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特開2024-144850黒色紫外線硬化型樹脂組成物、黒色樹脂硬化物、電子部品製造用材料、電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144850
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】黒色紫外線硬化型樹脂組成物、黒色樹脂硬化物、電子部品製造用材料、電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20241004BHJP
   C08L 101/08 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241004BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20241004BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08F2/50
C08L101/08
C08K3/013
C08L33/04
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056995
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】影山 謙介
(72)【発明者】
【氏名】相場 直幸
(72)【発明者】
【氏名】赤池 寛人
(72)【発明者】
【氏名】山口 朋彦
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002BG011
4J002BG041
4J002BG051
4J002CD001
4J002CD051
4J002CD061
4J002DA036
4J002DE116
4J002DE136
4J002DF016
4J002EE038
4J002EH077
4J002EU188
4J002EW148
4J002FD020
4J002FD096
4J002FD148
4J002FD208
4J002GH00
4J002GJ01
4J002GP00
4J002GQ00
4J011PA08
4J011PB25
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA06
4J011QA24
4J011QA37
4J011QA38
4J011QA45
4J011QA46
4J011QB20
4J011SA61
4J011SA84
4J011TA03
4J011UA01
4J011VA04
4J011WA01
4J011WA05
4J011WA06
4J011WA07
(57)【要約】
【課題】可視光の遮光性に優れるとともに紫外線による光硬化性に優れた黒色紫外線硬化型樹脂組成物、黒色樹脂硬化物、および、上述の黒色紫外線硬化型樹脂組成物、黒色樹脂硬化物を備えた電子部品製造用材料、電子部品を提供する。
【解決手段】黒色顔料と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する黒色紫外線硬化型樹脂組成物であって、波長λnmにおけるε´(λ)を、波長λnmにおける光学密度OD(λ)、顔料濃度c、光路長lから、ε´(λ)=OD(λ)/(c×l)として、波長550nmの光におけるε´(550)と波長365nmの光におけるε´(365)との比ε´(550)/ε´(365)が1.00以上2.00以下の範囲内とされていることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色顔料と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する黒色紫外線硬化型樹脂組成物であって、
波長λnmの光におけるε´(λ)を、波長λnmにおける光学密度OD(λ)、顔料濃度c、光路長lから、ε´(λ)=OD(λ)/(c×l)として、
波長550nmの光におけるε´(550)と波長365nmの光におけるε´(365)との比ε´(550)/ε´(365)が1.00以上2.00以下の範囲内とされていることを特徴とする黒色紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記光重合性化合物は、分子内の繰り返し単位中または分子末端部にカルボシル基を有する構造とされていることを特徴とする請求項1に記載の黒色紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記黒色顔料の含有量Xと前記光重合開始剤の含有量Yとの質量比X/Yが0.3以上10以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の黒色紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の黒色紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする黒色樹脂硬化物。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の黒色紫外線硬化型樹脂組成物、および、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の黒色紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた黒色樹脂硬化物のうち、少なくとも一方または両方を含むことを特徴とする電子部品製造用材料。