(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144875
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】運航管理装置、運航管理方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G08G5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057038
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】内田 健介
(72)【発明者】
【氏名】庄田 武志
(72)【発明者】
【氏名】田川 勉
(72)【発明者】
【氏名】八幡 知倫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 伶実
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉原 香織
(72)【発明者】
【氏名】大城 智洋
(72)【発明者】
【氏名】下野 友也
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA26
5H181BB04
5H181CC12
5H181MA48
(57)【要約】
【課題】 運航管理に用いられる位置情報に表される位置と、エアモビリティの実際の飛行位置とのずれに因るエアモビリティの運航管理の不具合発生を抑制する。
【解決手段】 運航管理装置の取得部と算出部と出力部と管理部とを備えている。取得部は、エアモビリティの周囲環境の情報と、エアモビリティから発信された位置情報とを取得する。算出部は、取得されたエアモビリティの周囲環境の情報および位置情報を用いて、エアモビリティが飛行していると推定される領域を推定飛行領域として算出する。出力部は、推定飛行領域を表す情報を出力する。管理部は、推定飛行領域を用いてエアモビリティの運航管理を行う。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアモビリティの周囲環境の情報と、前記エアモビリティから発信された位置情報とを取得する取得部と
取得された前記エアモビリティの周囲環境の情報および位置情報を用いて、前記エアモビリティが飛行していると推定される領域を推定飛行領域として算出する算出部と、
推定飛行領域を表す情報を出力する出力部と、
推定飛行領域を用いて前記エアモビリティの運航管理を行う管理部と
を備える運航管理装置。
【請求項2】
前記取得部は、さらに、前記エアモビリティの動力源におけるエネルギー源の残量に関わる残量情報を取得し、
前記算出部は、さらに、取得された残量情報と、周囲環境の情報と、推定飛行領域とを用いて、飛行中の前記エアモビリティが継続して飛行可能な範囲を航続範囲として算出し、
前記出力部は、さらに、算出された航続範囲を表す情報を出力する
請求項1に記載の運航管理装置。
【請求項3】
前記算出部は、安全性の度合いが異なる複数の航続範囲を算出する
請求項2に記載の運航管理装置。
【請求項4】
前記出力部は、出力する航続範囲を表す情報に関連付けて、当該航続範囲の内側に在る緊急に着陸可能な離着陸場の場所情報および動力源関連設備の設置場所情報を出力する
請求項2に記載の運航管理装置。
【請求項5】
前記管理部は、前記エアモビリティの推定飛行領域と、前記エアモビリティの予め与えられている飛行計画とを用いて、前記エアモビリティが飛行計画通りに飛行しているか否かを判断し、
前記出力部は、前記エアモビリティに関する情報を表示装置に出力し、
表示装置に出力された前記エアモビリティに関する情報であって飛行計画通りに飛行していないと判断された前記エアモビリティに関する情報の少なくとも一部は、表示装置の表示画面に強調表示される
請求項1に記載の運航管理装置。
【請求項6】
前記管理部は、前記エアモビリティの予め与えられている飛行計画と、前記推定飛行領域の情報を用いて算出される前記エアモビリティが飛行を開始してからの飛行距離と、前記エアモビリティが飛行を開始してから消費したエネルギー消費量と、前記エアモビリティの出発地および目的地と、前記エアモビリティが飛行を開始してから目的地に到着するまでに必要と計画されたエネルギー消費量との情報を用いて、運航管理に用いる前記エアモビリティの運航状況を数値化する指標を算出し、算出した指標を用いて前記エアモビリティの運航管理を行う
請求項1に記載の運航管理装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記管理部により算出された指標を表す情報をさらに出力する
請求項6に記載の運航管理装置。
【請求項8】
コンピュータによって、
エアモビリティの周囲環境の情報と、前記エアモビリティから発信された位置情報とを取得し、
取得された前記エアモビリティの周囲環境の情報および位置情報を用いて、前記エアモビリティが飛行していると推定される領域を推定飛行領域として算出し、
推定飛行領域を表す情報を出力し、
推定飛行領域を用いて前記エアモビリティの運航管理を行う運航管理方法。
【請求項9】
エアモビリティの周囲環境の情報と、前記エアモビリティから発信された位置情報とを取得する処理と、
取得された前記エアモビリティの周囲環境の情報および位置情報を用いて、前記エアモビリティが飛行していると推定される領域を推定飛行領域として算出する処理と、
推定飛行領域を表す情報を出力する処理と、
推定飛行領域を用いて前記エアモビリティの運航管理を行う処理と
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンや空飛ぶクルマなどのエアモビリティの運航を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エアモビリティを用いた空の利活用を実現するために、エアモビリティの機体開発や運航管理のルール検討などが行われている。ここでのエアモビリティとは、電動垂直離着陸型航空機であり、UAV(Unmanned Aerial Vehicle(ドローンとも称される))や空飛ぶクルマが例として挙げられる。
