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特開2024-144815ポリ乳酸樹脂発泡シートおよびポリ乳酸樹脂発泡成形体
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  • 特開-ポリ乳酸樹脂発泡シートおよびポリ乳酸樹脂発泡成形体 図1
  • 特開-ポリ乳酸樹脂発泡シートおよびポリ乳酸樹脂発泡成形体 図2
  • 特開-ポリ乳酸樹脂発泡シートおよびポリ乳酸樹脂発泡成形体 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144815
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ポリ乳酸樹脂発泡シートおよびポリ乳酸樹脂発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056950
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】林 道弘
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA68N
4F074AB05
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA95
4F074BB02
4F074BC12
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA12
4F074DA23
4F074DA33
4F074DA34
(57)【要約】
【課題】成形して得られるポリ乳酸樹脂発泡成形体に対して高い圧縮強度を付与できる、ポリ乳酸樹脂発泡シートを提供する。また、そのようなポリ乳酸樹脂発泡シートを成形して得られる、高い圧縮強度を有するポリ乳酸樹脂発泡成形体を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、ポリ乳酸樹脂(P)を含むポリ乳酸樹脂組成物を発泡させてなるポリ乳酸樹脂発泡シートであって、該ポリ乳酸樹脂発泡シートを、シート表面温度が110℃±10℃になるまで加熱を行う加熱処理後の、該ポリ乳酸樹脂発泡シートのMD方向の平均気泡径dM、TD方向の平均気泡径dT、VD方向の平均気泡径dVから算出されるアスペクト比MV=dM/dVおよびアスペクト比TV=dT/dVが、いずれも1.0~2.0である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(P)を含むポリ乳酸樹脂組成物を発泡させてなるポリ乳酸樹脂発泡シートであって、
該ポリ乳酸樹脂発泡シートを、シート表面温度が110℃±10℃になるまで加熱を行う加熱処理後の、該ポリ乳酸樹脂発泡シートのMD方向の平均気泡径dM、TD方向の平均気泡径dT、VD方向の平均気泡径dVから算出されるアスペクト比MV=dM/dVおよびアスペクト比TV=dT/dVが、いずれも1.0~2.0である、
ポリ乳酸樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記ポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径が150μm~850μmである、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記加熱処理後の前記ポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径が200μm~1100μmである、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記ポリ乳酸樹脂発泡シートの見掛け密度が0.063g/cm3~0.5g/cm3である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記ポリ乳酸樹脂発泡シートの厚みが0.5mm~7mmである、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂発泡シート。
【請求項6】
前記ポリ乳酸樹脂発泡シートの連続気泡率が50%以下である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂発泡シート。
【請求項7】
前記ポリ乳酸樹脂(P)が、改質されたポリ乳酸樹脂である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂発泡シート。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかに記載のポリ乳酸樹脂発泡シートを成形して得られる、ポリ乳酸樹脂発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂発泡シートおよびポリ乳酸樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡シートは、軽量で緩衝性に優れており、多様な形状に成形加工することが容易であるため、包装材などをはじめとして各種成形品の原材料として利用されている。
【0003】
近年、樹脂発泡シートは、大量に使用された後に大量に廃棄されるため、環境に大きな負荷を与え、地球温暖化問題、資源枯渇問題、廃棄物処理問題など、様々な社会問題の要因となっている。そこで、生分解性を示し、環境負荷が小さく、比較的安価に製造できるポリ乳酸樹脂を用いた、ポリ乳酸樹脂発泡シートが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、従来のポリ乳酸樹脂発泡シートを成形して得られるポリ乳酸樹脂発泡成形体は、圧縮強度が低く、例えば、抜き加工を行うと、抜き部周辺に割れが発生しやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6971947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、成形して得られるポリ乳酸樹脂発泡成形体に対して高い圧縮強度を付与できる、ポリ乳酸樹脂発泡シートを提供することにある。また、そのようなポリ乳酸樹脂発泡シートを成形して得られる、高い圧縮強度を有するポリ乳酸樹脂発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、ポリ乳酸樹脂(P)を含むポリ乳酸樹脂組成物を発泡させてなるポリ乳酸樹脂発泡シートであって、該ポリ乳酸樹脂発泡シートを、シート表面温度が110℃±10℃になるまで加熱を行う加熱処理後の、該ポリ乳酸樹脂発泡シートのMD方向の平均気泡径dM、TD方向の平均気泡径dT、VD方向の平均気泡径dVから算出されるアスペクト比MV=dM/dVおよびアスペクト比TV=dT/dVが、いずれも1.0~2.0である。
[2]上記[1]に記載のポリ乳酸樹脂発泡シートは、平均気泡径が150μm~850μmであってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載のポリ乳酸樹脂発泡シートは、上記加熱処理後の上記ポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径が200μm~1100μmであってもよい。
[4]上記[1]から[3]までのいずれかに記載のポリ乳酸樹脂発泡シートは、見掛け密度が0.063g/cm3~0.5g/cm3であってもよい。
[5]上記[1]から[4]までのいずれかに記載のポリ乳酸樹脂発泡シートは、厚みが0.5mm~7mmであってもよい。
[6]上記[1]から[5]までのいずれかに記載のポリ乳酸樹脂発泡シートは、連続気泡率が50%以下であってもよい。
[7]上記[1]から[6]までのいずれかに記載のポリ乳酸樹脂発泡シートは、上記ポリ乳酸樹脂(P)が、改質されたポリ乳酸樹脂であってもよい。
[8]本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡成形体は、上記[1]から[7]までのいずれかに記載のポリ乳酸樹脂発泡シートを成形して得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、成形して得られるポリ乳酸樹脂発泡成形体に対して高い圧縮強度を付与できる、ポリ乳酸樹脂発泡シートを提供することができる。また、そのようなポリ乳酸樹脂発泡シートを成形して得られる、高い圧縮強度を有するポリ乳酸樹脂発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法において用いる押出機の一つの好ましい構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの製造に好適な製造装置の一つの好ましい構成を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの製造に好適な製造装置の一つの好ましい構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0011】
