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特開2024-144867メタンガスの低減方法および反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減のための飼料原体
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  • 特開-メタンガスの低減方法および反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減のための飼料原体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144867
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】メタンガスの低減方法および反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減のための飼料原体
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/37 20160101AFI20241004BHJP
   A23K 50/10 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
A23K10/37
A23K50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057018
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】関口 泰司
(72)【発明者】
【氏名】上野 豊
(72)【発明者】
【氏名】江口 典睦
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005BA03
2B150AA02
2B150AB12
2B150AB20
2B150CA06
2B150DD44
2B150DD56
(57)【要約】
【課題】メタンガス低減効果に優れるメタンガスの低減方法および反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減のための飼料原体の提供。
【解決手段】紅茶粕を含む飼料を反芻動物に給与する、メタンガスの低減方法。紅茶粕からなる、反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減のための飼料原体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅茶粕を含む飼料を反芻動物に給与する、メタンガスの低減方法。
【請求項2】
前記飼料を、分離給与方式、TMR給与方式またはPMR給与方式により給与する請求項1に記載の低減方法。
【請求項3】
前記飼料の乾燥質量に対する前記紅茶粕の乾燥質量の割合が、0.1質量%以上5.0質量%以下である請求項1に記載の低減方法。
【請求項4】
前記反芻動物が、泌乳牛である請求項1に記載の低減方法。
【請求項5】
紅茶粕からなる、反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減用飼料原体。
【請求項6】
前記紅茶粕が、紅茶葉から紅茶を抽出した後の残渣の乾燥物または乾燥粉砕物である請求項5に記載の飼料原体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンガスの低減方法および反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減のための飼料原体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば食品・外食産業から、大量の食品残渣が廃棄されている。その食品残渣の多くは、焼却または埋め立て処理されているのが現状である。
食品残渣の一つにコーヒー豆粕がある。コーヒー豆粕は、水分および繊維質の含有量が高いため、そのまま焼却処理をするのが困難であった。そこで、コーヒー豆粕を有用な資源として再利用する試みが行われている。
【0003】
特許文献1には、未発酵のコーヒー豆粕を含む飼料を反芻動物に給与することにより、反芻動物の消化時に生成するメタンガスを低減する方法が開示されている。
