(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144870
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】送電装置及び電極接続部材
(51)【国際特許分類】
H02J 50/20 20160101AFI20241004BHJP
【FI】
H02J50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057022
(22)【出願日】2023-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国土技術政策総合研究所、「令和4年度」委託研究、産業技術強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521487580
【氏名又は名称】株式会社パワーウェーブ
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】崎原 孫周
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】城本 政一
(72)【発明者】
【氏名】澤口 実
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 昌広
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋士
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】水谷 豊
(72)【発明者】
【氏名】横野 翔勇
(57)【要約】
【課題】 ワイヤレス給電システムの施工の効率化を図りつつ、定在波の発生を抑制すること。
【解決手段】 送電装置は、板状の導体を用いて形成される第1電極と、板状の導体を用いて形成され、前記第1電極の端部と重なる端部を有する第2電極と、誘電体を用いて形成され、前記第1電極及び前記第2電極を接続する電極接続部材とを有する。前記電極接続部材は、一方の面に接触する前記第1電極の端部と他方の面に接触する前記第2電極の端部とによって挟まれる薄板部と、前記薄板部の前記一方の面から突出する段差面を有し、当該段差面に前記第1電極の先端を当接させる厚板部とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の導体を用いて形成される第1電極と、
板状の導体を用いて形成され、前記第1電極の端部と重なる端部を有する第2電極と、
誘電体を用いて形成され、前記第1電極及び前記第2電極を接続する電極接続部材とを有し、
前記電極接続部材は、
一方の面に接触する前記第1電極の端部と他方の面に接触する前記第2電極の端部とによって挟まれる薄板部と、
前記薄板部の前記一方の面から突出する段差面を有し、当該段差面に前記第1電極の先端を当接させる厚板部とを有する
送電装置。
【請求項2】
前記第1電極及び前記薄板部に形成される貫通孔に挿通され、前記電極接続部材に対する前記第1電極の位置を固定する第1固定部材と、
前記第2電極及び前記厚板部に形成される貫通孔に挿通され、前記電極接続部材に対する前記第2電極の位置を固定する第2固定部材とをさらに有する
請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
一方の面に第1電極の端部を接触させ、他方の面に第2電極の端部を接触させる薄板部と、
前記薄板部の前記一方の面から突出する段差面を有し、当該段差面に前記第1電極の先端を当接させる厚板部と
を有する電極接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置及び電極接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力を用いて走行する電気自動車が普及しつつある。電気自動車は、車載されたバッテリに蓄えられた電力によりモータを駆動することにより、車輪を回転させて走行する。このため、バッテリの蓄電量が減少した場合には、利用者は、電気自動車を所定の充電設備に接続してバッテリの充電を行う必要がある。
【0003】
これに対し、例えば電気自動車、電動カート及びAGV(Automated Guided Vehicle)等のような電気エネルギーを動力に用いる車両に対して、ワイヤレスで電力を供給するワイヤレス給電システムが注目されている。ワイヤレス給電システムにおいては、例えば路面下に埋設された送電電極から車両に搭載された受電電極へ、無線により非接触で電力が供給される。非接触で電力が供給されるため、車両は、バッテリからの電力に頼ることなく、路面から送電される電力を用いて走行することができる。
