(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144831
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】蓄電装置の製造方法、蓄電装置、蓄電装置の劣化診断方法及び蓄電装置の劣化診断プログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20241004BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241004BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20241004BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20241004BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056969
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】玉井 敦
(72)【発明者】
【氏名】新庄 紗枝
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
5G503EA09
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】コスト及び環境負荷を抑制可能な蓄電装置の製造方法、及びこの製造方法によって作製される蓄電装置、並びに、蓄電装置の劣化診断方法及び蓄電装置の劣化診断プログラムを提供する。
【解決手段】正極及び負極を含む使用済み蓄電装置の容量の劣化状態を診断する診断工程S10と、診断工程S10の結果に基づき、正極の劣化による第1の容量低下率と、負極の劣化による第2の容量低下率と、他の要因による容量低下量とを評価する評価工程S20と、評価工程S20の結果において、第1の容量低下率及び第2の容量低下率が共に予め定められた閾値を下回りかつ、容量低下量が予め定められた閾値を上回る条件に該当するか否かを判定する判定工程S30と、判定工程S30の条件に該当した場合には、使用済み蓄電装置の劣化を回復する回復処理を実施する実施工程S40と、を含むことを特徴とする蓄電装置の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を含む使用済み蓄電装置の容量の劣化状態を診断する診断工程と、
前記診断工程の結果に基づき、前記正極の劣化による第1の容量低下率と、前記負極の劣化による第2の容量低下率と、他の要因による容量低下量とを評価する評価工程と、
前記評価工程の結果において、前記第1の容量低下率及び前記第2の容量低下率が共に予め定められた閾値を下回りかつ、前記容量低下量が予め定められた閾値を上回る条件に該当するか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程の前記条件に該当した場合には、前記使用済み蓄電装置の劣化を回復する回復処理を実施する実施工程と、
を含むことを特徴とする蓄電装置の製造方法。
【請求項2】
前記診断工程において、前記使用済み蓄電装置の充放電時に得られる物理量データに基づき、前記使用済み蓄電装置の容量の劣化状態の診断が実施される
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項3】
前記診断工程において、
前記使用済み蓄電装置について、前記使用済み蓄電装置の基準容量の変化に対する電圧の変化量を示す診断用dV/dQ曲線を取得し、
前記評価工程において、
前記診断用dV/dQ曲線と、予め取得した前記使用済み蓄電装置の初期状態におけるdV/dQ曲線とを比較し、
前記初期状態におけるdV/dQ曲線に対する前記診断用dV/dQ曲線の前記正極に基づく2つのピーク間の幅の変化率を前記第1の容量低下率とし、
前記初期状態におけるdV/dQ曲線に対する前記診断用dV/dQ曲線の前記負極に基づく2つのピーク間の幅の変化率を前記第2の容量低下率とし、
前記初期状態におけるdV/dQ曲線に対する前記診断用dV/dQ曲線のシフト量を他の要因による容量低下量とする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項4】
前記実施工程における前記回復処理は、前記使用済み蓄電装置の前記正極又は前記負極にキャリア元素を補充する処理である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項5】
前記キャリア元素を補充する処理は、前記使用済み蓄電装置を解体して取り出された前記正極又は前記負極に対して行われる
ことを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の蓄電装置の製造方法によって作製された蓄電装置。
【請求項7】
