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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144879
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】記録用紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/82 20060101AFI20241004BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20241004BHJP
   G03G 7/00 20060101ALI20241004BHJP
   D21H 21/14 20060101ALI20241004BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20241004BHJP
   D21H 19/32 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
D21H19/82
B32B27/00 Z
B32B27/10
G03G7/00 101J
G03G7/00 101B
G03G7/00 101M
D21H21/14 A
C09K3/16 104E
D21H19/32
B32B29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057044
(22)【出願日】2023-03-31
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅俣 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 凌
【テーマコード(参考)】
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AH03B
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK42A
4F100AK51A
4F100AK54A
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA02A
4F100CA13C
4F100CA22B
4F100CB00A
4F100DE01B
4F100DG10A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ67B
4F100HB31C
4F100JB06C
4F100JB07
4F100JG03B
4F100JG04
4F100YY00B
4F100YY00C
4L055AG08
4L055AG11
4L055AG12
4L055AG18
4L055AG56
4L055AG57
4L055AG71
4L055AG80
4L055AG85
4L055AG97
4L055AG99
4L055AH02
4L055AH25
4L055AH27
4L055AH37
4L055AJ01
4L055AJ04
4L055BE09
4L055EA08
4L055EA32
4L055FA11
4L055FA15
4L055FA19
4L055GA08
4L055GA15
(57)【要約】
【課題】良好な帯電防止性及び耐水性を有する記録用紙を提供する。
【解決手段】基材層と、帯電防止層と、印刷受容層と、がこの順に積層された記録用紙であって、前記帯電防止層が、カチオン性ポリマー及びシランカップリング剤の反応物、並びに帯電防止剤を含み、前記印刷受容層が顔料粒子及びバインダ樹脂を含み、前記印刷受容層の厚みが0.1μm以上3μm未満である、記録用紙。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、帯電防止層と、印刷受容層と、がこの順に積層された記録用紙であって、
前記帯電防止層が、カチオン性ポリマー及びシランカップリング剤の反応物、並びに帯電防止剤を含み、
前記印刷受容層が顔料粒子及びバインダ樹脂を含み、
前記印刷受容層の厚みが0.1μm以上3μm未満である、記録用紙。
【請求項2】
前記カチオン性ポリマーが、第1級若しくは第2級のアミノ基、又は第1級若しくは第2級のアンモニウム塩構造を有する、請求項1に記載の記録用紙。
【請求項3】
前記バインダ樹脂が非水溶性である、請求項1又は2に記載の記録用紙。
【請求項4】
前記帯電防止層における前記帯電防止剤の含有量は、前記帯電防止層の全質量に対して、10~50質量%である、請求項1又は2に記載の記録用紙。
【請求項5】
前記帯電防止剤がジアリルジメチルアンモニウム塩を含む、請求項1又は2に記載の記録用紙。
【請求項6】
前記帯電防止層に無機粒子が含まれ、前記帯電防止層における前記無機粒子の含有量が、カチオン性ポリマー100質量部に対して9質量部以下である、請求項1又は2に記載の記録用紙。
【請求項7】
前記帯電防止層が熱可塑性樹脂粒子を含まない、請求項1又は2に記載の記録用紙。
【請求項8】
電子写真印刷に用いられる、請求項1又は2に記載の記録用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンタの進歩は目覚ましく、価格面のみならず、記録品質、記録速度等の性能面でも飛躍的に向上しつつある。これに併せて、印刷用紙、ポスター用紙、ラベル用紙、インクジェット記録紙、感熱記録紙、熱転写受容紙、感圧転写記録紙、電子写真記録紙等の各種記録用紙においても性能の向上が図られ、耐水性や、耐候性、耐久性に優れた様々な記録用紙が提案されている。
【0003】
例えば、電子写真印刷方式においては、上述した耐水性等の機能に加え、記録用紙の帯電防止性を向上させることができる技術が求められている。これは、電子写真印刷の場合、インキ乾燥時の加熱により印刷機内の湿度が低下し、静電気が発生しやすい環境になり、印刷用紙を束として揃える紙揃え性が著しく低下するためである。このような求めに対し、例えば、特許文献1では、印刷を施すためのトナー受容層に、ポリマー帯電防止剤を含有させることで、帯電防止性能を持たせた電子写真記録用紙が提案されている。また、特許文献1に記載の発明は、電子写真記録用紙のトナー受容層に特殊な脂溶性のポリマー帯電防止剤を用いることで、上述した帯電防止性能と併せて、耐水性を持たせることも目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-299017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電子写真記録用紙においても、使用可能な帯電防止剤が限られているため、帯電防止性能において改善の余地があった。また、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の記録用紙は、耐水性能についても改善の余地があることが判明した。
【0006】
したがって、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な帯電防止性及び耐水性を有する記録用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、基材と、帯電防止性を有する帯電防止層と、所定の厚みを有する印刷受容層と、を有する記録用紙により、上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、上記諸目的は、下記の構成を有する本発明によって達成でき、本発明は、下記態様及び形態を包含する。
【0009】
本発明の一態様は、
1.基材層と、帯電防止層と、印刷受容層と、がこの順に積層された記録用紙であって、前記帯電防止層が、カチオン性ポリマー及びシランカップリング剤の反応物、並びに帯電防止剤を含み、前記印刷受容層が顔料粒子及びバインダ樹脂を含み、前記印刷受容層の厚みが0.1μm以上3μm未満である、記録用紙である。
【0010】
2.上記1.に記載の記録用紙において、前記カチオン性ポリマーが、第1級若しくは第2級のアミノ基、又は第1級若しくは第2級のアンモニウム塩構造を有することが好ましい。
【0011】
3.上記1.又は2.に記載の記録用紙において、前記バインダ樹脂が非水溶性であることが好ましい。
【0012】
4.上記1.~3.のいずれかに記載の記録用紙において、前記帯電防止層における前記帯電防止剤の含有量は、前記帯電防止層の全質量に対して、10~50質量%であることが好ましい。
【0013】
5.上記1.~4.のいずれかに記載の記録用紙において、前記帯電防止剤がジアリルジメチルアンモニウム塩を含むことが好ましい。
【0014】
6.上記1.~5.のいずれかに記載の記録用紙において、前記帯電防止層に無機粒子が含まれ、前記帯電防止層における前記無機粒子の含有量が、カチオン性ポリマー100質量部に対して9質量部以下であることが好ましい。
【0015】
7.上記1.~6.のいずれかに記載の記録用紙において、前記帯電防止層が熱可塑性樹脂粒子を含まないことが好ましい。
【0016】
8.上記1.~7.のいずれかに記載の記録用紙は、電子写真印刷に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、良好な帯電防止性及び耐水性を有する記録用紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る記録用紙の断面模式図である。
図2図2は、本発明の他の実施形態に係る記録用紙の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、記録用紙の構成について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る記録用紙1の断面模式図である。図1に示すように、記録用紙1は、基材層2と、帯電防止層3と、印刷受容層4と、がこの順に積層された構成を有する。そして、記録用紙1の使用時には、印刷受容層4の帯電防止層3とは反対側の面に印刷が施される(図示せず)。ここで、帯電防止層3は、カチオン性ポリマー及びシランカップリング剤の反応物、並びに帯電防止剤を含有する。また、印刷受容層4は顔料粒子、及びバインダ樹脂を含有し、当該印刷受容層4の厚みは2μm(0.1μm以上3μm未満)である。なお、図1に示す実施形態において、基材層2は、合成樹脂フィルム23、接着剤層22、紙材21、接着剤層22、合成樹脂フィルム23がこの順に積層された多層体である。
【0021】
本発明者らは、驚くべきことに、上記構成を有する記録用紙が、良好な帯電防止性を有しながら、耐水性にも優れることを見出した。本発明の構成による当該作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。
【0022】
記録用紙等に帯電防止性能を付与する場合、一般的に、帯電防止性能を持つ層は記録用紙等の表面に配置される。これは、多くの帯電防止剤が、記録用紙等の表面近傍に存在することにより、帯電防止性能を発揮するためである。例えば、一般的な帯電防止剤である界面活性剤系帯電防止剤は、極性を有する親水基を表面側に分子配列することで膜を形成し、この膜が外気中の湿気を吸着して表面に水分子の多層配列を形成し、これにより静電気をリークさせる。
【0023】
しかしながら、本発明に係る記録用紙は、表面層である印刷受容層ではなく、印刷受容層の内側に隣接する層(すなわち、帯電防止層)が帯電防止剤を含むにもかかわらず、帯電防止性能を有する。これは、印刷受容層が所定の厚み以下であることにより、帯電防止層に含まれる帯電防止剤の極性が印刷受容層の表面にも作用し、静電気のリークに必要な適量の水分子を印刷受容層表面に吸着されているためであると考えられる。また、印刷受容層の表面には、上記の通り、適量の水分子は存在するものの、極性を有する親水基が存在していないため、印刷受容層は耐水性に優れたものとなる。
【0024】
上記のメカニズムにより、本発明に係る記録用紙は、良好な帯電防止性を有しながらも、耐水性に優れたものとなると推測される。なお、上記メカニズムは推測であり、本発明の技術的範囲をなんら制限するものではない。
【0025】
図2は、本願の他の実施形態に係る記録用紙1の断面模式図である。図2に示すように、他の実施形態においては、帯電防止層3と、印刷受容層4とが、基材層2の両面に配置されている。すなわち、図2に示す実施形態では、印刷受容層4、帯電防止層3、基材層2、帯電防止層3、印刷受容層4の順に各層が配置されている。
【0026】
以上、本実施形態に係る記録用紙1の構成について説明した。次に、記録用紙1の各部材を構成する材料について説明する。
