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特開2024-144836方位推定装置、方位推定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144836
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】方位推定装置、方位推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/46 20060101AFI20241004BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20241004BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20241004BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20241004BHJP
   G01S 13/74 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
G01S3/46
H02J50/90
H02J50/40
H02J50/20
G01S13/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056976
(22)【出願日】2023-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発 研究開発項目1 端末拡張のためのテラヘルツ帯RF構成技術 副題:Beyond5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】原田 教広
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
(72)【発明者】
【氏名】林 高弘
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC11
5J070AD08
5J070AH31
5J070AK40
5J070BC05
(57)【要約】
【課題】受信電力が一時的に欠損した場合であっても、容易に方位推定を行う。
【解決手段】方位推定装置は、所定の装置から複数の方向に出力された電波を受信し、受信した電波の電波強度を出力された電波の方向ごとに測定することにより、好適な方向の電波を推定する方位推定装置であって、電波を受信した複数の方向の中に、欠損している方向が存在するか否かを判定する欠損有無判定部と、欠損している方向が存在すると判定された場合、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化に基づき欠損の要因を判定する欠損要因判定部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の装置から複数の方向に出力された電波を受信し、受信した電波の電波強度を出力された電波の方向ごとに測定することにより、好適な方向の電波を推定する方位推定装置であって、
電波を受信した複数の方向の中に、欠損している方向が存在するか否かを判定する欠損有無判定部と、
欠損している方向が存在すると判定された場合、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化に基づき欠損の要因を判定する欠損要因判定部と、
を備える方位推定装置。
【請求項2】
前記欠損要因判定部は、
受信した電波の電波強度の時間ごとの変化の傾向に基づき、欠損の要因が遮蔽に起因するものであるか否かについての判定を行う第1判定部と、
欠損の要因が遮蔽によるものでない場合に、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化の傾向に基づき、欠損の要因が通信範囲外に出たことに起因するものであるか否かの判定を行う第2判定部と、
を備える請求項1に記載の方位推定装置。
【請求項3】
前記第2判定部は、受信した電波の電波強度が、急激に変化した場合、欠損の要因が移動予測誤りに起因するものであると判定する
請求項2に記載の方位推定装置。
【請求項4】
前記第1判定部は、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化と、欠損の要因が遮蔽に起因するものであるか否かについての情報とを教師データとして予め学習された学習済みモデルを含む
請求項2に記載の方位推定装置。
【請求項5】
前記第2判定部は、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化と、欠損の要因が通信範囲外に出たことに起因するものであるか否かについての情報とを教師データとして予め学習された学習済みモデルを含む
請求項2に記載の方位推定装置。
【請求項6】
前記第1判定部に含まれる学習済モデルと、前記第2判定部に含まれる学習済モデルとは、いずれもK近傍法アルゴリズム等の分類器を用いて学習される
請求項4又は請求項5に記載の方位推定装置。
【請求項7】
前記欠損要因判定部は、電波の方向ごとに測定された電波強度のうち、前記第1判定部に入力される範囲を特定する前処理を行う前処理部を更に備える
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の方位推定装置。
【請求項8】
所定の装置から複数の方向に出力された電波を受信し、受信した電波の電波強度を出力された電波の方向ごとに測定することにより、好適な方向の電波を推定する方位推定方法であって、
電波を受信した複数の方向の中に、欠損している方向が存在するか否かを判定する欠損有無判定工程と、
欠損している方向が存在すると判定された場合、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化に基づき欠損の要因を判定する欠損要因判定工程と、
を有する方位推定方法。
【請求項9】
コンピュータに、
所定の装置から複数の方向に出力された電波を受信し、受信した電波の電波強度を出力された電波の方向ごとに測定することにより、好適な方向の電波を推定するプログラムであって、
