(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144889
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、位相差板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057058
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】秋山 圭
(72)【発明者】
【氏名】入江 俊介
(72)【発明者】
【氏名】奥山 健一
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA07
2H149AA18
2H149AB11
2H149DA02
2H149DA24
2H149DA27
2H149DB06
2H149DB16
2H149EA06
2H149FA21Y
2H149FA24Y
(57)【要約】 (修正有)
【課題】直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れ、直接積層される層との密着性及び耐久密着性に優れる配向層兼位相差層を形成可能な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を提供する。
【解決手段】液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、光配向性基及び熱架橋性基を有する光配向性成分(B)と、エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物(C)と、前記熱架橋性基と結合する架橋剤(D)と、を含有する、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、
光配向性基及び熱架橋性基を有する光配向性成分(B)と、
エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物(C)と、
前記熱架橋性基と結合する架橋剤(D)と、を含有する、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【請求項2】
前記光配向性成分(B)は、下記式(1)で表される構成単位を有する光配向性構成単位と、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体である、請求項1に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【化1】
(上記式(1)中、Z
1は下記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、L
11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、又は、これらの組み合わせを表す。)
【化2】
(上記式(1-1)~(1-6)中、R
21は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
22は水素原子またはメチル基を表し、R
23は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
24は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記光配向性成分(B)の前記光配向性基が、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、およびスチルベン基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【請求項4】
前記熱架橋性基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1又は2に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【請求項5】
前記側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有する、請求項1又は2に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【請求項6】
前記側鎖型液晶ポリマー(A)の、前記液晶性構成単位が、下記式(I)で表される構成単位を有する、請求項1又は2に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【化3】
(一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を、R
2は、-(CH
2)
m-、又は-(C
2H
4O)
m’-で表される基を表す。L
1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar
1は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
1及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
3は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHCO-R
4、-CO-OR
4、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
4
2、-R
5、-OR
5、又は-O-R
6-Wを表し、R
4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R
6は、炭素数1~11のアルキレン基を表し、Wは水素原子、-OH、-CN、シンナモイル基、シンナミリデン基、フリルアクリロイル基もしくはそれらの誘導体から選択される単環式の光配向性基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
【請求項7】
前記側鎖型液晶ポリマー(A)の、前記非液晶性構成単位が、下記式(II)で表される構成単位および下記式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を有する、請求項5に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【化4】
(一般式(II)中、R
11は、水素原子又はメチル基を表し、R
12は、-L
2-R
13、又は-L
2’-R
14で表される基を表し、L
2は-(CH
2)
n-を表し、L
2’は-(C
2H
4O)
n’-で表される連結基を表し、R
13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR
15を表し、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に、1~18の整数である。)
【化5】
(上記式(III)中、Z
aは下記式(a-1)~(a-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
16は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であり、Y
aは熱架橋性基を表す。)
【化6】
(上記式(a-1)~(a-6)中、R
11は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
17は水素原子またはメチル基を表し、R
18は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
19は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
aは、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
aが、単結合の場合、R
16はスチレン骨格に直接結合される。)
【請求項8】
配向層兼位相差層を有する配向膜兼位相差フィルムであって、
前記配向層兼位相差層が、請求項1又は2に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、配向膜兼位相差フィルム。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差層機能を有する硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより、更に配向層機能を有する硬化膜を形成する工程とを有する、配向膜兼位相差フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、第一の位相差層と、
前記第一の位相差層に隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有する第二の位相差層と
を有する、位相差板。
【請求項11】
前記第一の位相差層がポジティブC型位相差層であり、前記第二の位相差層がポジティブA型位相差層である、請求項10に記載の位相差板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1層で配向層と位相差層の両方の機能を有する配向層兼位相差層を形成可能な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、位相差板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等に適用される光学フィルムとして、入射した光に対して位相差層により所望の位相差を付与する位相差板がある。例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置では、1/4波長位相差板が直線偏光板と組み合わせた形態で円偏光板として使用され、外光反射防止フィルムとして機能する。また、従来より、IPSモード等の液晶表示装置では、斜め方向からの視野に対するコントラストを高めるために、ポジティブAの特性を備えるポジティブAプレートとポジティブCの特性を備えるポジティブCプレートとが組み合わされた位相差板が偏光板補償フィルムの一部として用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来、ポジティブAプレートとポジティブCプレートとの積層は、接着剤層等で貼り合わせられていた。
表示装置の薄型化に伴い、上記の問題に対応して提案されている位相差板を組み合わせて構成する広帯域1/4波長位相差板などの位相差板にも、性能を維持しつつより薄型化が可能な構成や製造工程の効率化が求められている。
【0004】
位相差板の薄型化を目的として、特許文献2及び特許文献3には、ポジティブCプレートと、ポジティブAプレートが積層された光学フィルム積層体であって、前記ポジティブCプレートは、感光性基を有する第1の液晶性材料から形成されたホメオトロピック配向層の配向性が固定されたものであり、前記ポジティブAプレートは、重合性を有する第2の液晶性材料から形成された、ホモジニアス配向層の配向性が固定されたものであり、前記ポジティブAプレートは、前記ポジティブCプレート上に直接積層されており、前記ポジティブCプレートにおいて、前記感光性基が異方的に光反応していることを特徴とする、光学フィルム積層体が開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、第1の光学異方性層と第2の光学異方性層とが直接積層されてなる光学積層体であって、前記第1の光学異方性層および前記第2の光学異方性層が、いずれも液晶層からなり、前記第2の光学異方性層の前記第1の光学異方性層と接する側の表面に、光配向性基と、水酸基およびケトン基からなる群から選択される少なくとも1種の極性基とを有する光配向性ポリマーが存在する、光学積層体が開示されている。
また、特許文献5には、第1液晶化合物を用いて形成された第1光学異方性層と、第2液晶化合物を用いて形成された第2光学異方性層と、前記第1光学異方性層と前記第2光学異方性層との間に配置された、前記第1液晶化合物由来の成分および前記第2液晶化合物由来の成分を含む混合層と、を有する光学積層体であって、前記第1光学異方性層がCプレートであり、前記第2光学異方性層がAプレート、または、ねじれ配向液晶相を固定してなる層であり、前記混合層がさらに光配向化合物を含み、前記光学積層体の前記第1光学異方性層側の表面から前記第2光学異方性層側に向かって、イオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で前記光学積層体の深さ方向の成分を分析した際に、特定の条件を満たす、光学積層体が開示されている。
【0006】
さらに、本発明者らは、特許文献6に、光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性液晶組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有するポジティブA型位相差層とを含有する、位相差板を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4592005号公報
【特許文献2】特開2016-004142号公報
【特許文献3】国際公開2020/158428号公報
【特許文献4】国際公開2021/166619号公報
【特許文献5】国際公開2021/167075号公報
