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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144872
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20241004BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20241004BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G03G9/08 384
G03G9/087 331
G03G9/087 325
G03G9/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057031
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 将一
(72)【発明者】
【氏名】丸野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】新谷 貫太
(72)【発明者】
【氏名】加納 邦泰
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA06
2H500BA11
2H500BA22
2H500BA24
2H500CA03
2H500CA06
2H500CA27
2H500CA29
2H500EA42B
2H500EA42C
2H500EA44B
(57)【要約】
【課題】カブリの発生を抑制することができる静電荷像現像用トナーに関する。
【解決手段】樹脂粒子及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集及び融着させる工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記樹脂粒子が、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(A)を含有し、前記着色剤粒子が、着色剤と炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有し、非晶性ポリエステル系樹脂(B)に対する着色剤の質量比(着色剤/非晶性ポリエステル系樹脂(B))が55/45以上99/1以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集させる工程及び融着させる工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記樹脂粒子が、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(A)を含有し、
前記着色剤粒子が、着色剤と炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有し、
非晶性ポリエステル系樹脂(B)に対する着色剤の質量比(着色剤/非晶性ポリエステル系樹脂(B))が55/45以上99/1以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
前記非晶性ポリエステル系樹脂(B)が、更にスチレンアクリル部位を複合化された樹脂である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
複合化されている前記スチレンアクリル部位が、重合開始剤を使用しないで合成される、請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
前記着色剤が、構造中にNH構造を4mmol/g以上15mmol/g以下含むイエロー顔料である、請求項1~3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記着色剤粒子が、前記着色剤と前記非晶性ポリエステル系樹脂(B)とを有機溶媒存在下で分散することで得られる、請求項1~4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
着色剤と炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有する着色剤粒子を含み、非晶性ポリエステル系樹脂(B)に対する着色剤の質量比(着色剤/非晶性ポリエステル樹脂(B))が55/45以上99/1以下である、着色剤粒子分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高速化及び高画質化に対応した電子写真用トナーの開発が求められている。高速化に伴い、トナーが紙へと転写される時間も短くなることから、帯電性に優れるトナーが必要とされている。また、高画質化に対応するために、着色力の高いトナーが必要とされている。
【0003】
特許文献1には、粒径分布が狭く、ドット再現性及び帯電安定性に優れるトナーの製造方法を提供することを目的として、工程(1):ポリエステル樹脂と塩基性水溶液とを混合して樹脂中和物を得る工程、工程(2):工程(1)で得られた樹脂中和物に水性媒体を添加して乳化し、樹脂粒子分散液を得る工程、工程(3):工程(2)で得られた樹脂粒子分散液中の樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子を得る工程、及び、工程(4):工程(3)で得られた凝集粒子を融着させてトナー粒子を得る工程を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記ポリエステル樹脂のエステル基濃度が6.3mmol/g以上12mmol/g以下であり、前記塩基性水溶液の25℃におけるpHが8.5以上13.5以下であり、樹脂中和物中における有機溶媒の含有量が10質量%以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/112488号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のトナーの製造方法により得られるトナーは、カブリの発生の抑制に改善の余地があった。
本発明は、カブリの発生を抑制することができる静電荷像現像用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、特定のアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(A)を含有する樹脂粒子、及び着色剤と特定のアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有し、非晶性ポリエステル系樹脂(B)に対する着色剤の質量比が特定の範囲である着色剤粒子を、水系媒体中で凝集及び融着させる工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法により製造された静電荷像現像用トナーを用いることで、カブリの発生が抑制された印刷物を得ることができることを見出した。
本発明は、以下の〔1〕及び〔2〕に関する。
〔1〕樹脂粒子及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集及び融着させる工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記樹脂粒子が、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(A)を含有し、
前記着色剤粒子が、着色剤と炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有し、
非晶性ポリエステル系樹脂(B)に対する着色剤の質量比(着色剤/非晶性ポリエステル系樹脂(B))が55/45以上99/1以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
〔2〕着色剤と炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有する着色剤粒子を含み、非晶性ポリエステル系樹脂(B)に対する着色剤の質量比(着色剤/非晶性ポリエステル樹脂(B))が55/45以上99/1以下である、着色剤粒子分散液。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カブリの発生が抑制された印刷物を得ることができる静電荷像現像用トナーが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)の製造方法は、樹脂粒子及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集及び融着させる工程を含む。
前記樹脂粒子が、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(A)(以下、単に「樹脂(A)」ともいう)を含有する。そして、前記着色剤粒子が、着色剤と炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)(以下、単に「樹脂(B)」ともいう)を含有し、非晶性ポリエステル系樹脂(B)に対する着色剤の質量比(着色剤/非晶性ポリエステル系樹脂(B))が55/45以上99/1以下である。
以上の特徴により、本発明のトナーを用いることで、カブリの発生が抑制された印刷物を得ることができる。
【0009】
本発明のトナーが、カブリの発生が抑制された印刷物を得ることができる理由は定かではないが、次のように考えられる。
従来、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である非晶性ポリエステル樹脂と着色剤を含有するトナーは、顔料の分散性や内包性が低いため帯電量分布が広く、カブリが発生するなどの画質が悪化するという課題があった。これは非晶性ポリエステルと着色剤との親和性が低いことが原因と考えられ、特に水中で乳化重合法によりトナーを作製する際には、両者の親和性が低いだけでなく、粉砕法でトナーを製造する際とは異なり混錬シェア等がないため、顔料同士の凝集や顔料の表面露出が起こるなどの問題がより顕著であった。
本発明の製造方法では、結着樹脂として炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)との重縮合物であるポリエステル部位を含む樹脂(A)を含有する樹脂粒子、及び着色剤と炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む樹脂(B)を含有する着色剤粒子を、水系媒体中で凝集及び融着させることで、カブリの発生を抑制する静電荷像現像用トナーが得られる。
これは、着色剤粒子において、樹脂(B)が少なくとも着色剤の表面の一部を被覆しているため、樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集させる工程において、樹脂(A)と樹脂(B)との高い親和性により、凝集粒子中に着色剤粒子を微分散させやすくなり、凝集粒子を融着することで得られるトナー粒子の表面への着色剤の露出を抑制するだけでなく、トナー粒子中に着色剤を均一に取り込ませることができ、その結果、トナーの帯電量分布を向上させ、カブリの発生を抑制するトナーを得ることができると考えられる。
更に、樹脂(B)がスチレンアクリル部位を有する複合化された樹脂であると、樹脂(B)による着色剤の被覆がより高まるため、トナー粒子の表面への着色剤の露出をより抑制し、トナー粒子中に着色剤をより均一に取り込ませることができるため、本発明の製造方法で得られたトナーは、カブリの発生をより抑制すると考えられる。
なお、本発明の効果に関する上記のメカニズムは推定であり、これに限定されるものではない。