電波を受信した複数の方向の中に、欠損している方向が存在するか否かを判定する欠損有無判定ステップと、
欠損している方向が存在すると判定された場合、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化に基づき欠損の要因を判定する欠損要因判定ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方位推定装置、方位推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
Beyond 5G(6G)に向けた通信技術の研究において、ユーザ端末装置と、当該ユーザ端末装置に接続される複数のウェアラブル型端末装置等の周辺端末とが互いに強調して通信を行う仮想化端末が検討されている。仮想化端末では、ユーザ端末装置と、周辺端末との間の情報通信に、THz(テラヘルツ)帯が用いられる。ここで、THz帯ではビーム幅が狭くなることが想定される。ウェアラブルデバイスを装着した人間の動作に基づきユーザ端末装置と周辺端末との位置関係が変化した場合、THz帯等の狭いビーム幅の電波を用いて情報通信を行っていると、周辺端末がユーザ端末装置から送信されるビームの範囲外に容易に出てしまうことが想定される。周辺端末がユーザ端末装置から送信されるビームの範囲外に出てしまうことを抑止するため、ユーザ端末装置が周辺端末の移動を予測し、予測した方向にビームを追従させて出力することが考えられる。非特許文献1には、ユーザ端末装置が周辺端末の移動を予測し、予測した結果に基づきビーム掃引範囲を限定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】H. MATSUNO et al., "High-Accuracy and High-Speed Beam Tracking Algorithm for THz Short-Range Mobile Communication,"2023 17th European Conference on Antennas and Propagation (EuCAP), 2023
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示された技術によれば、ユーザ端末装置は、指向性のあるビームを、出力方向を異ならせながら複数出力し、周辺端末により受信された受信電力に基づき、周辺端末が存在する方位を高精度に推定する。また、過去に推定された方位に基づき周辺端末の移動ベクトルと分散が算出され、ユーザ端末装置の移動する方位が予測される。ユーザ端末装置は、予測された方位に対してビームを出力することにより、THz帯等の狭いビーム幅の電波を用いて情報通信を行うことが可能となる。ここで、非特許文献1に開示された技術によれば、受信電力が一時的に欠損した場合、一旦、移動予測に基づいた位置に対してユーザ端末装置からビームが出力され、周辺端末が見つからない場合は、更に全方位探索を行うことにより周辺端末が存在する方位を推定する。しかしながらBeyond 5G(6G)において用いられることが検討されているTHz帯ではビーム幅が狭くなるため、全方位探索を行うと時間がかかってしまうといった課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、受信電力が一時的に欠損した場合であっても、容易に方位推定を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、所定の装置から複数の方向に出力された電波を受信し、受信した電波の電波強度を出力された電波の方向ごとに測定することにより、好適な方向の電波を推定する方位推定装置であって、電波を受信した複数の方向の中に、欠損している方向が存在するか否かを判定する欠損有無判定部と、欠損している方向が存在すると判定された場合、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化に基づき欠損の要因を判定する欠損要因判定部と、を備える方位推定装置である。
(2)本発明の一態様は、上述の方位推定装置において、前記欠損要因判定部は、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化の傾向に基づき、欠損の要因が遮蔽に起因するものであるか否かについての判定を行う第1判定部と、欠損の要因が遮蔽によるものでない場合に、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化の傾向に基づき、欠損の要因が通信範囲外に出たことに起因するものであるか否かの判定を行う第2判定部と、を備えるものである。
(3)本発明の一態様は、上述の方位推定装置において、前記第2判定部は、受信した電波の電波強度が、急激に変化した場合、欠損の要因が移動予測誤りに起因するものであると判定するものである。
(4)本発明の一態様は、上述の方位推定装置において、前記第1判定部は、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化と、欠損の要因が遮蔽に起因するものであるか否かについての情報とを教師データとして予め学習された学習済みモデルを含むものである。
(5)本発明の一態様は、上述の方位推定装置において、前記第2判定部は、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化と、欠損の要因が通信範囲外に出たことに起因するものであるか否かについての情報とを教師データとして予め学習された学習済みモデルを含むものである。
(6)本発明の一態様は、上述の方位推定装置において、前記第1判定部に含まれる学習済モデルと、前記第2判定部に含まれる学習済モデルとは、いずれもK近傍法アルゴリズム等の分類器を用いて学習されるものである。
(7)本発明の一態様は、上述の方位推定装置において、前記欠損要因判定部は、電波の方向ごとに測定された電波強度のうち、前記第1判定部に入力される範囲を特定する前処理を行う前処理部を更に備えるものである。