【0003】
なお、特許文献1(特開2022-186375号公報)には、無人航空機の運航計画管理に関する次のような技術が示されている。つまり、特許文献1では、空域が複数のセルに区画され、セル毎の空中リスクと地上リスクの情報が運航管理計画装置に記憶されている。運航管理計画装置は、そのような情報を用いて、無人航空機が飛行することにより生じるリスクの度合いであるリスク値をセル毎に算出し、セル毎のリスク値を表すリスクマップを生成する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアモビリティの運航管理には、飛行中のエアモビリティから発信された位置情報が用いられる。その位置情報はエアモビリティから無線通信により予め定められた頻度でもって定期的に発信され、当該位置情報を受信する受信装置を介して運航管理を行う運航管理装置に伝達される。運航管理装置では、エアモビリティが位置情報に表される位置を飛行しているとして当該エアモビリティの運航管理を行う。
【0006】
しかしながら、運航管理に用いる位置情報に基づいたエアモビリティの飛行位置がエアモビリティの正しい飛行位置であるとは限らない。つまり、位置情報がエアモビリティから発信されてから、この位置情報が運航管理装置に伝達され運航管理に係る処理により運航管理装置で認識されるまでに僅かではあるが、時間が掛かる。また、例えば、位置情報を発信した直後に突風でエアモビリティが飛ばされたことに因ってエアモビリティの飛行位置が位置情報により表される位置からずれてしまう場合がある。また、エアモビリティの飛行空域の電波通信状況が不良のために、エアモビリティから発信された位置情報が受信装置により受信されない場合がある。つまり、エアモビリティから定期的に発信される位置情報のうち、電波通信状況の不良などの原因により受信装置で受信できない位置情報が生じる場合がある。このような場合には、その位置情報の抜けに因り運航管理装置が運航管理に用いるエアモビリティの飛行位置が更新されず、エアモビリティは運航管理装置が認識しているエアモビリティの飛行位置よりも前進している場合がある。このようなことから、運航管理装置が認識しているエアモビリティの飛行位置と、エアモビリティの実際の飛行位置とにずれが生じてしまい、このようなずれは、エアモビリティの運航管理に支障を来すおそれがある。
【0007】
本発明は上述したような課題を解決するために考え出された。すなわち、本発明の主な目的は、運航管理に用いられる位置情報に表される位置と、エアモビリティの実際の飛行位置とのずれに因るエアモビリティの運航管理の不具合発生を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る運航管理装置は、その一態様として、
エアモビリティの周囲環境の情報と、前記エアモビリティから発信された位置情報とを取得する取得部と
取得された前記エアモビリティの周囲環境の情報および位置情報を用いて、前記エアモビリティが飛行していると推定される領域を推定飛行領域として算出する算出部と、
推定飛行領域を表す情報を出力する出力部と、
推定飛行領域を用いて前記エアモビリティの運航管理を行う管理部と
を備える。
【0009】
また、本発明に係る運航管理方法は、その一態様として、
コンピュータによって、
エアモビリティの周囲環境の情報と、前記エアモビリティから発信された位置情報とを取得し、
取得された前記エアモビリティの周囲環境の情報および位置情報を用いて、前記エアモビリティが飛行していると推定される領域を推定飛行領域として算出し、
推定飛行領域を表す情報を出力し、
推定飛行領域を用いて前記エアモビリティの運航管理を行う。
【0010】
さらに、本発明に係るコンピュータプログラムは、その一態様として、
エアモビリティの周囲環境の情報と、前記エアモビリティから発信された位置情報とを取得する処理と、
取得された前記エアモビリティの周囲環境の情報および位置情報を用いて、前記エアモビリティが飛行していると推定される領域を推定飛行領域として算出する処理と、
推定飛行領域を表す情報を出力する処理と、
推定飛行領域を用いて前記エアモビリティの運航管理を行う処理と
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運航管理に用いられる位置情報に表される位置と、エアモビリティの実際の飛行位置とのずれに因るエアモビリティの運航管理の不具合発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る運航管理装置の実施形態の構成を説明する図である。
【
図2】運航管理装置の位置情報の取得について説明する図である。
【
図3】運航管理装置から出力される情報の表示例を表す図である。
【
図4】運航管理装置から出力される情報の別の表示例を表す図である。
【
図5】運航管理装置から出力される情報のさらに別の表示例を表す図である。
【
図6】運航管理装置から出力される情報のさらにまた別の表示例を表す図である。
【
図7】本発明に係る運航管理装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態で説明する指標を説明する概念図である。
【
図10】管理部が算出する指標の例を表す図である。
【
図11】運航管理装置による表示画面の一例を表す図である。
【
図13】さらにまた別の実施形態を説明する図である。
【
図14】その他の実施形態における運航管理装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態の運航管理装置は、
図1に表されるような構成を備えている。この運航管理装置1は、エアモビリティの運航管理を行う装置である。ここでは、エアモビリティとは、ドローンや空飛ぶクルマというような電動垂直離着陸型航空機である。エアモビリティは、予め定められたタイミングごと(例えば1秒間隔ごと)に無線通信により位置情報を発信する。その位置情報は、エアモビリティの所在位置(飛行位置)を表す情報であり、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)を利用してエアモビリティが取得(算出)する情報である。エアモビリティから発信される位置情報には、発信元のエアモビリティを識別する機体識別情報と時間情報が関連付けられている。このような位置情報は、エアモビリティから無線通信により発信されて