【0010】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
明細書中、ポリエステル系樹脂のカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解してカルボン酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
炭化水素基に関して、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」を括弧とする記載は、これらの接頭辞が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの接頭辞が存在しない場合には、ノルマルを示す。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を意味する。
【0011】
〔樹脂粒子〕
樹脂粒子は、着色剤粒子のトナー粒子への分散性を高め、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(A)を含有する。
【0012】
<非晶性ポリエステル系樹脂(A)(樹脂(A))>
樹脂(A)は、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)の重縮合物であるポリエステル樹脂又はアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)の重縮合物であるポリエステル部位を含む複合樹脂である。
複合樹脂としては、例えば、アルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)の重縮合物のウレタン変性物、アルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)の重縮合物のエポキシ変性物、アルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)の重縮合物であるポリエステル部位とスチレンアクリル部位とが複合化された樹脂が挙げられる。
これらの中でも、樹脂(A)は、アルコール成分(a)及びカルボン酸成分(b)の重縮合物である非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0013】
アルコール成分(a)は、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含む。
炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールは、好ましくはエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及びネオペンチルグリコールであり、より好ましくはエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、及びネオペンチルグリコールであり、更に好ましくは1,2-プロパンジオール及びネオペンチルグリコールである。
アルコール成分(a)中、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールの含有量は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは85mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、好ましくは100mol%以下、より好ましくは100mol%である。
【0014】
炭素数2以上5以下の脂肪族ジオール以外のアルコール成分(a)としては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、炭素数6以上の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物としては、好ましくは式(I):
【0015】
【化1】

(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立にエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含むことが好ましい。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのプロピレンオキシド付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキシド付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
【0016】
炭素数6以上の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-ブテンジオールが挙げられる。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〕、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド付加物(平均付加モル数2以上12以下)が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0017】
カルボン酸成分(b)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上のカルボン酸化合物が挙げられる。
これらの中でも、カルボン酸成分(b)は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは、芳香族ジカルボン酸化合物を含む。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中では、上記観点から、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分(b)中、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは60mol%以上、より好ましくは70mol%以上、更に好ましくは80mol%以上であり、そして、好ましくは100mol%以下である。
【0018】
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよいコハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、オクチルコハク酸やドデセニルコハク酸(テトラプロペニルコハク酸)等が挙げられる。
これらの中でも、フマル酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分(b)中、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは40mol%以下、より好ましくは30mol%以下、更に好ましくは20mol%以下であり、好ましくは0mol%以上である。
【0019】
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。
アルコール成分(a)は1価のアルコールを、カルボン酸成分(b)は1価のカルボン酸化合物を、適宜含有してもよい。
【0020】
アルコール成分(a)の水酸基に対するカルボン酸成分(b)のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0021】
樹脂(A)がアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)の重縮合物であるポリエステル部位とスチレンアクリル部位とが複合化された樹脂である場合、スチレンアクリル部位は、例えば、スチレン系化合物及び(メタ)アクリル系化合物を含む原料モノマーの付加重合物である。
スチレン系化合物としては、例えば、無置換又は置換スチレンが挙げられる。スチレンに置換される置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホン酸基又はその塩が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
スチレンアクリル部位の原料モノマー中、スチレン系化合物の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0022】
(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸及びそのエステルが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが好ましい。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニル等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、より好ましくはメタクリル酸メチル及びアクリル酸n-ブチルである。
【0023】
スチレンアクリル部位の原料モノマー中、(メタ)アクリル系化合物の含有量は、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
スチレンアクリル部位の原料モノマー中における、スチレン系化合物と(メタ)アクリル系化合物との総量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0024】
上記以外の原料モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物;水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基と炭素-炭素不飽和結合(エチレン性不飽和結合)等の付加重合性基とを有する化合物が挙げられる。
【0025】
樹脂(A)としての複合樹脂は、好ましくは、ポリエステル部位及びスチレンアクリル部位と共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位を有する。
両反応性モノマーはスチレンアクリル部位の原料モノマーであってもよく、反応性の観点から、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが好ましく、カルボキシ基を有する付加重合性モノマーがより好ましい。
カルボキシ基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系化合物として挙げた(メタ)アクリル酸、並びにフマル酸及びマレイン酸が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマーがカルボキシ基を有する付加重合性モノマーである場合、両反応性モノマー由来の構成単位の量は、複合樹脂のポリエステル部位のアルコール成分100mol部に対して、好ましくは0.5mol部以上、より好ましくは1mol部以上であり、そして、好ましくは20mol部以下、より好ましくは10mol部以下、更に好ましくは5mol部以下である。
【0026】
複合樹脂中のポリエステル部位の含有量は、ポリエステル部位及びスチレンアクリル部位の合計量に対して、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。
【0027】
複合樹脂中のスチレンアクリル部位の含有量は、ポリエステル部位及びスチレンアクリル部位の合計量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。なお、両反応性モノマー由来の構成単位は、スチレンアクリル部位とする。
【0028】
複合樹脂中の両反応性モノマー由来の構成単位の量は、ポリエステル部位及びスチレンアクリル部位の合計量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0029】