【0027】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作及び物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。また、「A及び/又はB」は、A、Bの各々及び一つ以上のすべての組み合わせを含み、具体的には、A及びBの少なくとも一方を意味し、A、B並びにAとBとの組み合わせを意味する。また、「(メタ)アクリル」との語は、アクリル及びメタクリルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリル酸」との語は、アクリル酸及びメタクリル酸の双方を包含する。
【0028】
<基材層>
本発明に係る記録用紙は、基材層上に、帯電防止層と、印刷受容層と、が基材層側からこの順に積層された構成を有する。基材層は記録用紙に曲げ弾性や引張弾性などの物理的強度や、記録用紙としての白色性、不透明性を付与するものである。また、基材層は、記録用紙に耐水性、耐久性を付与するものであってもよい。
【0029】
基材層としては、紙材やオレフィン系樹脂フィルム、合成紙などが挙げられるが、耐水性を有する紙材の片面又は両面に、耐水性を有する合成樹脂フィルムを積層したものが好ましい。このような構成を有する基材層を採用することにより、記録用紙の耐水性を大幅に向上させることができる。
【0030】
耐水性を有する紙材と耐水性を有する合成樹脂フィルムとの積層はドライラミネート法や溶融ラミネート法など公知の手法により実施できる。より好ましい積層方法としては基材層と合成樹脂フィルムとの間に接着剤層を設けて貼り合わせるドライラミネート法である。
【0031】
基材層の厚さは、特に制限されないが、40μm~500μmであることが好ましく、50μm~400μmであることがより好ましく、80μm~300μmであることがさらに好ましい。基材の厚みが上記の範囲にあることにより、記録用紙が各種の印刷方法に適したものとなり、さらに上述した物理的強度がより十分なものとなる。
【0032】
(紙材)
紙材としては、JIS-P-8140:1998に基づくコッブ法による吸水度が0g/m~50g/mの範囲である耐水性を有する紙材が好ましい。該吸水度は、0g/m~40g/mであることがより好ましく、0g/m~30g/mであることが特に好ましい。
【0033】
紙材は、例えば、パルプ原紙に耐水性を付与する塗工剤を塗工又は含浸させたもの、又はパルプ原紙に耐水性を有する合成樹脂を塗工又は融着させたものである。より具体的には、ジアゾ感光紙原紙、写真印画紙原紙、樹脂含浸紙、樹脂塗工紙、硫酸紙、擬硫酸紙、耐水紙、耐油紙、防水紙などの加工紙が、紙材として使用可能である。
【0034】
紙材の厚さは、20μm~300μmであることが好ましく、50μm~250μmであることがより好ましい。紙材の厚さは、JIS-P-8118:1998に基づいて測定することができる。
【0035】
(合成樹脂フィルム)
合成樹脂フィルムを用いることで、記録用紙が、特に電子写真記録方式による情報記録に好適であるように、耐熱性、耐久性、及び好適な静電容量等を有するものとなる。
【0036】
合成樹脂フィルムは、厚みが5μm~100μmであることが好ましく、12μm~50μmであることがより好ましい。
【0037】
また、合成樹脂フィルムは、耐水性及び/又は絶縁性を有することが好ましい。合成樹脂フィルムへ耐水性及び/又は絶縁性を付与する合成樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び低密度ポリエチレン等の結晶性エチレン系樹脂、結晶性プロピレン系樹脂、ポリ(4-メチルペンタ-1-エン)、並びにエチレン-環状オレフィン共重合体等の結晶性オレフィン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートや同モノマーに他の成分を共重合した共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、及び脂肪族ポリエステル等の熱可塑性のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの合成樹脂は単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0038】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、特に電子写真記録方式に好適な耐熱性を付与する観点から、JIS-K-7121:1987に基づく融点が180℃~300℃の範囲の樹脂を主成分として用いることが好ましい。したがって、本発明の合成樹脂フィルムを形成しうる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂(約180~270℃)、ポリ(4-メチルペンタ-1-エン)(約230℃)、アイソタクティックポリスチレン(約240℃)、ポリカーボネート(約250℃)、ポリエステル系樹脂(約260℃)、シンジオタクティックポリスチレン(約270℃)、ポリフェニレンサルファイド(約280℃)等が好ましい。融点が180℃以上の樹脂を合成樹脂フィルムの主成分として使用すれば、該合成樹脂フィルムがトナーの定着工程における熱により変形又は融解しにくいため、記録用紙自体が大きく変形したり、トナー定着装置(熱融着ロール等)に張り付いてしまったり、記録装置に損傷を与えたりすることを防ぎやすくなる傾向がある。融点が300℃以下の樹脂を用いれば、厚みが均一なフィルムを製造しやすいため、均質な情報記録が容易になる傾向がある。また、本発明の主成分とは、合成樹脂フィルム全体の50質量%~100質量%を占めるものである。50質量%以上であれば合成樹脂フィルムの所期の性能を発揮しやすい傾向がある。また、合成樹脂フィルムは他の熱可塑性樹脂やフィラーなどを含んでいてもよい。
【0039】
これら熱可塑性樹脂の中でも、特にポリエステル系樹脂を主成分とするのが好ましい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス-α,β(2-クロルフェノキシ)エタン-4,4'-ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の2官能カルボン酸の少なくとも1種と、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール等のグリコールの少なくとも1種とを重縮合して得られるポリエステルを挙げることができる。さらには上記の2官能カルボン酸、グリコールに、重縮合可能なヒドロキシカルボン酸を加えて重縮合して得られるポリエステルを挙げることができる。
【0040】
これらのポリエステル系樹脂の中でも、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合から得られるポリエチレンテレフタレートが、厚みの均一なフィルムが容易に得られ、加工も容易であり、過不足のない適度な静電容量を付与できる点で特に好ましい。
【0041】
(接着剤層)
一実施形態に係る基材層は、上記の紙材及び合成樹脂フィルムから形成する際、これらを貼合するために接着剤層を用い、これを介して積層することが好ましい。
【0042】
貼合では、まず紙材又は合成樹脂フィルム上に、接着剤を用いた塗工、散布、溶融押出ラミ等の手法によって接着剤層を設ける。そして、当該接着剤層を介して、ドライラミネート又は、熱融着性フィルムや溶融押出フィルムを用いた溶融ラミネート等の通常の手法により、紙材と合成樹脂フィルムとを張り合わせることができる。
【0043】
接着剤としては、特に限定されないが溶剤系接着剤又はホットメルト型接着剤等を用いることができる。
【0044】
溶剤系接着剤としては、所定の樹脂成分を、従来公知の溶剤を用いて、溶解、分散、乳濁分散、又は希釈した、溶液型やエマルジョン型の様態のものが挙げられる。所定の樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エーテル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、ABS系樹脂等が挙げられる。当該溶剤系接着剤は、流動性があり塗工が可能であるという特徴を有する。
【0045】
溶剤系接着剤の塗工は、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター、スライドホッパー等により行われる。その後必要によりスムージングを行い、乾燥工程を経て、接着剤層が形成される。
【0046】
溶剤系接着剤は、好ましくは、乾燥後の固形分が0.5~25g/mとなるように、上述した接着剤が塗工されることで設けられる。
【0047】
溶剤系接着剤を使用する場合は、紙材の表面に該接着剤を塗工し、次いで、合成樹脂フィルムである合成樹脂フィルムを重ね、圧着ロールで加圧接着するか、あるいは合成樹脂フィルムである合成樹脂フィルムの裏面に該接着剤を塗工し、次いで、紙材を重ね、圧着ロールで加圧接着すればよい。
【0048】
ホットメルト型接着剤としては、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(いわゆるサーリン)、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブチラール系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。
【0049】
ホットメルト型接着剤を使用する場合は、紙材の表面上にビート塗工、カーテン塗工、スロット塗工等の方法で塗工するか、紙材の表面上にダイより溶融フィルム状に押し出してラミネートし、次いで、合成樹脂フィルムである合成樹脂フィルムを重ね、圧着ロールで加圧接着すればよい。ホットメルト型接着剤による接着剤層は、当該接着剤が5~50g/mとなるように設けられることが好ましい。
【0050】
接着剤層の厚さは、特に制限されないが、1μm~50μmであることが好ましく、1.5μm~30μmであることがより好ましく、2μm~10μmであることがさらに好ましい。接着剤層の厚みが上記の範囲にあることにより、接着剤層の接着性がより十分なものとなる。
【0051】
また、上述した接着剤層には、280~400nmのいずれか一部の波長を吸収する紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤を含有することにより、紫外線遮断機能を備えた接着剤層を形成することが可能である。接着剤層が紫外線吸収剤を含有することにより、紙材の変色(黄変)を抑えることができ、屋外での長期間の使用が可能となる。ここで、接着剤層に含まれる紫外線吸収剤の種類及び含有量は後述する紫外線遮断層に記載のものと同等である。
【0052】
<帯電防止層>
帯電防止層は、カチオン性ポリマー及びシランカップリング剤の反応物、並びに帯電防止剤を含有する層である。帯電防止層は、記録用紙に帯電防止性とともに耐水性を付与するための層である。
【0053】
帯電防止層は、カチオン性ポリマー、シランカップリング剤及び帯電防止剤を含有する塗工液(以下、帯電防止層形成用塗工液ともいう)を、基材層等に塗工した後に乾燥させることで形成することができる層である。
【0054】
ここで、カチオン性ポリマーとシランカップリング剤との反応率は100%でなくてもよい。すなわち、帯電防止層は、反応物(反応生成物)以外に、未反応のカチオン性ポリマーと未反応のシランカップリング剤との少なくとも一方をさらに含有していてもよい。
【0055】
帯電防止層及び帯電防止層形成用塗工液中のカチオン性ポリマー(未反応分)、シランカップリング剤(未反応分)及びカチオン性ポリマーとシランカップリング剤との反応物は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)により確認することができる。
【0056】
帯電防止層の厚さは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。また、帯電防止層の厚さは、5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。すなわち、帯電防止層の厚さは、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~4μmであることがより好ましく、1μm~3μmであることがさらに好ましい。帯電防止層の厚さが0.1μm以上であることにより、帯電防止層を均一且つ安定的に形成できるとともに、帯電防止層の耐水性が十分なものとなり、記録用紙の帯電防止剤性能がより十分なものとなる。また、帯電防止層の厚さが5μm以下であることにより、帯電防止層の凝集破壊による隣接する他の層(例えば、基材層や印刷受容層)との密着性低下を抑制できる傾向がある。