(8)本発明の一態様は、所定の装置から複数の方向に出力された電波を受信し、受信した電波の電波強度を出力された電波の方向ごとに測定することにより、好適な方向の電波を推定する方位推定方法であって、電波を受信した複数の方向の中に、欠損している方向が存在するか否かを判定する欠損有無判定工程と、欠損している方向が存在すると判定された場合、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化に基づき欠損の要因を判定する欠損要因判定工程と、を有する方位推定方法である。
(9)本発明の一態様は、コンピュータに、所定の装置から複数の方向に出力された電波を受信し、受信した電波の電波強度を出力された電波の方向ごとに測定することにより、好適な方向の電波を推定するプログラムであって、電波を受信した複数の方向の中に、欠損している方向が存在するか否かを判定する欠損有無判定ステップと、欠損している方向が存在すると判定された場合、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化に基づき欠損の要因を判定する欠損要因判定ステップと、を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、受信電力が一時的に欠損した場合であっても、容易に方位推定を行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る方位推定装置、方位推定方法及びプログラムが適用される通信システムの概要について説明するための図である。
図2】本実施形態に係る送信装置及び受信装置の機能構成の一例を示す機能構成図である。
図3】本実施形態に係るビーム探索方法において、全方位探索と探索範囲を限定した探索とについて説明するための図である。
図4】本実施形態に係る欠損要因の種類について説明するための図である。
図5】本実施形態に係る方位推定装置の機能構成の一例を示す機能構成図である。
図6】本実施形態に係る欠損要因判定部の機能構成の一例を示す機能構成図である。
図7】本実施形態に係る欠損要因が移動予測誤りに起因するものである場合における受信電力の変化について説明するための図である。
図8】本実施形態に係る欠損要因が通信範囲外に出たことに起因するものである場合における受信電力の変化について説明するための図である。
図9】本実施形態に係るビーム掃引範囲の決定方法の一例について説明するためのフローチャートである。
図10】本実施形態に係る欠損要因判定方法の一例について説明するためのフローチャートである。
図11】本実施形態の方位推定装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の態様に係る方位推定装置、方位推定方法及びプログラムについて、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0010】
[実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態では、一例として、本実施形態に係る方位推定装置、方位推定方法及びプログラムが、Beyond 5G(6G)における通信方式に適用されることを前提として説明する。しかしながら本実施形態はこの一例に限定されず、Beyond 5G(6G)以外の様々な通信方式に適用されることができる。
【0011】
図1は、一実施形態に係る方位推定装置、方位推定方法及びプログラムが適用される通信システムの概要について説明するための図である。同図を参照しながら、通信システム1の概要について説明する。通信システム1は、複数の通信装置を備える。図示する一例では、第1通信装置D1、第2通信装置D2、及び第n通信装置Dn(nは1以上の自然数)を示している。以下、通信システム1が備える複数の通信装置をそれぞれ区別しない場合、単に通信装置Dと記載する場合がある。それぞれの通信装置Dは、互いに情報通信を行う。
【0012】
通信装置Dは、例えばスマートフォンやタブレット端末装置等のユーザ端末装置であってもよいし、当該ユーザ端末装置に接続されるウェアラブル型端末装置等であってもよい。ウェアラブル型端末装置の一例としては、スマートウォッチや、スマートグラス、イヤホン型ウェアラブルデバイス等を例示することができる。通信システム1に含まれる複数の通信装置Dは、ユーザにより保持されていてもよいし、所定の場所に固定されていてもよい。
【0013】
なお、通信システム1に含まれる複数の通信装置Dは、互いに強調して通信を行う仮想化端末を構成する。通信システム1の外部から見れば、通信システム1は、1つの仮想化端末として振る舞うということもできる。それぞれの通信装置D間における情報通信には、例えばTHz(テラヘルツ)帯が用いられる。しかしながら本実施形態はこの一例に限定されず、GHz(ギガヘルツ)帯等その他の周波数帯が用いられてもよい。以下の説明において、通信装置Dから出力される電波であって、狭指向性を有する電波を、ビームと記載する場合がある。
【0014】
ここで、THz帯の周波数領域では通信装置Dから出力されるビームのビーム幅が狭くなることが想定される。ビーム幅が狭くなることに伴い、それぞれの通信装置D間における通信可能な範囲が限定される。換言すれば、通信装置Dは、互いに狭指向性を有するビームで情報通信を行うため、互いの位置関係が変わってしまうと、容易に情報通信範囲外となり、情報通信ができなくなってしまうことが想定される。一方、通信システム1に含まれる複数の通信装置Dのうち幾つかは、ウェアラブルデバイスである場合があるため、所定の位置に固定して使用されない場合がある。例えばスマートフォンとスマートウォッチとの間の情報通信であれば、ユーザが歩行により腕を振る動作を行うことにより互いの位置関係が変わってしまい、容易に情報通信範囲外となってしまうことが想定される。そこで、本実施形態によれば、情報通信範囲外に通信装置Dが出てしまうことを抑止するため、通信装置Dの移動を予測し、予測した方向にビームを出力することにより、情報通信を途切れさせることなく続行する。
【0015】
図2は、本実施形態に係る送信装置及び受信装置の機能構成の一例を示す機能構成図である。同図を参照しながら、通信装置Dの機能構成の一例を示す。複数の通信装置Dは、一方が送信装置2となり、他方が受信装置3となることにより情報通信を行う。送信装置2又は受信装置3のうち、少なくとも一方には、方位推定装置10が備えられる。図2(A)は、受信装置3に方位推定装置10が備えられる場合の一例であり、図2(B)は、送信装置2に方位推定装置10が備えられる場合の一例である。