正極及び負極を含む蓄電装置の劣化診断方法であって、
使用済みの蓄電装置の容量の劣化状態を診断する診断工程と、
前記診断工程の結果に基づき、前記正極の劣化による第1の容量低下率と、前記負極の劣化による第2の容量低下率と、他の要因による容量低下量とを評価する評価工程と、
前記評価工程の結果において、前記第1の容量低下率及び前記第2の容量低下率が共に予め定められた閾値を下回りかつ、前記容量低下量が予め定められた閾値を上回る条件に該当するか否かを判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする蓄電装置の劣化診断方法。
【請求項8】
コンピュータに、正極及び負極を含む使用済み蓄電装置の劣化診断を実行させるプログラムであって、
前記使用済み蓄電装置の容量の劣化状態を診断させて診断結果を取得させ、
前記診断結果に基づき、前記正極の劣化による第1の容量低下率と、前記負極の劣化による第2の容量低下率と、他の要因による容量低下量とを評価させて評価結果を取得させ、
前記評価結果において、前記第1の容量低下率及び前記第2の容量低下率が共に予め定められた閾値を下回りかつ、前記容量低下量が予め定められた閾値を上回る条件に該当するか否かを判定させる
ことを特徴とする蓄電装置の劣化診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の製造方法、蓄電装置、蓄電装置の劣化診断方法及び蓄電装置の劣化診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、EV(Electric Vehicle:電気自動車)やHEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド電気自動車)等、二次電池等の蓄電装置(バッテリとも称する)から供給される電力を利用する電動モータで走行する車両の開発が進んでいる。このような電動モータで走行する車両においては、バッテリの劣化状態を常に把握しておくことが重要である。また、使用によって劣化したと判断されたバッテリは回収され、電極の取出し、活物質との分離、セルの再構築といったリサイクル処理が施されて再生バッテリとして利用される。
また近年では、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。
【0003】
このため、車両に搭載されたバッテリの劣化状態を判定するための多くの技術が開示されている。例えば、特許文献1には、劣化の原因がリチウム(Li)イオンの減少か否かを判定し、算出した減少量に相当するリチウムイオンを補充用電極から補充し、電池容量を回復させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二次電池に関する技術においては、使用済みの二次電池を回復させる際のコスト及び環境負荷を抑制することが課題である。しかし、特許文献1の技術では、正極又は負極のいずれが劣化しているかを判別できず、回復可能なセルを特定することが困難である。また特許文献1の技術では、劣化の要因がリチウムイオンの減少であるか否かを判定するために、2種類の活物質を含むことで得られる電圧曲線を利用するという制約があるため、限定的な材料にしか適用できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、コスト及び環境負荷を抑制可能な蓄電装置の製造方法、及びこの製造方法によって作製される蓄電装置、並びに、蓄電装置の劣化診断方法及び蓄電装置の劣化診断プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係る蓄電装置の製造方法は、正極及び負極を含む使用済み蓄電装置の容量の劣化状態を診断する診断工程と、
前記診断工程の結果に基づき、前記正極の劣化による第1の容量低下率と、前記負極の劣化による第2の容量低下率と、他の要因による容量低下量とを評価する評価工程と、
前記評価工程の結果において、前記第1の容量低下率及び前記第2の容量低下率が共に予め定められた閾値を下回りかつ、前記容量低下量が予め定められた閾値を上回る条件に該当するか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程の前記条件に該当した場合には、前記使用済み蓄電装置の劣化を回復する回復処理を実施する実施工程と、を含むことを特徴とする。
上記構成からなる蓄電装置の製造方法では、使用済み蓄電装置の劣化状態に応じた回復処理を施すため、蓄電装置の製造に係るコスト及び環境負荷を抑制できる。
【0008】
(2)上記(1)に記載の蓄電装置の製造方法では、前記診断工程において、前記使用済み蓄電装置の充放電時に得られる物理量データに基づき、前記使用済み蓄電装置の容量の劣化状態の診断が実施されてもよい。