複合樹脂中のスチレンアクリル部位の含有量に対するポリエステル部位の含有量の質量比(ポリエステル部位/スチレンアクリル部位)は、好ましくは90/10以上、より好ましくは93/7以上であり、そして、好ましくは99/1以下、より好ましくは98/2以下、更に好ましくは97/3以下である。
【0030】
上記量は、ポリエステル部位、スチレンアクリル部位の原料モノマー、両反応性モノマー、ラジカル重合開始剤の量の比率を基準に算出し、質量は、重縮合により生じた水の質量を除いた質量を基準とする。なお、ラジカル重合開始剤を用いた場合、ラジカル重合開始剤の質量は、スチレンアクリル部位に含めて計算する。
【0031】
(ポリエステル樹脂(A)の製造方法)
樹脂(A)は、例えば、アルコール成分(a)及びカルボン酸成分(b)を含む原料モノマーの重縮合反応を行う工程Aを含む方法により製造してもよい。
樹脂(A)が複合樹脂である場合、工程Aと、スチレンアクリル部位の原料モノマー及び両反応性モノマーを付加重合させる工程Bとを含む方法により製造してもよい。この場合、工程Aの後に工程Bを行ってもよいし、工程Bの後に工程Aを行ってもよく、工程Aと工程Bを同時に行ってもよい。工程Bにおいて、両反応性モノマーを含むスチレンアクリル部位の原料モノマーを付加重合反応に供し、次いで得られたスチレンアクリル部位に、アルコール成分(a)及びカルボン酸成分(b)を含む原料モノマーを添加し、工程Aの重縮合反応を更に進めることで複合樹脂を得る方法が好ましい。
【0032】
アルコール成分(a)及びカルボン酸成分(b)の重縮合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、120℃以上250℃以下程度の温度で行うことができる。
エステル化触媒としては、例えば、酸化ジブチル錫、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)等の錫化合物、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のチタン化合物が挙げられる。エステル化触媒と共に用い得るエステル化助触媒としては、例えば、没食子酸が挙げられる。
エステル化触媒の使用量は、樹脂(A)の原料モノマーであるアルコール成分(a)、及びカルボン酸成分(b)の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下である。
エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分(a)、及びカルボン酸成分(b)の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上1質量部以下である。
また、重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコール等のラジカル重合禁止剤が挙げられる。
重合禁止剤を用いる場合、重合禁止剤の使用量はアルコール成分(a)、及びカルボン酸成分(b)の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上1質量部以下である。
【0033】
工程Bの付加重合反応において、ラジカル重合開始剤等の重合開始剤を用いてもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジブチルパーオキシド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
ラジカル重合開始剤を用いる場合、ラジカル重合開始剤の使用量は、スチレンアクリル部位の原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
ラジカル重合開始剤を用いる場合、付加重合の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下である。
【0034】
工程Bの付加重合反応において、スチレンアクリル部位は、重合開始剤を使用しないで合成されてもよい。重合開始剤を使用しない場合、工程Bの付加重合反応は、得られるスチレンアクリル部位の粘度が高くなり過ぎず、分子量分布が比較的狭くなるとの観点から、スチレンアクリル部位の原料モノマーの塊状重合であることが好ましい。このような塊状重合については、特開2021-107920号公報が参照される。
【0035】
(ポリエステル樹脂(A)の物性)
樹脂(A)の軟化点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、高速下での低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下である。
樹脂(A)のガラス転移温度は、耐熱保存性の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、そして、高速下での低温定着性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0036】
樹脂(A)の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
樹脂(A)の軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、樹脂(A)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0037】
樹脂粒子は、樹脂(A)以外の非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含んでいてもよい。樹脂(A)以外の非晶性樹脂としては、例えば、樹脂(A)以外の非晶性ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂等が挙げられる。また、結晶性樹脂としては、後述の結晶性ポリエステル樹脂(C)等が挙げられる。
【0038】
樹脂粒子は、非晶性ポリエステル樹脂(A)を好ましくは90質量%以上含む。カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、より好ましくは92質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは100質量%である。
【0039】
<結晶性ポリエステル樹脂(C)(樹脂(C))>
樹脂粒子は、結晶性ポリエステル樹脂(C)(以下、単に「樹脂(C)」ともいう)を含有することが好ましい。
樹脂(C)は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
【0040】
アルコール成分としては、α,ω-脂肪族ジオールが好ましい。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
【0041】
α,ω-脂肪族ジオールの量は、アルコール成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは85mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして100mol%以下であり、好ましくは100mol%である。
【0042】
アルコール成分は、α,ω-脂肪族ジオールとは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、例えば、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール等のα,ω-脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオール;ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0043】
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、直鎖脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、セバシン酸、ドデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0044】
脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは85mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下であり、更に好ましくは100mol%である。
【0045】
カルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸とは異なる他のカルボン酸成分を含有していてもよい。他のカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0046】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0047】
樹脂(C)の製造方法は、例えば、上記の樹脂(A)の工程Aと同様の方法が挙げられる。
【0048】
(結晶性ポリエステル樹脂(C)の物性)
樹脂(C)の軟化点は、トナーの保存性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
樹脂(C)の融点は、トナーの保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
【0049】
樹脂(C)の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは8mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
樹脂(C)の軟化点、融点、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、樹脂(C)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、融点、及び酸価の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0050】
トナー粒子中の樹脂(A)の含有量は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
トナー粒子中の樹脂(C)の含有量は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは17質量%以下である。
【0051】
トナー粒子中の樹脂(A)と樹脂(C)の含有量の合計は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0052】
トナー粒子中の樹脂(A)に対する樹脂(C)の質量比[樹脂(C)/樹脂(A)]は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。
【0053】
<樹脂粒子の製造方法>
樹脂粒子が樹脂(A)及び樹脂(C)を含有する場合、樹脂粒子は、同一又は異なる樹脂粒子中に樹脂(A)及び樹脂(C)を含有する。ここで、以下の説明においては、粒子内に樹脂(A)及び樹脂(C)を含有する樹脂粒子について説明する。
【0054】
樹脂粒子の分散液は、樹脂(A)及び樹脂(C)を水系媒体中に分散させることで得られる。
水系媒体としては、水を主成分とするものが好ましく、樹脂Aの粒子の分散液の分散安定性を向上させる観点、及び環境性の観点から、水系媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、更に好ましくは100質量%である。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。