【0016】
まず、図2(A)を参照しながら、受信装置3に方位推定装置10が備えられる場合における送信装置2及び受信装置3の機能構成の一例について説明する。受信装置3に方位推定装置10が備えられる場合における送信装置2を送信装置2Aと記載し、受信装置3を受信装置3Aと記載する。送信装置2Aは、ビーム掃引部21を備える。ビーム掃引部21は、例えば複数のアンテナを含んで構成されるアンテナアレイを制御することにより、狭指向性を有するビームを複数方向に出力し、ビーム掃引を行う。受信装置3Aは、ビーム受信部31と方位推定装置10とを備える。ビーム受信部31は、ビーム掃引部21から出力された電波を受信し、受信した電波の受信電力を測定することにより、電波強度(RSSI;Received Signal Strength Indicator)を測定する。ビーム受信部31は、測定した電波強度に関する情報を方位推定装置10に出力する。方位推定装置10は、ビーム受信部31により測定された電波強度に関する情報を取得し、取得した情報に基づき、送信装置2Aが存在する方位を推定する。方位推定装置10は、送信装置2Aが存在する方位を推定した結果を蓄積する。方位推定装置10は、蓄積した方位推定結果(すなわち過去の方位推定結果)に基づき、送信装置2Aと受信装置3Aとの位置関係の変化についての予測(すなわち移動予測)を行う。方位推定装置10は、移動予測を行った結果に基づき、ビーム掃引範囲を決定し、決定したビーム掃引範囲についての情報を、送信装置2Aに出力する。送信装置2Aは、移動予測に基づく範囲にビームを出力することにより、全方向にビームを出力することなく、受信装置3Aが存在する方位を探索することができ、受信装置3Aと情報通信を行うことができるようになる。
【0017】
次に、図2(B)を参照しながら、送信装置2に方位推定装置10が備えられる場合における送信装置2及び受信装置3の機能構成の一例について説明する。受信装置3に方位推定装置10が備えられる場合における送信装置2を送信装置2Bと記載し、受信装置3を受信装置3Bと記載する。送信装置2Bは、方位推定装置10を備える点において送信装置2Aとは異なる。また、受信装置3Bは、方位推定装置10を備えない点において受信装置3Aとは異なる。すなわち図2(B)に示す一例においては、方位推定処理を、受信装置3Aに代えて送信装置2Bが行う点において図2(A)に示した一例とは異なる。図2(A)に示した一例においては、決定されたビーム掃引範囲についての情報が、受信装置3Aから送信装置2Aに出力されるが、図2(B)に示した一例においては、電波強度に関する情報が受信装置3Aから送信装置2Aに出力される。図2(B)に示す一例において、方位推定装置10、ビーム掃引部21及びビーム受信部31の機能構成は図2(A)に示す一例と同様であってもよい。
【0018】
図3は、本実施形態に係るビーム探索方法において、全方位探索と探索範囲を限定した探索とについて説明するための図である。同図を参照しながら、本実施形態に係るビーム探索について説明する。
【0019】
図3(A)は、全方位探索の一例を示している。図示するように、全方位探索において、送信装置2は、電波を出力可能な全方向に対して、電波を出力する。したがって、全方位探索によれば、受信装置3がどの位置に存在していたとしても、送信装置2が電波を出力可能な方向に存在していれば、送信装置2と受信装置3との間の情報通信を成立させることができる。しかしながら上述したようにTHz帯ではビーム幅が狭くなるため、全方位探索では探索に時間を要し、探索のために無駄な消費電力を要する。そこで、本実施形態によれば、送信装置2は、受信装置3が存在する位置を予測し、探索範囲を限定することにより探索を行う。
【0020】
図3(B)は、探索範囲を限定した探索の一例を示している。図示するように、送信装置2は、受信装置3が存在すると予測される位置の周辺に対して電波を出力する。このように探索範囲を限定して探索を行うことにより、探索に時間を要することもなく、探索のために無駄な消費電力を要することもない。しかしながら、探索範囲を限定した探索によれば、送信装置2から出力される電波の方向に受信装置3が存在していない場合(すなわち送信装置2が受信装置3の移動予測を誤った場合等)、送信装置2と受信装置3との間の情報通信が成立せず、再度全方位探索を行う必要が生じる。この場合、探索に時間と消費電力を更に要することとなる。したがって、精度良く受信装置3の移動予測を行い、好適な範囲にビーム掃引することが求められている。
【0021】
本実施形態によれば、送信装置2は、過去に推定された方位に基づき受信装置3が存在する方位を予測する。送信装置2は、予測した方位に基づき探索範囲を限定して探索を行う。ここで、送信装置2から出力された電波を、受信装置3により継続的に受信することができていれば、受信装置3の移動予測を容易に行うことができる。しかしながら、送信装置2から出力された電波が、一時的に受信装置3により受信できなくなってしまった場合(すなわち電波が欠損した場合)、過去の移動軌跡に基づいて受信装置3の移動を予測し、予測した結果に基づいて探索範囲を限定し、探索を行うこととなる。ここで、電波が欠損する要因としては複数存在することが考えられる。本実施形態においては、電波が欠損する要因を特定し、特定された欠損要因に基づいた移動予測をすることにより、好適な範囲にビーム掃引することを可能とする。
【0022】
図4は、本実施形態に係る欠損要因の種類について説明するための図である。同図を参照しながら、電波の欠損要因の種類について説明する。同図を参照しながら、電波の欠損要因が、第一に遮蔽に起因するものである場合、第二に移動予測誤りに起因するものであるである場合、及び第三に移動予測誤りに起因するものであるである場合のそれぞれの一例についてそれぞれ説明する。
【0023】