メタンガスは、二酸化炭素の25倍以上の温室効果を持っているとされ、大気中のメタンガスの20~30%が、反芻動物のげっぷによるものだといわれている。したがって、反芻動物の消化管から発生するメタンガスを低減することは、地球温暖化の抑制に有用と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/215719号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法によるメタンガス低減効果は必ずしも充分ではない。
本発明は、メタンガス低減効果に優れるメタンガスの低減方法および反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減のための飼料原体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]紅茶粕を含む飼料を反芻動物に給与する、メタンガスの低減方法。
[2]前記飼料を、分離給与方式、TMR給与方式またはPMR給与方式により給与する[1]に記載の低減方法。
[3]前記飼料の乾燥質量に対する前記紅茶粕の乾燥質量の割合が、0.1質量%以上5.0質量%以下である[1]または[2]に記載の低減方法。
[4]前記反芻動物が、泌乳牛である[1]~[3]のいずれかに記載の低減方法。
[5]紅茶粕からなる、反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減用飼料原体。
[6]前記紅茶粕が、紅茶葉から紅茶を抽出した後の残渣の乾燥物または乾燥粉砕物である[5]に記載の飼料原体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メタンガス低減効果に優れるメタンガスの低減方法および反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減のための飼料原体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】試験例2の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係るメタンガスの低減方法においては、紅茶粕を含む飼料を反芻動物に給与する。
【0010】
(紅茶粕)
「紅茶粕」は、紅茶葉から紅茶を抽出した後の残渣(以下、「抽出残渣」とも記す。)、その乾燥物および乾燥粉砕物の総称である。
紅茶粕は、反芻動物に給与される飼料に飼料原体として配合され、反芻動物の消化管から発生するメタンガスの低減に寄与する。
紅茶粕としては、運搬しやすさ、保存性の点から、抽出残渣の乾燥物または乾燥粉砕物が好ましく、他の飼料原体との混合のしやすさ、反芻動物による摂取のしやすさの点から、乾燥粉砕物がより好ましい。
【0011】
「紅茶」は、充分に発酵された茶を意味する。「発酵」は、ある種の内因性酵素と基質が合わさった際に茶が経る、酸化および加水分解プロセスを意味する。いわゆる発酵プロセスの間に、チャノキ(カメリアシネンシス)の葉および/または茎中の無色のカテキンは、黄色/橙色から暗褐色のポリフェノール性物質の複合混合物に変質する。紅茶葉は、例えば、生茶原料から、萎凋、浸軟、発酵および乾燥の工程によって製造することができる。なお、緑茶は、発酵工程を経ずに製造され、ウーロン茶等の半発酵茶は、発酵工程の途中で発酵を止める部分発酵により製造される。
【0012】
抽出残渣は、紅茶飲料等の紅茶製品の製造・加工・調理等の工程で副次的に発生する。紅茶製品の消費量は多く、抽出残渣も大量に発生するが、現在、その多くは焼却または産業廃棄物として処分されている。
本実施形態で使用する紅茶粕は、紅茶製品の製造工場等から入手できる。
紅茶製品の製造工場等から抽出残渣を入手し、抽出残渣に乾燥、粉砕等の処理を施したものを紅茶粕として使用することもできる。乾燥の前に抽出残渣を脱水してもよい。脱水は、例えばプレス装置等の公知の脱水方法により実施できる。乾燥は、風乾、加熱等の公知の乾燥方法により実施できる。乾燥は、得られる乾燥物や乾燥粉砕物の水分量が4~12質量%、さらには4~10質量%となるように行うことが好ましい。粉砕は、公知の粉砕方法により実施できる。
【0013】
