトルエン(芳香族炭化水素)を混合する場合は、エタノールやジイソブチレン(オレフィン)を混合する場合よりも、オクタン価をガソリン規格(90程度)まで向上するために必要な混合量が多くなる。
【0016】
炭化水素の燃焼反応は、OHラジカルが生成、消費されることで進行する連鎖反応であり、単体で燃焼させる場合には、水素原子の引き抜きが困難でOHラジカルが生成し難い炭化水素の方が、初期の燃焼反応が抑制され、オクタン価が高くなる。例えば、直鎖のノルマルヘプタンよりも側鎖を有するイソオクタンの方が高オクタン価となる。
【0017】
オレフィンは、二重結合を1つ有する不飽和炭化水素であり、炭素数が3以上のオレフィンは、アリル基(-CH2CH=CH2)を有する。アリル基の二重結合に隣接する炭素原子と水素原子との結合エネルギーは低く、水素原子が引き抜かれやすい。このようなオレフィンをオクタン価向上剤として炭化水素基材に混合すると、炭化水素基材の初期の燃焼反応で生じたOHラジカルが、オレフィンのアリル基から引き抜かれた水素原子と優先的に反応することで消費され、燃焼反応(連鎖反応)が抑制される。また、オレフィン自身は、アリル共鳴安定化により水素原子を引き抜かれた後も安定した状態で存在し、OHラジカルを生成し難い。すなわち、オレフィンは、単体でのオクタン価が高いだけでなく、炭化水素基材に混合すると、炭化水素基材の初期の燃焼反応で生じたOHラジカルを消費することで燃焼反応を抑制し、オクタン価を向上させる効果がある(相乗効果)。
【0018】
このため、ノルマルパラフィンを主成分とするFTナフサ基材にオレフィンを混合すると、相乗効果により、両者のオクタン価および混合比に応じて予測される以上の値までオクタン価が向上する。一方、FTナフサ基材にトルエンを混合しても、両者のオクタン価および混合比に応じて予測される値までしかオクタン価が向上しない。そこで、本実施形態では、オレフィンによるオクタン価向上相乗効果を利用することで、再生可能燃料としてのガソリンを効率的に製造することができるよう、以下のようにガソリン製造装置を構成する。
【0019】
図3Aおよび
図3Bは、本発明の実施形態に係るガソリン製造装置(以下、装置)100の分留部10,10Aの構成の一例を示すブロック図である。
図3Aに示すように、分留部10は、第1蒸留塔11と、酸化防止処理部12と、水素化処理部13,14と、第2蒸留塔15とを有する。第1蒸留塔11には、トウモロコシ等のバイオマスからバイオエタノールを生成するときの副生成物であるCO
2と、再生可能エネルギーによる水の電気分解で得られた水素とからFT合成された、再生可能燃料としてのFT粗油が供給される。
【0020】
第1蒸留塔11では、FT粗油が、沸点150℃以下の、オレフィンを含有する粗ナフサ(炭素数5~9)と、沸点150℃~360℃の粗中間留分(炭素数10~21)と、沸点360℃以上の粗ワックス分(炭素数22以上)とに分留される。粗ナフサは、酸化防止処理部12に供給され、粗中間留分は、水素化処理部13に供給され、粗ワックス分は、水素化処理部14に供給される。
【0021】
酸化防止処理部12は、第1蒸留塔11に近接して設けられ、第1蒸留塔11で分留された直後の粗ナフサにBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等の酸化防止剤を極少量(数ppm程度)添加し、貯留部21(
図5)に供給する。酸化防止処理部12は、例えば、第1蒸留塔11から出た粗ナフサの蒸気を凝縮する凝縮器内に設けることができる。
【0022】
従来、原油を分留したナフサ留分に対しては、先ず水素化処理が行われ、その後、一部をイソパラフィンや芳香族炭化水素に接触改質するとともに、重油留分を接触分解して得たオレフィン等を混合することで、オクタン価を向上させていた。このとき、分留直後のナフサ留分に含まれていたオレフィンが水素化(付加反応)によりパラフィンに変換されることで、ナフサ留分のオクタン価が低下し、その分まで補うように、接触改質や重油留分経由のオレフィンの混合によってオクタン価を向上させていた。
【0023】