図2に表されるような受信装置3により受信されることにより、受信装置3から運航管理装置1に伝達される。受信装置3は、エアモビリティ2の予め定められた航路(コリドー)などを考慮して複数の場所に設置される。
【0015】
運航管理装置1は、
図1に表されるように、表示装置4に接続されている。表示装置4は、文字や画像などにより情報を画面表示する装置である。運航管理装置1は、さらに、情報源6に接続されている。情報源6は、エアモビリティ2の運航管理に用いる情報を出力する情報源である。情報源6の一例として、エアモビリティ2が飛行する空域(飛行空域)の気象状況を表す気象情報を出力する情報源が挙げられる。
図1の例では、運航管理装置1が接続している情報源6の数は1つであるが、必要に応じて複数の情報源6に運航管理装置1は接続される。
【0016】
さらに、運航管理装置1は、データベース7に接続されている。データベース7は、記憶装置であり、例えば、データベース7には、エアモビリティ2の運航管理に用いる情報の一つである管理対象のエアモビリティ2の飛行計画が格納されている(つまり、予め与えられている)。また、データベース7には、エアモビリティ2が緊急に着陸可能な離着陸場の場所情報や、動力源関連設備(充電設備や、水素燃料の供給設備など)の設置場所情報が格納されている(つまり、予め与えられている)。エアモビリティ2には、大きさや重さや動力源や用途や座席の有無などの違いによる複数の種類がある。第1実施形態の運航管理装置1は、1つの種類のエアモビリティを管理対象としてもよいが、複数種のエアモビリティを管理対象とした運航管理が可能な構成を備えるとする。このことから、データベース7に格納される離着陸場の場所情報や動力源関連設備の設置場所情報には、離着陸場や動力源関連設備の利用が可能なエアモビリティの種類を表す種別情報が関連付けられている。
【0017】
運航管理装置1は、
図1に表されるように、演算装置10と、記憶装置20とを備えている。記憶装置20は、データや、コンピュータプログラム(以下、プログラムとも称する)21を記憶する記憶媒体を備えている。ここでは、運航管理装置1に備えられる記憶装置20の種類や数は限定されず、その説明は省略される。また、運航管理装置1に複数種の記憶装置が備えられる場合には、それらをまとめて記憶装置20と記すこととする。
【0018】
演算装置10は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサにより構成される。演算装置10は、記憶装置20に記憶されているプログラム21を読み出して実行することにより、当該プログラム21に基づいた様々な機能を持つことができる。ここでは、演算装置10は、エアモビリティ2の運航管理に関わる機能部として、取得部11と、算出部12と、出力部13と、管理部14とを有している。
【0019】
取得部11は、エアモビリティ2から発信された位置情報を、受信装置3を介して取得する。記憶装置20とデータベース7の少なくとも一方には位置情報の履歴を表す飛行軌跡情報がエアモビリティ2ごとに生成されている。取得部11は、位置情報に関連付けられている機体識別情報を参照することにより、取得した位置情報を、対応するエアモビリティ2の飛行軌跡情報に追加する。
【0020】
取得部11は、さらに、気象情報を出力する情報源6からエアモビリティ2の飛行空域の気象状況を表す情報をエアモビリティ2の周囲環境の情報として予め定められたタイミングでもって取得する。例えば、空域は複数の領域に予め区分けられており、取得部11により取得された気象情報から得られた気象状況を表す情報は空域の区分領域ごとに時間情報(つまり、気象情報に対応する時間帯の情報)が関連付けられて記憶装置20やデータベース7に格納される。
【0021】
取得部11は、さらに、エアモビリティ2から機体状態情報を取得する。機体状態情報とは、エアモビリティ2の機体の状態を表す情報であり、例えば、残量情報とセンサ検知情報を含む。残量情報は、エアモビリティ2の動力源(例えば蓄電池や燃料電池)が電気エネルギーを出力する源となるエネルギー源の残量(つまり、バッテリー残量や燃料残量)を表す情報である。センサ検知情報は、エアモビリティ2に搭載されているセンサから出力されたセンサ出力を表す情報である。エアモビリティ2に搭載されているセンサとしては、例えば、加速度センサや、電気回路の異常を検知するセンサなどがある。ここでは、エアモビリティ2は、上述したような残量情報とセンサ検知情報を含む機体状態情報を例えば位置情報と同様に無線通信により発信するように構成されている。
【0022】
算出部12は、取得部11により取得された位置情報とエアモビリティ2の周囲環境の情報を用いて、管理対象のエアモビリティ2が飛行していると推定される領域を推定飛行領域として算出する。つまり、気象状況(例えば突風)などの何らかの原因のために、飛行中のエアモビリティ2が発信した位置情報により表されている位置(以下、発信位置とも称する)と、エアモビリティ2の実際の飛行位置(実位置とも称する)とがずれてしまうことがある。このことを考慮し、ここでは、エアモビリティ2の飛行位置を点(ピンポイント)の情報ではなく、飛行していると推定される領域の情報として算出する。例えば、エアモビリティ2の周囲の気象状況(例えば風向きや風の強弱)などによって発信位置からの実位置のずれの方向やずれ量が変化する。このことから、算出部12は、エアモビリティ2の周囲の状況を表す周囲環境の情報を用いて、発信位置からの実位置のずれの範囲を推定し、エアモビリティ2が飛行していると推定される領域の範囲を推定飛行領域として算出する。そのずれの範囲の推定には、例えば、周囲環境の条件を様々に変化させて実行したシミュレーションの結果が用いられる。また、大きさや重さや外形が異なる複数種のエアモビリティ2を運航管理装置1が管理対象としている場合には、大きさや重さや外形によって発信位置からの実位置のずれの範囲が変化することから、算出部12は、エアモビリティ2の種類の情報をも推定飛行領域の算出に用いる。算出部12による推定飛行領域の算出は、例えば、位置情報が取得される度に実行される。