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の黒色紫外線硬化型樹脂組成物、および、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の黒色紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた黒色樹脂硬化物のうち、少なくとも一方または両方を含むことを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、黒色紫外線硬化型樹脂組成物、黒色樹脂硬化物、電子部品製造用材料、電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶や有機EL等からなる表示装置(ディスプレイ)用のブラックマトリックス、Cイメージセンサ用遮光材、光学部材用遮光材、遮光フィルタ、IR(赤外線)カットフィルタ、カバーレイフィルム、電子部材用遮光膜、黒色膜、UV硬化性接着剤等として、黒色顔料を含む黒色紫外線硬化型樹脂組成物が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、可視光線に対する遮光性が高く、紫外線に対する光硬化性も高い液晶表示素子用シール剤組成物として、黒色顔料である窒化ジルコニウムと、硬化性化合物と、光重合開始剤と、を含むものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-076794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された液晶表示素子用シール剤組成物においては、実施例に記載されているように、光硬化のみでは硬化性が不十分であるため、熱硬化も併用して硬化させる必要があった。すなわち、特許文献1においては、紫外線による光硬化性が不十分であった。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、可視光の遮光性に優れるとともに紫外線による光硬化性に優れた黒色紫外線硬化型樹脂組成物、黒色樹脂硬化物、および、上述の黒色紫外線硬化型樹脂組成物、黒色樹脂硬化物を備えた電子部品製造用材料、電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者ら鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。
波長λnmの光における光学密度OD(λ)と、顔料濃度c(g/L)と、光路長l(cm)から、ε´(λ)=OD(λ)/(c×l)として、新たな定数ε´(λ)を定義することで、濃度、光路長に依存した汎用的な定数として扱うことが可能となる。そして、遮光性に影響する波長550nmにおけるε´(550)と、紫外線硬化に影響する波長365nmにおけるε´(365)との比を適正な範囲とすることで、可視光の遮光性および紫外線による光硬化性をバランス良く両立させることが可能となる。
【0008】
本発明の態様1の黒色紫外線硬化型樹脂組成物は、上述の知見に基づいてなされたものであって、黒色顔料と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する黒色紫外線硬化型樹脂組成物であって、波長λnmの光におけるε´(λ)を、波長λnmの光における光学密度OD(λ)、顔料濃度c(g/L)、光路長l(cm)から、ε´(λ)=OD(λ)/(c×l)として、波長550nmの光におけるε´(550)と波長365nmの光におけるε´(365)との比ε´(550)/ε´(365)が1.00以上2.00以下の範囲内とされていることを特徴としている。
【0009】
本発明の態様1の黒色紫外線硬化型樹脂組成物によれば、波長λnmの光におけるε´(λ)を、波長λnmの光における光学密度OD(λ)、顔料濃度c(g/L)、光路長l(cm)から、ε´(λ)=OD(λ)/(c×l)として、波長550nmの光におけるε´(550)と波長365nmの光におけるε´(365)との比ε´(550)/ε´(365)が1.00以上2.00以下の範囲内とされているので、可視光の遮光性に優れるとともに紫外線による光硬化性に優れている。
【0010】
本発明の態様2の黒色紫外線硬化型樹脂組成物は、本発明の態様1の黒色紫外線硬化型樹脂組成物において、前記光重合性化合物は、分子内の繰り返し単位中または分子末端部にカルボシル基を有する構造とされていることを特徴としている。
本発明の態様2の黒色紫外線硬化型樹脂組成物によれば、前記光重合性化合物が分子内の繰り返し単位中または分子末端部にカルボシル基を有する構造とされていることから、粒子分散性が向上し、光学特性を向上させることが可能となる。
【0011】
本発明の態様3の黒色紫外線硬化型樹脂組成物は、本発明の態様1または態様2の黒色紫外線硬化型樹脂組成物において、前記黒色顔料の含有量Xと前記光重合開始剤の含有量Yとの質量比X/Yが0.3以上10以下の範囲内とされていることを特徴としている。
本発明の態様3の黒色紫外線硬化型樹脂組成物によれば、前記黒色顔料の含有量Xと前記光重合開始剤の含有量Yとの質量比X/Yが0.3以上10以下の範囲内とされていることから、上述の´(550)/ε´(365)を1.00以上2.00以下の範囲内に安定して調整することができる。
【0012】
本発明の態様4の黒色樹脂硬化物は、本発明の態様1から態様3のいずれか一つの黒色紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物であることを特徴としている。
本発明の態様4の黒色樹脂硬化物によれば、本発明の態様1から態様3のいずれか一つの黒色紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物であることから、遮光性に十分に優れるとともに、十分な硬さを有しており、遮光部材として特に適している。
【0013】