【0004】
このようなワイヤレス給電システムの送電電極は、例えば道路に沿って延びる形状を有し、高周波電源からの高周波電圧を車両へ伝送する。このため、送電電極には、高周波電源から車両へ向かう進行波と、車両から高周波電源へ反射する反射波とが混在し、定在波が発生することがある。そして、送電電極に定在波が発生すると、定在波の節の位置においては受電電極への受電が行われないため、電力伝送効率が低下する。
【0005】
そこで、進行波及び反射波の位相を進相させるための接続回路を電化道路内の送電電極に周期的に接続し、送電電極における定在波の発生を抑制することが検討されている(例えば特許文献1)。
【0006】
しかしながら、接続回路によって定在波の発生を抑制する場合、送電電極に4分の1波長ごとの間隔で周期的に接続回路を接続する必要があるため、施工の効率が低下するとともに、コストが増大するという問題がある。すなわち、送電電極によって例えば10MHzの高周波電圧を伝送する場合、4分の1波長は7.5mであるため、電子部品を用いて構成される接続回路を7.5mごとに埋設することになる。また、接続回路は、車両が通行する路面下に埋設されるため、車両走行時の振動に耐える構造とすることが求められ、強度を確保するためのコストや接続回路の交換や維持管理のためのコストなどが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-227025号公報
【特許文献2】特開2017-34919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ワイヤレス給電システムの施工の効率化を図りつつ、定在波の発生を抑制することができる送電装置及び電極接続部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、送電装置は、板状の導体を用いて形成される第1電極と、板状の導体を用いて形成され、前記第1電極の端部と重なる端部を有する第2電極と、誘電体を用いて形成され、前記第1電極及び前記第2電極を接続する電極接続部材とを有し、前記電極接続部材は、一方の面に接触する前記第1電極の端部と他方の面に接触する前記第2電極の端部とによって挟まれる薄板部と、前記薄板部の前記一方の面から突出する段差面を有し、当該段差面に前記第1電極の先端を当接させる厚板部とを有する。
【0010】
この構成によれば、第1電極が電極接続部材に対して容易に位置合わせされ、第1電極及び第2電極の重なる端部の面積を所望の面積にするための調整が不要となる。したがって、第1電極及び第2電極の端部と、これらの端部によって挟まれる薄板部とによって形成されるコンデンサの静電容量を正確に設定し、送電装置によって伝送される進行波及び反射波の位相を調整することができる。結果として、ワイヤレス給電システムの施工の効率化を図りつつ、定在波の発生を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、送電装置は、上記構成において、前記第1電極及び前記薄板部に形成される貫通孔に挿通され、前記電極接続部材に対する前記第1電極の位置を固定する第1固定部材と、前記第2電極及び前記厚板部に形成される貫通孔に挿通され、前記電極接続部材に対する前記第2電極の位置を固定する第2固定部材とをさらに有する。
【0012】
この構成によれば、第1電極が薄板部に固定されるとともに、第2電極が厚板部に固定されるため、電極接続部材によって接続される第1電極及び第2電極の互いの位置を固定することができる。このため、ワイヤレス給電システムの施工時にも、第1電極、第2電極及び電極接続部材の位置関係が変化せず、これらによって形成されるコンデンサの静電容量を一定に保つことができる。
【0013】
また、本発明の他の一態様によれば、電極接続部材は、一方の面に第1電極の端部を接触させ、他方の面に第2電極の端部を接触させる薄板部と、前記薄板部の前記一方の面から突出する段差面を有し、当該段差面に前記第1電極の先端を当接させる厚板部とを有する。
【0014】
