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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144865
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】抗菌性を有する印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/08 20060101AFI20241004BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20241004BHJP
   A01P 3/00 20060101ALN20241004BHJP
   A01N 41/10 20060101ALN20241004BHJP
   A01N 33/24 20060101ALN20241004BHJP
   A01N 61/00 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
C09D11/08
B41M3/00 Z
A01P3/00
A01N41/10 A
A01N33/24 101
A01N61/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057016
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高村 光仁
(72)【発明者】
【氏名】福島 明葉
【テーマコード(参考)】
2H113
4H011
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA06
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB06
2H113BB07
2H113BB10
2H113BB22
2H113CA46
4H011AA02
4H011AA03
4H011BB04
4H011BB07
4H011BB19
4J039AB08
4J039BE33
4J039CA04
4J039CA07
4J039DA01
4J039DA02
4J039EA33
4J039EA43
4J039FA03
4J039GA02
(57)【要約】
【課題】オーバープリント層の塗工性や塗膜物性に優れ、かつ、印刷物表面に高い安全性と良好な抗菌性を付与でき、経時による塗膜の変色のない、吸収性基材を用いた印刷物を提供すること。
【解決手段】
吸収性基材と非イソチアゾリン系有機抗菌剤を含むオフセット印刷層であるオーバープリント層とを含む印刷物であって、オーバープリント層全量中の前記有機抗菌剤の含有量が、0.1~15質量%であり、オーバープリント層を含む印刷物は、下記抗菌性試験において抗菌活性値が0.5以上抗菌性を示す、印刷物。
<抗菌性試験>
黄色ブドウ球菌液を、酵母エキスを2.5gと、カゼイン膵加水分解物を5gと、ぶどう糖を1gと、寒天粉末を15gとを水1L中に含む、標準寒天平板上に塗布した後、吸収性印刷物に転写し、試験菌を培養する抗菌性試験。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性基材とオーバープリント層とを含む印刷物であって、
前記オーバープリント層は、非イソチアゾリン系有機抗菌剤を含むオフセット印刷層であり、
前記オーバープリント層全量中の前記有機抗菌剤の含有量が、0.1~15質量%であり、
前記オーバープリント層を含む印刷物は、下記抗菌性試験において抗菌活性値が0.5以上を示す、印刷物。
<抗菌性試験>
黄色ブドウ球菌液を、酵母エキスを2.5gと、カゼイン膵加水分解物を5gと、ぶどう糖を1gと、寒天粉末を15gとを水1L中に含む、標準寒天平板上に塗布した後、吸収性印刷物に転写し、試験菌を培養する抗菌性試験
【請求項2】
前記有機抗菌剤が、安全データシート(SDS)の第2項危険有害性の要約の皮膚感作性において、区分1、区分1A、区分1Bに該当しない抗菌剤である、請求項1記載の印刷物。
【請求項3】
前記有機抗菌剤が、有機ハロゲン系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、ベンゾイミダゾール系抗菌剤、イソフタロニトリル系抗菌剤、フェノール系抗菌剤、トリアジン系抗菌剤、臭素系抗菌剤、第4級アンモニウム塩系抗菌剤、カチオンポリマー系抗菌剤、及び有機金属系抗菌剤からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1記載の印刷物。
【請求項4】
オーバープリント層が樹脂を含む、請求項1記載の印刷物。
【請求項5】
樹脂がロジン変性樹脂を含む、請求項4記載の印刷物。
【請求項6】