本発明の態様5の電子部品製造用材料は、本発明の態様1から態様3のいずれか一つの黒色紫外線硬化型樹脂組成物、および、本発明の態様1から態様3のいずれか一つの黒色紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた黒色樹脂硬化物のうち、少なくとも一方または両方を含むことを特徴としている。
本発明の態様5の電子部品製造用材料によれば、可視光の遮光性および紫外線による光硬化性に優れた黒色紫外線硬化型樹脂組成物およびこの硬化物である黒色樹脂硬化物を有しているので、各種特性に優れた電子部品を製造することができる。
【0014】
本発明の態様6の電子部品は、本発明の態様1から態様3のいずれか一つの黒色紫外線硬化型樹脂組成物、および、本発明の態様1から態様3のいずれか一つの黒色紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた黒色樹脂硬化物のうち、少なくとも一方または両方を含むことを特徴としている。
本発明の態様6の電子部品によれば、可視光の遮光性および紫外線による光硬化性に優れた黒色紫外線硬化型樹脂組成物およびこの硬化物である黒色樹脂硬化物を有しているので、各種特性に優れている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、可視光の遮光性に優れるとともに紫外線による光硬化性に優れた黒色紫外線硬化型樹脂組成物、黒色樹脂硬化物、および、上述の黒色紫外線硬化型樹脂組成物、黒色樹脂硬化物を備えた電子部品製造用材料、電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0017】
本実施形態に係る黒色紫外線硬化型樹脂組成物は、黒色顔料と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する。
そして、波長λnmの光におけるε´(λ)を、波長λnmの光における光学密度OD(λ)、顔料濃度c(g/L)、光路長l(cm)から、ε´(λ)=OD(λ)/(c×l)として、波長550nmの光におけるε´(550)と波長365nmの光におけるε´(365)との比ε´(550)/ε´(365)が1.00以上2.00以下の範囲内とされている。
【0018】
光学密度ODは、透過率Tを用いて、以下の(1)式で表される。(1)式から、光学密度ODの値が高い程、遮光性が高くなることが分かる。
(1)式:OD(λ)=-log10[100/T(λ)]
【0019】
次に、吸光度Aは、以下の(2)式で表される。なお、(2)式において、εはモル吸光係数(L/cm/g)、cは粒子濃度(g/L)、l:光路長(cm)である。
(2)式:A=-log10[1/T]=ε×c×l
【0020】
(1)式および(2)式から、光学密度ODの定義と吸光度Aの定義とほぼ等価であることから、ODは、ε×c×lと比例関係にあるとみなせる。そこで、以下の(3)式のように、新たな定数ε´を定義する。この定数ε´は、粒子濃度や光路長に依存しない汎用的な定数として扱うことができる。
(3)式:ε´(λ)=OD/(c×l)
【0021】
そして、本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物においては、紫外線硬化に影響する波長365nmにおけるε´(365)と、遮光性に影響する波長550nmにおけるε´(550)との比ε´(550)/ε´(365)を1.00以上2.00以下の範囲内としている。
ε´(550)/ε´(365)が1.00未満の場合には、紫外線が十分に透過しにくく、紫外線硬化が不十分となり、それにより可視光線の遮蔽性が不十分となるおそれがある。一方、ε´(550)/ε´(365)が2.00を越えると、光重合開始剤の紫外線に対する感度が低くなり紫外線硬化が不十分となり、それにより可視光線の遮蔽性が不十分となるおそれがある。
【0022】
なお、ε´(550)/ε´(365)は、1.20以上であることが好ましく、1.40以上であることがより好ましい。また、ε´(550)/ε´(365)は、1.80以下であることが好ましく、1.70以下であることがより好ましい。
また、上述のε´(λ)においては、黒色顔料の濃度c(g/L)で規定しているが、光重合開始剤も遮光性に寄与することから、ε´(550)/ε´(365)が1.00以下であっても、十分な遮光性を確保することができる。
【0023】
ここで、上述のε´(550)/ε´(365)の値は、黒色顔料および光重合開始剤の濃度比を調整することによって、制御することができる。
本実施形態においては、黒色顔料の含有量Xと光重合開始剤の含有量Yとの質量比X/Yを0.2以上20以下の範囲内としている。
【0024】
次に、本実施形態に係る黒色紫外線硬化型樹脂組成物に含まれる光重合性化合物、光重合開始剤、黒色顔料について説明する。
【0025】
本実施形態に係る黒色紫外線硬化型樹脂組成物に含まれる光重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物を用いることができる。例えば、ラジカル重合性化合物としてエチレン性不飽和結合を有するモノマーおよびオリゴマーまたはエチレン性不飽和結合を3つ以上有する多官能モノマーを用いることができる。
エチレン性不飽和結合を有するモノマーは、(メタ)アクリロイル基を1つ以上有するアクリルモノマーであってもよい。アクリルモノマーの例としては、(メタ)アクリル系単官能モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、4-アクリロイルモルフォリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレートなどの単官能モノマー、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1、9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの二官能モノマーが挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有するオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するアクリル系オリゴマーであってもよい。アクリル系オリゴマーは、アクリル系単官能モノマーが重合した低分子量の重合体である。アクリル系オリゴマーの例としては、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アクリル系オリゴマーの分子量は、例えば、数平均分子量で300以上10000以下の範囲内にあってもよい。