【特許文献6】国際公開2022/158555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2~6においては、位相差板の薄型化を目的として前記ポジティブA型位相差層が、前記ポジティブC型位相差層上に直接積層されている。しかしながら、特許文献2及び3に記載されているポジティブC型位相差層は、垂直配向性を有する液晶性成分の末端に感光性基として光配向性基を結合させた構造を有する第一の液晶性材料を用いて形成されているので、直接積層されたポジティブA型位相差層の液晶性材料を配向させる能力(液晶配向能)に劣り、また、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の密着性にも劣るものであった。特許文献3は、特許文献2を改良した技術であり、ポジティブCプレートの第1の液晶性材料に、末端に架橋性基(水酸基)を有する側鎖を導入し、ポジティブAプレートの材料にイソシアネートを導入し、反応させることで界面の密着性が向上したことが記載されている。しかしながら、このような密着性の向上の技術では、添加するイソシアネート材料によってポジティブA液晶材料の配向が阻害されるため、配向性の高いポジティブA液晶材料に限定されるという問題が生じ得る。
また、特許文献4に記載されている光学積層体は、第2の光学異方性層(ポジティブA型位相差層)を直接積層する第1の光学異方性層(ポジティブC型位相差層)が、重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物である。重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層上に、ポジティブA型位相差層を直接積層した位相差板は、垂直配向性が不十分になるか、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の密着性が不十分になるという課題がある。重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層は、垂直配向性が良好になるよう十分に硬化させると表面が硬くなって密着性が悪くなるからである。密着性が不十分であると、転写時にポジティブC型位相差層がポジティブA型位相差層と共に転写されず、ポジティブC型位相差層が基材上に残存してしまう問題が生じる。
また、特許文献5は、前記特許文献4のような密着性の課題を解決したものであり、第1光学異方性層と第2光学異方性層との間に配置された、第1液晶化合物由来の成分および第2液晶化合物由来の成分を含む混合層を有することが開示されている。しかしながら特許文献4の技術では、このような密着性の向上の技術では、混合層の厚みムラによって光学特性にばらつきが生じる可能性があるという問題が生じ得る。
【0009】
従来、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されている場合の密着性は未だ不十分であり、特に、高温および高湿度下で保存した後の耐久密着性が未だ不十分であり、さらなる密着性の向上が求められていた。
本発明者らによる特許文献6の位相差板においては、その他の任意成分の例示に、重合性基と熱架橋性基とを有する化合物という記載がある。しかしながら、重合性基と熱架橋性基とを有する化合物をポジティブC型位相差層に添加すると、密着性は向上するものの、直接積層されたポジティブA型位相差層の液晶性材料を配向させる能力(液晶配向能)を悪化させてしまうという問題が生じた。
【0010】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、垂直配向性を有し、且つ、直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れ、直接積層される層との密着性及び耐久密着性に優れる配向層兼位相差層を形成可能な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、耐久密着性を有し、且つ、直接積層されたポジティブA型位相差層の液晶性材料の水平配向性が良好な位相差板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマーと、光配向性基及び熱架橋性基を有する光配向性成分(B)と、前記熱架橋性基と結合する架橋剤(D)に、さらに、特定のSP値を有するエチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物を組み合わせることにより、直接積層された液晶性材料を配向させる能力を悪化させることなく、直接積層される層との密着性及び耐久密着性を向上させた配向層兼位相差層を形成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本開示には、以下の態様が含まれる。
【0012】
[1]液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、
光配向性基及び熱架橋性基を有する光配向性成分(B)と、
エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物(C)と、
前記熱架橋性基と結合する架橋剤(D)と、を含有する、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
[2] 前記光配向性成分(B)は、下記式(1)で表される構成単位を有する光配向性構成単位と、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体である、前記[1]に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【0013】
【化1】
(上記式(1)中、Z
1は下記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、L
11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、又は、これらの組み合わせを表す。)
【0014】
【化2】
(上記式(1-1)~(1-6)中、R
21は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
22は水素原子またはメチル基を表し、R
23は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
24は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0015】
[3] 前記光配向性成分(B)の前記光配向性基が、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、およびスチルベン基からなる群から選択される少なくとも1種である、前記[1]又は[2]に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
[4] 前記熱架橋性基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
[5] 前記側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有する、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
[6] 前記側鎖型液晶ポリマー(A)の、前記液晶性構成単位が、下記式(I)で表される構成単位を有する、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【0016】
【化3】
(一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を、R
2は、-(CH
2)
m-、又は-(C
2H
4O)
m’-で表される基を表す。L
1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar
1は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
1及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
3は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHCO-R
4、-CO-OR
4、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
4
2、-R
5、-OR
5、又は-O-R
6-Wを表し、R
4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R
6は、炭素数1~11のアルキレン基を表し、Wは水素原子、-OH、-CN、シンナモイル基、シンナミリデン基、フリルアクリロイル基もしくはそれらの誘導体から選択される単環式の光配向性基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
[7] 前記側鎖型液晶ポリマー(A)の、前記非液晶性構成単位が、下記式(II)で表される構成単位および下記式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を有する、前記[5]又は[6]に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【0017】
【化4】
(一般式(II)中、R
11は、水素原子又はメチル基を表し、R
12は、-L
2-R
13、又は-L
2’-R
14で表される基を表し、L
2は-(CH
2)
n-を表し、L
2’は-(C
2H
4O)
n’-で表される連結基を表し、R
13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR
15を表し、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に、1~18の整数である。)
【0018】
【化5】
(上記式(III)中、Z
aは下記式(a-1)~(a-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
16は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であり、Y
aは熱架橋性基を表す。)
【0019】
【化6】
(上記式(a-1)~(a-6)中、R
11は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
17は水素原子またはメチル基を表し、R
18は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
19は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
aは、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
aが、単結合の場合、R
16はスチレン骨格に直接結合される。)
【0020】
[8] 配向層兼位相差層を有する配向膜兼位相差フィルムであって、
前記配向層兼位相差層が前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、配向膜兼位相差フィルム。
[9] 前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差層機能を有する硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより、更に配向層機能を有する硬化膜を形成する工程とを有する、配向膜兼位相差フィルムの製造方法。
[10] 前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、第一の位相差層と、
前記第一の位相差層に隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有する第二の位相差層と
を有する、位相差板。
[11] 前記第一の位相差層がポジティブC型位相差層であり、前記第二の位相差層がポジティブA型位相差層である、前記[10]に記載の位相差板。
【発明の効果】
【0021】
本開示においては、垂直配向性を有し、且つ、直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れ、直接積層される層との密着性及び耐久密着性に優れる配向層兼位相差層を形成可能な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、耐久密着性を有し、且つ、直接積層されたポジティブA型位相差層の液晶性材料の水平配向性が良好な位相差板を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の配向膜兼位相差フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の配向膜兼位相差フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図3】本開示の配向膜兼位相差フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図4】本開示の位相差板の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施の形態や実施例などを、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態や実施例等の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
「本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0024】
本開示において配向規制力とは、位相差層中の液晶化合物を特定方向に配列させる作用をいう。