吸収性基材とオーバープリント層との間に、さらにインキ層を含む、請求項1~5いずれか記載の印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性を有する印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、公衆衛生への意識の高まりから、抗菌加工が施された製品(抗菌製品)への需要が高まっており、市場においても様々な抗菌製品が出回っている。一般的な抗菌製品(例えばプラスチック又は紙)は、抗菌剤を基材に練り込むことで抗菌性能を付与しているが、抗菌剤は価格が高く、種類によっては環境有害性がある等の制約により、抗菌剤が使用される製品は限定的である。抗菌剤の抗菌性能は、主に表面に露出している抗菌剤により発現されるため、抗菌剤の添加量を極力抑えつつ抗菌性能を最大限有効に活用するためには、製品表面にのみ塗布するコーティングが有効な解決手段の一つである。近年では、印刷物等の表面に抗菌性を有するニスをオーバープリントする事例が増えてきている。
【0003】
印刷物においては、色インキを印刷した後に表面保護を目的にオーバープリント層を設けることは一般的であり、このオーバープリント層に抗菌性を付与することで印刷物表面に効果的に抗菌性を付与する方法は理にかなっており、抗菌性オーバープリント層を有する印刷物の市場も広がりを見せている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-006814号公報
【特許文献2】特開平9-39369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、今までの抗菌性オーバープリント層を有する印刷物では、その抗菌性の評価方法をJIS Z2801に準拠して行っている(特許文献1,2参照)。JIS Z2801はプラスチック製品等、液体を吸収しない製品表面の抗菌性を評価する評価方法である。しかし、本発明者の検討によれば、紙等の液体吸収性の基材に塗布された抗菌性オーバープリント層を有する印刷物について、JIS Z2801に準拠して抗菌性試験を行うと、菌液が基材に染み出してしまい、抗菌性が低いにも関わらず抗菌性があると評価する問題があることが判明した。
【0006】
一方、繊維製品等の液体を吸収する製品の抗菌性は、JIS L1902記載の菌液吸収法で評価することが望ましいとされている。しかし、この方法では印刷物内部を含めた全体の抗菌性を評価していることになり、最も重要な印刷物表面の抗菌性を正しく評価できないという問題があった。すなわち、従来技術においては、印刷物としてみた際にその表面の抗菌性が適正に評価されていないものであった。
【0007】
また、特許文献1で用いられている銀系抗菌剤は、経時による塗膜の変色が問題になることがある。
【0008】
さらに、特許文献2で用いられている抗菌剤はイソチアゾリン系有機抗菌剤であるが、イソチアゾリン系化合物を使用した商品においてアレルギー性接触皮膚炎が発症する事例があるなど(厚生労働省「冷却パッドの使用に伴う重大製品事故について」)、皮膚感作性が強いなど安全性に問題があることが知られている。
【0009】
そこで、本発明は、オーバープリント層の塗工性や塗膜物性に優れ、かつ、印刷物表面に高い安全性と良好な抗菌性を付与でき、経時による塗膜の変色のない、吸収性基材を用いた印刷物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、吸収性基材に塗布された抗菌性オーバープリント層を有する印刷物の抗菌性を適正に評価できる方法を見出し、その評価方法を用いても高い抗菌性を有する抗菌性オーバープリント層に用いる抗菌組成物を検討し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、吸収性基材とオーバープリント層とを含む印刷物であって、
前記オーバープリント層は、非イソチアゾリン系有機抗菌剤を含むオフセット印刷層であり、
前記オーバープリント層全量中の前記有機抗菌剤の含有量が、0.1~15質量%であり、
前記オーバープリント層を含む印刷物は、下記抗菌性試験において抗菌活性値が0.5以上を示す、印刷物に関する。
<抗菌性試験>
黄色ブドウ球菌液を、酵母エキスを2.5gと、カゼイン膵加水分解物を5gと、ぶどう糖を1gと、寒天粉末を15gとを水1L中に含む、標準寒天平板上に塗布した後、吸収性印刷物に転写し、試験菌を培養する抗菌性試験
【0012】
また本発明は、前記有機抗菌剤が、安全データシート(SDS)の第2項危険有害性の要約の皮膚感作性において、区分1、区分1A、区分1Bに該当しない抗菌剤である、上記印刷物に関する。
【0013】