【0023】
ところで、エアモビリティ2の飛行が予定される空域において、例えば、地形や建物の林立状態によって、位置情報の無線通信状況が不良となりやすい領域が予め判明している場合がある。また、複数のエアモビリティ2から発信された位置情報の受信装置3における受信状況を解析することにより、位置情報の無線通信状況が不良となっている領域を検知できる場合がある。このようなことから、例えば、位置情報の無線通信状況が不良となりやすいことが判明している領域の情報を記憶装置20やデータベース7に格納しておくことができる。また、複数のエアモビリティ2から発信された位置情報の受信状況を解析することによって、位置情報の無線通信状況が不良となっている領域を検知する機能を運航管理装置1に持たせることができる。つまり、運航管理装置1は、位置情報の無線通信状況の不良領域の情報を取得できる場合がある。このように位置情報の無線通信状況の不良領域の情報を取得できる場合には、算出部12は、位置情報の無線通信状況の不良領域の情報をも用いて、推定飛行領域の算出を行ってもよい。
【0024】
算出部12により算出された推定飛行領域を表す情報は、記憶装置20とデータベース7のうちの一方又は両方に生成されたエアモビリティ2ごとの推定飛行領域履歴情報に追加されて格納される。
【0025】
第1実施形態では、算出部12は、さらに、飛行中のエアモビリティ2に関する航続範囲を算出する。航続範囲とは、ここでは、飛行中のエアモビリティ2に搭載されている動力源のエネルギー源の残量(バッテリー残量や燃料残量)でもって当該エアモビリティ2が継続して飛行可能な範囲を表す。すなわち、算出部12は、取得部11により取得されたエアモビリティ2の機体状態情報に含まれている残量情報からエネルギー源の残量の情報を取得する。また、エアモビリティ2の飛行によってバッテリー充電量や燃料が減る消費傾向はエアモビリティ2の周囲環境(気象状況など)が関係することから、算出部12は、取得部11によるエアモビリティ2の周囲環境の情報も取得する。算出部12は、取得したエアモビリティ2におけるエネルギー源の残量の情報と周囲環境の情報と、上述したように算出した推定飛行領域の情報とを用いて、エアモビリティ2の航続範囲を算出する。エアモビリティ2の航続範囲の算出は、例えば、推定飛行領域が算出される度に実行されてもよいし、必要に応じて実行されてもよく、算出するタイミングは適宜設定される。なお、大きさや重さや外形が異なる複数種のエアモビリティ2を運航管理装置1が管理対象としている場合には、種類ごとに(つまり、大きさや重さや外形によって)エアモビリティ2の飛行によるエネルギー源の消費傾向が異なるから、算出部12は航続範囲の算出にエアモビリティ2の種類の情報をも用いる。
【0026】
また、エアモビリティ2の飛行位置は、ピンポイントの情報ではなく、ここでは、領域(推定飛行領域)により表される。算出部12は、或る時点における1機のエアモビリティ2につき1つの航続範囲を算出してもよいが、飛行位置が領域により表されることや気象状況が急変することなどをも考慮し、1機のエアモビリティ2につき安全性の度合いが異なる複数の航続範囲を算出する。算出部12により算出された航続範囲を表す情報は、記憶装置20とデータベース7のうちの一方又は両方に生成されたエアモビリティ2ごとの航続範囲履歴情報に追加されて格納される。
【0027】
出力部13は、推定飛行領域を表す情報を出力する。出力先の一つは、運航管理装置1が接続している表示装置4である。また、運航管理装置1は、
図2の点線に表されるような地上コントロールシステム(GCS(Ground Control Station))8に接続されている場合がある。地上コントロールシステム(GCS)8とは、エアモビリティ2の飛行制御(操作)を行うシステム(装置)である。運航管理装置1がGCS8に接続されている場合には、出力部13は推定飛行領域を表す情報をGCS8に出力する場合もある。この場合には、例えば、出力部13がGCS8に出力する推定飛行領域の情報は、出力先であるGCS8が飛行制御(操作)を行っているエアモビリティ2に関する推定飛行領域の情報に制限される。
【0028】
出力部13により表示装置4やGCS8に出力された推定飛行領域の情報は、表示装置4の画面や、GCS8に備えられている表示装置(図示せず)の画面に、
図3に表されるように表示される。
図3の例では、表示画面に地図が表示され、さらに、地図に重畳される態様でもって、エアモビリティ2の種類を表すアイコンと共に、そのエアモビリティ2に対応する推定飛行領域が点線Pにより表示されている。なお、
図3の例では、推定飛行領域の情報は平面状に表されているが、推定飛行領域の情報は、高さ方向の情報をも含むものである。このことから、推定飛行領域の情報は、運航管理装置1やGCS8の表示制御によって三次元表示により表されてもよい。また、運航管理装置1やGCS8の表示制御による推定飛行領域の表示に関し、運航管理装置1の操作者やGCS8の操作者の操作に応じて推定飛行領域の二次元表示と三次元表示が切り替え可能であってもよい。さらに、推定飛行領域の表示に関し、表示対象のエアモビリティ2の推定飛行領域を運航管理装置1の操作者やGCS8の操作者が例えば種別などにより選択可能としてもよい。さらに、
図4に表されるように、表示されている推定飛行領域に対応するエアモビリティ2を表す情報(例えば、機体識別情報(機体の登録番号)や種別情報)が選択操作によりポップアップされてもよい。ポップアップ表示される情報は、データベース7や記憶装置20に格納されている情報に基づいている。
【0029】
さらに、運航管理装置1やGCS8の表示制御による推定飛行領域の表示に関し、
図5に表されるようなタイムスライダーTを利用した運航管理装置1の操作者やGCS8の操作者の操作によって、エアモビリティ2の推定飛行領域の軌跡が表示されてもよい。このような推定飛行領域の軌跡表示は、記憶装置20やデータベース7に格納されている推定飛行領域履歴情報を用いて行われる。
【0030】
