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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144866
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ウレタン発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20241004BHJP
   H01F 1/08 20060101ALI20241004BHJP
   C08L 75/00 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 3/11 20180101ALI20241004BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 3/18 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08G18/00 J
H01F1/08 130
C08L75/00
C08K3/04
C08K3/11
C08L101/14
C08K9/00
C08K3/18
C08G18/32 003
C08G18/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057017
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】小瀬 峻久
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
5E040
【Fターム(参考)】
4J002AB012
4J002AB022
4J002AB042
4J002BE022
4J002CK021
4J002DA026
4J002DB007
4J002DE078
4J002DE148
4J002DE238
4J002DE268
4J002DJ018
4J002DJ038
4J002DJ048
4J002DJ058
4J002FB076
4J002FB077
4J034CA01
4J034CB02
4J034CB03
4J034CD01
4J034CD04
4J034CD05
4J034CD06
4J034DA01
4J034DG00
4J034DH00
4J034FA05
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC64
4J034JA01
4J034MA01
4J034MA02
4J034MA22
4J034MA26
4J034NA03
4J034QB19
4J034QC01
4J034QD03
4J034RA12
4J034SA02
5E040AA11
5E040BB03
5E040CA01
5E040HB06
(57)【要約】
【課題】 熱伝導性および難燃性に優れたウレタン発泡成形体を提供する。
【解決手段】 ウレタン発泡成形体は、ポリウレタンフォームからなる基材と、該基材中に配向して含有されている複合粒子と、を有する。該複合粒子は、膨張化黒鉛粒子と、該膨張化黒鉛粒子の表面にバインダーにより接着された磁性粒子と、を有する第一複合粒子と、膨張黒鉛粒子と、該膨張黒鉛粒子の表面にバインダーにより接着された磁性粒子と、を有する第二複合粒子と、を有する。ウレタン発泡成形体における該基材中の該膨張化黒鉛粒子および該膨張黒鉛粒子の合計質量を100質量%とした場合、該膨張化黒鉛粒子の含有量は20質量%以上80質量%以下である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォームからなる基材と、該基材中に配向して含有されている複合粒子と、を有し、
該複合粒子は、
膨張化黒鉛粒子と、該膨張化黒鉛粒子の表面にバインダーにより接着された磁性粒子と、を有する第一複合粒子と、
膨張黒鉛粒子と、該膨張黒鉛粒子の表面にバインダーにより接着された磁性粒子と、を有する第二複合粒子と、
を有し、
該基材中の該膨張化黒鉛粒子および該膨張黒鉛粒子の合計質量を100質量%とした場合、該膨張化黒鉛粒子の含有量は20質量%以上80質量%以下であることを特徴とするウレタン発泡成形体。
【請求項2】
前記膨張化黒鉛粒子の平均粒子径は、100μm以上3000μm以下である請求項1に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項3】
前記膨張化黒鉛粒子の純度は、99%以上である請求項1に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項4】
前記膨張黒鉛粒子の平均粒子径は、100μm以上3000μm以下である請求項1に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項5】
前記複合粒子の含有量は、ウレタン発泡成形体の体積を100体積%とした場合の5体積%以上50体積%以下である請求項1に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項6】
前記第一複合粒子および前記第二複合粒子を構成する前記バインダーは、水溶性高分子である請求項1に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項7】
前記水溶性高分子は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンから選ばれる一種以上である請求項6に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項8】