紅茶粕中のタンニンの含有量は、乾物換算で、例えば1.0~6.0%、さらには3.0~4.0%である。タンニンの含有量は、フォーリン・デニス法により測定される。
紅茶粕中の粗蛋白質の含有量は、乾物換算で、例えば21.0~30.0%、さらには23.0~28.0%である。粗蛋白質の含有量は、燃焼法により測定される。
紅茶粕中の粗脂肪の含有量は、乾物換算で、例えば0.6~1.5%、さらには0.8~1.3%である。粗脂肪の含有量は、ソックスレー法により測定される。
紅茶粕中の粗繊維の含有量は、乾物換算で、例えば11.0~19.0%、さらには13.0~17.0%である。粗繊維の含有量は、濾過法により測定される。
紅茶粕中のNDF(中性デタージェント繊維)の含有量は、乾物換算で、例えば45.0~53.0%、さらには47.0~51.0%である。NDFの含有量は、AOAC法により測定される。
紅茶粕中のADF(酸性デタージェント繊維)の含有量は、乾物換算で、例えば22.0~30.0%、さらには24.0~28.0%である。NDFの含有量は、AOAC法により測定される。
【0014】
(飼料)
飼料は、上述の紅茶粕を飼料原体として含む。
「飼料原体」とは、飼料に配合される原料である。飼料には通常、複数種の飼料原体が配合される。
紅茶粕の含有量は、飼料の乾燥質量に対する紅茶粕の乾燥質量の割合として、0.1質量%以上が好ましく、0.25質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、0.75質量%以上が特に好ましく、また、5.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が特に好ましい。紅茶粕の含有量が上記下限値以上であると、メタンガス低減効果が発現しやすい。紅茶粕の含有量が上記上限値以下であると、反芻動物が飼料を忌避することによる摂食量の低下を抑制できる。
【0015】
飼料は、典型的には、紅茶粕に加えて、粗飼料および濃厚飼料のいずれか一方または両方を含む。
【0016】
粗飼料としては、反芻動物用の粗飼料として公知のものであってよく、例えばワラ類、乾草類、生草類、青刈作物、サイレージ等が挙げられる。
飼料の乾燥質量に対する粗飼料の乾燥質量の割合は、40~70質量%が好ましく、45~55質量%がより好ましい。
【0017】
濃厚飼料としては、反芻動物用の濃厚飼料として公知のものであってよく、例えば穀類(トウモロコシ、米、こうりゃん、大麦等)、糠類(フスマ、米ヌカ等)、粕類(大豆油粕、ビートパルプ、ビール・豆腐粕等)等が挙げられる。
飼料の乾燥質量に対する濃厚飼料の乾燥質量の割合は、30~60質量%が好ましく、45~55質量%がより好ましい。
【0018】
飼料は、飼料添加物をさらに含んでいてもよい。
飼料添加物としては、反芻動物用の飼料添加物として公知のものであってよく、例えばビタミン、ミネラル、乾燥酵母等が挙げられる。
飼料の乾燥質量に対する飼料添加物の乾燥質量の割合は、0.5~3.0質量%が好ましく、1.0~2.0質量%がより好ましい。
【0019】
飼料は通常、分離給与方式で給与される場合やサイレージなど高水分の飼料によって水分含有率が適度に調整されている場合を除き、TMR給与方式またはPMR給与方式など混合過程を経て反芻動物に給与する際に、加水される。加水後の飼料の水分含有率は55質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。加水された飼料は発熱しやすく、加水後の水分が上限を超えると変敗しやすい。加水前の飼料の形態は特に制限はなく、例えば粉末状、キューブ状、ペレット状、シート状等であってよい。加水後の混合は、TMRミキサー等の公知の混合手段を用いて実施できる。
飼料の物理性(例えば牧草の切断長や、サイレージの切断長など)は、反芻動物の反芻時間に影響する。分離給与方式を採用せず、飼料を加水および混合過程を経て反芻動物に給与する場合は、混合の際に物理性を損なわないような短い時間で混合することが望ましい。混合時間は20分以下が好ましく、さらに10分以下が好ましく、5分以下が特に好ましい。この時間で混合できない場合には、TMRミキサーの容量や攪拌能力に見合った混合にするか、TMRミキサーの能力向上を検討することが好ましい。
【0020】