本開示において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
また、本明細書において「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではなく、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
また、本開示において、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0025】
以下、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、それを用いた配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、位相差板について詳細に説明する。
【0026】
A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、
光配向性基及び熱架橋性基を有する光配向性成分(B)と、
エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物(C)と、
前記熱架橋性基と結合する架橋剤(D)と、を含有することを特徴とするものである。
【0027】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前記側鎖型液晶ポリマー(A)と、直接積層された液晶性材料を配向させる能力を発揮する光配向性基及び熱架橋性基を有する光配向性成分(B)と、エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物(C)と、前記熱架橋性基と結合する架橋剤(D)とを含有することから、当該組成物の硬化膜を形成することにより、1層で配向層と位相差層の両方の機能を有する、配向層兼位相差層を形成できる。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物においては、光配向性基及び熱架橋性基を有する光配向性成分(B)と、エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物(C)と、前記熱架橋性基と結合する架橋剤(D)とを含むことから、前記化合物(C)の熱架橋性基が、光配向性成分(B)とも反応する架橋剤(D)と反応して架橋構造を形成すると共に、前記化合物(C)のエチレン性二重結合含有基が直接積層される層に含まれるエチレン性二重結合含有基を有する重合性液晶材料と反応することが可能なため、配向層兼位相差層と、直接積層されるポジティブA型位相差層のような重合性液晶材料を含む層との密着性、特に耐久密着性を向上することができる。しかし、エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有する化合物は、配向層兼位相差層の直接積層されるポジティブA型位相差層を配向させる能力(光配向性)を阻害する課題があった。発明者らが鋭意検討したところ、SP値が13.0(cal/cm3)1/2以下のエチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有する化合物(C)を選択して用いると、光配向性の低下を抑制しながら、密着性、耐久密着性を向上できることが見い出された。エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有する化合物は、SP値が高すぎると、配向層兼位相差層の前記側鎖型液晶ポリマー(A)や光配向性成分(B)成分との相溶性が低下し、当該化合物が均一に分散されずに表面に凝集して存在しやすくなることで、光配向性成分(B)を覆うなどして、光配向性成分(B)の配列乱れや機能阻害を引き起こしやすく、光配向性を低下してしまうと推定される。それに対して当該SP値が13.0(cal/cm3)1/2以下のエチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有する化合物(C)は、配向層兼位相差層の成分との相溶性が良好になり、当該化合物(C)が配向層兼位相差層の表面において均一に分散されて存在することで、光配向性成分(B)の配列乱れや機能阻害を引き起こし難いため、光配向性の低下が起こり難いと考えられる。そして、当該化合物(C)は、表面において均一に分散された状態で、熱架橋性基が光配向性成分(B)とも反応する架橋剤(D)と反応して架橋構造を形成すると共に、エチレン性二重結合含有基が直接積層される層に含まれるエチレン性二重結合含有基を有する重合性液晶材料と反応することが可能なため、密着性、特に耐久密着性を向上することができ、優れた密着性と光配向性が両立すると考えられる。
【0028】
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物によれば、光配向性基及び熱架橋性基を有する光配向性成分(B)と、エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物(C)と、前記熱架橋性基と結合する架橋剤(D)を含むことから、熱硬化を行うと、その架橋構造によって膜の耐熱性、耐溶剤性が良好となり、耐久性が高い配向層兼位相差層が得られる。
【0029】
以下、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における各成分について説明する。
1.側鎖型液晶ポリマー(A)
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有するものである。
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を全構成単位の100モル%含んでいてもよいし、更に、その他の非液晶性構成単位を含んでいてもよい。
以下、側鎖型液晶ポリマー(A)における各構成単位について説明する。
【0030】
(1)液晶性構成単位
本開示の実施形態において、液晶性構成単位は、液晶性部分、すなわち液晶性を示す部分を含む側鎖を有する。液晶性構成単位は、側鎖に液晶性を示すメソゲンを含む構成単位であることが好ましい。液晶性構成単位は、メソゲン基にスペーサーを介して重合性基が結合した液晶性を示す化合物から誘導される構成単位であることが好ましい。本開示においてメソゲンとは、液晶性を示すような剛直性の高い部位をいい、例えば、2個以上の環構造、好ましくは3個以上の環構造を有し、環構造同士が直接結合により連結しているか、又は、当該環構造が1原子乃至3原子を介して連結している部分構造が挙げられる。側鎖にこのような液晶性を示す部位を有することにより、当該液晶性構成単位が垂直配向しやすくなる。
前記環構造としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香環であってもよく、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状の脂肪族炭化水素であってもよい。
また、当該環構造が1原子乃至3原子を介して連結している場合、当該連結部の構造としては、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-NR-、-O-NR-、若しくは-NR-O-(Rは水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。
中でも、メソゲンとしては、前記環構造の連結が棒状になるように、ベンゼンであればパラ位、ナフタレンであれば2,6位で接続された、棒状メソゲンであることが好ましい。
【0031】
また、液晶性構成単位が側鎖に液晶性を示すメソゲンを含む構成単位である場合、垂直配向性の点から、当該構成単位の側鎖の末端が極性基であるか、アルキル基を有することが好ましい。このような極性基の具体例としては、-F、-Cl、-CN、-OCF3、-OCF2H、-NCO、-NCS、-NO2、-NHC(=O)-R’、-C(=O)-OR’、-OH、-SH、-CHO、-SO3H、-NR’2、-R”、又は-OR”(R’は水素原子又は炭化水素基、R”はアルキル基)等が挙げられる。
【0032】
液晶性構成単位は、側鎖として、-R2-(L1-Ar1)a-R3で表される基(ここで、R2は、-(CH2)m-、又は-(C2H4O)m’-で表される基を表す。L1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL1及びAr1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R3は、-F、-Cl、-CN、-OCF3、-OCF2H、-NCO、-NCS、-NO2、-NHCO-R4、-CO-OR4、-OH、-SH、-CHO、-SO3H、-NR4
2、-R5、-OR5、又は-O-R6-Wを表し、R4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R5は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R6は、炭素数1~11のアルキレン基を表し、Wは水素原子、-OH、-CN、シンナモイル基、シンナミリデン基、フリルアクリロイル基もしくはそれらの誘導体から選択される単環式の光配向性基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)を有する構成単位が挙げられる。
【0033】
R2のm及びm’は、それぞれ独立に2~10の整数である。垂直配向性の点から、中でも、m及びm’が2~8であることが好ましく、更に2~6であることが好ましい。
【0034】
Ar1における、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基がより好ましい。当該アリーレン基が有してもよいR3以外の置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0035】
R3における、R4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であるが、中でも、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。また、R3における、R5は、炭素数1~6のアルキル基であるが、中でも、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。
R3は、垂直配向性の点から、当該構成単位の側鎖の末端が極性基であるか、アルキル基を有することが好ましい。
あるいは、配向規制力を向上しやすい点から、R3は、-O-R6-Wであって、Wが、シンナモイル基、シンナミリデン基、フリルアクリロイル基もしくはそれらの誘導体から選択される単環式の光配向性基を表す基であってもよい。
【0036】
液晶性構成単位は、重合可能なエチレン性二重結合含有基を有する単量体から誘導される構成単位であることが好ましい。このようなエチレン性二重結合含有基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、又はビニルエステル等の誘導体が挙げられる。液晶性構成単位は、中でも、(メタ)アクリル酸エステル誘導体から誘導される構成単位であることが、垂直配向性の点から、好ましい。
【0037】
本開示の実施形態において液晶性構成単位は、垂直配向性の点から、中でも、下記一般式(I)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0038】
【化7】
(一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を、R
2は、-(CH
2)
m-、又は-(C
2H
4O)
m’-で表される基を表す。L
1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar
1は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
1及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
3は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHCO-R
4、-CO-OR
4、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
4
2、-R
5、-OR
5、又は-O-R
6-Wを表し、R
4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1~11のアルキレン基を表し、Wは水素原子、-OH、-CN、シンナモイル基、シンナミリデン基、フリルアクリロイル基もしくはそれらの誘導体から選択される単環式の光配向性基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
【0039】
一般式(I)で表される構成単位において、-R2-(L1-Ar1)a-R3で表される基は、前記と同様であって良い。
【0040】
一般式(I)で表される液晶性構成単位の好適な具体例としては、例えば、下記一般式(I-1)、(I-2)及び(I-3)で表されるもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
【0042】
ここで、上記一般式(I-1)~(I-3)で表される構成単位において、R2、及び、R3はそれぞれ、一般式(I)のR2、及び、R3と同様である。
【0043】
本開示の実施形態において液晶性構成単位は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