【0026】
上述した(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーは、単独あるいは2種以上を併用して使用できる。また、アクリル系オリゴマーは上記に記載されるものに限定されるものではなく、一般的に流通しているオリゴマーを使用することができる。エチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーは、(メタ)アクリロイル基を3つ以上有するアクリル系多官能モノマーであってもよい。アクリル系多官能モノマーの例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物やオキセタン化合物が挙げられる。エポキシ化合物としては、反応性エポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えばエポキシモノマー、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ビフェニル型エポキシ、ビフェニル混合型エポキシ、ナフタレン型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシ、トリスフェノールエタン型エポキシ、テトラフェノールエタン型エポキシ、脂肪族エポキシ、脂環式エポキシ等が挙げられる。
エポキシ系モノマーの具体的な例としては、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、1,2;5,6-ジエポキシヘキサヒドロインダン、3’,3’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。
オキセタン化合物としては、2-エチルヘキシルオキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3,3’-(オキシビスメチレン)ビス(3-エチルオキセタン)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]イソフタレート、3-エチル-3([3-エチルオキセタン-3-イル]メトキシ)メチルオキセタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]、およびそれらを部分的に重合させたオリゴマー等が挙げられる。
光重合性化合物の含有量は、例えば、黒色紫外線硬化型樹脂組成物100質量部に対して、5質量部以上99質量部以下の範囲内とすることが好ましい。
【0028】
ここで、本実施形態においては、光重合性化合物は、分子内の繰り返し単位中または分子末端部にカルボシル基を有する構造であることが好ましい。
分子内にカルボシル基を有する光重合性化合物を用いることにより、粒子の分散性が向上することになる。
【0029】
本実施形態に係る黒色紫外線硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤としては、紫外線、具体的には100~400nmの波長の光を吸収し、重合反応を開始できる化合物が好ましい。
光重合開始剤の含有量は、例えば、黒色紫外線硬化型樹脂組成物100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下の範囲内とすることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る黒色紫外線硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤は、例えば、ラジカル発生剤であってもよいし、光酸発生剤であってもよい。紫外線硬化剤の例としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、トリアジン化合物、ホスフィンオキシド系化合物、スルホニウム系化合物、ヨードニウム系化合物、有機過酸化物を用いることができる。
【0031】
アセトフェノン系化合物の例としては、アセトフェノン、ジメチルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1を挙げることができる。ベンゾフェノン系化合物の例としては、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノンを挙げることができる。ベンゾインエーテル系化合物の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルを挙げることができる。ホスフィンオキシド系化合物の例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドを挙げることができる。スルホニウム系化合物の例としては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロリン酸を挙げることができる。ヨードニウム化合物の例としては、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化クメンを挙げることができる。
【0032】
