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特開2024-144834発光素子駆動装置、および発光システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144834
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】発光素子駆動装置、および発光システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20241004BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20241004BHJP
   H05B 45/38 20200101ALI20241004BHJP
   H05B 45/397 20200101ALI20241004BHJP
   H05B 45/325 20200101ALI20241004BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H05B45/10
H05B45/38
H05B45/397
H05B45/325
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056974
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神原 大輔
【テーマコード(参考)】
3K273
5H730
【Fターム(参考)】
3K273AA02
3K273AA05
3K273BA31
3K273CA02
3K273EA07
3K273EA22
3K273EA25
3K273EA35
3K273FA14
3K273FA26
3K273GA06
3K273GA14
3K273GA24
5H730AA02
5H730AS04
5H730AS11
5H730BB14
5H730BB82
5H730BB88
5H730EE59
5H730FD21
5H730FD31
5H730FF01
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】複数チャンネルの発光素子を駆動する場合に、発光素子の電流精度を向上させることができる発光素子駆動装置を提供する。
【解決手段】発光素子駆動装置(1)において、第1電圧保持部(115A)は、第2発光素子(200)がオフ状態のときに誤差電圧(Vcomp1)と、スロープ電圧(SLP1)の最も低い電圧である第1電圧(ローレベル電圧)との差分を第1差分電圧として保持するように構成され、第2電圧保持部(115B)は、前記第2発光素子がオン状態のときに前記誤差電圧と前記スロープ電圧の前記第1電圧との差分を第2差分電圧として保持するように構成され、補正部(115C)は、前記第2差分電圧と前記第1差分電圧との差分に基づいて前記誤差電圧と前記スロープ電圧の前記第1電圧との間の電圧差を補正するように構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧に基づいて第1発光素子に第1電源電圧を供給する第1スイッチング電源回路をスイッチング制御するように構成される電源制御部と、
前記入力電圧に基づいて第2電源電圧が供給される第2発光素子のオン状態/オフ状態を制御するように構成されるオンオフ制御部と、
第1電圧保持部と、
第2電圧保持部と、
補正部と、
を備え、
前記電源制御部は、
前記第1発光素子に流れる電流を検出した電流検出信号と基準電圧とが入力されるように構成されるエラーアンプと、
前記エラーアンプから出力される誤差電圧とスロープ電圧とを比較するように構成されるコンパレータと、
を有し、
前記第1電圧保持部は、前記第2発光素子がオフ状態のときに前記誤差電圧と、前記スロープ電圧の最も低い電圧である第1電圧との差分を第1差分電圧として保持するように構成され、
前記第2電圧保持部は、前記第2発光素子がオン状態のときに前記誤差電圧と前記スロープ電圧の前記第1電圧との差分を第2差分電圧として保持するように構成され、
前記補正部は、前記第2差分電圧と前記第1差分電圧との差分に基づいて前記誤差電圧と前記スロープ電圧の前記第1電圧との間の電圧差を補正するように構成される、発光素子駆動装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記スロープ電圧の前記第1電圧を補正するように構成される、請求項1に記載の発光素子駆動装置。
【請求項3】
前記第2発光素子は、調光信号のレベルに応じてオンオフ状態が制御され、
前記第1電圧保持部は、前記調光信号がオフレベルからオンレベルに切り替わるタイミングの前の第1所定期間に前記第1差分電圧をサンプリングし、
前記第2電圧保持部は、前記調光信号がオンレベルからオフレベルに切り替わるタイミングの前の第2所定期間に前記第2差分電圧をサンプリングする、請求項1に記載の発光素子駆動装置。
【請求項4】
前記スロープ電圧の前記第1電圧を生成するように構成される第1電圧生成部と、切替スイッチと、をさらに備え、
前記第1電圧保持部は、第1アンプと、第1コンデンサと、前記第1アンプの出力端と前記第1コンデンサの間に接続される第1スイッチと、を有し、
前記第2電圧保持部は、第2アンプと、第2コンデンサと、前記第2アンプの出力端と前記第2コンデンサの間に接続される第2スイッチと、を有し、
前記補正部は、補正アンプと、前記補正アンプの出力端に接続される第3コンデンサと、を有し、
前記第1アンプは、前記誤差電圧と前記補正アンプの出力とが入力可能に構成され、
前記第2アンプは、前記誤差電圧と固定電圧とが入力可能に構成され、
前記補正アンプは、前記固定電圧、前記第1電圧保持部の出力、前記第2電圧保持部の出力、および前記第3コンデンサの電圧が入力可能に構成され、
前記切替スイッチは、前記補正アンプの出力と前記第1電圧生成部との導通と、前記固定電圧と前記第1電圧生成部との導通とを切り替えるように構成される、請求項1に記載の発光素子駆動装置。
【請求項5】
前記スロープ電圧の前記第1電圧を生成するように構成される第1電圧生成部をさらに備え、
前記第1電圧保持部は、第1アンプと、第1コンデンサと、前記第1アンプの出力端と前記第1コンデンサの間に接続される第1スイッチと、を有し、
前記第2電圧保持部は、第2アンプと、第2コンデンサと、前記第2アンプの出力端と前記第2コンデンサの間に接続される第2スイッチと、を有し、