水系媒体に含まれうる水以外の成分としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の総炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
【0055】
分散は、公知の方法を用いて行うことができるが、転相乳化法により分散することが好ましい。転相乳化法としては、例えば、樹脂の有機溶媒溶液又は溶融した樹脂に水系媒体を添加して転相乳化する方法が挙げられる。
【0056】
転相乳化に用いる有機溶媒としては、樹脂を溶解すれば特に限定されないが、水系媒体添加後の混合液からの除去が容易である観点から、ケトン系溶媒及び酢酸エステル系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
有機溶媒溶液には、中和剤を添加することが好ましい。中和剤としては、例えば、塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。
樹脂粒子に含まれる樹脂の中和度は、好ましくは10mol%以上、より好ましくは20mol%以上、更に好ましくは30mol%以上、更に好ましくは40mol%以上であり、そして、好ましくは100mol%以下、より好ましくは80mol%以下、更に好ましくは70mol%以下である。
なお、樹脂粒子に含まれる樹脂の中和度は、下記式(1)によって求めることができる。
中和度(mol%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/{樹脂粒子を構成する樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×樹脂粒子を構成する樹脂の質量(g)}/(56×1000)〕×100 (1)
【0057】
有機溶媒溶液又は溶融した樹脂を撹拌しながら、水系媒体を徐々に添加して転相させる。
水系媒体を添加する際の有機溶媒溶液温度は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下である。
【0058】
転相乳化の後に、必要に応じて、得られた分散液から蒸留等により有機溶媒を除去してもよい。この場合、有機溶媒の残存量は、分散液中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0質量%である。
【0059】
分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径D50は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、そして、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.4μm以下である。
分散液中の樹脂粒子のCV値は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
体積中位粒径D50及びCV値は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
樹脂(A)及び樹脂(C)のいずれか一方を含有する樹脂粒子も、前述の方法に準じて製造することができる。樹脂(A)及び樹脂(C)のいずれか一方を含有する樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値の好適範囲は前述の範囲と同様である。
【0060】
〔着色剤粒子〕
着色剤粒子は、着色剤粒子のトナー粒子への分散性を高め、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、着色剤と炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有する。着色剤粒子中の着色剤が、非晶性ポリエステル系樹脂(B)で被覆されていることが好ましい。なお、「着色剤が樹脂(B)で被覆されている」とは、着色剤に樹脂(B)が吸着している状態をいう。着色剤は、少なくともその表面の一部が樹脂(B)により被覆されていればよいが、着色剤の全体が樹脂(B)により被覆されていることが好ましい。着色剤が樹脂(B)で被覆されているかは、着色剤粒子の割断面を分析することで同定できる。具体的には、割断面の着色剤に接している樹脂を分析することで同定できる。
【0061】
<着色剤>
本発明に用いられる着色剤としては、顔料及び染料が挙げられ、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、黒色顔料が挙げられる。
シアン顔料は、フタロシアニン顔料が好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。イエロー顔料は、モノアゾ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン系顔料、及び縮合ジスアゾ系顔料が好ましく、マゼンタ顔料は、キナクリドン顔料、BONAレーキ顔料等の溶性アゾ顔料、ナフトールAS顔料等の不溶性アゾ顔料が好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックが好ましい。
染料としては、アクリジン染料、アゾ染料、ベンゾキノン染料、アジン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、フタロシアニン染料、アニリンブラック染料等が挙げられる。着色剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
着色剤がイエロー顔料であるとき、イエロー顔料1分子が含むNH構造の量は、好ましくは4.0mmol/g以上、より好ましくは5.0mmol/g以上、更に好ましくは7.0mmol/g以上であり、そして、好ましくは15.0mmol/g以下、より好ましくは12.0mmol/g以下である。なお、イエロー顔料1分子が含むNH構造の量とは、イエロー顔料中の-NH-及び-NHの合計数を、当該顔料の分子量で除した値である。
【0063】
イエロー顔料は、NH構造の量を上記範囲とする観点から、好ましくは、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン系顔料、及び縮合ジスアゾ系顔料から選択される少なくとも1種、より好ましくは、ベンズイミダゾロン顔料及びイソインドリン系顔料から選択される少なくとも1種である。
ベンズイミダゾロン顔料としては、C.I.ピグメントイエロー180(1分子中に有する-NH-及び-NHの合計数=6、分子量=733、NH基量=8.2mmol/g)が例示される。
イソインドリン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー185(1分子中に有する-NH-及び-NHの合計数=4、分子量=337、NH基量=11.9mmol/g)が例示される。
縮合ジスアゾ系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー93(1分子中に有する-NH-及び-NHの合計数=4、分子量=937、NH基量=4.3mmol/g)、C.I.ピグメントイエロー95(1分子中に有する-NH-及び-NHの合計数=4、分子量=917、NH基量=4.4mmol/g)が例示される。
本発明に用いられる顔料は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、C.I.ピグメントイエロー180及びC.I.ピグメントイエロー185から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0064】
<非晶性ポリエステル系樹脂B(樹脂(B))>
樹脂(B)は、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)の重縮合物であるポリエステル樹脂又はアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)の重縮合物であるポリエステル部位を含む複合樹脂である。
複合樹脂としては、例えば、アルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)の重縮合物のウレタン変性物、アルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)の重縮合物のエポキシ変性物、アルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)の重縮合物であるポリエステル部位とスチレンアクリル部位とが複合化された樹脂が挙げられる。
これらの中でも、樹脂(B)は、アルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)の重縮合物であるポリエステル部位とスチレンアクリル部位とが複合化された樹脂であることが好ましい。
【0065】
アルコール成分(c)は、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含む。
炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールとしては、アルコール成分(a)で例示したものと同様のものが挙げられ、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくはネオペンチルグリコールである。
アルコール成分(c)中、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールの含有量は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは85mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、好ましくは100mol%以下、より好ましくは100mol%である。
【0066】
炭素数2以上5以下の脂肪族ジオール以外のアルコール成分(c)としては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、炭素数6以上の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらアルコール成分としては、アルコール成分(a)で例示したものと同様のものが例示される。
【0067】
カルボン酸成分(d)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上のカルボン酸化合物が挙げられる。これらカルボン酸成分(d)としては、カルボン酸成分(b)で例示したものと同様のものが例示され、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは芳香族ジカルボン酸化合物、より好ましくはテレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる少なくとも1種である。
カルボン酸成分(d)中、芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、好ましくは90mol%以上、より好ましくは95mol%以上であり、そして、好ましくは100mol%以下、より好ましくは100mol%である。
【0068】
アルコール成分(c)の水酸基に対するカルボン酸成分(d)のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0069】
樹脂(B)がアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)の重縮合物であるポリエステル部位とスチレンアクリル部位とが複合化された樹脂である場合、スチレンアクリル部位は、例えば、スチレン系化合物及び(メタ)アクリル系化合物を含む原料モノマーの付加重合物である。