本明細書において、「ポリ乳酸樹脂(P)」は、「改質されたポリ乳酸樹脂」または「未改質のポリ乳酸樹脂」を意味する。本明細書においては、「ポリ乳酸樹脂(P)」と記載せずに、単に「ポリ乳酸樹脂」と記載されている場合は、未改質のポリ乳酸樹脂を意味するものとする。ここで、「未改質のポリ乳酸樹脂」とは、改質処理がなされていないポリ乳酸樹脂であり、代表的には、一般に入手可能なポリ乳酸樹脂であって、本明細書において説明する改質処理がなされたポリ乳酸樹脂ではない。
【0012】
本明細書において、「主成分として含む」とは、その含有割合が、好ましくは50質量%を超え、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0013】
本明細書において、「実質的に100質量%」とは、意図しないで混入した微量(例えば、1質量%未満)の不純物の存在は無視してもよいことを意味する表現である。
【0014】
≪≪1.ポリ乳酸樹脂発泡シート≫≫
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、本発明の実施形態による製造方法で得られる改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して得られる。
【0015】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、該ポリ乳酸樹脂発泡シートを、シート表面温度が110℃±10℃になるまで加熱を行う加熱処理後の、該ポリ乳酸樹脂発泡シートのMD方向の平均気泡径dM、TD方向の平均気泡径dT、VD方向の平均気泡径dVから算出されるアスペクト比MV=dM/dVおよびアスペクト比TV=dT/dVが、いずれも1.0~2.0であり、好ましくは1.0~1.9であり、さらに好ましくは1.0~1.8であり、特に好ましくは1.0~1.75であり、最も好ましくは1.0~1.7である。本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、上記アスペクト比MVおよび上記アスペクト比TVがいずれも上記範囲内にあることにより、成形して得られるポリ乳酸樹脂発泡成形体に対して高い圧縮強度を付与できる。上記アスペクト比MVまたは上記アスペクト比TVが上記範囲内を外れて小さすぎると、気泡が座屈し易くなり、機械的物性が低下するおそれがある。上記アスペクト比MVまたは上記アスペクト比TVが上記範囲内を外れて大きすぎると、可撓性が低下するだけでなく硬くなり過ぎてしまい、靱性が低下し、脆くなるおそれがある。MD方向の平均気泡径dM、TD方向の平均気泡径dT、VD方向の平均気泡径dVの測定方法については、後述する。
【0016】
アスペクト比MVは、VD方向(シート厚み方向)の平均気泡径dVの大きさに対するMD方向(シートの縦方向、流れ方向)の平均気泡径dMの大きさの程度を表す。アスペクト比TVは、VD方向(シート厚み方向)の平均気泡径dVの大きさに対するTD方向(シートの横方向、流れ方向と直交する方向)の平均気泡径dTの大きさの程度を表す。
【0017】
本発明者は、従来のポリ乳酸樹脂発泡シートを成形して得られるポリ乳酸樹脂発泡成形体の圧縮強度が低い原因について検討を重ねたところ、ポリ乳酸樹脂発泡成形体のVD方向の平均気泡径dVの大きさが、MD方向の平均気泡径dMおよびTD方向の平均気泡径dTの大きさに比べて、大幅に小さくなっていることに着目した。そして、ポリ乳酸樹脂発泡成形体のVD方向の平均気泡径dVの大きさを、MD方向の平均気泡径dMおよびTD方向の平均気泡径dTの大きさにできるだけ近づけることを考えて、検討を重ねた結果、アスペクト比MVおよびアスペクト比TVが上記範囲内にあると、ポリ乳酸樹脂発泡成形体の圧縮強度が向上することが判明し、本発明を完成するに至った。
【0018】
加熱処理は、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートに対して、シート表面温度が110℃±10℃になるまで加熱を行う処理であり、好ましくは、雰囲気温度が300℃に設定された加熱炉(代表的には、上下ヒーター)中で、シート表面温度が110℃±10℃になるまで加熱を行う処理である。加熱時間は、装置の仕様やシート形状などによって異なるが、代表的には、好ましくは、1秒~60分であり、より好ましくは5秒~10分であり、さらに好ましくは10秒~5分であり、特に好ましくは15秒~1分である。
【0019】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、加熱処理後の、該ポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径が、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは200μm~1100μmであり、より好ましくは300μm~1000μmであり、さらに好ましくは350μm~950μmであり、特に好ましくは400μm~900μmである。加熱処理後のポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径が上記範囲内にあると、機械的強度がより向上し得る。平均気泡径の算出方法については後述する。
【0020】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、加熱処理後の、該ポリ乳酸樹脂発泡シートのMD方向の平均気泡径dMが、本発明の効果より発現させ得る点で、好ましくは200μm~1200μmであり、より好ましくは300μm~1100μmであり、さらに好ましくは350μm~1050μmであり、特に好ましくは400μm~1000μmである。加熱処理後のポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径dMが上記範囲内にあると、機械的強度がより向上し得る。
【0021】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、加熱処理後の、該ポリ乳酸樹脂発泡シートのTD方向の平均気泡径dTが、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは400μm~1300μmであり、より好ましくは500μm~1200μmであり、さらに好ましくは550μm~1150μmであり、特に好ましくは600μm~1100μmである。加熱処理後のポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径dTが上記範囲内にあると、機械的強度がより向上し得る。
【0022】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、加熱処理後の、該ポリ乳酸樹脂発泡シートのVD方向の平均気泡径dVが、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは150μm~900μmであり、より好ましくは200μm~850μmであり、さらに好ましくは250μm~800μmであり、特に好ましくは300μm~750μmである。加熱処理後のポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径dVが上記範囲内にあると、機械的強度がより向上し得る。
【0023】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、平均気泡径が、好ましくは150μm~850μmであり、より好ましくは200μm~800μmであり、さらに好ましくは250μm~750μmであり、特に好ましくは300μm~700μmである。ポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径が上記範囲内にあると、機械的強度がより向上し得る。
【0024】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、MD方向の平均気泡径dMが、好ましくは200μm~1100μmであり、より好ましくは250μm~1050μmであり、さらに好ましくは300μm~1000μmであり、特に好ましくは350μm~950μmである。ポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径dMが上記範囲内にあると、機械的強度がより向上し得る。
【0025】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、TD方向の平均気泡径dTが、好ましくは350μm~1150μmであり、より好ましくは400μm~1100μmであり、さらに好ましくは450μm~1050μmであり、特に好ましくは500μm~1000μmである。ポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径dTが上記範囲内にあると、機械的強度がより向上し得る。
