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特開2024-144818タイル検査システム及びタイル検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144818
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】タイル検査システム及びタイル検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20241004BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20241004BHJP
   E04F 15/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N25/72 K
E04F13/08 101Z
E04F15/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056953
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】碓井 響人
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】東 智明
【テーマコード(参考)】
2E110
2E220
2G040
【Fターム(参考)】
2E110AA70
2E110AB04
2E110AB05
2E110DC24
2E220AA60
2E220AB14
2E220DA01
2E220DB09
2E220EA04
2E220GA26X
2G040AA07
2G040AB08
2G040BA16
2G040BA26
2G040CA02
2G040CA17
2G040CA23
2G040DA06
2G040DA15
2G040DA16
2G040DA25
2G040EA02
2G040EB02
2G040EC01
2G040EC07
2G040GA07
2G040GB02
2G040GB08
2G040HA01
2G040HA06
2G040HA14
2G040HA16
2G040ZA05
(57)【要約】
【課題】検査者の負担を軽減すると共に検査精度を向上させることができるタイル検査システム及びタイル検査方法を提供する。
【解決手段】建物の構造体(床スラブ2、外壁2A)に設けられたタイル4を加熱する加熱部12と、加熱部12により加熱されたタイル4の温度を検出する温度検出部22と、温度検出部22により検出されたタイル4の温度差に基づいて、構造体(床スラブ2、外壁2A)とタイル4との間に形成された空隙部6を検出可能な空隙検出部(制御装置30)と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の構造体に設けられたタイルを加熱する加熱部と、
前記加熱部により加熱された前記タイルの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された前記タイルの温度差に基づいて、前記構造体と前記タイルとの間に形成された空隙を検出可能な空隙検出部と、
を具備するタイル検査システム。
【請求項2】
前記タイルに沿って移動可能な移動体を具備し、
前記加熱部及び前記温度検出部は、前記移動体に設けられている、
請求項1に記載のタイル検査システム。
【請求項3】
前記移動体には、
前記加熱部が設けられる第一移動体と、
前記温度検出部が設けられる第二移動体と、が含まれる、
請求項2に記載のタイル検査システム。
【請求項4】
前記第二移動体に設けられ、前記第二移動体の位置情報を検出する位置検出部と、
前記タイルの位置を示す図面情報が記憶された記憶部と、
前記位置検出部による検出結果と、前記空隙検出部による検出結果と、前記記憶部の前記図面情報と、に基づいて、前記空隙の発生箇所を特定する特定部と、
を具備する、
請求項3に記載のタイル検査システム。
【請求項5】
前記特定部により特定した前記空隙の発生箇所を示すマップを作成するマップ作成部を具備する、
請求項4に記載のタイル検査システム。
【請求項6】
前記タイルを打診する打診部と、
前記打診部による前記タイルの打診音を検出する打診音検出部と、
を具備し、
前記空隙検出部は、
前記打診音検出部により検出された打診音に基づいて、前記空隙を検出可能であり、
前記移動体には、
前記打診部及び前記打診音検出部が設けられる第三移動体が含まれる、
請求項4に記載のタイル検査システム。
【請求項7】
前記第二移動体に設けられ、前記特定部により特定された前記空隙の発生箇所の前記タイルに、前記空隙の発生箇所を示すマーキングを施すマーキング部を具備する、
請求項4に記載のタイル検査システム。
【請求項8】
前記第二移動体に設けられ、前記タイルの表面に形成された不陸を検出可能な不陸検出部を具備する、
請求項4に記載のタイル検査システム。
【請求項9】
前記構造体は、床スラブであり、
前記移動体は、前記床スラブに設けられた前記タイルに沿って走行可能である、
請求項2に記載のタイル検査システム。
【請求項10】
前記構造体は、外壁であり、
前記移動体は、前記外壁に設けられた前記タイルに沿って飛行可能である、
請求項2に記載のタイル検査システム。
【請求項11】
建物の構造体に設けられたタイルを加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された前記タイルの温度を検出する温度検出工程と、
前記温度検出工程で検出した前記タイルの温度差に基づいて、前記構造体と前記タイルとの間に形成された空隙を検出する空隙検出工程と、
を具備するタイル検査方法。
【請求項12】
前記温度検出工程は、
前記加熱工程の終了後、所定の経過期間が経過したタイミングで実行される、