重合体の合成には、液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体を用いることができる。液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
重合体における上記液晶性構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、100モル%であってもよいが、30モル%~90モル%の範囲内で設定することが好ましく、30モル%~80モル%の範囲内で設定することがより好ましく、更に35モル%~70モル%の範囲内で設定することが好ましく、特に40モル%~60モル%の範囲内であることが好ましい。
なお、重合体における各構成単位の含有割合は、1H-NMR測定による積分値から算出することができる。
【0046】
(2)アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位
前記側鎖型液晶ポリマー(A)は、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を更に含んでもよい。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、側鎖型液晶ポリマーが液晶状態となった時に、当該アルキレン基を含む側鎖が、前記液晶性構成単位の側鎖の液晶性を示す部分(メソゲン)の垂直配向(ホメオトロピック配向)を促す作用を有する。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、側鎖として、-L2-R13、又は-L2’-R14で表される基(ここで、L2は-(CH2)n-を表し、L2’は-(C2H4O)n’-で表される連結基を表し、R13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR15を表し、R14及びR15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に、1~18の整数である。)を有する構成単位が挙げられる。
【0047】
L2は-(CH2)n-を表し、L2’は-(C2H4O)n’-で表される連結基を表すが、中でも、垂直配向性が良好になりやすい点から、-(CH2)n-が好ましい。また、nは1~18の整数であるが、中でも2~18の整数であることが好ましい。R13が置換基を有するメチル基か置換基を有するアルキル基の場合、nは1の整数も好ましく用いられる。また、n’は、1~18の整数であるが、1~8の整数であることが好ましく、中でも、2~8の整数であることがより好ましい。
【0048】
R14及びR15におけるアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、中でも直鎖状であることが好ましい。
R14、及びR15におけるアルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等の直鎖状アルキル基、i-プロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基等の分岐状アルキル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、2-プロピニル基等のアルキニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基、1-シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基等が挙げられる。上記シクロアルキル基の場合には、直鎖状アルキル基が置換されたシクロアルキル基であることが好ましい。
【0049】
R14及びR15におけるアルキル基は、特に限定されないが、位相差の面内均一性の点から、炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0050】
R13、R14、及びR15におけるアリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、中でもフェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。上記アリール基の場合には、直鎖状アルキル基が置換されたアリール基であることが好ましい。
【0051】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、置換基として、他の成分と反応するような反応性基を有していてもよく、例えば、後述する光配向性成分(B)と同様の熱架橋性基を有していてもよい。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、非液晶性且つ非架橋性構成単位と、非液晶性且つ熱架橋性構成単位が挙げられる。アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、非液晶性且つ非架橋性構成単位のみを含んでも良いし、非液晶性且つ熱架橋性構成単位のみを含んでもよい。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、垂直配向性が良好になりやすい点から、少なくとも非液晶性且つ非架橋性構成単位を含むことが好ましく、垂直配向性が良好になりやすく、且つ、耐久性が向上しやすい点から、非液晶性且つ非架橋性構成単位、及び、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を含むことがより好ましい。
【0052】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非架橋性構成単位において、R13におけるメチル基が有してもよい置換基、及び、R14及びR15におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、非架橋性置換基が挙げられ、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が好ましい。
【0053】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非架橋性構成単位において、R13、R14、及びR15におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、非架橋性置換基が挙げられ、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられ、当該アルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、炭素数1~9のアルキル基が挙げられ、直鎖アルキル基であってもよく、分岐又は環構造を含むアルキル基であってもよい。中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1~9のアルキル基が好ましい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。当該アルキル基が有する水素原子は、ハロゲン原子に置換されていてもよい。
【0054】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位において、R13におけるメチル基、R14及びR15におけるアルキル基、及び、R13、R14、及びR15におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、熱架橋性基であることが好ましく、後述する光配向性成分(B)と同様の熱架橋性基が挙げられ、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基、およびメチル基に置換されるアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。自己架橋基であるヒドロキシメチル基及びアルコキシメチル基は、R13におけるメチル基に、ヒドロキシ基やアルコキシ基が置換することにより、ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基となるものであってよい。
熱架橋性基としては、中でも、反応性の点から、ヒドロキシ基が好ましく、第1級ヒドロキシ基がより好ましい。なお、第1級ヒドロキシ基とは、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であるヒドロキシ基をいう。
【0055】
非液晶性構成単位は、重合可能なエチレン性二重結合含有基を有する単量体から誘導される構成単位であることが好ましい。このようなエチレン性二重結合含有基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、又はビニルエステル等の誘導体が挙げられる。非液晶性構成単位は、垂直配向性の点から、(メタ)アクリル酸エステル誘導体又はスチレンから誘導される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル誘導体から誘導される構成単位であることがより好ましい。
【0056】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、下記式(II)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0057】
【化9】
(一般式(II)中、R
11は、水素原子又はメチル基を表し、R
12は、-L
2-R
13、又は-L
2’-R
14で表される基を表し、L
2は-(CH
2)
n-を表し、L
2’は-(C
2H
4O)
n’-で表される連結基を表し、R
13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR
15を表し、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に、1~18の整数である。)
【0058】
式(II)で表される構成単位において、-L2-R13、又は-L2’-R14で表される基は、前記と同様であって良い。
【0059】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ非架橋性構成単位である場合、前記式(II)で表される構成単位に含まれる、有していてもよい置換基としては、前述の非架橋性置換基が挙げられる。
また、本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ熱架橋性構成単位である場合、前記式(II)で表される構成単位に含まれる、有していてもよい置換基としては、前述の熱架橋性基が挙げられる。1つの非液晶性且つ熱架橋性構成単位において、熱架橋性基を1つ有することが好ましいが、2つ以上有してもよい。
【0060】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を含む場合、下記式(III)で表される構成単位を有することが、反応性が向上し、耐久性が向上する点から、好ましい。
【0061】
【化10】
(上記式(III)中、Z
aは下記式(a-1)~(a-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
16は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であり、Y
aは熱架橋性基を表す。)
【0062】
【化11】
(上記式(a-1)~(a-6)中、R
11は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
17は水素原子またはメチル基を表し、R
18は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
19は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
aは、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
aが、単結合の場合、R
16はスチレン骨格に直接結合される。)
【0063】
R16は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であるが、-(CH2)n”-または-(C2H4O)m”-C2H4-である(n”は1~11、m”は1~4)ことが好ましく、n”は2~11、m”は1~4であることが好ましく、n”は4~11、m”は2~4であることが好ましい。n”およびm”が小さすぎると、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と架橋剤との反応性が低下するおそれがある。一方、n”およびm”が大きすぎると、熱架橋性構成単位において連結基の鎖長が長くなるため、末端の熱架橋性基が表面に出にくく、熱架橋性基に架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と架橋剤との反応性が低下するおそれがある。
Yaの熱架橋性基は、前述の熱架橋性基と同様であって良く、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基、およびメチル基に置換されるアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。自己架橋基であるヒドロキシメチル基及びアルコキシメチル基は、メチル基(R16におけるメチレン基)に、ヒドロキシ基やアルコキシ基が置換することにより、ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基となるものであってよい。
【0064】
共重合体が有する非液晶性構成単位は、1種であってもよく、2種以上であっても良い。
