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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144857
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】配送経路決定システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20240101AFI20241004BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G06Q10/08
B65G61/00 544
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057004
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗脇 悠一
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA16
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】配送車両の出発地および到着地において、配送物を保管する条件を満たす可能性を高める配送経路を決定するシステムを提供する。
【解決手段】配送物の配送元および配送先と、前記配送物の保管のために必要となる保管設備である必要設備を示す情報と、を取得する配送依頼情報取得部と、前記配送物を配送する配送車両の出発地および到着地と、前記出発地および前記到着地に備えられた保管設備である設置設備を示す情報と、を取得する運行情報取得部と、前記設置設備が前記必要設備である経路を用いて前記配送元から前記配送先に前記配送物を配送する配送経路を決定する配送経路決定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配送物の配送元および配送先と、前記配送物の保管のために必要となる保管設備である必要設備を示す情報と、を取得する配送依頼情報取得部と、
前記配送物を配送する配送車両の出発地および到着地と、前記出発地および前記到着地に備えられた保管設備である設置設備を示す情報と、を取得する運行情報取得部と、
前記設置設備が前記必要設備である経路を用いて前記配送元から前記配送先に前記配送物を配送する配送経路を決定する配送経路決定部と、を備える、
配送経路決定システム。
【請求項2】
前記必要設備を示す情報は、前記配送物を保管するために必要な空きスペースの情報を含み、
前記設置設備を示す情報は、設置された前記保管設備の空きスペースの情報を含み、
前記配送経路決定部は、
前記設置設備における前記空きスペースが前記必要設備における前記空きスペース以上である場合に、前記設置設備が前記必要設備であるとする、
請求項1に記載の配送経路決定システム。
【請求項3】
前記必要設備を示す情報は、前記配送物を保管するために必要な温度管理情報を含み、
前記設置設備を示す情報は、設置された前記保管設備において前記配送物を所定の温度範囲で管理する温度管理の情報を含み、
前記配送経路決定部は、
前記必要設備における前記温度管理情報が前記設置設備で温度管理可能な前記温度範囲に含まれる場合に、前記設置設備が前記必要設備であるとする、
請求項1に記載の配送経路決定システム。
【請求項4】
前記設置設備における前記空きスペースの情報は、前記設置設備における現在の空き容量である、
請求項2に記載の配送経路決定システム。
【請求項5】
前記設置設備における前記空きスペースの情報は、過去の実績に基づく統計値から求まる前記設置設備における空き容量である、
請求項2に記載の配送経路決定システム。
【請求項6】
前記配送経路決定部は、
前記配送経路を前記配送元から前記配送先までの移動に要する時間のコストである時間コストに基づいて更に選択し、
前記時間コストには、前記設置設備での前記配送物の保管時間が含まれ、前記時間コストが最も小さい前記配送経路が選択される、
請求項1に記載の配送経路決定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配送経路決定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配送元と配送先との間の拠点である物流ステーションを中継して、配送元から配送先へ配送物を配送するシステムが記載されている。この特許文献1に記載されたシステムでは、配送元から物流ステーションまでを第1配送業者が配送を行い、物流ステーションから配送先までの配送を第2配送業者が行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-35464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配送物を配送する際の配送経路は、例えば時間コストが最も小さくなるように設定することが想定される。しかしながら、配送物を配送する配送車両の出発地や到着地に備えられた配送物の保管設備(例えば特許文献1の構成では物流ステーションに相当)において、配送の依頼を行う依頼者の配送物を保管することが可能な設備(例えば所定の保管スペースや温度管理が可能な設備)がない場合がある。そのような場合、配送経路として時間コストが最も小さくなる経路を設定(選択)すると、配送車両の出発地や到着地において、当該配送物を適切に保管できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、配送車両の出発地および到着地において、配送物を保管する条件を満たす可能性を高める配送経路を決定するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、配送経路決定システムは、配送物の配送元および配送先と、前記配送物の保管のために必要となる保管設備である必要設備を示す情報と、を取得する配送依頼情報取得部と、前記配送物を配送する配送車両の出発地および到着地と、前記出発地および前記到着地に備えられた保管設備である設置設備を示す情報と、を取得する運行情報取得部と、前記設置設備が前記必要設備である経路を用いて前記配送元から前記配送先に前記配送物を配送する配送経路を決定する配送経路決定部と、を備える。
【0007】
配送経路決定システムでは、設置設備が必要設備である経路を用いて配送元から配送先に配送物を配送する配送経路を決定する。すなわち、配送依頼情報に基づく必要設備の条件を満たす設置設備を備えた経路を用いて当該配送経路を決定する。これにより、配送車両の出発地および到着地において、配送依頼に基づく配送物の保管に必要な条件(例えば保管スペースや温度管理の条件)を満たす可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】配送経路決定システムの構成を示すブロック図である。