この構成によれば、電極接続部材によって第1電極及び第2電極を接続する場合に、第1電極を電極接続部材に対して効率的に位置合わせしながら、第1電極及び第2電極の薄板部を挟んで重なる面積が所望の面積になるように正確に調整することができる。したがって、第1電極及び第2電極と、これらの電極によって挟まれる薄板部とによって形成されるコンデンサの静電容量を正確に設定し、第1電極、第2電極及び電極接続部材を有する給電線路によって伝送される進行波及び反射波の位相を調整することができる。結果として、ワイヤレス給電システムの施工の効率化を図りつつ、定在波の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワイヤレス給電システムの施工の効率化を図りつつ、定在波の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係るワイヤレス給電システムの構成の具体例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る送電層の構成を示す平面模式図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る送電層に対応する回路構成図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る送電電極の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る電極接続部材の構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、電力伝送効率の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係る送電電極の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る電極接続部材の構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、電極接続部材の変形例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、電極接続部材の他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は例示であり、この記載によって限定解釈されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るワイヤレス給電システム100の構成の具体例を示す図である。
図1に示すワイヤレス給電システム100は、車両10が走行する道路に設けられ、電力を用いて走行する車両10へ電力を供給する。このワイヤレス給電システム100は、表層110、送電層120、排水層130及び基層140を有する。
【0019】
表層110は、例えばセラミック骨材を使用したアスファルト混合物を用いて形成された層であり、車両10は、表層110上を走行する。
【0020】
送電層120は、高周波電源から車両10まで高周波電圧を伝送する。具体的には、送電層120は、表層110の下面に近く浅い位置に埋設される複数の第1送電電極121と、第1送電電極121よりも深い位置に埋設される複数の第2送電電極122とを有する。第1送電電極121及び第2送電電極122それぞれの両端は、平面視で互いに重なる領域を有し、
図1では図示を省略する電極接続部材によって接続されている。第1送電電極121、第2送電電極122及び電極接続部材の全体の上面及び下面は、図示しない瀝青シートによって被覆され、周囲には例えばセラミック砕石が充填されている。また、送電層120の下には、図示しないアスファルト安定処理層が設けられてもよい。
【0021】
送電層120は、第1送電電極121及び第2送電電極122によって高周波電圧を伝送し、車両10の図示しない受電電極へ電力を供給する。なお、送電層120の構成については、後に詳述する。
【0022】
排水層130は、例えば排水機能を有する樹脂製品を用いて形成され、送電層120からの排水を促す。
【0023】
基層140は、例えばセラミック骨材を使用したアスファルト混合物を用いて形成された層であり、路盤の上面に形成されて表層110、送電層120及び排水層130を支持する。
【0024】
図2は、実施の形態1に係る送電層120の構成を示す平面模式図である。
図2においては、主に送電に係る構成を示している。
【0025】
図2に示すように、送電層120は、平行に並べて配置された2本の給電線路を有し、それぞれの給電線路は、第1送電電極121及び第2送電電極122が電極接続部材123によって接続されて形成されている。具体的には、浅い位置に埋設される第1送電電極121と深い位置に埋設される第2送電電極122とが交互に配置され、平面視で互いに隣り合う第1送電電極121及び第2送電電極122の端部が電極接続部材123によって接続されている。第1送電電極121及び第2送電電極122の端部は、平面視で互いに重なる領域を有し、この領域において電極接続部材123を挟んで対向する。
【0026】