上記構成からなる蓄電装置の製造方法では、使用済み蓄電装置の充放電時に得られる物理量データに基づいて診断が実施されるため、使用済み蓄電装置の容量の劣化の要因を特定でき、コスト及び環境負荷をより抑制できる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)に記載の蓄電装置の製造方法では、前記診断工程において、
前記使用済み蓄電装置について、前記使用済み蓄電装置の基準容量の変化に対する電圧の変化量を示す診断用dV/dQ曲線を取得し、
前記評価工程において、
前記診断用dV/dQ曲線と、予め取得した前記使用済み蓄電装置の初期状態におけるdV/dQ曲線とを比較し、
前記初期状態におけるdV/dQ曲線に対する前記診断用dV/dQ曲線の前記正極に基づく2つのピーク間の幅の変化率を前記第1の容量低下率とし、
前記初期状態におけるdV/dQ曲線に対する前記診断用dV/dQ曲線の前記負極に基づく2つのピーク間の幅の変化率を前記第2の容量低下率とし、
前記初期状態におけるdV/dQ曲線に対する前記診断用dV/dQ曲線のシフト量を他の要因による容量低下量としてもよい。
上記構成からなる蓄電装置の製造方法では、dV/dQ曲線の初期状態からの変化を評価するため、使用済み蓄電装置の容量の劣化の要因とその程度を特定でき、コスト及び環境負荷をより抑制できる。
【0010】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の蓄電装置の製造方法では、前記実施工程における前記回復処理は、前記使用済み蓄電装置の前記正極又は前記負極にキャリア元素を補充する処理であってもよい。
上記構成からなる蓄電装置の製造方法では、回復処理において正極又は負極にキャリア元素を補充するため、正極又は負極の分解及び再構築を必要とせず、コスト及び環境負荷をより抑制できる。
【0011】
(5)上記(4)に記載の蓄電装置の製造方法では、前記キャリア元素を補充する処理は、前記使用済み蓄電装置を解体して取り出された前記正極又は前記負極に対して行われてもよい。
上記構成からなる蓄電装置の製造方法では、使用済み蓄電装置を解体して取り出された正極又は負極に対してキャリア元素を補充するため、より適切な量のキャリア元素を補充することができ、コスト及び環境負荷をより抑制できる。
【0012】
(6)本発明の一態様に係る蓄電装置は、上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の蓄電装置の製造方法によって作製される蓄電装置である。
上記構成からなる蓄電装置は、使用済み蓄電装置の劣化状態に応じた回復処理を施されるため、蓄電装置の製造に係るコスト及び環境負荷を抑制できる。
【0013】
(7)本発明の一態様に係る蓄電装置の劣化診断方法は、正極及び負極を含む蓄電装置の劣化診断方法であって、
使用済みの蓄電装置の容量の劣化状態を診断する診断工程と、
前記診断工程の結果に基づき、前記正極の劣化による第1の容量低下率と、前記負極の劣化による第2の容量低下率と、他の要因による容量低下量とを評価する評価工程と、
前記評価工程の結果において、前記第1の容量低下率及び前記第2の容量低下率が共に予め定められた閾値を下回りかつ、前記容量低下量が予め定められた閾値を上回る条件に該当するか否かを判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
上記構成からなる蓄電装置の劣化診断方法では、使用済み蓄電装置の劣化状態を適切に判定できるため、蓄電装置の製造に係るコスト及び環境負荷を抑制できる。
【0014】
(8)本発明の一態様に係る蓄電装置の劣化診断プログラムは、コンピュータに、正極及び負極を含む使用済み蓄電装置の劣化診断を実行させるプログラムであって、
前記使用済み蓄電装置の容量の劣化状態を診断させて診断結果を取得させ、
前記診断結果に基づき、前記正極の劣化による第1の容量低下率と、前記負極の劣化による第2の容量低下率と、他の要因による容量低下量とを評価させて評価結果を取得させ、
前記評価結果において、前記第1の容量低下率及び前記第2の容量低下率が共に予め定められた閾値を下回りかつ、前記容量低下量が予め定められた閾値を上回る条件に該当するか否かを判定させることを特徴とする。
上記構成からなる蓄電装置の劣化診断プログラムでは、使用済み蓄電装置の劣化状態を適切に判定できるため、蓄電装置の製造に係るコスト及び環境負荷を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る蓄電装置の製造方法、及び、この製造方法によって作製される蓄電装置によれば、蓄電装置の製造に係るコスト及び環境負荷を抑制できる。また、本発明に係る、蓄電装置の劣化診断方法及び蓄電装置の劣化診断プログラムによれば、蓄電装置の劣化状態の判定を高い精度で行うことができ、蓄電装置の製造に係るコスト及び環境負荷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る蓄電装置の製造方法の全体の流れを説明するためのフロー図である。