請求項11に記載のタイル検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル検査システム及びタイル検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の構造物に貼り付けられたタイルの検査に関する技術が知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、建物の構造物に貼り付けられたタイルの浮きの検査を行うための打診具が記載されている。検査者は、打診具をタイルに衝突させて、衝突音によりタイルの浮きの有無を判断する。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の打診具を用いた検査方法では、検査者の手によって全てのタイルに対して打診具を衝突させる必要があるため、検査者の肉体的な負担が大きいと考えられる。このため、疲労による集中力の低下により、検査の精度が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-90832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、検査者の負担を軽減すると共に検査精度を向上させることができるタイル検査システム及びタイル検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物の構造体に設けられたタイルを加熱する加熱部と、前記加熱部により加熱された前記タイルの温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部により検出された前記タイルの温度差に基づいて、前記構造体と前記タイルとの間に形成された空隙を検出可能な空隙検出部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記タイルに沿って移動可能な移動体を具備し、前記加熱部及び前記温度検出部は、前記移動体に設けられているものである。
【0010】
請求項3においては、前記移動体には、前記加熱部が設けられる第一移動体と、前記温度検出部が設けられる第二移動体と、が含まれるものである。
【0011】
請求項4においては、前記第二移動体に設けられ、前記第二移動体の位置情報を検出する位置検出部と、前記タイルの位置を示す図面情報が記憶された記憶部と、前記位置検出部による検出結果と、前記空隙検出部による検出結果と、前記記憶部の前記図面情報と、に基づいて、前記空隙の発生箇所を特定する特定部と、を具備するものである。
【0012】
請求項5においては、前記特定部により特定した前記空隙の発生箇所を示すマップを作成するマップ作成部を具備するものである。
【0013】
請求項6においては、前記タイルを打診する打診部と、前記打診部による前記タイルの打診音を検出する打診音検出部と、を具備し、前記空隙検出部は、前記打診音検出部により検出された打診音に基づいて、前記空隙を検出可能であり、前記移動体には、前記打診部及び前記打診音検出部が設けられる第三移動体が含まれるものである。
【0014】
請求項7においては、前記第二移動体に設けられ、前記特定部により特定された前記空隙の発生箇所の前記タイルに、前記空隙の発生箇所を示すマーキングを施すマーキング部を具備するものである。
【0015】
請求項8においては、前記第二移動体に設けられ、前記タイルの表面に形成された不陸を検出可能な不陸検出部を具備するものである。
【0016】
請求項9においては、前記構造体は、床スラブであり、前記移動体は、前記床スラブに設けられた前記タイルに沿って走行可能であるものである。
【0017】
請求項10においては、前記構造体は、外壁であり、前記移動体は、前記外壁に設けられた前記タイルに沿って飛行可能であるものである。
【0018】
請求項11においては、建物の構造体に設けられたタイルを加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された前記タイルの温度を検出する温度検出工程と、前記温度検出工程で検出した前記タイルの温度差に基づいて、前記構造体と前記タイルとの間に形成された空隙を検出する空隙検出工程と、を具備するものである。
【0019】
請求項12においては、前記温度検出工程は、前記加熱工程の終了後、所定の経過期間が経過したタイミングで実行されるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0021】
本発明においては、検査者の負担を軽減すると共に検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一実施形態に係るタイル検査システムを模式的に示した側面図。
図2】タイル検査システムを模式的に示したブロック図。
図3】本発明の第一実施形態に係るタイル検査方法を示したフローチャート。
図4】(a)加熱中のタイルの温度の一例を示した模式図。(b)加熱終了5分後のタイルの温度の一例を示した模式図。
図5】第二実施形態に係るタイル検査システムを模式的に示したブロック図。
図6】(a)第三実施形態に係るタイル検査システムを模式的に示したブロック図。(b)第三実施形態に係る第二検査機を模式的に示した側面図。
図7】(a)第四実施形態に係るタイル検査システムを模式的に示したブロック図。(b)第四実施形態に係る第二検査機を模式的に示した側面図。
図8】(a)第五実施形態に係るタイル検査システムを模式的に示したブロック図。(b)第五実施形態に係る第二検査機を模式的に示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の第一実施形態に係るタイル検査システム1について説明する。また、以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
【0024】
タイル検査システム1は、建物の構造体と、構造体に貼り付けられたタイル4と、の間に形成された空隙(空隙部6)の有無の検査を行うものである。タイル検査システム1の検査の対象となる建物としては、例えばスーパーマーケットやドラッグストア等の商業施設を採用可能である。なお建物としては、商業施設に限定されず、ホテル等の宿泊施設や住宅等の種々の建物を採用可能である。
【0025】
本実施形態では、建物の構造体として、コンクリートにより形成された床スラブ2を採用している。なお、本実施形態に係る構造体としては、床スラブ2に代えて土間等も採用可能である。図1に示すように、床スラブ2の上面には、モルタル3を用いてタイル4が接着されている。なお、モルタル3に代えて接着剤等を用いて床スラブ2にタイル4を接着してもよい。本実施形態では、タイル4として、一辺が600mm程度の略正方形状のものを採用している(図4を参照)。複数枚のタイル4を床スラブ2の上に敷き詰めることで、室内の床面が形成される。
【0026】