第1送電電極121及び第2送電電極122は、それぞれ例えば幅800~850mm、長さ2000mmの薄板形状を有する導電体から形成されている。第1送電電極121及び第2送電電極122の長さは、給電線路によって伝送される高周波の波長よりも短い。各給電線路は、第1送電電極121及び第2送電電極122を例えば5枚ずつ接続して形成されており、全長が20m程度の線路となっている。
【0027】
電極接続部材123は、例えば樹脂などの誘電体から形成されている。具体的には、電極接続部材123は、160度までの耐熱性、線圧49kNまでの耐荷重性、非吸水性及び絶縁性を有する材料から形成されている。このような条件を満たす材料としては、例えばテフロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリエチレン又はジュラコン(登録商標)などの樹脂や、これらの樹脂をガラス繊維に含浸させたものなどがある。導電体である第1送電電極121及び第2送電電極122の端部が、誘電体である電極接続部材123を挟んで対向することにより、この端部にコンデンサが形成される。
【0028】
2本の給電線路の一端には、高周波電源124が接続されるとともに、インダクタ125が接続されている。そして、2本の給電線路の高周波電源124から遠い他端には、インダクタ126が接続されている。
【0029】
このようなコンデンサ及びインダクタ125、126により、送電層120の給電線路は、例えば
図3に示す等価回路によって表すことができる。すなわち、
図3に示すように、送電層120は、高周波電源124に近い一端と高周波電源124から遠い他端とには、インダクタンスLのインダクタを有し、電極接続部材123によって第1送電電極121及び第2送電電極122が接続される位置には、静電容量Cのコンデンサを有する。
【0030】
このような回路構成において、インダクタのインダクタンスL及びコンデンサの静電容量Cを適切に設定することにより、給電線路によって伝送される高周波の進行波及び反射波の位相がコンデンサの位置において調整される。結果として、進行波及び反射波の合成による定在波の発生が抑制され、電力伝送効率の低下を招く定在波の節が形成されない。
【0031】
ところで、送電層120において定在波の発生を抑制するためには、第1送電電極121及び第2送電電極122の端部に形成されるコンデンサの静電容量Cを正確に設定することが求められる。コンデンサの静電容量Cは、以下の式(1)によって算出される。
C=εr・ε0・S/d ・・・(1)
【0032】
ただし、式(1)において、εrは電極接続部材123を形成する誘電体の比誘電率、ε0は真空の誘電率、Sは第1送電電極121及び第2送電電極122の互いに対向する領域の面積、dは第1送電電極121及び第2送電電極122の間の距離である。
【0033】
したがって、第1送電電極121及び第2送電電極122の対向する領域の面積Sと、第1送電電極121及び第2送電電極122の間の距離dとを正確に調整することにより、所望の静電容量Cのコンデンサが形成され、定在波の発生を抑制することができる。換言すれば、隣り合う第1送電電極121及び第2送電電極122を正確に位置合わせすることにより、電力伝送効率を向上する送電層120を形成することができる。
【0034】
そこで、本実施の形態に係る電極接続部材123は、第1送電電極121及び第2送電電極122の端部の位置を規定し、隣り合う第1送電電極121及び第2送電電極122の正確な位置合わせを可能にしている。以下、
図4を参照して、電極接続部材123を用いた第1送電電極121及び第2送電電極122の接続部分について、具体的に説明する。
【0035】
図4(a)は、第1送電電極121及び第2送電電極122の接続部分を示す平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のI-I線断面を模式的に示す図である。
【0036】
これらの図に示すように、第1送電電極121及び第2送電電極122の端部は互いに重なる領域を有し、この領域において電極接続部材123が挟まれている。換言すれば、第1送電電極121の端部と第2送電電極122の端部とは、電極接続部材123を挟んで対向する。また、電極接続部材123は、第1送電電極121のみと重なる領域と、第2送電電極122のみと重なる領域とを有し、これらの領域においてビス127が第1送電電極121又は第2送電電極122と電極接続部材123とを貫通することにより、第1送電電極121又は第2送電電極122と電極接続部材123との位置が固定されている。
【0037】
すなわち、第1送電電極121の電極接続部材123のみと重なる領域において、第1送電電極121の幅方向に並ぶ2つの貫通孔が形成され、電極接続部材123にも対応する2つの貫通孔が形成されている。そして、ビス127が第1送電電極121及び電極接続部材123の貫通孔に挿通されることにより、電極接続部材123に対する第1送電電極121の位置が固定される。