オレフィンを含有する粗ナフサ留分を水素化することなく利用することで、効率的にオクタン価を向上することができる。また、分留直後の粗ナフサ留分に酸化防止剤を添加することで、オレフィンの酸化を防止し、オレフィンの減少によるオクタン価の低下を防止することができる。
【0024】
水素化処理部13,14は、それぞれ第1蒸留塔11で分留された粗中間留分および粗ワックス分を水素化し、第2蒸留塔15に供給する。水素化処理部13,14では、再生可能水素が用いられる。
【0025】
第2蒸留塔15では、水素化された粗中間留分および粗ワックス分が、オレフィンを含有しないFTナフサと、FT灯油と、FT軽油と、ワックス分とに分留される。第2蒸留塔15から得られた留分のうち、オレフィンを含有しないFTナフサは、貯留部22(
図5)に供給され、ワックス分は、水素化処理部14に供給され、再度水素化される。
【0026】
図3Bに示すように、分留部10Aは、
図3Aの分留部10の構成に加え、第1蒸留塔11で分留された粗ナフサの一部を水素化し、貯留部22(
図5)に供給する水素化処理部16を有する。この場合、例えば、第1蒸留塔11から出た粗ナフサの蒸気を凝縮する凝縮器を2つ設け、一方の凝縮器内に酸化防止処理部12を設けるとともに、他方の凝縮器から出た液状の粗ナフサを水素化処理部16に供給する。水素化処理部16でも再生可能水素が用いられる。
【0027】
図4は、第1蒸留塔11で分留される粗ナフサのオクタン価について説明するための図であり、炭素数5~9の典型的なオレフィンのオクタン価を示す。
図4に示すように、炭素数5~9の典型的なオレフィンのオクタン価の平均値は、93程度であり、ナフサ全体のオクタン価(50~80程度)よりも高い。したがって、粗ナフサ留分に含まれる低沸点の低級オレフィン(炭素数5~9)のオクタン価は、ナフサ全体のオクタン価より高く、このようなオレフィンの混合割合を増やすことで、相乗効果の有無にかかわらず、オクタン価を向上することができる。
【0028】
図5は、装置100の混合部20の構成の一例を示すブロック図である。
図3A、
図3B、
図5に示すように、装置100は、FT粗油を分留し、必要な処理を行う分留部10,10Aと、分留部10,10Aで分留、処理された、オレフィンを含有するFTナフサとオレフィンを含有しないFTナフサとを混合する混合部20とを備える。
【0029】
図5に示すように、混合部20は、貯留部21,22,23と、混合器24,27と、オレフィン含有量・オクタン価測定部25と、接触改質部26と、オクタン価測定部28とを有する。貯留部21には、酸化防止処理部12で酸化防止剤が添加された、オレフィンを含有するFTナフサが供給され、貯留される。貯留部22には、第2蒸留塔15で分留された、オレフィンを含有しないFTナフサと、水素化処理部16で水素化された、オレフィンを含有しないFTナフサとが供給され、貯留される。貯留部23には、トウモロコシ等のバイオマスから生成されたバイオエタノールが貯留される。
【0030】
貯留部21,22と混合器24とは、配管R10を介して接続され、配管R10を介して貯留部21から混合器24にオレフィンを含有するFTナフサが供給され、貯留部22から混合器24にオレフィンを含有しないFTナフサが供給される。貯留部21からのオレフィンを含有するFTナフサと、貯留部22からのオレフィンを含有しないFTナフサとは、配管R10内および混合器24において混合され、混合燃料となる。
【0031】
貯留部21と混合器24とを接続する配管R11には、貯留部21から混合器24に供給され、混合燃料の一部となる、オレフィンを含有するFTナフサの供給量を調整する調整弁21aが設けられる。貯留部22と混合器24とを接続する配管R12には、貯留部22から混合器24に供給され、混合燃料の一部となる、オレフィンを含有しないFTナフサの供給量を調整する調整弁22aが設けられる。調整弁21a,22aは、手動で操作されてもよく、コンピュータ29により制御されてもよい。以下では、酸化防止処理部12(
図3A、
図3B)、貯留部21、および調整弁21aを、オレフィンを含有するFTナフサを混合器24に供給する第1供給部と称することがある。また、水素化処理部16(