【0057】
(カチオン性ポリマー)
帯電防止層において、カチオン性ポリマーは、シランカップリング剤との反応物として含有される。ただし、上述のように、帯電防止層には、未反応のカチオン性ポリマーが含まれていてもよい。
【0058】
カチオン性ポリマーは、水溶性であることが好ましい。カチオン性ポリマーの水溶性は、帯電防止層形成用塗工液を調製する際に、カチオン性ポリマーを含有する水性媒体が溶液状態になる程度の溶解度があればよい。
【0059】
使用できるカチオン性ポリマーとしては、例えばアミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体、ホスホニウム塩構造を有する水溶性ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を変性によりカチオン化したビニル系ポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体が、印刷受容層との密着性を高めの観点から、好ましく、アミノ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体がより好ましい。なお、本明細書において、帯電防止性を有するカチオン性ポリマーは「カチオン型高分子型帯電防止剤」として帯電防止剤に分類され、「カチオン性ポリマー」の概念には包含されないものとする。例えば、第4級アンモニウム塩構造又は第4級ホスホニウム塩構造を有するカチオン型高分子型帯電防止剤などは、カチオン性ポリマーから除かれる。
【0060】
アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体は、安全性の観点からは、第1級~第3級のアミノ基又は第1級~第3級のアンモニウム塩構造を有することが好ましく、第2級又は第3級のアミノ基又は第2級又は第3級のアンモニウム塩構造を有することがより好ましく、第3級のアミノ基又は第3級のアンモニウム塩構造を有することがさらに好ましい。また、シランカップリング剤との反応により架橋度の高い樹脂が得られ、他の層と高い密着性が得られるという観点からは、カチオン性ポリマーが、第1級~第3級のアミノ基又は第1級~第3級のアンモニウム塩構造を有することが好ましく、第1級若しくは第2級のアミノ基又は第1級若しくは第2級のアンモニウム塩構造を有することがより好ましく、第1級のアミノ基又は第1級のアンモニウム塩構造を有することがさらに好ましい。
【0061】
なかでも、エチレンイミン系重合体が好ましい。エチレンイミン系重合体を用いることで、印刷受容層との密着性を高めることができる傾向がある。また、エチレンイミン系重合体は、シランカップリング剤との間で架橋構造を作りやすく、帯電防止層の凝集破壊による隣接する他の層(例えば、基材層や印刷受容層)との密着性低下を抑制できる傾向がある。
【0062】
エチレンイミン系重合体としては、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン-尿素)、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、これらのアルキル変性体、シクロアルキル変性体、アリール変性体、アリル変性体、アラルキル変性体、ベンジル変性体、シクロペンチル変性体、環状脂肪族炭化水素変性体、グリシドール変性体、これらの水酸化物等が挙げられる。変性体を得るための変性剤としては、例えば塩化メチル、臭化メチル、塩化n-ブチル、塩化ラウリル、ヨウ化ステアリル、塩化オレイル、塩化シクロヘキシル、塩化ベンジル、塩化アリル、塩化シクロペンチル等が挙げられる。
【0063】
なかでも、下記一般式(I)で表されるエチレンイミン系重合体が、印刷受容層との密着性をより高めることができる傾向があり、また帯電防止層の凝集破壊による隣接する他の層(例えば、基材層や印刷受容層)との密着性低下をより抑制できるため好ましい。
【0064】
【化1】
【0065】
〔上記式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子;炭素数1~12の直鎖又は分岐状のアルキル基;炭素数6~12の脂環式構造を有するアルキル基又はアリール基を表す。Rは水素原子;ヒドロキシ基を含んでいてもよい炭素数1~18のアルキル基又はアリル基;ヒドロキシ基を含んでいてもよい炭素数6~12の脂環式構造を有するアルキル基又はアリール基を表す。mは2~6の整数を表し、nは20~3000の整数を表す。〕
【0066】
アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体としては、市販品を使用することもできる。アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーの市販品としては、ポリメント((株)日本触媒)等が挙げられる。また、エチレンイミン系重合体の市販品としては、エポミン((株)日本触媒)、ポリミンSK(BASF社製)、サフトマーAC-72(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0067】
アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体の重量平均分子量は、帯電防止層と、基材層及び印刷受容層との密着性の向上の観点から、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、25,000以上であることがさらに好ましい。一方で、同重量平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。なお、本発明において、樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法により測定した値をポリスチレン換算することによって得ることができる。
【0068】
帯電防止層中のカチオン性ポリマー成分(未反応分と、シランカップリング剤との反応分の総量)の含有量は、帯電防止層の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、カチオン性ポリマー成分(未反応分と、シランカップリング剤との反応分の総量)の含有量は、帯電防止層の全質量に対して、に対して、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。カチオン性ポリマーの含有量が上記範囲にあることにより、帯電防止層の耐水性がより向上し、さらに記録用紙の帯電防止性もより向上する。
【0069】
(シランカップリング剤)
帯電防止層において、シランカップリング剤は、カチオン性ポリマーとの反応物として含有される。ただし、上述のように、帯電防止層には、未反応のシランカップリング剤が含まれていてもよい。
【0070】
シランカップリング剤は、帯電防止層と、隣接する他の層(例えば、基材層や印刷受容層)との密着性を高める作用効果を奏し得る。ここで、帯電防止層と隣接する他の層とは、帯電防止層の双方の面に接する他の層(例えば、基材層及び印刷受容層の双方)、又は帯電防止層のいずれかの面に接する他の層(例えば、基材層又は印刷受容層のいずれか)を意味する。
【0071】
具体的には、シランカップリング剤は、有機材料との反応性が高い官能基を有し、この官能基が、隣接する他の層に含まれる熱可塑性樹脂とカチオン性ポリマーとを架橋反応させて密着性を高めていると推定される。また、密着性が向上することにより、帯電防止層と、隣接する他の層との間への水分の浸入を防ぐこともでき、これにより、帯電防止層と、隣接する他の層との剥離も抑制される。また、シランカップリング剤は、カチオン性ポリマー同士を架橋反応させて網目構造を形成し、この網目構造が帯電防止層の凝集力を高め、帯電防止層の凝集破壊による隣接する他の層との密着性低下を抑制していると推定される。さらに、シランカップリング剤は、カチオン性ポリマーと架橋反応し、カチオン性ポリマーの親水性成分(極性樹脂成分)をより高分子量化させることによって、耐水性を向上させていると推定される。
【0072】
シランカップリング剤としては、カチオン性ポリマーと反応する基、例えばシラノール基等の各種官能基を有するシランカップリング剤を用いることができる。カチオン性ポリマーと反応する基とは、カチオン性ポリマーが有する原子又は原子団と反応して結合を形成する基をいう。反応によって形成される結合は、共有結合、イオン結合、水素結合等のいずれであってもよい。
【0073】
例えば、シランカップリング剤として、アルコキシシリル基又はこれの加水分解により生じるシラノール基と、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基と、をその分子内に有するシラン化合物を好ましく用いることができる。
【0074】
シランカップリング剤は、シラノール基が、隣接する他の層に含まれる熱可塑性樹脂と縮合反応する一方、シラノール基以外の官能基が帯電防止層に含まれるアミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーにおける(メタ)アクリル酸残基や、エチレンイミン系重合体におけるアミノ基等と縮合反応して、架橋反応を行うと推測される。又は、シランカップリング剤は、シラノール基が、帯電防止層に含まれるアミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーにおける(メタ)アクリル酸残基や、エチレンイミン系重合体におけるアミノ基と縮合反応する一方、シラノール基以外の官能基が、隣接する他の層に含まれる熱可塑性樹脂と高い親和性で結びつくことで、架橋反応を行うと推測される。
【0075】
シランカップリング剤におけるアルコキシシリル基又はこれの加水分解により生じるシラノール基の含有率は、帯電防止層と、隣接する他の層とを強固に密着させるという観点点から、25%~75%であることが好ましく、50%~75%であることがより好ましい。また、シランカップリング剤におけるアルコキシシリル基又はこれが加水分解したシラノール基以外の反応性官能基の含有率は、25%~75%であることが好ましく、25%~50%であることがより好ましい。
【0076】
上記作用効果を奏するシランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤などを挙げることができる。
【0077】
これらのシランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、2種以上が併用される場合、シランカップリング剤の含有量は、合計量を指す。
【0078】
これらの中でも、印刷インキやトナーとの密着性の観点から、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤を用いることが好ましく、エポキシ系シランカップリン
グ剤を用いることがより好ましい。
【0079】
また、カチオン性ポリマーが有する第1級~第3級アミノ基との架橋反応のし易さの観点からは、エポキシ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤又はイソシアネート系シランカップリング剤を用いることが好ましく、エポキシ系シランカップリング剤を用いることがより好ましい。
【0080】
シランカップリング剤は、アルコキシシリル基の種類によって加水分解速度を制御できることが知られており、この性質を利用して、シランカップリング剤の自己縮合に基づく帯電防止層形成用塗工液の劣化を抑制し、経時安定性を高めることができる。水への溶解性が高く、帯電防止層形成用塗工液の調製が容易であり、かつ経時安定性が高いという観点からは、シランカップリング剤としてはエポキシ系シランカップリング剤が好ましく、なかでも3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0081】
帯電防止層において、シランカップリング剤分子内のアルコキシシリル基は、加水分解によりシラノール基に変化している。当該シラノール基が、帯電防止層に隣接する他の層上の、特に表面処理を施した層上の、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の官能基と水素結合等の化学結合することにより、帯電防止層と、隣接する他の層と、の密着性が向上すると推測される。また、シラノール基同士が縮合反応することで、帯電防止層自体の凝集力も向上し、帯電防止層の物理的強度も向上すると推定される。