図2】配送依頼情報の一例を示す図である。
図3】運行情報の一例を示す図である。
図4】経路探索の一例を説明するための図である。
図5】配送経路決定処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態における配送経路の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)配送経路決定システムの構成:
(2)配送経路決定処理:
(3)他の実施形態:
【0010】
(1)配送経路決定システムの構成:
図1は、本実施形態にかかる配送経路決定システム10の構成を示すブロック図である。この配送経路決定システム10は、依頼者の配送の依頼に基づいて、配送物を配送する配送経路を決定するするシステムである。本実施形態においては、配送依頼を行う依頼者が指定する配送元から配送先へ配送物の配送を行う。
【0011】
配送経路決定システム10は、例えば据置型の汎用コンピュータやクラウド型のサーバ等であり、通信を介して依頼者端末100、および、提供者端末200と協働する。依頼者端末100は、本実施形態において配送の依頼を行う依頼者が使用する端末である。依頼者は、例えば配送先に配送物の納品を依頼する者(例えば食品メーカー等の従業員など)などが想定される。また、依頼者は、依頼者端末100を操作して、配送物の配送元および配送先と、配送物の保管のために必要となる保管設備である必要設備を示す情報と、を含む配送依頼情報を生成する。提供者端末200は、配送物を配送する配送車両を提供する提供者が使用する端末である。提供者は、例えば配送車両を提供する物流会社等の従業員などが想定される。提供者は、提供者端末200を操作して、配送車両の出発地および到着地と、当該出発地および到着地に備えられた保管設備である設置設備を示す情報と、を含む運行情報を生成する。なお、本実施形態において、配送の依頼を行う依頼者、および、配送車両を提供する提供者は、複数人存在し得るが、以下に説明する例においては、主に、1人の依頼者、1人の提供者に着目して説明を行う。
【0012】
依頼者端末100は、例えば、汎用コンピュータ、タブレット端末、または、携帯端末等で実現可能であり、CPU,RAM,ROM等を備える制御部110と、他の装置と通信を行うための通信部120を備えている。また、依頼者端末100は、依頼者に対して各種の情報を提供し、依頼者の入力を受け付けるためのユーザI/F部130を備えている。ユーザI/F部130は、依頼者の入力を受け付ける他、依頼者に各種の情報を提供するための、図示しないタッチパネル等のディスプレイからなる表示部やスイッチ等の入力部、スピーカー等の音声出力部等を備えている。
【0013】
制御部110は、記録媒体140やROMに記録された種々のプログラムを実行することができる。また、制御部110は、依頼者から配送依頼の情報である配送依頼情報の入力を受け付け、当該受け付けた配送依頼情報を、通信部120を介して配送経路決定システム10に送信する。送信された配送依頼情報は、配送経路決定システム10で受信され、配送依頼に基づく配送経路を決定する際のパラメータの一部となる。当該配送経路を決定するための処理については、後述する。配送経路決定システム10は、配送依頼に基づく配送経路を決定すると、当該決定した配送経路の情報を依頼者端末100に送信する。制御部110は、当該決定された配送経路の情報を取得し、当該取得した配送経路の情報をユーザI/F部130の表示部に表示する。
【0014】
図2は、本実施形態における配送依頼情報の一例を示す図である。配送依頼情報は、配送物の配送元および配送先の情報と、配送物の保管のために必要となる保管設備である必要設備の情報と、を示す情報であり、例えば依頼者が、依頼者端末100を使用して当該配送依頼情報を生成する。図2においては、依頼者の識別情報である依頼者ID「001」についての配送依頼情報を示している。配送依頼情報には、配送元と、配送先と、必要設備と、が含まれる。
【0015】
配送元は、配送物である商品の発送元の情報を示す。本実施形態においては、配送依頼を行う依頼者が配送物を持ち込んで配送の依頼を行う配送センターである「ABC配送センター」が配送元となっている。配送先は、配送物である商品の納品先の情報を示す。本実施形態においては、配送物の納品先であるスーパーマーケットの店舗である「スーパー××店」が配送先となっている。これら配送元および配送先には、それぞれ位置の情報が対応付いている。図2に示す例では、配送元の位置の情報として、配送元の識別情報(Sa)と座標((Xa,Ya))とが対応付けられ、「Sa(Xa,Ya)」と示されている。同様に、配送先の位置の情報として、配送先の識別情報(Sb)と座標((Xb,Yb))とが対応付けられ、「Sb(Xb,Yb)」と示されている。また、配送元および配送先には、配送すべき配送物の識別情報(D1)が対応付けられている。また、配送元には、依頼者が当該配送元(すなわちABC配送センター)に配送物を持ち込む予定時刻を示す持ち込み予定時刻の情報が対応付けられている。
【0016】
必要設備は、配送物の保管のために必要となる保管設備の情報を示す。すなわち必要設備は、配送車両で配送物を配送する過程において、依頼者が出発地および到着地で配送物を保管する際に求める保管設備の条件である。本実施形態において、必要設備には、温度管理情報および空きスペースの情報が含まれる。
【0017】
温度管理情報は、配送物を保管するために必要な温度の情報を示し、図2に示す例では「0℃~10℃」と示されている。すなわち、依頼者は「0℃~10℃」で温度管理が可能な設備を保管設備の条件とする。なお、この温度は、「0℃~10℃」のように具体的な数字で定義される他、冷蔵で保管することを示す冷蔵保管、冷凍で保管することを示す冷凍保管、常温で保管することを示す常温保管などのように、温度帯を示す用語等で定義されてもよい。
【0018】
空きスペースは、配送物を保管するために必要なスペースの情報であり、図2に示す例では「1000m」と示されている。すなわち依頼者は「1000m」以上の空きスペースがある設備を保管設備の条件とする。
【0019】
本実施形態においては、配送依頼情報は、依頼者端末100で生成され、当該生成された配送依頼情報は通信部120を介して配送経路決定システム10に送信される。送信された当該制限情報は配送経路決定システム10における記録媒体30に配送依頼情報30aとして記録される。
【0020】
つぎに、提供者端末200について説明する。提供者端末200は、例えば、汎用コンピュータ、タブレット端末、または、携帯端末等で実現可能であり、CPU,RAM,ROM等を備える制御部210と、他の装置と通信を行うための通信部220を備えている。また、提供者端末200は、提供者に対して各種の情報を提供し、提供者の入力を受け付けるためのユーザI/F部230を備えている。ユーザI/F部230は、提供者の入力を受け付ける他、提供者に各種の情報を提供するための、図示しないタッチパネル等のディスプレイからなる表示部やスイッチ等の入力部、スピーカー等の音声出力部等を備えている。