前記第一複合粒子および前記第二複合粒子を構成する前記磁性粒子の含有量は、前記基材中の前記膨張化黒鉛粒子および前記膨張黒鉛粒子の合計質量を100質量%とした場合の20質量%以上80質量%以下である請求項1に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項9】
前記第一複合粒子および前記第二複合粒子を構成する前記磁性粒子は、鉄粒子および鉄系合金粒子から選ばれる一種以上を有する請求項1に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項10】
前記第一複合粒子および前記第二複合粒子の少なくとも一方は、前記膨張化黒鉛粒子または前記膨張黒鉛粒子の表面にバインダーにより接着された絶縁性無機粒子を有する請求項1に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項11】
前記絶縁性無機粒子は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカから選ばれる一種以上を有する請求項10に記載のウレタン発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱伝導性が高いウレタン発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両においては、車外や車室に漏れる騒音を低減するために、エンジン、トランスミッションなどから発生する騒音の低減対策が講じられている。電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)においては、インバータ、モータ、ギアボックスなどからなる電動パワートレインの駆動音も低減の対象である。騒音対策としては、例えば、ポリウレタンフォームなどの発泡体からなる防音材が用いられる。発泡体は、内部に多数のセル(気泡)を有するため熱伝導率が小さい。このため、発熱を伴う騒音源の周囲に配置した場合、熱が蓄積され不具合を生じるおそれがある。
【0003】
発泡体を用いた防音材の放熱性を向上させるという観点から、例えば特許文献1には、ポリウレタンフォーム中に、熱伝導性粒子、磁性粒子、および絶縁性無機粒子が複合化した複合粒子を配向させて配置して、その配向方向に熱の伝達経路を形成することにより放熱性を向上させたウレタン発泡成形体が記載されている。熱伝導性粒子としては、膨張黒鉛などが記載されている。特許文献2には、熱伝導性フィラーを含有するポリウレタンフォームが記載されている。熱伝導性フィラーとしては、膨張黒鉛、膨張化黒鉛などが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/042611号
【特許文献2】特開2022-72896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防音材には、用途により、熱伝導性に加えて難燃性も要求される。例えば、難燃性が付与されているポリウレタンフォームは、炎に晒されても火種を落下させて延焼を抑制するドロッピング作用を有する。特許文献1に記載されているウレタン発泡成形体においては、熱伝導性が比較的大きい粒子(熱伝導性粒子)を配向させるため、当該粒子の表面に磁性粒子を接着させて造粒した複合粒子が用いられる。ポリウレタンフォームに磁性粒子が配合されると、ドロッピング作用が損なわれ、自己消火性が低下するおそれがある。したがって、難燃性を考慮すると、熱伝導性粒子としては、鱗片状の黒鉛の層間に加熱によりガスを発生する物質が挿入され難燃効果を有する膨張黒鉛が好適である。このように、複合粒子の熱伝導性粒子として膨張黒鉛を使用することにより、ウレタン発泡成形体の難燃性は向上する。しかしながら、近年、防音材には、より高い熱伝導性が要求される。この場合、膨張黒鉛の熱伝導率は十分に大きいとはいえず、膨張黒鉛を用いるだけでは、熱伝導性の向上には限界がある。
【0006】
この点、特許文献2によると、熱伝導性フィラーとして、膨張黒鉛、膨張化黒鉛が挙げられている。膨張化黒鉛は、膨張黒鉛を加熱して膨張させた後、微細化して製造されるものであり、層間物質が消失しているため純度が高い。このため、膨張化黒鉛の熱伝導率は膨張黒鉛のそれより大きい。しかしながら、特許文献2においては、段落[0006]に記載されているように、発泡成形を磁場をかけないで行うことを目的としている。よって、ポリウレタンフォーム中の熱伝導性フィラーは配向しておらず、熱伝導性フィラーとして膨張黒鉛、膨張化黒鉛を用いたとしても、これらは単体で分散しているに過ぎない。本発明者の検討によると、ポリウレタンフォームに膨張化黒鉛を単に分散させるだけでは、熱伝導性の向上効果は小さいことがわかっている。
【0007】
本開示は、このような実情に鑑みてなされたものであり、熱伝導性および難燃性に優れたウレタン発泡成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本開示のウレタン発泡成形体は、ポリウレタンフォームからなる基材と、該基材中に配向して含有されている複合粒子と、を有し、該複合粒子は、膨張化黒鉛粒子と、該膨張化黒鉛粒子の表面にバインダーにより接着された磁性粒子と、を有する第一複合粒子と、膨張黒鉛粒子と、該膨張黒鉛粒子の表面にバインダーにより接着された磁性粒子と、を有する第二複合粒子と、を有し、該基材中の該膨張化黒鉛粒子および該膨張黒鉛粒子の合計質量を100質量%とした場合、該膨張化黒鉛粒子の含有量は20質量%以上80質量%以下であることを特徴とする。
【0009】