また本発明は、前記有機抗菌剤が、有機ハロゲン系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、ベンゾイミダゾール系抗菌剤、イソフタロニトリル系抗菌剤、フェノール系抗菌剤、トリアジン系抗菌剤、臭素系抗菌剤、第4級アンモニウム塩系抗菌剤、カチオンポリマー系抗菌剤、及び有機金属系抗菌剤からなる群より選ばれる1種以上を含む、上記印刷物に関する。
【0014】
また本発明は、オーバープリント層が樹脂を含む、上記印刷物に関する。
【0015】
また本発明は、樹脂がロジン変性樹脂を含む、上記印刷物に関する。
【0016】
また本発明は、吸収性基材とオーバープリント層との間に、さらにインキ層を含む、上記印刷物に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オーバープリント層の塗工性や塗膜物性に優れ、かつ、印刷物表面に高い安全性と良好な抗菌性を付与でき、経時による塗膜の変色のない、吸収性基材を用いた印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含んでいる。本明細書に段階的に記載されている複数の数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができるものである。また、本明細書に例示する材料及び化合物は、特に断らない限り、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0020】
本発明の印刷物は吸収性基材とオーバープリント層とを含む印刷物である。
【0021】
本発明におけるオーバープリント層は抗菌組成物をオフセット印刷して得られる層である。
【0022】
<抗菌組成物>
抗菌組成物の形態はオフセット印刷できる組成物であれば問題ないが、好ましい形態としては有機抗菌剤と樹脂と溶剤とを含む組成物である。組成物として具体的には酸化重合型組成物とヒートセット型組成物が挙げられる。酸化重合型組成物は溶剤として植物油などの酸化重合する成分を含む組成物であり、ヒートセット型組成物は溶剤として非芳香族系石油溶剤などの熱により蒸発する成分を含む組成物である。
【0023】
<有機抗菌剤>
オーバープリント層の抗菌性を担保するため、抗菌組成物は非イソチアゾリン系有機抗菌剤を含む。
【0024】
本発明の印刷物は、印刷物表面に有機抗菌剤の少なくとも一部が存在しており、印刷物の使用時に印刷物表面に皮膚が接触することが考えられ、安全性の観点から安全データシート(SDS)第2項の「危険有害性の要約」における皮膚感作性において、区分1、区分1A、区分1Bに該当しない抗菌剤を用いることが好ましい。
【0025】
有機抗菌剤としては、有機ハロゲン系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、ベンゾイミダゾール系抗菌剤、イソフタロニトリル系抗菌剤、フェノール系抗菌剤、トリアジン系抗菌剤、臭素系抗菌剤、第4級アンモニウム塩系抗菌剤、カチオンポリマー系抗菌剤、及び有機金属系抗菌剤からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。更に、抗菌剤が窒素原子を含有することがより好ましく、具体的には、ピリジン系抗菌剤、トリアジン系抗菌剤、第4級アンモニウム塩系抗菌剤、カチオンポリマー系抗菌剤などを例示することができる。
【0026】
有機抗菌剤の含有量は、組成物全量中に0.1~15質量%である。0.1質量%未満では抗菌効果が安定せず、一方、15質量%を越えると必要十分な抗菌効果が飽和し、抗菌剤が過剰となって価格面、印刷適性共に不利となり、さらに組成物の保存安定性が低下し、塗膜の堅牢性も低下する恐れがある。抗菌剤の含有量は、好ましくは組成物全量中に0.1~10質量%であり、より好ましくは組成物全量中0.5~7質量%であり、特に好ましくは0.5~5質量%である。
【0027】
<樹脂>
本発明の抗菌組成物は、樹脂を含むことが好ましい。樹脂を含むことで、オーバープリント層の塗工性が向上する。
樹脂の含有量としては、塗工性の点から、組成物全量中5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。
【0028】
本発明における樹脂は、ロジン変性樹脂を含むことが好ましい。ロジン変性樹脂は樹脂中にロジン骨格を導入した樹脂であれば特に限定されない。ロジン変性樹脂を含むことで抗菌組成物に優れた粘弾性を付与し、安定した塗工性を得ることができる。ロジン変性樹脂の重量平均分子量は4000~200000であることが好ましい。
【0029】
ロジン変性樹脂としては、オフセット印刷時における、印刷機のインキ練りローラー間からのインキの飛散(ミスチング)を抑制できる点から、ロジン変性フェノール樹脂が好ましい。
【0030】