【0021】
制御部210は、記録媒体240やROMに記録された種々のプログラムを実行することができる。また、制御部210は、配送車両の出発地および到着地と、当該出発地および到着地に備えられた保管設備である設置設備の情報と、を示す運行情報の入力を受け付け、当該受け付けた運行情報を、通信部220を介して配送経路決定システム10に送信する。送信された運行情報は、配送経路決定システム10で受信され、依頼者からの配送依頼に基づく配送経路を決定する際のパラメータの一部となる。
【0022】
図3は、本実施形態における運行情報の一例を示す図である。運行情報は、配送車両の出発地および到着地と、当該出発地および到着地に備えられた保管設備である設置設備の情報と、を示す情報であり、例えば提供者が、提供者端末200を操作することにより生成される。図3においては、複数の提供者のうち1人の提供者の識別情報を示す提供者ID「A001」についての運行情報を示している。
【0023】
運行情報には、配送便IDと、出発地と、出発時刻と、到着地と、到着時刻と、設置設備と、が含まれる。配送便IDは、配送便の識別情報を示し、図3に示す例では、「S001」など複数の配送便の情報が示されている。つまり、提供者ID「A001」は複数の配送便を提供可能である。そして、各配送便には、出発地と、出発時刻と、到着地と、到着時刻との情報がそれぞれ対応付いている。
【0024】
出発地は、配送便の出発地の情報を示す。出発時刻は、出発地における出発時刻を示す。到着地は、配送便の到着地の情報を示す。到着時刻は、到着地における到着時刻を示す。図3に示す例では、例えば、配送便ID「S001」は、"出発地「ABC配送センター」を9:00に出発し、到着地「○○物流センター」に11:00に到着する"情報が示されている。なお、物流センターとは、配送物を一時的に保管する施設や倉庫である。
【0025】
設置設備は、配送車両の出発地および到着地に備えられた保管設備の情報を示す。すなわち、設置設備は、配送車両の出発地および到着地において配送物を保管する際に提供可能な設備の情報を示す。本実施形態において、設置設備には、名称と、位置と、温度管理と、空きスペースと、の情報が含まれ、図3に示す例では、配送車両の出発地および到着地に備えられた保管設備のうちの1つの保管設備の情報を代表的に示している(設置設備ID:B001)。図3に示す保管設備で提供可能な設備(すなわち提供可能なサービス)としては、空きスペースに配送物を保管すること、および、当該配送物を保管する際に温度管理が可能なことである。なお、図3に示す例では、設置設備として、空きスペースの情報と、温度管理の情報と、が示されているが、配送物を温度管理ができない設置設備もあり得る。その場合には、温度管理できないことの情報が対応付けられることになる。
【0026】
名称は、出発地または到着地の名称を示し、図3に示す例では「○○物流センター」となっている。位置は、当該出発地または到着地の位置の情報を示し、図3に示す例では、「○○物流センター」の識別情報(Sc)と座標((Xc,Yc))とが対応付けられ、「Sc(Xc,Yc)」と示されている。温度管理は、配送物を管理可能な温度範囲の情報を示し、図3に示す例では、「α℃~β℃」と示されている。空きスペースは、設置設備における現在の空き容量の情報であり、本実施形態においては、「○○物流センター」における現在の空きスペースの情報が示されている。この現在の空きスペースの情報は、例えばセンサ等で空きスペースを定期的に取得してもよいし、保管設備における保管可能な容量を予め特定しておき、配送物が出し入れされる度に空き容量を記録することで、現在の空き容量を取得してもよい。
【0027】
本実施形態において、運行情報は、提供者端末200で生成され、当該生成された運行情報は通信部220を介して配送経路決定システム10に送信される。送信された当該運行情報は配送経路決定システム10における記録媒体30に運行情報30bとして記録される。
【0028】
つぎに、配送経路決定システム10について説明する。配送経路決定システム10は、CPU、RAM、ROM等を備える制御部20と、記録媒体30と、通信部40と、を備えている。記録媒体30は、各種プログラム、および、各種データを記録する。通信部40は、依頼者端末100、および、提供者端末200と無線通信を行うための回路である。制御部20は、記録媒体30やROM等に記憶された配送経路決定プログラム21を実行することができる。
【0029】
記録媒体30には、配送依頼情報30a、運行情報30b、および、地図情報30cが記録される。配送依頼情報30aは、上述の依頼者端末100から送信される配送依頼の情報であり、制御部20により通信部40を介して取得される。当該配送依頼情報には、図2で説明したように配送元、配送先、および、必要設備の情報が含まれる。
【0030】
運行情報30bは、上述の提供者端末200を含む複数の提供者から送信される運行情報であり、制御部20により通信部40を介して取得される。当該運行情報には、図3で説明したように、出発地、到着地等の情報が対応付いた各配送便の情報、ならびに、設置設備の情報が含まれる。
【0031】
地図情報30cは、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、および、道路やその周辺に存在する施設の位置等を示す施設データ等を含んでいる。施設データには、配送元、配送先、物流センター、店舗等の情報が識別情報と共に対応付いている。
【0032】
制御部20は、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとして、配送経路決定プログラム21を実行可能である。従来、配送物を配送する際の配送経路は、コスト(例えば時間コスト)が小さくなるように決定される。一方、配送物を配送する配送車両における出発地や到着地に備えられた配送物の保管設備において、配送依頼を行う依頼者の配送物を保管することが可能な設備(例えば所定の保管スペースや温度管理が可能な設備)がない場合がある。そのような場合、配送経路として時間コストが最も小さくなる経路を設定すると、配送車両の出発地や到着地において、当該配送物を適切に保管できないおそれがある。そこで、本実施形態において、制御部20は、配送車両の出発地および到着地において、配送物を保管する条件を満たす可能性を高める配送経路を決定する。配送経路決定プログラム21は、当該決定を行うためのプログラムである。
【0033】
上述の配送経路決定プログラム21が実行されると、制御部20は、配送依頼情報取得部21a、運行情報取得部21b、および、配送経路決定部21cとして機能する。なお、以下において、配送依頼情報取得部21a、運行情報取得部21b、および、配送経路決定部21cが行うものとして記載する処理は、制御部20により実現される処理である。