樹脂(B)のスチレンアクリル部位は、樹脂(A)と同様のスチレンアクリル部位であり、原料モノマーとして好ましい各化合物、及び該各化合物の原料モノマー中の含有量等は、樹脂(A)で示したものと同様である。
【0070】
樹脂(B)は、樹脂(A)と同様の方法で製造してもよく、反応条件等は、樹脂(A)の製造方法で示したものと同様である。
【0071】
<着色剤粒子の製造方法>
着色剤粒子は、例えば、着色剤と樹脂(B)を混合することで得られる。
着色剤粒子の分散液の製造方法に特に制限はなく、公知の混練機、分散機等を用いて所望の体積中位粒径D50の着色剤粒子を得るよう制御できればよいが、好ましくは、着色剤への樹脂(B)の吸着性を向上する観点から、樹脂(B)を有機溶媒に溶解した後、更に水系媒体を混合して得られる分散液と、着色剤とを、該有機溶媒の存在下で分散することで着色剤粒子の分散液を得る工程を有する方法である。
【0072】
樹脂(B)と有機溶媒とを混合した後に、樹脂(B)を中和してもよい。用いられる中和剤は、樹脂粒子の製造方法で示した中和剤と同様であり、水酸化ナトリウムが好ましい。
樹脂(B)の中和度は、好ましくは60mol%以上、より好ましくは70mol%以上、更に好ましくは75mol%以上であり、そして、好ましくは95mol%以下、より好ましくは90mol%以下、更に好ましくは85mol%以下である。
なお、樹脂(B)の中和度は、樹脂粒子に含まれる樹脂の中和度と同様に、式(1)により求めることができる。
【0073】
樹脂(B)と、有機溶媒と、水系媒体との混合に用いる装置としては、例えば、アンカー翼、ディスパー翼等を備えた混合撹拌装置が挙げられる。
混合時の温度は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましい温度は15℃以上であり、そして、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下である。
混合時間は、好ましくは3分間以上、より好ましくは5分間以上、更に好ましくは8分間以上であり、そして、好ましくは30分間以下、より好ましくは20分間以下、更に好ましくは15分間以下である。
【0074】
分散に用いる装置としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)等のホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの装置は、1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、着色剤粒子を小粒径化する観点から、ビーズミル等のメディア式分散機、ホモジナイザーが好ましい。
ホモジナイザーを用いる場合、処理圧力は、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、そして、好ましくは270MPa以下、より好ましくは200MPa以下、更に好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
【0075】
着色剤粒子の分散液は、金網等で濾過し、粗大粒子等を除去するのが好ましい。また、ビーズミルを使用して酸化チタンを分散した場合には、ビーズの除去と、粗大粒子の除去とを同時に行ってもよい。
また、有機溶媒、防腐剤、防黴剤等の各種添加剤を、着色剤粒子の分散液に添加してもよい。
【0076】
着色剤粒子中、着色剤と樹脂(B)との質量比(着色剤/樹脂(B))は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、55/45以上、好ましくは60/40以上、より好ましくは65/35以上であり、そして、99/1以下、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下である。
【0077】
着色剤粒子分散液中の着色剤の含有量は、印刷物の画像濃度の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
着色剤粒子分散液の固形分濃度は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0078】
着色剤粒子の体積中位粒径D50は、トナー粒子中での着色剤粒子の分散性向上の観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.15μm以上であり、そして、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.25μm以下である。
着色剤粒子のCV値は、トナー粒子中での着色剤粒子の分散性向上の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下である。
着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値は、実施例の方法によって測定される。
【0079】
トナー粒子中の着色剤の含有量は、印刷物の画像濃度の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0080】
[着色剤粒子分散液]
本発明の着色剤粒子分散液は、着色剤と炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有する着色剤粒子を含む。また、着色剤粒子中の非晶性ポリエステル系樹脂(B)に対する着色剤の質量比(着色剤/非晶性ポリエステル樹脂(B))は、55/45以上99/1以下である。
本発明の着色剤粒子分散液は、着色剤が樹脂(B)で被覆された着色剤粒子を含むため、着色剤及び/又は着色剤粒子の凝集を防ぐことができ、高い保管安定性を有する。そのため、本発明の着色剤粒子分散液を静電荷像現像用トナーの製造の際に用いることで、カブリの発生を抑制する静電荷像現像用トナーを高い生産性で得ることができる。
【0081】
着色剤粒子分散液が含む水系媒体としては、上記着色剤粒子の製造方法で挙げた水系媒体と同様の水系媒体が挙げられる。
【0082】
着色剤粒子中、着色剤と樹脂(B)との質量比(着色剤/樹脂(B))は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、55/45以上、好ましくは60/40以上、より好ましくは65/35以上であり、そして、99/1以下、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下である。
【0083】
着色剤粒子分散液中の着色剤の含有量、着色剤粒子分散液の固形分濃度、着色剤粒子の体積中位粒径D50、及び着色剤粒子のCV値は、上記着色剤粒子の製造方法で示した範囲と同様である。
【0084】
〔樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集させる工程〕
樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集させる工程では、水系媒体中で、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を同一又は異なる粒子に含有する樹脂粒子と、着色剤粒子とを凝集させて、凝集粒子1を得る。ここで、樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液と、着色剤粒子を含有する着色剤粒子分散液とを混合して、これらの粒子を凝集させることがより好ましい。樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液は、それぞれ樹脂粒子の水系分散液及び着色剤粒子の水系分散液であることが更に好ましい。
樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集させる工程において、離型剤を更に凝集させることが好ましい。離型剤は、離型剤を含む離型剤粒子を含有する離型剤粒子分散液としてより好ましく、離型剤粒子分散液が離型剤粒子の水系分散液であることが更に好ましい。
【0085】
<離型剤>
離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
【0086】
離型剤の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
【0087】
トナー粒子中の離型剤の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。
【0088】
(離型剤粒子分散液)
離型剤粒子分散液は、界面活性剤を用いて得ることも可能であるが、離型剤と後述する樹脂粒子(S)とを混合して得ることが好ましい。離型剤と樹脂粒子(S)を用いて離型剤粒子を調製することで、樹脂粒子(S)により離型剤粒子が安定化され、界面活性剤を使用しなくても離型剤を水系媒体中に分散させることが可能となる。離型剤粒子分散液中では、離型剤粒子の表面に樹脂粒子(S)が多数付着した構造を有していると考えられる。
離型剤を分散する樹脂粒子(S)を構成する樹脂は、好ましくはポリエステル系樹脂であり、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントを有する複合樹脂Dを用いることがより好ましい。
離型剤粒子分散液及び複合樹脂Dについては、特開2021-182045号公報が参照される。
【0089】
樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集させる工程において、水性媒体中での樹脂粒子の凝集は、他の添加剤の存在下で行ってもよい。
水性媒体としては、樹脂粒子の製造方法で示した水性媒体を用いることができ、好ましい範囲なども同様である。
他の添加剤としては、例えば、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤が挙げられる。
【0090】
〔界面活性剤〕
樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集させる工程では、各粒子の分散液を混合し、混合分散液を調製する際、樹脂粒子、離型剤粒子、着色剤粒子等の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行ってもよい。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0091】
界面活性剤を使用する場合、その総使用量は、樹脂粒子の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0092】
<凝集剤>
樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集させる工程では、凝集を効率的に行う観点から、凝集剤を添加することが好ましい。
凝集剤としては、例えば、第四級塩等のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤、無機系凝集剤が挙げられる。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機金属塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;2価以上の金属錯体が挙げられる。
凝集性を向上させ均一な凝集粒子1を得る観点から、1価以上5価以下の無機系凝集剤が好ましく、1価以上2価以下の無機金属塩、無機アンモニウム塩がより好ましく、無機アンモニウム塩が更に好ましく、硫酸アンモニウムが更に好ましい。
【0093】
凝集剤を用いて、例えば、0℃以上40℃以下の樹脂粒子及び着色剤粒子、並びに必要に応じて離型剤粒子を含む混合分散液に、樹脂粒子中の樹脂100質量部に対し5質量部以上50質量部以下の凝集剤を添加し、樹脂粒子、着色剤粒子、及び離型剤粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子1を得る。更に、凝集を促進させる観点から、凝集剤を添加した後に分散液の温度を上げることが好ましい。