一般式(II)で表される構成単位のうち、非液晶性且つ非架橋性構成単位としては、以下の化学式(II-1)~(II-10)が挙げられる。
また、一般式(II)で表される構成単位のうち、非液晶性且つ熱架橋性構成単位としては、以下の化学式(II-1)~(II-10)の炭化水素基の水素の1つが前記熱架橋性基に置換した構造が挙げられる。更に、非液晶性且つ熱架橋性構成単位としては、以下の化学式(III-1)~(III-11)が挙げられる。
【0065】
【0066】
【0067】
共重合体の合成には、上記非液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体を用いることができる。上記非液晶性構成単位を誘導する(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
側鎖型液晶ポリマー(A)が上記非液晶性構成単位を含む場合、共重合体における上記非液晶性構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、10モル%~70モル%の範囲内で設定することが好ましく、20モル%~70モル%の範囲内で設定することがより好ましく、更に、30モル%~65モル%の範囲内で設定することが好ましく、特に、40モル%~60モル%の範囲内であることが好ましい。
【0069】
共重合体における上記非液晶性構成単位として、非液晶性且つ非架橋性構成単位と、非液晶性且つ熱架橋性構成単位の両方を含む場合、非液晶性且つ熱架橋性構成単位の含有割合としては共重合体全体に含まれる非液晶性構成単位の合計量を100モル%としたとき、10モル%~70モル%の範囲内で設定することが好ましく、30モル%~50モル%の範囲内で設定することがより好ましい。
なお、共重合体における各構成単位の含有割合は、1H-NMR測定による積分値から算出することができる。
【0070】
(3)その他の構成単位
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、前記液晶性構成単位を少なくとも有し、前記アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位をさらに有してよいが、更に、その他の構成単位を有していてもよい。
その他の構成単位としては、例えば、アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位や、後述する光配向性成分(B)が有する光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位が挙げられる。
アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸、4-ヒドロキシスチレン、4-カルボキシスチレン等が挙げられる。
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位、及び、アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有することが、位相差層の耐久信頼性を向上する点から好ましい。
光配向性構成単位としては、後述する光配向性成分(B)が有する光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と同様であって良い。
【0071】
側鎖型液晶ポリマー(A)が上記その他の構成単位を含む場合、共重合体における上記その他の構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、30モル%以下の範囲内で設定することが好ましく、20モル%以下の範囲内で設定することがより好ましい。
【0072】
(4)側鎖型液晶ポリマー(A)の重合体
本開示の実施形態において、側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性構成単位からなるホモポリマーであってもよいし、前記のような他の構成単位を有する共重合体であってもよい。
本開示の実施形態において、側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性構成単位からなるブロック部と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位からなるブロック部とを有するブロック共重合体であってもよく、液晶性構成単位とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とが不規則に並ぶランダム共重合体であってもよい。本実施形態においては、側鎖型液晶ポリマーの垂直配向性や位相差値の面内均一性を向上する点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0073】
また、重合体である側鎖型液晶ポリマーの質量平均分子量Mwは特に限定されないが、10000~100000の範囲内であることが好ましく、30000~90000の範囲内であることがより好ましく、40000~80000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲内であることにより、液晶組成物の安定性に優れ、位相差層形成時の取り扱い性に優れている。
【0074】
なお、上記質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC-8220GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw706000、427000、190000、96400、37900、17400、5970、2630、1010、5900(以上、東ソー(株)製 TSKGEL標準ポリスチレン)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0075】
側鎖型液晶ポリマー(A)の重合体の合成方法としては、液晶性構成単位を誘導するモノマーと必要に応じてアルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を誘導するモノマーとを用い、従来公知の製造方法で重合する方法が挙げられる。
側鎖型液晶ポリマー(A)は、重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0076】
上記側鎖型液晶ポリマー(A)は1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において、垂直配向性を発揮する点から、上記側鎖型液晶ポリマーの含有割合は、液晶組成物の固形分100質量部に対して20質量部~80質量部であることが好ましく、25質量部~70質量部であることがより好ましく、30質量部~60質量部であることがより更に好ましい。
なお、本開示において固形分とは溶剤を除く全ての成分をいい、例えば、後述する重合性液晶化合物が液状であっても固形分に含まれるものとする。
【0077】
2.光配向性成分(B)
本開示に用いられる光配向性成分(B)は、光配向性基及び熱架橋性基を有する光配向性成分である。
光配向性成分(B)としては、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体であってもよく、前記共重合体とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物であってもよい。
【0078】
本開示に用いられる光配向性成分としては、良好な垂直配向性と液晶配向能を発現する点から、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体を用いることが好ましい。
中でも、光配向性基を特定の構造により側鎖に含む光配向性構成単位と、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体(B)(光配向性共重合体)を用いることが好ましい。
【0079】
(1)光配向性構成単位
本発明における光配向性構成単位は、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する部位である。光反応としては、光二量化反応または光異性化反応であることが好ましい。すなわち、光配向性構成単位は、光照射により光二量化反応を生じることで異方性を発現する光二量化構成単位、または、光照射により光異性化反応を生じることで異方性を発現する光異性化構成単位であることが好ましい。
【0080】
光配向性構成単位は、光配向性基を有するものである。光配向性基は、上述のように、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する官能基であり、光二量化反応または光異性化反応を生じる官能基であることが好ましい。
【0081】
光二量化反応を生じる光配向性基としては、例えばシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有してもよい。置換基としては、光二量化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0082】
光異性化反応を生じる光配向性基としては、シストランス異性化反応を生じるものであることが好ましく、例えばシンナモイル基、カルコン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有してもよい。置換基としては、光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0083】
中でも、光配向性基は、シンナモイル基であることが好ましい。具体的に、シンナモイル基としては、下記式(x-1)及び(x-2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0084】
【0085】
上記式(x-1)中、R31は水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R32~R35はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R36およびR37はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のアルコキシ基を表す。
また、上記式(x-2)中、R41~R45はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R46およびR47はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のアルコキシ基を表す。
【0086】
なお、光配向性基がシンナモイル基の場合であって、上記式(x-1)で表される基の場合、単量体単位に含まれるスチレン骨格(式(1-2))のベンゼン環がシンナモイル基のベンゼン環となっていてもよい。
【0087】
また、上記式(x-1)で表されるシンナモイル基は、下記式(x-3)で表される基であることがより好ましい。
【0088】
【0089】
上記式(x-3)中、R32~R37は上記式(x-1)と同様である。R38は水素原子、炭素数1~18のアルコキシ基、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基またはシクロヘキシル基を表す。ただし、アルキル基、フェニル基、ビフェニル基およびシクロヘキシル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよい。nは1~5を表し、R38はオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよい。nが2~5の場合、R38は互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、nが1であり、R38がパラ位に結合していることが好ましい。
【0090】
光配向性基が上記式(x-3)及び(x-2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種の基である場合、光配向性構成単位の末端付近に芳香環が配置されるようになり、π電子を多く含むようになる。そのため、配向層上に形成される液晶層と親和性が高くなり、液晶配向能が向上し、液晶層との密着性が高くなると考えられる。
【0091】
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、原料調達の容易さの点から、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
【0092】
本開示の光配向性構成単位としては、下記式(1)で表される構成単位を例示することができる。
【0093】
【化16】
(上記式(1)中、Z
1は下記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、L
11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、又は、これらの組み合わせを表す。)
【0094】
【化17】
(上記式(1-1)~(1-6)中、R
21は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
22は水素原子またはメチル基を表し、R
23は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
24は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0095】