図1に示すように、床スラブ2とタイル4との間には、モルタル3により床スラブ2及びタイル4が互いに密着されている部分(密着部5)が形成される。ここで、例えば床スラブ2とタイル4との間にモルタル3が十分に充填されず、タイル4の裏側に空隙(空隙部6)が形成される場合がある。このような空隙部6が形成されている場合、タイル4の剥がれが発生するおそれがある。
【0027】
このため、施工後のタイル4には、空隙部6の有無(タイル4の浮き)の検査が行われる。上記検査の方法としては、検査のための器具として打診棒を用いた、検査者の手による検査方法が一般的である。具体的には、検査者が打診棒により、床のタイル4の複数個所(例えば1枚につき9箇所)を叩き、打診音の違いで空隙部6の有無の判断を行う。しかしながら、上記方法では打診を行う箇所が多いことから、検査者の肉体的な負担が大きいと考えられる。このため、疲労による集中力の低下により、検査の精度が低下するおそれがある。
【0028】
図1及び図2に示すタイル検査システム1は、まずタイル4を加熱した後、タイル4の温度を検出し、当該タイル4の温度差に基づいて空隙部6の検出を行うことができる。これによれば、打診棒を用いた人の手による検査を行わずとも、空隙部6の検出を行うことができ、検査者の負担を軽減すると共に検査精度を向上させることができる。なお、タイル検査システム1を用いた検査方法の詳細な説明は後述する。タイル検査システム1は、第一検査機10、第二検査機20及び制御装置30を具備する。
【0029】
図1及び図2に示す第一検査機10は、床のタイル4の上を走行すると共に、タイル4に対して加熱を行うものである。第一検査機10は、走行体11及び加熱部12を具備する。
【0030】
走行体11は、床のタイル4を走行するものである。走行体11は、例えば略円盤形状に形成される。走行体11は、タイル4を走行するための車輪や、車輪を駆動させるための駆動源、方向転換のための機構等を備える。また、走行体11は、走行の制御が可能な制御部や、インターネット等による外部の機器(後述する制御装置30等)との通信が可能な通信部等を有する。制御部による制御により、走行体11は、予め設定された経路を走行(自走)することができる。また、走行体11は、タイル4の上の載置物等を検出するセンサを有する。走行体11は、センサの検出結果に基づいて、載置物等を回避して走行することができる。
【0031】
加熱部12は、タイル4に対して加熱を行うものである。加熱部12は、走行体11の下部において、タイル4と対向するように設けられている。加熱部12は、例えば電力を用いて熱を発生させるヒーター等の発熱部を有している。本実施形態においては、加熱部12は、少なくとも1枚分のタイル4の面積を加熱可能に形成されている。なお、加熱部12により加熱対象を加熱可能な範囲は、1枚分のタイル4の面積(後述する温度検出部22により温度を検出可能な範囲)よりも大きいことが望ましい。加熱部12としては、タイル4に対して離間した状態で、熱風や輻射熱によりタイル4を加熱する構成を採用してもよく、タイル4に対して接触した状態で、直接タイル4に熱を伝える構成を採用してもよい。
【0032】
位置検出部13は、第一検査機10の位置及び軌跡の情報(座標)を検出するための部分である。位置検出部13は、走行体11の上面に設けられる。位置検出部13としては、例えば、光(例えばレーザ光等)を用いた座標の検出が可能な測量機器のターゲット(プリズム等)を採用可能である。この場合、位置の検出は、所定の位置に設置された測量機器から位置検出部13に光を照射し、反射された光を測量機器が取得することで行われる。なお、位置検出部13としては上述のようなターゲットに限定されず、GPSやビーコンを用いたもの等、位置の検出が可能な種々の機器を採用可能である。
【0033】
図1及び図2に示す第二検査機20は、第一検査機10により加熱されたタイル4の温度を検出し、当該タイル4の温度差に基づいて空隙部6の検出を行うものである。第二検査機20は、第一検査機10とは別体に形成される。第二検査機20は、第一検査機10に遅れて、第一検査機10と概ね同様な経路を走行する。第二検査機20は、走行体21、温度検出部22、位置検出部23及びカメラ24を具備する。
【0034】
走行体21は、第一検査機10の走行体11と概ね同様に、タイル4の上を走行するものである。走行体21の形状や、経路の走行のための機構は、走行体11と概ね同様であるので説明を省略する。
【0035】
温度検出部22は、タイル4の表面温度を検出するものである。温度検出部22は、走行体21の下部において、タイル4と対向するように設けられている。温度検出部22は、少なくとも1枚分のタイル4の面積の温度を検出可能に形成されている。温度検出部22としては、例えば非接触でタイル4の表面の温度を測定可能な赤外線映像装置(サーモグラフィ)を採用可能である。これによれば、タイル4の表面の温度を可視化することができる。また、温度検出部22として、接触型又は非接触型の温度センサを採用可能である。この場合は、例えばタイル4を複数のグリッド(例えば30mm×30mmのグリッド)に分割し、各グリッドの表面温度を測定可能な温度センサを採用可能である。これによれば、タイル4の表面温度を精度よく測定することができる。
【0036】
位置検出部23は、第二検査機20の位置及び軌跡の情報(座標)を検出するための部分である。位置検出部23の構成は、位置検出部13と概ね同様であるので説明を省略する。
【0037】
カメラ24は、タイル4を撮像する部分である。カメラ24は、レンズがタイル4に対して対向するように、走行体21に設けられる。なお、本実施形態では、温度検出部22とは別体のカメラ24を設けた例を示しているが、例えば温度検出部22として、通常の撮像(可視光の撮像)も可能な赤外線映像装置を採用した場合には、温度検出部22及びカメラ24を1つの装置で構成するようにしてもよい。
【0038】
図2に示す制御装置30は、各種の情報の処理が可能なものである。制御装置30としては、一般的なパーソナルコンピュータやサーバ等を用いることができる。なお、制御装置30としては、パーソナルコンピュータ等に限定されず、例えばタブレットやスマートフォン等の端末を採用可能である。制御装置30は、制御部31、記憶部32、通信部33、入力部34及び表示部35を具備する。
【0039】
制御部31は、記憶部32に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部31は、CPUにより構成される。