本実施形態に係る黒色紫外線硬化型樹脂組成物は、希釈剤として有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒の例としては、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、α-テルピネオール、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、酢酸ブチル、n-プロパノール、イソプロパノール、メタノール、エタノール、トルエンなどを挙げることができる。
【0033】
本実施形態に係る黒色紫外線硬化型樹脂組成物は、希釈剤として可塑剤を含んでいても良い。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪族-塩基性エステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤を用いることができる。リン酸エステル系可塑剤の例としては、リン酸トリブチル、リン酸2-エチルヘキシルを挙げることができる。フタル酸エステル系可塑剤の例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチルを挙げることができる。脂肪族-塩基性エステル系可塑剤の例としては、オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステルを挙げることができる。脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤の例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシルを挙げることができる。二価アルコールエステル系可塑剤の例としては、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチラートを挙げることができる。オキシ酸エステル系可塑剤の例としては、アセチルリシノール酸メチル、アセチルクエン酸トリブチルを挙げることができる。
【0034】
本実施形態に係る黒色紫外線硬化型樹脂組成物に含まれる黒色顔料は、黒色粒子を含むものとされている。
なお、黒色顔料の含有量は所望する黒色樹脂硬化物の厚みによって最適値は異なるが、例えば、黒色紫外線硬化型樹脂組成物100質量部に対して、0.001質量部以上60質量部以下の範囲内とすることが好ましい。
【0035】
黒色粒子としては、例えば、窒化ジルコニウム系粒子、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄などを含むものとすることができる。窒化ジルコニウム粒子は、窒化ジルコニウムを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。また、窒化ジルコニウム系粒子は、酸素を含んでいてもよく、ジルコニウム以外の金属元素を含んでいてもよい。
カーボンブラックの種類としてはとくに限定されず、一般的な製法であるファーネス法やアセチレン法およびチャンネル法で製造された市販のものが使用できる。カーボンブラックは、表面処理がなされ、組成物中の成分との親和性を向上させたものが特に好ましい。
チタンブラックは三菱マテリアル電子化成社で製造されている製品などを使用することができる。具体的には13M、13M-C、13M-T、12S、UF-8などを用いることができる。
【0036】
TEMを用いた黒色粒子の粒子径の測定は、例えば、次のようにして行うことができる。黒色分散液を基板上に滴下し、乾燥して、TEM観察用のサンプルを得る。得られたサンプルを、TEMを用いて観察して、500個の黒色粒子について、一次粒子の粒子径を計測する。粒子径は、最大フェレー径とする。得られた粒子径を用いて、粒子を真球であると仮定した場合における体積基準の篩下累積分布を作成する。得られた篩下累積分布から累積分布が50%となるときの粒子径(50%累積分布径)と、累積分布が90%となるときの粒子径(90%累積分布径)を読み取る。
【0037】
動的光散乱法を用いて測定した黒色粒子の50%累積分布径(D50)は30nm以上120nm以下の範囲内にあってもよく、40nm以上100nm以下の範囲内にあってもよい。動的光散乱法を用いて測定された黒色粒子の90%累積分布径(D90)は200nm以下であってもよく、60nm以上150nm以下の範囲内であればより好ましい。動的光散乱光を用いて測定されたキュムラント径は60nm以上140nm以下であってもよい。動的光散乱法を用いて測定した黒色粒子の体積基準の篩下累積分布において、300nm以上の黒色粒子の含有率は1%以下であってもよく、250nm以上の黒色粒子の含有率は5%以下であってもよい。
【0038】
本実施形態に係る黒色紫外線硬化型樹脂組成物においては、光重合性化合物、光重合開始剤、黒色顔料以外に、可塑剤、その他の添加物(界面活性剤、レベリング剤等)を含んでいてもよい。
【0039】
次に、本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法について説明する。
まず、黒色顔料を溶媒に分散させた黒色分散液を作製する。溶媒としては、分子内に反応性の官能基を有するモノマーや、水および有機溶媒を用いることができる。分子内に反応性の官能基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、エポキシ基またはグリシジル基などのオキシラン環を有するエポキシ系モノマー、ビニル基やビニルエーテル基を有するビニル系モノマー、オキセタニル基を有するオキセタン系モノマー等を用いることができる。
溶媒の粘度は、黒色顔料の分散効率を高めるという観点から、25℃において粘度100Pa・s以下の低粘度の溶媒を用いることが好ましい。
【0040】