図3B)、貯留部22、および調整弁22aを、オレフィンを含有しないFTナフサを混合器24に供給する第2供給部と称することがある。
【0032】
貯留部21,22と混合器24とを接続する配管R10には、混合燃料のオレフィン含有量およびオクタン価を測定するオレフィン含有量・オクタン価測定部25が設けられる。オレフィン含有量・オクタン価測定部25は、近赤外分光分析計等の測定器を有し、配管R10を流れる混合燃料のオレフィン含有量およびオクタン価を測定し、測定結果をディスプレイや調整弁制御用のコンピュータに出力する。オレフィン含有量・オクタン価測定部25では、配管R10を流れる混合燃料を採取し、燃焼試験によりオクタン価を測定してもよい。
【0033】
図2に示すように、破線で示される基材と添加剤とのオクタン価および混合比に応じて予測されるオクタン価と、実線で示される混合燃料の実際のオクタン価との差ΔRONが大きいほど、FTナフサ基材にオレフィンを混合するときの相乗効果が大きい。FTナフサ基材にオレフィンを混合するときの相乗効果は、オレフィンの混合割合が50容量%のときに最大となるため、効率的に混合燃料のオクタン価を向上する観点では、オレフィンの混合割合を50容量%以下とすることが好ましい。また、オレフィンの混合割合が過剰になると不揮発性のガム分が生成するため、オレフィンの混合割合を10~25容量%程度とすることが好ましい。
【0034】
調整弁21a,22aを操作し、オレフィン含有量・オクタン価測定部25で測定されるオレフィン含有量が10~25容量%程度となる範囲で、オクタン価がガソリン規格(90程度)相当となるように、オレフィンを含有するFTナフサおよびオレフィンを含有しないFTナフサの供給量を調整する。これにより、オクタン価等の性状に幅のあるFTナフサでもガソリン規格相当のオクタン価に調整することができる。また、ナフサとオレフィンとの混合による相乗効果により、効率的にオクタン価を向上することができる。
【0035】
貯留部23と混合器24とは、配管R20を介して接続され、配管R20を介して貯留部23から混合器24にバイオエタノールが供給される。貯留部23からのバイオエタノールは、混合器24において、オレフィンを含有するFTナフサとオレフィンを含有しないFTナフサとの混合燃料に添加され、混合される。貯留部23と混合器24とを接続する配管R20には、貯留部23から混合器24に供給されるバイオエタノールの供給量を調整する調整弁23aが設けられる。調整弁23aは、手動で操作されてもよく、コンピュータ29により制御されてもよい。
【0036】
貯留部22と混合器24とは、さらに、配管R30を介して接続される。配管R30には、接触改質部26が設けられ、配管R30を介して貯留部22から接触改質部26にオレフィンを含まないFTナフサが供給され、配管R30を介して接触改質部26から混合器24に接触改質後の改質ガソリンが供給される。接触改質部26は、オレフィンを含まないFTナフサを接触改質(環化脱水素反応)し、トルエン等の芳香族炭化水素を含む改質ガソリンを生成する。貯留部22に貯留されたオレフィンを含まないFTナフサのうち、例えば蒸留により分離されたオクタン価の低い重質ナフサのみを接触改質部26に供給し、改質してもよい。貯留部22と接触改質部26との間の配管R30には、貯留部22から接触改質部26に供給されるオレフィンを含まないFTナフサの供給量、すなわち接触改質部26で改質されて混合器24に供給される改質ガソリンの供給量を調整する調整弁22bが設けられる。調整弁22bは、手動で操作されてもよく、コンピュータ29により制御されてもよい。
【0037】
オレフィン含有量・オクタン価測定部25で測定された混合燃料のオクタン価がガソリン規格に到達しない場合、調整弁23a,22bを操作し、混合燃料のオクタン価がガソリン規格となるように、バイオエタノールおよび改質ガソリンの供給量を調整する。混合燃料に対するバイオエタノールおよび改質ガソリンの添加量は、添加前の混合燃料のオクタン価に応じて、予め試験により設定された特性マップに基づいて算出される。予め試験により設定された特性マップに基づいて適当な添加量を算出することで、バイオエタノールや改質ガソリンを過剰に添加することがなく、混合燃料中のオレフィンを過剰に希釈することがない。