飼料の製造方法に特に制限は無く、反芻動物の飼料の製造に用いられている公知の方法を適用できる。例えば、紅茶粕からなる飼料原体と、粗飼料および濃厚飼料のいずれか一方または両方と、必要に応じて飼料添加物を混合し(混合工程)、必要に応じて任意の形状に成形する(成形工程)ことで、目的の飼料が得られる。
混合工程において、紅茶粕からなる飼料原体と、紅茶粕以外の飼料成分が予め配合された混合飼料とを混合してもよい。かかる混合飼料の例としては、TMR(Total Mixed Ration)、PMR(Partly Mixed Ration)等が挙げられる。TMRは、粗飼料と濃厚飼料(配合飼料や単飼料)とが配合された飼料である。PMRは、TMRから濃厚飼料を減らした飼料である。PMRが給与される場合、通常、PMRとは別に、搾乳ロボットなどにより濃厚飼料が給与される。
【0021】
(反芻動物)
反芻動物は、胃を4個持っており、摂取した粗飼料等の消化を、時間をかけて何度も繰り返す。その消化の過程でメタンガスが生成し、げっぷとして大気中に放出される。
反芻動物としては、例えば牛、水牛、バイソン、山羊、めん羊、キリン、ラクダ等が挙げられる。
【0022】
反芻動物としては、メタンガス産生の原因ともなっている粗飼料を多く摂取する点で、泌乳牛が好ましい。
泌乳牛のなかでも、メタンガス低減効果が得られ易い点で、泌乳最盛期から中期90日前後の泌乳牛が好ましい。
【0023】
(飼料の給与)
飼料の給与方法は、公知の給与方法と同様であってよい。例えば、飼料と水とを混ぜ合わせ、得られた混合物を飼槽に給与すればよい。飼料の1日当たりの給与量は、飼料の乾燥質量換算で、例えば12~25kg/頭である。
給与された紅茶粕を含む飼料を泌乳牛が確実に摂取する点から、分離給与方式、TMR給与方式またはPMR給与方式で飼料を給与することが好ましい。これらの給与方式は牛舎構造や飼養管理の方法に合わせて適宜選定し得る。
分離給与方式は、繋ぎ飼いなどで泌乳牛の飼料摂取量をコントロールできるときに適する方式である。泌乳牛は飼料の匂いや味で好みを選り分ける特性があることから、分離給与方式の場合には選び食いなどで目的の飼料を食い残したり、横に並んでいる泌乳牛から盗食されたりしないよう注意が必要である。そのため、分離給与方式で飼料を給与するには、配合飼料などの濃厚飼料に紅茶粕からなる飼料原体が予め混合されていることが好ましい。
TMR給与方式は、給与対象の反芻動物が必要とするすべての飼料成分の栄養水準が均一に保たれた混合飼料を不断給与する方式である。TMR給与方式の場合、飼料として、紅茶粕からなる飼料原体とTMRとが混合された飼料を飼槽に給与する。
PMR給与方式は、搾乳ロボットや飼料フィーダーなどで濃厚飼料が別途給与されるときに採用する方式である。PMR給与方式の場合、飼料として、紅茶粕からなる飼料原体とPMRとが混合された飼料を飼槽に給与する。
紅茶粕からなる飼料原体がそのまま、配合飼料などに予め混合されずに単体飼料として使用される場合には、混合量が微量である紅茶粕が飼料中に均一に混合されて泌乳牛に給与される点から、TMR給与方式、またはPMR給与方式が好ましい。
【0024】
(作用効果)
以上説明したメタンガスの低減方法によれば、反芻動物の消化管から発生するメタンガスを効果的に低減でき、メタンガス低減効果に優れる。
また、紅茶粕は、紅茶製品の製造工場等で大量に発生するが、現在、その多くは焼却または産業廃棄物として処分されている。本実施形態のメタンガスの低減方法によれば、紅茶粕を有効利用でき、環境負荷の低減を図ることもできる。
【実施例0025】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
(試験例1)
本試験は、紅茶粕およびコーヒー豆粕のメタンガス発生抑制効果を予備的に評価する目的で実施した。
【0027】
<飼料原体>
以下の3種の飼料原体を用意した。
・対照の飼料原体:泌乳牛に給与されている慣行のPMR。以下、「通常飼料」とも記す。通常飼料としては、濃厚飼料(配合飼料・単体飼料)12.0質量部、デントコーンサイレージ33.0質量部、牧草サイレージ9.0質量部、飼料添加物(カルシウム等)0.6質量部の混合物(合計54.6質量部、乾物換算で25.8質量部)を用いた。
・コーヒー豆粕:コーヒー豆からコーヒーを抽出した後の残渣を乾燥したもの。残渣は、コーヒー飲料の製造工場から排出されたものを使用した。
・紅茶粕:紅茶葉から紅茶を抽出した後の残渣を乾燥し、粉砕したもの。残渣は、紅茶飲料の製造工場から排出されたものを使用した。
