(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144824
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】二酸化炭素処理装置、二酸化炭素処理方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20241004BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20241004BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20241004BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20241004BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241004BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20241004BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C25B1/23 ZAB
C25B9/23
C25B15/08
B01D53/62
B01D53/78
B01J19/00 A
B01D53/14 200
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056961
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】及川 博
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G075
4K021
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA12
4D002FA01
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA08
4D020BB03
4D020BC03
4D020CB01
4D020CD10
4G075AA04
4G075AA41
4G075BA06
4G075BB02
4G075BB04
4G075CA20
4G075CA55
4G075DA01
4G075EB01
4G075EC21
4G075FA14
4G075FB02
4G075FB03
4K021CA11
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を回収する際のエネルギー消費量を低減するとともに、二酸化炭素を電気化学的に還元する際の反応効率を向上することを目的とする。
【解決手段】二酸化炭素を吸収する吸収装置2と、吸収装置2で吸収された二酸化炭素を含む電解液から空気成分を除去する除去装置3と、吸収装置2で吸収された二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する電解セル41を有する電気化学反応部4と、電気化学反応部4に電力を供給する太陽光発電装置5と、を備える、二酸化炭素処理装置100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を吸収する吸収装置と、前記吸収装置で吸収された二酸化炭素を含む電解液から空気成分を除去する除去装置と、前記吸収装置で吸収された二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する電解セルを有する電気化学反応部と、前記電気化学反応部に電力を供給する太陽光発電装置と、を備える、二酸化炭素処理装置。
【請求項2】
前記吸収装置は、二酸化炭素を強アルカリの電解液に溶解させて吸収する二酸化炭素吸収部を備え、
前記電気化学反応部には、前記二酸化炭素吸収部で電解液に溶解された二酸化炭素が供給される、請求項1に記載の二酸化炭素処理装置。
【請求項3】
前記電解セルは、カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードの間に設けられたイオン交換膜と、前記カソードに隣接して設けられ、二酸化炭素が溶解した電解液が流れるカソード側液流路と、前記アノードに隣接して設けられ、電解液が流れるアノード側液流路と、を備える、請求項1に記載の二酸化炭素処理装置。
【請求項4】
二酸化炭素を電気化学的に還元する二酸化炭素処理方法であって、
夜間電力も含めた発電所から送電される電力を用いて常時、二酸化炭素を回収する第1工程と、
前記第1工程で回収された二酸化炭素を強アルカリ水溶液からなる電解液に接触させ、二酸化炭素を電解液に溶解させて吸収させる第2工程と、
前記第2工程で吸収された二酸化炭素を含む電解液に含まれる空気成分を除去する第3工程と、
昼間電力および太陽光発電装置で発生した電力を用いて、電解セルにより二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する第4工程と、を含む、二酸化炭素処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素処理装置、二酸化炭素処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガスや大気中の二酸化炭素を回収し、電気化学的に還元して有価物を得る技術が知られている。この技術は、カーボンニュートラルを達成し得る有望な技術であるが、経済性が最大の課題である。経済性を改善するためには、二酸化炭素の回収および還元において、エネルギー効率を高め、二酸化炭素の損失を低減することが重要である。