【
図2】初期状態の正極と負極それぞれの単極でのdV/dQ曲線の一例を説明するための図である。
【
図3】蓄電装置のdV/dQ曲線の実測曲線とフィッティングさせた曲線の一例を説明するための図である。
【
図4】初期状態におけるdV/dQ曲線と診断用dV/dQ曲線との比較を説明するための図である。
【
図5】検量線を作成するためのグラフの一例を説明するための図である。
【
図6】実施形態に係る蓄電装置の製造方法に係るシステムの構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されないことは自明である。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。また、以下の実施形態の各構成要素は、互いに組み合わせることができる。
また本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書中において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0018】
以下に説明する本実施形態の蓄電装置の製造方法では、正極及び負極を含む使用済み蓄電装置の容量の劣化状態を診断する診断工程と、診断工程の結果に基づき、正極の劣化による第1の容量低下率と、負極の劣化による第2の容量低下率と、他の要因による容量低下量とを評価する評価工程と、評価工程の結果において、第1の容量低下率及び第2の容量低下率が共に予め定められた閾値を下回りかつ、容量低下量が予め定められた閾値を上回る条件に該当するか否かを判定する判定工程と、判定工程の条件に該当した場合には、使用済み蓄電装置の劣化を回復する回復処理を実施する実施工程と、を含む。
【0019】
本実施形態の蓄電装置は、再生可能な電池である。蓄電装置は、モバイルバッテリ(Mobile Battery)とも称される可搬バッテリであってもよい。例えば、リチウムイオンバッテリ等の二次電池であってもよい。本実施形態に係る蓄電装置を形態・構造で区別した場合には、巻回型(円筒型)電池、積層型(扁平型)電池等、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。使用済み蓄電装置とは、少なくとも1回は充放電を実施した蓄電装置を意味する。
【0020】
本実施形態の蓄電装置は、例えば、リチウムイオン電池等、充電と放電とを繰り返すことが可能な二次電池である。蓄電装置を構成する二次電池としては、例えば、鉛蓄電池、ニッケル・水素電池、ナトリウムイオン電池等の他、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ、または二次電池とキャパシタとを組み合わせた複合電池等も考えられる。蓄電装置は、車両等に対して着脱自在に装着される、例えば、カセット式等のバッテリパックであってもよい。この場合、蓄電装置は、車両などの外部の充電器から導入される電力を蓄え、車両の走行のための放電を行う。
【0021】
蓄電装置の製造方法とは、換言すれば、再生回復方法を意味する。蓄電装置の製造の際には、電解質、セパレータ、外装材といった電極以外の蓄電装置の構成要素は、適切な処理を施した上で再利用してもよく、新たな構成要素を採用して蓄電装置を製造してもよい。
【0022】
本実施形態の蓄電装置は、外装材の内部に封止されたセル(単電池)を含む。セルの構造としては、例えば、負極集電体の片面に負極活物質層が配置された負極と、正極集電体の片面に正極活物質層が配置された正極と、負極と正極との間に設けられた電解質層とを積層した構成が挙げられる。正極にはリチウム酸化物が含まれる。負極は、主に黒鉛や酸化ケイ素(SiO)が含まれる。
【0023】
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni-Co-Mn)O2、LiFePO4及びこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸化合物、リチウム-遷移金属硫酸化合物等が挙げられる。2種以上の正極活物質が併用されてもよい。なお、上記に例示した以外の正極活物質が用いられてもよい。
【0024】
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、MCMB(メソフェーズカーボンマイクロビーズ)型黒鉛、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn等のリチウムと合金化する材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。2種以上の負極活物質が併用されてもよい。なお、上記に例示した以外の負極活物質が用いられてもよい。
【0025】
次に、
図1を用いて、本実施形態の蓄電装置の製造法における各工程を説明する。
【0026】
[診断工程]