紅茶粕の特性を以下に示す。数値は乾物換算である。[]内には分析方法を示した。
水分8.97%[熱風乾燥法]、粗蛋白質25.61%[燃焼法]、粗脂肪1.06%[ソックスレー法]、粗繊維15.25%[ファイバーテスト法]、粗灰分3.23%[強熱残量]、NDF49.27%[AOAC法]、ADF25.63%[AOAC法]、カルシウム0.57%[原子吸光光度法]、リン0.24%[吸光光度法]、タンニン3.54%[フォーリン・デニス法]。
【0028】
<試験方法>
各試料原体について、以下の手順で、泌乳牛のルーメンろ液を用いた培養法によってメタンガスの発生量を測定する試験を行った。
試料原体と、培養基質としてルーメンろ液とを分岐付き培養瓶に入れ、40℃保温されたウォーターバスで一定時間培養を行った。発生した気体をガスクロマトグラフィーにて分析した。
【0029】
<結果と考察>
結果を表1に示す。
対照の飼料原体を加えた場合、培養瓶のガス中メタンガス比率は、4時間の培養では18.1%、8時間の培養では19.6%であった。
コーヒー豆粕を加えた場合、培養瓶のガス中メタンガス比率は、4時間の培養では18.1%であり、対照の飼料原体を加えた場合と変わらなかった。8時間の培養では20.0%となり、対照の飼料原体を加えた場合よりもメタンガス発生量が多くなった。
紅茶粕を加えた場合、培養瓶のガス中メタンガス比率は、4時間の培養では14.1%であり、8時間の培養では16.7%であり、いずれの場合も、対照の飼料原体を加えた場合を下回った。
このように、上記予備試験においては、コーヒー豆粕ではメタンガスを低減する効果は認められなかったのに対し、紅茶粕では低減効果が認められた。
【0030】
【表1】
【0031】
(試験例2)
本試験は、泌乳牛に実際に紅茶粕を含む飼料を給与したときのメタンガス発生抑制効果を検証する目的で実施した。
【0032】
<紅茶粕入りPMR飼料の調製>
紅茶粕と、通常飼料(泌乳牛に給餌している慣行のPMR)とを混合して紅茶粕入りPMR飼料を調製した。紅茶粕および通常飼料はいずれも、試験例1で用いたものを使用した。紅茶粕の配合量(乾燥質量)は、最終的に得られる紅茶粕入りPMR飼料の乾燥質量に対して2.0質量%とした。
【0033】
<試験方法>
(1)通常飼料を給与されている100頭の搾乳牛(泌乳牛)のうち無作為に選択された50頭を第1群、残りの50頭を第2群とし、それぞれ無作為に選択された第1群の10頭、第2群の9頭をメタンガス測定の搾乳牛とした。第1群には、通常飼料の代わりに紅茶粕入りPMR飼料を給与し、第2群には通常飼料をそのまま給与した。給与期間は3週間とした。3週間の給与期間の開始前日、2週間後および最終日に、搾乳牛の胃液を経口採取してメタンガス生成力評価のための培養試験を行った。
(2)上記(1)の給与期間の最終日の翌日から、各群に給与する飼料を入れ替えてさらに3週間、各郡に飼料を給与した。すなわち、第1群には通常飼料を給与し、第2群には紅茶粕入りPMR飼料を給与した。3週間の給与期間の最終日に、搾乳牛の胃液を経口採取してメタンガス生成力評価のための培養試験を行った。
(3)上記(1)、(2)それぞれにおける紅茶粕入りPMR飼料の給与期間(給与期)および通常飼料の給与期間(対照期)について、下記式によりメタン発生量変化を算出した。また、第1群、第2群、19頭全頭それぞれにおけるメタン発生量変化の平均を算出した。
メタン発生量変化(%)={(B-A)/A}×100
ここで、Aは、給与期間の前日(上記(2)の場合は上記(1)の給与期間の最終日)のメタンガス生成力を示し、
Bは、給与期間の最終日のメタンガス生成力を示す。
【0034】
<結果と考察>
結果を図1に示す。図1中、縦軸はメタン発生量変化を示す。横軸の1から19の番号はそれぞれ、19頭の搾乳牛に対応する。1番から10番の搾乳牛は第1群、11番から10番の搾乳牛は第2群である。10番と11番の間の2つの「Av」のうち左側は第1群の平均であり、右側は第2群の平均である。
図1に示すように、19頭の平均のメタン発生量変化は、通常飼料の3週間給与では+0.9%であったのに対し、紅茶粕入りPMR飼料の3週間給与では-0.6%であり、メタンガス生成力が抑制されていた。この結果から、紅茶粕が反芻動物の消化管からのメタンガス発生を抑制することが示された。
図1