【0003】
二酸化炭素を回収する技術としては、ガス中の二酸化炭素を固体又は液体の吸着剤に物理的又は化学的に吸着させた後、熱等のエネルギーによって脱離させて利用する技術が知られている。また、二酸化炭素を電気化学的に還元する技術としては、ガス拡散層の電解液と接する側に二酸化炭素還元触媒を用いて触媒層を形成したカソードに対し、ガス拡散層の触媒層とは反対側から二酸化炭素ガスを供給して電気化学的に還元する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来、二酸化炭素を回収する技術と二酸化炭素を電気化学的に還元する技術は別々に研究開発が行われている。そのため、それぞれの技術を組み合わせた場合の総合的なエネルギー効率や二酸化炭素の損失低減効果は、各技術の効率から乗数的に決定できるものの、さらなる向上の余地がある。このように、二酸化炭素を回収する技術と二酸化炭素を電気化学的に還元する技術とを組み合わせた総合的な観点で、エネルギー効率や二酸化炭素の損失低減効果を高めることは意義深いと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、二酸化炭素を電気化学的に還元する技術では、二酸化炭素を回収する際に大量のエネルギーを投入して、高濃度の二酸化炭素を得る形式の技術が多く、エネルギー消費量の低減は大きな課題である。また、二酸化炭素の電気化学的な還元に供給される電解液に空気成分(窒素、酸素)が含まれると、二酸化炭素を電気化学的に還元する際に反応効率が低下するという課題がある。
【0007】
本願は上記課題の解決のため、二酸化炭素を回収する際のエネルギー消費量を低減するとともに、二酸化炭素を電気化学的に還元する際の反応効率を向上することを目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]二酸化炭素を吸収する吸収装置と、前記吸収装置で吸収された二酸化炭素を含む電解液から空気成分を除去する除去装置と、前記吸収装置で吸収された二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する電解セルを有する電気化学反応部と、前記電気化学反応部に電力を供給する太陽光発電装置と、を備える、二酸化炭素処理装置。
【0009】
本発明の二酸化炭素処理装置は、吸収装置で吸収された二酸化炭素を含む電解液から空気成分を除去する除去装置を備えるため、二酸化炭素を電気化学的に還元する際の反応効率を向上することができる。また、電気化学反応部に電力を供給する太陽光発電装置を備えるため、太陽光発電装置から日中の電解セルにおける二酸化炭素の電気化学的な還元に要する電力を供給することができ、結果として、二酸化炭素を回収する際のエネルギー消費量を低減することができる。
【0010】
[2]前記吸収装置は、二酸化炭素を強アルカリの電解液に溶解させて吸収する二酸化炭素吸収部を備え、
前記電気化学反応部には、前記二酸化炭素吸収部で電解液に溶解された二酸化炭素が供給される、[1]に記載の二酸化炭素処理装置。
【0011】
本発明の二酸化炭素処理装置は、二酸化炭素吸収部を備え、第1電気化学反応部には、二酸化炭素吸収部で電解液に溶解された二酸化炭素が供給されるため、二酸化炭素の濃縮を促進できる。
【0012】
[3]前記電解セルは、カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードの間に設けられたイオン交換膜と、前記カソードに隣接して設けられ、二酸化炭素が溶解した電解液が流れるカソード側液流路と、前記アノードに隣接して設けられ、電解液が流れるアノード側液流路と、を備える、[1]または[2]に記載の二酸化炭素処理装置。
【0013】
本発明の二酸化炭素処理装置は、電解セルにより二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元することができる。
【0014】
[4]二酸化炭素を電気化学的に還元する二酸化炭素処理方法であって、
夜間電力も含めた発電所から送電される電力を用いて常時、二酸化炭素を回収する第1工程と、
前記第1工程で回収された二酸化炭素を強アルカリ水溶液からなる電解液に接触させ、二酸化炭素を電解液に溶解させて吸収させる第2工程と、
前記第2工程で吸収された二酸化炭素を含む電解液に含まれる空気成分を除去する第3工程と、
昼間電力および太陽光発電装置で発生した電力を用いて、電解セルにより二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する第4工程と、を含む、二酸化炭素処理方法。
【0015】