図4(A)は、欠損の要因が遮蔽に起因するものである場合について説明するための図である。図示するように、送信装置2と受信装置3との間に遮蔽物が存在することにより、送信装置2から出力された電波が欠損する場合がある。遮蔽物の一例としては、人間の手や足等を例示することができる。その他、衣服やテーブル等が遮蔽物となる場合もある。例えば電波の欠損が生じていない状態から、受信装置3が移動したことにより、送信装置2と受信装置3との間に遮蔽物が存在する位置に受信装置3が移動した場合、送信装置2は、受信装置3の過去の移動に基づき(例えば、移動ベクトルと分散に基づき)、電波の出力範囲を決定する。しかしながら、受信装置3の移動軌跡は、遮蔽物の陰に存在する期間に変動してしまっている場合があり、このような場合、方位推定精度が低下してしまうおそれがある。
【0024】
図4(B)は、欠損の要因が移動予測誤りに起因するものであるである場合について説明するための図である。同図には、移動予測が行われた結果、受信装置3が存在していると予測された位置を受信装置3’として示し、実際に受信装置3が存在する位置を受信装置3として示す。受信装置3’の位置は、過去の受信装置3の移動軌跡に基づき、例えば機械学習により予測される。したがって、受信装置3との位置と受信装置3’の位置とは同一であることが好適である。しかしながら、受信装置3が過去の移動軌跡とは異なる移動をした場合には、図示するように受信装置3との位置と受信装置3’の位置とが異なってしまう場合がある。このように移動予測が適切でなかった場合、実際の受信装置3を探索するため、全方位探索を行うことが好適である。
【0025】
図4(C)は、欠損の要因が、受信装置3が送信装置2の通信範囲外に出たことに起因するものである場合について説明するための図である。同図には、第1の時点において受信装置3が存在している位置を受信装置3’として示し、第1の時点より後の時点である第2の時点において受信装置3が存在する位置を受信装置3として示す。受信装置3が受信装置3’に示す位置に存在する場合、送信装置2は正常に受信装置3と情報通信を行うことができる。しかしながら、送信装置2と受信装置3との距離が離れることにより、例えば図示するように、受信装置3が受信装置3に示す位置に存在することとなった場合、受信装置3が送信装置2の通信範囲外に出てしまい、情報通信ができなくなってしまう場合がある。このように、受信装置3が送信装置2の通信範囲外に出てしまった場合、いくら探索を行っても受信装置3を見つけ出すことはできない。このように受信装置3が送信装置2の通信範囲外に出てしまった場合、送信装置2は、受信装置3を探索しない(すなわち受信装置3に対してビームを出力しない)ことが好適である。
【0026】
図5は、本実施形態に係る方位推定装置の機能構成の一例を示す機能構成図である。同図を参照しながら、方位推定装置10の機能構成の一例について説明する。方位推定装置10は、掃引結果記憶部11と、方位推定部12と、推定結果記憶部13と、欠損有無判定部14と、欠損要因判定部15と、掃引範囲決定部16とを備える。これらの各機能部は、例えば、電子回路を用いて実現される。また、各機能部は、必要に応じて、半導体メモリや磁気ハードディスク装置などといった記憶手段を内部に備えてよい。また、各機能を、コンピュータおよびソフトウェアによって実現するようにしてもよい。
【0027】
掃引結果記憶部11は、ビーム受信部31からビーム掃引方向と受信電力に関する情報を取得する。ビーム掃引方向とは、送信装置2から出力された狭指向性を有するビームの方向である。受信電力とは、当該ビームの方向に対応して、受信装置3により受信されたビームの電力、すなわち電波強度である。掃引結果記憶部11は、取得した情報を記憶する。掃引結果記憶部11が取得する情報には、予め時刻情報が含まれていてもよいし、掃引結果記憶部11は、取得した情報と、取得した時刻とを対応付けて記憶してもよい。
【0028】
方位推定部12は、掃引結果記憶部11に記憶された情報に基づき、時刻ごとにおける、最も電波強度が高い方位を特定する。特定された方位とは、すなわち送信装置2から見て受信装置3が存在する方位(又は受信装置3から見て送信装置2が存在する方位)である。方位推定部12は、特定した方位の時刻ごとの変化に基づき、送信装置2から見た受信装置3の軌跡(又は受信装置3から見た送信装置2の軌跡)を推定してもよい。方位推定部12は、推定した軌跡に基づき、所定の時刻において送信装置2から見た受信装置3の方位を推定する。方位推定部12は、方位を推定した結果を、推定結果記憶部13に記憶させる。
【0029】
推定結果記憶部13は、方位推定部12により推定された方位についての情報を記憶する。推定結果記憶部13は、方位推定部12により推定された方位についての情報を、時刻と対応付けて記憶する。推定結果記憶部13には、過去の方位推定結果が記憶されているということもできる。
【0030】
欠損有無判定部14は、受信された電波に欠損が発生しているか否か(すなわち欠損の有無)を判定する。欠損有無判定部14は、具体的には、電波を受信した複数の方向の中に、欠損している方向が存在するか否かを判定する。欠損有無判定部14は、少なくともいずれかの方向における電波強度が所定値以下である場合、欠損が生じていると判定してもよい。欠損有無判定部14は、判定した欠損の有無に関する情報を、欠損要因判定部15に出力する。
【0031】
欠損要因判定部15は、推定結果記憶部13に記憶された方位推定結果を取得し、欠損有無判定部14から欠損の有無に関する情報を取得する。欠損要因判定部15は、欠損有無判定部14により欠損している方向が存在すると判定された場合、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化に基づき、欠損の要因を判定する。欠損要因の判定についての詳細については、図6等を参照しながら後述する。欠損要因判定部15は、判定した欠損要因に関する情報を、掃引範囲決定部16に出力する。
【0032】
掃引範囲決定部16は、推定結果記憶部13に記憶された方位推定結果を取得し、欠損要因判定部15から欠損要因の判定結果を取得する。掃引範囲決定部16は、取得した情報に基づき、ビームの掃引範囲を決定する。掃引範囲決定部16により決定されるビームの掃引範囲とは、すなわち送信装置2から出力されるビームの方向である。送信装置から出力されるビームの方向は、第一に全方向、第二に全方向より狭い範囲である所定の方向、又は第三に出力しない、のいずれかであってもよい。掃引範囲決定部16は、決定した掃引範囲に関する情報をビーム掃引部21に出力する。