前記補正部は、補正アンプと、前記補正アンプの出力端に接続される第3コンデンサと、第3スイッチと、を有し、
前記第1アンプは、前記誤差電圧と前記補正アンプの出力とが入力可能に構成され、
前記第2アンプは、前記誤差電圧と固定電圧とが入力可能に構成され、
前記補正アンプは、第1反転入力端と、第1非反転入力端と、第2反転入力端と、第2非反転入力端と、を有し、
前記第1非反転入力端は、前記第2コンデンサの第1端に接続され、
前記第2非反転入力端は、前記固定電圧の印加端に接続され、
前記第2反転入力端は、前記第3コンデンサの第1端と前記補正アンプの出力端に接続され、
前記補正アンプの出力は、前記第1電圧生成部に入力可能であり、
前記第3スイッチは、前記第1コンデンサの第1端と前記第1反転入力端との導通と、前記第2コンデンサの第1端と前記第1反転入力端との導通と、を切り替える、請求項1に記載の発光素子駆動装置。
【請求項6】
前記第1電圧生成部は、
第1入力端および第2入力端を含むオペアンプと、
前記オペアンプの出力端に接続される制御端を含むトランジスタと、前記トランジスタの第1端とグランド電位の印加端の間に接続される第1抵抗と、
前記トランジスタの第2端に接続される入力端を含むカレントミラーと、
前記カレントミラーの出力端に接続される第2抵抗と、
を有し、
前記第1入力端には、前記補正アンプの出力が入力可能であり、
前記第2入力端には、前記トランジスタと前記第1抵抗とが接続されるノードが接続される、請求項4または請求項5に記載の発光素子駆動装置。
【請求項7】
前記第1発光素子および前記第2発光素子は、LEDである、請求項1に記載の発光素子駆動装置。
【請求項8】
請求項1に記載の発光素子駆動装置と、前記第1発光素子および前記第2発光素子と、を備える、発光システム。
【請求項9】
車載用である請求項8に記載の発光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光素子駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消費電力が小さく寿命の長いLED(発光ダイオード)が様々な用途に用いられる。LEDは、発光素子の一例である。LEDを駆動するLED駆動装置には、複数チャンネルのLEDを駆動可能な構成のものが存在する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-10810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、複数チャンネルのLEDを駆動する場合に、LEDを流れるLED電流の精度低下を抑制することが要望されている。
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、複数チャンネルの発光素子を駆動する場合に、発光素子の電流精度を向上させることができる発光素子駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的な発光素子駆動装置は、
入力電圧に基づいて第1発光素子に第1電源電圧を供給する第1スイッチング電源回路をスイッチング制御するように構成される電源制御部と、
前記入力電圧に基づいて第2電源電圧が供給される第2発光素子のオン状態/オフ状態を制御するように構成されるオンオフ制御部と、
第1電圧保持部と、
第2電圧保持部と、
補正部と、
を備え、
前記電源制御部は、
前記第1発光素子に流れる電流を検出した電流検出信号と基準電圧とが入力されるように構成されるエラーアンプと、
前記エラーアンプから出力される誤差電圧とスロープ電圧とを比較するように構成されるコンパレータと、
を有し、
前記第1電圧保持部は、前記第2発光素子がオフ状態のときに前記誤差電圧と、前記スロープ電圧の最も低い電圧である第1電圧との差分を第1差分電圧として保持するように構成され、
前記第2電圧保持部は、前記第2発光素子がオン状態のときに前記誤差電圧と前記スロープ電圧の前記第1電圧との差分を第2差分電圧として保持するように構成され、
前記補正部は、前記第2差分電圧と前記第1差分電圧との差分に基づいて前記誤差電圧と前記スロープ電圧の前記第1電圧との間の電圧差を補正するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の例示的な発光素子駆動装置によると、複数チャンネルの発光素子を駆動する場合に、発光素子の電流精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、発光システムの構成例を示す図である。
図2図2は、LED駆動装置の内部構成例を示す図である。
図3図3は、比較例に係る動作例を示すタイミングチャートである。
図4図4は、第1実施形態に係るスロープ電圧生成部の構成を示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る動作例を示すタイミングチャートである。
図6図6は、第2実施形態に係るスロープ電圧生成部の構成を示す図である。
図7図7は、第2実施形態に係る動作例を示すタイミングチャートである。
図8図8は、バックライト装置の構成例を示す図である。
図9図9は、車載ディスプレイの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<比較例>
ここでは、まず本開示の実施形態との対比をするための比較例について説明する。比較例について述べることで、課題がより明らかになる。
【0010】
図1は、発光システムの構成例を示す図である。図1に示す発光システム50は、LED駆動装置(発光素子駆動装置)1と、LEDアレイ100と、スイッチング電源回路CH1と、LEDアレイ200と、スイッチング電源回路CH2と、を備えている。
【0011】
LED駆動装置1は、複数チャンネル(本実施例では一例として2チャンネル)のLEDアレイ(発光素子)100,200を駆動する。すなわち、LEDアレイ100がチャンネル1に対応し、LEDアレイ200がチャンネル2に対応する。LEDアレイ100に対応してスイッチング電源回路CH1が設けられ、LEDアレイ200に対してスイッチング電源回路CH2が設けられる。スイッチング電源回路CH1,CH2は、それぞれ入力電圧Vinを昇圧して電源電圧Vout1,Vout2を生成してLEDアレイ100,200のそれぞれに供給する。