さらに、演算装置10の出力部13は、航続範囲を表す情報を出力する。出力先は、推定飛行領域を表す情報の出力先と同様である。また、出力部13は、航続範囲を出力する場合に、当該航続範囲の内側の離着陸場や動力源関連設備の場所を表す情報をデータベース7から読み出し、航続範囲の情報に関連付けて出力する。データベース7から読み出される離着陸場や動力源関連設備の場所の情報は、関連付けられる航続範囲に対応しているエアモビリティ2の種類に応じた離着陸場や動力源関連設備に関する情報である。
【0031】
出力部13により出力された航続範囲を表す情報、離着陸場や動力源関連設備の場所の情報は、運航管理装置1やGCS8の表示制御によって、表示装置4やGCS8における表示装置の画面において、
図6のように表示される。
図6の例では、表示画面には地図が表示され、エアモビリティ2の種類を表すアイコンと、当該エアモビリティ2に関する航続範囲を表す鎖線K1~K3とが地図に重畳されて表示されている。
図6における鎖線K1~K3は、安全性の度合いが異なる航続範囲をそれぞれ表しており、K3,K2,K1の順に安全性が高くなっている。さらに、
図6の例では、航続範囲内におけるエアモビリティ2が緊急に着陸可能な離着陸場と、動力源関連設備とのそれぞれの位置を表すアイコン23,24が地図に重畳されて表示されている。さらにまた、エアモビリティ2の推定飛行領域を表す点線Pが地図に重畳されて表示されている。
【0032】
なお、安全性の度合いが異なる複数の航続範囲をそれぞれ表す鎖線K1~K3の色を異ならせることにより、安全性の度合いの違いを表してもよい。また、安全性の度合いが異なる複数の航続範囲を同時に画面表示する場合と、複数の航続範囲のなかから操作者により選択された航続範囲を表示する場合とが考えられる。このような複数の航続範囲の画面表示については、運航管理装置1の運用者などにより適宜設定されてよいものであり、特に限定されない。また、
図6の例では、エアモビリティ2に関する推定飛行領域を表す点線Pと、航続範囲を表す鎖線K1~K3とが共に表示されているが、推定飛行領域と航続範囲とのうちの操作者により選択された一方のみが表示されてもよい。さらにまた、
図6の例では、1機のエアモビリティ2に関する情報が表示されているが、画面表示されている地図の領域を飛行している管理対象の複数のエアモビリティ2に関する情報が表示されてもよいし、それら管理対象の複数のエアモビリティ2のなかから選択されたエアモビリティ2に関する情報が表示されてもよい。このような情報の表示の手法については運航管理装置1の運用者などにより適宜設定されてよいものである。
【0033】
管理部14は、算出部12により算出された推定飛行領域を用いて管理対象のエアモビリティ2の運航管理を行う。管理部14が実行する運航管理に係る処理には様々な種類の処理が含まれるが、ここで、その運航管理に係る処理の一例を述べる。
【0034】
例えば、記憶装置20やデータベース7には、管理対象のエアモビリティ2ごとの飛行計画が予め与えられている。管理部14は、算出部12によって算出された管理対象のエアモビリティ2の推定飛行領域および当該推定飛行領域を算出する契機となった位置情報に関連付けられている時間情報と、そのエアモビリティ2の飛行計画に含まれている飛行の計画ルートおよび飛行予定時間情報とを対比する。これにより、管理部14は、管理対象のエアモビリティ2が飛行計画通りに飛行しているか否かを判断する。さらに、管理部14は、その判断の結果、例えば、管理対象のエアモビリティ2が計画ルートから許容範囲を超えて外れて飛行していることを検知した場合には、予め定められた対処処理を実行する。対処処理としては、例えば、計画ルートから外れているエアモビリティ2の飛行制御を管理部14が行うことができる場合には、飛行ルートの修正を図るべく、計画ルートから外れているエアモビリティ2の飛行制御を管理部14が実行する。
【0035】
また、計画ルートから外れているエアモビリティ2がGCS8によって飛行制御されている場合には、管理部14は、そのエアモビリティ2の飛行制御を行っているGCS8に向けて、計画ルートから外れている情報を出力部13によって通知する。このような場合には、管理対象のエアモビリティ2と、当該エアモビリティ2の飛行制御を行うGCS8を表す情報(連絡先の情報を含む)とが関連付けられているデータが記憶装置20やデータベース7に保持されている。
【0036】
さらに、管理部14は、計画ルートから外れたエアモビリティ2の推定飛行領域を用いて予め定められた設定(算出)手法により通報範囲を求める。通報範囲とは、計画ルートから外れたエアモビリティ2との接触や衝突などの危険性が高くなってしまった領域の範囲であり、計画ルートから外れたエアモビリティ2が近くを飛行していることを通知することが好ましい範囲である。管理部14は、そのような通報範囲内を飛行しているエアモビリティ2をさらに検知する。さらにまた、管理部14は、検知されたエアモビリティ2の飛行制御がGCS8により行われている場合には、そのGCS8に向けて、出力部13によって、計画ルートから外れたエアモビリティ2が近くを飛行している旨の情報を通知する。ところで、通報範囲内を飛行していることが検知されたエアモビリティ2のなかに運航管理装置1の管理対象でないエアモビリティ2が含まれている場合があることが考えられる。このような場合に、例えば、運航管理装置1が、エアモビリティの登録に関わる登録システムにアクセスして登録情報を取得(閲覧)できるとする。このような場合には、管理部14は、管理対象以外のエアモビリティ2から発信された機体の登録番号などの情報を用いて、当該エアモビリティ2を管理している管理者の連絡先の情報を登録システムから取得する。そして、管理部14は、通報範囲内における管理対象以外のエアモビリティの管理者にも、計画ルートから外れたエアモビリティ2が近くを飛行している旨の情報を通知する。
【0037】
さらに、管理部14は、エアモビリティ2の動力源におけるエネルギー源の残量で飛行計画における目的地まで到達できるか否かというような事項をも考慮した運航管理が行われる。
【0038】