ここで、黒色分散液は、分散剤を含有してもよい。この分散剤としては、例えば、黒色顔料に対して親和性を有する基(吸着官能基)と、立体障害性を有する構造を有する有機物を用いることができる。
黒色顔料に対して親和性を有する基(吸着官能基)の例としては、第二級アミン基、第三級アミン基、カルボン酸基、リン酸基、リン酸エステル基を挙げることができる。分散剤は、数分子量が数百~数万である高分子分散剤や、オルガノトリエトキシシラン、オルガノトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等を用いることができる。
立体障害性を有する構造としては特に限定されず、アルキル鎖やポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリエーテル鎖などを用いることができる。分散剤の構造としては単一の吸着官能基から立体障害性を有する構造が直鎖状に伸びた構造や、複数の吸着から、グラフト鎖がくし状に伸びたくし型状構造などが採用できる。
【0041】
黒色分散液は、例えば、溶媒と、黒色顔料と、分散剤とを混合し、得られた混合物を分散処理することによって製造することができる。分散処理装置としては、ペイントシェーカーや、ビーズミルおよび超音波分散機などを用いることができる。
【0042】
上述のようにして得られた黒色分散剤と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを混合する。混合方法としては、特に制限はなく、例えば、遊星撹拌機、三本ロールミル、ニーダーなどの混合装置を用いて混合することができる。
このようにして、本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物が製造される。
【0043】
本実施形態である黒色樹脂硬化物は、上述した本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物を硬化したものである。
本実施形態である黒色樹脂硬化物は、例えば、本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物を基板の上に塗布して塗布膜を形成する。次に、この塗布膜に紫外線を照射して、光重合性化合物を重合させる。紫外線の光源としては、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、UV―LEDなどが使用でき、光重合開始剤の吸収波長に合致する波長を有する光源であれば、特に限定されない。
【0044】
本実施形態である電子部品製造用材料および電子部品は、本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物、および、本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた黒色樹脂硬化物のうち、少なくとも一方または両方を含むものである。
電子部品製造用材料および電子部品の具体例として、例えば、カラーフィルター用ブラックマトリクスおよびブラックカラムスペーサー、CMOSカメラモジュール、液晶表示素子用シール材、マイクロLED用隔壁材、半導体封止材、アンダーフィル材、回路隠蔽用黒色ペースト、遮光性ソルダーレジスト、黒色紫外線硬化インキ、光学接着剤などが挙げられる。
【0045】
以上のような構成とされた本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物によれば、波長λnmの光におけるε´(λ)を、波長λnmの光における光学密度OD(λ)、顔料濃度c(g/L)、光路長l(cm)から、ε´(λ)=OD(λ)/(c×l)として、波長550nmの光におけるε´(550)と波長365nmの光におけるε´(365)との比ε´(550)/ε´(365)が1.00以上2.00以下の範囲内とされているので、可視光の遮光性に優れるとともに紫外線による光硬化性に優れている。
【0046】
ここで、本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物において、光重合性化合物が、分子内の繰り返し単位中または分子末端部にカルボシル基を有する構造とされている場合には、粒子分散性が向上することになり、光学特性をさらに向上させることが可能となる。
【0047】
本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物において、黒色顔料の含有量Xと光重合開始剤の含有量Yとの質量比X/Yが0.3以上20以下の範囲内とされている場合には、上述の´(550)/ε´(365)を1.00以上2.00以下の範囲内に安定して調整することができる。
【0048】
本実施形態である黒色樹脂硬化物によれは、本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物であることから、遮光性に十分に優れるとともに、十分な硬さを有しており、遮光部材として特に適している。
【0049】
本実施形態である電子部品製造用材料および電子部品によれば、本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物、および、本実施形態である黒色紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた黒色樹脂硬化物のうち、少なくとも一方または両方を有しているので、各種特性に優れた電子部品を提供することができる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0051】
本発明の有効性を確認するために行った確認実験について説明する。
【0052】
(本発明例1)