【0038】
図2に示すように、FTナフサ基材にエタノールを混合するときの相乗効果も、オレフィンと同様に、混合割合が50容量%のときに最大となるため、効率的にオクタン価を向上する観点では、バイオエタノールの混合割合を50容量%以下とすることが好ましい。また、アルコール類の混合割合が過剰になると発熱量が低下するため、バイオエタノールの混合割合は、20容量%以下、好ましくは10容量%以下とする。この場合、混合燃料中のFTナフサの含有量は、50%以上となる。これにより、より確実に混合燃料のオクタン価をガソリン規格相当に調整できるとともに、ナフサとエタノールとの混合による相乗効果により、効率的にオクタン価を向上することができる。
【0039】
混合器24の下流には、配管R40を介して混合器27が接続され、混合器24でバイオエタノールおよび改質ガソリンが添加され、混合された混合燃料が、配管R40を介して、混合器27に供給される。混合器24と混合器27とを接続する配管R40には、混合燃料のオクタン価を測定するオクタン価測定部28が設けられる。オクタン価測定部28は、近赤外分光分析計等の測定器を有し、配管R40を流れる混合燃料のオクタン価を測定し、測定結果をディスプレイやコンピュータ29に出力する。オクタン価測定部28では、配管R40を流れる混合燃料を採取し、燃焼試験によりオクタン価を測定してもよい。
【0040】
接触改質部26は、さらに、配管R50を介して混合器24に接続され、接触改質部26で改質された改質ガソリンが配管R50を介して混合器27に供給される。接触改質部26と混合器27との間の配管R50には、接触改質部26から混合器27に供給される改質燃料の供給量を調整する調整弁26bが設けられる。調整弁26bは、手動で操作されてもよく、コンピュータ29により制御されてもよい。
【0041】
オクタン価測定部28で測定された混合燃料のオクタン価がガソリン規格に到達していない場合、調整弁26bを操作し、混合燃料のオクタン価がガソリン規格となるように、改質ガソリンの供給量(追加供給量)を調整する。これにより、一層確実に混合燃料のオクタン価をガソリン規格相当に調整することができる。
【0042】
図6は、本発明の実施形態に係るガソリン製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6の各ステップは、手動で行ってもよく、コンピュータ29により自動的に行ってもよい。
図6に示すように、先ずステップS1で、オレフィン含有量・オクタン価測定部25で測定された混合燃料のオレフィン含有量が上限値を超えているか否かを判定する。ステップS1で肯定されるとステップS2に進み、ステップS1で否定されるとステップS3に進む。ステップS2では、オレフィン含有量・オクタン価測定部25で測定されるオレフィン含有量が上限値になるまで、オレフィンを含有しないFTナフサの混合割合を増加させるように調整弁21a,22aを操作する。ステップS3では、予め設定された特性マップを参照し、オレフィン含有量・オクタン価測定部25で測定されたオクタン価に対応するバイオエタノールの添加量と改質ガソリンの添加量とを算出する。ステップS4では、混合燃料にステップS3で算出された添加量のバイオエタノールおよび改質ガソリンを添加するように調整弁23a,22bを操作する。次いでステップS5で、オクタン価測定部28で測定された、バイオエタノールおよび改質ガソリンを添加した混合燃料のオクタン価が目標値以上であるか否かを判定する。ステップS5で肯定されると処理を終了し、ステップS5で否定されるとステップS6に進む。ステップS6では、予め設定された特性マップを参照し、オクタン価測定部28で測定されたオクタン価に対応する改質ガソリンの添加量を算出し、算出された添加量の改質ガソリンを添加するように調整弁26bを操作する。