さらに、管理部14は、管理対象のエアモビリティ2について、上述したような飛行計画を用いた運航管理の処理以外に、例えば、救急医療用ヘリコプタや消防防災ヘリコプタなどの緊急ヘリの緊急出動に関連する運航管理の処理も実行する。さらに、管理部14は、管理対象のエアモビリティ2から発信された機体状態情報から管理対象のエアモビリティ2に異常が発生したことを検知した場合に、その異常発生に対処する処理も実行する。上述したような緊急ヘリの緊急出動に関する運航管理の処理手法やエアモビリティ2の異常発生に対処する処理手法には複数の手法が有り、ここではその処理手法は限定されないので、その説明は省略される。
【0039】
なお、第1実施形態では、管理対象のエアモビリティ2が飛行計画通りに飛行(運航)できているか否かというような運航状況を表す情報が出力部13により出力されて表示装置4やGCS8の表示装置の画面に表示可能となっている。飛行計画通りに運航できていないエアモビリティ2が管理部14により検知された場合には、そのような管理対象のエアモビリティ2の運航状況を表す表示画面において、飛行計画通りに運航できていないエアモビリティ2を表す文字やアイコンなどを色や大きさなどにより強調表示してもよい。
【0040】
第1実施形態の運航管理装置1は上述したように構成されている。次に、運航管理装置1における演算装置10の動作の一例を、
図7を参照しつつ説明する。なお、
図7は、運航管理装置1における演算装置10の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0041】
飛行中のエアモビリティ2は、予め定められた頻度でもって定期的に位置情報を発信している。運航管理装置1における演算装置10の取得部11は、管理対象のエアモビリティ2から発信された位置情報を、受信装置3を介して取得する。また、取得部11は、位置情報と同様に、管理対象のエアモビリティ2の機体状態情報を取得する。さらに、取得部11は、情報源6から、管理対象のエアモビリティ2が飛行している空域に関する気象情報を周囲環境の情報として取得する(
図7におけるステップ101)。
【0042】
然る後に、算出部12が、取得部11により取得された管理対象のエアモビリティ2に関係する周囲環境の情報および位置情報を用いて、エアモビリティ2の推定飛行領域を算出する(ステップ102)。また、算出部12は、算出した推定飛行領域と、エアモビリティ2の機体状態情報に含まれている残量情報とを用いて、管理対象のエアモビリティ2に関する航続範囲を算出する。
【0043】
その後、出力部13は、算出された推定飛行領域を表す情報や航続範囲を表す情報を予め定められた出力先に出力する(ステップ103)。出力される航続範囲を表す情報には、当該航続範囲内におけるエアモビリティ2の種類に応じた離着陸場や動力源関連設備の場所の情報が関連付けられる。
【0044】
一方、管理部14は、推定飛行領域の情報を用いて、管理対象のエアモビリティ2の運航管理を行う(ステップ104)。
【0045】
第1実施形態の運航管理装置1は上述したような構成を備えているので、次のような効果を奏することができる。つまり、運航管理装置1は、管理対象のエアモビリティ2から発信された位置情報と、周囲環境の情報とを用いて、気象状況などの原因によってエアモビリティ2の実位置と発信位置とがずれる事態を考慮したエアモビリティ2の推定飛行領域を算出する。この算出されたエアモビリティ2の推定飛行領域の情報は、例えば表示装置4や、GCS8の表示装置に画面表示される。エアモビリティ2の所在位置を表す情報として、GNSSを用いたピンポイント(発信位置)の情報が画面表示される場合には、突風などが原因でエアモビリティ2の実位置が発信位置からずれてしまっている場合に、画面表示を見ている者の位置表示に対する信頼感が損なわれるおそれがある。これに対して、第1実施形態では、エアモビリティ2の飛行位置を表す情報として、実位置と発信位置とのずれが考慮されて算出された推定飛行領域が画面表示されるから、エアモビリティ2の飛行位置の画面表示に対する信頼感が損なわれる事態を軽減できる。
【0046】
また、第1実施形態では、推定飛行領域を用いて、管理対象のエアモビリティ2の運航管理が行われる。これにより、実位置と発信位置とのずれが考慮された運航管理が行われることとなり、運航管理装置1は、エアモビリティ2の運航管理の安全性を高めることができる。
【0047】
さらに、運航管理装置1は、管理対象のエアモビリティ2に関する航続範囲を算出する。航続範囲の情報は、例えば緊急着陸が必要な事態が発生した場合における運航管理に有益な情報となり、運航管理装置1は、航続範囲の情報が無い場合に比べて、緊急事態に円滑に対処することができる。さらに、運航管理装置1は、安全性の度合いが異なる複数の航続範囲を算出することによって、例えば、エアモビリティ2の機体の状態や用途などが関わる事情に応じて選択した航続範囲を用いた運航管理が可能となる。
【0048】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態の運航管理装置を構成する構成部分と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0049】
第2実施形態の運航管理装置1は、第1実施形態の運航管理装置1と同様な
図1に表されるような構成を備えるが、管理部14および出力部13は、さらに、次のような構成を備える。すなわち、第2実施形態では、管理部14が次に述べるような指標を算出し、算出した指標を用いたエアモビリティ2の運航管理を行う。その指標とは、プロジェクト管理で採用されている管理手法で採用される指標から着想を得て発明者が考え出した指標である。
【0050】
すなわち、エアモビリティ2の運航管理にて、飛行計画と対比しつつ監視(モニタリング)される要素としては、エアモビリティ2の飛行距離やエネルギー消費量(バッテリー消費量や燃料消費量など)や飛行時間などがある。ここでは、それら監視の要素をコストという数値に換算し、そのコストを用いてエアモビリティ2の飛行が計画通りか否かの判断を行って飛行の進捗状況を監視する。
【0051】