【0012】
スイッチング電源回路CH1,CH2は、同様の構成であるため、ここではスイッチング電源回路CH1について代表的に説明する。スイッチング電源回路CH1は、入力コンデンサCin1と、インダクタL1と、ダイオードD1と、出力コンデンサCout1と、スイッチング素子M1と、センス抵抗Rs1と、を有する。入力コンデンサCin1の一端は、入力電圧Vinの印加端とともにインダクタL1の一端に接続される。インダクタL1の他端は、ダイオードD1のアノードに接続される。ダイオードD1のカソードは、出力コンデンサCout1の一端に接続される。スイッチング素子M1は、NチャネルMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)により構成される。スイッチング素子M1のドレインは、インダクタL1の一端に接続される。スイッチング素子M1のソースは、センス抵抗Rs1の一端に接続される。センス抵抗Rs1の他端は、グランド電位の印加端に接続される。
【0013】
LED駆動装置1は、半導体チップを内蔵してパッケージ化した半導体装置であり、外部との電気的接続を確立するための外部端子として、GL1端子(ゲート端子)、CS1端子(センス端子)、およびPGND1端子(グランド端子)をスイッチング電源回路CH1に対応して有する。なお、LED駆動装置1は、スイッチング電源回路CH2に対応してGL2端子、CS2端子、およびPGND2端子を有する。さらに、LED駆動装置1は、入力電圧Vinが印加可能なVIN端子(入力電源端子)を有する。
【0014】
GL1端子は、スイッチング素子M1のゲートに接続される。センス抵抗Rs1の一端は、CS1端子に接続される。センス抵抗Rs1の他端は、PGND1端子に接続される。
【0015】
スイッチング電源回路CH1の出力端とLEDアレイ100のアノード端との間の経路には、PWM(パルス幅変調)スイッチSp1と、電流検出抵抗Rcs1と、が配置される。ここで、図2を用いて説明する。図2は、LED駆動装置1の内部構成例を示す図である。なお、図2は、LED駆動装置1におけるチャンネル1(LEDアレイ100、スイッチング電源回路CH1)に対応した構成を示しており、チャンネル2(LEDアレイ200、スイッチング電源回路CH2)に対応した構成も図示は省略しているが同様に設けられる。
【0016】
PWMスイッチSp1は、PチャネルMOSFETにより構成され、LED駆動装置1に設けられるPWM1端子(PWM出力端子)から出力されるPWM信号Spwm1によりゲートを駆動される。すなわち、PWM信号Spwm1によりPWMスイッチSp1は、オンオフされる。
【0017】
PWM信号Spwm1は、LED駆動装置1に内蔵されるPWM調光部12により生成される。PWM調光部12は、入力されるPWM調光信号Dpwm1に基づきPWM信号Spwm1を生成する。PWM調光信号Dpwm1およびPWM信号Spwm1は、いずれもパルス信号である。当該パルス信号は、ハイレベルとローレベルからなる。PWM調光信号Dpwm1がオンレベル(第1論理レベル)の場合、PWM信号Spwm1は、PWMスイッチSp1をオン状態とするためのレベルとされる。PWM調光信号Dpwm1がオフレベル(第2論理レベル)の場合、PWM信号Spwm1は、PWMスイッチSp1をオフ状態とするためのレベルとされる。PWMスイッチSp1がオン状態の場合、電源電圧Vout1がPWMスイッチSp1を介してLEDアレイ100のアノード端に印加され、LEDアレイ100が点灯する。PWMスイッチSp1がオフ状態の場合、電源電圧Vout1の供給が遮断され、LEDアレイ100が消灯する。これにより、PWM調光信号Dpwm1のオンデューティに応じて、PWMスイッチSp1がオンオフ駆動され、LEDアレイ100が点灯・消灯され、LEDアレイ100のPWM調光が行われる。なお、オンデューティを100%として、DC調光を行うこともできる。この場合、PWMスイッチSp1は、常時オン状態である。
【0018】
PWMスイッチSp1がオン状態の場合、LEDアレイ100に流れるLED電流ILED1により電流検出抵抗Rcs1の両端間には、電流検出信号Vcs1が発生する。Vcs1は、電圧信号である。電流検出信号Vcs1は、LED駆動装置1に設けられるSNSP端子(正側センス端子)とSNSN端子(負側センス端子)との間に印加される。
【0019】
LED駆動装置1は、スイッチング電源回路CH1におけるスイッチング素子M1をスイッチング制御するように構成される電源制御部11を有する。電源制御部11は、アンプ111と、エラーアンプ112と、コンパレータ113と、ドライバ114と、スロープ電圧生成部115と、を有する。
【0020】
SNSP端子とSNSN端子との間に印加された電流検出信号Vcs1は、アンプ111により増幅され、電流検出信号AP1とされる。エラーアンプ112の反転入力端(-)には、電流検出信号AP1が入力され、エラーアンプ112の非反転入力端(+)には、基準電圧Vref1が印加される。エラーアンプ112の出力端は、LED駆動装置1に設けられるCOMP1端子(位相補償端子)に接続される。COMP1端子には、抵抗RcompおよびコンデンサCcompが位相補償用に外部接続される。
【0021】
エラーアンプ112は、電流検出信号AP1と基準電圧Vref1との誤差に応じて誤差電圧Vcomp1を出力する。誤差電圧Vcomp1は、コンパレータ113の反転入力端に入力される。
【0022】
センス抵抗Rs1には、スイッチング素子M1に流れる電流に基づき電圧信号であるセンス電圧Vs1が発生する。センス電圧Vs1は、LED駆動装置1に設けられるCS1端子(センス端子)に印加される。スロープ電圧生成部115は、CS1端子に印加されたセンス電圧CS1に基づいてローレベル電圧SLP1_Lを生成し、ローレベル電圧SLP1_Lを基準としてのこぎり波状のスロープ電圧SLP1を生成する。ローレベル電圧SLP1_Lは、スロープ電圧SLP1における最低電圧である。
【0023】
スロープ電圧SLP1は、コンパレータ113の非反転入力端に入力される。コンパレータ113は、誤差電圧Vcomp1とスロープ電圧SLP1とを比較し、比較結果としてコンパレータ出力Cp1を出力する。ドライバ114は、コンパレータ出力Cp1とクロックCLKに基づいてゲート信号G1を生成し、ゲート信号G1をGL1端子からスイッチング素子M1のゲートに出力する。クロックCLKは、所定の周期を有するパルス信号であり、PWM制御の周期を規定する。