【0026】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、VD方向の平均気泡径dVが、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは125μm~650μmであり、より好ましくは150μm~600μmであり、さらに好ましくは175μm~550μmであり、特に好ましくは200μm~500μmである。ポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径dVが上記範囲内にあると、機械的強度がより向上し得る。
【0027】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの見掛け密度は、好ましくは0.063g/cm3~0.5g/cm3であり、より好ましくは0.068g/cm3~0.41g/cm3であり、さらに好ましくは0.072g/cm3~0.35g/cm3であり、特に好ましくは0.078g/cm3~0.31g/cm3である。本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの見掛け密度が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0028】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの厚みは、目的に応じて適宜設定し得る。本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの厚みは、代表的には、好ましくは0.5mm~7mmであり、より好ましくは0.5mm~5mmであり、さらに好ましくは0.7mm~5mmであり、特に好ましくは0.7mm~3mmである。ポリ乳酸樹脂発泡シートの厚みが上記下限値以上であると、形状保持性に優れ得る。ポリ乳酸樹脂発泡シートの厚みがが上記上限値以下であると、熱成形性をより向上し得る。
【0029】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの連続気泡率は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは25%以下である。上記連続気泡率の下限値は、低いほどよく、好ましくは0%以上である。本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの連続気泡率が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。連続気泡率の測定方法については後述する。
【0030】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、ポリ乳酸樹脂(P)を含むポリ乳酸樹脂組成物を発泡させてなる。
【0031】
ポリ乳酸樹脂(P)は、改質されたポリ乳酸樹脂であってもよいし、ポリ乳酸樹脂(未改質のポリ乳酸樹脂)であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
【0032】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートとしては、代表的には、ポリ乳酸樹脂(P)が改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含む実施形態Aと、ポリ乳酸樹脂(P)がポリ乳酸樹脂(未改質のポリ乳酸樹脂)を主成分として含む実施形態Bが挙げられる。
【0033】
≪1-1.実施形態Aにおけるポリ乳酸樹脂発泡シート≫
実施形態Aにおいては、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)を含むポリ乳酸樹脂組成物を発泡させてなる。
【0034】
<1-1-a.改質されたポリ乳酸樹脂>
改質されたポリ乳酸樹脂は、好ましくは、ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物を押出機中で溶融混練して得られたものである。
【0035】
ポリ乳酸樹脂は、乳酸の単独重合体であっても乳酸と他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸、多官能多糖類が挙げられる。
【0036】
ポリ乳酸樹脂を構成する乳酸は、L-体とD-体とのいずれか一方であってもよいし、L-体とD-体との両方であってもよい。すなわち、乳酸の単独重合体であるポリ乳酸樹脂は、ポリ(L-乳酸)樹脂、ポリ(D-乳酸)樹脂、および、ポリ(DL-乳酸)樹脂のいずれであってもよい。
【0037】
乳酸以外のヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸が挙げられる。
【0038】
脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0039】
脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられる。また、脂肪族多価カルボン酸は、酸無水物であってもよい。
【0040】
多官能多糖類としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロール、デンプン、アクロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガムが挙げられる。
【0041】
ポリ乳酸樹脂における、分子中の乳酸(L-体及びD-体)に由来する構造部分の含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。
【0042】
原料としてのポリ乳酸樹脂は、その少なくとも一部をリサイクル品としてもよい。
【0043】
改質剤は、ポリ乳酸樹脂を高分子量化させたり、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に架橋構造や長鎖分岐構造を持たせたりする作用を発現する。
【0044】
改質剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0045】
ポリ乳酸樹脂の高分子量化には、改質剤として、カルボジイミドなどの鎖伸長剤を採用し得る。鎖伸長剤による改質においては、アクリル系有機化合物、エポキシ系有機化合物、イソシアネート系有機化合物など、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に存在する水酸基やカルボキシル基と縮合反応させることが可能な官能基を1個以上有する化合物を用い得る。すなわち、ポリ乳酸樹脂の高分子量化は、カルボジイミドなどの鎖伸長剤を用い、アクリル系有機化合物、エポキシ系有機化合物、イソシアネート系有機化合物などをポリ乳酸樹脂に結合させることによって行い得る。
【0046】
ポリ乳酸樹脂の分子構造中に架橋構造や長鎖分岐構造を持たせるためには、例えば、改質剤として、ラジカル開始剤を採用し得る。この場合、ラジカル開始剤によってポリ乳酸樹脂どうしを反応させる。適度な反応性を有するラジカル開始剤を使ってポリ乳酸樹脂どうしを反応させると、例えば、押出機内でのポリ乳酸樹脂の分解起点が、ラジカル開始剤によって発生させたフリーラジカルによってアタックされ、その箇所が架橋点(分岐点)となって安定化され得る。このような改質がなされることで、ポリ乳酸樹脂は、熱安定性が増し、押出機を通過する際に低分子量化され難くなる。
【0047】
ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、ハロゲン分子が挙げられ、有機過酸化物が好ましい。
【0048】
有機過酸化物としては、例えば、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイドが挙げられる。
【0049】
パーオキシエステルとしては、例えば、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートが挙げられる。
【0050】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、パーメタンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、及び、t-ブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0051】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3が挙げられる。
【0052】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ジベンゾイルパーキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、及び、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイドが挙げられる。