【0094】
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点から、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
【0095】
<凝集停止剤>
凝集停止剤としては、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。凝集停止剤は、水溶液で添加してもよい。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、樹脂粒子中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0096】
凝集粒子1の体積中位粒径D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
【0097】
なお、本発明において、樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集させる工程の後、融着させる工程の前に、得られた凝集粒子1に非晶性樹脂(好ましくは非晶性ポリエステル系樹脂)を含むシェル用樹脂粒子を付着させて凝集粒子2を得る、シェル用樹脂粒子を凝集させる工程を有していてもよい。シェル用樹脂粒子を凝集させる工程を有することで、コアシェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。
ここで、シェル用樹脂粒子に使用される非晶性樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂が好ましく、上述した非晶性ポリエステル系樹脂(A)であってもよい。シェル用樹脂粒子は、前述の樹脂粒子の製造方法と同様の方法により得られる。
また、トナーの製造方法がシェル用樹脂粒子を凝集させる工程を有する場合には、該工程において凝集粒子2が、トナー粒子として適度な粒径に成長したところで凝集を停止させることが好ましく、上述の凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
【0098】
〔融着させる工程〕
融着させる工程では、例えば、凝集粒子を水性媒体中で融着させる。
融着によって、凝集粒子に含まれる各粒子を融着し、融着粒子が得られる。
融着させる工程においては、凝集粒子の融着性を向上させる観点及びカブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、凝集粒子に含まれる樹脂のうち最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度以上の温度で保持する。
凝集粒子を融着させる際の保持温度は、凝集粒子の融着性を向上させる観点及びトナーの生産性を向上させる観点から、凝集粒子に含まれる樹脂のうち最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度より、好ましくは5℃高い温度以上、より好ましくは10℃高い温度以上、更に好ましくは15℃高い温度以上であり、そして、樹脂のガラス転移温度より、好ましくは40℃高い温度以下、より好ましくは30℃高い温度以下、更に好ましくは25℃高い温度以下である。
その際、樹脂のガラス転移温度以上の温度で保持する時間は、カブリの発生を抑制するトナーを得る観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは10分間以上、更に好ましくは30分間以上であり、そして、好ましくは240分間以下、より好ましくは120分間以下、更に好ましくは90分間以下である。
なお、所望の円形度となるまで、上記の温度で保持することが好ましい。
【0099】
融着により得られた融着粒子の体積中位粒径D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
【0100】
融着により得られる融着粒子の円形度は、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
融着は、上記好ましい円形度に達した後に終了することが好ましい。
円形度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0101】
〔後処理工程〕
融着させる工程の後に後処理工程を行ってもよく、融着粒子を単離することによってトナー粒子が得られる。融着させる工程で得られた融着粒子は、水性媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、吸引濾過法等が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。このとき、添加した界面活性剤も除去することが好ましいため、界面活性剤の曇点以下で水性媒体により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
次に乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としては、例えば、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法が挙げられる。
【0102】
〔トナー粒子〕
トナー粒子の体積中位粒径D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
【0103】
トナー粒子の円形度は、高画質の画像を得る観点から、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上であり、そして、クリーニング性の観点から、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
【0104】
トナー粒子のCV値は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは18%以上であり、そして、高画質の画像を得る観点から、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
トナー粒子の体積中位粒径D50及びCV値は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0105】
[静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナー粒子を含む。
トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
【0106】
<外添剤>
本発明のトナーには、流動性を向上させるために、トナー粒子の表面を外添剤等の特性改良剤で処理することにより、例えば、トナー粒子と外添剤とを含有するものとしてもよい。外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化亜鉛等の無機材料の微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。これらの外添剤の中では、シリカが好ましく、疎水化処理剤で処理された疎水性シリカがより好ましい。
【0107】
疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサンが挙げられる。これらの中でもヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0108】
外添剤を用いて、トナー粒子の表面処理を行う場合、該外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性の観点から、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
トナーは、電子写真方式の印刷において、静電荷像現像に用いられる。トナーは、例えば、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例0109】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。各性状値は、次の方法により、測定、評価した。
なお、「アルキレンオキシド(X)」等の標記において、かっこ内の数値Xは、アルキレンオキシドの平均付加mol数を意味する。
【0110】
[測定方法]
ポリエステル樹脂、樹脂粒子、トナー等の各性状値は次の方法により測定、評価した。
【0111】
〔樹脂の軟化点、結晶性指数、融点、及びガラス転移温度〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。結晶性樹脂の時には該ピーク温度を融点とした。
また、非晶性樹脂の場合にピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0112】
〔樹脂の酸価〕
JIS K 0070:1992に記載の中和滴定法に従って測定した。但し、測定溶媒をクロロホルムとした。
【0113】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
【0114】
〔樹脂粒子、着色剤粒子、並びに離型剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値〕
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに試料分散液をとり、蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径D50及び体積平均粒径Dvを測定した。また、CV値(変動係数(粒径分布))は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径Dv)×100
【0115】
〔樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、及び離型剤粒子分散液の固形分濃度〕
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、水分量の変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
【0116】
〔凝集粒子の体積中位粒径D50
凝集粒子の体積中位粒径D50は、次の通り測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、改めて3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50を求めた。
【0117】
〔融着粒子の円形度〕
次の条件で融着粒子の円形度を測定した。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス株式会社製)
・分散液の調製:融着粒子の分散液を固形分濃度が0.001~0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製した。
・測定モード:HPF測定モード
【0118】
〔トナー粒子の体積中位粒径D50及びCV値〕
トナー粒子の体積中位粒径D50は、次の通り測定した。
測定装置、アパチャー径、解析ソフト、電解液は、前述の凝集粒子の体積中位粒径D50の測定で用いたものと同様のものを用いた。
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」(花王株式会社製、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)=13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに乾燥後のトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、改めて3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50及び体積平均粒径Dを求めた。