【0082】
また、帯電防止層中のシランカップリング剤成分(未反応分と反応分の総量)の含有量は、耐水性向上の観点から、当該帯電防止層中のカチオン性ポリマー成分(未反応分と反応分の総量)100質量部に対して50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることがさらに好ましい。また、帯電防止層中のシランカップリング剤成分(未反応分と反応分の総量)の含有量は、当該帯電防止層中のカチオン性ポリマー成分(未反応分と反応分の総量)100質量部に対して、200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましい。
【0083】
また、帯電防止層中のシランカップリング剤成分(未反応分と反応分の総量)の含有量は、帯電防止層の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、帯電防止層中のシランカップリング剤成分(未反応分と反応分の総量)の含有量は、帯電防止層の全質量に対して、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0084】
帯電防止層に含まれるシランカップリング剤の量が上記の範囲であることにより、帯電防止層中の未反応シランカップリング剤の残存量を抑えることができる。これにより帯電防止層の硬さが適度なものとなり、記録用紙のしなりに追従可能なものとなり、帯電防止層の割れも防ぐことができる。加えて、シランカップリング剤の量が上記の範囲であることにより、未反応カチオン性ポリマーの残存量を抑えることができ、これにより帯電防止層の耐水性が優れたものとなる。
【0085】
(帯電防止剤)
帯電防止剤は、帯電防止層に対し、帯電防止性を付与するためのものである。
【0086】
帯電防止層に含まれる帯電防止剤は、特に制限はなく、従来公知の帯電防止剤を使用することが可能であり、高分子型及び低分子型のいずれも用いることができ、カチオン型、アニオン型、両性型又はノニオン型の帯電防止剤も用いることができる。これらは単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、2種以上が併用される場合、帯電防止剤の含有量は、それらの合計量を指す。
【0087】
また、帯電防止剤としては、シランカップリング剤と反応する化合物を使用してもよいし、反応しない化合物を使用してもよい。ただし、帯電防止性能の発現しやすさの観点からは、シランカップリング剤と反応しない化合物が好ましい。なお、下記に示す帯電防止剤の量(質量や質量部、質量%など)は、シランカップリング剤と未反応の帯電防止剤と、シランカップリング剤と反応した帯電防止剤と、との双方を含み得る。
【0088】
(高分子型帯電防止剤)
カチオン型高分子型帯電防止剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩構造、第4級ホスホニウム塩構造等を有するものが挙げられる。アニオン型高分子型帯電防止剤としては、例えば、スルホン酸、リン酸、カルボン酸等のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)の構造を有するものが挙げられる。また、アニオン型高分子型帯電防止剤は、分子構造中に、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸等のアルカリ金属塩の構造を有するものであってよい。
【0089】
両性型の高分子型帯電防止剤としては、同一分子中に、カチオン型及びアニオン型の両方の構造を含有するものが挙げられる。両性型の高分子型帯電防止剤としては、ベタイン型が挙げられる。ノニオン型の高分子型帯電防止剤としては、例えば、アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体等が挙げられる。その他の高分子型帯電防止剤としては、分子構造中にホウ素を有する高分子型帯電防止剤が挙げられる。
【0090】
これらの中でも、カチオン型高分子型帯電防止剤が好ましく、窒素を含有する高分子型帯電防止剤がより好ましく、第4級アンモニウム塩構造を有する高分子型帯電防止剤がさらに好ましく、第4級アンモニウム塩構造を有するアクリル系樹脂が特に好ましい。
【0091】
高分子型帯電防止剤としては、市販品を使用することができる。市販品の高分子型帯電防止剤としては、三菱ケミカル(株)のサフトマーST-1000、ST-1100、ST-3200(商品名)等が挙げられる。
【0092】
(低分子型帯電防止剤)
帯電防止層に用いられる帯電防止剤は、少量で高い帯電防止性能を実現でき、帯電防止層の耐水性の制御を容易とする観点から、低分子型帯電防止剤であることが好ましい。
【0093】
低分子型帯電防止剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3級アミノ基などのカチオン性官能基を有すカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩、硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アミノアルコール及びその誘導体、グリセリン及びその誘導体などのノニオン型帯電防止剤などが挙げられる。その中でも、帯電防止層においてカチオン性ポリマー中に安定的に分散させることができる観点から、帯電防止剤は、カチオン型の低分子型帯電防止剤を含むことが好ましく、第4級アンモニウム塩を含むことがより好ましく、以下の化学式(2)で表される第4級アンモニウム塩を含むことがさらに好ましい。
【0094】
【化2】
【0095】
上記化学式(2)において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~2のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。つまり、R及びRは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基又はヒドロキシエチル基である。また、X は、第4級アンモニウム塩を構成するアニオン(カウンターアニオン)である。X は、第4級アンモニウム塩と塩を形成できるものであれば、特に制限されない。かようなアニオンとしては、例えば、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)及びヨウ化物イオン(I)等のハロゲン化物イオン;硫酸水素イオン(HSO );亜硫酸イオン(HSO );アルキル硫酸イオン((Alkyl)SO :Alkylは、炭素数1以上8以下のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、好ましくはエチル基));硝酸イオン(NO );リン酸二水素イオン(HPO );過塩素酸イオン(ClO );水酸化物イオン(OH);酢酸イオン及び乳酸イオン等のカルボン酸系アニオンなどが挙げられる。
【0096】
これらのうち、R及びRは、メチル基であることが好ましい。すなわち、低分子型帯電防止剤は、ジアリルジメチルアンモニウム塩を含むことが最も好ましい。低分子型帯電防止剤がジアリルジメチルアンモニウム塩を含むことにより、より少ない含有量で高い帯電防止性能を帯電防止層に付与することができ、また帯電防止層の耐水性の制御をより容易とすることができる。
【0097】
[ジアリルジメチルアンモニウム塩]
ジアリルジメチルアンモニウム塩は、以下の化学式(3)で表される構造を有する:
【0098】
【化3】
【0099】
上記化学式(3)において、X は、ジアリルジメチルアンモニウム塩を構成するアニオン(カウンターアニオン)である。X としては、ジアリルジメチルアンモニウムカチオンと塩を形成できるものであれば、特に制限されず、上述したX と同様のアニオンが挙げられる。なかでも、アニオン(カウンターアニオン)は、ハロゲン化物イオンであると好ましく、塩化物イオン、臭素物イオン又はヨウ素イオンであるとより好ましく、塩化物イオンであることが特に好ましい。すなわち、一実施形態において、ジアリルジメチルアンモニウム塩は、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドであると好ましい。
【0100】
これらのジアリルジメチルアンモニウム塩は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、2種以上が併用される場合、ジアリルジメチルアンモニウム塩の含有量は、合計量を指す。
【0101】
また、帯電防止層における帯電防止剤の含有量は、帯電防止性能をより向上させるとの観点から、帯電防止層の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、帯電防止層の耐水性の観点からは、帯電防止層に含まれる帯電防止剤の量は、帯電防止層の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。すなわち、帯電防止層に含まれる帯電防止剤の量は、帯電防止層の全質量に対して、10質量%~50質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることがさらに好ましく、30質量%~45質量%であることが特に好ましい。
【0102】
また、帯電防止層における帯電防止剤の含有量は、当該帯電防止層中のカチオン性ポリマー成分(未反応分と反応分の総量)100質量部に対して、15質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、35質量部以上であることが特に好ましい。また、帯電防止層における帯電防止剤の含有量は、当該帯電防止層中のカチオン性ポリマー成分(未反応分と反応分の総量)100質量部に対して、200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、130質量部以下であることがさらに好ましい。カチオン性ポリマー成分に対する帯電防止剤が上記の範囲にあることにより、帯電防止性能をより向上させ、また帯電防止層の耐水性も十分なものとすることができる。
【0103】
なお、帯電防止層中の帯電防止剤の含有量(質量)は、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、商品名:FT-IR/2R-410)により確認することができる。
【0104】
(無機フィラー)
帯電防止層は、無機フィラー(無機粒子)を含み得る。帯電防止層に含まれ得る無機フィラーとしては、後述する印刷受容層に含まれ得る無機顔料粒子が挙げられる。ただし、記録用紙の帯電防止性能及び場合により耐水性がより得られやすくなる観点から、帯電防止層における無機フィラーの含有量は、カチオン性ポリマー100質量部に対して9質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。特に好ましくは、帯電防止層が無機フィラーを含まない。ここで無機フィラーとは、後述する印刷受容層に含まれる無機フィラーと同様である。
【0105】
また、帯電防止層における無機フィラーの含有量は、記録用紙の帯電防止性能を向上させるという観点から、帯電防止層の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、特に好ましくは、帯電防止層が無機フィラーを含まない。
【0106】
(熱可塑性樹脂粒子)
帯電防止層は熱可塑性樹脂粒子を含み得るが、当該熱可塑性樹脂粒子を含まないことが好ましい。帯電防止層が熱可塑性樹脂粒子を含まないことにより、帯電防止層表面の均一性が高まり、外観に優れた記録用紙を得ることができるとともに、記録用紙の帯電防止性能及び場合により耐水性がより得られやすくなる。ここで、熱可塑性樹脂粒子は、帯電防止層形成用塗工液の分散媒体に分散している、オレフィン系共重合体等の熱可塑性樹脂のエマルジョンに由来する粒子であり得る。帯電防止層が熱可塑性樹脂粒子を含まない構成であることと、当該帯電防止層の表面の均一性は、走査型電子顕微鏡観察等により確認できる。
【0107】
オレフィン系共重合体エマルジョンは、国際公開2014/092142号に開示されるように、水性分散媒にオレフィン系共重合体を微粒子状に分散又は乳化させて得られるエマルジョンである。このエマルジョンには、分散剤として、非イオン性又はカチオン性の界面活性剤、非イオン性又はカチオン性の水溶性ポリマー等が使用されることがある。