なお、本発明において、Mw(重量平均分子量)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(以下、「GPC」という。)で測定した。GPCの具体的な測定方法は、以下の通りである。東ソー(株)製HLC-8320を用い、検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は流速0.6mL/分、注入量10μL、カラム温度40℃で行った。
【0031】
<溶剤>
本発明の抗菌組成物に用いられる溶剤としては、従来公知のものを任意に用いることができる。上記樹脂との相溶性、並びに、抗菌組成物の粘弾性及び乾燥性を好適なものとする観点から、植物油、重合植物油、脂肪酸エステル、及び非芳香族系石油溶剤から選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。なおこれらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
<植物油>
本発明における植物油は、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応物であるトリグリセライド、並びに、エステル交換反応により生成されたモノグリセライド及びジグリセライドを表す。なお、前記脂肪酸は飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。
【0033】
植物油として代表的なものは、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、米油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。特に大豆油、ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、及びキリ油が好ましい。
【0034】
<重合植物油>
本発明における重合植物油は、例えば上記に列挙した1種類以上の植物油を、加熱及び撹拌し、重合することにより得られる。植物油を、酸素を吹き込みながら加熱及び撹拌してもよい。なお重合反応は熱重合でもよく、酸化重合が必須であるわけではない。重合植物油の製造に用いる植物油としては特に、大豆油、ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、及びキリ油が好ましい。
【0035】
<脂肪酸エステル>
本発明における脂肪酸エステルは、上記に列挙した1種類以上の植物油、例えば大豆油、綿実油、アマニ油、米油、サンフラワー油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油、ナタネ油等から製造される植物油エステルが挙げられる。
【0036】
脂肪酸エステルのその他の例としては、脂肪酸モノアルキルエステル化合物が挙げられる。このうちモノエステルを構成する脂肪酸としては炭素数16~20の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が例示できる。また脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成する、アルコール由来のアルキル基としては炭素数1~10が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基等が例示できる。これらアルキル基を有するアルコールは、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0037】
なお脂肪酸エステルを構成するアルコールは、1価のアルコールであることが好ましい。
【0038】
<非芳香族系石油溶剤>
本発明における非芳香族系石油溶剤としては、パラフィン系、ナフテン系、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。非芳香族系石油溶剤の市販品の例として、ENEOS株式会社製「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」、「AFソルベント6号」、「AFソルベント7号」などがある。なお、混入している芳香族炭化水素の含有量が、前記非芳香族系石油溶剤全量中1重量%以下であることが好ましい。
【0039】
また非芳香族系石油溶剤を用いる場合、そのアニリン点は60~130℃であることが好ましい。アニリン点が130℃以下であると、ニス組成物中のバインダー樹脂が溶解性に優れ、ニス組成物の流動性を十分確保できるため、レベリングが向上し光沢性により優れた印刷物が得られる。また、60℃以上であると、乾燥時に印刷層からの溶剤の離脱性が良化し、乾燥性により優れたニス組成物となる。
【0040】
<添加剤>
また、本発明の抗菌組成物には、必要に応じて各種添加剤を使用することが出来る。添加剤としては、ドライヤー、ワックス等が挙げられる。