まず、基本の指標として、PV(Planned Value),BAC(Budget at Completion),AC(Actual Cost),EV(Earned Value)という4つの指標がある。PVは、飛行開始からモニタリング時点までの計画上の飛行距離(移動距離)に基づいている。BACは、出発地から目的地までに必要と推定されたエネルギー量に基づいている。ACは、飛行開始からモニタリング時点までに実際に消費したエネルギー量に基づいている。EVは、飛行開始からモニタリング時点までに実際に飛行した距離に基づいている。EVは、飛行計画に対する飛行中のエアモビリティ2の進捗を表す指標とも言える。
図8は、それら指標の概念図である。
図8におけるグラフは、横軸が時間を表し、縦軸がコストを表している。PV曲線はPVの時間変化の一例を表す。EV曲線はEVの時間変化の一例を表す。AC曲線はACの時間変化の一例を表し、AC曲線から延びている点線の曲線は推定されるACの時間変化の一例を表す。
【0052】
基本の4つの指標PV,AC,EVから次のような指標SV,CVが算出できる。SV(Schedule Variance)は、スケジュール差異を表し、EVとPVの差分により算出される。SVは、
図8に表される飛行開始からPV曲線上の点Dに対応する時間までの時間Tdと、飛行開始からモニタリング時点のEV(点B)に対応する時間までの時間Tbとの差分(Tb-Td)に相当する値である。SVが正の値である場合には、実際の飛行は飛行計画よりも進んでいることを表し、SVが負の値である場合には、実際の飛行は飛行計画よりも遅延していることを表す。
【0053】
CV(Cost Variance)は、コスト差異を表し、ACとPVの差分(AC-PV)により算出される。CVは、飛行開始からモニタリング時点までに実際に飛行して消費したエネルギー消費量と、飛行開始からモニタリング時点までに消費すると計画されたエネルギー消費量との差分に相当する。CVが正の値である場合には、実際のエネルギー消費量は計画された範囲内のエネルギー消費量であることを表し、CVが負の値である場合には、実際のエネルギー消費量は計画されたエネルギー消費量を上回っていることを表す。
【0054】
基本の指標PV,BAC,AC,EVを用いて、さらに、
図9や
図10に表される指標も算出できる。なお、
図9に表されている表には、上述した指標も含まれている。
【0055】
管理部14は、上述したような指標のなかから、例えば運航管理装置1の運用者などにより選択された指標と、当該指標に関連して予め定められた判定基準(判定ルール)とを用いて、管理対象のエアモビリティ2の飛行が飛行計画通りなのか否かを判断する。例えば、判定基準(判定ルール)には、上述したような指標のなかから予め選択された指標および当該指標からリスク指数を算出する算出式の情報が含まれている。管理部14は、その情報を用いて、リスク指数を算出し、当該リスク指数が閾値以上であるか否かを判断することにより、管理対象のエアモビリティ2の飛行(運航状況)が飛行計画通りなのか否かを判断する。さらに、管理部14は、次のような判断を行ってもよい。例えば、予め定められた大きさの空域内に複数のエアモビリティ2が飛行している場合に、それら複数のエアモビリティ2のうちの予め定められた割合(判定割合)以上の数のエアモビリティ2に関する指標又はリスク指数が予め定められた正常範囲から外れているか否かを管理部14は判断する。そして、その判定割合以上の数のエアモビリティ2に関する指標又はリスク指数が正常範囲から外れている場合には、指標又はリスク指数の悪化は、それらエアモビリティ2(状況悪化のエアモビリティ2とも称する)が飛行している空域内における天候や電磁波などの環境や、当該空域に関連する受信装置などの機器異常などに原因があると管理部14は推定する。また、例えば、状況悪化のエアモビリティ2の周囲を飛行している他のエアモビリティ2には指標又はリスク指数の悪化が見られないというような単独のエアモビリティ2の状況悪化の場合には、そのエアモビリティ2に問題があると管理部14は推定する。このように、管理部14は、予め定められた大きさの空域内における複数のエアモビリティ2に関する指標又はリスク指数の状況を用いて、状況悪化のエアモビリティ2の指標又はリスク指数が悪化している原因を推定してもよい。
【0056】
さらに、管理部14は、管理対象のエアモビリティ2の運航状況が飛行計画通りでないと判断した場合には、飛行計画通りでないと判断したエアモビリティ2に対する予め定められた対処処理が実行される。
【0057】
その対処処理の一例として、管理部14は、飛行計画通りに運航(飛行)していないエアモビリティ2の運航状況を改善すべく当該エアモビリティ2の飛行計画を変更する。なお、ここでは、飛行計画を変更する手法は限定されないことから、その詳細な説明は省略されるが、飛行計画の変更に際し、エアモビリティ2の例えば用途が考慮される。つまり、エアモビリティ2の飛行計画は、到着時間やエネルギー効率や飛行経路などというような様々な事項が関わって策定される。飛行計画の策定の際に、そのような事項のなかにおいて、エアモビリティ2の用途に応じた優先事項がある場合がある。このような場合には、エアモビリティ2の飛行計画を変更する場合にも、そのエアモビリティ2の用途に応じた優先事項が考慮される。
【0058】
管理部14が、飛行計画が変更されたエアモビリティ2の飛行制御を行う場合には、変更後の飛行計画に従って当該エアモビリティ2の飛行制御を行う。また、GCS8により飛行制御が行われているエアモビリティ2の飛行計画を管理部14が変更した場合には、当該変更後の飛行計画が出力部13によりGCS8に出力される。さらに、管理部14は、飛行計画が変更された管理対象のエアモビリティ2にあっては、変更された飛行計画に従ってエアモビリティ2の運航管理が行われる。
【0059】
管理部14は、さらに、飛行計画の変更が行われた回数をリスケ回数(リスケジュール回数)としてエアモビリティ2ごとにカウントし、カウントしたリスケ回数や、飛行計画を変更した時間(リスケ時間)の情報を記憶装置20やデータベース7にリスケ情報としてエアモビリティ2ごとに格納してもよい。さらに、管理部14は、リスケ回数やその飛行計画の変更の頻度(リスケ頻度)をも用いてエアモビリティ2の運航管理を行ってもよい。つまり、リスケ回数が多くなったり、リスケ頻度が高くなったりすることは、エアモビリティ2の飛行空域の状況や機体の状態が好ましい状況ではないことが想定される。このような状況が考慮された運航管理が行われてもよい。