本発明の二酸化炭素処理方法は、夜間電力も含めた発電所から送電される電力を用いて常時、二酸化炭素を回収するため、二酸化炭素を回収する時間が長く、回収量を高めることができる。また、昼間電力および太陽光発電装置で発生した電力を用いて、電解セルにより二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元するため、二酸化炭素を還元する際のエネルギー消費量を低減することができる。また、第1工程で回収された二酸化炭素を含む電解液に含まれる空気成分を除去するため、二酸化炭素を電気化学的に還元する際の反応効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、二酸化炭素を回収する際のエネルギー消費量を低減するとともに、二酸化炭素を電気化学的に還元する際の反応効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る二酸化炭素処理装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
[二酸化炭素処理装置]
図1は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素処理装置100を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る二酸化炭素処理装置100は、CO
2回収設備1と、吸収装置2と、除去装置3と、電気化学反応部4と、太陽光発電装置5と、気液分離部6と、酸素分離部7と、を備える。
【0020】
吸収装置2は、CO2吸収部21を備える。
除去装置3は、負圧チャンバー31と、減圧装置32とを備える。
電気化学反応部4は、電解セル41を備える。
【0021】
二酸化炭素処理装置100では、CO2回収設備1とCO2吸収部21は、ガス流路101で接続されている。CO2吸収部21と負圧チャンバー31は、液流路102で接続されている。負圧チャンバー31と電気化学反応部4は、液流路103で接続されている。電気化学反応部4と気液分離部6は、液流路104で接続されている。気液分離部6とCO2吸収部21は、液流路105で接続されている。電気化学反応部4と酸素分離部7は、液流路106,107で接続されている。負圧チャンバー3と減圧装置32は、ガス流路108で接続されている。電気化学反応部4と太陽光発電装置5は、送電線109で接続されている。
【0022】
上述の各流路は特に限定されず、公知の配管等を適宜使用できる。ガス流路101,108には、コンプレッサー等の送気手段や弁、流量計等の計測機器等を適宜設置することができる。また、液流路102,103,104,105,106,107には、ポンプ等の送液手段や弁、流量計等の計測機器等を適宜設置することができる。
【0023】
CO2回収設備(Air Contacto)1は、大気中の二酸化炭素を回収する。
【0024】
吸収装置2は、CO2回収設備1から送られてきた二酸化炭素を吸収する。CO2吸収部21には、大気、排ガス等の二酸化炭素を含むガスが供給される。CO2吸収部21では、ガス中の二酸化炭素ガスが電解液と接触し、二酸化炭素が電解液に溶解されて吸収される。二酸化炭素ガスと電解液とを接触させる手法としては、特に限定されず、例えば、電解液中にガスを吹き込んでバブリングする手法を例示できる。CO2回収設備1で回収された二酸化炭素は、ガス流路101を通じてCO2吸収部21へと送られる。
【0025】
CO2吸収部21では、二酸化炭素を吸収する吸収液として、強アルカリ水溶液からなる電解液を用いる。二酸化炭素は、酸素原子が電子を強く引きつけるために炭素原子が正の電荷(δ+)を帯びる。そのため、水酸化物イオンが多量に存在する強アルカリ水溶液では、二酸化炭素は水和状態からHCO3
-を経てCO3
2-まで溶解反応が進行しやすく、CO3
2-の存在比率が高い平衡状態となる。このことから、二酸化炭素は窒素、水素、酸素といった他のガスに比べて強アルカリ水溶液に溶解しやすく、CO2吸収部21ではガス中の二酸化炭素が選択的に電解液に吸収される。このように、CO2吸収部21で電解液を用いることで、二酸化炭素の濃縮を促進できる。
【0026】
CO2吸収部21で二酸化炭素が吸収された電解液は、液流路102と負圧チャンバー31を通じて電気化学反応部4へと送られる。
【0027】
電解液に用いる強アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液を例示できる。中でも、CO2吸収部21における二酸化炭素の溶解性に優れ、電気化学反応部4における二酸化炭素の還元が促進される観点から、水酸化カリウム水溶液が好ましく使用される。
【0028】
電気化学反応部4は、電解セルとして、電解セル41を備える。電気化学反応部4は、電解セル41により、二酸化炭素を電気化学的に還元する。より詳しくは、電気化学反応部4は、二酸化炭素の電気化学的還元反応によりエチレンを目的生成物とする反応パスにおいて、二酸化炭素から一酸化炭素への還元反応を実行する。なお、
図1では、1つの電解セルを示しているが、電気化学反応部は、電解セル41を備える電解セルを、複数積層して構成される電解セルスタックを備えることが好ましい。
【0029】
図1に示すように、電解セル41は、カソード411と、アノード412と、イオン交換膜413と、カソード側液流路を形成するカソード側液流路構造体414と、アノード側液流路を形成するアノード側液流路構造体415と、を備える。
【0030】