【0024】
具体的に説明すると、クロックCLKが立ち上がると、ドライバ114がハイレベルのゲート信号G1を出力する。これにより、スイッチング素子M1は、オンとされる。一方、スロープ電圧生成部115は、クロックCLKが立ち上がると、ローレベル電圧SLP1_Lから電圧の上昇を開始してスロープ電圧SLP1を生成する。スロープ電圧SLP1が上昇して誤差電圧Vcomp1に達すると、コンパレータ出力Cp1がローレベルからハイレベルに切り替わり、これをトリガとしてドライバ114は、ローレベルのゲート信号G1を生成する。これにより、スイッチング素子M1は、オフとされる。また、このとき、スロープ電圧生成部115は、スロープ電圧SLP1をローレベル電圧SLP1_Lまで急峻に立ち下げる。その後、クロックCLKが再び立ち上がると、ドライバ114は、ゲート信号G1を再びハイレベルとし、スロープ電圧生成部115は、スロープ電圧SLP1をローレベル電圧SLP1_Lから上昇させる。これにより、スロープ電圧SLP1と誤差電圧Vvomp1に基づいてスイッチング素子M1のオン時間が決定され、PWM制御が行われる。PWM制御により電流検出信号AP1が基準電圧Vref1と一致するように制御され、LED電流ILED1が目標値に制御される。
【0025】
図3は、比較例に係る発光システム50の動作例を示すタイミングチャートであり、上段から順にPWM調光信号Dpwm1(チャンネル1)、PWM調光信号Dpwm2(チャンネル2)、LED電流ILED1(チャンネル1)、LED電流ILED2(チャンネル2)、入力電圧Vin、および、スロープ電圧SLP1(チャンネル1)の各波形例を示す。
【0026】
図3は、一例として、チャンネル1をDC調光(すなわちPWMスイッチSp1が常時オン状態)、チャンネル2をPWM調光した場合の動作である。また、PWM調光信号は、一例として、ハイレベルをオンレベル、ローレベルをオフレベルとしている。図3に示すように、PWM調光信号Dpwm1は常時ハイレベルのため、チャンネル1はDC調光をされ、PWM調光信号Dpwm2はハイレベルとローレベルを繰り返すため、チャンネル2はPWM調光をされる。
【0027】
ここで、入力電圧Vin(規定値)の印加端とVIN端子との間に配線抵抗RAが存在する(図1)。PWM調光信号Dpwm2がローレベルからハイレベルに切り替わるとき、すなわちPWMスイッチSp2がオフからオンに切り替わるとき、LEDアレイ200に流れるLED電流ILED2により配線抵抗RAに電圧降下が発生し、スイッチング電源回路CH1に実際に印加される入力電圧Vinは、規定値から低下する。これにより、電源制御部11によるPWM制御において必要なスイッチングデューティ(オン時間のPWM周期に対する割合)が変化する。しかしながら、PWM制御の応答遅延により、PWM調光信号Dpwm2がローレベルからハイレベルに切り替わった直後は、スイッチングデューティが足りず、LED電流ILED1は目標値から低下する(アンダーシュートUS)。その後、スイッチングデューティが必要な値となれば、LED電流ILED1は目標値に安定化される。
【0028】
また、PWM調光信号Dpwm2がハイレベルからローレベルに切り替わるとき、すなわちPWMスイッチSp2がオンからオフに切り替わるとき、LED電流ILED2が流れなくなり、入力電圧Vinは規定値に戻る。しかしながら、PWM制御の応答遅延により、PWM調光信号Dpwm2がハイレベルからローレベルに切り替わった直後は、スイッチングデューティが過剰となり、LED電流ILED1は目標値から上昇する(オーバーシュートOS)。その後、スイッチングデューティが必要な値となれば、LED電流ILED1は目標値に安定化される。
【0029】
このように、チャンネル2でPWM調光を行う場合、DC調光を行うチャンネル1では、LED電流ILED1においてアンダーシュートとオーバーシュートが繰り返され、LED電流の精度が低下する。これにより、ノイズの発生、およびLEDの信頼性が低下するなどの可能性があった。このような課題を解決すべく、以下説明する本開示に係る実施形態が実施される。
【0030】
<第1実施形態>
本開示の実施形態に係る発光システムおよびLED駆動装置の構成は、基本的には先述した図1および図2と同様であるが、本実施形態ではスロープ電圧生成部115に誤差電圧Vcomp1を入力可能としている。
【0031】
図4は、本開示の第1実施形態に係るスロープ電圧生成部115の構成を示す。図4に示すスロープ電圧生成部115は、第1電圧保持部115Aと、第2電圧保持部115Bと、補正部115Cと、ローレベル電圧生成部115Dと、電流源115Eと、スロープ抵抗Rslpと、切替スイッチSSWと、を有する。
【0032】
第1電圧保持部115Aは、第1アンプHA1と、第1スイッチSW1と、第1コンデンサC1と、を有する。第1アンプHA1の非反転入力端には、誤差電圧Vcomp1が入力され、第1アンプHA1の反転入力端には、後述する補正アンプCAMPの出力である補正電圧Vshtが印加される。第1アンプHA1の出力端と第1コンデンサC1の一端との間に第1スイッチSW1が接続される。第1スイッチSW1をオン状態とすることで、第1アンプHA1から出力される誤差電圧Vcomp1と補正電圧Vshtとの差分(Vcomp1-Vsht)がサンプリングされる。第1スイッチSW1をオフ状態とすることで、誤差電圧Vcomp1と補正電圧Vshtとの差分をホールドできる。
【0033】
第2電圧保持部115Bは、第2アンプHA2と、第2スイッチSW2と、第2コンデンサC2と、を有する。第2アンプHA2の非反転入力端には、誤差電圧Vcomp1が入力され、第2アンプHA2の反転入力端には、基準電圧Vslpが印加される。基準電圧Vslpは、内部固定電圧(例えば1V)である。第2アンプHA2の出力端と第2コンデンサC2の一端との間に第2スイッチSW2が接続される。第2スイッチSW2をオン状態とすることで、第2アンプHA2から出力される誤差電圧Vcomp1と基準電圧Vslpとの差分(Vcomp1-Vslp)がサンプリングされる。第2スイッチSW2をオフ状態とすることで、誤差電圧Vcomp1と基準電圧Vslpとの差分をホールドできる。
【0034】