【0033】
図6は、本実施形態に係る欠損要因判定部の機能構成の一例を示す機能構成図である。同図を参照しながら、欠損要因判定部15の機能構成の一例について説明する。欠損要因判定部15は、前処理部151と、第1判定部152と、第2判定部153と、出力部154とを備える。
【0034】
前処理部151は、推定結果記憶部13に記憶された方位推定結果を取得し、欠損有無判定部14から欠損の有無に関する情報を取得する。前処理部151は、欠損有無判定部14により欠損している方向が存在すると判定された場合、第1判定部152に入力される情報についての前処理を行う。第1判定部152に入力される情報とは、方位推定結果の時系列データである。ここで、本実施形態においては、ビーム掃引範囲が変動するアルゴリズムとなる。したがって、前処理部151は、前処理を行うことにより、第1判定部152に入力される範囲を特定し、第1判定部152に入力される情報のフォーマットを合わせる。換言すれば、前処理とは、電波の方向ごとに測定された電波強度のうち、第1判定部152に入力される範囲を特定する処理であるということもできる。また、送信装置2により出力されるビームの掃引範囲及び掃引方向は時間ごとに変動するため、前処理とは、第1判定部152により処理しやすい形式に変換するための処理であるということもできる。
【0035】
第1判定部152は、前処理部151から前処理が行われた情報を取得する。第1判定部152は、取得した情報に基づき、第1の判定を行う。第1の判定とは、欠損の要因が遮蔽に起因するものであるか否かについての判定である。第1の判定は、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化の傾向に基づき行われる。第1判定部152は、例えば、複数の方向について受信した電波の電波強度のうち、電波強度が低い方向が存在する場合に、欠損の要因が遮蔽に起因するものであると判定してもよい。第1の判定とは、欠損の要因が、遮蔽によるものか否かを切り分けるための判定であるということもできる。また、第1判定部152は、欠損の要因が遮蔽に起因するものであると判定した場合、遮蔽されている区間を特定するための推定を行ってもよい。
【0036】
なお、第1判定部152は、機械学習により第1の判定を行ってもよい。機械学習により第1の判定が行われる場合、第1判定部152は、予め学習された学習済みモデルを含む。当該学習済みモデルは、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化と、欠損の要因が遮蔽に起因するものであるか否かについての情報とを教師データとして、教師有り学習により予め学習される。なお、当該学習済モデルは、K近傍法アルゴリズムを用いて学習されることが好適である。
【0037】
第2判定部153は、前処理部151から前処理が行われた情報を取得し、第1判定部152から第1の判定が行われた結果を取得する。第2判定部153は、取得した情報に基づき、第2の判定を行う。第2の判定は、欠損の要因が遮蔽によるものでない場合に行われるものである。第2の判定とは、欠損の要因が、通信範囲外に出たことに起因するものであるか否かについての判定である。第2判定部153は、方位推定結果について前処理が行われた情報、すなわち受信した電波の電波強度の時間ごとの変化の傾向に基づき、第2の判定を行う。第2判定部153は、例えば、受信した電波の電波強度が、急激に変化した場合、欠損の要因が移動予測誤りに起因するものであると判定してもよい。この場合、第2判定部153は、欠損の要因が通信範囲外に出たことに起因するものでない場合、移動予測誤りが要因と判定してもよい。
【0038】
なお、第2判定部153は、機械学習により第2の判定を行ってもよい。機械学習により第2の判定が行われる場合、第2判定部153は、予め学習された学習済みモデルを含む。当該学習済みモデルは、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化と、欠損の要因が通信範囲外に出たことに起因するものであるか否かについての情報とを教師データとして、教師有り学習により予め学習される。なお、当該学習済モデルは、K近傍法アルゴリズムを用いて学習されることが好適である。
【0039】
出力部154は、第1判定部152から第1の判定結果を取得し、第2判定部153から第2の判定結果を取得する。出力部154は、取得した結果に基づき、電波の欠損要因を特定する。出力部154は、特定した電波の欠損要因を、掃引範囲決定部16に出力する。
【0040】
次に、図7及び図8を参照しながら、送信装置2と受信装置3との位置関係が変化した場合における受信電力の変化の一例について説明する。また、図7及び図8を参照しながら、受信電力の変化の傾向から、欠損要因の判定を行うことが可能である理由についても説明する。
【0041】
図7は、本実施形態に係る欠損要因が移動予測誤りに起因するものである場合における受信電力の変化について説明するための図である。図7(A)は、欠損の要因が移動予測誤りに起因するものであるである場合におけるビーム掃引範囲と、送信装置2及び受信装置3の位置関係とについて示す図である。また、図7(B)は、図7(A)に示す位置関係の場合における受信電力の時間ごとの変化について示す図である。同図には、移動予測が行われた結果、受信装置3が存在していると予測された位置を受信装置3’として示し、実際に受信装置3が存在する位置を受信装置3として示す。この場合、送信装置2は、受信装置3が存在していると予測された位置を受信装置3’に向けてビームを出力する。しかしながら、実際に受信装置3が存在する位置は受信装置3であるため、誤った方向にビームが出力されることとなる。この場合、受信電力は急峻に低下することとなる。
【0042】
図8は、本実施形態に係る欠損要因が通信範囲外に出たことに起因するものである場合における受信電力の変化について説明するための図である。図8(A)は、欠損の要因が、受信装置3が送信装置2の通信範囲外に出たことに起因するものである場合におけるビーム掃引範囲と、送信装置2及び受信装置3の位置関係とについて示す図である。また、図8(B)は、図8(A)に示す位置関係の場合における受信電力の時間ごとの変化について示す図である。同図には、第1の時点において受信装置3が存在している位置を受信装置3’として示し、第1の時点より後の時点である第2の時点において受信装置3が存在する位置を受信装置3として示す。この場合、送信装置2は、第1の時点においても第2の時点においても、受信装置3が存在している方向に向けてビームを出力し続ける。しかしながら、受信装置3は送信装置2から徐々に遠ざかるため、受信電力は緩やかに低下することとなる。