特開2019-160829における実施例1に倣って作製した窒化ジルコニウムを主成分とした黒色顔料を20質量部、分散剤として、リン酸系くし型ポリマーを2質量部(黒色顔料に対する含有量として10質量%)、光重合性化合物1としてベンジルアクリレートを全成分の合計量が100質量部となる量で秤量した。秤量した各成分を、直径0.3mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル中で滞留時間が15分となるように分散・混合して、黒色分散液を製造した。得られた黒色分散液においては、窒化ジルコニウム粒子の含有量が20質量%である。
【0053】
得られた黒色分散液を10質量部、光重合性化合物2として、構造中にカルボキシル基を有するポリエステルアクリレート(EBERCRYL 450、ダイセル・オルネクス株式会社製)を89質量部、光重合開始剤として、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドを1質量部の割合で秤量し、遊星撹拌機(泡取り練太郎、シンキー株式会社製)を用いて1000rpmにて3分以上混合および脱泡して、本発明例1の黒色紫外線硬化型樹脂組成物を製造した。
得られた黒色紫外線硬化型樹脂組成物は、黒色顔料の含有率が2質量%、光重合開始剤の含有量が1質量%、光重合性化合物の含有量が89質量%であった。
【0054】
(本発明例2)
特開2019-160829における実施例1に倣って作製した窒化ジルコニウムを主成分とした黒色顔料を20質量部、分散剤として、リン酸系くし型ポリマーを2質量部(黒色顔料に対する含有量として10質量%)、光重合性化合物1としてイソボルニルアクリレートを全成分の合計量が100質量部となる量で秤量した。秤量した各成分を、直径0.3mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル中で滞留時間が15分となるように分散・混合して、黒色分散液Aを製造した。得られた黒色分散液においては、窒化ジルコニウム粒子の含有量が20質量%である。
さらに、カーボンブラックを20質量部、分散剤としてポリイミン系くし型ポリマーを10質量部、光重合性化合物1としてイソボルニルアクリレートを全成分の合計量が100質量部となる量で秤量した。秤量した各成分を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて1時間分散を行うことで、黒色分散液Bを製造した。
これら黒色分散液Aと黒色分散液Bを、質量比9:1にて混合することで黒色分散液を得た。
【0055】
黒色紫外線硬化型樹脂組成物の製造については、光重合性化合物2、光重合開始剤およびその配合量を表1のようにしたこと以外は、本発明例1と同様にしてそれぞれの黒色紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0056】
(本発明例3,4)
用いた黒色分散液、光重合性化合物1、光重合性化合物2、光重合開始剤およびその配合量を表1のようにしたこと以外は本発明例1と同様にしてそれぞれの黒色紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0057】
(本発明例5)
特開2019-160829における実施例1に倣って作製した窒化ジルコニウムを主成分とした黒色顔料を30質量部、分散剤として、ポリイミン系くし型ポリマーを3質量部(黒色顔料に対する含有量として10質量%)、光重合制化合物1として、トリメチロールプロパントリアクリレート4.5質量部、希釈剤としてポリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)150質量部を秤量した。秤量した各成分を、直径0.3mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル中で滞留時間が15分となるように分散・混合して、黒色分散液を製造した。
【0058】
用いた黒色分散液、光重合性化合物1、光重合性化合物2、光重合開始剤およびその配合量を表1のようにしたこと以外は本発明例1と同様にして黒色紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0059】
(本発明例6)
特開2019-160829における実施例1に倣って作製した窒化ジルコニウムを主成分とした黒色顔料を20質量部、分散剤として、リン酸系くし型ポリマーを2質量部(黒色顔料に対する含有量として10質量%)、光重合性化合物1としてイソボルニルアクリレートを全成分の合計量が100質量部となる量で秤量した。秤量した各成分を、直径0.3mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル中で滞留時間が15分となるように分散・混合して、黒色分散液Aを製造した。得られた黒色分散液においては、窒化ジルコニウム粒子の含有量が20質量%である。
さらに、チタンブラック13M-C(三菱マテリアル電子化成社)を20質量部、分散剤としてポリイミン系くし型ポリマーを10質量部、光重合性化合物1としてイソボルニルアクリレートを全成分の合計量が100質量部となる量で秤量した。秤量した各成分を混合し、直径0.3mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル中で滞留時間が15分となるように分散・混合して、黒色分散液Bを製造した。
これら黒色分散液Aと黒色分散液Bを、質量比9:1にて混合することで黒色分散液を得た。
【0060】
黒色紫外線硬化型樹脂組成物の製造については、光重合性化合物2、光重合開始剤およびその配合量を表1のようにしたこと以外は、本発明例1と同様にしてそれぞれの黒色紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0061】
(本発明例7)