診断工程(S10)においては、正極及び負極を含む使用済み蓄電装置の容量の劣化状態を診断する。診断工程(S10)では、使用済み蓄電装置の充放電時に得られる物理量データに基づき、使用済み蓄電装置の容量の劣化状態の診断が実施されてもよい。物理量データとは、例えば、充電時の電圧値及び電流値等である。
【0027】
(初期状態)
診断工程(S10)の事前準備として、より具体的には、例えば、先ず診断の対象となる蓄電装置と同仕様の蓄電装置を解体し、コインセル単位における単極データ、即ち、
図2に例示するような、初期状態の正極と負極それぞれの単極でのdV/dQ曲線を得る。さらに、これら単極のdV/dQ曲線を足し合わせ、
図3に示すように、蓄電装置の実測曲線(
図3の点線で描かれた曲線)にフィッティングさせる。
図3では、フィッティングさせた曲線を実線で示す。これにより、実測曲線の各極値を正極と負極に帰属できる。このように、使用済み蓄電装置の初期状態におけるdV/dQ曲線を予め取得する。そして、dV/dQ曲線における正極及び負極それぞれに基づく各ピーク位置を決定しかつ、正極及び負極それぞれの初期状態におけるピーク幅を決定する。
【0028】
なお、
図2及び
図3において、横軸はセルの容量(Ah)、縦軸は基準容量の変化に対する電圧の変化量を示す(dV/dQ)。
【0029】
ここで、満充電状態を100%として、充電率又は充電状態(SOC:State Of Charge)の5~95%の間にピーク位置が検出できれば、微分容量解析が可能となる。具体的には、初期状態におけるdV/dQ曲線において、正極に基づく2つのピークを特定し、これらのピーク間の幅を特定する。
図2及び
図3において、点線との交点に正極に基づく2つのピークが位置している。また、初期状態におけるdV/dQ曲線において、負極に基づく2つのピークを特定し、これらのピーク間の幅を特定する。
図2及び
図3において、点線との交点に負極に基づく2つのピークが位置している。
【0030】
例えば、目安として、SOCが低い側で0~30%の間の2つのピークを正極のピーク、30~60%の間の2つのピークを負極(本実施形態の例ではグラファイト)のピーク(点線Grとの交点)、SOCが高い側で60~100%の間の2つのピークを負極中のシリコン酸化物(SiO)のピーク(点線SiOとの交点)として判定してもよい。また、正極のピークはdV/dQの負の側へ凸となり、負極のピークはdV/dQの正の側へ凸となることでも判別できる。なお、電極を構成する材料に由来するピークが発現するが、例えば負極がSiOを含有しない場合には、SiOに由来するピークは発現しない。
【0031】
(バッテリ使用開始後)
バッテリ使用開始後は、低電流下での充電により、電圧及び電流を継時で取得する。電流は比較的低電流であることが重要である。電流値を時間で積分することで容量が得られ、これより容量に対する電圧値の曲線が得られる。さらに、電圧値を容量で微分することで容量に対する微分容量曲線(dV/dQ曲線)を得ることができる。
【0032】
充電のレートは、一般的な0.2~0.5Cであっても解析可能である。しかし、例えば、0.02~0.07Cの低レートであることで、より高精度の解析が可能となる。なお、ある程度充電が進み、電圧が一定となった場合には、電流を段階的に下げて充電を行ってもよい。
【0033】
dV/dQ曲線は、上述のように、蓄電装置の充放電曲線における電圧について、基準容量での微分値を計算することによって得られる。このような方法によれば、劣化判定対象の蓄電装置の基準容量に対する電圧の変動特性を精度良く認識することができるので、生成した劣化判定用のdV/dQ曲線を、当該蓄電装置の初期状態において取得されたdV/dQ曲線と比較することにより、その時点のバッテリが初期状態からどの程度劣化したかを評価・判定することが可能となる。
【0034】
使用済み蓄電装置について取得したdV/dQ曲線を、使用済み蓄電装置の基準容量の変化に対する電圧の変化量を示す診断用dV/dQ曲線と称する。
【0035】
[評価工程]
評価工程(S20)では、診断工程(S10)の結果に基づき、正極の劣化による第1の容量低下率と、負極の劣化による第2の容量低下率と、他の要因による容量低下量とをそれぞれ評価する。
【0036】
具体的には、使用済み蓄電装置のセルについて、それぞれの電極に由来する2つのピークを特定し、初期状態とバッテリ使用開始後の状態におけるこれら2つのピーク間の幅(ピーク幅)の変化を評価する。すなわち、バッテリ使用開始後の状態における、正極及び負極それぞれのピーク幅を決定し、上述した初期状態におけるピーク幅と比較することで蓄電装置の使用によるピーク幅の変化を評価する。
【0037】
(第1の容量低下率及び第2の容量低下率)
評価工程(S20)では、初期状態におけるdV/dQ曲線と診断用dV/dQ曲線とを比較し、正極及び負極に基づく2つのピーク間の幅の変化率を算出する。そして、初期状態におけるdV/dQ曲線に対する診断用dV/dQ曲線の正極に基づく2つのピーク間の幅の変化率を前記第1の容量低下率とし、初期状態におけるdV/dQ曲線に対する診断用dV/dQ曲線の負極に基づく2つのピーク間の幅の変化率を第2の容量低下率と規定する。