【0040】
記憶部32は、各種のプログラムや取得された各種の情報が記憶されるものである。記憶部32は、HDD、RAM、ROM等により構成される。記憶部32には、タイル4が設けられる建物の平面図データやタイル4の割付図等、タイル4の位置を示す情報を含む図面データが記憶される。
【0041】
通信部33は、外部の機器との通信が可能なものである。通信部33は、例えばインターネット等の各種の通信手段を介して、第一検査機10や第二検査機20等との情報のやりとりを行うことができる。
【0042】
入力部34は、各種の情報を入力するためのものである。入力部34は、キーボード、マウス等により構成される。
【0043】
表示部35は、各種の情報を表示するものである。表示部35は、例えば液晶ディスプレイ等により構成される。
【0044】
制御装置30は、温度検出部22による温度の検出結果と、位置検出部13及び位置検出部23による位置情報と、カメラ24による撮像結果(画像データ)と、を通信部33により受信することができる。
【0045】
以下では、タイル検査システム1を用いたタイル検査方法の様子について説明する。本検査は、例えばタイル4の施工が完了し、モルタル3が硬化した後に実行してもよく、建物の引渡し後に定期的に実行してもよい。
【0046】
タイル検査システム1による検査を行う際には、検査者は、制御装置30に建物の図面データや、第一検査機10及び第二検査機20の走行経路、第一検査機10及び第二検査機20の走行のタイミングの情報を入力する。上記各情報の入力は、入力部34を用いて行うことができる。制御装置30は、通信部33により上記走行経路及び走行のタイミングの情報を第一検査機10及び第二検査機20へ送信する。
【0047】
制御装置30は、位置検出部13及び位置検出部23による位置情報と、図面データと、走行経路と、に基づいて第一検査機10及び第二検査機20の動作を制御することで、各検査機を適切なタイミングで動作させることができる。
【0048】
図3に示すように、本実施形態に係るタイル検査方法では、加熱工程(ステップS100)、温度検出工程(ステップS200)及び空隙検出工程(ステップS300)が、順番に実行される。
【0049】
加熱工程(ステップS100)は、タイル4を加熱する工程である。本実施形態では、第一検査機10を用いて加熱工程を実行する。具体的には、制御装置30は、設定されたタイミングで第一検査機10を走行させる。第一検査機10は、走行経路に含まれる、加熱の対象となるタイル4の上で停止する。第一検査機10は、この状態では、所定期間が経過するまで加熱部12による加熱を行う。本実施形態では、加熱の期間(加熱期間)を5分間程度に設定している。なお、加熱期間としては上述した例に限定されず、タイルの大きさや材質等に応じて種々の期間を採用可能である。第一検査機10は、上記タイル4に対して加熱期間が経過するまで加熱を行った後、次の加熱対象のタイル4の上まで移動し、上記説明と同様にタイル4の加熱を行う。
【0050】
ここで、加熱対象のタイル4の裏側に空隙部6が形成されている場合、タイル4のうち裏側に空隙部6が形成された箇所は、密着部5の箇所に比べて温度が下がり易くなる。以下では、図4を用いて、加熱されたタイル4の温度変化について説明する。
【0051】
図4では、タイル4の温度変化の一例をサーモグラフィで示している。上記タイル4の裏側には、空隙部6が形成されている。図4(a)は、加熱中のタイル4の表面温度を示している。加熱中の状態では、タイル4の全体が概ね均一に高温(図例では33℃程度)になっている。
【0052】
図4(b)は、加熱終了後、5分間放置したタイル4の表面温度を示している。この状態では、タイル4のうち密着部5が形成された箇所は、加熱中の状態から温度が2℃程度下がり、31℃程度になっている。一方、タイル4のうち空隙部6が形成された箇所は、密着部5が形成された箇所と比べて更に2℃程度温度が下がっている。このように、タイル4の加熱終了後、所定時間が経過した状態では、タイル4のうち裏側に空隙部6が形成された箇所と、密着部5が形成された箇所と、の間に温度差が生じる。なお、タイル4の加熱終了後、長期間(例えば9分を超える期間)が経過した場合には、上記温度差は識別が困難になる。このため、タイル4の温度差を検出する場合には、タイル4の加熱終了後、上記期間以内(例えば9分以内)に検出を行うことが望ましい。
【0053】
温度検出工程(ステップS200)は、加熱工程で加熱されたタイルの温度を検出する工程である。本実施形態では、第二検査機20を用いて温度検出工程を実行する。具体的には、制御装置30は、設定されたタイミングで、第一検査機10の後を追うように第二検査機20を走行させて、温度検出部22によりタイル4の温度を検出する。
【0054】
第二検査機20によりタイル4の温度を検出するタイミングは、第一検査機10によるタイル4の加熱後に所定期間が経過し、タイル4のうち裏側に空隙部6が形成された箇所と、密着部5が形成された箇所と、の間の温度差が顕著な時が望ましい。本実施形態では、上記所定期間(経過期間)を5分程度に設定している。なお、経過期間としては5分間に限定されず、例えば5分以上9分未満の範囲の種々の期間を採用可能である。また、経過期間としては上記範囲に限定されず、種々の期間を採用可能である。
【0055】
制御装置30は、第一検査機10が加熱対象のタイル4上に到着してから、加熱期間(5分間)及び経過期間(5分間)が経過したタイミングで、第二検査機20を上記タイル4上に到着させると共に、温度検出部22によりタイル4の温度の検出を開始する。すなわち、制御装置30は、第一検査機10に対して10分遅れたタイミングで第二検査機20を走行させることで、タイル4の温度の検出を行う。
【0056】
タイル4の裏側に空隙部6が形成されている場合、加熱終了後、経過期間(5分間)が経過した当該タイル4には、図4を用いて説明したように温度差が生じている。第二検査機20は温度検出部22により、上記温度差が生じたタイル4の温度を検出する。
【0057】
また、第二検査機20は、温度を計測したタイル4をカメラ24により撮像する。制御装置30は、上記カメラ24による撮像結果、温度検出部22による温度の検出結果、及び位置検出部23による位置情報を取得する。第二検査機20は、温度検出部22による温度の検出及びカメラ24による撮像を行った後、次の検出対象のタイル4の上まで移動し、上記説明と同様にタイル4の温度の検出等を行う。