本開示のウレタン発泡成形体は、少なくとも第一、第二の二種類の複合粒子を有する。いずれの複合粒子も、核となる粒子の表面にバインダーにより磁性粒子が接着されている。第一複合粒子の核粒子は、膨張黒鉛粒子よりも熱伝導率が大きい膨張化黒鉛粒子であり、主にウレタン発泡成形体の熱伝導率向上に寄与する。第二複合粒子の核粒子は、難燃効果を発揮する膨張黒鉛粒子であり、主にウレタン発泡成形体の難燃性向上に寄与する。これらの複合粒子は、ポリウレタンフォームからなる基材中に配向して配置される。複合粒子が連なって配向することにより、基材中に熱の伝達経路が形成される。これにより、熱が複合粒子に伝達されやすくなり、膨張化黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子が、各々単体で含有される形態と比較して、各々の効果が発揮されやすい。また、膨張化黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子はいずれも黒鉛系の材料であり、熱伝導異方性を有し、ポリウレタンとの親和性も高い。
【0010】
本開示のウレタン発泡成形体は、作用が異なる膨張化黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子を、別々に独立した複合粒子として含有する。これにより、互いの作用を阻害することなく、各々の効果を十分に発揮させることができる。結果、所望の熱伝導性と難燃性とを実現することができる。但し、本開示のウレタン発泡成形体においては、膨張化黒鉛粒子と膨張黒鉛粒子とが一体化した粒子の表面に磁性粒子が接着された複合粒子を含む形態が排除されるものではない。
【0011】
(2)上記構成において、前記膨張化黒鉛粒子の平均粒子径は、100μm以上3000μm以下である構成としてもよい。本構成によると、ウレタン発泡成形体の成形性、脆性への影響を小さくして、膨張化黒鉛粒子による熱伝導性の向上効果を発揮させることができる。
【0012】
(3)上記いずれかの構成において、前記膨張化黒鉛粒子の純度は、99%以上である構成としてもよい。本構成によると、熱伝導性の向上効果を高めることができる。
【0013】
(4)上記いずれかの構成において、前記膨張黒鉛粒子の平均粒子径は、100μm以上3000μm以下である構成としてもよい。本構成によると、ウレタン発泡成形体の成形性、脆性への影響を小さくして、膨張黒鉛粒子による難燃効果を発揮させることができる。
【0014】
(5)上記いずれかの構成において、前記複合粒子の含有量は、ウレタン発泡成形体の体積を100体積%とした場合の5体積%以上50体積%以下である構成としてもよい。本構成によると、ウレタン発泡成形体の成形性と、熱伝導率および難燃性の向上と、の両立に好適である。
【0015】
(6)上記いずれかの構成において、前記第一複合粒子および前記第二複合粒子を構成する前記バインダーは、水溶性高分子である構成としてもよい。本構成によると、ウレタン発泡成形体を製造する際に、発泡成形への影響が少なく、環境への負荷も小さい。
【0016】
(7)上記(6)の構成において、前記水溶性高分子は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンから選ばれる一種以上である構成としてもよい。本構成の水溶性高分子は、接着性が良好であり、比較的安価で入手しやすい。
【0017】
(8)上記いずれかの構成において、前記第一複合粒子および前記第二複合粒子を構成する前記磁性粒子の含有量は、前記基材中の前記膨張化黒鉛粒子および前記膨張黒鉛粒子の合計質量を100質量%とした場合の20質量%以上80質量%以下である構成としてもよい。本構成によると、磁性粒子の量が比較的少ないため、コスト削減や軽量化を図ることができる。
【0018】
(9)上記いずれかの構成において、前記第一複合粒子および前記第二複合粒子を構成する前記磁性粒子は、鉄粒子および鉄系合金粒子から選ばれる一種以上を有する構成としてもよい。鉄粒子および鉄系合金粒子は、高い飽和磁化を有し、微細な粒子として入手しやすい。
【0019】
(10)上記いずれかの構成において、前記第一複合粒子および前記第二複合粒子の少なくとも一方は、前記膨張化黒鉛粒子または前記膨張黒鉛粒子の表面にバインダーにより接着された絶縁性無機粒子を有する構成としてもよい。
【0020】
本構成において、絶縁性無機粒子は、核となる膨張化黒鉛粒子または膨張黒鉛粒子の表面に直接接着されてもよく、磁性粒子を介して間接的に、つまり各々の粒子に接着された磁性粒子の表面に接着されてもよい。磁性粒子としては、ステンレス鋼、鉄などの強磁性体が用いられる。このため、膨張化黒鉛粒子または膨張黒鉛粒子と磁性粒子とが複合化した複合粒子は、高い導電性を有する。この状態の複合粒子に絶縁性無機粒子が接着されると、複合粒子同士が接触した状態で配向しても、隣接する複合粒子間において、核粒子や磁性粒子(導電性粒子)同士が接触しにくくなる。よって、複合粒子間の電気抵抗が大きくなる。また、絶縁性無機粒子を介して複合粒子同士が接触することにより、複合粒子間の導通を断つことができる。結果、本開示のウレタン発泡成形体において、電気絶縁性を実現することができる。このように、本構成によると、高い熱伝導性、難燃性に加えて、電気絶縁性をも付与することができる。したがって、本構成のウレタン発泡成形体は、電子機器における放熱部材など、放熱性と電気絶縁性との両方が要求される用途にも好適である。
【0021】
(11)上記(10)の構成において、前記絶縁性無機粒子は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカから選ばれる一種以上を有する構成としてもよい。本構成の絶縁性無機粒子は、熱伝導率が比較的大きいため、複合粒子間の熱伝導性を阻害しにくい。また、比較的安価で入手が容易である。
【発明の効果】
【0022】