補正部115Cは、補正アンプCAMPと、第3コンデンサC3と、を有する。補正アンプCAMPの第1反転入力端は、第1コンデンサC1の一端に接続される。これにより、第1コンデンサC1の一端に発生する第1保持電圧VH1が補正アンプCAMPの第1反転入力端に印加される。補正アンプCAMPの第1非反転入力端は、第2コンデンサC2の一端に接続される。これにより、第2コンデンサC2の一端に発生する第2保持電圧VH2が補正アンプCAMPの第1非反転入力端に印加される。
【0035】
補正アンプCAMPの第2非反転入力端には、基準電圧Vslpが印加される。補正アンプCAMPの第2反転入力端には、第3コンデンサC3の一端と補正アンプCAMPの出力端が接続される。これにより、第1保持電圧VH1と第2保持電圧VH2との差分で基準電圧Vslpを補正した後の電圧として、補正電圧Vshtが補正アンプCAMPの出力端から出力される(Vsht=(VH2-VH1)+Vslp)。
【0036】
切替スイッチSSWは、第1端T1と、第2端T2と、第3端T3と、を有する。第1端T1は、補正アンプCAMPの出力端に接続される。第2端T2には、基準電圧Vslpが印加される。切替スイッチSSWは、第1端T1と第3端T3との導通と、第2端T2と第3端T3との導通と、を切り替える。第3端T3は、後述するローレベル電圧生成部115Dの入力端に接続される。
【0037】
ローレベル電圧生成部115Dは、オペアンプOPと、トランジスタTrと、カレントミラーCMと、VI変換抵抗Raと、IV変換抵抗Rbと、を有する。オペアンプOPの非反転入力端は、第3端T3に接続される。トランジスタTrは、NチャネルMOSFETにより構成される。オペアンプOPの出力端は、トランジスタTrのゲートに接続される。トランジスタTrのソースは、オペアンプOPの反転入力端とともにVI変換抵抗Raに接続される。トランジスタTrのドレインは、カレントミラーCMの入力端に接続される。カレントミラーCMは、PチャネルMOSFETにより構成される。カレントミラーCMの出力端は、IV変換抵抗Rbの一端に接続される。IV変換抵抗Rbの他端は、CS1端子に接続される。
【0038】
これにより、トランジスタTrのソース電圧がオペアンプOPの非反転入力端に入力された電圧(VshtまたはVslp)と一致するように制御され、上記ソース電圧がVI変換抵抗Raにより電圧・電流変換されて電流Iaとされる。電流Iaは、カレントミラーCMによりミラーリングされ、電流Ibとされる。
【0039】
VI変換抵抗Rbの一端は、スロープ抵抗Rslpの一端に接続される。スロープ抵抗Rslpの他端は、電流源115Eに接続される。電流源115Eは、スロープ補償電流Islpを生成してスロープ抵抗Rslpに流す。スロープ抵抗Rslpの他端にスロープ電圧SLP1が生成される。スロープ電圧SLP1=Vs1+(Ib+Islp)×Rb+Islp×Rslpとなる。スイッチング素子M1がオフ状態の場合、Vs1=0、Islp=0であるため、SLP1=Ib×Rbとなり、この場合のSLP1をローレベル電圧と呼ぶ。一方、スイッチング素子M1がオン状態の場合は、Islpは0から徐々に増加し、SLP1は、Vs1とIslpに応じた電圧となる。
【0040】
図5は、本実施形態に係る発光システム50における動作例を示すタイミングチャートであり、上段から順にPWM調光信号Dpwm2、LED電流ILED1、LED電流ILED2、入力電圧Vin、スロープ電圧SLP1、誤差電圧Vcomp1、第1スイッチSW1の状態、第2スイッチSW2の状態、および切替スイッチSSWの状態を示す。ここでも、チャンネル1でDC調光、チャンネル2でPWM調光が行われる。なお、図5において、ローレベル電圧SLP_Lも示している。
【0041】
まずタイミングt1の前では、PWM調光信号Dpwm2がローレベル(オフレベル)であり、第1スイッチSW1はオフ状態、第2スイッチSW2はオフ状態である。また、切替スイッチSSWは、第2端T2と第3端T3とを導通させる第2導通状態である。このとき、VH1=VH2=0であり、Vsht=Vslpとなる。スロープ電圧SLP1のローレベル電圧SLP_L=Ib×Rb=(Vslp/Ra)×Rbとなる。
【0042】
そして、PWM調光信号Dpwm2がローレベルからハイレベルに切り替わるタイミングt2より所定時間TAだけ前のタイミングt1で、第1スイッチSW1は、オン状態に切り替えられる。これにより、第1電圧保持部115AにおいてVcomp1とVsht(=Vslp)との差分Diff_t1がサンプリングされる。そして、タイミングt2で第1スイッチSW1はオフ状態に切り替えられ、第1電圧保持部115Aにおいて差分Diff_t1がホールドされる(VH1のホールド)。第2スイッチSW2は、オフ状態のままであり、切替スイッチSSWは、第2導通状態を維持される。ローレベル電圧SLP_Lは(Vslp/Ra)×Rbに維持される。第2導通状態は、PWM調光信号Dpwm2がハイレベルの間、維持される。
【0043】
そして、PWM調光信号Dpwm2がハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングt4より所定時間TBだけ前のタイミングt3で、第2スイッチSW2は、オン状態に切り替えられる。これにより、第2電圧保持部115BにおいてVcomp1とVslpとの差分Diff_t3がサンプリングされる。このとき、第1スイッチSW1はオフ状態を維持される。
【0044】
そして、タイミングt4で第2スイッチSW2はオフ状態に切り替えられ、第2電圧保持部115Bにおいて差分Diff_t3がホールドされる(VH2のホールド)。このとき、切替スイッチSSWは、第1端T1と第3端T3とを導通させる第1導通状態に切り替えられる。これにより、ローレベル電圧SLP_L=(Vsht/Ra)×Rbであり、Vsht=(Diff_t3-Diff_t1)+Vslp=(Vcomp1_t3-Vslp)-(Vcomp1_t1-Vslp)+Vslp=(Vcomp1_t3-Vcomp1_t1)+Vslpである。Ra=Rbとすれば、SLP_L=(Vcomp1_t3-Vcomp1_t1)+Vslp=α+Vslpとなる(図5でαを図示)。このように、PWM調光信号Dpwm2がハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングt4で、ローレベル電圧SLP_Lが即座に上昇するため、電源制御部11によるPWM制御のスイッチングデューティが即座に必要な値となり、LED電流ILED1のオーバーシュートが抑制される(図5の領域Aで示す部分)。