【0041】
<ドライヤー>
酸化重合型組成物の場合には添加剤としてドライヤーを含むことが好ましい。ドライヤーとしては、マンガン錯体、コバルト錯体、ニッケル錯体、亜鉛錯体などが挙げられる。
【0042】
<ワックス>
ワックスは、天然ワックスおよび合成ワックスに分類され、天然ワックスとしては、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスに分類される。
【0043】
また、合成ワックスは、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックスに分けられ、本願発明で好ましく使用されるものとしてポリエチレンワックスが挙げられ、ポリエチレンワックスは合成炭化水素に分類される。
【0044】
<その他の成分>
また本発明の抗菌組成物には、本発明の効果が低下しない範囲で、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤などを必要に応じて添加することができる。
【0045】
<印刷物>
本発明の印刷物は、吸収性基材とオーバープリント層とを含む印刷物(以下、吸収性印刷物とも称する)であり、印刷物を試験体とした抗菌性試験により抗菌性を発現する印刷物である。また、吸収性基材とオーバープリント層との間にはインキ層を含んでもよい。
【0046】
<吸収性基材>
印刷物の基材は、吸収性基材(液体吸収性基材)である。吸収性基材とは、38mm四辺の四角片に切断した基材を、温度37℃、湿度90%以上の条件下において、密閉した状態で24時間放置した際に、吸湿する基材をいう。具体的には、アート紙、コート紙、マットコート紙、上質紙、クラフト紙、更紙、合成紙、段ボール等の紙製品;及び、織物、不織布、ガーゼ、フィルター等の繊維製品を例示することができる。また、素材が金属又はプラスチックであっても、表面に微細な隙間があり、液体を吸収する性質がある場合は、吸収性基材となる。
【0047】
<オーバープリント層>
オーバープリント層は、吸収性基材又はインキ層の表面に、抗菌組成物をオフセット印刷することによって得られる。
【0048】
オフセット印刷としては、 湿し水を使用する通常の平版、及び湿し水を使用しない水無し平版のいずれも使用できる。
【0049】
<インキ層>
インキ層を有する場合には、吸収性基材上に、インキをオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、シルクスクリーン印刷等の公知の印刷方法を用いて形成することができる。インキは、それぞれの印刷方法に適した任意のインキを使用することができ、特に限定されない。
【0050】
<吸収性印刷物>
吸収性印刷物は、黄色ブドウ球菌液を、前述の標準寒天平板上に塗布した後、印刷物に転写し、温度37℃、湿度90%以上の条件下において、密閉した状態で24時間放置した際に、転写前の印刷物の重量に対し、重量増加量が1%以上であることが好ましく、より好ましくは3%以上である印刷物である。なお、転写の方法としては、38mm四辺の四角片に切断した印刷物を標準寒天平板に接触するように置き、その上から質量が200gで、直径が35mmの円柱形の重りを乗せ、1分後に印刷物を回収する方法が挙げられる。
【0051】
本発明の吸収性印刷物は、印刷物を試験体とした下記抗菌性試験において抗菌性を示す。抗菌性を示すとは、同試験において抗菌活性値が0より大きいことを意味し、この抗菌活性値は1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。下記に従った抗菌性は、後述する実施例における評価方法を用いて行うことができる。なお、大腸菌についても同様に評価できる。
<抗菌性試験>
黄色ブドウ球菌液を、酵母エキスを2.5gと、カゼイン膵加水分解物を5gと、ぶどう糖を1gと、寒天粉末を15gとを水1L中に含む、標準寒天平板上に塗布した後、吸収性印刷物に転写し、試験菌を培養する抗菌性試験
【0052】
本発明における抗菌性試験について、以下に詳細に説明する。本抗菌性試験は、吸収性基材とオーバープリント層とを含む印刷物(吸収性印刷物)における抗菌性評価方法であり、JIS Z2801とは異なり、吸収性印刷物の抗菌性を、印刷物の状態で適正に評価することができるものである。
【0053】
本抗菌性試験は、試験菌を標準寒天培地上に塗布し、余分な水分を除くことで、吸収性印刷物に、菌体を極少量の水と共に転写できるものであり、菌体の培養に影響がない湿度90%以上の高湿度下ではある一方、無機抗菌剤から発生する金属イオンの生成や、繊維内部に埋包された菌体と抗菌剤との接触を促進する潤沢な水分はないことから、吸収性印刷物の抗菌性を評価するのに適した方法である。
【0054】
<試験片>