本開示のウレタン発泡成形体においては、膨張化黒鉛粒子と膨張黒鉛粒子とが別々の複合粒子として基材中に配向して配置される。このため、本開示のウレタン発泡成形体は、熱伝導性および難燃性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示のウレタン発泡成形体の実施の形態について説明する。なお、実施の形態は以下の形態に限定されるものではなく、当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することができる。
【0024】
<ウレタン発泡成形体>
本開示のウレタン発泡成形体は、ポリウレタンフォームからなる基材と、該基材中に配向して含有されている複合粒子と、を有する。
【0025】
[基材]
基材のポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分などの発泡ウレタン樹脂原料から製造される。発泡ウレタン樹脂原料は、ポリオール、ポリイソシアネートなどの既に公知の原料から調製すればよい。ポリオールとしては、多価ヒドロキシ化合物、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリマーポリオール類、ポリエーテルポリアミン類、ポリエステルポリアミン類、アルキレンポリオール類、ウレア分散ポリオール類、メラミン変性ポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、アクリルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、フェノール変性ポリオール類などの中から適宜選択すればよい。また、ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、およびこれらの誘導体(例えば、ポリオール類との反応により得られるプレポリマー類、変成ポリイソシアネート類)などの中から適宜選択すればよい。
【0026】
発泡ウレタン樹脂原料には、さらに、触媒、発泡剤、整泡剤、可塑剤、架橋剤、鎖延長剤、難燃剤、帯電防止剤、減粘剤、安定剤、充填剤、着色剤などを適宜配合してもよい。例えば、触媒としては、テトラエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミンなどのアミン系触媒や、ラウリン酸錫、オクタン酸錫などの有機金属系触媒が挙げられる。また、発泡剤としては水が好適である。水以外には、塩化メチレン、フロン類、COガスなどが挙げられる。また、整泡剤としてはシリコーン系整泡剤が、架橋剤としてはトリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが好適である。
【0027】
基材の形状、大きさなどは、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜決定すればよい。基材に含有される複合粒子は、ある規則性を持って配置されていればよい。例えば、ウレタン発泡成形体の一端と他端(一端に対して180°対向した端部でなくてもよい。)との間に直線状に配置されても、曲線状に配置されてもよい。また、中心から外周に向かって放射状に配置されてもよい。
【0028】
[複合粒子]
基材中に配向して含有されている複合粒子は、核となる非磁性体粒子の表面に磁性粒子などがバインダーにより接着された粒子であり、第一複合粒子と第二複合粒子とを有する。第一複合粒子は、膨張化黒鉛粒子と、該膨張化黒鉛粒子の表面にバインダーにより接着された磁性粒子と、を有する。第二複合粒子は、膨張黒鉛粒子と、該膨張黒鉛粒子の表面にバインダーにより接着された磁性粒子と、を有する。核となる非磁性体粒子は、単一の粒子でも複数の粒子でもよい。例えば、第一複合粒子を構成する膨張化黒鉛粒子は、一つの膨張化黒鉛粒子でもよく、複数の膨張化黒鉛粒子が一体化した集合粒子でもよい。第二複合粒子を構成する膨張黒鉛粒子は、一つの膨張黒鉛粒子でもよく、複数の膨張黒鉛粒子が一体化した集合粒子でもよい。また、複合粒子は、膨張化黒鉛粒子と膨張黒鉛粒子とが一体化した粒子の表面に磁性粒子が接着された形態、他の黒鉛粒子や金属粒子などの表面に磁性粒子が接着された形態など、第一複合粒子および第二複合粒子以外の形態の粒子を含んでもよい。
【0029】
複合粒子の含有量は、熱伝導性および難燃性、ポリウレタンフォームの発泡反応に対する影響、成形性などを考慮して決定すればよい。所望の熱伝導性および難燃性を実現するためには、複合粒子の含有量を、ウレタン発泡成形体の体積を100体積%とした場合の5体積%以上とすることが望ましい。10体積%以上とするとより好適である。他方、発泡反応を阻害しないようにするという観点においては、複合粒子の含有量を、50体積%以下とすることが望ましい。20体積%以下とするとより好適である。
【0030】
また、基材中の膨張化黒鉛粒子および膨張黒鉛粒子の合計質量を100質量%とした場合、膨張化黒鉛粒子の含有量を20質量%以上80質量%以下にする。膨張化黒鉛粒子の含有量が20質量%未満の場合には、熱伝導率の向上効果が小さい。30質量%以上がより好適である。反対に、膨張化黒鉛粒子の含有量が80質量%より多くなると、難燃性が低下する。60質量%以下がより好適である。
【0031】
第一複合粒子を構成する膨張化黒鉛粒子は、膨張黒鉛を加熱して膨張させた後、シート状に成形したものを粉砕するなどして製造すればよい。膨張化黒鉛粒子は、複数のグラフェンが積層した多層構造を有する。熱伝導率の向上効果を高めるという観点から、膨張化黒鉛粒子の純度(炭素成分の含有割合)は、99%以上であることが望ましい。膨張化黒鉛粒子の熱伝導率は、200W/m・K以上であることが望ましい。
【0032】