【0053】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0054】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ブタン、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
【0055】
ケトンパーオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドが挙げられる。
【0056】
有機過酸化物による改質では、改質後のポリ乳酸樹脂に熱溶融時にゲルとなるような分子量が過大な成分を混在させたり、有機過酸化物の分解残渣による臭気の問題を発生させたりするおそれがある。このような問題の発生を抑制でき、ポリ乳酸樹脂を発泡に適した状態に改質することが容易である点において、有機過酸化物は、パーオキシエステルであることが好ましい。また、パーオキシエステルの中でも、パーオキシモノカーボネートやパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート系有機過酸化物が好ましい。さらに、パーオキシカーボネート系有機過酸化物の中でも、パーオキシモノカーボネート系有機過酸化物が好ましく、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートがより好ましい。
【0057】
有機過酸化物の使用量は、その分子量などにもよるが、本発明の効果をより発現させ得る点で、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.2質量部以上であり、さらに好ましくは0.3質量部以上である。有機過酸化物の使用量の上限値は、好ましくは2.0質量部以下であり、より好ましくは1.5質量部以下であり、さらに好ましくは1.0質量部以下である。
【0058】
ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なポリ乳酸樹脂と改質剤以外の他の成分を含んでいてもよい。ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物中の、ポリ乳酸樹脂と改質剤の合計量の含有割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~100質量%であり、さらに好ましくは90質量%~100質量%であり、特に好ましくは95質量%~100質量%である。
【0059】
ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂と改質剤と必要に応じて他の成分をあらかじめ混合していてもよい。このような混合の方法としては、例えば、タンブラー、リボンブレンダー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディゲーミキサー等の混合機を用いた混合方法が挙げられる。
【0060】
押出機としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な押出機を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、押出機としては、好ましくは二軸押出機が挙げられる。
【0061】
二軸押出機は、ストランドダイやTダイが装着されていてもよい。この場合、押し出されたストランド状やシート状の混練物を、冷却し、ペレタイザー等でカットして、ペレット化してもよい。
【0062】
二軸押出機は、造粒ダイ(ホットカットダイ)が装着されていてもよい。この場合、混練物は、押し出された直後にペレット化される。
【0063】
溶融混練の温度条件は、押出機の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。例えば、原料フィード部の温度として、好ましくは100℃~200℃に設定する。
【0064】
押出機の回転数は、押出機の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。このような回転数としては、例えば、好ましくは20rpm~800rpmである。
【0065】
改質されたポリ乳酸樹脂は、乾燥させたものであってもよい。代表的には、改質されたポリ乳酸樹脂は、ストランドダイが装着された二軸押出機から押し出されたストランド状の混練物を、冷却し、ペレタイザー等でカットして得られたペレットを乾燥させたものであってもよい。
【0066】
改質されたポリ乳酸樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な装置を用いて製造することができる。改質されたポリ乳酸樹脂は、例えば、図1に示すような製造装置を用いて製造することができる。
【0067】
図1においては、ホッパー11に投入された原料としてのポリ乳酸樹脂が二軸押出機30によって溶融混練され、ストランドダイ3から押し出されたストランド状の混練物が冷却装置6で冷却され、その後、ペレタイザー4によってペレット化されたのち、乾燥装置5で乾燥され、ポリ乳酸樹脂が得られる。
【0068】
改質されたポリ乳酸樹脂の溶融張力は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは5cN~100cNであり、より好ましくは10cN~80cNであり、さらに好ましくは20cN~70cNであり、特に好ましくは25cN~60cNである。溶融張力の測定方法については後述する。
【0069】
<1-1-b.実施形態Aにおけるポリ乳酸樹脂発泡シートの詳細>
実施形態Aにおいては、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)を含むポリ乳酸樹脂組成物を発泡させてなる。
【0070】
ポリ乳酸樹脂(P)は、改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含む。ポリ乳酸樹脂(P)中の改質されたポリ乳酸樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%を超え、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0071】
ポリ乳酸樹脂(P)は、改質されたポリ乳酸樹脂以外に、ポリ乳酸樹脂(未改質のポリ乳酸樹脂)を含んでいてもよい。
【0072】
実施形態Aにおいては、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、好ましくは、ポリ乳酸樹脂(P)と発泡剤を含むポリ乳酸樹脂組成物を発泡させてなる。
【0073】
実施形態Aにおいては、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、好ましくは、ポリ乳酸樹脂(P)と発泡剤を含むポリ乳酸樹脂組成物が押出機中で溶融混練され、押出発泡されて得られる。
【0074】
発泡剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0075】
発泡剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤としては、常温(23℃)、常圧(1気圧)において気体となる揮発性発泡剤、熱分解によって気体を発生させる分解型発泡剤が挙げられ、好ましくは、揮発性発泡剤である。
【0076】
揮発性発泡剤としては、好ましくは、沸点がポリ乳酸樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素;が挙げられる。揮発性発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。これらの中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、揮発性発泡剤としては、好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、およびシクロペンタジエンから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、およびイソペンタンから選ばれる少なくとも1種である。
【0077】
分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、重炭素ナトリウムまたはクエン酸のような有機酸もしくはその塩と重炭酸塩との混合物が挙げられる。
【0078】
発泡剤の使用量は、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の使用量は、改質されたポリ乳酸樹脂の量を100質量部としたときに、好ましくは0.1質量部~10.0質量部であり、より好ましくは0.3質量部~7.0質量部であり、さらに好ましくは0.5質量部~5.0質量部であり、特に好ましくは0.8質量部~3.0質量部である。