【0058】
空隙検出工程(ステップS300)は、温度検出工程で検出したタイル4の温度差に基づいて、空隙部6を検出する工程である。本実施形態では、制御装置30を用いて空隙検出工程を実行する。具体的には、制御装置30は、第二検査機20から取得した温度検出部22によるタイル4の温度の検出結果に基づいて、周囲の温度(密着部5が形成された箇所の温度)に対して温度が低い部分を、空隙部6が形成された箇所であると特定(推定)する(図4(b)を参照)。
【0059】
この場合、周囲の温度に対して温度が所定量(例えば2~5℃程度)下がっている箇所を、空隙部6が形成された箇所であると制御装置30に判断させる構成を採用可能である。また、例えば、経過期間におけるタイル4の温度変化のパターンを機械学習により学習させた学習結果を用いて、密着部5が形成された箇所と、空隙部6が形成された箇所と、を制御装置30に判別させる構成を採用可能である。
【0060】
タイル検査システム1は、上述の如き加熱工程、温度検出工程及び空隙検出工程を実行することで、空隙部6の検出を自動で行うことができる。制御装置30は、検査の対象となる全てのタイル4に対して上記各処理を行った場合、第一検査機10及び第二検査機20の動作を停止させる。
【0061】
また、制御装置30は、上記空隙部6の検出結果、カメラ24による撮像結果、及び位置検出部23による位置情報を用いて、建物の平面図(又はタイル割付図)上に空隙部6の形成箇所を示す検査マップを作成し、表示部35に表示させることができる。
【0062】
この際に制御装置30は、上記空隙部6の検出結果と、位置検出部23により検出した位置情報と、に基づいて、空隙部6の位置を特定する。なお、制御装置30には、温度検出部22の検査範囲や、温度検出部22からタイル4までの距離、温度検出部22の検査範囲と位置検出部23との位置関係等、空隙部6の位置の特定に用いられる情報が予め記憶されている。また、制御装置30には、カメラ24の撮像範囲や、カメラ24のレンズからタイル4までの距離、カメラ24と位置検出部23との位置関係等、撮像結果の位置の特定に用いられる情報が予め記憶されている。
【0063】
制御装置30は、空隙部6の位置を示す情報を建物の平面図上に貼り付ける(重ねる)ことで、検査マップを作成する。この際に制御装置30は、カメラ24による複数の撮像結果を建物の平面図上に貼り付ける。また、制御装置30は、温度検出部22の検出結果で示される空隙部6の形成箇所を可視化したものを、カメラ24の撮像結果に重ねることで、空隙部6の形成箇所を検査マップ上に表示させることができる。具体的には、制御装置30は、図4(b)のようなサーモグラフィや、複数のグリッドに分割されたタイル4の温度を可視化した画像から、空隙部6の形成箇所を示す画像を抽出(トレース)すると共に、当該抽出した画像を検査マップ上に表示させることができる。これにより、空隙部6の形状や大きさを検査マップ上に表示させることができる。
【0064】
また、第二検査機20は、タイル4上を走行しているうちに走行の軌跡が重なることで、温度検出部22による検出結果やカメラ24による撮像結果を重複して取得する場合がある。この場合、制御装置30は、温度検出部22の検出結果やカメラ24の撮像結果と、位置検出部23による位置情報と、に基づいて重複した範囲を認識し、検査マップにおいて温度検出部22の検出結果やカメラ24の撮像結果を二重に表示しないように補正する処理を実行可能である。
【0065】
上述したように、本実施形態によれば、第一検査機10及び第二検査機20を自走させることで、検査マップを自動的に作成することができる。検査者は、検査マップに基づいて、空隙部6の大まかな形成箇所を把握すると共に、検査マップ上の空隙部6の形成箇所に対応する実際のタイル4に対して、打診棒を用いた詳細な検査を行うことができる。これによれば、打診棒を用いた検査者の手による検査箇所を減らすことができ、検査者の負担を軽減することができる。また、検査者の疲労による集中力の低下で、検査の精度が低下することや、検査結果のばらつきが生じることを回避し、検査精度を向上させることができる。
【0066】
また、検査者は、入力部34を用いて、打診棒を用いたタイル4の検査結果を検査マップ上に入力することができる。なお、制御装置30としてタブレットやスマートフォン等の端末を採用した場合には、端末のタッチパネルを用いて、検査マップの表示や検査マップ上への情報の入力を行うことができる。また、上記情報入力を行うことで、第二検査機20によるタイル4の検査結果と、打診棒を用いたタイル4の検査結果と、の差異を制御装置30に学習させることができる。これによれば、上記学習結果に基づいて、第二検査機20の検査精度の向上を図ることができる。
【0067】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0068】
以下では、図5から図8までを参照して、本発明の別実施形態(第二~第五実施形態)について説明する。なお、以下の別実施形態の説明では、各実施形態の相違点について説明し、共通する構成については、適宜説明を省略する。
【0069】
まず、図5を用いて、第二実施形態に係るタイル検査システム1Aについて説明する。本実施形態に係るタイル検査システム1Aは、第三検査機40を備える点で、第一実施形態に係るタイル検査システム1と異なる。
【0070】
第三検査機40は、空隙検出工程(ステップS300)で特定された空隙部6の形成箇所において、タイル4の打診を行うものである。第三検査機40は、第一検査機10及び第二検査機20とは別体に形成される。第三検査機40は、第二検査機20に遅れて、第二検査機20と概ね同様な走行経路を走行する。第三検査機40は、走行体41、打診部42、打診音検出部43及び位置検出部44を具備する。なお、走行体41及び位置検出部44は、走行体11及び位置検出部13と概ね同様であるので説明を省略する。
【0071】
打診部42は、タイル4に対して打診を行うものである。打診部42は、タイル4に対して対向するように、走行体41に設けられる。打診部42は、打診棒の先端部と概ね同様な部材を備える。なお、打診部42の形状等は種々の形状を採用可能である。打診部42は、1枚のタイル4に対して複数個所(例えば9箇所)打診を行う。
【0072】
打診音検出部43は、打診部42によるタイル4の打診音を検出するものである。打診音検出部43は、タイル4に対して対向するように、走行体41に設けられる。打診音検出部43としては、種々の音センサを採用可能である。