膨張化黒鉛粒子の形状は、薄片状、繊維状、球状など特に限定されない。膨張化黒鉛粒子の平均粒子径は、熱伝導率を大きくするという観点から、100μm以上であることが望ましい。700μm以上であるとより好適である。他方、膨張化黒鉛粒子が大き過ぎると、それを起点としてクラックが入るなどして成形体が脆くなるおそれがある。よって、膨張化黒鉛粒子の平均粒子径は、3000μm以下であることが望ましい。2000μm以下であるとより好適である。本明細書における平均粒子径としては、特に明記しない限り、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の粒度分布から求められるメジアン径(D50)が採用される。なお、市販品についてはカタログ値を採用してもよい。
【0033】
第二複合粒子を構成する膨張黒鉛粒子は、鱗片状の黒鉛の層間に、酸処理などにより、加熱によりガスを発生する物質が挿入されたものである。膨張黒鉛粒子に熱が加わると、発生したガスにより、層間が広がると共に、熱や化学品に対して安定した層が形成される。この安定層が断熱層となり、熱の移動を妨げることにより、難燃効果がもたらされる。膨張黒鉛粒子としては、膨張開始温度や膨張率などを考慮して、適宜選択すればよい。膨張開始温度は、ウレタン発泡成形体の成形時の発熱温度よりも高くなければならないため、例えば、膨張開始温度が150℃以上の膨張黒鉛粒子が好適である。
【0034】
膨張黒鉛粒子の形状は、薄片状、繊維状、球状など特に限定されない。膨張黒鉛粒子の平均粒子径は、ポリウレタンフォームにおける分散性を考慮すると、100μm以上であることが望ましい。700μm以上であるとより好適である。他方、膨張化黒鉛粒子の場合と同様に、膨張黒鉛粒子が大き過ぎると、それを起点としてクラックが入るなどして成形体が脆くなるおそれがある。よって、膨張黒鉛粒子の平均粒子径は、3000μm以下であることが望ましい。2000μm以下であるとより好適である。膨張黒鉛粒子の大きさと膨張化黒鉛粒子の大きさとが同程度である場合には、複合粒子の造粒をまとめて行うことができるなどの利点がある。
【0035】
第一複合粒子、第二複合粒子において、核となる膨張化黒鉛粒子または膨張黒鉛粒子(これらの一方または両方の総称として「核粒子」と称する場合がある。)の表面に接着される磁性粒子は、同じでも異なってもよい。磁性粒子は、複合粒子を配向させることができればよく、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、ステンレス鋼、マグネタイト、マグヘマイト、マンガン亜鉛フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライトなどの強磁性体、MnO、Cr、FeCl、MnAsなどの反強磁性体、およびこれらを用いた合金類の粒子が好適である。なかでも、微細な粒子として入手しやすく、飽和磁化が高いという観点から、鉄、ニッケル、コバルト、およびこれらの鉄系合金(ステンレス鋼を含む)が好適である。特に鉄は、比較的安価で入手しやすいため、製造コストを削減することができ、大量生産するのに好適である。
【0036】
磁性粒子は、核粒子の表面に直接接着されてもよく、後述する絶縁性無機粒子などの他の粒子を介して間接的に接着されてもよい。また、磁性粒子は、核粒子の表面の一部のみに接着されてもよく、表面全体を被覆するように接着されてもよい。磁性粒子の大きさは、核粒子の大きさ、複合粒子の配向性、および複合粒子間の熱伝導性などを考慮して、適宜決定すればよい。例えば、磁性粒子の粒子径は、核粒子の粒子径の1/10以下であることが望ましい。磁性粒子の大きさが小さくなると、磁性粒子の飽和磁化が低下する傾向がある。したがって、より少量の磁性粒子により複合粒子を配向させるためには、磁性粒子の平均粒子径を100nm以上とすることが望ましい。1μm以上、さらには5μm以上とするとより好適である。
【0037】
磁性粒子の形状は、特に限定されるものではない。例えば、磁性粒子の形状が扁平の場合には、球状の場合と比較して、隣接する核粒子間の距離が短くなる。これにより、隣接する複合粒子間における熱伝導性が向上する。結果、ウレタン発泡成形体の熱伝導性が向上する。また、磁性粒子の形状が扁平の場合には、磁性粒子と核粒子とが面で接触する。つまり、両者の接触面積が大きくなる。これにより、磁性粒子と核粒子との接着力が向上する。よって、磁性粒子が剥離しにくくなる。加えて、磁性粒子と核粒子との間の熱伝導性も向上する。このような理由から、磁性粒子としては、薄片状の粒子を採用することが望ましい。
【0038】
磁性粒子の含有量は、複合粒子を比較的低磁場中でも配向させることができるという観点から、基材中の膨張化黒鉛粒子および膨張黒鉛粒子の合計質量を100質量%とした場合の20質量%以上であることが望ましい。また、コスト削減や軽量化を図るという観点から、磁性粒子の含有量は130質量%以下であることが望ましい。100質量%以下、さらには80質量%以下であるとより好適である。本開示のウレタン発泡成形体においては、第一複合粒子として熱伝導率が大きい膨張化黒鉛粒子が含有されるため、磁性粒子の含有量を少なくしても熱伝導性は低下しにくい。
【0039】
第一複合粒子、第二複合粒子において、核粒子と磁性粒子とを接着するバインダーは、接着性、発泡成形への影響などを考慮して、適宜選択すればよい。発泡成形への影響が少なく、環境にも優しいという理由から、水溶性高分子が好適である。例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンなどが挙げられる。なかでも、デンプンは、比較的安価であり、粘着性が高く造粒性に優れるため好適である。第一複合粒子のバインダーと第二複合粒子のバインダーとは、同じでも異なってもよい。
【0040】