また、CV値(%)は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径D)×100
【0119】
[樹脂の製造]
〔非晶性ポリエステル樹脂(A)の製造〕
製造例A1(樹脂A-1の製造)
表1に示すフマル酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器、及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れた。窒素雰囲気下、反応系を180℃で1時間保持した後に180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で5時間保持し、重縮合させた。その後、180℃まで冷却した後、フマル酸及びラジカル重合禁止剤(4-tert-ブチルカテコール)5gを反応系に投入し、180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃で1時間反応を行い、210℃、10kPaにて表1に示す軟化点まで反応を行い、樹脂A-1を得た。物性を表1に示す。
【0120】
製造例A2(樹脂A-2の製造)
表1に示すイソフタル酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器、及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れた。窒素雰囲気下、反応系を180℃で1時間保持した後に180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で5時間保持し、重縮合させた。その後、180℃まで冷却した後、イソフタル酸を反応系に投入し、180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、230℃にて1時間反応を行い、230℃、10kPaにて表1に示す軟化点まで反応を行い、樹脂A-2を得た。物性を表1に示す。
【0121】
比較製造例A1(樹脂A-81の製造)
表1に示すフマル酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、撹拌器、及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れた。窒素雰囲気下、235℃まで昇温し、その後235℃で5時間保持し、重縮合させた。その後、180℃まで冷却した後、フマル酸及びラジカル重合禁止剤(4-tert-ブチルカテコール)5gを反応系に投入し、180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃で1時間反応を行い、210℃、10kPaにて表1に示す軟化点まで反応を行い、樹脂A-81を得た。物性を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
〔結晶性ポリエステル樹脂(C)の製造〕
製造例C1(樹脂C-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコの内部を窒素置換し、表2に示すポリエステル樹脂の原料モノマーを入れた。反応系を撹拌しながら、135℃に昇温し、135℃で3時間保持した後、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)10gを反応系に加え、更に200℃にて1時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaの減圧下にて1時間保持し、結晶性ポリエステル樹脂である樹脂C-1を得た。物性を表2に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
〔非晶性ポリエステル系樹脂Bの製造〕
製造例1(スチレンアクリル部位1の製造)
表3に示す両反応性化合物としてアクリル酸を含むスチレンアクリル部位の原料モノマーを、ステンレス製撹拌棒を備えたオートクレーブ中で300℃に加熱し、加圧加熱条件下2時間にて原料モノマーを重合した。常圧、常温に戻すことで析出したスチレンアクリル系樹脂を回収することで、スチレンアクリル部位1を得た。物性を表3に示す。
【0126】
製造例2(スチレンアクリル部位2の製造)
スチレンアクリル部位1の製造において、原料モノマーの添加量を表3に示すように変更した以外は同様にして、スチレンアクリル部位2を得た。物性を表3に示す。
【0127】
【表3】
【0128】
製造例B1(樹脂B-1の製造)
表4に示すポリエステル部位の原料モノマー、エステル化触媒、及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、及び窒素導入管を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃で1時間保持した後に180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で5時間重縮合反応させ、さらに230℃、8kPaにて1時間反応を行った。210℃まで冷却した後、スチレンアクリル部位1を加え、210℃で4時間保持した。8kPaまで減圧し、樹脂の軟化点が表4に示す所定の軟化点に到達したことを確認し、反応を停止させて、樹脂B-1を得た。物性を表4に示す。
【0129】
製造例B2(樹脂B-2の製造)
製造例B1において、スチレンアクリル部位1をスチレンアクリル部位2に変更した以外は同様にして、樹脂B-2を得た。物性を表4に示す。
【0130】
製造例B3(非晶質樹脂B-3の製造)
表4に示すようにスチレンアクリル部位を用いずに、ポリエステル部位の原料モノマー、エステル化触媒、及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、及び窒素導入管を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃で1時間保持した後に180℃から220℃まで10℃/hで昇温し、その後220℃で5時間重縮合反応させ、さらに220℃、8kPaにて表4に示す軟化点に達するまで反応を行い、樹脂B-3を得た。物性を表4に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
〔樹脂粒子分散液の製造〕
製造例X1(樹脂粒子分散液X-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計、及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、樹脂A-1を160g、樹脂C-1を40g、及びメチルエチルケトン200gを入れ、73℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分間撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/minで撹拌しながら、脱イオン水700gを50分間かけて添加し、転相乳化した。得られた溶液を、73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し分散液を得た。その後、撹拌を継続しながら分散液を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液X-1を得た。得られた樹脂粒子分散液X-1中の樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表5に示す。
【0133】
製造例X2及び比較製造例X1(樹脂粒子分散液X-2及びX-81の製造)
製造例X1において、樹脂を表5に示すように変更した以外は同様にして、樹脂粒子分散液X-2及びX-81を得た。得られた樹脂粒子分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表5に示す。
【0134】
【表5】
【0135】
〔着色剤粒子分散液の製造〕
製造例F1(着色剤粒子分散液F-1の製造)
ディスパー翼を備えた撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計、及び窒素導入管を備えた内容積5Lの容器に、樹脂B-1を75g及びメチルエチルケトン326gを入れ20℃にて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液15g(樹脂B-1の酸価に対して中和度が80モル%になる量)添加し、更に脱イオン水を1071g添加して、ディスパー翼で20℃にて10分間撹拌した。次いで、イエロー顔料「パリオトールイエローD1155」(BASF社製 C.I.ピグメントイエロー185)300gを加え、ディスパー翼で6400r/minにて20℃で2時間撹拌を行った。その後、200メッシュのフィルターを通し、ホモジナイザー「Microfluidizer M-110EH」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で15パス処理した。得られた分散液を撹拌しながら、減圧下70℃でメチルエチルケトンと一部の水を留去した。冷却後、200メッシュのフィルターを通し、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、着色剤粒子分散液F-1を得た。得られた着色剤粒子分散液F-1中の着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値、並びに着色剤粒子分散液F-1の保管安定性を表6に示す。
なお、着色剤粒子分散液の保管安定性は以下のように評価した。
保管前の着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径D50を上記方法で測定した。その後、着色剤粒子分散液を45℃で1ヶ月間保管し、保管後の着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径D50を上記方法で測定した。保管安定性を、保管前の着色剤粒子の体積中位粒径D50に対する保管後の着色剤粒子の体積中位粒径D50(保管後の粒径/保管前の粒径)として示す。(保管後の粒径/保管前の粒径)の値が1に近いほど保管安定性に優れる。
【0136】
製造例F2~F8及び比較製造例F2(着色剤粒子分散液F-2~F-8及びF-82の製造)
使用する着色剤及び樹脂の種類及び量を表1に示すように変更した以外は、製造例F1と同様にして着色剤粒子分散液F-2~F-8及びF-82を得た。得られた着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値並びに着色剤粒子分散液の保管安定性を表6に示す。
【0137】
比較製造例F1(着色剤分散液F-81の製造)
内容積2Lの容器にイエロー顔料「パリオトールイエローD1155」(BASF社製 C.I.ピグメントイエロー185)150g、非イオン性界面活性剤「エマルゲンB-66」(花王株式会社製、ノニオン性界面活性剤)37.5g、及び脱イオン水750gを添加して、ディスパー翼を備えた撹拌機「ラボ・リューション」(プライミクス株式会社製)を用いて6400rpm/minにて20℃にて1時間撹拌を行った。その後、200メッシュのフィルターを通し、ホモジナイザー「Microfluidizer M-110EH」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で15パス処理した。その後、200メッシュのフィルターを通し、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、着色剤粒子分散液F-81を得た。得られた着色剤粒子分散液F-81中の樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表6に示す。