【0038】
同様に、第2送電電極122の電極接続部材123のみと重なる領域において、第2送電電極122の幅方向に並ぶ2つの貫通孔が形成され、電極接続部材123にも対応する2つの貫通孔が形成されている。そして、ビス127が第2送電電極122及び電極接続部材123の貫通孔に挿通されることにより、電極接続部材123に対する第2送電電極122の位置が固定される。
【0039】
ビス127は、例えば導体を用いて形成されるが、いずれのビス127も第1送電電極121及び第2送電電極122の双方を貫通することがないため、ビス127によって第1送電電極121及び第2送電電極122が電気的に接続されることはない。
【0040】
また、電極接続部材123は、側面視の断面が略L字形状となるように形成されており、段差部分に第1送電電極121の先端を当接させることにより、電極接続部材123に対して第1送電電極121を容易に位置合わせすることが可能となっている。そして、第1送電電極121及び電極接続部材123を位置合わせすることにより、第1送電電極121及び電極接続部材123に形成された貫通孔の位置が重なり、容易にビス127を挿通させることができる。すなわち、ワイヤレス給電システムの施工の効率化を図ることができる。
【0041】
このように、電極接続部材123によって、第1送電電極121及び第2送電電極122の位置を正確に規定しながら接続することにより、
図4(b)に示す重なり幅Wが所望の幅になるように正確に調整することができる。結果として、第1送電電極121及び第2送電電極122が対向する領域に形成されるコンデンサの静電容量Cを正確に設定することができ、給電線路において定在波の発生を抑制することができる。
【0042】
図5は、実施の形態1に係る電極接続部材123の構造を示す斜視図である。
電極接続部材123は、第1送電電極121及び第2送電電極122によって挟まれる薄板部201と、薄板部201よりも厚く形成され薄板部201の一面から突出する厚板部202とを有する。
【0043】
薄板部201は、第1送電電極121に接触する第1面201aと、第2送電電極122に接触する第2面201bとを有する。そして、第1面201aが第1送電電極121に接触するとともに、第2面201bが第2送電電極122に接触しない領域には、第1面201aから第2面201bまで貫通する貫通孔201cが形成されている。
【0044】
厚板部202は、薄板部201の長手方向の一端に設けられ、薄板部201の第1面201aから突出する。このため、薄板部201の短手方向側方から電極接続部材123を見ると、電極接続部材123は、略L字形状を有する。厚板部202は、薄板部201の第1面201aから立ち上がり段差を形成する段差面202aを有する。また、厚板部202を厚さ方向に貫通する貫通孔202bが形成されている。
【0045】
薄板部201の第1面201aに接触する第1送電電極121は、先端を厚板部202の段差面202aに当接させることにより、薄板部201の長手方向における第1送電電極121の位置が規定される。この位置に第1送電電極121が位置合わせされることにより、第1送電電極121に形成された貫通孔と薄板部201に形成された貫通孔201cとの位置が一致し、容易にビス127を挿通させることができる。この結果、第1送電電極121と電極接続部材123との位置が固定される。
【0046】
また、第2送電電極122に形成された貫通孔と厚板部202に形成された貫通孔202bとの位置を一致させ、ビス127を挿通させることで、第2送電電極122と電極接続部材123との位置が固定される。これにより、第1送電電極121及び第2送電電極122が電極接続部材123に対して固定され、例えば第1送電電極121及び第2送電電極122が送電層120に埋設されたり、表層110が加圧されたりする際にも、第1送電電極121及び第2送電電極122の互いに対する位置が変化しない。
【0047】
このように、電極接続部材123によって第1送電電極121及び第2送電電極122の互いに対する位置が固定される結果、第1送電電極121及び第2送電電極122が対向する領域の面積を所望の面積に設定することができる。さらに、第1送電電極121及び第2送電電極122の間の距離は、電極接続部材123の薄板部201の厚さによって規定されるため、コンデンサの静電容量Cを示す上式(1)において、面積S及び距離dを正確に設定することが可能となる。したがって、給電線路のコンデンサの位置における位相の調整量を正確に設定し、給電線路において定在波の発生を抑制することができる。