【0073】
制御装置30は、第一検査機10及び第二検査機20と同様に、第三検査機40の走行の制御を行うことができる。制御装置30は、打診部42によりタイル4に対して打診を行い、打診音検出部43の検出結果が予め設定された正常な音のパターンの範囲内であれば、当該打診箇所は密着部5であると判定する。一方、制御装置30は、打診音検出部43の検出結果が正常な音のパターンの範囲外であれば、当該打診箇所は空隙部6であると判定する。
【0074】
制御装置30は、まずタイル4上の複数個所に打診を行うと共に、打診音検出部43による検出を行う、打診音検出部43が異音(正常な音のパターンの範囲外の音)を検出した場合は、当該打診箇所に対して、再度打診部42による詳細な検査を行うように、第三検査機40を制御可能である。上記詳細な検査において、制御装置30は、1枚のタイル4に対する打診数を通常の検査の打診数よりも増やす(例えば通常は9回であるところ、27回に増やす)ように第三検査機40を制御可能である。
【0075】
このように、本実施形態によれば、第三検査機40により打診音によるタイル4の検査を自動で行うことができる。また、制御装置30は、第三検査機40を用いた検査の結果を、検査マップ上に表示することができる。検査者は、検査マップに基づいて、打診音検出部43により異音が検出された箇所に対応する実際のタイル4に対して、打診棒を用いた詳細な検査を行うことができる。
【0076】
本実施形態に係るタイル検査システム1Aにおいても、第一実施形態と概ね同様な効果を奏する。また、本実施形態によれば、タイル4の温度差による検査に加えて、タイル4の打診音による検査を自動で行うことができる。これによれば、タイル4の検査の精度を向上させることができる。
【0077】
次に、図6を用いて、第三実施形態に係るタイル検査システム1Bについて説明する。本実施形態に係るタイル検査システム1Bは、第一検査機10A及び第二検査機20Aを飛行させることで、外壁のタイル4の検査を行う点で、第一実施形態に係るタイル検査システム1と異なる。
【0078】
図6(b)に示すように、本実施形態では、建物の構造体としての外壁2Aに貼り付けられたタイル4を検査対象としている。図6(a)に示すように、本実施形態に係る第一検査機10A及び第二検査機20Aは、走行体に代えて、飛行体11A及び飛行体21Aを備えている。なお、図6(a)では、第一検査機10Aの図示は省略し、第二検査機20Aのみを示している。
【0079】
飛行体11A及び飛行体21Aは、ドローンやUAV等の小型の無人航空機である。飛行体11A及び飛行体21Aは、複数のローター(回転翼)を具備し、安定した飛行を行うことができる。制御装置30は、飛行体11A及び飛行体21Aの飛行の制御を行うことができる。
【0080】
制御装置30は、第一実施形態と概ね同様な工程(図3を参照)を行うことで、外壁2Aのタイル4の検査を行うことができる。具体的には、加熱工程において、第一検査機10Aは、飛行した状態で加熱対象に対して加熱部12による加熱を行うことができる。また、温度検出工程において、第二検査機20Aは、飛行した状態で、加熱工程で加熱されたタイルの温度を温度検出部22により検出する(図6(a)を参照)。また、空隙検出工程において、制御装置30は、第二検査機20から取得した検出結果を用いて、外壁2Aのタイル4の空隙部6を検出する。本実施形態において制御装置30は、建物の立面図等のデータを用いて、検査マップを作成することができる。
【0081】
本実施形態に係るタイル検査システム1Bにおいても、第一実施形態と概ね同様な効果を奏する。本実施形態によれば、高所での作業が予想される外壁2Aのタイル4の検査において、検査者の手による検査箇所を減らすことができ、検査者の負担を軽減することができる。また、飛行体11A及び飛行体21Aを用いることで、検査者が向うことが困難な箇所であったり、打診棒が届かない箇所等、手作業によっては検査を行うことが困難な箇所のタイル4の検査を行うことができる。また、これによれば、外壁2Aのタイル4の検査に伴う足場の設置が不要(又は足場の削減が可能)になるため、コストの削減にも繋がる。
【0082】
次に、図7を用いて、第四実施形態に係るタイル検査システム1Cについて説明する。本実施形態に係るタイル検査システム1Cは、タイル4の空隙部6を検出した際に、検査対象のタイル4に対して自動でマーキングを施す点で、第一実施形態に係るタイル検査システム1と異なる。
【0083】
図7に示すように、本実施形態に係る第二検査機20Bは、マーキング部25を備えている。マーキング部25は、空隙検出工程において特定された空隙部6の形成箇所に、マーキング(目印)を施すものである。マーキング部25は、走行体21の下部において、タイル4と対向するように設けられている。マーキング部25は、例えば、温度検出部22の後方に設けられる。マーキング部25は、空隙部6の形成箇所に対してマーキング行うための機構を備えている。マーキング部25としては、スプレーやスタンプ等により、タイル4に対して塗料を付着させる構成を採用可能である。
【0084】
本実施形態に係るタイル検査システム1Cにおいても、第一実施形態と概ね同様な効果を奏する。本実施形態によれば、空隙検出工程において特定された空隙部6の形成箇所にマーキングを施すことで、検査者の手による検査箇所を行う際の作業性を向上させることができる。
【0085】
次に、図8を用いて、第五実施形態に係るタイル検査システム1Dについて説明する。本実施形態に係るタイル検査システム1Dは、タイル4の表面に形成された不陸を検出可能な点で、第一実施形態に係るタイル検査システム1と異なる。
【0086】
図8に示すように、本実施形態に係る第二検査機20Cは、不陸検出部26を備えている。不陸検出部26は、タイル4に浮きが発生した場合等に、タイル4の表面に形成された凹凸(不陸)を検出可能なものである。図8(b)に示すように、不陸検出部26は、走行体21の下部において、タイル4と対向するように設けられている。なお、図8(b)では、不陸検出部26に注目し、温度検出部22等の他の部分の図示は省略している。
【0087】