【0034】
配送依頼情報取得部21aは、配送物の配送元および配送先と、配送物の保管のために必要となる保管設備である必要設備を示す情報と、を取得する機能である。すなわち、制御部20は、配送依頼情報30aを参照して、配送元、配送先、配送物の内容、および、依頼者が要求する配送物の保管のために必要となる設備(必要設備)の情報を特定する。必要設備を示す情報には、図2で説明したように、配送物を保管するために必要な空きスペースの情報と、配送物を保管するために必要な温度管理情報と、が含まれる。
【0035】
運行情報取得部21bは、配送物を配送する配送車両の出発地および到着地と、出発地および到着地に備えられた保管設備である設置設備を示す情報と、を取得する機能である。すなわち、制御部20は、運行情報30bを参照して、各配送便における出発地および到着地を参照し、当該出発地および到着地における保管設備の情報を特定する。設置設備を示す情報は、図3で説明したように、配送車両の出発地や到着地において設置された保管設備の空きスペースの情報と、当該設置された保管設備において配送物を所定の温度範囲で管理する温度管理の情報と、が含まれる。
【0036】
配送経路決定部21cは、設置設備が必要設備である経路を用いて、配送元から配送先に配送物を配送する配送経路を決定する機能である。すなわち、制御部20は、出発地および到着地に依頼者が必要とする設備が設置されている経路を用いて(経路を辿って)配送経路を決定する。
【0037】
具体的には、制御部20は、運行情報30bおよび地図情報30cを参照して、配送依頼情報取得部21aの機能により特定した配送元と配送先との間を運行する配送便を全て特定する。なお、この配送元と配送先との間を運行する配送便には、複数の配送便が含まれ得る。例えば配送元を出発地、配送先を到着地とする配送便、配送元を出発地とし、配送物を保管する物流センターを到着地とする配送便、配送元を物流センターとし、配送先を到着地とする配送便、配送元を物流センターとし、配送先を配送元とは異なる物流センターとする配送便が含まれ得る。
【0038】
そして、制御部20は、特定した配送便を用いて各配送便の行き先を示す配送便ネットワークを構築する。図4は、当該配送便ネットワークの一例を示す図である。配送便ネットワークは、ノードと、リンク(エッジとも称される)と、コストと、から構築される。ここでいうノードは、配送車両の出発地や到着地となり得る地点であり、図4に示すでは、「S」、「G1」、「G2」、「G3」、「G4」、「G」がノードに該当する。図4に示す例では、スタートノードに「S」の符号を付し、本実施形態においては、配送元がスタートノードとなる。また、ゴールノードに「G」の符号を付し、本実施形態においては、配送先がゴールノードとなる。また、スタートノードとゴールノードとの間に存在する各ノードG1,G2,G3,G4は、配送物を保管できる設備を有する物流センターを示す。リンクはノード間を連結し、当該ノード間の経路を示す。図4に示す例では当該リンクを実線で示している。また、ノードにはコストが対応付いている。このコストは、ノード間の移動に要する時間コストである。制御部20は、運行情報30bを参照し、到着地における到着時刻と出発地における出発時刻との差を特定することで当該コストを取得できる。図4に示す例では、各リンクに数字を対応付けて当該コストを示している。なお、コストの単位は例えば「時間」である。また、上述の時間コストには、設置設備での配送物の保管時間が含まれる。保管時間は、ノードにおける配送車両の到着時刻と、当該ノードから接続された他のノードへ出発する配送車両の出発時刻との差であり、制御部20は、運行情報30bを参照して、ノードへ到着する配送車両の到着時刻と、当該ノードから他のノードへ出発する配送車両の出発時刻とを取得し、互いの時刻の差を求めることで特定できる。言い換えれば、保管時間は、ノードでの配送車両の待機時間である。図4に示す例では、各リンクに対応付いたコストのうち括弧で示した数字により保管時間を示している。なお、他のノードへ出発する配送便が複数ある場合(すなわち異なる他のノードへ出発する配送便がある場合)には、上述の到着時刻と出発地時刻との差に応じて保管時間は異なり得る。例えば図4に示す例では、スタートノード「S」からノード「G1」および「G2」にリンクが接続されており、当該スタートノードからノード「G1」へ移動する際の保管時間のコストは「2」となっている。それに対して、スタートノードからノード「G2」へ移動する際の保管時間のコストは「1」となっている。
【0039】
制御部20は、配送経路決定部21cの機能により、構築した配送便ネットワークにおいて、配送元から配送先への経路探索を行う。経路探索は、ダイクストラ法によって行う。制御部20は、当該ダイクストラ法を用いて、配送元から配送先の2地点間を最小の移動コストで移動可能な経路を探索する。また、本実施形態においては、上述のように、配送依頼情報30aに、必要設備の情報(空きスペース、温度管理の情報)が含まれる。そのため、制御部20は、設置設備が必要設備である経路を用いて(言い換えれば必要設備の条件を満たすノードを辿って)、配送元から配送先への経路を決定する。具体的には制御部20は、設置設備における空きスペースが必要設備における空きスペース以上である場合に、設置設備が必要設備であると判定し、当該設置設備が必要設備である経路を用いて配送経路を決定する。すなわち制御部20は、配送依頼情報30aを参照して、必要設備における空きスペースの情報を特定する。また、制御部20は、運行情報30bを参照して、対象となる設置設備における空きスペースを特定する。そして、制御部20は、特定した互いの空きスペースを比較して、設置設備における空きスペースが必要設備における空きスペース以上である場合に、設置設備が必要設備であると判定する。すなわち、制御部20は、当該設置設備は必要設備の条件を満たすと判定する。そして、制御部20は、当該設置設備を経路として配送経路を決定する。
【0040】
また、制御部20は、必要設備における温度管理情報が設置設備で温度管理可能な温度範囲に含まれる場合に、設置設備が必要設備であると判定し、当該設置設備が必要設備である経路を用いて配送経路を決定する。すなわち制御部20は、配送依頼情報30aを参照して、必要設備における温度管理の情報を特定する。また、制御部20は、運行情報30bを参照して、対象となる設置設備における温度管理の情報を特定する。そして、制御部20は、特定した互いの温度管理の情報を比較して、必要設備における温度管理の情報が設置設備で温度管理可能な温度範囲に含まれる場合に、設置設備が必要設備であると判定する。そして、制御部20は、当該設置設備を経路として配送経路を決定する。このようにして、制御部20は、配送元から配送先への配送経路を決定する。配送経路決定部21cの機能により配送経路を決定するより具体的な態様は、フローチャートにて後述する。