【0079】
ポリ乳酸樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、改質されたポリ乳酸樹脂と発泡剤以外の任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。ポリ乳酸樹脂組成物中の改質されたポリ乳酸樹脂と発泡剤と必要に応じて含まれる他の成分の合計中の、改質されたポリ乳酸樹脂と発泡剤の合計の含有割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~99.9質量%であり、さらに好ましくは90質量%~99.9質量%であり、特に好ましくは97質量%~99.8質量%であり、最も好ましくは97.6質量%~99.7質量%である。
【0080】
ポリ乳酸樹脂組成物中には、他の成分として気泡調整剤が含まれていることが好ましい。気泡調整剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。気泡調整剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸とアルコールの部分エステル、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、クエン酸、重炭酸ナトリウム、ポリテトラフルオロエチレン、水酸化アルミニウム、シリカが挙げられる。高級脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸モノアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸ビスアミド;が挙げられる。高級脂肪酸とアルコールの部分エステルにおける高級脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘニン酸等の炭素数15以上の脂肪酸が挙げられる。高級脂肪酸とアルコールの部分エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグセライド、ステアリン酸ジグリセライドが挙げられる。
【0081】
ポリ乳酸樹脂組成物中の気泡調整剤の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.01質量%~20質量%であり、より好ましくは0.1質量%~10質量%であり、さらに好ましくは0.2質量%~5.0質量%であり、特に好ましくは0.3質量%~4.0質量%である。
【0082】
ポリ乳酸樹脂組成物中には、他の成分として発泡助剤が含まれていてもよい。発泡助剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。発泡助剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ヤシ油が挙げられる。
【0083】
上記以外の他の成分としては、例えば、他の樹脂、顔料、輻射伝熱抑制成分、架橋剤、可塑剤、安定剤、充填剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、展着剤、耐候剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、防曇剤、香料、抗菌剤が挙げられる。
【0084】
改質されたポリ乳酸樹脂と気泡調整剤と必要に応じて他の成分は、あらかじめ混合していてもよい。このような混合の方法としては、例えば、タンブラー、リボンブレンダー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディゲーミキサー等の混合機を用いた混合方法が挙げられる。
【0085】
押出機としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な押出機を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、押出機としては、好ましくは、タンデム押出機が採用される。
【0086】
タンデム押出機の先端部には、最終的にポリ乳酸樹脂発泡シートが得られるように、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なダイが備えられ、好ましくは、さらに、冷却マンドレル、ポリ乳酸樹脂発泡シートを原反ロールとして巻き取るための巻取りローラなどが備えられていてもよい。
【0087】
ポリ乳酸樹脂発泡シートは、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な装置を用いて製造することができる。ポリ乳酸樹脂発泡シートは、例えば、図2に示すような製造装置を用いて製造することができる。
【0088】
図2に示す製造装置は、タンデム押出機10と、タンデム押出機10において溶融混練されたポリ乳酸樹脂組成物を筒状に吐出するサーキュラーダイCDとが備えられている。さらに、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された発泡シートを空冷する冷却装置CLと、この筒状の発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、このマンドレルMD通過後の発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置と、スリットされた発泡シート1を複数のローラ21を通過させた後に巻き取るための巻き取りローラ22が備えられている。タンデム押出機10の上流側の押出機(以下「第1押出機10a」ともいう)には、発泡シートの原材料となる改質されたポリ乳酸樹脂を投入するためのホッパー11と、発泡剤をシリンダー内に供給するためのガス導入部12が設けられている。第1側押出機10aの下流側には、改質されたポリ乳酸樹脂と発泡剤を含んだポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練するための押出機(以下「第2押出機10b」ともいう)が備えられている。
【0089】
溶融混練の温度条件は、押出機の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。例えば、上流側押出機10aの原料フィード部の温度を、好ましくは100℃~200℃、より好ましくは140℃~200℃に設定し、上流側押出機10aのそれ以降の温度を、好ましくは120℃~300℃、より好ましくは140℃~270℃に設定し、下流側押出機10bの温度を、好ましくは100℃~250℃、より好ましくは120℃~220℃に設定する。
【0090】
押出機の回転数は、押出機の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。このような回転数としては、例えば、上流側押出機10aについて、好ましくは10rpm~300rpmであり、下流側押出機10bについて、好ましくは5rpm~200rpmである。
【0091】
≪1-2.実施形態Bにおけるポリ乳酸樹脂発泡シート≫
実施形態Bにおいては、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、ポリ乳酸樹脂(未改質のポリ乳酸樹脂)を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)を含むポリ乳酸樹脂組成物を発泡させてなる。
【0092】
ポリ乳酸樹脂(P)は、ポリ乳酸樹脂(未改質のポリ乳酸樹脂)を主成分として含む。ポリ乳酸樹脂(P)中のポリ乳酸樹脂(未改質のポリ乳酸樹脂)の含有割合は、好ましくは50質量%を超え、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0093】
ポリ乳酸樹脂(P)は、ポリ乳酸樹脂(未改質のポリ乳酸樹脂)以外に、改質されたポリ乳酸樹脂を含んでいてもよい。
【0094】
実施形態Bにおいては、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、好ましくは、ポリ乳酸樹脂(P)と発泡剤を含むポリ乳酸樹脂組成物を発泡させてなる。
【0095】
実施形態Bにおいては、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、好ましくは、ポリ乳酸樹脂(P)と発泡剤を含むポリ乳酸樹脂組成物が押出機中で溶融混練され、押出発泡されて得られる。
【0096】
ポリ乳酸樹脂については、前述の<1-1-a.改質されたポリ乳酸樹脂>の項における説明をそのまま援用し得る。
【0097】
発泡剤の種類については、前述の<1-1-b.実施形態Aにおけるポリ乳酸樹脂発泡シートの詳細>の項における説明をそのまま援用し得る。
【0098】