【0045】
そして、PWM調光信号Dpwm2がローレベルからハイレベルに切り替わるタイミングt6より所定時間TCだけ前のタイミングt5で、第1スイッチSW1は、オン状態に切り替えられる。これにより、第1電圧保持部115AにおいてVcomp1とVsht(=Vslp+α)との差分Diff_t5がサンプリングされる。そして、タイミングt6で第1スイッチSW1はオフ状態に切り替えられ、第1電圧保持部115Aにおいて差分Diff_t5がホールドされる(VH1のホールド)。第2スイッチSW2は、オフ状態のままであり、切替スイッチSSWは、第2端T2と第3端T3とを導通させる第2導通状態に切り替えられる。ローレベル電圧SLP_Lは(Vslp/Ra)×Rb=Vslpに低下する。第2導通状態は、PWM調光信号Dpwm2がハイレベルの間、維持される。このように、タイミングt6でローレベル電圧SLP_Lが即座にVslpに低下するので、電源制御部11によるPWM制御のスイッチングデューティが即座に必要な値となり、LED電流ILED1のアンダーシュートが抑制される(図5の領域Bで示す部分)。
【0046】
そして、PWM調光信号Dpwm2がハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングt8より所定時間TDだけ前のタイミングt7で、第2スイッチSW2は、オン状態に切り替えられる。これにより、第2電圧保持部115BにおいてVcomp1とVslpとの差分Diff_t7がサンプリングされる。このとき、第1スイッチSW1はオフ状態を維持される。
【0047】
そして、タイミングt8で第2スイッチSW2はオフ状態に切り替えられ、第2電圧保持部115Bにおいて差分Diff_t7がホールドされる(VH2のホールド)。このとき、切替スイッチSSWは、第1導通状態に切り替えられる。これにより、ローレベル電圧SLP_L=(Vsht/Ra)×Rbであり、Vsht=(Diff_t7-Diff_t5)+Vslp=(Vcomp1_t7-Vslp)-(Vcomp1_t5-(Vslp+α))+Vslpである。Vcomp1_t5=Vcomp1_t7であるので、Vsht=Vslp+αとなり、SLP_L=Vsht=Vslp+αとなる。従って、LED電流ILED1のオーバーシュートが抑制される(図5の領域Cで示す部分)。
【0048】
<第2実施形態>
図6は、本開示の第2実施形態に係るスロープ電圧生成部115の構成を示す。本実施形態の第1実施形態との相違点は、切替スイッチSSWを用いずに、切替スイッチSW3を補正部115Cに設けていることである。切替スイッチSW3は、第1保持電圧VH1が生じる第1コンデンサC1の一端と補正アンプCAMPの第1反転入力端との導通と、第2保持電圧VH2が生じる第2コンデンサC2の一端と補正アンプCAMPの第1反転入力端との導通と、を切り替える。補正アンプCAMPの出力端は、オペアンプOPの非反転入力端に接続される。
【0049】
図7は、本実施形態に係る発光システム50における動作例を示すタイミングチャートであり、上段から順にPWM調光信号Dpwm2、LED電流ILED1、LED電流ILED2、入力電圧Vin、スロープ電圧SLP1、誤差電圧Vcomp1、第1スイッチSW1の状態、第2スイッチSW2の状態、および切替スイッチSW3の状態を示す。ここでも、チャンネル1でDC調光、チャンネル2でPWM調光が行われる。また、ローレベル電圧SLP_Lも図示される。
【0050】
まずタイミングt1の前では、PWM調光信号Dpwm2がローレベル(オフレベル)であり、第1スイッチSW1はオフ状態、第2スイッチSW2はオフ状態である。また、切替スイッチSW3は、第2コンデンサC2の一端と補正アンプCAMPの第1反転入力端とを導通させる第2導通状態である。このとき、VH1=VH2=0であり、Vsht=Vslpとなる。スロープ電圧SLP1のローレベル電圧SLP_L=Ib×Rb=(Vslp/Ra)×Rbとなる。Ra=Rbとすれば、SLP_L=Vslpである。
【0051】
そして、PWM調光信号Dpwm2がローレベルからハイレベルに切り替わるタイミングt2より所定時間TAだけ前のタイミングt1で、第1スイッチSW1は、オン状態に切り替えられる。これにより、第1電圧保持部115AにおいてVcomp1とVsht(=Vslp)との差分Diff_t1がサンプリングされる。そして、タイミングt2で第1スイッチSW1はオフ状態に切り替えられ、第1電圧保持部115Aにおいて差分Diff_t1がホールドされる(VH1のホールド)。第2スイッチSW2は、オフ状態のままであり、切替スイッチSW3は、第2導通状態を維持される。ローレベル電圧SLP_L=Vslpに維持される。
【0052】
そして、PWM調光信号Dpwm2がハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングt4より所定時間TBだけ前のタイミングt3で、第2スイッチSW2は、オン状態に切り替えられる。これにより、第2電圧保持部115BにおいてVcomp1とVslpとの差分Diff_t3がサンプリングされる。このとき、第1スイッチSW1はオフ状態を維持される。
【0053】
そして、タイミングt4で第2スイッチSW2はオフ状態に切り替えられ、第2電圧保持部115Bにおいて差分Diff_t3がホールドされる(VH2のホールド)。このとき、切替スイッチSW3は、第1コンデンサC1の一端と補正アンプCAMPの第1反転入力端とを導通させる第1導通状態に切り替えられる。これにより、ローレベル電圧SLP_L=Vsht=(Diff_t3-Diff_t1)+Vslp=(Vcomp1_t3-Vslp)-(Vcomp1_t1-Vslp)+Vslp=(Vcomp1_t3-Vcomp1_t1)+Vslp=α+Vslpとなる(図5でαを図示)。このように、PWM調光信号Dpwm2がハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングt4で、ローレベル電圧SLP_Lが即座に上昇するため、電源制御部11によるPWM制御のスイッチングデューティが即座に必要な値となり、LED電流ILED1のオーバーシュートが抑制される。
【0054】