【0038】
図4に、初期状態におけるdV/dQ曲線と診断用dV/dQ曲線との比較を示す。
図4では、実線が初期状態におけるdV/dQ曲線、点線が診断用dV/dQ曲線を示している。また、診断用dV/dQ曲線は重複を避けるために縦軸に沿ってずらしている。
図4に示すように、初期状態におけるdV/dQ曲線と診断用dV/dQ曲線とを比較すると、正極及び負極に基づく2つのピーク間の幅が変化していることがわかる。
【0039】
(他の要因による容量低下量)
また、評価工程(S20)では、初期状態におけるdV/dQ曲線に対する診断用dV/dQ曲線のシフト量を他の要因による容量低下量と規定する。初期状態におけるdV/dQ曲線に対する診断用dV/dQ曲線のシフト量は、正極又は負極の劣化とは異なる要因によるセルの容量低下量を意味し、Liを含有する負極被膜の堆積による、充放電に関与するLi量の減少が主因であると判断される。例えば、負極に基づく2つのピークの中点がシフトした量を、他の要因による容量低下量とする。
【0040】
[判定工程]
【0041】
判定工程(S30)では、評価工程(S20)の結果において、第1の容量低下率及び第2の容量低下率が共に予め定められた閾値を下回りかつ、容量低下量が予め定められた閾値を上回る条件に該当するか否かを判定する。
【0042】
本実施形態の蓄電装置の製造方法では、dV/dQ曲線から得られる情報に基づいて、蓄電装置の第1の容量低下率、第2の容量低下率及び他の要因による容量低下量をそれぞれ判定するため、回復できるセルと回復できないセルの判別ができかつ、その要因がいずれの電極の劣化であるか、あるいは他の要因による容量の低下であるかについての情報も得られる。例えば、特許文献1に開示されている技術では、正極及び負極それぞれの劣化の判別が出来ないため、回復できるセルと回復できないセルの判別がつかない。すなわち、特許文献1に開示されている技術では、正負極どちらも劣化していない場合に回復できるセル(Liの減少のみで容量が低下したセル)であると判断され、これ以外は回復できないセルと判断される。
【0043】
診断工程(S10)から判定工程(S30)までは、例えば、蓄電装置の充電のためにバッテリ交換器(Battery Exchanger)に装着された際に実施してもよい。バッテリ交換器は充電機能、放電機能を有する。なお、定格の充放電環境であるSOCが0~100%の充電時に実施することが好ましいが、満充電から正極のピークが収まる範囲であれば、本実施形態の上記の工程を適用できる。
【0044】
第1の容量低下率及び第2の容量低下率の評価においては、初期状態におけるピーク幅に対する、バッテリ使用開始後の状態におけるピーク幅の変化率が予め定められた閾値以下となるか等の情報に基づいて評価を行ってもよい。また、第1の容量低下率及び第2の容量低下率の変化の評価においては、電極を構成する材料に由来する複数のピーク幅のそれぞれについて上記のような評価を行ってもよい。
【0045】
[実施工程]
判定工程(S30)の上記条件に該当した場合には、実施工程(S40)において、使用済み蓄電装置の劣化を回復する回復処理を実施する。回復処理では、使用済み蓄電装置を解体して取り出された正極又は前記負極に対し、キャリア元素を補充する。キャリア元素としては、例えばリチウム(Li)が挙げられる。正極又は負極に補充するキャリア元素の量は次のように決定する。
【0046】
先ず、診断の対象となる蓄電装置と同仕様の蓄電装置について、任意の複数の使用状態における、蓄電装置の初期状態に対する容量低下量をそれぞれ測定する。また、各使用状態における負極上に堆積したLiの量を算出する。負極上に堆積したLiは、蓄電装置を解体して負極上に皮膜状に形成されたLiをICP発光分光分析法を用いて測定することで算出する。電極に堆積したLiは充放電に寄与せず、容量低下量とこのような堆積したLi量は強い相関を持つ。そのため、容量低下量と負極上のLi量に基づく検量線を作成する。このような検量線に基づいて、容量低下量から充放電に寄与しなくなったLi量を算出することで、蓄電装置の回復に必要な量のLiを補充することができる。
【0047】
図5に、検量線を作成するためのグラフの一例を示す。
図5のグラフの横軸は初期状態に対するセルの容量低下量であり、縦軸は初期状態に対する負極中のLi量(負極上に堆積したLi)である。対象とする蓄電装置と同仕様の蓄電装置について、初期状態に対する容量低下量と負極中のLi量とを測定し、これらの関係から、
図5に例示するような検量線を作成する。
【0048】
なお、Liの補充は、正極及び負極のいずれに対して行ってもよいが、例えば負極に補充してもよい。電極へのLiの補充においては、電極とリチウム金属又はリチウム合金を多孔質の絶縁物を介して接触させたまま、リチウムイオンを含有する電解液中に浸漬させ、電極を+極とし、接触させたリチウム金属又はリチウム合金を-極として通電することで実施してもよい。