【0041】
この構成によれば、制御部20は、設置設備が必要設備である経路を用いて配送元から配送先に配送物を配送する配送経路を決定する。すなわち、制御部20は、配送依頼情報30aに基づく必要設備の条件を満たす設置設備を備えた経路を用いて当該配送経路を決定する。これにより、配送車両の出発地および到着地において、配送依頼に基づく配送物の保管に必要な条件を満たす可能性を高めることができる。すなわち、配送車両の出発地および到着地において、配送物を保管するための空きスペースがないこと、配送物の温度管理ができないこと等の不都合が生じることを回避または抑制できる。
【0042】
(2)配送経路決定処理:
つぎに、制御部20が実行する配送経路決定処理について説明する。図5は、配送経路決定処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、配送元から配送先への配送経路を決定する処理であって、制御部20は、配送依頼に基づく必要設備の条件を満たす設置設備である経路を用いて当該配送経路を決定する。当該処理は、例えば依頼者端末100により生成された配送依頼情報が配送経路決定システム10に送信された場合に実行開始される。なお、配送経路決定システム10に送信された配送依頼情報は、配送依頼情報30aとして記録媒体30に記録される。
【0043】
なお、配送経路決定処理の説明は、図6に示す配送便ネットワークを参照しつつ説明する。図6の配送便ネットワークは、図4の配送便ネットワークと同じ構成であって、それに加えてノードG1~G4に対応する各物流センターにおいて、配送依頼に基づく必要設備の条件(すなわち空きスペースおよび温度管理の条件)を満たすか否かの情報を表示している。図6において、必要設備の各項目(空きスペース、温度管理の条件)のうち条件を満たす項目については「OK」の表示をし、当該各項目のうち条件を満たさない項目については「NG」の表示をしている。当該各項目の条件を満たすか否かの判定は、上述のように、配送依頼情報30aおよび運行情報30bを参照して、必要設備と設置設備との当該各項目同士を比較することで判定できる。本実施形態においては、比較して判定した結果を図6に示している。図6に示す例では、ノードG2,G3,G4に対応する各物流センターにおいて、空きスペースおよび温度管理のいずれの条件を満たし、必要設備を備える保管設備となっている。なお、スタートノード「S」である配送元およびゴールノード「G」である配送先は必要設備の条件を満たすと見なして、各項目の条件を満たすか否かの表示はしていない。以下、配送経路決定処理の具体的な内容について説明する。
【0044】
配送経路決定処理が開始されると、先ず、制御部20は、配送依頼情報を取得する(ステップS1)。すなわち、制御部20は、配送依頼情報取得部21aの機能により、配送依頼情報30aを参照して、配送依頼を取得し、依頼者の配送依頼に基づく配送元、配送先、配送物の内容、配送物の持ち込み予定時刻、および、配送物を保管するための必要設備の情報を特定する。制御部20は、ステップS1で配送依頼情報を取得したら、処理をステップS2へ進める。
【0045】
ステップS2において、制御部20は、運行情報を取得する。具体的には、制御部20は、運行情報取得部21bの機能により、運行情報30bおよび地図情報30cを参照して、ステップS1で特定した配送元と配送先との間を運行する配送便を全て特定する。
【0046】
ついで、制御部20は、スタートノードを配送元に設定し、当該スタートノードにおける時刻を配送物の持ち込み予定時刻に設定する(ステップS3)。具体的には、制御部20は、配送経路決定部21cの機能により、地図情報30cを参照して、ステップS2で取得した各配送便の出発地および到着地を特定して図6のような配送便ネットワークを構築する。制御部20は、構築した当該配送便ネットワークにおいて、スタートノードを配送元に設定する。また、スタートノードにおける時刻は、ダイクストラ法で配送経路を決定する際の初期値(基準値)となる時刻であって、制御部20は、当該スタートノードにおける時刻を例えば配送物の持ち込み予定時刻に設定する。当該配送物の持ち込み予定時刻は、配送依頼情報30aを参照することで特定することができる。制御部20は、ステップS3で、スタートノードを配送元に設定し、スタートノードにおける時刻を配送物の持ち込み予定時刻に設定したら、以下のループ処理(ステップS4~ステップS8)を実行する。当該ループ処理は、ダイクストラ法を用いて経路探索を行い、配送元から配送先への配送経路を決定する処理である。またその際に、制御部20は、設置設備が必要設備である経路を用いて配送経路を決定する。
【0047】
具体的には、制御部20は、時間コストが確定したノードである「確定ノード」に接続される全てのリンクを対象としてループ処理を行い、ピックアップできる確定ノードがなくなるまで順次、ループ処理を行う。
【0048】
制御部20は、先ず、ステップS4において、配送経路決定部21cの機能により確定ノードから辿れる未確定のノードを特定する。例えば制御部20は、図6の配送便ネットワークを参照して、確定ノードに接続された未確定のノードを全て特定する。本実施形態において、現時点における(すなわち最初のループ処理における)確定ノードは、スタートノード(配送元)である。そして、図6の例において、スタートノードから辿れる未確定ノードは、ノード「G1」、ノード「G2」、ノード「G3」である。したがって、制御部20は、スタートノードから辿れる未確定ノード、すなわちノードG1,G2,G3を特定する。なお、ノードG1,G2,G3は、配送物の保管する物流センターである。
【0049】
ついで、制御部20は、特定した未確定ノードのうち、空きスペース、温度管理の条件を満たすノードがあるか否かを判定する(ステップS5)。すなわち制御部20は、配送経路決定部21cの機能により、ステップS4で特定した未確定ノードG1,G2,G3の各物流センターのうち、配送依頼に基づく必要設備の条件を満たす物流センターがあるか否かを判定する。具体的には、制御部20は、ステップS1で取得した配送依頼情報30aを参照して、配送依頼に基づく空きスペース、および、温度管理の条件を特定する。また、制御部20は、運行情報30bを参照して、未確定ノードG1,G2,G3のそれぞれに対応する物流センターの設置設備の情報を特定する。そして、制御部20は、特定した各物流センターの設置設備において、必要設備における空きスペースおよび温度管理の条件を満たす物流センターがあるか否かを判定する。つまり、制御部20は、ステップS4で特定した未確定ノードにおいて、設置設備が必要設備である物流センターを特定する。本実施形態においては、図2の配送依頼情報に示すように、必要設備として、保管スペース「1000m」、温度管理「0℃~10℃」の保管設備を条件とする。そして、図6に示す例では、必要設備における保管スペースおよび温度管理の条件を満たす物流センターは、ノード「G2」とノード「G3」に対応する物流センターである。すなわちノード「G2」とノード「G3」に対応する物流センターは、設置されている保管設備の空きスペースが配送依頼に基づく空きスペース(1000m)以上であり、かつ設置されている保管設備の温度管理可能な温度範囲が配送依頼に基づく温度(0℃~10℃)を含む。したがって、制御部20は、本実施形態において、特定した未確定ノードのうち、空きスペース、および、温度管理の条件を満たすノードがあると判定する。なお、ノード「G1」に対応する物流センターは温度管理の条件を満たさず、当該物流センターにおける設置設備は必要設備とはならない。また、仮に、このステップS5において、特定した未確定ノードのうち、空きスペースおよび温度管理の条件を満たすノードがないと判定された場合には、制御部20は、後述するステップS10に処理を進める。