膨張化黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子、磁性粒子は導電性を有する。このため、第一複合粒子、第二複合粒子が連なって配向することにより、基材中に導通経路が形成される。例えば、核粒子の表面に、磁性粒子に加えて絶縁性無機粒子をバインダーにより接着して、複合粒子を構成することができる。こうすることにより、複合粒子が配向しても、隣接する複合粒子間の電気抵抗を大きくしたり、導通を遮断したりすることができる。結果、ウレタン発泡成形体に電気絶縁性を付与することができる。第一複合粒子および第二複合粒子の少なくとも一方が絶縁性無機粒子を有する本開示のウレタン発泡成形体は、電子機器における放熱部材など、電気絶縁性が要求される用途に好適である。
【0041】
絶縁性無機粒子は、絶縁性を有する無機材料の粒子であればよい。なかでも、複合粒子間の熱伝導性を阻害しないという観点から、熱伝導率が比較的大きいものが望ましい。例えば、絶縁性無機粒子の熱伝導率が5W/m・K以上であると好適である。熱伝導率が5W/m・K以上の絶縁性無機材料としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカなどが挙げられる。これらの一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、タルク、マイカは薄片状を呈しており被覆性に優れるため好適である。
【0042】
絶縁性無機粒子は、核粒子の表面に直接接着されてもよく、磁性粒子を介して間接的に接着されてもよい。また、絶縁性無機粒子は、核粒子の表面の一部のみに接着されてもよく、表面全体を被覆するように接着されてもよい。複合粒子間の電気抵抗を大きくして、ウレタン発泡成形体の電気絶縁性を高めるという観点から、絶縁性無機粒子は、複合粒子の最表層に配置されることが望ましい。核粒子に磁性粒子を接着するバインダーと、絶縁性無機粒子を接着するバインダーと、は同じでも異なってもよい。
【0043】
絶縁性無機粒子の大きさは、核粒子および磁性粒子に対する接着性、複合粒子間の電気絶縁性および熱伝導性を考慮して、適宜決定すればよい。絶縁性無機粒子が大きすぎると、接着性や複合粒子間の熱伝導性が低下する。例えば、絶縁性無機粒子の粒子径は、核粒子の粒子径の1/100以上1/10以下であることが望ましい。絶縁性無機粒子の形状は、特に限定されるものではない。例えば、絶縁性無機粒子の形状が扁平の場合には、球状の場合と比較して、隣接する核粒子間の距離を短くすることができる。よって、隣接する複合粒子間の熱伝導性を阻害しにくい。また、接触面積が大きくなることにより、絶縁性無機粒子が剥離しにくくなる。
【0044】
絶縁性無機粒子は、複合粒子の一部としてではなく、単に基材中に分散されていてもよいし、複合粒子を構成し、さらに基材中に分散されていてもよい。基材中に分散される絶縁性無機粒子は、複合粒子の構成粒子として加えられる絶縁性無機粒子と同じでも、異なってもよい。また、基材中に分散される絶縁性無機粒子は、一種でも二種以上でもよい。基材中に分散される絶縁性無機粒子についても、熱伝導率が比較的大きいものが望ましく、前述した水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカなどが好適である。基材中に絶縁性無機粒子を分散させると、複合粒子間に絶縁性無機粒子が入り込み、複合粒子同士が導通しにくくなる。したがって、ウレタン発泡成形体の電気絶縁性が向上する。また、絶縁性無機粒子の熱伝導率が比較的大きい場合には、複合粒子による熱の伝達経路に加えて、絶縁性無機粒子による熱の伝達経路も形成される。これにより、ウレタン発泡成形体の熱伝導性がより向上する。また、絶縁性無機粒子が難燃性を有する場合には、ウレタン発泡成形体の難燃性が向上する。
【0045】
<ウレタン発泡成形体の製造方法>
本開示のウレタン発泡成形体の製造方法は特に限定されない。好適な製造方法の一形態として、本開示のウレタン発泡成形体の製造方法は、複合粒子製造工程と、混合原料製造工程と、発泡成形工程と、を有する。以下、各工程について説明する。
【0046】
[複合粒子製造工程]
本工程は、核となる粒子の粉末、磁性粒子の粉末、バインダー、および水を有する造粒原料を撹拌して複合粒子を製造する工程である。複合粒子については、膨張化黒鉛粒子を有する第一複合粒子と、膨張黒鉛粒子を有する第二複合粒子と、をまとめて製造してもよく、別々に製造してもよい。膨張化黒鉛粉末と膨張黒鉛粉末とは比重が近く、造粒性に大きな差がないため、第一複合粒子と第二複合粒子とをまとめて製造することができ、これにより生産性が向上する。
【0047】
二種類の複合粒子をまとめて製造する場合には、膨張化黒鉛粉末および膨張黒鉛粉末の両方を、水などの他の原料と共に撹拌すればよい。この場合、造粒性を考慮して、膨張化黒鉛粉末の平均粒子径と、膨張黒鉛粉末の平均粒子径と、の差を小さくするとよい。また、膨張化黒鉛粉末の配合量を、膨張化黒鉛粉末および膨張黒鉛粉末の合計質量を100質量%とした場合の20質量%以上80質量%以下にするとよい。他方、二種類の複合粒子を別々に製造する場合には、膨張化黒鉛粉末を水などの他の原料と共に撹拌して第一複合粒子を製造し、膨張黒鉛粉末を水などの他の原料と共に撹拌して第二複合粒子を製造すればよい。複合粒子の製造は、高速撹拌型混合造粒機などを用いて行うことができる。核となる粒子の粉末に対する、磁性粒子の粉末、バインダー、水の配合量については、造粒性、複合粒子の磁場配向性などを考慮して、適宜調整すればよい。
【0048】