黒色分散液Aと黒色分散液Bの配合比率を質量比で8:2に変更したこと、および用いた光重合性化合物1、光重合性化合物2、光重合開始剤およびその配合量を表1のようにしたこと以外は本発明例6と同様にして黒色紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0062】
(本発明例8)
用いた黒色分散液、光重合性化合物1、光重合性化合物2、光重合開始剤およびその配合量を表1のようにしたこと以外は本発明例1と同様にして黒色紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0063】
(比較例1)
用いた黒色分散液、光重合性化合物1、光重合性化合物2、光重合開始剤およびその配合量を表2のようにしたこと以外は本発明例1と同様にして黒色紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0064】
(比較例2)
黒色分散液Aと黒色分散液Bの配合比率を質量比で7:3に変更したこと以外は本発明例2と同様にして黒色紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0065】
(比較例3)
用いた黒色分散液、光重合性化合物1、光重合性化合物2、光重合開始剤およびその配合量を表2のようにしたこと以外は本発明例1と同様にして黒色紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0066】
得られた黒色紫外線硬化型樹脂組成物について、波長365nm、波長550nmにおける透過率が10%以上90%以下となる濃度まで、BCA(ブチルカルビトールアセテート)で希釈した。この希釈液中の黒色顔料の濃度は25mg/kg(質量ppm)であった。この希釈液を光路長1cmのセルに充填し、分光光度計(UH4150、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、波長300nmから1000nmにおける透過率を刻み幅1nmにて連続的に測定した。このとき、BCAが充填されたセルを事前に測定し、それをバックグラウンド(ベースライン)として差し引かれた状態で黒色紫外線硬化型樹脂組成物の各波長の透過率を測定している。得られた透過スペクトルから、365nm、550nmの透過率をそれぞれ読み取り、式(1)に基づいて各波長のODと、ε´(365)およびε´(550)を算出した。評価結果を表3に示す。
【0067】
また、得られた紫外線硬化型黒色組成物をφ5mm、深さ2mmの型に注型した後、スポット型UV-LED照射器(8332C、シーシーエス株式会社製)を用いて照度約250mW/cm、波長365nmの紫外線を15秒間照射して(積算照度3750mJ/cm)紫外線硬化を行った。得られた硬化物を型から取り出して、未硬化の液体部分を拭き取ることで黒色樹脂硬化物を得た。
得られた黒色樹脂硬化物のODVISを、透過濃度計(T5plus、伊原電子工業株式会社製)を用いて測定した。この透過濃度計を用いて得られたODVISはISO 5-3(2009)visualで定義されるOD値に近似した値となる。評価結果を表3に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
波長550nmの光におけるε´(550)と波長365nmの光におけるε´(365)との比ε´(550)/ε´(365)が1.00以上2.00以下の範囲内とされている本発明例1~8においては、樹脂組成物のUV硬化が十分に進行し、ODVISが3.1以上と高い値を示した。
一方で、ε´(550)/ε´(365)が2.00を超えており、X/Yについても10を超えている比較例1については、光重合開始剤の紫外線に対する応答性が不十分であり、十分な厚みでUV硬化が進行しなかったことで、ODVISが本発明例1~8と比較して小さな値となった。
ε´(550)/ε´(365)が1.00未満である比較例2および比較例3については、紫外線の透過率が不十分であり、十分な厚みでUV硬化が進行しなかったことで、ODVISが本発明例1~8と比較して小さな値となった。
【0072】
以上のように、本発明によれば、可視光の遮光性に優れるとともに紫外線による光硬化性に優れた黒色紫外線硬化型樹脂組成物、黒色樹脂硬化物を提供可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の黒色紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、ブラックレジストやインクジェット用の黒色インキなどの黒色パターンの形成用材料として、好適に利用することができる。
また、本発明の黒色紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物である本発明の黒色樹脂硬化物は、液晶表示装置(ディスプレイ)や有機EL表示装置などの表示装置で利用される画像形成素子のブラックマトリクスやCMOSセンサなどのイメージセンサ内の遮光材として利用することができる。
さらに、本発明の黒色樹脂硬化物は、液晶表示素子用シール材、ブラックカラムスペーサー、マイクロLED用隔壁材、半導体封止材、アンダーフィル材、回路隠蔽用黒色ペースト、遮光性ソルダーレジスト、黒色紫外線硬化インキ、光学接着剤の材料としても利用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
光学密度ODは、透過率Tを用いて、以下の(1)式で表される。(1)式から、光学密度ODの値が高い程、遮光性が高くなることが分かる。
(1)式:OD(λ)=log 10 [1/T(λ)]
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
次に、吸光度Aは、以下の(2)式で表される。なお、(2)式において、εはモル吸光係数(L/cm/g)、cは粒子濃度(g/L)、l:光路長(cm)である。
(2)式:A=log 10 [1/T]=ε×c×l