【0049】
電極にキャリア元素を補充する技術においては、キャリア元素が過剰に補充(ドープ)された場合、充放電に寄与しないキャリア元素が電極の表面で還元される等して、短絡等の不安全事象につながることがあった。本実施形態の蓄電装置の製造方法では、容量低下量に基づいてリチウムイオンの補充量を決定するため、確実に充放電に寄与する量のリチウムイオンを補充することができ、リチウムイオンの過剰なドープによる短絡等の危険性を回避できる。過剰にドープした場合、充放電に寄与しないLiイオンは負極表面で還元され、金属Li化し、短絡などの不安全事象に繋がる。
【0050】
判定工程(S30)の上記条件に該当しない場合には、正極又は負極の劣化が要因であるため、劣化の要因となる電極を交換する(S50)。
【0051】
そして、満充電時のセル容量を測定し、回復効果を確認する(S60)。
【0052】
蓄電装置の一般的なリサイクル処理では、蓄電装置を分解して電極を取り出した後、電極の活物質を分離し、再度活物質を補充したり、新たな電極を設けたりといった工程が必要となる。しかし、本実施形態の蓄電装置の製造方法では、回復処理が必要であると判断された蓄電装置から取り出した電極に対して適切な回復処理を施すことによって、蓄電装置の製造に係るコストと環境負荷を抑制することができる。
【0053】
本実施形態の蓄電装置の製造方法は、性能が低下した蓄電装置に対して、評価基準に該当する部位を再生し、性能を復元させる、いわゆるリビルドバッテリーの製造方法であると換言できる。
【0054】
上述の実施形態では、モバイルバッテリを例に挙げて説明した。しかし、本発明の一態様に係る蓄電装置は、車両に搭載された車載バッテリであってもよい。本発明の一態様に係る蓄電装置は、車両に搭載されるバッテリに限定されるものではなく、車載以外のバッテリにも適用できるものである。この場合、車両外部の充電器から充電を行う際に、車載バッテリの容量の劣化状態を診断してもよい。
【0055】
本発明においては、回復したい電池に対して、微分容量曲線を取得し、正極容量減少、負極容量減少、容量シフトの量のいずれであるかを判別、回復できるセルを選定し適切な回復量を設定できる。また、本手法は電池の形態によらず、円筒、角型、ラミネートセル、いずれの形状においても容量の回復が可能となる。
【0056】
次に、上記の実施形態の蓄電装置を実施するためのシステムの構成の一例を説明する。
図6に示すシステム1は、例えば、充電ステーション10と、サーバ装置200とを備え、概略構成される。
【0057】
通信装置106と、サーバ装置200とは、ネットワークNWを介して互いに通信する。ネットワークNWは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、プロバイダ装置、無線基地局等を含む無線通信の通信網である。
【0058】
図6のシステム1は、充電ステーション10に充電のために接続されたモバイルバッテリ40の劣化状態を解析・判定するためのシステムである。このシステム1では、充電ステーション10が備える充電ユニット100が、算出したモバイルバッテリ40の状態の変化に関連するそれぞれの特性データを、ネットワークNWを介してサーバ装置200に送信する。そして、システム1では、サーバ装置200が、充電ユニット100により送信されたそれぞれの特性データに基づいて、充電ステーション10に接続されたモバイルバッテリ40の劣化状態を解析する。システム1では、サーバ装置200が、モバイルバッテリ40の劣化状態を解析した結果(解析結果)の情報を、ネットワークNWを介して充電ステーション10に送信する。
【0059】
なお、システム1は、サーバ装置200が、モバイルバッテリ40の劣化状態を解析した結果に基づいて、モバイルバッテリ40の劣化状態の学習を行うようにしてもよい。これにより、システム1は、サーバ装置200が、充電ステーション10が備えるモバイルバッテリ40の劣化状態をより適切に管理することができる。
【0060】
充電ユニット100は、例えば、充電ステーション10に接続されたモバイルバッテリ40の状態に関連する物理量を示す物理量データを取得するバッテリセンサ(取得部)42と、物理量データに基づいて、モバイルバッテリ40の状態変化に関連する特性を観測する制御部(観測部)36と、観測された特性を表す複数の特性データをサーバ装置200に送信する通信装置(送信部)50と、を備える。
【0061】
バッテリセンサ102は、モバイルバッテリ40の電流値、電圧値、容量値等を検出する。バッテリセンサ102は、検出したモバイルバッテリ40の電流値、電圧値、容量値等の物理量データを制御部104に出力する。
【0062】