【0108】
エマルジョン中に分散又は乳化させるオレフィン系共重合体としては、乳化性が良好な、カルボキシ基を含む構成単位又はその塩を共重合成分として含有するオレフィン系共重合体が挙げられる。
【0109】
エマルジョン中のオレフィン系共重合体粒子は、通常、体積平均粒径が0.2~3μm程度の粒子である。体積平均粒径は、レーザー回折型粒度分布測定装置((株)島津製作所製:SALD-2200)を用いて測定される体積平均粒径のことをいう。
【0110】
<印刷受容層>
本実施形態に係る記録用紙の印刷受容層は、顔料粒子、及びバインダ樹脂を含み、さらに印刷受容層の厚みが0.1μm以上3μm未満である。
【0111】
印刷受容層の厚さは、0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましい。また、印刷受容層の厚さは、2.8μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましく、2.0μm以下であることがさらに好ましい。すなわち、印刷受容層の厚さは、0.5μm~2.8μmであることが好ましく、1.0μm~2.5μmであることがより好ましく、1.5μm~2.0μmであることがさらに好ましい。印刷受容層の厚さが上記の範囲にあることにより、各種印刷への適性をはじめとする機能を有しながら、耐水性や帯電防止剤性能がより十分なものとなる。
【0112】
(バインダ樹脂)
印刷受容層は、トナーの定着性とより強固な耐水性を付与するためにバインダ樹脂を含有する。
【0113】
バインダ樹脂は非水溶性バインダ樹脂であることが好ましい。非水溶性バインダ樹脂を用いることにより耐水性が優れた印刷受容層を得ることができる。ここで「非水溶性」のバインダ樹脂とは、溶解性パラメータ(SP値)が6~12の有機溶媒である、n-ヘキサン(SP値:7.3)、n-ブタノール(SP値:11.4)、2-プロパノール(SP値:11.5)、トルエン(SP値:8.9)、キシレン(SP値: 8.8)、メチルエチルケトン(SP値:9.3)、アセトン(SP値:10)、メチルイソブチルケトン(SP値:8.4)、シクロヘキサノン(SP値:9.9)、酢酸エチル(SP値:9.1)、酢酸イソプロピル(SP値:8.4)、酢酸ブチル(SP値:8.5)、テトラヒドロフラン(SP値:9.5)、エチルセロソルブ(SP値:9.9)、及びブチルセロソルブ(SP値:8.9)からなる群から選択される少なくとも1つに、25℃で完全に溶解するものを意味する。なお、ここで、溶解性パラメータとは、溶解度係数(Solubility Parameter)と同義であり、液体間の混合性の尺度となる液体の特性値である。このSP値をδ、液体の分子凝集エネルギーをE、分子容をVとしたとき、SP値δは、δ=(E/V)1/2で表される。
【0114】
非水溶性バインダ樹脂としては、例えばウレタン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体樹脂、アクリル酸エステル共重合体樹脂、メタクリル酸エステル共重合樹脂、塩素化エチレン樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂などを挙げることができる。これらのバインダ樹脂は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、ポリエーテルウレタン、ポリエステルポリウレタン、アクリルウレタンなどのウレタン樹脂若しくはアクリル酸エステル共重合体樹脂が、前述のアルキレンオキシド化合物からなる帯電防止剤との相性(相溶性)がよく、混溶して塗料とした際に安定しており塗工しやすく、さらに、得られる印刷受容層のトナーとの密着性がよいことから好ましい。
【0115】
印刷受容層中のバインダ樹脂含有量は、印刷受容層の全質量に対して、好ましくは10~99質量%、より好ましくは15~98質量%、さらに好ましく20~97質量%の範囲である。10質量%以上であれば印刷受容層に十分な凝集力を持たせることができるため、電子写真方式により形成した画像に剥離が生じにくくなる傾向がある。99質量%以下であれば帯電防止効果が得られやすくなる傾向がある。
【0116】
(顔料粒子)
印刷受容層は、顔料粒子を含有する。本明細書において、顔料粒子は、無機顔料粒子及び有機顔料粒子の総称とする。印刷受容層が顔料粒子を含有することで、インキの定着性を向上させることができる。
【0117】
印刷受容層に用い得る無機顔料粒子としては、上述したインキの定着性を向上させるものであれば、その種類は特に限定されない。無機顔料粒子の具体例としては、シリカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化珪素などが挙げられる。また、これらを脂肪酸、高分子界面活性剤、帯電防止剤等で表面処理したものも挙げられる。なかでも吸油性によるトナーの定着性向上の観点から、シリカを用いることが好ましい。印刷受容層に用い得る顔料粒子の有機顔料粒子もまた、上述したインキの定着性を向上させるものであれば、その種類は特に限定されない。有機顔料粒子の具体例としては、アクリル粒子、スチレン粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子等が挙げられる。顔料粒子は、これらの中から1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0118】
顔料粒子の粒子径の上限は、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは5μm以下である。顔料粒子の粒子径の上限が上記の値であることで、形成した印刷受容層から顔料粒子が脱落しにくいため粉吹き現象が発生しにくくなる傾向がある。顔料粒子の粒径の下限は、特に制限されないが、0.1μm以上であることが好ましい。
【0119】
印刷受容層中の顔料粒子の含有量は、印刷受容層の全質量に対し、好ましくは1~70質量%、より好ましくは1~60質量%、さらに好ましくは1~45質量%の範囲である。顔料粒子の含有量が上記の範囲であることにより、印刷受容層に十分な凝集力を持たせて、電子写真方式により形成した画像の剥離を抑えやすくできる傾向がある。
【0120】
(紫外線遮断層)
一実施形態に係る記録用紙は、紫外線遮断層を有していてもよい。紫外線遮断層は、上記の基材層における紙材と合成樹脂フィルムとの間に設けることが好ましい。紫外線遮断層は、紫外線吸収剤及び/又は紫外線反射剤を含む層である。記録用紙に紫外線遮断層を設けることにより、内部の紙材の変色(黄変)を抑えることができ、屋外での長期間の使用が可能となる。なお、紫外線遮断層は上述した接着剤層と一体のものであってもよいし、個別に設けたものであってもよい。
【0121】
紫外線遮断層に使用できる紫外線吸収剤とは、波長280~400nmの一部の光を吸収するものである。例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル系又はトリアジン系のいずれか若しくはこれらの混合物であり、低分子量型のものでも高分子量型のものでも使用できる。
【0122】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体的な例としては、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2'-ヒドロキシ-3'-(1-メチル-1-フェニルエチル)-5'-1,1,3,3テトラメチルブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-(2-オクチロキシカルボニル)エチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体的な例としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン,2,2'-ジヒドロキシ-4,4'ジメトキシベンゾフェノン,2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。サリシレート系紫外線吸収剤の具体的な例としては、フェニルサリシレート、4-t-ブチルフェニルサリシレート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤の具体的な例としては、エチル(β,β-ジフェニル)シアノアクリレート、2-エチルヘキシル(β,β-ジフェニル)シアノアクリレートなどが挙げられる。ニッケル系紫外線吸収剤の具体的な例としては、[2,2-チオビス(4-t-オクチルフェノラート)]-n-オクチルアミンニッケル塩、[2,2-チオビス(4-t-オクチルフェノラート)]-2-エチルヘキシルアミンニッケル塩、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルなどが挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤の具体的な例としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノールなどが挙げられる。なかでも、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が好ましく、2-(2’-ヒドロキシ-3’-(1-メチル-1-フェニルエチル)-5’-1,1,3,3-テトラメチルブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(CAS No.73936-91-1)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-(2-オクチロキシカルボニル)エチルフェニル)ベンゾトリアゾール(CAS No.127519-17-9)が好ましい。上記の紫外線吸収剤は1種を用いることもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0123】
紫外線遮断層に使用できる紫外線反射剤とは波長280~400nmの一部の光を反射及び/又は散乱するものである。例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウムのいずれか若しくはこれらの混合物である。これらの紫外線反射剤は1種を用いることもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0124】
紫外線遮断層は、上述した通り、紫外線吸収剤及び/又は紫外線反射剤を含む層であるが、少なくとも1種以上の紫外線吸収剤を含んでいることが好ましい。紫外線遮断層が紫外線吸収剤を含むことにより、記録用紙を用いた印刷物を屋外で使用した際に、トナーや塗工層に照射される紫外線の量をより効果的に軽減することができ、トナーの変色や劣化をより効果的に防ぐことができる。これにより、記録した画像の鮮明性の低下や画像の密着性の低下もより十分に防ぐことができる。
【0125】
紫外線遮断層における紫外線吸収剤の含有量は、紫外線遮断層の全質量に対して、1~50質量%であることが好ましく、2~40質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記の範囲であることにより、記録用紙自体の変色抑制効果により、鮮明な記録画像が得られやすくなる傾向にあり、また、紫外線遮断層の耐水性や耐溶剤性が得られやすくなる傾向にある。
【0126】
紫外線遮断層は単層であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。また、紫外線遮断層は、記録用紙の用途上、無色透明、又は白色であることが好ましい。
【0127】
紫外線遮断層を形成する方法としては、紙材及び/又は合成樹脂フィルムとの共押出や、紙材及び/又は合成樹脂フィルムへの溶融ラミネート、紙材及び/又は合成樹脂フィルムへの塗工などが挙げられる。
【0128】