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、前記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。なお、Z1が式(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種の場合、-L11-Xはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよいが、-L11-Xがパラ位に結合していることが、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、光配向性が得られやすい点から好ましい。
【0096】
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、中でも、原料調達の容易さの点から、式(1-1)及び(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。更に、式(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種であると、共重合体の光配向性構成単位の剛直性が増すため、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、優れた光配向性が得られやすい点から、より好ましい。また、共重合体中にスチレン骨格を有し、π電子系を多く含むと、π電子系の相互作用により、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物から形成された配向層兼位相差層は、この配向層兼位相差層上に直接積層された液晶性材料との密着性も高くなると考えられる。
【0097】
上記式(1)中、Xは光配向性基を表し、前述と同様であって良く、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、およびスチルベン基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有してもよい。置換基としては、光二量化反応や光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
中でも、光配向性基はシンナモイル基であることが好ましい。具体的には、上記式(x-1)、(x-2)で表される基であることが好ましい。
【0098】
L11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、又は、これらの組み合わせを表し、前記単量体単位と、光配向性基Xとを連結する。
【0099】
上記L11が単結合の場合、光配向性基Xは単量体単位Z1に直接結合される。2価の連結基としては、具体的には、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、-(CH2)n-、-(CH2CH2O)m-、-C6H4-、-C6H10-、-(CH2)nO-、-(CH2CH2O)mO-、-C6H4O-、-C6H10O-、-O(CH2)nO-、-O(CH2CH2O)mO-、-OC6H4O-、-OC6H10O-、-OCO(CH2)nCOO-、-OCO(CH2CH2O)mCOO-、-OCOC6H4O-、-OCOC6H10O-、-COO(CH2)nO-、-COO(CH2CH2O)m-、-COOC6H4O-、-COOC6H10O-等が挙げられ、ここで-C6H4-はフェニレン基、-C6H10-はシクロへキシレン基を表す。nは1~20、mは1~10である。
【0100】
光配向性の点からは、前記単量体単位と、光配向性基Xとの間のアルキレン鎖は短い方が好ましい。光配向性構成単位において、アルキレン鎖が短い構造であることにより、剛直性が増し、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、光配向性(液晶配向能)が向上すると推定される。
光配向性の点からは、前記n及びmは小さい方が好ましく、nは1~6が好ましく、1~4がより好ましく、mは1~3が好ましく、1~2がより好ましい。
光配向性の点からは、光配向性構成単位が、光配向性基と、共重合体の主鎖の間に、アルキレン鎖を有しない構造であることがより好ましく、L11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、又は、これらとアリーレン基との組み合わせであることがより好ましい。
【0101】
共重合体が有する光配向性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体の合成には、上記光配向性構成単位を誘導する、光配向性基を有する単量体を用いることができる。光配向性基を有する単量体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
共重合体における光配向性構成単位の含有割合としては、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、10モル%~90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%~80モル%の範囲内である。光配向性構成単位の含有割合が少ないと、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。一方で、光配向性構成単位の含有割合が多いと、相対的に熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
【0103】
(2)熱架橋性構成単位
本開示における熱架橋性構成単位は、加熱により架橋剤と結合する部位である。
熱架橋性構成単位は、熱架橋性基を有する構成単位であればよい。熱架橋性基としては、例えば30℃から250℃での加熱により架橋する基であればよく、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基が好ましく、第1級ヒドロキシ基がより好ましい。なお、第1級ヒドロキシ基とは、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であるヒドロキシ基をいう。
また、熱架橋性基としては、同じ架橋基同士で架橋可能な自己架橋基であってもよい。自己架橋基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基等が挙げられる。
熱架橋性構成単位が自己架橋基を有する場合、熱架橋性構成単位が架橋剤を兼ねることができ、光配向性能及び耐溶剤性が向上しやすい点から好ましい。熱架橋性構成単位が自己架橋基を有する場合、分子内の熱架橋性構成単位と反応しやすいことが考えられる。
熱架橋性構成単位としては、中でも、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びメルカプト基からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが、光配向性能及び耐溶剤性の点から好ましい。
熱架橋性構成単位としては、中でも、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びメルカプト基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を有する構成単位と、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、及びブロックイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の自己架橋基を有する構成単位とを含有することが、光配向性能及び耐溶剤性をより向上しやすい点から好ましい。
なお、自己架橋基のアルコキシメチル基は、アルコキシ基の炭素数が1~6であるものが好ましく、具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、各種プロポキシメチル基、各種ブトキシメチル基、各種ペントキシメチル基等が挙げられる。アルコキシメチル基としては、中でも、アルコキシ基の炭素数が1~4であるものがより好ましく、炭素数が1~2であるものが更に好ましく、メトキシメチル基、エトキシメチル基が、架橋性が良好になる点から好ましい。
【0104】
熱架橋性構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。
熱架橋性構成単位としては、熱架橋性基がカルボキシ基の場合、アクリル酸、又はメタクリル酸由来の構成単位であってもよく、熱架橋性基がヒドロキシ基の場合、ビニルアルコール由来の構成単位であってもよい。
【0105】
熱架橋性構成単位としては、下記式(2)で表される構成単位を例示することができる。
【0106】
【化18】
(上記式(2)中、Z
2は下記式(2-1)~(2-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であり、Yは熱架橋性基を表す。)
【0107】
【化19】
(上記式(2-1)~(2-6)中、R
51は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
52は水素原子またはメチル基を表し、R
53は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
54は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
12は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
12が、単結合の場合、R
50はスチレン骨格に直接結合される。)
【0108】
なお、Z2が式(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種の場合、-L12-Yはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよいが、-L12-Yがパラ位に結合していることが、熱架橋の反応性が優れる点から好ましい。
【0109】
熱架橋性構成単位を構成する単量体単位としては、中でも、原料調達の容易さの点から、式(2-1)及び(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。更に、式(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種であると、共重合体がより非液晶性となりやすく、前記側鎖型液晶ポリマー(A)と相分離しやすくなり、側鎖型液晶ポリマー(A)の垂直配向性が向上する点から、より好ましい。
【0110】
上記式(2)中、Yの熱架橋性基としては、前記と同様であって良く、自己架橋性基であってもよい。
上記式(2)中、Yの熱架橋性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基、およびメチル基に置換されるアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基であってよく、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基であってよい。自己架橋基であるヒドロキシメチル基及びアルコキシメチル基は、メチル基(R50におけるメチレン基)に、ヒドロキシ基やアルコキシ基が置換することにより、ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基となるものであってよい。
Yの熱架橋性基には、中でも、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基を含むことが好ましく、第1級ヒドロキシ基を含むことがより好ましい。
【0111】
上記式(2)中、L12は単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表す。なお、L12が単結合の場合、熱架橋性基Yは単量体単位Z2に直接結合される。
R50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であるが、-(CH2)j-または-(C2H4O)k-C2H4-である(jは1~11、kは1~4)ことが好ましく、jは2~11、kは1~4であることが好ましく、jは4~11、kは2~4であることが好ましい。jおよびkが小さすぎると、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と架橋剤との反応性が低下するおそれがある。一方、jおよびkが大きすぎると、熱架橋性構成単位において連結基の鎖長が長くなるため、末端の熱架橋性基が表面に出にくく、熱架橋性基に架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と架橋剤との反応性が低下するおそれがある。
【0112】
共重合体が有する熱架橋性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体の合成には、上記熱架橋性構成単位を誘導する熱架橋性基を有する単量体を用いることができる。熱架橋性基を有する単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
熱架橋性基を有する単量体としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アクリル酸エステル化合物およびメタクリル酸エステル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、テトラプロピレングリコールモノアクリレート等のヒドロキシ基とアクリル基またはメタクリル基とを有するモノマーが挙げられる。