【0050】
ついで、制御部20は、配送経路決定部21cの機能により、未確定ノードのうち最小の値を持つノードを特定し、当該ノードを確定ノードとする(ステップS6)。すなわち、制御部20は、ステップS5で空きスペースおよび温度管理の条件を満たすと判定した未確定のノードにおいて、最小の時間コストで移動可能なノードを最小の値を持つノードとして特定し、当該ノードを確定ノードとする。本実施形態においては、ステップS5で説明したように、空きスペースおよび温度管理の条件を満たす未確定ノードが2つ(G2,G3)ある。図6において、スタートノード「S」から未確定ノードであるノード「G2」までの時間コストは「6」であり、スタートノード「S」から未確定ノードであるノード「G3」までの時間コストは「2」である。なお、時間コストには、上述のように、ノード間の移動に要する移動コストと、確定ノードにおける配送物の保管時間のコストとが含まれ、図6に示す例では括弧内に保管時間のコストを示してる。この保管時間は、確定ノードの到着時刻と確定ノードから未確定ノードに出発する出発時刻との差である。ただし、現在の確定ノードは、スタートノードである配送元であるため、配送物の持ち込み予定時刻と出発時刻との差が保管時間となる。ステップS6において、当該2つの未確定ノードのうち時間コストが小さいのは、ノード「G3」である。したがって、制御部20は、未確定ノード「G3」の時間コストを確定させ、当該ノード「G3」を確定ノードとする。そして、制御部20は、未確定のノードを確定ノードにしたら、確定させた時間コストと、当該確定ノードまでの経路を記録媒体30に記録する。すなわちノード「G3」の時間コストを確定させるとともに、スタートノードから当該ノード「G3」までの経路を確定させる。
【0051】
ついで、制御部20は、確定ノードから辿れる未確定ノードまでの時間コストを取得し、当該未確定ノードまでの累積のコストが現在の値より小さい場合に時間コストを更新する(ステップS7)。具体的には、制御部20は、配送経路決定部21cの機能により、確定ノードから辿れる未確定のノードを特定する。例えば当該確定ノードから辿れる未確定のノードは、ステップS6で確定ノードとしたノード「G3」から辿れる未確定ノード「G2」および「G4」である。そして、制御部20は、運行情報30bを参照して、確定ノードであるノード「G3」から未確定ノードであるノード「G2」に延びているリンクの時間コストを取得する。同様に、制御部20は、確定ノードであるノード「G3」から未確定ノードであるノード「G4」に延びているリンクの時間コストを取得する。本実施形態においては、図6に示すようにノード「G2」への時間コスト「3」であり、ノード「G4」への時間コストは「6」である。制御部20は、当該取得したリンクの時間コストに、確定ノードまでの時間コストを加算してスタートノードから未確定のノードまでの累積の時間コストを算出する。本実施形態においては、確定ノード(ノード「G3」)までの時間コストはステップS6で特定したように「2」となっている。したがって、この確定ノードまでの時間コスト「2」にノード「G2」への時間コスト「3」を加算してスタートノードから未確定ノード「G2」までの累積の時間コストを算出する。同様に、確定ノードまでの時間コスト「2」にノード「G4」への時間コスト「6」を加算してスタートノードから未確定ノード「G4」までの累積の時間コストを算出する。
【0052】
そして、制御部20は、未確定ノードの「G2」および「G4」における現在の値(すなわち現在対応付いている値)を特定し、累積の時間コストがそれぞれの当該現在の値より小さいかを判定して、小さい場合には時間コストを更新する。ここで「現在の値」とは、未確定ノードまでの時間コストの累積値であり、このステップS7における処理以前に当該未確定ノードについて時間コストが取得されていた場合には、その値が「現在の値」として未確定のノードに対応付いている。本実施形態において、未確定ノード「G2」における現在の値は、ステップS6で特定した時間コスト「6」である。また、スタートノードから未確定ノード「G2」までの累積の時間コストは、「5(=2+3)」であるから、累積の時間コストは未確定ノード「G2」の現在の値より小さい。したがって、制御部20は、未確定ノード「G2」の時間コストを「6」から「5」に更新し、更新した当該時間コストを記録媒体30に記録する。一方、未確定ノード「G4」は、時間コストが定義されていない状態(もしくは初期値として無限大「∞」の状態)であるから、制御部20は、未確定ノード「G4」の時間コストを「8(=2+6)」とし、当該時間コストを記録媒体30に記録する。なお、仮に、このステップS7において、未確定ノードまでの累積のコストが現在の値以上である場合には、制御部20は、当該未確定ノードにおける時間コストを更新しない。
【0053】
ついで、制御部20は、ゴールノードは確定ノードか否かを判定する(ステップS8)。すなわち、制御部20は、配送経路決定部21cの機能により、ゴールノードである配送先のノードの時間コストが確定したか否かを判定する。上述のように、現時点において、確定ノードは、スタートノードおよびノード「G3」であり、ゴールノードは確定ノードとなっていない。したがって、制御部20は、到着地のノードは確定ノードでないと判定し(ステップS8でN)、処理をステップS4に戻し、次の処理対象である「確定ノード」に接続される全てのリンクを抽出して、ステップS4~ステップS8のループ処理を行う。なお、これ以降の各ステップの説明について、処理対象は変わるが、処理の内容は、上述の例とほぼ同じであるため、ループ処理における各ステップの内容を簡略化または省略して説明する。
【0054】
制御部20は、処理をステップS4に戻したら、確定ノードから辿れる未確定のノードを特定する。本実施形態においては、現在の確定ノードはスタートノードとノード「G3」である。そして、当該スタートノードから辿れる未確定ノードはノード「G2」と「G4」である。