吸収性基材と抗菌剤を含有するオーバープリント層とを含む印刷物から、下記記載の大きさに切り出し試験片とし、オーバープリント層側の表面を評価面とする。
【0055】
OKトップコート+(王子製紙株式会社)から下記記載の大きさに切り出し、対照試験片とする。
【0056】
<試験菌株>
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
【0057】
<試験菌液の調整>
TSA培地上で、37℃、23時間、斜面培地法にて培養した試験菌を、ペプトン食塩水に懸濁させ、1.2×106cfu/mLとなるように試験菌液を調製した。
【0058】
ここで、TSA培地は、トリプトンを15gと、大豆由来ペプトンを5gと、塩化ナトリウムを5gと、寒天粉末15gとを、超純水1L中に溶解させ、121℃2気圧で20分間高圧蒸気滅菌し、直径90mmの滅菌シャーレ中で凝固させた寒天培地であり、市販品としてはSolabia Biokar Diagnostics製トリプトンソイ寒天培地が挙げられる。
【0059】
ペプトン食塩水は、カゼインペプトン(極東製薬工業株式会社製極東ペプトン)1gと、塩化ナトリウム8.5gとを超純水1L中に溶解させ、121℃2気圧で20分間高圧蒸気滅菌した溶液である。
【0060】
<試験片と菌体との接触>
試験菌液を、標準寒天培地に1mL滴下し、滴下した試験菌液を、標準寒天培地表面全体に濡れ広がらせ、余分な試験菌液を回収した。5分後、38mm四辺の四角片に切断した試験片を、標準寒天培地面に接触するように置き、その上から質量が200gで、直径が35mmの円柱形の重りを乗せた。
【0061】
<菌体接触直後の生菌回収>
試験片を菌体へ接触させてから1分後、試験片を回収し、すぐに生菌数を測定した。
【0062】
<24時間培養後の生菌回収>
試験片を菌体へ接触させてから1分後、試験片を回収し、温度37℃、湿度90%以上の条件下で24時間培養した後に、生菌数を測定した。
【0063】
ここで、標準寒天培地は、酵母エキス2.5g、カゼイン膵加水分解物5g、ぶどう糖1g、寒天粉末15gを、超純水1L中に溶解させ、121℃2気圧で20分間高圧蒸気滅菌し、直径90mmの滅菌シャーレ中で凝固させた寒天培地であり、市販品としては、関東化学株式会社製標準プレートカウント寒天培地が挙げられる。
【0064】
上記と同様の方法で、対照試験片についても菌体を接触させ、菌体接触直後および24時間培養後に生菌を回収した。
【0065】
<生菌数の測定>
菌体接触直後、および、24時間培養後の試験片をSCDLP培地10mLで30秒間洗い出し、付着している菌体をSCDLP培地中へ洗い出した。当該洗い出し液の希釈倍数を1とし、当該液の1mLを、SCDLP培地9mLで希釈することで、10倍希釈液を作製した。さらに、10倍希釈液1mLを、SCDLP培地9mLで希釈することで100倍希釈液とし、同様の操作で10倍希釈系列を作製した。洗い出し液又は10倍希釈系列を各1mL使用し、標準寒天培地を用いた混釈平板培養法(37℃48時間培養)にて生菌数を測定した。試験はそれぞれ3回行い、平均を取った。
【0066】
ここで、SCDLP培地は、カゼイン製ペプトンを17gと、大豆製ペプトンを3gと、塩化ナトリウムを5gと、リン酸一水素カリウムを2.5gと、ぶどう糖を2.5gと、レシチンを1gと、ポリソルベート80を7gとを超純水1L中に溶解させ、121℃2気圧で20分間高圧蒸気滅菌した液体培地であり、市販品としては、塩谷エムエス株式会社製一般細菌検査用SCDLP培地「ダイゴ」が挙げられる。
【0067】
<抗菌性試験の成立条件>
対照試験片における、24時間培養後の生菌数が、菌体接触直後の生菌数の10倍以上であること。
【0068】
<生菌数(M)の算出>
M=C×D×V
C:混釈平板培養法におけるシャーレ中のコロニー集落数
D:希釈倍数(シャーレに分注した菌体希釈液の希釈倍数)
V:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(mL)

また、希釈倍数D=1のときのコロニー集落数Cが0の場合、Cには<1を代入し、M<Vとする。
【0069】
<抗菌活性値(R)の算出>
抗菌活性値(R)は、以下の方法により算出した。
R=(U24-U0)-(A24-A0
0:対照試験片の接種直後の生菌数の対数値
24:対照試験片の24時間後の生菌数の対数値
0:試験片の接触直後の生菌数の対数値
24:試験片の24時間後の生菌数の対数値
ただし、A0-<U0の場合は、A0をUoに置き換えて計算する。
なお、抗菌活性値(R)の結果は、小数点以下2桁目は切り捨て、小数点以下1桁で表す。
【実施例0070】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。
【0071】
<樹脂ワニス1製造例>