図8(b)に示すように、不陸検出部26は、タイル4の表面に常時接触するように設けられた接触部26aを備えている。接触部26aの上部には、上下に長尺な軸部26bが固定されている。軸部26bは、走行体21に対して固定された滑り受け部26cに対して、上下方向に相対的に移動可能に支持されている。また、軸部26bの上部には、ラック部が形成されており、不陸検出部26は、上記ラック部に係合するピニオン部26dを備えている。ピニオン部26dは、軸部26bの上下の移動に伴い回転可能に設けられている。また、不陸検出部26は、ピニオン部26dの回転量を検出可能なポテンショメーター(不図示)を備えている。
【0088】
タイル4に不陸(凹凸)が形成されている場合には、第二検査機20Cの走行に伴い、凹凸に応じて接触部26a及び軸部26bが上下に移動する。軸部26bの移動に伴い、回転するピニオン部26dの回転量をポテンショメーターにより検出することで、不陸検出部26は不陸の検出を行うことができる。なお、上記不陸検出部26の構成は一例であり、不陸検出部26としては、タイル4の不陸(凹凸)を検出可能な種々の構成を採用可能である。
【0089】
制御装置30は、不陸検出部26による検出結果を取得すると共に、検査マップ上に表示することができる。検査者は、検査マップに基づいて、空隙部6の検査に加えて、不陸の検査も行うことができる。なお、本実施形態に係るタイル検査システム1Dは、タイル4が貼り付けられた床のみならず、タイル4が設けられていない床(床スラブ2や土間等のコンクリート素地の床)の不陸の検査(床のレベルが許容範囲内に収まっているか否かの判断)にも適用可能である。
【0090】
本実施形態に係るタイル検査システム1Dにおいても、第一実施形態と概ね同様な効果を奏する。本実施形態によれば、空隙部6の検査と同時に、タイル4の不陸の検査も行うことができる。
【0091】
以上、タイル検査システム1~1Dについて説明した。なお、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0092】
以上のように、本発明の一実施形態に係るタイル検査システム1~1Dは、
建物の構造体(床スラブ2、外壁2A)に設けられたタイル4を加熱する加熱部12と、
前記加熱部12により加熱された前記タイル4の温度を検出する温度検出部22と、
前記温度検出部22により検出された前記タイル4の温度差に基づいて、前記構造体(床スラブ2、外壁2A)と前記タイル4との間に形成された空隙(空隙部6)を検出可能な空隙検出部(制御装置30)と、
を具備するものである。
【0093】
このような構成により、検査者の負担を軽減すると共に検査精度を向上させることができる。すなわち、タイル4の温度差に基づいて空隙部6を検出することで、打診棒を用いた人の手による検査を行わずとも、空隙部6の検査を行うことができ、検査者の負担を軽減することができる。また、検査者の疲労による集中力の低下で検査の精度が低下するようなことを回避し、検査精度を向上させることができる。
【0094】
また、タイル検査システム1~1Dは、
前記タイル4に沿って移動可能な移動体(第一検査機10、10A、及び第二検査機20~20C)を具備し、
前記加熱部12及び前記温度検出部22は、前記移動体(第一検査機10、10A、及び第二検査機20~20C)に設けられているものである。
【0095】
このような構成により、移動体(第一検査機10、10A、及び第二検査機20~20C)を移動させることで、空隙部6の検出を自動で行うことができ、検査者の負担を軽減することができる。
【0096】
また、前記移動体には、
前記加熱部12が設けられる第一移動体(第一検査機10、10A)と、
前記温度検出部22が設けられる第二移動体(第二検査機20~20C)と、が含まれるものである。
【0097】
このような構成により、第一検査機10、10Aによる加熱後、適切なタイミングで第一検査機10、10Aの後を追うように第二検査機20~20Cを移動させることができ、効率的に空隙部6の検出を行うことができる。
【0098】
また、タイル検査システム1~1Dは、
前記第二検査機20~20Cに設けられ、前記第二検査機20~20Cの位置情報を検出する位置検出部23と、
前記タイル4の位置を示す図面情報(図面データ)が記憶された記憶部32と、
前記位置検出部23による検出結果と、前記空隙検出部(制御装置30)による検出結果と、前記記憶部32の前記図面情報と、に基づいて、前記空隙部6の発生箇所を特定する特定部(制御装置30)と、
を具備するものである。
【0099】
このような構成により、位置情報を用いて空隙部6の発生箇所を特定することができる。
【0100】
また、タイル検査システム1~1Dは、
前記特定部(制御装置30)により特定した前記空隙部6の発生箇所を示すマップ(検査マップ)を作成するマップ作成部(制御装置30)を具備するものである。
【0101】
このような構成により、空隙部6の発生箇所を検査マップに示すことで、検査者による詳細な検査を行い易くすることができる。
【0102】
また、タイル検査システム1Aは、
前記タイル4を打診する打診部42と、
前記打診部42による前記タイル4の打診音を検出する打診音検出部43と、
を具備し、
前記空隙検出部(制御装置30)は、
前記打診音検出部43により検出された打診音に基づいて、前記空隙部6を検出可能であり、
前記移動体には、
前記打診部42及び前記打診音検出部43が設けられる第三移動体(第三検査機40)が含まれるものである。
【0103】
このような構成により、タイル4の温度差に加えて、打診音によるタイル4の検査を行うことができ、タイル4の検査の精度を向上させることができる。
【0104】
また、タイル検査システム1Cは、
前記第二検査機20Bに設けられ、前記特定部(制御装置30)により特定された前記空隙部6の発生箇所の前記タイル4に、前記空隙部6の発生箇所を示すマーキングを施すマーキング部25を具備するものである。
【0105】
このような構成により、空隙部6の形成箇所にマーキングを施すことで、検査者の手による検査箇所を行う際の作業性を向上させることができる。
【0106】
また、タイル検査システム1Dは、
前記第二検査機20Cに設けられ、前記タイル4の表面に形成された不陸を検出可能な不陸検出部26を具備するものである。
【0107】
このような構成により、空隙部6の検査と同時に、タイル4の不陸の検査も行うことができる。
【0108】
また、タイル検査システム1、1A、1C、1Dにおいて、
前記構造体は、床スラブ2であり、
前記移動体(第一検査機10、及び第二検査機20、20B、20C)は、前記床スラブ2に設けられた前記タイル4に沿って走行可能であるものである。