【0055】
ついで、制御部20は、ステップS5において、特定した未確定ノード「G2」、「G4」において、配送依頼に基づく配送スペースおよび温度管理の条件を満たすノードがあるかを判定する。本実施形態においては、上述のようにノード「G2」、「G4」に対応する物流センターは配送依頼に基づく配送スペースおよび温度管理の条件を満たす。したがって、このステップS5において肯定的に判定される。
【0056】
ついで、制御部20は、ステップS6において、未確定ノード「G2」、「G4」のうち最小の値を持つノードを特定し、当該ノードを確定ノードとする。未確定ノード「G2」、「G4」のそれぞれの時間コストは、上述の最初のループにおけるステップS7で特定し、記録媒体30に記録してある。したがって、制御部20は、記録媒体30を参照して、未確定ノード「G2」、「G4」のうち最小の値を持つノードを特定する。本実施形態においては、未確定ノード「G2」のコストは「5」であり、未確定ノード「G4」のコストは「8」である。したがって、制御部20は、時間コストが小さいノード「G2」を確定ノードする。そして、制御部20は、ノード「G2」の時間コストを確定させるとともに、当該ノード「G2」までの経路を確定させ、当該確定させた時間コストおよび経路を記録媒体30に記録する。
【0057】
ついで、制御部20は、ステップS7において、確定ノードから辿れる未確定ノードまでの時間コストを取得し、未確定ノードまでの累積のコストが現在の値より小さい場合に時間コストを更新する。ここで、確定ノードから辿れる未確定のノードは、確定ノード「G2」から辿れる未確定ノード「G4」である。なお、未確定ノード「G1」に対してもリンクが接続されているが、未確定ノード「G1」に対応する物流センターは、必要設備の条件を満たさないことから処理対象から除外される。したがって、確定ノードから辿れる未確定ノードは「G4」のみとなる。制御部20は、確定ノード「G2」から辿れる未確定ノードを特定したら、当該未確定のノード「G4」までの累積のコストを算出する。当該累積の時間コストは、確定ノード「G2」までのコスト「5」と、ノード「G2」とノード「G4」との時間コスト「2」を加算した値である。したがって、累積の時間コストは「7」となる。そして、未確定ノード「G4」の現在の値(すなわち時間コスト)は、上述のように「8」が対応付いている。すなわち、未確定ノード「G4」までの累積の時間コストは現在の値より小さくなる。したがって、制御部20は、未確定ノード「G4」の時間コストを「8」から「7」に更新し、当該更新した情報を記録媒体30に記録する。
【0058】
ついで、制御部20は、ステップS8に処理において、ゴールノードは確定ノードか否かを判定する。現在の確定ノードは、スタートノード、ノード「G3」、および、ノード「G2」であり、ゴールノードは確定ノードとなっていない。そのため、制御部20は、処理をステップS4に戻し、次の処理対象である「確定ノード」に接続される全てのリンクを抽出して、ステップS4~ステップS8のループ処理を行う。
【0059】
制御部20は、上述の処理と同様の処理を行うと、確定ノードから辿れる未確定ノードはノード「G4」となり(ステップS4)、当該未確定ノード「G4」は空きスペースおよび温度管理の条件を満たす(ステップS5でY)。そして、未確定ノード「G4」は、最小の値を持つノードであるから、制御部20は、未確定ノード「G4」を確定ノードとし、当該確定ノード「G4」までの経路を確定させる(ステップS6)。そして確定ノード「G4」から辿れる未確定のノードはゴールノードであり、ゴールノードの時間コストは未定義の状態であるから、制御部20は、ゴールノードまでの累積の時間コストをゴールノードの時間コストとする(ステップS7)。すなわち、本実施形態において、制御部20は、確定ノード「G4」までの時間コスト「7」に、ノード「G4」とゴールノードとの間の時間コスト「4」を加算して累積の時間コストを求める。当該累積の時間コストは「11(=7+4)」となる。つまり、スタートノードからゴールノードまでの時間コストは「11」となる。そして、図6において、ゴールノードまでの時間コストが「11」以下となる経路は存在しないので、制御部20は、ゴールノードのコストを確定させる。すなわち制御部20は、ゴールノードを確定ノードとする。さらに、制御部20は、ゴールノードまでの経路を確定させる。つまり、スタートノードからゴールノードまでの配送経路は、"スタートノード、ノード「G3」、ノード「G2」、ノード「G4」、ゴールノード"の順となる。図6に示す例では、決定した配送経路を太い矢印で示している
【0060】
ついで、制御部20は、ステップS8に処理に進め、ゴールノードは確定ノードか否を判定する。上述のように、ゴールノードは確定ノードである。したがって、制御部20は、ゴールノードは確定ノードであると判定し(ステップS8でY)、処理をステップS9に進める。
【0061】
ステップS9において、制御部20は、条件を満たす配送経路がある旨の判定結果を表示部に表示させる。すなわち、制御部20は、配送経路決定部21cの機能により、通信部40を介して依頼者端末100に、配送依頼に基づく経路ありの旨の情報と、配送元から配送先への配送経路の情報(すなわちスタートノードからゴールノードまでの経路および時間コストの情報)と、を送信し、当該情報をユーザI/F部130における表示部に表示させる。
【0062】
なお、図6に示す例では、ステップS8においてゴールノードが確定ノードと判定される例であるが、例えばノード「G1」および「G4」における物流センターが必要設備の条件(空きスペースおよび温度管理の条件)を満たしていない場合には、ループ処理を行った結果、ゴールノードは確定ノードとならないことになる(ステップS9でN)。その場合には、制御部20は、処理をステップS10に進める。
【0063】
ステップS10において、制御部20は、配送経路決定部21cの機能により、配送元から配送先への経路探索を終了する。すなわち、制御部20は、配送依頼に基づいて、配送元から配送先への経路がないと判定し、経路探索を終了する。また、同様に、ステップS5で否定的に判定された場合、すなわち特定した未確定ノードのうち、空きスペースおよび温度管理の条件を満たすノードがないと判定された場合には、制御部20は経路探索を終了する。例えば最初のループ処理において、スタートノードから辿れる未確定ノードG1,G2,G3の全てノードが空きスペースおよび温度管理の条件を満たさない場合に(ステップS5でN)、制御部20は、配送依頼に基づく経路がないと判定し、経路探索を終了する。
【0064】
そして、制御部20は、ステップS10で経路探索を終了したら、条件を満たす配送経路がない旨の判定結果を表示部に表示させる(ステップS11)。すなわち、制御部20は、配送経路決定部21cの機能により、通信部40を介して依頼者端末100に、配送依頼に基づく経路がない旨の判定結果の情報を送信し、当該情報をユーザI/F部130における表示部に表示させる。