【0060】
上述したような管理部14により算出された指標や、リスケ回数やリスケ頻度の情報は、運航管理装置1の管理部14が運航管理の処理に用いるのみであってもよいが、出力部13により表示装置4やGCS8の表示装置に出力されることにより、画面表示されてもよい。例えば、その画面の表示態様の一例としては、リスト表示が挙げられる。また、別の画面表示の態様例としては、
図11に表されるような表示が挙げられる。
図11の例では、地図が表示された画面に重畳される態様でもって、管理対象のエアモビリティ2の推定飛行領域の位置がその種別を表すアイコンでもって表されている。さらに、そのエアモビリティ2に関連する指標SPI,CPIとリスク指数とリスケ回数が文字により表されている。
【0061】
図11に表されるような画面表示に関し、管理部14によって、飛行計画通り運航していないエアモビリティ2に関する情報の少なくとも一部は色などを用いて強調表示されてもよい。また、
図11の例では、エアモビリティ2の飛行位置はアイコンにより表されているが、表示対象のエアモビリティ2の数が多くて見づらいというような場合には、アイコンではなく点などの記号によりエアモビリティ2の飛行位置が表されてもよい。さらに、エアモビリティ2の計画されている飛行の計画ルートも表示されてもよい。
【0062】
なお、第2実施形態においても、管理部14は、管理対象のエアモビリティ2の飛行位置の情報として、算出部12により算出された推定飛行領域の情報を用いる。ただ、第2実施形態においては、管理部14は、指標の算出の都合上、例えば、推定飛行領域において最も確からしい位置の情報を用いるというように推定飛行領域よりも絞り込まれた飛行位置を表す情報を用いてもよい。さらにまた、管理部14は、推定飛行領域に代えて、エアモビリティ2から発信された位置情報を指標の算出に用いてもよい。
【0063】
第2実施形態の運航管理装置1は上述したように構成されている。この第2実施形態では、管理部14は、飛行計画や、実際の飛行距離やエネルギー消費量などの情報を用いて算出した指標を用いて、エアモビリティ2の運航管理を行っている。その指標は、プロジェクト管理手法で用いられている指標をエアモビリティ2の運航管理に適用すべく、本発明者が考え出したものである。この指標は、運航管理に有効な情報(運航(飛行)の進捗情報など)の数値化および見える化を促進する画期的なものである。第2実施形態の運航管理装置1は、そのような指標を用いた運航管理を行うことによって、運航管理の簡素化や性能向上を図ることができる。
【0064】
<その他の実施形態>
本発明は第1や第2の実施形態に限定されず、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第2実施形態の運航管理装置1の構成に加えて、さらに、
図12に表されるような計画部16と学習部17を設けてもよい。なお、
図12においては、演算装置10における取得部11と算出部12と出力部13と管理部14と、記憶装置20との図示が省略されている。
【0065】
計画部16は、エアモビリティ2の出発地と目的地と、出発日時と、用途と、機体の情報などの予め定められた入力情報と、予め定められた策定手法とを用いて、エアモビリティ2の飛行計画を策定する。運航管理装置1は、飛行計画と、当該飛行計画で実際に飛行した場合において算出したそれぞれの指標の履歴と飛行中のエアモビリティ2の周囲環境の情報とを含む飛行実績とを蓄積しておく。学習部17は、そのような蓄積した情報を学習することにより、飛行計画の策定で用いる例えばパラメータなどの情報を更新する。このような学習部17を設けることにより、運航管理装置1は、飛行計画の精度を高めることができるようになり、エアモビリティ2の飛行中における飛行計画の変更の回数(リスケ回数)を削減することができる。
【0066】
本発明は、
図13に示されるような実施の態様をも採り得る。
図13に示されるその他の実施形態の運航管理装置50は、例えばコンピュータ装置であり、コンピュータプログラムを実行する機能部として、取得部51と算出部52と出力部53と管理部54とを備えている。取得部51は、エアモビリティの周囲環境の情報と、エアモビリティから発信された位置情報とを取得する。算出部52は、取得されたエアモビリティの周囲環境の情報および位置情報を用いて、エアモビリティが飛行していると推定される領域を推定飛行領域として算出する。出力部53は、推定飛行領域を表す情報を出力する。管理部54は、推定飛行領域を用いてエアモビリティの運航管理を行う。
【0067】
図13における運航管理装置50の動作の一例を、
図14を参照しつつ説明する。
図14は、運航管理装置50の動作の一例を説明するフローチャートである。例えば、運航管理装置50の取得部51が、エアモビリティの周囲環境の情報と、エアモビリティから発信された位置情報とを取得する(ステップ201)。その後、算出部52が、取得されたエアモビリティの周囲環境の情報および位置情報を用いて、エアモビリティが飛行していると推定される領域を推定飛行領域として算出する(ステップ202)。そして、出力部53が、推定飛行領域を表す情報を出力する(ステップ203)。また、管理部54が、推定飛行領域を用いてエアモビリティの運航管理を行う(ステップ204)。なお、ステップ203とステップ204の動作はその順番が逆でもよいし、並行して行われてもよい。
【0068】
その他の実施形態の運航管理装置50は、上述したようにエアモビリティの飛行位置を推定飛行領域として算出する。このことから、運航管理装置50は、運航管理に用いられる位置情報に表される位置と、エアモビリティの実際の飛行位置とのずれに因るエアモビリティの運航管理の不具合発生を抑制できるという効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,50 運航管理装置
11,51 取得部
12,52 算出部
13,53 出力部
14,54 管理部