これらの中でも、公知のバインダ成分に紫外線吸収剤及び/又は紫外線反射剤を混合した塗料を作成し、これを紙材又は合成樹脂フィルムへ塗工し、塗膜として設ける方法が好ましい。公知のバインダ成分の具体的な例としては、酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、ポリビニルヒドリン、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール、ポリアクリル酸、エステルウレタン樹脂、エーテルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、メタクリル酸エステル共重合樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリアクリル酸、エステルウレタン樹脂、エーテルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、メタクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂が挙げられる。
【0129】
紫外線遮断層の厚みは、0.1μm~30μmであることが好ましく、0.3μm~25μmであることがより好ましく、0.5μm~20μmであることがさらに好ましい。厚さが上記の範囲にあることにより、記録用紙自体の変色や記録した画像鮮明性の低下を効果的に防ぐことができ、また厚みが均一な記録用紙を製造しやすいため、均一な記録画像が得られやすくなる。
【0130】
したがって、独立した紫外線遮断層を有する基材層の層構成としては、合成樹脂フィルム/紫外線遮断層/接着剤層/紙材、合成樹脂フィルム/接着剤層/紫外線遮断層/紙材、合成樹脂フィルム/接着剤層/紫外線遮断層/接着剤層/紙材、を含む様態を取りうる。紫外線遮断層が接着剤層と一体である基材層の層構成としては、合成樹脂フィルム/紫外線遮断層(接着剤層)/紙材を含む様態を取りうる。
【0131】
(その他の基材層)
基材層は、上述した紙材や、紙材と合成樹脂フィルムとを積層したものに替えて、オレフィン系樹脂フィルムや合成紙を使用することもできる。
【0132】
(オレフィン系樹脂フィルム)
オレフィン系樹脂フィルムは、オレフィン系樹脂と、無機及び/又は有機微細粉末と、を含有することが好ましい。ここで、オレフィン系樹脂フィルムは、オレフィン系樹脂を35~99質量%含有し、無機及び/又は有機微細粉末を1~65質量%含有することがより好ましい。さらに好ましくは、オレフィン系樹脂フィルムが、オレフィン系樹脂を50~95質量%含有し、無機及び/又は有機微細粉末を5~50質量%含有する。
【0133】
オレフィン系樹脂フィルムが含有するオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、又はプロピレン系樹脂、ポリ(4-メチルペンタ-1-エン)、エチレン-環状オレフィン共重合体等のオレフィン系樹脂を適用することができる。さらに、これら樹脂を2種以上混合したものを適用してもよい。これらの中でも、コスト、耐水性、耐薬品性の面から、高密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂を適用するのが好ましい。
【0134】
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体でありアイソタクティック、シンジオタクティック及び種々の立体規則性を示すポリプロピレン、プロピレンを主成分とし、これと、エチレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1,4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。この共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0135】
オレフィン系樹脂フィルムが含有する無機微細粉末としては、例えば、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ等であって、その平均粒径が0.01~15μmのものを適用することができる。オレフィン系樹脂フィルムが含有する有機微細粉末としては、オレフィン系樹脂フィルムのマトリクスとなる主要成分樹脂の融点より高い融点又は高いガラス転移温度を有するもので、オレフィン系樹脂に非相溶のものを好適に用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で、融点が120℃~300℃、又はガラス転移温度が120℃~280℃を有するものが挙げられる。
【0136】
オレフィン系樹脂フィルムの構造としては、単層構造、ベース層と表面層の2層構造、ベース層の両面に表面層を積層する3層構造、又はベース層と表面層間に他の樹脂フィルム層を介在させる多層構造のいずれでもよく、これらの多層構造は、共押出法、溶融ラミネート法、ドライラミネート法等、公知の方法で製造できる。
【0137】
オレフィン系樹脂フィルムがベース層及び表面層を有する多層構造である場合、ベース層はオレフィン系樹脂を45~98質量%含有し、無機及び/又は有機微細粉末を2~55質量%含有することが好ましい。表面層はオレフィン系樹脂25~100質量%含有し、無機及び/又は有機微細粉末を75質量%以下含有するか、若しくは含有しないことが好ましい。より好ましい形態はベース層がオレフィン系樹脂を50~95質量%含有し、無機及び/又は有機微細粉末を5~50質量%含有するものであり、表面層がオレフィン系樹脂を30~99質量%含有し、無機及び/又は有機微細粉末を1~70質量%含有するものである。
【0138】
オレフィン系樹脂フィルムは、さらに必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤等を含有してもよい。例えば、熱安定剤として、立体障害フェノール系、リン系、アミン系等の安定剤をオレフィン系樹脂フィルム全質量に対して、0.001~1質量%含有してもよい。また、光安定剤として、立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の安定剤を、オレフィン系樹脂フィルム全質量に対して0.001~1質量%含有してもよく、無機微細粉末の分散剤として、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸等をオレフィン系樹脂フィルム全質量に対して0.01~4質量%配合してもよい。
【0139】
基材層に用いうるオレフィン系樹脂フィルムは、その成形過程において、少なくとも一軸方向に延伸して成形される延伸フィルムであることが好ましい。延伸により内部に微細な空孔を有するものは記録用紙の不透明度を向上し、また静電容量を向上することができる。
【0140】
樹脂フィルムの延伸方法としては、従来公知の方法を適用でき、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸、多数のロールを利用した圧延(縦延伸)、テンターを利用した横延伸、前記縦延伸と前記横延伸を組み合わせた逐次二軸延伸、テンターとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸、チューブラー法による同時二軸延伸、パンタグラフ型延伸機を利用した同時二軸延伸等を挙げることができる。延伸時の温度は、使用するオレフィン系樹脂の種類及び延伸プロセスに合わせて適宜選択される。具体的には、プロピレン単独重合体(融点155~167℃)の場合には110~164℃、高密度ポリエチレン(融点121~134℃)の場合には80~120℃と、融点より2~60℃低い温度に設定することが好ましい。延伸速度は、20~350m/分とすることが好ましい。
【0141】
延伸倍率は特に限定されず、目的と使用するオレフィン系樹脂の特性によって適宜選択される。例えば、プロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体を使用し、一軸延伸する場合には、好ましくは1.2~12倍、より好ましくは2~10倍であり、二軸延伸する場合には、面積倍率で好ましくは1.5~60倍、より好ましくは10~50倍である。他のオレフィン系樹脂を使用し、一軸延伸する場合には、好ましくは1.2~10倍、より好ましくは2~5倍であり、二軸延伸する場合には、面積倍率で好ましくは1.5~20倍、より好ましくは4~12倍である。延伸後は必要に応じて熱処理(アニーリング処理)が施される。
【0142】
オレフィン系樹脂フィルムは、上記条件下で延伸することにより、フィルム内部に微細なボイド(空孔)が形成されて、不透明度(JIS P-8138)が85%以上、好ましくは90%以上、次式(1)で規定される空孔率が10%~60%、好ましくは15%~45%の、記録用紙の紙材として好適なものにすることができる。
【0143】
【数1】
【0144】
(ρ0は樹脂フィルムの真密度を示し、ρは樹脂フィルムの密度を示す)
延伸フィルムの空孔率が10%以上であれば、記録用紙の白色化、不透明化、軽量化の調整が容易になる傾向があり、逆に空孔率が60%以下であれば、記録用紙の強度(引張強度、曲げ強度)が得られやすくなる傾向がある。
【0145】
オレフィン系樹脂フィルムの厚みは、20μm~300μmの範囲であることが好ましく、50μm~250μmであることがより好ましい。フィルムの厚みが20μm以上であれば、ボイドを有する延伸フィルムを製造しやすくなる傾向があり、300μm以下であれば最終的に記録用紙とした際に巻きロール形態として市場供給しやすくなる傾向がある。なお、オレフィン系樹脂フィルムは、静電容量が4pF/cm2~1000pF/cm2であるものを用いるのが好ましい。
【0146】
<任意成分>
本発明において、各層は、必要に応じて、本発明の効果に影響を与えない範囲で、公知の添加剤を含んでいてもよい。該添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機フィラーの分散剤、脂肪酸アミドなどのスリップ剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料、可塑剤、結晶核剤、離型剤、難燃剤等として公知のものが挙げられる。特に、記録用紙を屋外で用いるポスター用紙のように耐久性が求められる場合には酸化防止剤や光安定剤等を含むことが好ましい。
【0147】
<記録用紙の製造方法>
記録用紙の製造方法は特に限定されるものではないが、基材層上に帯電防止層を形成し、帯電防止層の基材層が存在する面とは反対側の面に印刷受容層を形成する、などの方法が挙げられる。
【0148】
帯電防止層の形成方法は、特に限定されるものではないが、帯電防止層を構成する上記の各成分を溶媒に溶解させて帯電防止層形成用塗工液を調製すること、調製された帯電防止層形成用塗工液を、基材層の少なくとも一方の面に塗工すること、及び、塗工された帯電防止層形成用塗工液を乾燥(乾燥固化)させることを含む方法によって、帯電防止層を形成することが好ましい。
【0149】
印刷受容層の形成方法も、特に限定されるものではないが、印刷受容層を構成する上記の各成分を溶媒に溶解させて印刷受容層形成用塗工液を調製すること、調製された印刷受容層形成用塗工液を、帯電防止層の基材層が存在する面とは反対側の面に塗工すること、及び、塗工された印刷受容層形成用塗工液を乾燥(乾燥固化)させることを含む方法によって、印刷受容層を形成することが好ましい。
【0150】
したがって、本発明は、他の態様として、基材層上に、カチオン性ポリマー、シランカップリング剤、及び帯電防止剤を含有する帯電防止層形成用塗工液を塗工し、乾燥させることで帯電防止層を形成する工程と、帯電防止層の基材層が存在する面とは反対側の面に顔料粒子及びバインダ樹脂を含む印刷受容層形成用塗工液を塗工し、乾燥させることで印刷受容層を形成する工程と、を含む記録用紙の製造方法もまた提供する。これにより、記録用紙をロール・ツゥ・ロールで製造することもでき、生産性を向上させることができる。さらに、印刷受容層の厚さを比較的容易に調整することができるため、所望の特徴を有する記録用紙を製造することができる。
【0151】
[帯電防止層形成用塗工液]
帯電防止層を構成する上記の各成分と、溶媒とを混合することにより、塗工液を調製することができる。
【0152】
この際に用いられる溶媒は、水であってもよく、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレンなどの有機溶媒であってもよく、水及び有機溶媒の混合溶媒であってもよい。溶媒は、水又は水を主成分とする溶媒であることが好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、塗工液に用いられる溶媒全体のうち、95質量%以上、好ましくは99質量%以上(上限100質量%)が水であることをいう。これにより、工程管理が容易になり、安全上の観点からも好ましい。
【0153】