【0065】
以上のように、本実施形態において、制御部20は、設置設備が必要設備である経路を用いて配送元から配送先に配送物を配送する配送経路を決定する。すなわち、制御部20は、配送依頼情報30aに基づく必要設備の条件である空きスペースおよび温度管理の条件を満たす設置設備を備えた経路を用いて当該配送経路を決定する。これにより、配送車両の出発地および到着地において、配送依頼に基づく配送物の保管に必要な条件を満たす可能性を高めることができる。すなわち、配送車両の出発地および到着地において、配送物を保管するための空きスペースがないこと、配送物の温度管理ができないこと等の不都合が生じることを回避または抑制できる。
【0066】
また、本実施形態において、制御部20は、配送経路を決定する際の手段として、ダイクストラ法を用いる。これにより、配送依頼に基づく必要設備の条件を満たしつつ、配送元から配送先への最短経路を決定できる。
【0067】
また、本実施形態において、制御部20は、設置設備における空きスペースが必要設備における空きスペース以上であるかを判定する際に、設置設備における空きスペースの情報を、当該設置設備における現在の空き容量に基づいて判定する。このように現在の空き容量に基づいて判定することで、例えば統計値など現在の空き容量を用いずに判定する場合に比べて、正確な判定を行うことができる。その結果、当該設置設備において、空きスペースが足りない等の不都合が生じる可能性を低減できる。
【0068】
また、本実施形態において、制御部20は、配送経路を配送元から配送先までの移動に要する時間のコストである時間コストに基づいて決定する。その際の、当該時間コストには、設置設備での配送物の保管時間を含む。すなわち、時間コストは、移動に要するコストと配送物の保管に要する時間のコストとが含まれることになる。これにより、例えば移動に要する時間だけを時間コストとする場合に比べて、より正確な時間コストに基づく配送経路を決定することができる。つまり、保管時間を時間コストに含めないとすると、例えば2つの配送経路があった際に、移動時間だけで判定した場合には、一方の経路の方が時間コストは小さいが、保管時間を時間コストに含めた場合には、他方の経路の方が、時間コストが小さくなる可能性がある。そのような場合、決定された配送経路は最小の時間コストとならない可能性がある。本実施形態においては、このような事情も加味して保管時間を時間コストに含めることで、より正確な時間コストに基づく配送経路を決定することができる。
【0069】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。上述の実施形態において、必要設備および設置設備の各項目は、空きスペースや温度管理に限られず、任意の項目が設定されてよい。当該項目としては、例えば配送物を検品する検品の項目や配送物を梱包する梱包の項目などが設定されてもよい。
【0070】
また、上述の実施形態においては、設置設備の空きスペースは、現在の空き容量として説明したものの、当該空きスペースは、現在の空き容量に限られず、例えば、過去の実績に基づく統計値から求まる空き容量であってもよい。例えば空きスペースの情報として、季節毎の空き容量の統計値(例えば平均値)を採用してもよい。この場合、例えば設置設備における保管機能が冷蔵である場合には、当該設置設備における空き容量は、夏の方が冬に比べて冷たい物の消費が多くなることから空き容量が大きくなる。このように、設置設備の空きスペースの情報として、過去の実績に基づく統計値を採用することで、例えば数ヶ月先など先の配送依頼があった場合に、設置設備の空きスペースを予測することができ、配送依頼を受けることが可能となる。
【0071】
また、上述の実施形態においては、ステップS5の判定において、空きスペースおよび温度管理の条件を満たないノードは、配送経路の対象から除外した。一方、例えば当該ノードにおける配送車両の到着時刻と、当該ノードから辿れる(すなわち接続されている)他のノードへの配送車両の出発時刻と、の差が既定値以内(例えば15分以内)である場合には、当該ノードに対応する物流センターでの保管は不要と見なしてもよい。既定値以内の時間は、当該ノードに到着する配送車両と当該ノードから出発する配送車両との間で配送物を載せ替えるための時間と見なせるためである。その場合には、ステップS5で肯定的に判定され、制御部20は、経路探索を継続してもよい。
【0072】
また、上述の実施形態においては、制御部20は、運行情報30bおよび地図情報30cを参照して、配送元と配送先との間を運行する配送便を特定して配送便ネットワークを構築したが、この際に、配送元から配送先への方向(すなわち進行方向)に向けて運行する配送便を特定してもよい。当該進行方向に向けて運行する配送便を特定することで、進行方向とは反対方向に向けて運行する配送便を排除でき、配送経路を決定する際の経路探索の負荷を低減できる可能性があるためである。
【0073】
また、上述の実施形態を構成する各システムや構成は、機能を共有したより少ない装置で構成されてもよい。このような例としては、図1に示す少なくとも1台のシステムや構成が、他の1台以上のシステムや構成と同一の装置で構成される例が挙げられる。例えば、配送経路決定システム10と依頼者端末100とが一体の装置で構成されていてもよいし、配送経路決定システム10と提供者端末200とが一体の装置で構成されてもよいし、依頼者端末100と提供者端末200とが一体の装置で構成されてもよい。さらに、図1に示すシステムがより多数のシステムで構成されてもよい。例えば、配送経路決定システム10がクラウドサーバで構成されてもよい。
【0074】
また、配送経路決定システム10を構成する各部(配送依頼情報取得部21a、運行情報取得部21b、配送経路決定部21c)の少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在していてもよい。さらに、上述の実施形態の一部の構成が省略される構成や、処理が変動または省略される構成も想定し得る。
【0075】
さらに、本発明の手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0076】
10…配送経路決定システム、20…制御部、21…配送経路決定プログラム、21a…配送依頼情報取得部、21b…運行情報取得部、21c…配送経路決定部、30…記録媒体、30a…配送依頼情報、30b…運行情報、30c…地図情報、40…通信部、100…依頼者端末、110…制御部、120…通信部、130…ユーザI/F部、140…記録媒体、200…提供者端末、210…制御部、220…通信部、230…ユーザI/F部、240…記録媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6