制御部104は、バッテリセンサ102により出力されたモバイルバッテリ40の電流値、電圧値、容量値等の物理量データを観測し、観測した物理量データに基づいてモバイルバッテリ40の状態を表す特性データを生成する。特性データとは、例えば、モバイルバッテリ40の劣化状態を解析するために用いるモバイルバッテリ40のdV/dQを表すデータである。すなわち、制御部104は、バッテリ40の劣化状態を解析(診断・判定)するために用いる、バッテリ40の状態の変化に関連する特性を算出する。例えば、制御部104は、バッテリセンサ102により出力された電流値と、電圧値と、容量値(正極値及び負極値から求められる)とを観測して、バッテリ40の状態の変化を表す正極単極に関するデータ及び負極単極に関するデータを算出する。
【0063】
dV/dQを表す特性データは、
図2に例示するような、例えば、観測して得たそれぞれの容量値を横軸とし、これに対応する電圧値の容量微分を縦軸とした充放電曲線から得られるものである。このdV/dQは、モバイルバッテリ40の劣化状態の解析に用いるデータである。
【0064】
制御部104は、上記のように生成された特性データを、観測時間の情報と、モバイルバッテリ40が充電されている状態であるか放電している状態であるかの情報とを含めて、通信装置106に出力する。また、特性データには、モバイルバッテリ40の温度の変化を示す情報や、モバイルバッテリ40のSOC(バッテリ充電率)の情報が含まれていてもよい。
【0065】
通信装置106は、制御部104により出力された、それぞれの観測時間ごとのモバイルバッテリ40の特性データを、ネットワークNWを介した通信によってサーバ装置200に送信する。
【0066】
サーバ装置200は、充電ステーション10が備えるモバイルバッテリ40の劣化状態を管理する。サーバ装置200は、例えば、通信部(受信部)202と、診断部(解析部)204と、を備える。通信部202と診断部204とは、それぞれ、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。また、これらの構成要素のうちの一部又は全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。また、これらの構成要素の機能のうちの一部又は全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予めサーバ装置200が備えるHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよい。あるいは、プログラムは、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納され、この記憶媒体がサーバ装置200に備えられるドライブ装置に装着されることで、サーバ装置200が備えるHDDやフラッシュメモリにインストールされる構成でもよい。
【0067】
通信部202は、ネットワークNWを介して、充電ステーション10が備える通信装置106との間で通信を行うことで情報のやり取りをする。通信部202は、充電ステーション10が備える充電ユニット100により送信されたモバイルバッテリ40のそれぞれの特性データを、ネットワークNWを介した通信によって受信する。通信部202は、受信したモバイルバッテリ40の、それぞれの特性データを、診断部204に出力する。
【0068】
診断部204は、通信部202から出力された、モバイルバッテリ40の、それぞれの特性データに基づいて、モバイルバッテリ40の劣化状態を解析する。より具体的には、診断部204は、通信部202により出力された、モバイルバッテリ40の、それぞれの特性データを収集する。そして、診断部204では、上述した実施形態の診断工程、評価工程及び判定工程を実施することで、モバイルバッテリ40の劣化状態を解析する。
【0069】
また、本発明の他の実施形態によれば、コンピュータに、正極及び負極を含む使用済み蓄電装置の劣化診断を実行させるプログラムであって、使用済み蓄電装置の容量の劣化状態を診断させて診断結果を取得させ、診断結果に基づき、正極の劣化による第1の容量低下率と、負極の劣化による第2の容量低下率と、他の要因による容量低下量とを評価させて評価結果を取得させ、評価結果において、第1の容量低下率及び第2の容量低下率が共に予め定められた閾値を下回りかつ、容量低下量が予め定められた閾値を上回る条件に該当するか否かを判定させるプログラムが提供される。このプログラムは、コンピュータ可読媒体に格納されてもよい。このプログラムは、コンピュータを、上述の制御部36や診断部204として機能させるためのものであってもよい。
【0070】
本発明は、コスト及び環境負荷を抑制可能な蓄電装置の製造方法、及びこの製造方法によって作製される蓄電装置、並びに、蓄電装置の劣化診断方法及び蓄電装置の劣化診断プログラムを提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【符号の説明】
【0071】
1 システム
10 充電ステーション
200 サーバ装置
40 モバイルバッテリ