帯電防止層形成用塗工液中の固形分は、塗工液全体に対して0.5質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、また、塗工液中の固形分は、40質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0154】
また、帯電防止層形成用塗工液の調製方法は特に制限されず、一例として、帯電防止層を構成する各成分を混合容器内に添加し、所望の固形分濃度となるように溶媒(好ましくは、水)を添加して混合する方法が挙げられる。混合容器に対する各成分の添加方法は、一括して添加されてもよいし、逐次添加されてもよい。また、後者の場合、その添加順序も特に限定されない。各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10~40℃が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0155】
[印刷受容層形成用塗工液]
印刷受容層を構成する上記の各成分を溶媒に溶解させることにより、印刷受容層形成用塗工液を調製することができる。
【0156】
この際に用いられる溶媒は、特に制限されないが、印刷受容層に含まれるバインダ樹脂が非水溶性であることが好ましいことから、有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒としては一般的な有機溶剤が挙げられ、特に限定はない。好ましくは溶解性パラメーター(以下SP値と略記)が6~12、より好ましくは7~11の範囲のものである。
【0157】
SP値が6~12である溶剤の具体例としては、n-ヘキサン(SP値:7.3)、n-ブタノール(SP値:11.4)、2-プロパノール(SP値:11.5)、トルエン(SP値:8.9)、キシレン(SP値: 8.8)、メチルエチルケトン(SP値:9.3)、アセトン(SP値:10)、メチルイソブチルケトン(SP値:8.4)、シクロヘキサノン(SP値:9.9)、酢酸エチル(SP値:9.1)、酢酸イソプロピル(SP値:8.4)、酢酸ブチル(SP値:8.5)、テトラヒドロフラン(SP値:9.5)、エチルセロソルブ(SP値:9.9)、ブチルセロソルブ(SP値:8.9)等が挙げられる。SP値が12以下であればバインダ樹脂の溶解性がよくなったり、架橋剤を使用した場合に架橋反応が溶液中で始まるのを防いで塗料の安定性を高めやすくなったりする傾向がある。SP値が6以上であれば、揮発性が過度に高くないため取り扱いやすくなる傾向がある。
【0158】
また、印刷受容層形成用塗工液の調製方法は特に制限されず、一例として、印刷受容層を構成する各成分を混合容器内に添加し、所望の固形分濃度となるように溶媒(好ましくは、有機溶媒)を添加して混合する方法が挙げられる。この際、インキ密着性が良好である記録用紙を得るという観点から、バインダ樹脂は、予め溶媒に溶解したバインダ樹脂溶液として調製し、他の成分と混合すると好ましい。
【0159】
混合容器に対する各成分の添加方法は、帯電防止層形成用塗工液と同様に、一括して添加されてもよいし、逐次添加されてもよい。また、後者の場合、その添加順序も特に限定されない。各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10~40℃が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0160】
印刷受容層形成用塗工液中の固形分は、塗工液全体に対して0.5質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、また、塗工液中の固形分は、40質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0161】
[塗工]
帯電防止層形成用塗工液及び印刷受容層形成用塗工液の塗工は、公知の塗工装置により行うことができる。塗工装置の具体的な例としては、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等が挙げられる。
【0162】
帯電防止層形成用塗工液の塗工量としては、帯電防止層の厚みが所望の厚みとなれば特に制限されないが、乾燥後の固形分量で0.1~20g/m2であることが好ましく、0.5~8g/m2であることがより好ましい。塗工量が0.1g/m2以上であれば均一な帯電防止性能が得られやすくなる傾向がある。20g/m2以下であれば、塗工条件や塗工環境によって帯電防止剤が厚み方向に分布を持ちにくいため、安定な帯電防止性能と耐水性が得られやすくなる傾向がある。
【0163】
印刷受容層形成用塗工液の塗工量としては、印刷受容層の厚みが所望の厚みとなれば特に制限されないが、乾燥後の印刷受容層の固形分量は、0.1g/m~5g/mであることが好ましく、0.25g/m~3g/m以上であることがより好ましく、0.3g/m~1.5g/mであることがさらに好ましい。塗工量が上記の範囲にあることにより、塗工工程の調整が比較的容易であり、印刷媒体の生産性を向上させたり、塗工ムラを防止したりすることが可能である。
【0164】
[乾燥]
上記のように塗工工程を行った後、塗工された塗工液を乾燥することが好ましい。この際、乾燥条件(温度、時間など)は、塗工液中の溶媒を除去することができる条件であれば、特に制限されない。一例として、乾燥温度は、20~120℃であると好ましく、35~80℃であるとより好ましい。乾燥時間も特に制限されない。また、乾燥時の圧力条件も何ら制限されるものではなく、常圧(大気圧)下で行うことができるほか、加圧ないし減圧下で行ってもよい。
【0165】
また、乾燥手段(装置)としては、特に制限されないが、例えば、オーブン、減圧乾燥機などを利用することができる。一方、自然乾燥の場合には、特に乾燥手段(装置)は不要である。
【0166】
<記録用紙の用途>
[記録装置]
本発明の一実施形態に係る記録用紙は、電子写真印刷に好適に用いられ、例えば、複写機、レーザプリンタ等の電子写真記録装置によって良好なカラー記録が可能である。電子写真カラー記録方式には、(1)1色ずつ中間転写し、複数色を中間転写体に転写後、用紙に転写現像する中間転写方式、(2)2つ以上の感光体を使用し、1色ずつ複数色を用紙に転写現像するタンデム方式、(3)2つ以上の感光体を使用し、1色ずつ複数色を中間転写体に転写後、用紙に転写現像するタンデム+転写方式の3種類がある。本発明では特に(2)、(3)を総称してタンデム方式と呼ぶ。本発明の一実施形態に係る記録用紙は、(1)の中間転写方式にも使用できるが、(2)、(3)のタンデム方式への使用が好適である。(1)の方式にあっては、小型の電子写真複写機等の場合に、記録用紙が装置内で搬送中にしごかれて使用が困難なことがある。(2)、(3)のタンデム方式は高速化に対応したものであり、装置の構造上、記録用紙が搬送中にしごかれることが少なく好ましい。
【0167】
本発明の一実施形態に係る記録用紙には、上記記録装置を用いて記録する前に、通常の印刷、例えば油性オフセット印刷、UVオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等を施すこともできる。必要により、管理用のバーコードをこれらの印刷や、熱転写方式、電子写真方式により印字してもよい。また、本発明の一実施形態に係る記録用紙には、販売促進、視認性を高めるために、記録用紙の印刷受容層とは反対側の面に、全面印刷又は部分印刷を施してもよい。同様に、紙材の合成樹脂フィルムを積層する面に、合成樹脂フィルムを積層する前に、全面印刷又は部分印刷を施してもよい。これらの印刷は合成樹脂フィルムを介して見たときに正規の情報となるように施すことが好ましい。
【0168】
[記録物]
本発明の一実施形態に係る記録用紙を使用した記録物としては、POPカード(ポスター、ステッカー、ディスプレイ等)、店舗案内(パンフレット、会社案内、品書き、メニュー等)、下敷き(ランチマット、テーブルマット、文房具用品等)、マニュアル(職務、作業、操作等の各種マニュアル、工程表、時間割等)、チャート類(海図、天気図、図表、罫線表等)、カタログ、カード(プライスカード、ポイントカード、メンバーズカード、各種会員証、学生証、免許証、社員証、出入許可証、組合証、身分証明証、学生受講カード、図書カード、診察券、管理カード、駐車許可証、スキー回数券、CD、MDタイトルカード、CD、MDインデックスカード、フォトカード等)、パネル、プレート(金属板の代替え)、ブロマイド、保存書類(ワープロ文書、各種名簿、鑑定書、認定書、重要書類、賞状等)、図鑑、図面(建築図面、土木現場画面等)、地図(海図、路線図、屋外用地図等)、定期券、店頭価格表、登山ガイド、名刺、迷子札、料理のレシピ、案内板(売り場案内、方向・行き先案内、お菓子・食品等)、園芸用POP(吊下げラベル、差しラベル等)、スケジュール表、ロード・サイン(葬式・住宅展示場所等)、回覧板、室名札、校内記録表、表示板(立ち入り禁止、林道作業等の)、区画杭、表札、カレンダー(画像入り)、簡易ホワイトボード、はがき、グリーティングカード、チラシ、絵本・紙芝居、携帯用時刻表、アルバム絵日記、紙工作(ペーパークラフト)、コピー原稿、うちわ、メガホン、マウスパッド、しおり、ペット用トイレ、包装資材(包装紙、箱、袋等)、コースター、植木鉢、ラミネート不要の印刷物、ラベルライターの代替え印刷物、粘着ラベル、タグ(航空タグ、ICタグ、トリアージタグ)等を例示することができ、いずれも利用可能である。特に屋外での使用を前提とした印刷物のための用紙に好適に用いることができる。
【0169】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【実施例0170】
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。以下の製造例、実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の技術的範囲は、以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、溶液あるいは分散液として使用する原料の量比(単位:「質量部」、「質量%」)は、いずれも固形分換算の値である。なお、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行った。
【0171】
[基材層の作製]
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名:ルミラー、融点:260℃)を合成樹脂フィルムとし、これにポリエーテルウレタン系接着剤(東洋モートン(株)製、商品名:TM-317)60質量部、ポリイソシアネート系硬化剤(東洋モートン(株)製、商品名:CAT-11B)40質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製、商品名:Tinuvin-384-2)5質量部からなる接着剤塗料を乾燥固形分が4g/mとなるように塗工し、60℃で1分間乾燥させ、接着剤層を設けた。これを、紙材として用いる厚さ170μmの印画紙用OTP原紙(王子製紙(株)製、コッブ法吸水度:24.8g/m、坪量:175g/m)の表面及び裏面に重ねあわせ、圧着し、厚み220μmの5層構造(PETフィルム/接着剤層/印画紙用OTP原紙/接着剤層/PETフィルム)からなる基材層を得た。
【0172】
[帯電防止層形成用塗工液の製造]
以下に、帯電防止層形成用塗工液の構成成分を説明する。
【0173】
<カチオン性ポリマー(A)水溶液>
第1~3級アミノ基含有ポリマーである、市販のポリエチレンイミン系樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名:サフトマーAC-72)を、カチオン性ポリマー水溶液(A)として用いた。
【0174】
<シランカップリング剤(B)>
市販のシランカップリング剤である3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-403)を、シランカップリング剤(B)として用いた。
【0175】
<帯電防止剤(C-1)>
市販の帯電防止剤であるジアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:DADMAC((株)大阪ソーダ製)、固形分濃度:65.8%)を、帯電防止剤(C-1)として用いた。
【0176】
<帯電防止剤(C-2)>
市販の帯電防止剤である高分子型帯電防止剤(商品名:サフトマーST-3200(三菱ケミカル(株)製)、固形分濃度:25質量%、第4級アンモニウム塩)を、帯電防止剤(C-2)として用いた。
【0177】
<無機フィラー>
炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)製、商品名:ソフトン1800、平均粒径1.2μm(測定方法:空気透過法))を無機フィラーとして使用した。
【0178】
(帯電防止層形成用塗工液の調製例)
<調製例1>
上記カチオン性ポリマー(A)40質量部(固形分換算)に対し、シランカップリング剤(B)30質量部、及び帯電防止剤(C-1)30質量部(固形分換算)を含む水溶液を、帯電防止層形成用塗工液(a)として調製した。
【0179】
<調製例2>
上記カチオン性ポリマー(A)33質量部(固形分換算)に対し、シランカップリング剤(B)25質量部、帯電防止剤(C-1)40質量部(固形分換算)、及び無機フィラー(D)2質量部を含む水溶液を、帯電防止層形成用塗工液(b)として調製した。帯電防止層形成用塗工液(b)に含まれる、カチオン性ポリマー(A)(固形分換算)に対する無機フィラー(D)の割合は、6質量%であった。
【0180】
<調製例3>
上記カチオン性ポリマー(A)42質量部(固形分換算)に対し、シランカップリング剤(B)40質量部、帯電防止剤(C-1)15質量部(固形分換算)、及び無機フィラー(D)3質量部を含む水溶液を、帯電防止層形成用塗工液(c)として調製した。帯電防止層形成用塗工液(c)に含まれる、カチオン性ポリマー(A)(固形分換算)に対する無機フィラー(D)の割合は、7質量%であった。
【0181】
<調製例4>
上記カチオン性ポリマー(A)35質量部(固形分換算)に対し、シランカップリング剤(B)35質量部、及び帯電防止剤(C-2)30質量部(固形分換算)を含む水溶液を、帯電防止層形成用塗工液(d)として調製した。
【0182】
<調製例5>
上記カチオン性ポリマー(A)34質量部(固形分換算)に対し、シランカップリング剤(B)25質量部、帯電防止剤(C-2)40質量部(固形分換算)、及び無機フィラー(D)1質量部を含む水溶液を、帯電防止層形成用塗工液(e)として調製した。帯電防止層形成用塗工液(e)に含まれる、カチオン性ポリマー(A)(固形分換算)に対する無機フィラー(D)の割合は、3質量%であった。
【0183】
<調製例6>
上記カチオン性ポリマー(A)42質量部(固形分換算)に対し、シランカップリング剤(B)40質量部、帯電防止剤(C-2)15質量部(固形分換算)、及び無機フィラー(D)3質量部を含む水溶液を、帯電防止層形成用塗工液(f)として調製した。帯電防止層形成用塗工液(f)に含まれる、カチオン性ポリマー(A)(固形分換算)に対する無機フィラー(D)の割合は、7質量%であった。
【0184】
帯電防止層形成用塗工液(a)~(f)の調製例1~6について、下記表2に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
[印刷受容層形成用塗工液の製造]
以下に印刷受容層形成用塗工液の調製例Aの各構成成分を説明する。
【0187】
<印刷受容層形成用塗工液の調製例A>
(バインダ樹脂及び硬化剤の混合溶液の調製例)
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(富士フイルム和光純薬(株)製、試薬)15質量部、メチルメタクリレート(富士フイルム和光純薬(株)製、試薬)50質量部、エチルアクリレート(富士フイルム和光純薬(株)製、試薬)35質量部及びトルエン100質量部を、攪拌機、環流冷却管及び温度計を装着した三つ口フラスコに仕込み、窒素置換後、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(富士フイルム和光純薬(株)製、試薬)0.6質量部を開始剤として加え、80℃で4時間重合させた。得られた溶液は、水酸基価65の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂の50質量%トルエン溶液であった。次いで、この溶液100質量部に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(新第一塩ビ(株)製、商品名:ZEST C150ML)の20質量%メチルエチルケトン溶液を40質量部、硬化剤であるヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー(株)製、商品名:コロネートHL)75質量%酢酸エチル溶液を5.8質量部加え、さらにこの混合物にトルエンとメチルエチルケトンを1:1で混合した溶媒を添加して固形分を20質量%に調製し、バインダ樹脂及び硬化剤の混合溶液を得た。
【0188】
(顔料粒子)
顔料粒子として、無機顔料粒子である沈降性シリカ(平均粒子径1.6μm、吸油量180ml/100g、水澤化学工業(株)製、商品名:ミズカシル P-527)及び硫酸バリウム(平均粒子径0.3μm、堺化学工業(株)製、商品名:BARIACE B-32)を用いた。
【0189】
(塗工液の調製例)
メチルエチルケトンをカウレスミキサーにて静かに攪拌しながら、沈降性シリカ30質量部と硫酸バリウム15質量部を少しずつ加え、固形分濃度が20質量%になるように調製した後、カウレスミキサーの回転数を上げて30分間攪拌し粒子分散液を作製した。次いで、カウレスミキサーの回転数を落とし、この分散液に上述したバインダ樹脂及び硬化剤の混合溶液を添加し、そのまま20分間攪拌した後、100メッシュのフィルターを通し粗粒径物の除去を行い、印刷受容層形成用塗工液(A)を調製した。印刷受容層形成用塗工液(A)は、当該塗工液(A)を用いて形成した印刷受容層における、バインダ樹脂、顔料粒子、硬化剤の配合(質量部(固形分))が表2の調製例Aに示した値になるように調製した。
【0190】
<印刷受容層形成用塗工液の調製例B>
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を取り付けた四つ口フラスコ内に、ジメチルアミノエチルメタクリレート40質量部、エチルメタアクリレート20質量部、シクロヘキシルメタアクリレート20質量部、エチルアルコール150質量部と、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル1質量部を添加した。系内を窒素置換後、窒素気流下で80℃の温度で6時間重合反応を行った。得られた共重合体を、氷酢酸(和光純薬工業社製)を用いて中和した。水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、アクリル系樹脂の濃度が30質量%の水溶液を得て、バインダ樹脂溶液とした。このバインダ樹脂溶液に硬化剤として市販のポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物(日本PMC(株)製、商品名:WS-570(固形分12.5重量%))を加えることにより、バインダ樹脂及び硬化剤の混合溶液を得た。
【0191】
当該バインダ樹脂及び硬化剤の混合溶液を用いた以外は印刷受容層形成用塗工液の調製例Aと同様にして、印刷受容層形成用塗工液(B)を調製した。印刷受容層形成用塗工液(B)は、当該塗工液(B)を用いて形成した印刷受容層における、バインダ樹脂、顔料粒子、硬化剤の配合(質量部)が表2の調製例Bに示した値になるように調製した。
【0192】
<印刷受容層形成用塗工液の調製例C>
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名:ブレンマーPE-350)100重量部、過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部及びメチルエチルケトン400重量部を、攪拌機、コンデンサー、窒素導入管、温度計を装着した四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、60℃で40時間反応させた。これにステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、n-ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部を添加し、80℃で3時間重合反応した後、メチルエチルケトンを添加して固形分を20重量%に調製し、重量平均分子量約30万、固形分中のリチウム濃度0.8重量%のポリマー帯電防止剤溶液を得、帯電防止剤とした。
【0193】
バインダ樹脂及び硬化剤の混合溶液に加えて、上述した帯電防止剤を分散液に添加した以外は印刷受容層形成用塗工液の調製例Aと同様にして、印刷受容層形成用塗工液(C)を調製した。印刷受容層形成用塗工液(C)は、当該塗工液(C)を用いて形成した印刷受容層における、バインダ樹脂、顔料粒子、帯電防止剤、硬化剤の配合(質量部)が表2の調製例Cに示した値になるように調製した。
【0194】
【表2】
【0195】
[記録用紙の作成]
(実施例1)
調製例1で得られた帯電防止層形成用塗工液を基材層の片面にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが2μmとなるように塗工し、60℃の乾燥機にて乾燥して帯電防止層を形成した。次いで、乾燥後の帯電防止層表面(基材層が存在する面とは反対側の面)に調製例Aで得られた印刷受容層形成用塗工液を、バーコーターを用いて乾燥後の厚みが2μmとなるように塗工し、70℃の乾燥機にて乾燥して、実施例1の記録用紙を得た。
【0196】
(実施例2~7、比較例1~5)
印刷受容層形成用塗工液、帯電防止層形成用塗工液、及びそれぞれの乾燥後の厚みを表3に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~7、比較例1~5を作製した。なお、表中の「-」は、該当する層を設けないことを意味する。すなわち、比較例1及び3は帯電防止層を設けない記録用紙の例であり、比較例4は印刷受容層を設けない記録用紙の例である。
【0197】
[評価]
上記で作製した、実施例1~7及び比較例1~5の記録用紙について、以下の方法に従い、帯電防止性、及び耐水性評価を行った。結果を表3に示す。
【0198】
《帯電防止性》
各記録用紙の印刷受容層側表面の表面抵抗率を、温度23℃相対湿度50%及び温度10℃相対湿度30%の条件下で、表面抵抗率が1×10Ω以上の場合は、JIS K6911:2006に準拠し2重リング法の電極を用いて測定した。得られた結果を表3に常用対数を用いて示す。
【0199】
《耐水性》
カラーレーザプリンタ(カシオ(株)製、商品名:N4-612II)を使用し、各記録用紙の印刷受容層にイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色カラートナーによるテスト画像記録を実施した。続いて、当該テスト画像が記録された記録用紙を、バットに充満させた40℃に調整した水(イオン交換水)の中に浮かないように24時間浸漬させた。浸漬させた記録用紙を、学振形染色摩擦堅ろう度試験機(スガ試験器社製、機器名:摩擦試験機II形)に取り付けて、水に湿らせた白綿布で、荷重500gで100回擦る摩擦試験を行い、記録画像をコインで強く擦り以下の評価基準によって目視判定した。
【0200】
-評価基準-
○:記録画像に変化なし。
【0201】
△:記録画像の擦り箇所の一部に剥がれが生じる。
【0202】
×:記録画像の擦り箇所の全面に剥がれが生じる。
【0203】
また、上記の評価に併せて、実施例1~7及び比較例1~5の記録用紙について、下記の方法に従い、トナー転移性についても評価を行った。
【0204】
《トナー転移性》
カラーレーザプリンタ(カシオ(株)製、商品名:N4-612II)を使用し、各記録用紙の印刷受容層にイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色カラートナーによるテスト画像記録を実施し、濃度、色調、階調等の記録品質を、以下の評価基準によって目視判定した。
【0205】
-評価基準-
○:濃度、色調、階調いずれも良好である。
【0206】
△:記録濃度がやや低い。
【0207】
×:濃度、色調、階調のいずれかが劣り、使用に耐えない。
【0208】
【表3】
【0209】
表3に示されるように、実施例1~7の記録用紙は、いずれも優れた帯電防止性を保ちつつも、優れた耐水性を有する結果となった。一方、比較例1~5は、帯電防止性、耐水性のいずれかが劣る結果となった。
【0210】
なお、実施例1~7の記録用紙は、トナー転移性も良好な結果を示した。
【符号の説明】
【0211】
1 記録用紙、
2 基材層、
21 紙材、
22 接着剤層、
23 合成樹脂フィルム、
3 帯電防止層、
4 印刷受容層。
図1
図2