スチレン化合物としては、例えば、4-ビニル安息香酸とジオールとのエステル化物、4-ビニル安息香酸とジエチレングリコールとのエステル化物、ヒドロキシスチレンとジオールとのエーテル化物、ヒドロキシスチレンとジエチレングリコールとのエーテル化物等のヒドロキシ基とスチレン基とを有するモノマーが挙げられる。
その他にも、熱架橋性構成単位を形成するモノマーとしては、具体的には例えば、特許5626493号公報 段落0075~0079に記載されているモノマーを用いることができる。また、前記例示のヒドロキシ基が、カルボキシ基やグリシジル基に置換されたモノマーであってもよい。
【0114】
熱架橋性基を有する単量体のうち、自己架橋基を有する単量体としては、例えば、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドおよびN-ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物;3-トリメトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレート等のトリアルコキシシリル基を有するモノマー;2-(0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ)エチルメタクリレート、2-(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノエチルメタクリレート等のブロックイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。
【0115】
共重合体における熱架橋性構成単位の含有割合としては、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、5モル%~90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%~80モル%の範囲内である。熱架橋性構成単位の含有割合が少ないと、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。また、熱架橋性構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。
【0116】
(3)他の構成単位
本開示において、共重合体は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の他に、光配向性基および熱架橋性基のいずれも有しない構成単位を有していてもよい。共重合体に他の構成単位が含まれることにより、例えば溶剤溶解性、耐熱性、反応性等を高めることができる。
【0117】
光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、アクリルアミド、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン、ビニル等が挙げられる。中でも、上記熱架橋性構成単位と同様に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
【0118】
このような光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位を形成するモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
具体的には例えば、国際公開第2010/150748号の段落0036~0040に記載されているモノマーのうち、前記光配向性基および熱架橋性基のいずれも有しないモノマーを用いることができる。
【0119】
また、その他の構成単位として、例えば、フッ素化アルキル基を有するモノマー由来の構成単位を含んでもよい。この場合には、共重合体が塗膜表面に局在化しやすくなり、光配向性基を塗膜表面に配向させやすい。共重合体を塗膜表面に局在化しやすくする点から、フッ素化アルキル基を有するモノマーのフッ素化アルキル基は、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が2~8のフッ素化アルキル基であってよい。
【0120】
共重合体における光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0121】
共重合体における上記光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位の含有割合としては、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、0モル%~50モル%の範囲内であることが好ましく、0モル%~30モル%の範囲内であることがより好ましい。上記構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になり、また十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
【0122】
(4)前記共重合体とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物
前記共重合体とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物において、光配向性基としては、前述の共重合体において説明した光配向性基と同様であって良い。また、熱架橋性基としては、前述の共重合体において説明した熱架橋性基と同様であって良い。
前記共重合体とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、非重合体の低分子化合物が挙げられる。前記共重合体とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、中でも、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと、シンナモイル基、カルコン基、アゾベンゼン基、及びスチルベン基の少なくとも1つとを有する化合物であることが好ましく、更に、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと、シンナモイル基とを有する化合物であることがより好ましい。ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を含有させると、表面の液晶配向能が阻害されることなく、積層する液晶層との密着性がより優れる配向層兼位相差層が得られる点から好ましい。
【0123】
光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、具体的には例えば、国際公開第2013/054784号の段落0064~0074に記載されている光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物を用いることができる。
【0124】
(5)光配向性成分(B)の分子量
光配向性成分(B)が非重合体である場合の分子量は、例えば100~1000程度とすることができ、好ましくは250~700の範囲内である。
光配向性成分(B)が共重合体である場合の質量平均分子量は、特に限定されるものではなく、例えば3,000~200,000程度とすることができ、好ましくは4,000~100,000の範囲内である。質量平均分子量が大きすぎると、溶剤に対する溶解性が低くなったり粘度が高くなったりして取り扱い性が低下し、均一な膜を形成しにくい場合がある。また、質量平均分子量が小さすぎると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性や耐熱性が低下する場合がある。
なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0125】
光配向性成分(B)の合成方法としては、例えば、光配向性基を有する単量体と熱架橋性基を有する単量体とを従来公知の製造方法で共重合する方法が挙げられる。
光配向性成分(B)は、例えば、共重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0126】
上記光配向性成分(B)は1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において、直接積層する液晶性材料に対して配向能を発揮する点から、上記光配向性成分(B)の含有割合は、液晶組成物の固形分100質量部に対して1質量部~50質量部であることが好ましく、5質量部~40質量部であることがより好ましく10質量部~30質量部であることがより更に好ましい。
【0127】
3.エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物(C)
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物(C)を含有する。当該化合物(C)は、熱架橋性基を有することにより、後述する架橋剤(D)と結合することができ、架橋剤(D)に結合し得る前記光配向性成分(B)と架橋構造を形成することが可能である。一方で、当該化合物(C)は、エチレン性二重結合含有基を有することにより、後述する直接積層されたポジティブA型位相差層の重合性液晶性化合物と結合することができることから、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化物である位相差層兼配向層と直接積層されたポジティブA型位相差層との界面の密着性、さらには耐久密着性を向上する。当該化合物(C)は、2つの位相差層の界面の密着助剤としての機能を有する。当該化合物(C)は、SP値が13.0(cal/cm3)1/2以下であることから、表面において均一に分散された状態で、光配向性成分(B)の配列乱れや機能阻害を引き起こしにくいため、優れた密着性と光配向性が両立する。
【0128】
前記化合物(C)において、エチレン性二重結合含有基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
前記化合物(C)において、熱架橋性基としては、前記光配向性成分(B)において説明した熱架橋性基と同様であってよく、中でも、反応性の点から、カルボキシ基またはヒドロキシ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
【0129】
本開示で用いられる前記化合物(C)は、SP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物を選択して用いる。
ここで、本明細書において、SP値とは、以下のFedorsの式(A)で表される値を示すものとする。
SP値(δ)=(EV/v)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2 ・・・式(A)
EV:蒸発エネルギー
v:モル体積
Δei:各原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:各原子又は原子団のモル体積
【0130】
上記の式(A)の計算に使用する各原子又は原子団の蒸発エネルギー、モル体積は「R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14,147(1974)」に拠る。但し、当該文献に記載のない原子団に対しては、当該文献に記載されている最小の構成単位から計算する。例えば、「-NHCONH-」の構造は、「NH」+「CO」+「NH」で計算する。
また、本発明においては、異なるm(mが2以上の整数)種類のモノマーを共重合させて得た重合体を用いる場合、SP値は、下記式により計算する。
SP値(δ)=X1δ1+・・・+Xmδm
X1、・・・、Xmはそれぞれ使用するモノマーのモル%であり、且つ、X1+・・・Xm=100モル%である。
δ1、・・・、δmは、それぞれのモノマーのSP値であり、上記式(A)で求めた値である。
【0131】
前記化合物(C)のSP値は、13.0(cal/cm3)1/2以下であれば、下限値は限定されないが、9.0(cal/cm3)1/2以上であってよく、10.0(cal/cm3)1/2以上であってよい。
【0132】
重合性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、中でも、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと、エチレン性不飽和二重結合基とを有する化合物であることが好ましく、更に、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物であってよい。ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を含有させると、表面の液晶配向能が阻害されることなく、積層する液晶層との密着性がより優れる配向層兼位相差層が得られる点から好ましい。
また、ヒドロキシ基と、エチレン性不飽和二重結合基2つ以上とを有する化合物であるヒドロキシ基含有多官能アクリレートも、塗膜の硬度や耐久性を向上する点や層間密着性を向上する点から、好適に用いられる。
上記のような化合物であって、且つ、SP値が13.0(cal/cm3)1/2以下である化合物を選択して用いると、中でも耐久密着性が向上し、特に湿熱条件下での耐久密着性が向上する。
【0133】
重合性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、具体的には例えば、国際公開第2014/073658号の段落0106~0112に記載されている重合性基と熱架橋性基とを有する化合物や、特開2017-068019号の段落0087~0100に記載されている芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物や、国際公開第2013/054784号の段落0125に記載されているヒドロキシ基含有多官能アクリレートの中から、SP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物を選択して用いることができる。