【0138】
【表6】

*1:PY-185は構造中にNH構造を11.9mmol/g含むイエロー顔料「パリオトールイエローD1155」(BASF社製、C.I.ピグメントイエロー185)を示す。
PY-180は構造中にNH構造を8.2mmol/g含むイエロー顔料「Novoperm Yellow HG01」(クラリアントケミカルズ株式会社製、C.I.ピグメントイエロー180)を示す。
PY-155は構造中にNH構造を2.8mmol/g含むイエロー顔料「Toner Yellow 3GP-CT」(クラリアントケミカルズ株式会社製、C.I.ピグメントイエロー155)を示す。
Regal-330はカーボンブラック「Regal-330R」(キャボット社製)を示す。
*2:B-66はノニオン性界面活性剤「ポリオキシエチレン(15)トリベンジルフェニルエーテル」(花王株式会社製、エマルゲンB-66)を示す。
*3:着色剤/樹脂(B)は、樹脂(B)に対する着色剤の質量比を示す。ただし、比較製造例F1においては界面活性剤に対する着色剤の質量比を示す。
*4:保管前の着色剤粒子の粒径に対する45℃で1ヶ月間保管した後の着色剤粒子の粒径(保管後の粒径/保管前の粒径)を示す。
【0139】
表6に示すように、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)により着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液F1~F8は、保管時の着色剤粒子の凝集が抑制され、保管安定性に優れていた。
一方、ノニオン性界面活性剤により着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液F81、及びアルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物である非晶性ポリエステル樹脂により着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液F82は、着色剤粒子分散液F1~F8と比較して、保管時の着色剤粒子の凝集が進行していた。
【0140】
〔複合樹脂Dの製造〕
製造例D1(樹脂D-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのプロピレンオキシド(2.2)付加物4,313g、テレフタル酸818g、コハク酸727g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)30g、及び没食子酸3.0gを入れ、窒素雰囲気下、反応系を撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン2,756g、メタクリル酸ステアリル689g、アクリル酸142g、及びジブチルパーオキシド413gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、樹脂D-1を得た。物性を表7に示す。
【0141】
【表7】
【0142】
製造例S1(樹脂粒子分散液S-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計、及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、樹脂D-1を200g及びメチルエチルケトン200gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂D-1の酸価に対して中和度60mol%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、280r/minで撹拌しながら、脱イオン水700gを50分かけて添加し、転相乳化した。得られた溶液を、73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/minで撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液S-1を得た。得られた樹脂粒子分散液S-1中の樹脂粒子の体積中位粒径D50は0.09μm、CV値23%であった。
【0143】
〔離型剤粒子分散液の製造〕
製造例W1(離型剤粒子分散液W-1の製造)
内容積1Lのビーカーに、脱イオン水120g、樹脂粒子分散液S-1を86g、及びパラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、融点75℃)40gを添加し、90~95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、溶融混合物を得た。
得られた溶融混合物を90~95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、20分間分散処理を行った後に室温(20℃)まで冷却した。得られた分散物に脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、離型剤粒子分散液W-1を得た。得られた離型剤粒子分散液W-1中の離型剤粒子の体積中位粒径は0.47μm、CV値は27%であった。
【0144】
[トナーの製造]
実施例1(トナー1の製造)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した3L容の4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液X-1を500g、離型剤粒子分散液W-1を80g、着色剤粒子分散液F-1を81g、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液「ネオペレックスG-15」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤)3.3gを入れ、温度25℃で混合した。次に、当該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム43gを脱イオン水980gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH8.2に調整した溶液を、25℃で10分かけて滴下した後、58℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径D50が6.2μmになるまで、58℃で保持し、凝集粒子1の分散液を得た。
得られた凝集粒子1の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE-27C」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)22g、脱イオン水1100gを添加した。その後、78℃まで1時間かけて昇温し、円形度が0.970になるまで78℃で保持することにより、凝集粒子1が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子の分散液を30℃に冷却し、分散液を吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、25℃で2時間吸引濾過した。その後、真空定温乾燥機「DRV622DA」(ADVANTEC社製)を用いて、33℃で24時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。トナー粒子の物性を表8に示す。
トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー1を得た。トナー1の評価結果を表8に示す。
【0145】
[トナーの評価]
〔印刷物のカブリ〕
市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(沖電気工業株式会社製)にトナーを実装し、上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(沖電気工業株式会社製)に、温度23℃湿度50%環境(NN環境)下において、白紙印字を行い、その際、白紙印字の途中でプリンタを停止させた。プリンタより現像ユニットを取り出し、その感光体上に「Scotch(登録商標)メンディングテープ810」(スリーエムジャパン株式会社製、幅:18mm)を貼り付け、感光体上のトナーをテープ剥離した。
感光体上から剥離したテープと未使用のテープを、上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(沖電気工業株式会社製)に貼り付け、感光体上から剥離したテープと未使用のテープをそれぞれ測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)にて測定した。感光体上から剥離したテープと未使用のテープの色差(ΔE)をカブリとした。カブリの値が小さいほど、カブリのない良好な画像が得られる。
【0146】
実施例2~9及び比較例1~3(トナー2~9及びトナー81~83の製造)
使用する樹脂粒子分散液の種類及び着色剤粒子分散液の種類を表8に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー2~9及びトナー81~83を作製した。得られたトナー粒子の物性、及びトナーの評価結果を表8に示す。
【0147】
【表8】
【0148】
表8に示す通り、炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(A)を含有する樹脂粒子と、着色剤と炭素数2以上5以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分(c)とカルボン酸成分(d)との重縮合物であるポリエステル部位を含む非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有する着色剤粒子とを、水系媒体中で凝集させる工程及び融着させる工程を含む本発明の製造方法によって、カブリの発生を抑制するトナー1~9が得られた。また、非晶性ポリエステル系樹脂(B)がスチレンアクリル部位を複合化された樹脂である実施例1のトナー1は、非晶性ポリエステル系樹脂(B)が非晶性ポリエステル樹脂であることを除いて実施例1と同じ条件である実施例8のトナー8よりも、カブリの発生がより抑制されていた。これは、樹脂(B)がスチレンアクリル部位を有することで樹脂(B)による着色剤の被覆がより高まり、トナー粒子中での着色剤の分散性が向上したため、トナーの帯電量分布が向上し、カブリの発生がより抑制されたと考えられる。
一方、比較例1のトナー81では、着色剤がノニオン性界面活性剤により分散された着色剤粒子を用いたため、トナー粒子の表面に着色剤が露出し、カブリの抑制が十分とならなかったと考えられる。また、比較例2のトナー82では、アルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物である非晶性ポリエステル樹脂により着色剤が分散された着色剤粒子を用いたため、樹脂粒子と着色剤粒子との親和性が低く、トナー粒子中に着色剤粒子が取り込まれず、カブリの発生が抑制できなかったと考えられる。更に、比較例3のトナー83は、アルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物である非晶性ポリエステル樹脂を含有する樹脂粒子を用いたため、樹脂粒子と樹脂(B)を含む着色剤粒子との親和性が低く、トナー粒子中に着色剤粒子が取り込まれず、カブリの発生が抑制できなかったと考えられる。