【0043】
図7及び図8を参照しながら説明したように、欠損要因が移動予測誤りに起因するものである場合と、通信範囲外に出たことに起因するものである場合とでは、受信電力の変化の傾向が異なる。したがって、受信電力の変化の傾向に基づき、電波の欠損要因を判定することが可能となる。
【0044】
図9は、本実施形態に係るビーム掃引範囲の決定方法の一例について説明するためのフローチャートである。同図を参照しながら、本実施形態に係るビーム掃引範囲の決定方法の一例について説明する。
【0045】
まず、送信装置2は、所定の方向にビーム掃引を行う(ステップS11)。受信装置3は、送信装置2から出力されたビームを受信し、受信したビームの電波強度に基づき、送信装置2が存在する方位を推定する(ステップS12)。具体的には、方位推定は、過去に推定された方位推定結果(例えば1ステップ前の方位推定結果)、すなわち方位推定結果の時系列データに基づき、行われてもよい。
【0046】
次に、受信装置3により受信されたビームの受信電力が閾値以下か否かを推定する(ステップS13)。受信電力が閾値以下である場合、処理がステップS14に進められる。また、受信電力が閾値以下でない場合、処理がステップS15に進められる。受信電力が閾値以下である場合(すなわちステップS13;YES)、受信電力の欠損要因が判定される(ステップS14)。判定された受信電力の欠損要因に応じて、移動予測器によるビーム掃引範囲が決定され(ステップS16)、又はビーム掃引範囲が適応的に決定される(ステップS17)。また、受信電力が閾値以下でない場合(すなわちステップS13;NO)、移動予測器によるビーム掃引範囲が決定される(ステップS15)。
【0047】
図10は、本実施形態に係る欠損要因判定方法の一例について説明するためのフローチャートである。同図を参照しながら、本実施形態に係る欠損要因判定方法の一例について説明する。なお、同図を参照しながら説明する処理は、欠損要因判定部15により行われる処理の一例である。
【0048】
まず、欠損要因判定部15は、方位推定結果の時系列データについて、前処理を行う(ステップS21)。次に、欠損要因判定部15は、前処理された時系列データに基づき、遮蔽区間の判定を行う(ステップS22)。遮蔽区間の判定は、方位推定結果の変動傾向と、遮蔽の関係とを教師データとして、予め学習された予測モデルにより行われる。なお、遮蔽区間の判定は、K近傍法を用いて行われることが好適である。ここで、例えば送信装置2及び受信装置3のうち少なくとも一方は、人体が身に着けるウェアラブルデバイスである場合がある。したがって、人体の動きと、遮蔽との関係とを学習した予測モデルを用いることにより、移動予測をすることができる。人体の動きは、例えば方位推定結果の時系列データに基づいて推定することができる。よって、方位推定結果の時系列データに基づいて遮蔽区間の判定を行うことが可能となる。
【0049】
欠損要因判定部15は、受信装置3が遮蔽区間に存在すると判定された場合(すなわちステップS23;YES)、電波の欠損要因が遮蔽によるものであると判定する(ステップS26)。
【0050】
また、欠損要因判定部15は、受信装置3が遮蔽区間に存在すると判定されなかった場合(すなわちステップS23;NO)、更なる判定を行う(ステップS24)。更なる判定とは、送信装置2による掃引方向ごとの電波強度の変動傾向に基づき、欠損要因が通信範囲外に出たことによるものであるか、移動予測誤りによるものであるかを判定するものである。当該判定には、ステップS23の判定に用いられた予測モデルとは異なる予測モデルが用いられてもよい。なお、当該判定は、K近傍法を用いて行われることが好適である。
【0051】
欠損要因判定部15は、送信装置2による掃引方向ごとの電波強度の変動傾向が、所定の傾向(第1の傾向)に分類できる場合、通信範囲外に出たことが要因であると判定し、処理をステップS27に進める(すなわちステップS25;YES)。欠損要因判定部15は、欠損の要因が、通信範囲外に出たことに起因するものであると判定する。
【0052】
また、欠損要因判定部15は、送信装置2による掃引方向ごとの電波強度の変動傾向が、所定の傾向(第2の傾向)に分類できる場合(または分類できない場合)、通信範囲外に出たことが要因でないと判定し、処理をステップS28に進める(すなわちステップS25;NO)。欠損要因判定部15は、欠損の要因が、移動予測誤りに起因するものであると判定する。
【0053】
図11は、本実施形態の方位推定装置の内部構成の一例を示すブロック図である。方位推定装置10の少なくとも一部の機能は、コンピュータを用いて実現され得る。図示するように、そのコンピュータは、中央処理装置901と、RAM902と、入出力ポート903と、入出力デバイス904や905等と、バス906と、を含んで構成される。コンピュータ自体は、既存技術を用いて実現可能である。中央処理装置901は、RAM902等から読み込んだプログラムに含まれる命令を実行する。中央処理装置901は、各命令にしたがって、RAM902にデータを書き込んだり、RAM902からデータを読み出したり、算術演算や論理演算を行ったりする。RAM902は、データやプログラムを記憶する。RAM902に含まれる各要素は、アドレスを持ち、アドレスを用いてアクセスされ得るものである。なお、RAMは、「ランダムアクセスメモリー」の略である。入出力ポート903は、中央処理装置901が外部の入出力デバイス等とデータのやり取りを行うためのポートである。入出力デバイス904や905は、入出力デバイスである。入出力デバイス904や905は、入出力ポート903を介して中央処理装置901との間でデータをやりとりする。バス906は、コンピュータ内部で使用される共通の通信路である。例えば、中央処理装置901は、バス906を介してRAM902のデータを読んだり書いたりする。また、例えば、中央処理装置901は、バス906を介して入出力ポートにアクセスする。