【0048】
図6は、高周波電源124からの距離によって示される受電位置と電力伝送効率との関係の一例を示す図である。
図6において、実線は上述した送電層120の給電線路による電力伝送効率を示し、破線は従来の連続する給電線路による電力伝送効率を示す。
【0049】
図6に示すように、連続する給電線路によって送電する場合には、高周波電源124からの距離が8m程度の受電位置において、電力伝送効率が大きく低下している。これは、給電線路に定在波が発生し、この受電位置に定在波の節が形成されているためである。これに対し、送電層120の給電線路によって送電する場合には、高周波電源124からの距離が大きくなるにつれて電力伝送効率が少しずつ低下するものの、電力伝送効率が大きく低下する受電位置がない。このように、送電層120の給電線路によれば、定在波の発生を抑制し、電力伝送効率の低下を抑制することができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態によれば、端部が重なるように配置される第1送電電極及び第2送電電極を有する給電線路において、第1送電電極の先端を側面視で略L字形状の誘電体からなる電極接続部材の段差面に当接させて位置合わせし、第1送電電極と第2送電電極の重なる端部が電極接続部材を挟むように構成される。これにより、第1送電電極及び第2送電電極の端部と、これらの端部によって挟まれる電極接続部材とによってコンデンサが形成された給電線路を効率的に形成することができ、このコンデンサの静電容量を正確に設定して進行波及び反射波の位相を調整することができる。結果として、ワイヤレス給電システムの施工の効率化を図りつつ、定在波の発生を抑制することができる。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、側面視で略L字形状の電極接続部材123によって第1送電電極121及び第2送電電極122が接続される給電線路について説明したが、電極接続部材の形状はこれに限定されない。そこで、実施の形態2においては、実施の形態1とは異なる形状の電極接続部材によって第1送電電極121及び第2送電電極122が接続される給電線路について説明する。
【0052】
実施の形態2に係るワイヤレス給電システム及び送電層の構成は、実施の形態1に係るワイヤレス給電システム100及び送電層120と同様であるため、その説明を省略する。実施の形態2においては、送電層の給電線路に関して、電極接続部材を用いた第1送電電極121及び第2送電電極122の接続部分の構成が実施の形態1とは異なる。
【0053】
図7は、実施の形態2に係る第1送電電極121及び第2送電電極122の接続部分の側面断面を模式的に示す図である。
図7において、
図4(b)と同じ部分には同じ符号を付す。
【0054】
図7に示すように、本実施の形態においては、第1送電電極121及び第2送電電極122が電極接続部材210によって接続されている。具体的には、第1送電電極121及び第2送電電極122の端部は互いに重なる領域を有し、この領域において電極接続部材210が挟まれている。また、電極接続部材210は、第1送電電極121のみと重なる領域と、第2送電電極122のみと重なる領域とを有し、これらの領域においてビス127が第1送電電極121又は第2送電電極122と電極接続部材210とを貫通することにより、第1送電電極121又は第2送電電極122と電極接続部材210との位置が固定されている。
【0055】
また、電極接続部材210は、側面視の断面が略U字形状となるように形成されており、中央の凹部底面に第1送電電極121の先端を当接させることにより、電極接続部材210に対して第1送電電極121を容易に位置合わせすることが可能となっている。そして、第1送電電極121及び電極接続部材210を位置合わせすることにより、第1送電電極121及び電極接続部材210に形成された貫通孔の位置が重なり、容易にビス127を挿通させることができる。すなわち、ワイヤレス給電システムの施工の効率化を図ることができる。
【0056】
このように、電極接続部材210によって、第1送電電極121及び第2送電電極122の位置を正確に規定しながら接続することにより、第1送電電極121及び第2送電電極122が対向する領域の面積が所望の面積になるように正確に調整することができる。結果として、第1送電電極121及び第2送電電極122が対向する領域に形成されるコンデンサの静電容量Cを正確に設定することができ、給電線路において定在波の発生を抑制することができる。また、電極接続部材210が側面視で略U字形状を有することにより、第1送電電極121の先端が電極接続部材210によって挟持された状態で第1送電電極121及び電極接続部材210を運搬することが可能になり、さらに施工の効率化を図ることができる。