そして、PWM調光信号Dpwm2がローレベルからハイレベルに切り替わるタイミングt6より所定時間TCだけ前のタイミングt5で、第1スイッチSW1は、オン状態に切り替えられる。これにより、第1電圧保持部115AにおいてVcomp1とVsht(=Vslp+α)との差分Diff_t5がサンプリングされる。そして、タイミングt6で第1スイッチSW1はオフ状態に切り替えられ、第1電圧保持部115Aにおいて差分Diff_t5がホールドされる(VH1のホールド)。第2スイッチSW2は、オフ状態のままであり、切替スイッチSW3は、第2導通状態に切り替えられる。ローレベル電圧SLP_LはVslpに低下する。このように、タイミングt6でローレベル電圧SLP_Lが即座にVslpに低下するので、電源制御部11によるPWM制御のスイッチングデューティが即座に必要な値となり、LED電流ILED1のアンダーシュートが抑制される。
【0055】
そして、PWM調光信号Dpwm2がハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングt8より所定時間TDだけ前のタイミングt7で、第2スイッチSW2は、オン状態に切り替えられる。これにより、第2電圧保持部115BにおいてVcomp1とVslpとの差分Diff_t7がサンプリングされる。このとき、第1スイッチSW1はオフ状態を維持される。
【0056】
そして、タイミングt8で第2スイッチSW2はオフ状態に切り替えられ、第2電圧保持部115Bにおいて差分Diff_t7がホールドされる(VH2のホールド)。このとき、切替スイッチSW3は、第1導通状態に切り替えられる。これにより、ローレベル電圧SLP_L=Vsht=(Diff_t7-Diff_t5)+Vslp=(Vcomp1_t7-Vslp)-(Vcomp1_t5-(Vslp+α))+Vslpである。Vcomp1_t5=Vcomp1_t7であるので、Vsht=Vslp+αとなり、SLP_L=Vsht=Vslp+αとなる。従って、LED電流ILED1のオーバーシュートが抑制される。
【0057】
<バックライト装置への適用>
以上説明した実施形態に係るLED駆動装置を適用する対象の一例として、バックライト装置について説明する。なお、LED駆動装置は、ヘッドランプなどに適用してもよい。LED駆動装置を適用可能なバックライト装置の構成例を図8に示す。なお、図8に示す構成は所謂エッジライト方式のものであり、これに限らず直下方式の構成でもよい。
【0058】
図8に示すバックライト装置70は、液晶パネル81を背面から照明する照明装置である。バックライト装置70は、LED光源装置71、導光板72、反射板73、および光学シート類74を備えている。LED光源装置71はLED、およびLEDを実装する基板を含んでいる。LED光源装置71から出射された光は、導光板72の側面から内部に入光される。例えばアクリル板で構成される導光板72は、内部に入光された光を全反射させながら内部全体に導き、光学シート類74が配される側の面から面状の光として出射させる。反射板73は、導光板72から漏れ出た光を反射させて導光板72の内部へ戻す。光学シート類74は、拡散シートおよびレンズシート等からなり、液晶パネル81に照明する光の輝度均一化および輝度向上等を目的とする。LED光源装置71としては、先述した各種実施形態の発光システムを用いることができる。
【0059】
<車載ディスプレイについて>
先述した実施形態に係るLED駆動装置(発光システム)を適用したバックライト装置は、特に車載ディスプレイに搭載することが好適である。車載用途では、LEDに流れる電流が比較的大電流となり、配線抵抗RAによる電圧抵抗が大きくなり、本開示の実施形態がより有効となる。
【0060】
車載ディスプレイは、例えば図9に示す車載ディスプレイ85のように、車両の運転席前方のダッシュボードに設けられる。車載ディスプレイ85は、例えば、カーナビゲーション情報、車両後方の撮像画像、スピードメータ、燃料計、燃費計、シフトポジション等の各種画像を表示し、ユーザに様々な情報を伝えることが可能である。このような車載ディスプレイは、クラスターパネルまたはセンターインフォメーションディスプレイ(CID)とも呼ばれる。その他にも、車載ディスプレイは、例えば運転席や助手席の背面に配置されるリアエンターテイメントとしてもよい。
【0061】
<その他>
以上、例示的な実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内において、実施形態は種々に変形が可能である。
【0062】
例えば、先述した実施形態では、ローレベル電圧を補正したが、誤差電圧を補正してもよい。
【0063】
また、例えば、PWM調光信号Dpwm2が内部信号である場合は、先述した実施形態が有効であるが、PWM調光信号Dpwm2が外部信号(LED駆動装置の外部から入力される信号)である場合は、第1電圧保持部および第2電圧保持部は、PWM調光信号Dpwm2の各レベル(オフレベル、オンレベル)におけるエッジ間の期間でサンプリングしてもよい。
【0064】
<付記>
以上の通り、例えば、本開示に係る発光素子駆動装置(1)は、
入力電圧(Vin)に基づいて第1発光素子(100)に第1電源電圧(Vout1)を供給する第1スイッチング電源回路(CH1)をスイッチング制御するように構成される電源制御部(11)と、
前記入力電圧に基づいて第2電源電圧(Vout2)が供給される第2発光素子(200)のオン状態/オフ状態を制御するように構成されるオンオフ制御部(12)と、
第1電圧保持部(115A)と、
第2電圧保持部(115B)と、
補正部(115C)と、
を備え、
前記電源制御部は、
前記第1発光素子に流れる電流を検出した電流検出信号と基準電圧とが入力されるように構成されるエラーアンプ(112)と、
前記エラーアンプから出力される誤差電圧とスロープ電圧とを比較するように構成されるコンパレータ(113)と、
を有し、
前記第1電圧保持部は、前記第2発光素子がオフ状態のときに前記誤差電圧と、前記スロープ電圧の最も低い電圧である第1電圧(ローレベル電圧)との差分を第1差分電圧として保持するように構成され、
前記第2電圧保持部は、前記第2発光素子がオン状態のときに前記誤差電圧と前記スロープ電圧の前記第1電圧との差分を第2差分電圧として保持するように構成され、
前記補正部は、前記第2差分電圧と前記第1差分電圧との差分に基づいて前記誤差電圧と前記スロープ電圧の前記第1電圧との間の電圧差を補正するように構成される(第1の構成)。
【0065】
また、上記第1の構成において、前記補正部は、前記スロープ電圧の前記第1電圧を補正するように構成されることとしてもよい(第2の構成)。