【0043】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)装置100は、所定のオレフィン含有量となるように、オレフィンを含有するFTナフサと、オレフィンを含有しないFTナフサと、を混合する混合器24を備える(
図5)。このように、オレフィンを含有するFTナフサとオレフィンを含有しないFTナフサとを混合し、オレフィン含有割合を調整することで、オクタン価等の性状に幅のある再生可能燃料としてのFTナフサから、所望のオクタン価のガソリンを製造することができる。このとき、ナフサとオレフィンとを混合するときの相乗効果により、効率的にオクタン価を向上することができる(
図2)。
【0044】
(2)装置100は、FT合成されたFT粗油を分留して得られた粗ナフサを、水素化することなく、オレフィンを含有するFTナフサとして混合器24に供給する第1供給部(酸化防止処理部12、貯留部21、調整弁21a)と、粗ナフサを、水素化し、オレフィンを含有しないFTナフサとして混合器24に供給する第2供給部(水素化処理部16、貯留部22、調整弁22a)とを備える(
図3B、
図5)。このように、粗ナフサに対して通常行われる水素化を行わずに混合燃料として用いることで、簡易かつ効率的にガソリンを製造することができる。
【0045】
(3)第1供給部は、粗ナフサに酸化防止剤を添加した上で、オレフィンを含有するFTナフサとして混合器24に供給する(
図3A、
図3B、
図5)。酸化安定性の極めて低い粗ナフサに対し、水素化に代えて、酸化防止剤の添加を行うことで、酸化によるオレフィンの減少を抑制し、オクタン価の低下を抑制することができる。
【0046】
(4)装置100により製造されるガソリンは、ナフサ含有量が50%以上であり、オレフィン含有量が10%以上、かつ、25%以下であり、エタノール含有量が20%以下である。このように、ナフサとオレフィン、ナフサとエタノールとを混合するときの相乗効果が得られる範囲で混合割合を定めることで、ナフサに対するオレフィンやエタノールの混合割合を低減することができる。また、エタノールよりもオレフィンを優先的に混合することで、アルコール類の添加による発熱量の低下を抑制することができる。
【0047】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【実施例0048】
[実施例1]
イソオクタンとノルマルヘプタンとを体積割合50:50で混合したオクタン価50のPRF50を52容量%、エタノールを10容量%、ジイソブチレンを18容量%、トルエンを20容量%混合して混合燃料を調製した。調製された混合燃料のオクタン価は、92.5となった。
【0049】
[実施例2]
PRF50を62容量%、エタノールを10容量%、ジイソブチレンを18容量%、トルエンを10容量%混合して混合燃料を調製した。調製された混合燃料のオクタン価は、86.5となった。
【0050】
[実施例3]
イソオクタンとノルマルヘプタンとを体積割合65:35で混合したオクタン価65のPRF65を80容量%、エタノールを10容量%、ジイソブチレンを10容量%混合して混合燃料を調製した。調製された混合燃料のオクタン価は、89.7となった。
【0051】
[実施例4]
イソオクタンとノルマルヘプタンとを体積割合80:20で混合したオクタン価80のPRF80を90容量%、エタノールを10容量%混合して混合燃料を調製した。調製された混合燃料のオクタン価は、89.4となった。
【0052】
実施例1~4では、FTナフサとして想定されるオクタン価50~80のPRFに対し、エタノール、ジイソブチレン、トルエンを適宜な割合で混合することで、ガソリン規格(90程度)相当の混合燃料を調製できることが確認された。
10,10A 分留部、11 第1蒸留塔、12 酸化防止処理部、13,14 水素化処理部、15 第2蒸留塔、16 水素化処理部、20 混合部、21,22,23 貯留部、21a,22a,22b,23a 調整弁、24 混合器、25 オレフィン含有量・オクタン価測定部、26 接触改質部、26a,26b 調整弁、27 混合器、28 オクタン価測定部、29 コンピュータ、100 ガソリン製造装置(装置)、R10~R12,R20,R30,R40,R50 配管