特開2022-54006号公報に記載の製法で合成した重量平均分子量36500、酸価22であるロジン変性フェノール樹脂40部、大豆油15部、及び非芳香族系石油溶剤であるAFソルベント7号(ENEOS株式会社製)44部を容器に加え、190℃に昇温した。同温で30分間撹拌した後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を加え、190℃で30分間撹拌して樹脂ワニス1を得た。
【0072】
<樹脂ワニス2製造例>
特開2022-54006号公報に記載の製法で合成した重量平均分子量36500、酸価22であるロジン変性フェノール樹脂40部、大豆油59部を容器に加え、190℃に昇温した。同温で30分間撹拌した後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を加え、190℃で30分間撹拌して樹脂ワニス2を得た。
【0073】
<樹脂ワニス3製造例>
特開2022-54006号公報に記載の製法で合成した重量平均分子量131200、酸価13であるロジン変性フェノール樹脂39.5部、大豆油15部、及び非芳香族系石油溶剤であるAFソルベント7号(ENEOS株式会社製)44.5部を容器に加え、190℃に昇温した。同温で30分間撹拌した後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を加え、190℃で30分間撹拌して樹脂ワニス3を得た。
【0074】
<樹脂ワニス4製造例>
特開2022-54006号公報に記載の製法で合成した重量平均分子量4700、酸価10であるロジン変性フェノール樹脂41.5部、大豆油15部、及び非芳香族系石油溶剤であるAFソルベント7号(ENEOS株式会社製)42.5部を容器に加え、190℃に昇温した。同温で30分間撹拌した後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を加え、190℃で30分間撹拌して樹脂ワニス4を得た。
【0075】
<樹脂ワニス5製造例>
特開2022-54006号公報に記載の製法で合成した重量平均分子量131200、酸価13であるロジン変性フェノール樹脂34.5部、大豆油15部、及び非芳香族系石油溶剤であるAFソルベント7号(ENEOS株式会社製)49.5部を容器に加え、190℃に昇温した。同温で30分間撹拌した後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を加え、190℃で30分間撹拌して樹脂ワニス5を得た。
【0076】
<樹脂ワニス6製造例>
石油樹脂である日石ネオポリマー160(ENEOS株式会社製、重量平均分子量3500、酸価30)49.5部、大豆油15部、及び非芳香族系石油溶剤であるAFソルベント7号(ENEOS株式会社製)34.5部を容器に加え、190℃に昇温した。同温で30分間撹拌した後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を加え、190℃で30分間撹拌して樹脂ワニス6を得た。
【0077】
<抗菌組成物の製造例>
実施例1
樹脂ワニス1を78部、キリ油を5部、非芳香族系石油溶剤であるAFソルベント7号(ENEOS株式会社製)を10部、ドライヤーとしてオクチル酸マンガンを0.5部、オクチル酸コバルトを0.5部、ポリエチレンワックスを3部、及び抗菌剤A(PBM-OJ)を3部仕込み、常法に従い三本ロールを用いて抗菌組成物1を得た。
【0078】
実施例2~11
表1に記載した原料の種類と量を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~11の抗菌組成物を得た。なお、表中の配合量を示す数値は「質量部」を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0079】
比較例1~5
表1に記載した組成に従い、上記実施例と同様にして、比較例1~5の抗菌組成物を得た。
【0080】
なお、表1中に記載した原料の詳細は、以下のとおりである。
大豆油:再生大豆油(ヨウ素価117)
キリ油:キリ油(ヨウ素価170)
AFソルベント7号:ENEOS株式会社製
AFソルベント4号:ENEOS株式会社製
ポリエチレンワックス:森村ケミカル株式会社製
オクチル酸マンガン:日本化学産業株式会社製
オクチル酸コバルト:日本化学産業株式会社製
抗菌剤A:トリアジン系抗菌剤(エム・アイ・シー社製「PBM-OJ」)
抗菌剤B:4級アンモニウム系抗菌剤(大和化学工業株式会社製「アモルデンJM」)
抗菌剤C:カチオンポリマー系抗菌剤(富士ケミカル株式会社製「FC-V20S」)
抗菌剤D:銀系抗菌剤(東亜合成株式会社製「AG-300」)
抗菌剤E:銀・亜鉛系抗菌剤(株式会社タイショーテクノス製「ビオサイドTB-B100」)