発泡剤の使用量は、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の使用量は、ポリ乳酸樹脂の量を100質量部としたときに、好ましくは0.1質量部~10.0質量部であり、より好ましくは0.3質量部~7.0質量部であり、さらに好ましくは0.5質量部~5.0質量部であり、特に好ましくは0.8質量部~3.0質量部である。
【0099】
ポリ乳酸樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリ乳酸樹脂と発泡剤以外の任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂と発泡剤と必要に応じて含まれる他の成分の合計中の、ポリ乳酸樹脂と発泡剤の合計の含有割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~99.9質量%であり、さらに好ましくは90質量%~99.5質量%であり、特に好ましくは93質量%~99.2質量%であり、最も好ましくは95質量%~99質量%である。
【0100】
ポリ乳酸樹脂組成物中には、他の成分として、好ましくは改質剤が含まれる。改質剤を含むことにより、ポリ乳酸樹脂を高分子量化させたり、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に架橋構造や長鎖分岐構造を持たせたりすることができる。
【0101】
改質剤については、前述の<1-1-a.改質されたポリ乳酸樹脂>の項における説明をそのまま援用し得る。
【0102】
ポリ乳酸樹脂組成物中には、他の成分として気泡調整剤が含まれていることが好ましい。気泡調整剤については、前述の<1-1-b.実施形態Aにおけるポリ乳酸樹脂発泡シートの詳細>の項における説明をそのまま援用し得る。
【0103】
ポリ乳酸樹脂組成物中には、他の成分として発泡助剤が含まれていてもよい。発泡助剤については、前述の<1-1-b.実施形態Aにおけるポリ乳酸樹脂発泡シートの詳細>の項における説明をそのまま援用し得る。
【0104】
上記以外の他の成分としては、例えば、他の樹脂、顔料、輻射伝熱抑制成分、架橋剤、可塑剤、安定剤、充填剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、展着剤、耐候剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、防曇剤、香料、抗菌剤が挙げられる。
【0105】
ポリ乳酸樹脂と改質剤と気泡調整剤と必要に応じて他の成分は、あらかじめ混合していてもよい。このような混合の方法としては、例えば、タンブラー、リボンブレンダー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディゲーミキサー等の混合機を用いた混合方法が挙げられる。
【0106】
押出機としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な押出機を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、押出機としては、好ましくは二軸押出機が挙げられる。
【0107】
二軸押出機の先端部には、最終的にポリ乳酸樹脂発泡シートが得られるように、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なダイが備えられ、好ましくは、さらに、冷却マンドレル、ポリ乳酸樹脂発泡シートを原反ロールとして巻き取るための巻取りローラなどが備えられていてもよい。
【0108】
ポリ乳酸樹脂発泡シートは、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な装置を用いて製造することができる。ポリ乳酸樹脂発泡シートは、例えば、図3に示すような製造装置を用いて製造することができる。
【0109】
図3に示す製造装置は、二軸押出機30と、二軸押出機30において溶融混練されたポリ乳酸樹脂組成物を筒状に吐出するサーキュラーダイCDとが備えられている。さらに、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された発泡シートを空冷する冷却装置CLと、この筒状の発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、このマンドレルMD通過後の発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置と、スリットされた発泡シート1を複数のローラ21を通過させた後に巻き取るための巻き取りローラ22が備えられている。二軸押出機30の上流側には、発泡シートの原材料となるポリ乳酸樹脂を投入するためのホッパー11が設けられている。二軸押出機30の下流側には、発泡剤をシリンダー内に供給するためのガス導入部12が設けられている。このような装置にて押出発泡工程を実施する場合、二軸押出機30内で、ポリ乳酸樹脂の改質および発泡剤などの混合が行われ、発泡シートの原材料となるポリ乳酸樹脂組成物が調製され、サーキュラーダイCDから押出発泡が行われる。
【0110】
溶融混練の温度条件は、押出機の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。例えば、二軸押出機30の原料フィード部の温度を、好ましくは100℃~200℃、より好ましくは120℃~200℃に設定し、二軸押出機30のそれ以降の温度を、好ましくは120℃~300℃、より好ましくは120℃~250℃に設定する。
【0111】
押出機の回転数は、押出機の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。このような回転数としては、例えば、二軸押出機30について、好ましくは20rpm~800rpmである。
【0112】
≪≪2.ポリ乳酸樹脂発泡成形体≫≫
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡成形体は、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートを成形して得られる。
【0113】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡成形体は、代表的には、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートを、加熱軟化させ、金型を使用して真空成形法及び/又は圧空成形法、それらを応用したマッチドモールド成形法、プラグアシスト成形法等の熱成形によって得られ得る。
【0114】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡成形体は、例えば、トレイ、カップ、丼、弁当箱、果物容器、野菜容器などの食品容器;電気製品用緩衝材、精密機器用緩衝材などの緩衝材;などとし得る。
【実施例0115】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0116】
<ポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径の測定>
ポリ乳酸樹脂発泡シートの原反の幅方向中央部からMD方向(押出流れ方向)およびTD方向(シートの表面におけるMD方向と直交する幅方向)に沿ってシートの原反の表面に垂直に切リ出した。
観察する断面の一つは、MD方向(押出流れ方向)に平行しポリ乳酸樹脂発泡シートの表面に垂直となる平面で試料を切断した際の断面(以下「MD断面」という)とした。観察する断面のもう一つは、TD方向(シートの表面におけるMD方向と直交する幅方向)に平行しポリ乳酸樹脂発泡シートの表面に垂直となる平面で試料を切断した際の断面(以下「TD断面」という)とした。
断面を走査型電子顕微鏡(SU1510、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、20倍に拡大して撮影した。このとき、顕微鏡画像は、横向きのA4用紙1枚に縦横2画像(合計4画像)並んだ状態で印刷した際に所定の倍率となるように撮影した。
具体的には、画像上に、MD方向、TD方向の各方向に平行する60mmの任意の直線および各方向に直交する方向(VD方向)に60mmの直線を描き、MD方向に沿って切断した断面(MD断面)およびTD方向に沿って切断した断面(TD断面)のそれぞれに対し、2視野ずつ合計4視野の顕微鏡画像を撮影し、A4用紙に印刷した。MD断面の2つの画像のそれぞれにMD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描くと共に、TD断面の2つの画像のそれぞれにTD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描いた。また、MD断面の1つの画像とTD断面の1つの画像とにVD方向に平行な3本の直線(60mm)を描き、MD方向、TD方向、およびVD方向に平行な60mmの任意の直線を各方向6本ずつ描いた。
なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。