磁性粒子の粉末の配合量は、複合粒子の磁場配向性を考慮すると、核となる粒子の粉末100質量部に対して20質量部以上にすることが望ましい。他方、コストおよび軽量化を考慮すると、130質量部以下にすることが望ましい。100質量部以下、さらには80質量部以下にするとより好適である。バインダーの配合量は、粒子の接着に必要十分な量として、接着対象の粉末の合計質量を100質量%とした場合の2質量%以上にすることが望ましい。他方、バインダーが過剰になると、複合粒子同士が凝集するおそれがある。このため、バインダーの配合量は、10質量%以下にすることが望ましい。5質量%以下にするとより好適である。バインダーは固体でも液体でもよい。バインダーとして水溶性の粉末を用いる場合、予め、バインダーと他の粉末原料とを撹拌した後に、水を添加するとよい。こうすることにより、粒子の凝集を抑制することができる。
【0049】
複合粒子の構成粒子として絶縁性無機粒子を加える場合には、造粒原料に絶縁性無機粒子の粉末を含めればよい。絶縁性無機粒子を、複合粒子の最表層に配置する場合には、本工程を、核となる粒子の粉末、磁性粒子の粉末、バインダー、および水を有する第一原料を撹拌する第一撹拌工程と、該第一原料の撹拌物に、絶縁性無機粒子の粉末を添加して、さらに撹拌する第二撹拌工程と、を有する構成としてもよい。
【0050】
[混合原料製造工程]
本工程は、先の工程において製造された複合粒子(第一複合粒子、第二複合粒子を含む)の粉末と、発泡ウレタン樹脂原料と、を混合して混合原料を製造する工程である。
【0051】
発泡ウレタン樹脂原料については、前述したように、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤、整泡剤などの原料から調製すればよい。本開示のウレタン発泡成形体においては、基材中に、複合粒子とは別に、絶縁性無機粒子が分散されていてもよい。この形態のウレタン発泡成形体を製造する場合には、複合粒子の粉末および絶縁性無機粒子の粉末と発泡ウレタン樹脂原料とを混合すればよい。混合原料は、例えば、複合粒子の粉末と発泡ウレタン樹脂原料とを、撹拌羽根などを用いて機械的に撹拌して製造することができる。また、発泡ウレタン樹脂原料の二つの成分(ポリオール原料、ポリイソシアネート原料)の少なくとも一方に、複合粒子の粉末を添加して、二種類の原料を調製した後、両原料を混合して製造してもよい。
【0052】
[発泡成形工程]
本工程は、先の工程において製造された混合原料を発泡型のキャビティ内に注入し、該キャビティ内の磁束密度が略均一になるように磁場をかけながら発泡成形する工程である。
【0053】
磁場は、複合粒子を配向させる方向に形成すればよい。例えば、複合粒子を直線状に配向させる場合、発泡型のキャビティ内の磁力線が、キャビティの一端から他端に向かって略平行になるよう形成することが望ましい。このような磁場を形成するためには、例えば発泡型を挟むように、発泡型の一端および他端の両面近傍に磁石を配置すればよい。磁石には、永久磁石または電磁石を用いればよい。電磁石を用いると、磁場形成のオン、オフを瞬時に切り替えることができ、磁場の強さの制御が容易である。よって、発泡成形を制御しやすい。また、磁場を構成する磁力線は閉ループを形成していることが望ましい。こうすることで、磁力線の漏洩が抑制され、キャビティ内に安定した磁場を形成することができる。
【0054】
本工程において、磁場は、キャビティ内の磁束密度が略均一になるように形成される。例えば、キャビティ内の磁束密度の差が、±10%以内であるとよい。±5%以内、さらには±3%以内であるとより好適である。発泡型のキャビティ内に一様な磁場を形成することで、複合粒子の偏在を抑制することができ、所望の配向状態を得ることができる。また、発泡成形は、150mT以上350mT以下の磁束密度で行うとよい。こうすることで、混合原料中の複合粒子を、確実に配向させることができる。磁場は、発泡ウレタン樹脂原料の粘度が比較的低い間にかけられることが望ましい。発泡ウレタン樹脂原料が増粘し、発泡成形がある程度終了した時に磁場をかけると、複合粒子が配向しにくいため、所望の熱伝導性を得ることが難しい。なお、発泡成形を行う時間の全てにおいて磁場をかける必要はない。
【0055】
本工程にて発泡成形が終了した後、脱型して、本開示のウレタン発泡成形体を得る。この際、発泡成形の仕方により、ウレタン発泡成形体の一端および他端の少なくとも一方に、表皮層が形成される。当該表皮層は、用途に応じて切除してもよい(勿論切除しなくてもよい)。
【実施例0056】
次に、実施例を挙げて本開示をより具体的に説明する。
【0057】
<複合粒子の製造>
まず、次のようにして、A~Hの八種類の複合粒子を製造した(複合粒子製造工程)。複合粒子B~Gにおいては、膨張化黒鉛粉末および膨張黒鉛粉末の両方を一緒に撹拌し、第一、第二の二種類の複合粒子をまとめて製造した。
【0058】
[複合粒子A]
膨張黒鉛粉末、ステンレス鋼粉末、デンプン粉末、タルク粉末、および水を有する造粒原料を撹拌して、第二複合粒子としての複合粒子Aを製造した。まず、膨張黒鉛粉末、ステンレス鋼粉末、およびデンプン粉末を高速撹拌型混合造粒機の容器内へ投入して羽根撹拌により混合し、さらに水を添加して1分間混合した。次に、タルク粉末を投入して、さらに4分間混合した。撹拌速度は400rpmとした。得られた粉末を乾燥して、複合粒子Aの粉末とした。使用した材料の詳細は以下の(a)~(d)にまとめて示し、配合量については後出の表1に示す(以下の複合粒子B~Hについても同じ)。
【0059】
[複合粒子B~G]
造粒原料として膨張化黒鉛粉末を加えた点以外は、複合粒子Aの製造方法と同様の方法により、複合粒子B~Gを製造した。複合粒子B~Gは、膨張化黒鉛粉末と膨張黒鉛粉末との配合割合を変更して製造されており、複合粒子B~Gには、第一複合粒子および第二複合粒子の両方が含まれる。
【0060】
[複合粒子H]