電解セル41では、カソード側液流路構造体414、カソード411、イオン交換膜413、アノード412、アノード側液流路構造体415が、この順に積層されている。また、カソード411とカソード側液流路構造体414との間にカソード側液流路が形成され、アノード412とアノード側液流路構造体415との間にアノード側液流路が形成されている。これらカソード側液流路とアノード側液流路は、カソード411、イオン交換膜413およびアノード412を挟んで互いに対向する位置に設けられる。これらカソード側液流路とアノード側液流路は、それぞれ複数設けられることが好ましく、その形状は、直線状の他、ジグザグ状であってもよい。また、カソード側液流路構造体414におけるカソード411とは反対側の面には給電体が設けられている。さらに、アノード側液流路構造体415におけるアノード412とは反対側の面には給電体が設けられている。
【0031】
給電体は、図示しない電気エネルギー貯蔵部と電気的に接続されている。また、カソード側液流路構造体414とアノード側液流路構造体415はいずれも導電体であり、電気エネルギー貯蔵部から供給される電力によってカソード411とアノード412の間に電圧を印加できるようになっている。
【0032】
カソード411は、二酸化炭素を還元する電極である。より詳しくは、電解セル41のカソード411は、主として二酸化炭素を一酸化炭素に還元する。ただし、生成した一酸化炭素の一部は、エチレンにまで還元されてもよい。
【0033】
カソード411としては、例えば、ガス拡散層と、当該ガス拡散層のカソード側液流路側に形成されたカソード触媒層と、を備える電極を例示できる。カソード触媒層は、その一部がガス拡散層中に入り込んで配置されていてもよい。また、ガス拡散層とカソード触媒層の間には、ガス拡散層よりも緻密な多孔質層が配置されていてもよい。
【0034】
カソード触媒層を形成するカソード触媒としては、二酸化炭素の還元反応に用いられる公知の触媒を使用できる。カソード触媒の具体例としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、チタン、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウム、鉛、錫等の金属、それらの合金や金属間化合物、ルテニウム錯体、レニウム錯体等の金属錯体を例示できる。中でも、二酸化炭素から一酸化炭素への還元反応に好ましいカソード触媒として、銀、金、亜鉛が挙げられる。カソード触媒としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。カソード触媒としては、金属粒子が炭素材料(カーボン粒子、カーボンナノチューブ、グラフェン等)に担持された担持触媒を使用してもよい。
【0035】
カソード411のガス拡散層としては、特に限定されず、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロスを例示できる。カソード411の製造方法は、特に限定されず、例えば、ガス拡散層のカソード側液流路側となる面に、カソード触媒を含む液状組成物のスラリーを塗布して乾燥する方法を例示できる。
【0036】
アノード412は、水酸化物イオンを酸化して酸素を生成する電極である。アノード412としては、例えば、ガス拡散層と、当該ガス拡散層のアノード側液流路側に形成されたアノード触媒層と、を備える電極を例示できる。アノード触媒層は、その一部がガス拡散層中に入り込んで配置されていてもよい。また、ガス拡散層とアノード触媒層の間には、ガス拡散層よりも緻密な多孔質層が配置されていてもよい。
【0037】
アノード触媒層を形成するアノード触媒としては、特に限定されず、公知のアノード触媒を使用できる。具体的には、例えば、白金、パラジウム、ニッケル等の金属、それらの合金や金属間化合物、酸化マンガン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ルテニウム、酸化リチウム、酸化ランタン等の金属酸化物、ルテニウム錯体、レニウム錯体等の金属錯体を例示できる。アノード触媒としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
アノード412のガス拡散層としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロスを例示できる。また、ガス拡散層としては、メッシュ材、パンチング材、多孔体、金属繊維焼結体等の多孔質体を用いてもよい。多孔質体の材質としては、例えば、チタン、ニッケル、鉄等の金属、これらの合金(例えばSUS)を例示できる。
【0039】
カソード側液流路構造体414およびアノード側液流路構造体415の材質としては、例えば、チタン、SUS等の金属、カーボンを例示できる。
【0040】
負圧チャンバー31は、CO2吸収部21液流路102を通じて送られてきた二酸化炭素を含む電解液を一時的に貯留する空間を有する。
減圧装置32は、負圧チャンバー31内を減圧(負圧)にして、負圧チャンバー31内に一時的に貯留された電解液に含まれる二酸化炭素以外の空気成分(窒素、酸素)を除去する。減圧装置32としては、例えば、真空ポンプが用いられる。
【0041】
太陽光発電装置5は、太陽光を受光して発電する太陽電池を備える。太陽光発電装置5によって得られた電力は、電解セル41において、二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元するために供給される。