MD方向、TD方向、およびVD方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数Dを算術平均し、各方向の気泡数とした。気泡数を数えた画像倍率とこの気泡数から、各方向の気泡の平均弦長tを次式より算出した。
平均弦長t(μm)=60000/(気泡数×画像倍率)
(MD方向の平均弦長tM(μm)=60000/(MD方向の気泡数×画像倍率))
(TD方向の平均弦長tT(μm)=60000/(TD方向の気泡数×画像倍率))
(VD方向の平均弦長tV(μm)=60000/(VD方向の気泡数×画像倍率))
画像倍率は画像上のスケールバーをデジマチックキャリパ(ミツトヨ社製)にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
次式により各方向における気泡径を算出した。
MD方向の平均気泡径dM(μm)=tM(μm)/0.616
TD方向の平均気泡径dT(μm)=tT(μm)/0.616
VD方向の平均気泡径dV(μm)=tV(μm)/0.616
さらに、それらの積の3乗根を平均気泡径とした。
平均気泡径d(μm)=(dM(μm)×dT(μm)×dV(μm))1/3
【0117】
<加熱処理後のポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径の測定>
ポリ乳酸樹脂発泡シートの原反から縦340mm×横340mmの平面正方形状の試験片を切り出した。単発成形機(東成産業社製、商品名「FM-3A」)を用い、この単発成形機の上側ヒーターの平均温度を300℃とし、下側ヒーターの平均温度を300℃とした。次に、上記試験片を単発成形機に導入して、シート表面温度が110℃±10℃になるまで加熱を行い、二次発泡シートを得た。
得られた二次発泡シートについて、前述と同様に平均気泡径の測定を行った。
【0118】
<溶融張力(MT)の測定>
溶融張力は、測定装置として、キャピログラフ1D(株式会社東洋精機製作所製)およびレオテンス(Rheotens71.97)(Gottfert社製)を用いて測定した。測定試料は事前に90℃×5時間以上真空乾燥し、乾燥後は測定直前まで真空パック用のナイロンポリ袋に入れて真空包装した上でデシケーターに保存したものを用いた。まず、試験温度190℃に加熱された径9.55mmのバレルに測定試料を充填後、5分間予熱した後、溶融樹脂を上記測定装置のキャピラリーダイ(口径2.095mm、長さ8mm、流入角度90度(コニカル))からピストン降下速度(20mm/min)を一定に保持して紐状に押出しながら、この紐状物を上記キャピラリーダイの出口から測定部までが80mmとなるよう設置したホイール(ホイール間:上0.6mm~0.8mm、下1.0mm)に通過させて、その引き取り速度を初速6.92mm/s、加速度10mm/s2で徐々に増加させつつ通過させていき、紐状物が切断した点の直前の張力の極大値と極小値の平均を測定試料の溶融張力(MT)とした。なお、そのままでは干渉してしまって80mmまでレオテンスを接近させることができない場合は、干渉を回避する策を講じて所定の場所にレオテンスをセットすることとした。なお、張力チャートに極大点が1個しかない場合はその極大値を溶融張力、紐状物が細くなり、引き取りが空回り状態になった場合は、その時点を破断点と捉えて、直前の張力の極大値と極小値の平均を測定試料の溶融張力とした。
〔「キャピログラフ1D」の測定条件〕
ダイ:直径2.095mm、長さ8mm、流入角度90度(コニカル)
バレル径:9.55mm
ピストンスピード:20mm/min
測定温度:190℃
〔「Rheotens71.97」の測定条件〕
ホイール間:上0.6mm~0.8mm、下1.0mm
加速度:10mm/s2
引取スピード:初速6.92mm/s
【0119】
<連続気泡率の測定>
ポリ乳酸樹脂発泡シートから、縦25mm、横25mmのシート状サンプルを複数枚切り出し、切り出したサンプルを隙間があかないようにして重ね合わせて厚み25mmの測定用試料とし、この測定用試料の外寸を株式会社ミツトヨ製の「デジマチックキャリパ」を使用して1/100mmまで測定し、見掛けの体積(cm3)を求めた。
次に、空気比較式比重計1000型(東京サイエンス株式会社製)を使用して、1-1/2-1気圧法により、測定用試料の体積(cm3)を求めた。
これらの求めた値と下記式により、連続気泡率(%)を計算し、試験数5個の平均値を求めた。
なお、測定は、測定用試料をJIS K7100-1999 記号23/50、2級の環境下で16時間状態調節した後、JIS K7100-1999 記号23/50、2級の環境下で行った。
また、空気比較式比重計は、標準球(大28.9cc、小8.5cc)にて補正を行った。
連続気泡率(%)=[(見掛け体積-空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積]×100(%)
【0120】
<MFR(メルトマスフローレイト)の測定>
MFRは、JIS K 7210:1999の規格に準拠して測定した。具体的には、同規格のB法記載の「b)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法」により測定した。MFRはメルトフローインデックステスター(自動)120-SAS(株式会社安田精機製作所製)を用いて測定した。試料は、90℃で5時間真空乾燥後、測定直前まで密封してデシケーター内で保存したものを用いた。測定回数は3回とし、その平均をMFR(g/10min)の値とした。
測定条件は次の通りとした。
試料:3g~8g
予熱(1):200秒
予熱(2):30秒
試験温度:190℃
試験荷重:21.18N
ピストン移動距離(インターバル):4mm
【0121】
<発泡倍率の測定>
ポリ乳酸樹脂発泡シートの発泡倍率は、ポリ乳酸樹脂発泡シートの見掛け密度(ρ1)を求め、ポリ乳酸樹脂発泡シートを構成しているポリ乳酸樹脂組成物の密度(真密度:ρ0)を求め、真密度(ρ0)を見掛け密度(ρ1)で除して求めることができる。
発泡倍率=真密度(ρ0)/見掛け密度(ρ1)
発泡シートの密度は、JIS-K7222:1999「発泡プラスチックおよびゴム-見掛け密度の測定」に記載される方法によって求めることができ、具体的には下記のような方法で求めた。
(密度測定方法)
ポリ乳酸樹脂発泡シートから、100cm3以上の試料を元のセル構造を変えないように切断し、この試料をJIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した後、その寸法、質量を測定して、密度を下記式により算出した。
見掛け密度(kg/m3)=試料の質量(kg)/試料の体積(m3
なお、試料の寸法測定には、株式会社ミツトヨ製「DIGIMATIC」CD-15タイプを用いた。
ポリ乳酸樹脂発泡シートを構成しているポリ乳酸樹脂組成物の密度は、ポリ乳酸樹脂発泡シートを熱プレスするなどして非発泡体化した試料に対してアルキメデス法(JIS-K8807:2012「固体の密度及び比重の測定方法」の液中ひょう量法)に基づく測定を実施して求めた。
【0122】
<抜き加工評価>
ポリ乳酸樹脂発泡シートの原反から縦340mm×横340mmの平面正方形状の試験片を切り出した。単発成形機(東成産業社製、商品名「FM-3A」)を用い、この単発成形機の上側ヒーターの平均温度を300℃とし、下側ヒーターの平均温度を300℃とした。次に、上記試験片を単発成形機に導入して、シート表面温度が110℃±10℃になるまで30秒間加熱を行い、熱成形により上部に開口部を有する発泡容器を、各実施例、各比較例に対してそれぞれ5個作製した。
なお、容器形状は、底面が正方形状である逆四角錐台状の発泡容器(開口部140mm×150mm、底面110mm×110mm、高さ60mm)である。
抜き刃(160mm×170mm)を用い、得られた発泡容器の抜き加工を実施し、抜き部周辺に割れが発生するかどうかについて、以下の基準で評価を行った。
〇:抜き部周辺に割れが発生するものが、5個中まったくなかった。すなわち、圧縮強度が非常に高いことを示す。
△:抜き部周辺に割れが発生するものが、3個以内であった。すなわち、圧縮強度が高いことを示す。
×:抜き部周辺に割れが発生するものが、5個中4個以上であった。すなわち、圧縮強度が低いことを示す。
【0123】
[製造例1]
ポリ乳酸樹脂(Nature Works社製「Biopolymer Ingeo 6202D」、MFR=15~30g/10min、密度=1.24g/cm3、水分率:0.02wt%)100質量部と、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬ヌーリオン社製、「トリゴノックスBPIC-75」、1分間半減期温度T1=158.8℃)0.5質量部とをリボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が57mmの二軸押出機(L/D=31.5)の供給口から供給した。なお、二軸押出機は、上流側から下流側に向かって順に、上記混合物が供給されるフィード部と、ポリ乳酸樹脂が改質される反応部と、該反応部で得られた樹脂組成物を混錬する混練部とを有している。