【0066】
また、上記第1または第2の構成において、前記第2発光素子は、調光信号のレベルに応じてオンオフ状態が制御され、
前記第1電圧保持部は、前記調光信号がオフレベルからオンレベルに切り替わるタイミングの前の第1所定期間に前記第1差分電圧をサンプリングし、
前記第2電圧保持部は、前記調光信号がオンレベルからオフレベルに切り替わるタイミングの前の第2所定期間に前記第2差分電圧をサンプリングすることとしてもよい(第3の構成)。
【0067】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記スロープ電圧の前記第1電圧を生成するように構成される第1電圧生成部(115D)と、切替スイッチ(SSW)と、をさらに備え、
前記第1電圧保持部(115A)は、第1アンプ(HA1)と、第1コンデンサ(C1)と、前記第1アンプの出力端と前記第1コンデンサの間に接続される第1スイッチ(SW1)と、を有し、
前記第2電圧保持部(115B)は、第2アンプ(HA2)と、第2コンデンサ(C2)と、前記第2アンプの出力端と前記第2コンデンサの間に接続される第2スイッチ(SW2)と、を有し、
前記補正部(115C)は、補正アンプ(CAMP)と、前記補正アンプの出力端に接続される第3コンデンサ(C3)と、を有し、
前記第1アンプは、前記誤差電圧と前記補正アンプの出力とが入力可能に構成され、
前記第2アンプは、前記誤差電圧と固定電圧(Vslp)とが入力可能に構成され、
前記補正アンプは、前記固定電圧、前記第1電圧保持部の出力、前記第2電圧保持部の出力、および前記第3コンデンサの電圧が入力可能に構成され、
前記切替スイッチは、前記補正アンプの出力と前記第1電圧生成部との導通と、前記固定電圧と前記第1電圧生成部との導通とを切り替えるように構成されることとしてもよい(第4の構成)。
【0068】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記スロープ電圧の前記第1電圧を生成するように構成される第1電圧生成部をさらに備え、
前記第1電圧保持部は、第1アンプと、第1コンデンサと、前記第1アンプの出力端と前記第1コンデンサの間に接続される第1スイッチと、を有し、
前記第2電圧保持部は、第2アンプと、第2コンデンサと、前記第2アンプの出力端と前記第2コンデンサの間に接続される第2スイッチと、を有し、
前記補正部は、補正アンプと、前記補正アンプの出力端に接続される第3コンデンサと、第3スイッチ(SW3)と、を有し、
前記第1アンプは、前記誤差電圧と前記補正アンプの出力とが入力可能に構成され、
前記第2アンプは、前記誤差電圧と固定電圧とが入力可能に構成され、
前記補正アンプは、第1反転入力端と、第1非反転入力端と、第2反転入力端と、第2非反転入力端と、を有し、
前記第1非反転入力端は、前記第2コンデンサの第1端に接続され、
前記第2非反転入力端は、前記固定電圧の印加端に接続され、
前記第2反転入力端は、前記第3コンデンサの第1端と前記補正アンプの出力端に接続され、
前記補正アンプの出力は、前記第1電圧生成部に入力可能であり、
前記第3スイッチは、前記第1コンデンサの第1端と前記第1反転入力端との導通と、前記第2コンデンサの第1端と前記第1反転入力端との導通と、を切り替えることとしてもよい(第5の構成)。
【0069】
また、上記第4または第5の構成において、前記第1電圧生成部(115D)は、
第1入力端および第2入力端を含むオペアンプ(OP)と、
前記オペアンプの出力端に接続される制御端を含むトランジスタ(Tr)と、前記トランジスタの第1端とグランド電位の印加端の間に接続される第1抵抗(Ra)と、
前記トランジスタの第2端に接続される入力端を含むカレントミラー(CM)と、
前記カレントミラーの出力端に接続される第2抵抗(Rb)と、
を有し、
前記第1入力端には、前記補正アンプの出力が入力可能であり、
前記第2入力端には、前記トランジスタと前記第1抵抗とが接続されるノードが接続されることとしてもよい(第6の構成)。
【0070】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記第1発光素子および前記第2発光素子は、LEDであることとしてもよい(第7の構成)。
【0071】
また、本開示の一態様は、上記第1から第7のいずれかの構成の発光素子駆動装置と、前記第1発光素子および前記第2発光素子と、を備える、発光システムである(第8の構成)。
【0072】
また、上記第8の構成において、車載用であることとしてもよい(第9の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示は、例えば、車載用LEDの駆動手段に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 LED駆動装置
11 電源制御部
12 PWM調光部
50 発光システム
70 バックライト装置
71 LED光源装置
72 導光板
73 反射板
74 光学シート類
81 液晶パネル
85 車載ディスプレイ
100,200 LEDアレイ
111 アンプ
112 エラーアンプ
113 コンパレータ
114 ドライバ
115 スロープ電圧生成部
115A 第1電圧保持部
115B 第2電圧保持部
115C 補正部
115D ローレベル電圧生成部
115E 電流源
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
C3 第3コンデンサ
Ccomp コンデンサ
CAMP 補正アンプ
CH1,CH2 スイッチング電源回路
CM カレントミラー
Cin1 入力コンデンサ
Cout1 出力コンデンサ
D1 ダイオード
HA1 第1アンプ
HA2 第2アンプ
L1 インダクタ
M1 スイッチング素子
OP オペアンプ
Rcomp 抵抗
RA 配線抵抗
Ra VI変換抵抗
Rb IV変換抵抗
Rcs1 電流検出抵抗
Rs1 センス抵抗
Rslp スロープ抵抗
SP1 PWMスイッチ
SSW 切替スイッチ
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
SW3 切替スイッチ
Sp1,Sp2 PWMスイッチ
T1 第1端
T2 第2端
T3 第3端
Tr トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9