【0081】
<皮膚感作性>
安全データシート(SDS)の第2項危険有害性の要約の皮膚感作性の記載から判断した。
○・・・区分1、区分1A、区分1Bいずれにも該当しない
×・・・区分1、区分1A、区分1Bのいずれかに該当する
【0082】
<本発明における抗菌性試験用試験サンプルの作成方法>
得られた抗菌組成物を、油性オフセット用インキ(「TK NEX NV 墨 MZ」東洋インキ株式会社製)を用いて濃度1.8になるようにベタ画像を印刷したコートボール紙上に、RIテスター(テスター産業株式会社製)を用いて、0.25mLの盛り量で一面に印刷し、試験サンプルを作成した。
【0083】
<抗菌性評価(本発明における抗菌性試験)>
上述した本発明における抗菌性試験によって評価を行った。
得られた抗菌活性値(R)から、以下のように抗菌性を評価した。抗菌活性値が1.0以上であれば、本実施形態において抗菌効果が良好であると評価できる。
○:2.0以上
△:2.0未満、1.0以上
×:1.0未満
【0084】
<抗菌性評価(JIS Z2801)用試験サンプルの作成方法>
得られた抗菌組成物を、RIテスター(テスター産業株式会社製)を用いて、ポリエチレンフィルムに0.25mLの盛り量でベタ画像を印刷し、試験サンプルを作成した。
【0085】
<抗菌性評価(JIS Z2801)>
ポリエチレンフィルム上に印刷された抗菌組成物について、JIS Z2801に則った方法で抗菌性の評価を行った。得られた抗菌活性値(R2801)から、以下のように抗菌性を評価した。抗菌活性値が1.0以上であれば、本実施形態において抗菌効果が良好であると評価できる。
○:2.0以上
△:2.0未満、1.0以上
×:1.0未満
【0086】
<ミスチングの評価>
インコメーター式ミスチング試験機に抗菌組成物1.5mLをのせて、1800回転で2分間回転させた。回転に伴い抗菌組成物が飛散し、回転体の真下においた紙( 幅15cm 長さ30cm ) の重量増加量によりミスチングの優劣を比較した。ミスチングが悪い場合は抗菌組成物の飛散量が増加し、紙の重量が増える。評価基準は、以下の通りである。
○・・・紙の重量増が0.1g 未満
△・・・紙の重量増が0.1g以上、0.2g未満
×・・・紙の重量増が0.2g 以上
【0087】
<光沢評価用試験サンプルの作成方法>
得られた抗菌組成物を、RIテスター(テスター産業株式会社製)を用いて、OKトップコート+(王子製紙株式会社)に0.25mLの盛り量でベタ画像を印刷し、試験サンプルを作成した。
【0088】
<光沢評価>
得られた試験サンプルの光沢を光沢計(GLOSS METER GM-26D 村上色学研究所製 入射角 60°)にて測定した。
◎・・・光沢値が60以上
〇・・・光沢値が50以上、60未満
△・・・光沢値が40以上、50未満
×・・・光沢値が40未満
【0089】
<耐摩擦性評価用試験サンプルの作成方法>
得られた抗菌ニス組成物を、RIテスター(テスター産業株式会社製)を用いて、OKトップコート+(王子製紙株式会社)に0.25mLの盛り量でベタ画像を印刷し、試験サンプルを作成した。
【0090】
<耐摩擦性評価>
得られた試験サンプルの耐摩擦性を、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製)を用いて測定した(測定条件:500g×50回、当紙:OKトップコート+(王子製紙株式会社))。
〇・・・印刷面欠落の摩擦回数が50回
△・・・印刷面欠落の摩擦回数が10回以上、50回未満
×・・・印刷面欠落の摩擦回数が10回未満
【0091】
<塗膜の変色評価用試験サンプルの作成方法>
得られた抗菌組成物を、RIテスター(テスター産業株式会社製)を用いて、OKトップコート+(王子製紙株式会社)に0.25mLの盛り量でベタ画像を印刷し、試験サンプルを作成した。
【0092】
<塗膜の変色評価>
得られた試験サンプルを25℃にて180日保管し、塗膜の変色度合いを目視にて評価を行った。
○・・・経時でオーバープリント層の色相変化なし
×・・・経時でオーバープリント層の色相変化あり
【0093】
以上の結果を、表1に併せて示す。
【0094】
【表1】
【0095】
上記のとおり実施例の印刷物は、オーバープリント層の塗工性や塗膜物性に優れ、かつ、印刷物表面に高い安全性と良好な抗菌性を付与でき、経時による塗膜の変色のない印刷物を提供することができた。
一方、銀系抗菌剤を用いた比較例1、2は、本願発明の抗菌試験では抗菌性が低く、塗膜の変色も大きかった。
抗菌剤の含有量が本願発明の範囲より少ない比較例3は抗菌性が低く、抗菌剤の含有量が本願発明の範囲より多い比較例4は抗菌性は示したものの光沢と耐摩擦性が低かった。
基材が非吸収性基材である比較例5は、本発明における抗菌性試験(吸収性印刷物用試験)は印刷物への菌液の吸収がないため測定不可であった。