フィード部の設定温度を140℃、反応部の温度を200℃、混練部の温度を185℃に設定し、回転数150rpmの条件にて二軸押出機中で、上記混合物を溶融混練させ、二軸押出機の先端に取り付けた口径3mm、孔数18個のダイから、30kg/hの吐出量で、混練物をストランド状に押し出した。
次いで、押し出されたストランド状の混練物を、30℃の水を収容した長さ2mの冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランドを、ペレタイザーでカットして、改質されたポリ乳酸樹脂のペレットを得た。
得られた改質されたポリ乳酸樹脂の溶融張力は、49.9cNであった。
【0124】
[製造例2]
製造例1で用いた二軸押出機を用いて、ポリ乳酸樹脂(Nature Works社製「Biopolymer Ingeo 6202D」、MFR=15~30g/10min、密度=1.24g/cm3、水分率:0.02wt%)と気泡調整剤(松村産業(株)製「クラウンタルク」)とを、質量比1:1で混練させ、ポリ乳酸樹脂と気泡調整剤のマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)を製造した。
【0125】
[実施例1]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂95.5質量部と製造例2で得られたマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)4.5質量部とをドライブレンドして、混合物を作製した。
口径φ90mmの第1押出機(上流側)および口径φ115mmの第2押出機(下流側)を備えたタンデム押出機において、口径φ90mmの第1の押出機に、得られた混合物を、ホッパーを通じて供給し、200℃~230℃で加熱溶融させた。
その後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)を第1押出機に圧入し、上記混合物とともに溶融混合させた。
次いで、この溶融混合物を口径115mmの第2の押出機に移送して165℃程度に冷却した後、口径270mmのサーキュラーダイから吐出量100kg/hで押出発泡させて、円筒状発泡体を得た。
得られた円筒状発泡体を内部が約20℃の水で冷却されているφ672mmのマンドレル上を沿わせ、またその外面をその径よりも大きいエアリングによりエアーを吹き付けることにより冷却成形し、円周上の1点でカッターにより切開して、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(1)を得た。
結果を表1に示した。
【0126】
[実施例2]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂の量を95.2質量部に変更し、製造例2で得られたマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)の量を4.8質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(2)を得た。
結果を表1に示した。
【0127】
[実施例3]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂の量を97.0質量部に変更し、製造例2で得られたマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)の量を3.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(3)を得た。
結果を表1に示した。
【0128】
[実施例4]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂97.7質量部と製造例2で得られたマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)2.3質量部とをドライブレンドして、混合物を作製した。
口径φ50mmの第1押出機(上流側)および口径φ65mmの第2押出機(下流側)を備えたタンデム押出機において、口径φ50mmの第1の押出機に、得られた混合物を、ホッパーを通じて供給し、200℃~230℃で加熱溶融させた。
その後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)を第1押出機に圧入し、前記混合物とともに溶融混合させた。
次いで、この溶融混合物を口径65mmの第2の押出機に移送して165℃程度に冷却した後、口径70mmのサーキュラーダイから吐出量30kg/hで押出発泡させて、円筒状発泡体を得た。
得られた円筒状発泡体を内部が約20℃の水で冷却されているφ206mmのマンドレル上を沿わせ、またその外面をその径よりも大きいエアリングによりエアーを吹き付けることにより冷却成形し、円周上の1点でカッターにより切開して、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(4)を得た。
結果を表1に示した。
【0129】
[実施例5]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂の量を99.0質量部に変更し、製造例2で得られたマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)の量を1.0質量部に変更した以外は、実施例4と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(5)を得た。
結果を表1に示した。
【0130】
[実施例6]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂の量を96.0質量部に変更し、製造例2で得られたマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)の量を4.0質量部に変更した以外は、実施例4と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(6)を得た。
結果を表1に示した。
【0131】
[比較例1]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂の量を95.0質量部に変更し、製造例2で得られたマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)の量を5.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(C1)を得た。
結果を表1に示した。
【0132】
[比較例2]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂の量を94.5質量部に変更し、製造例2で得られたマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)の量を5.5質量部に変更した以外は、実施例4と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(C2)を得た。
結果を表1に示した。
【0133】
[比較例3]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂の量を95.0質量部に変更し、製造例2で得られたマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)の量を5.0質量部に変更した以外は、実施例4と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(C3)を得た。
結果を表1に示した。
【0134】
[比較例4]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂の量を90.0質量部に変更し、製造例2で得られたマスターバッチ(ポリ乳酸樹脂:気泡調整剤(質量比)=1:1)の量を10.0質量部に変更した以外は、実施例4と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(C4)を得た。
結果を表1に示した。
【0135】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明のポリ乳酸樹脂発泡シートは、多様な形状に成形加工することが容易であるため、包装材などをはじめとして各種成形品の原材料として利用可能である。
【符号の説明】
【0137】
1 発泡シート
3 ストランドダイ
4 ペレタイザー
5 乾燥装置
6 冷却装置
10 タンデム押出機
10a 第1押出機
10b 第2押出機
11 ホッパー
12 ガス導入部
21 ローラ
22 巻き取りローラ
30 二軸押出機
図1
図2
図3