【0057】
図8は、実施の形態2に係る電極接続部材210の構造を示す斜視図である。
図8において、
図5と同じ部分には同じ符号を付す。
【0058】
図8に示すように、電極接続部材210は、第1送電電極121及び第2送電電極122によって挟まれる薄板部201と、薄板部201よりも厚く薄板部201の一面から突出する厚板部202と、厚板部202の突出部分から薄板部201に対向して伸展する対向薄板部211とを有する。
【0059】
対向薄板部211は、第1送電電極121に接触する第1面211aと、電極に接触せずに瀝青シートによって被覆される第2面211bとを有する。そして、薄板部201の貫通孔201cと対向する位置には、第1面211aから第2面211bまで貫通する貫通孔211cが形成されている。
【0060】
薄板部201及び対向薄板部211が互いに対向するように厚板部202の両端から伸展するため、薄板部201の短手方向側方から電極接続部材210を見ると、電極接続部材210は、略U字形状を有する。厚板部202の段差面202aは、この略U字形状の凹部底面となる。そして、薄板部201の第1面201aと対向薄板部211の第1面211aとの間に挟持される第1送電電極121は、先端を厚板部202の段差面202aに当接させることにより、薄板部201の長手方向における第1送電電極121の位置が規定される。この位置に第1送電電極121が位置合わせされることにより、第1送電電極121に形成された貫通孔と薄板部201及び対向薄板部211に形成された貫通孔201c、211cとの位置が一致し、容易にビス127を挿通させることができる。この結果、第1送電電極121と電極接続部材123との位置が固定される。
【0061】
また、第2送電電極122に形成された貫通孔と厚板部202に形成された貫通孔202bとの位置を一致させ、ビス127を挿通させることで、第2送電電極122と電極接続部材123との位置が固定される。これにより、第1送電電極121及び第2送電電極122が電極接続部材123に対して固定され、例えば第1送電電極121及び第2送電電極122が送電層120に埋設されたり、表層110が加圧されたりする際にも、第1送電電極121及び第2送電電極122の互いに対する位置が変化しない。
【0062】
このように、電極接続部材210によって第1送電電極121及び第2送電電極122の互いに対する位置が固定される結果、第1送電電極121及び第2送電電極122が対向する領域の面積を所望の面積に設定することができる。さらに、第1送電電極121及び第2送電電極122の間の距離は、電極接続部材210の薄板部201の厚さによって規定されるため、コンデンサの静電容量Cを正確に設定することが可能となる。したがって、給電線路のコンデンサの位置における位相の調整量を正確に設定し、給電線路において定在波の発生を抑制することができる。
【0063】
以上のように、本実施の形態によれば、端部が重なるように配置される第1送電電極及び第2送電電極を有する給電線路において、第1送電電極の先端を側面視で略U字形状の誘電体からなる電極接続部材の凹部底面に当接させて位置合わせし、第1送電電極と第2送電電極の重なる端部が電極接続部材を挟むように構成される。これにより、第1送電電極及び第2送電電極の端部と、これらの端部によって挟まれる電極接続部材とによってコンデンサが形成された給電線路を効率的に形成することができ、このコンデンサの静電容量を正確に設定して進行波及び反射波の位相を調整することができる。結果として、ワイヤレス給電システムの施工の効率化を図りつつ、定在波の発生を抑制することができる。
【0064】
なお、電極接続部材については、上記実施の形態1、2において説明した電極接続部材123、210以外にも種々変形することが可能である。以下、電極接続部材の変形例について、
図9、10を参照しながら説明する。
【0065】
図9は、変形例に係る電極接続部材220の構造を示す斜視図である。
図9において、
図5と同じ部分には同じ符号を付す。
【0066】
図9に示すように、電極接続部材220は、第1送電電極121及び第2送電電極122によって挟まれる薄板部201と、薄板部201よりも厚く形成され薄板部201の一方の面から突出する第1厚板部202と、薄板部201よりも厚く形成され薄板部201の他方の面から突出する第2厚板部221とを有する。第1厚板部202及び第2厚板部221は、薄板部201の長手方向の両端に設けられている。
【0067】