【0109】
このような構成により、床スラブ2に設けられたタイル4の検査を好適に行うことができる。
【0110】
また、タイル検査システム1Bにおいて、
前記構造体は、外壁2Aであり、
前記移動体(第一検査機10A、及び第二検査機20A)は、前記外壁2Aに設けられた前記タイル4に沿って飛行可能であるものである。
【0111】
このような構成により、外壁2Aに設けられたタイル4の検査を好適に行うことができる。また、高所での作業が予想される外壁2Aのタイル4の検査において、検査者の手による検査箇所を減らすことができ、検査者の負担を軽減することが可能であると共に、足場の設置コストの削減も可能である。
【0112】
また、本発明の一実施形態に係るタイル検査方法は、
建物の構造体(床スラブ2、外壁2A)に設けられたタイル4を加熱する加熱工程(ステップS100)と、
前記加熱工程で加熱された前記タイル4の温度を検出する温度検出工程(ステップS200)と、
前記温度検出工程で検出した前記タイル4の温度差に基づいて、前記構造体(床スラブ2、外壁2A)と前記タイル4との間に形成された空隙部6を検出する空隙検出工程(ステップS300)と、
を具備するものである。
【0113】
このような構成により、検査者の負担を軽減すると共に検査精度を向上させることができる。すなわち、タイル4の温度差に基づいて空隙部6を検出することで、打診棒を用いた人の手による検査を行わずとも、空隙部6の検査を行うことができ、検査者の負担を軽減することができる。また、検査者の疲労による集中力の低下で検査の精度が低下するようなことを回避し、検査精度を向上させることができる。
【0114】
また、前記温度検出工程(ステップS200)は、
前記加熱工程(ステップS100)の終了後、所定の経過期間(例えば5分間)が経過したタイミングで実行されるものである。
【0115】
このような構成により、タイル4のうち裏側に空隙部6が形成された箇所と、密着部5が形成された箇所と、の間の温度差が顕著になったタイミングで、タイル4の温度を検出することが可能となる。
【0116】
なお、本実施形態に係る床スラブ2、外壁2Aは、本発明に係る構造物の一形態である。
また、本実施形態に係る第一検査機10、10Aは、本発明に係る第一移動体の一形態である。
また、本実施形態に係る第二検査機20~20Cは、本発明に係る第二移動体の一形態である。
また、本実施形態に係る制御装置30は、本発明に係る空隙検出部、特定部、マップ作成部の一形態である。
【0117】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、タイル検査システム1~1Dを構成する各部の形状や位置等は、上述したものに限定されず、適宜変更可能である。
【0118】
また、タイル検査システム1~1Dを構成する各部の構成を、適宜入れ替えたり、組み合わせたりする等の変更が可能である。具体的には、各実施形態の何れかに、マーキング部25や不陸検出部26、第三検査機40(打診部42及び打診音検出部43)の適宜加えるようにしてもよい。
【0119】
また、上記各実施形態では、第一検査機10、10Aに位置検出部23を設けた例を示したが、このような構成に限定されない。例えば、第一検査機10、10Aに位置検出部23を設けないようにしてもよい。この場合は、第一検査機10、10Aについては、位置情報に基づいた制御は行わず、予め設定された経路上を移動させる構成を採用可能である。
【0120】
また、上記各実施形態では、移動体を、第一検査機10、10A、及び第二検査機20~20Cの互いに別体の機器により構成した例を示したが、このような構成に限定されない。例えば、移動体を1つの機器により構成してもよい。すなわち、加熱部12を備える機体と、温度検出部22やカメラ24等を備える機体と、を一体的に形成してもよい。この場合は、加熱部12による加熱を行った後、経過期間が経過するまで、加熱したタイル4の上で移動体を待機させる制御を実行可能である。また、経過期間が経過するまで、他のタイル4を加熱するように移動体を移動させ、経過期間の経過後に移動体を戻す制御を実行可能である。
【0121】
また、上記各実施形態では、第一検査機10、10A、及び第二検査機20~20Cを用いて、自動で空隙部6の検出を実行する例を示したが、このような構成に限定されない。例えば、加熱部12及び温度検出部22を、移動体(第一検査機10、10A、及び第二検査機20~20C)に搭載させず、検査者の手により、加熱部12を用いた加熱工程(ステップS100)や、温度検出部22を用いた温度検出工程(ステップS200)を実行するようにしてもよい。この場合は、温度検出部22の検出結果を制御装置30に入力して、制御装置30を用いて空隙検出工程(ステップS300)を実行することができる。また、例えば、サーモグラフィ等により可視化された温度検出部22の検出結果に基づいて、検査者が目視により空隙部6の有無の判断を行うことで、空隙検出工程(ステップS300)を行うようにしてもよい。
【0122】
また、上記各実施形態では、検査マップを作成する際に、カメラ24によるタイル4の撮像結果に空隙部6の形成箇所を可視化したものを重ねた例を示したが、このような構成に限定されない。例えば、カメラ24の撮像結果を用いずに、図面データ(建物の平面図やタイル割付図)上に空隙部6の形成箇所を可視化したものを直接重ねて表示するようにしてもよい。この場合は、第二検査機20~20Cにカメラ24を設けないようにしてもよい。
【0123】
また、上記各実施形態では、サーモグラフィ等の画像から抽出した空隙部6を示す画像を検査マップ上に表示させる例を示したが、このような構成に限定されない。例えば、上述のような空隙部6を示す画像は検査マップに表示させず、空隙部6の形成箇所(例えば裏側に空隙部6が形成されたタイル4の位置)のみを検査マップ上に表示させるようにしてもよい。
【0124】
また、上記各実施形態では、建物の構造体として土間や床スラブ2及び外壁2Aを例示したが、このような構成に限定されない。構造物としては、柱や梁等も採用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 タイル検査システム
10 第一検査機
20 第二検査機
30 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8