【0042】
気液分離部6は、電気化学反応部4の電解セル41で発生した一酸化炭素を含む電解液から、一酸化炭素を分離して、一酸化炭素を回収する。
【0043】
酸素分離部7は、電気化学反応部4の電解セル41で発生した酸素を含む電解液から、酸素を分離して、酸素を回収する。
【0044】
電解セル41による二酸化炭素の還元反応について説明する。
【0045】
電解セル41は、CO2吸収部21から供給されて液流路102、負圧チャンバー3および液流路103を通じて送られてくる電解液が、カソード側液流路に流入するフローセルである。カソード411とアノード412に電圧が印加されることで、カソード側液流路を流れる電解液中の溶存二酸化炭素がカソード411で電気化学的に還元される。カソード側液流路の入口における電解液は、二酸化炭素が溶解されているためCO3
2-の存在比率が高い弱アルカリ状態になっている。一方、カソード側液流路を流れて還元が進行するにつれて溶存二酸化炭素量、すなわち電解液中のCO3
2-量が低下することで、カソード側液流路の出口では強アルカリ状態の電解液となる。
【0046】
上述したように電解セル41のカソード411では、二酸化炭素が還元されて生成する生成物は、主として一酸化炭素である。具体的には、カソード411では、以下のカソード半反応式で示される反応が進行することにより、ガス状生成物として一酸化炭素が生成する。生成したガス状の一酸化炭素は、カソード側液流路の出口から流出する。
[カソード半反応式]2CO3
2-+4H2O→2CO+8OH-
【0047】
電解セル41のカソード411で生じた水酸化物イオンは、イオン交換膜413を透過してアノード412へと移動し、以下のアノード半反応式で示される反応で酸化されて酸素が生成する。生成した酸素は、アノード412のガス拡散層を透過してアノード側液流路に流れ込み、アノード側液流路の出口から流出する。
[アノード半反応式]4OH-→O2+2H2O
【0048】
従って、電解セル41では、全体として、以下の全反応式で示される反応が進行する。
[全反応式]2CO3
2-+2H2O→2CO+O2+4OH-
【0049】
このように、本実施形態の二酸化炭素処理装置100では、電気化学反応部4に用いる電解液をCO2吸収部21の吸収液として共用し、電解液に溶解させたまま二酸化炭素を電気化学反応部4に供給して電気化学的に還元する。これにより、例えば、二酸化炭素を吸着剤に吸着させ、加熱によって脱離させて還元する場合に比べて、二酸化炭素の脱離に要するエネルギーが低減され、エネルギー効率を高くできる。
【0050】
ここで、上述したようにカソード側液流路の入口における電解液は、二酸化炭素が溶解されているためCO3
2-の存在比率が高く比較的アルカリが弱いアルカリ状態になっている。これに対して二酸化炭素の還元反応では、弱アルカリ下ではエチレンの選択生成反応が進行し難いため、目的とするエチレンの生成効率が悪いという課題がある。このため、上述したように電解セル41のカソード側液流路の出口から流出するガスは、一酸化炭素が主体である。
【0051】
これに対して、本実施形態の二酸化炭素処理装置100では、電解セル41のカソード側液流路の出口から流出する一酸化炭素を主体とするガスを、気液分離部6で回収する。回収された一酸化炭素を主体とするガスは、エチレンの製造に供給される。
【0052】
本実施形態の二酸化炭素処理装置によれば、吸収装置2で吸収された二酸化炭素を含む電解液から空気成分を除去する除去装置3を備えるため、二酸化炭素を電気化学的に還元する際の反応効率を向上することができる。また、電気化学反応部に電力を供給する太陽光発電装置5を備えるため、太陽光発電装置5から日中の電解セル41における二酸化炭素の電気化学的な還元に要する電力を供給することができ、結果として、二酸化炭素を回収する際のエネルギー消費量を低減することができる。
【0053】
[二酸化炭素処理方法]
本発明の実施形態に係る二酸化炭素処理方法は、例えば、上述の二酸化炭素処理装置100を用いることにより実行される。具体的には、本実施形態の二酸化炭素処理方法は、CO2回収設備1で夜間電力も含めた発電所から送電される電力を用いて常時、二酸化炭素を回収する工程(a)と、CO2吸収部21で強アルカリ水溶液からなる電解液に二酸化炭素ガスを接触させ、二酸化炭素を電解液に溶解させて吸収させる工程(b)と、除去装置3でCO2吸収部21により吸収された二酸化炭素を含む電解液に含まれる空気成分を除去する工程(c)と、昼間電力および太陽光発電装置5で発生した電力を用いて、電解セル41により二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する工程(d)と、を含むことが好ましい。本実施形態の二酸化炭素処理方法は、エチレンの製造方法に利用できる。
【0054】
なお、本発明は上記の各態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 CO2回収設備
2 吸収装置
3 除去装置
4 電気化学反応部
5 太陽光発電装置
6 気液分離部
7 酸素分離部
5 第2気液分離部
21 CO2吸収部
31 負圧チャンバー
32 減圧装置
41 電解セル
100 二酸化炭素処理装置