第1厚板部202は、薄板部201の長手方向の一端に設けられ、薄板部201の第1面201aから突出する。第1厚板部202は、薄板部201の第1面201aから立ち上がり段差を形成する段差面202aを有する。また、第1厚板部202を厚さ方向に貫通する貫通孔202bが形成されている。
【0068】
第2厚板部221は、薄板部201の長手方向の他端に設けられ、薄板部201の第2面201bから突出する。第2厚板部221は、薄板部201の第2面201bから立ち上がり段差を形成する段差面221aを有する。また、第2厚板部221を厚さ方向に貫通する貫通孔221bが形成されている。
【0069】
薄板部201の第1面201aに接触する第1送電電極121は、先端を第1厚板部202の段差面202aに当接させることにより、薄板部201の長手方向における第1送電電極121の位置が規定される。この位置に第1送電電極121が位置合わせされることにより、第1送電電極121に形成された貫通孔と第2厚板部221に形成された貫通孔221bとの位置が一致し、容易にビス127を挿通させることができる。この結果、第1送電電極121と電極接続部材220との位置が固定される。
【0070】
同様に、薄板部201の第2面201bに接触する第2送電電極122は、先端を第2厚板部221の段差面221aに当接させることにより、薄板部201の長手方向における第2送電電極122の位置が規定される。この位置に第2送電電極122が位置合わせされることにより、第2送電電極122に形成された貫通孔と第1厚板部202に形成された貫通孔202bとの位置が一致し、容易にビス127を挿通させることができる。この結果、第2送電電極122と電極接続部材220との位置が固定される。
【0071】
このように、電極接続部材220によって第1送電電極121及び第2送電電極122の互いに対する位置が固定される結果、第1送電電極121及び第2送電電極122が薄板部201を挟んで対向する領域の面積を正確に調整することができる。結果として、コンデンサの静電容量Cを正確に設定することが可能となる。
【0072】
図10は、他の変形例に係る電極接続部材230の構造を示す斜視図である。
図10において、
図5と同じ部分には同じ符号を付す。
【0073】
図10に示すように、電極接続部材230は、第1送電電極121及び第2送電電極122によって挟まれる薄板部201と、薄板部201よりも厚く形成され薄板部201の一面から突出する厚板部202と、薄板部201の短手方向両端において厚板部202と同じ高さまで突出する側板部231とを有する。
【0074】
側板部231は、薄板部201の短手方向両端に設けられ、薄板部201の第1面201aから厚板部202と同じ高さまで突出する。このため、薄板部201の第1面201aは、厚板部202及び側板部231によって三方を囲まれる。
【0075】
薄板部201の第1面201aに接触する第1送電電極121は、先端を厚板部202の段差面202aに当接させることにより、薄板部201の長手方向における第1送電電極121の位置が規定される。また、第1送電電極121は、幅方向の両端を側板部231に当接させることにより、薄板部201の短手方向における第1送電電極121の位置が規定される。この位置に第1送電電極121が位置合わせされることにより、第1送電電極121に形成された貫通孔と薄板部201に形成された貫通孔201cとの位置が一致し、容易にビス127を挿通させることができる。この結果、第1送電電極121と電極接続部材230との位置が固定される。
【0076】
また、第2送電電極122に形成された貫通孔と厚板部202に形成された貫通孔202bとの位置を一致させ、ビス127を挿通させることで、第2送電電極122と電極接続部材230との位置が固定される。
【0077】
このように、電極接続部材230によって第1送電電極121及び第2送電電極122の互いに対する位置が固定される結果、第1送電電極121及び第2送電電極122が薄板部201を挟んで対向する領域の面積を正確に調整することができる。結果として、コンデンサの静電容量Cを正確に設定することが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
100 ワイヤレス給電システム
110 表層
120 送電層
121 第1送電電極
122 第2送電電極
123、210、220、230 電極接続部材
124 高周波電源
125、126 インダクタ
127 ビス
130 排水層
140 基層
201 薄板部
201a、211a 第1面
201b、211b 第2面
201c、202b、211c、221b 貫通孔
202 厚板部(第1厚板部)
202a、221a 段差面
211 対向薄板部
221 第2厚板部
231 側板部