【0054】
[実施形態のまとめ]
本実施形態によれば、方位推定装置10は、送信装置2等の所定の装置から複数の方向に出力された電波を受信し、受信した電波の電波強度を、出力された電波の方向ごとに測定することにより、好適な方向の電波を推定する。また、方位推定装置10は、欠損有無判定部14を備えることにより、電波を受信した複数の方向の中に、欠損している方向が存在するか否かを判定し、欠損要因判定部15を備えることにより、欠損している方向が存在すると判定された場合、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化に基づき欠損の要因を判定する。すなわち、方位推定装置10によれば、電波の欠損の有無を判定した後、欠損の要因について判定する。したがって、方位推定装置10によれば、欠損の要因を判定することができるため、受信電力が一時的に欠損した場合であっても、容易に送信装置2から見た受信装置3の方位を推定することができる。方位推定装置10によれば、推定した方位に基づき掃引範囲を決定することができるため、欠損が生じた場合に全方位探索を行うことを要せず、短時間で通信対象となる装置を探索することができる。
【0055】
また、上述した実施形態によれば、欠損要因判定部15は、第1判定部152を備えることにより、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化の傾向に基づき、欠損の要因が遮蔽に起因するものであるか否かについての判定を行い、第2判定部153を備えることにより、欠損の要因が遮蔽によるものでない場合に、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化の傾向に基づき、欠損の要因が通信範囲外に出たことに起因するものであるか否かの判定を行う。すなわち、欠損要因判定部15は、第1の判定を行うことにより欠損の要因が遮蔽に起因するものであるか否かを判定した後、第2の判定を行うことにより欠損の要因が通信範囲外に出たことに起因するものであるか否かの判定を行う。したがって、本実施形態によれば、詳細に欠損の要因を判定することができる。本実施形態によれば、詳細に判定された欠損の要因に応じて、掃引範囲を決定することができるため、好適な範囲でビーム掃引を行うことができ、短時間で通信対象となる装置を探索することができる。
【0056】
また、上述した実施形態によれば、第2判定部153は、受信した電波の電波強度が、急激に変化した場合、欠損の要因が移動予測誤りに起因するものであると判定する。したがって、本実施形態によれば、更に詳細に欠損の要因を判定することができる。本実施形態によれば、更に詳細に判定された欠損の要因に応じて、掃引範囲を決定することができるため、より好適な範囲でビーム掃引を行うことができ、短時間で通信対象となる装置を探索することができる。
【0057】
また、上述した実施形態によれば、第1判定部152は、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化と、欠損の要因が遮蔽に起因するものであるか否かについての情報とを教師データとして予め学習された学習済みモデルを含む。すなわち、第1判定部152は、機械学習により判定を行う。したがって、本実施形態によれば、より精度よく欠損の要因を判定することができる。本実施形態によれば、より精度よく判定された欠損の要因に応じて、掃引範囲を決定することができるため、好適な範囲でビーム掃引を行うことができ、短時間で通信対象となる装置を探索することができる。
【0058】
また、上述した実施形態によれば、第2判定部153は、受信した電波の電波強度の時間ごとの変化と、欠損の要因が通信範囲外に出たことに起因するものであるか否かについての情報とを教師データとして予め学習された学習済みモデルを含む。すなわち、第2判定部153は、機械学習により判定を行う。したがって、本実施形態によれば、より精度よく欠損の要因を判定することができる。本実施形態によれば、より精度よく判定された欠損の要因に応じて、掃引範囲を決定することができるため、好適な範囲でビーム掃引を行うことができ、短時間で通信対象となる装置を探索することができる。
【0059】
また、上述した実施形態によれば、第1判定部152に含まれる学習済モデルと、第2判定部153に含まれる学習済モデルとは、いずれもK近傍法アルゴリズムを用いて学習されるものである。したがって、本実施形態によれば、容易なアルゴリズムにより、精度よく欠損の要因を判定することができる。
【0060】
また、上述した実施形態によれば、欠損要因判定部15は、前処理部151を備えることにより、電波の方向ごとに測定された電波強度のうち、第1判定部152に入力される範囲を特定する前処理を行う。前処理とは、電波の方向ごとに測定された電波強度のうち第1判定部152に入力される範囲を特定する処理であり、第1判定部152及び第2判定部153により処理しやすい形式に変換するための処理である。したがって、本実施形態によれば、予め学習された機械学習モデルを用いて、欠損の要因を推論することができる。
【0061】
なお、これにより、例えば5Gシステム等の移動通信システムにおける総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0063】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0064】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。 また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…通信システム、D…通信装置、2…送信装置、3…受信装置、21…ビーム掃引部、31…ビーム受信部、10…方位推定装置、11…掃引結果記憶部、12…方位推定部、13…推定結果記憶部、14…欠損有無判定部、15…欠損要因判定部、16…掃引範囲決定部、151…前処理部、152…第1判定部、153…第2判定部、154…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11