膨張黒鉛粉末に代えて膨張化黒鉛粉末を用いた点以外は、複合粒子Aの製造方法と同様の方法により、第一複合粒子としての複合粒子Hを製造した。
【0061】
(a)核粒子
膨張黒鉛粉末:石家荘愛迪特貿易有限公司製「SYZR 502FP」、粒度300μm~:80%以上。
膨張化黒鉛粉末:富士黒鉛工業(株)製「AED-01」、純度99%以上、粒度1000μm~:80%以上。
(b)磁性粒子
ステンレス鋼粉末:三菱製鋼(株)製「AKT」、平均粒子径8.5~13.0μm。
(c)バインダー
デンプン粉末:日本コーンスターチ(株)製「インスタントテンダージェルC」。
(d)絶縁性無機粒子
タルク粉末:日本タルク(株)製「ミクロエース(登録商標)K-1」、平均粒子径8μm。
【0062】
【表1】
【0063】
<ウレタン発泡成形体の製造>
製造した複合粒子A~Hを用いて、ウレタン発泡成形体を製造した。まず、ポリエーテルポリオール(住化コベストロウレタン(株)製「SBU(登録商標)ポリオール0248」)100質量部と、鎖延長剤のジエチレングリコール(三菱化学(株)製)2質量部と、発泡剤の水2質量部と、テトラエチレンジアミン系触媒(花王(株)製「カオーライザー(登録商標)No.31」)1.5質量部と、シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング(株)製「SZ-1333」)0.5質量部と、を混合して、ポリオール原料を調製した。また、ポリイソシアネート原料として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)変性物を準備した。MDI変性物は、ポリエーテルポリオール(同上)と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー(株)製「ミリオネートMT」)と、をイソシアネート(NCO)含有量が70質量%となるように混合し、窒素パージ下、100℃にて180分間反応させて製造した。次に、ポリオール原料100質量部に、複合粒子80質量部と、絶縁性無機粒子としての水酸化アルミニウム粉末(日本軽金属(株)製「SB93」)60質量部と、を添加、混合して、プレミックスポリオールを調製した。続いて、プレミックスポリオール100質量部と、ポリイソシアネート原料(MDI変性物)10質量部と、を混合して、混合原料とした(混合原料製造工程)。
【0064】
それから、混合原料を、アルミニウム製の発泡型(キャビティは縦130mm×横130mm×厚さ5mmの直方体)に注入し、発泡型を密閉した。そして、発泡型を磁気誘導発泡成形装置に設置して、発泡成形を行った。発泡型のキャビティ内には、上方から下方に向かって略平行な磁力線により一様な磁場が形成される。キャビティ内の磁束密度は200mT、キャビティ内における磁束密度の差は±3%以内である。発泡成形は、最初の2分間は磁場をかけながら行い、続く約5分間は磁場をかけないで行った(発泡成形工程)。発泡成形が終了した後、脱型して、ウレタン発泡成形体を得た。得られたウレタン発泡成形体を、使用した複合粒子の種類に対応させてウレタン発泡成形体A~Hと称す。ウレタン発泡成形体A~Hにおける複合粒子の含有量は、ウレタン発泡成形体の体積を100体積%とした場合の10体積%である。ウレタン発泡成形体C~Fは、本開示のウレタン発泡成形体の概念に含まれる。
【0065】
<ウレタン発泡成形体の評価>
製造したウレタン発泡成形体の熱伝導性および難燃性を評価した。前出の表1に、熱伝導性および難燃性の評価結果をまとめて示す。評価方法は次のとおりである。
【0066】
[熱伝導性]
ウレタン発泡成形体の熱伝導率を、JIS A1412-2:1999の熱流計法に準拠した英弘精機(株)製「HC-110」を用いて測定した。
【0067】
[難燃性]
UL94規格の垂直燃焼試験を実施した。垂直燃焼試験においては、垂直に保持した試料の下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させて、次の五つの基準を全て満足する場合にV-0レベルと判定される。(1)二回の接炎のいずれにおいても試料が10秒より長く燃焼しない。(2)五つの試料に対する各々二回の接炎による合計の燃焼時間が50秒を超えない。(3)固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。(4)試料の下方に置かれた綿を発火させる、燃焼する粒子を滴下させる試料がない。(5)二回目の接炎の後、試料が30秒より長く赤熱を続けない。
【0068】
表1に示すように、ウレタン発泡成形体C~Fにおいては、第一複合粒子および第二複合粒子の両方を含む複合粒子C~Fを有し、かつ膨張化黒鉛粒子の含有量が、膨張化黒鉛粒子および膨張黒鉛粒子の合計質量を100質量%とした場合の20質量%以上80質量%以下である。よって、ウレタン発泡成形体C~Fの熱伝導率は0.65W/m・K以上、難燃性はV-0であり、ウレタン発泡成形体C~Fは、熱伝導性および難燃性の両方を満足することが確認された。これに対して、第二複合粒子しか含まない複合粒子Aを用いたウレタン発泡成形体A、膨張化黒鉛粒子の含有量が少ないウレタン発泡成形体Bについては、難燃性は満足するものの熱伝導性が劣る結果になった。また、第一複合粒子しか含まない複合粒子Hを用いたウレタン発泡成形体H、膨張化黒鉛粒子の含有量が多いウレタン発泡成形体Gについては、熱伝導性は満足するものの難燃性が劣る結果になった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示のウレタン発泡成形体は、電動パワートレインのインバータ、モータ、ギアボックスや、エンジンのシリンダヘッド、シリンダヘッドカバーなどの車両用部品、パソコンなどの電子機器に用いられる防音材として好適である。