【0134】
前記化合物(C)の分子量または質量平均分子量としては、50以上であってよく、さらに80以上であってよく、よりさらに120以上であってよく、2000以下であってよく、さらに1800以下であってよく、よりさらに1500以下であってよい。化合物(C)が重合体である場合の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0135】
前記化合物(C)の好ましい部分構造としては、例えば、エチレン性二重結合含有基の中で反応性が高く、それにより密着性が向上しやすい点から(メタ)アクリロイル基が挙げられ、溶剤溶解性が向上する点からエチレンオキシ基(-O-CH2-CH2-)等が挙げられる。また、反応性が向上して密着性、耐久密着性が向上する点から、1分子内にエチレン二重結合含有基もしくは熱架橋性基を2つ以上含有することが好ましく、1分子内にエチレン二重結合含有基および熱架橋性基をいずれも2つ以上含有することがより好ましい。
【0136】
前記化合物(C)は、塗工性の点から有機溶剤への溶解性が高いことが好ましい。具体的には、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンプロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、及び2-プロパノールからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤に10質量%以上、さらに50質量%以上溶解する化合物(C)であることが好ましい。
【0137】
本開示の効果を向上する点から、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマー(A)における液晶モノマーのSP値と、前記化合物(C)のSP値との差は小さい方が好ましく、当該SP値の差の絶対値は、3.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。当該SP値の差の絶対値が小さいと、側鎖型液晶ポリマー(A)と前記化合物(C)との相溶性が向上し、化合物(C)が塗膜全体に均一に分散されやすくなり密着性が向上する効果や、化合物(C)の添加により側鎖型液晶ポリマー(A)の配向が阻害されにくく、垂直配向性がより低下しにくいメリットがある。
【0138】
前記化合物(C)の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0139】
【0140】
エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物(C)は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
2種以上を組み合わせて使用する場合の化合物(C)のSP値は、2種以上を組み合わせて使用する化合物の各々のSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下であることが好ましい。
【0141】
本開示において、密着性、及び耐久密着性を向上する点から、前記化合物(C)の含有量は、上記側鎖型液晶ポリマー(A)と光配向性成分(B)の合計100質量部に対して0.5質量部~100質量部であることが好ましく、1質量部~60質量部であることがより好ましく、2質量部~50質量部であることがより更に好ましい。
前記化合物(C)の含有量を前記範囲にすると、直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れ、直接積層される層との密着性及び耐久密着性に優れる配向層兼位相差層を形成しやすい。
【0142】
4.架橋剤(D)
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前記熱架橋性基と結合する架橋剤(D)を含有する。架橋剤は、少なくとも前記光配向性成分(B)及び前記化合物(C)の前記熱架橋性基と結合することにより、界面の密着性、密着耐久性、耐熱性および耐溶剤性を高めることができる。また、当該架橋剤は、任意に含まれていてもよい、熱架橋性基を側鎖に含む側鎖型液晶ポリマー(A)や、熱架橋性基を有する化合物とも結合して、硬化膜の耐久性を向上したり、それぞれの機能向上に寄与する。
【0143】
架橋剤としては、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する化合物を選択して用いる。
このような架橋剤としては、例えばエポキシ化合物、メチロール化合物、イソシアナート化合物等が挙げられる。中でも、メチロール化合物が好ましい。
また、架橋剤は、アミノ基の水素原子がメチロール基またはアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物およびベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。
さらに、架橋剤としては、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物またはメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
具体的には例えば、国際公開第2010/150748号の段落0047~0050に記載されている架橋剤を用いることができる。
【0144】
また、分子内にベンゼン環を複数個含む架橋剤も利用することができる。分子内にベンゼン環を複数個含む架橋剤としては、例えばヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、分子量が1200以下のフェノール誘導体や、少なくとも2個の遊離N-アルコキシメチル基を有するメラミン-ホルムアルデヒド誘導体やアルコキシメチルグリコールウリル誘導体が挙げられる。ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有しないフェノール化合物とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。
【0145】
これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本開示において、硬化膜の耐久性を向上する点から、上記架橋剤の含有量は、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、0.5質量部~25質量部であることがより好ましく、1質量部~20質量部であることがより更に好ましい。
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における架橋剤の含有割合は、上記側鎖型液晶ポリマー(A)と光配向性成分(B)の合計100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~25質量部であることがより好ましく、3質量部~25質量部であることがより更に好ましい。
架橋剤の含有量が前記範囲にあると、界面の密着性、密着耐久性、耐熱性および耐溶剤性を高めやすい。
【0146】
5.酸または酸発生剤
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、酸または酸発生剤を含有してもよい。酸または酸発生剤により、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の熱硬化反応を促進させることができる。
【0147】
酸または酸発生剤としては、スルホン酸基含有化合物、塩酸またはその塩、および塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度50℃から250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0054に記載されているものを用いることができる。
【0148】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における酸または酸発生剤の含有量は、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して0.01質量部~20質量部であることが好ましく、0.05質量部~10質量部であることがより好ましく、0.05質量部~5質量部であることがより更に好ましい。
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における酸または酸発生剤の含有割合は、上記側鎖型液晶ポリマー(A)と光配向性成分(B)の合計100質量部に対して0.05質量部~20質量部であることが好ましく、0.1質量部~15質量部であることがより好ましく、0.1質量部~10質量部であることがより更に好ましい。酸または酸発生剤の含有量を上記範囲内とすることで、十分な熱硬化性および溶剤耐性を付与することができ、さらに光照射に対する高い感度をも付与することができる。一方、含有量が多すぎると、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0149】
6.溶剤
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、塗工性の点から、必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物に含まれる各成分を溶解乃至分散し得る従来公知の溶剤の中から適宜選択すればよい。具体的には、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。本実施形態において溶剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて混合溶剤として用いることができる。
【0150】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、溶剤の含有量は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り特に限定されるものではなく、溶剤を含む組成物中に、50質量%~99質量%であることが好ましく、60質量%~95質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることがより更に好ましい。
溶剤の含有量が多すぎて固形分の割合が少なすぎると、位相差性、液晶配向能や熱硬化性を付与することが困難になる場合がある。また、溶剤の含有量が少なすぎて固形分の割合が多すぎると、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の粘度が高くなり、均一な膜を形成しにくくなる。
なお、固形分とは、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
【0151】
7.その他の成分
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、その効果を損なわない範囲で更に他の成分を含有してもよい。具体的には、その他の成分として、例えば、前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物、塗膜の硬度や耐久性を向上させるための1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物、光重合開始剤、前記光配向性成分(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物、増感剤、レベリング剤、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定化剤等を含有してもよい。これらは従来公知の材料を適宜選択して用いればよい。
【0152】
(1)前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、位相差を調整し、耐久性を向上する点から、必要に応じて前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物を更に含んでいてもよい。
本開示の実施形態において、前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物は、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。当該重合性液晶化合物としては、所謂、低分子の重合性液晶モノマーが挙げられる。本実施形態においては、前記側鎖型液晶ポリマー(A)との組み合わせにおいて垂直配向しやすいことから、棒状メソゲンの少なくとも一方の末端に重合性基を有する重合性液晶化合物であることが好ましく、棒状メソゲンの両末端に重合性基を有する重合性液晶化合物であることがより好ましい。
重合性液晶化合物が有するメソゲン乃至棒状メソゲンは、前記側鎖型液晶ポリマーにおける液晶性構成単位が有するメソゲン乃至棒状メソゲンと同様のものとすることができる。
【0153】
重合性液晶化合物が有する重合性基としては、例えば、オキシラン環、オキセタン環等の環状エーテル含有基、エチレン性二重結合含有基等が挙げられるが、中でも光硬化性を示し、取り扱い性に優れる点から、エチレン性二重結合含有基であることが好ましい。エチレン性二重結合含有基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0154】
本実施形態において、重合性液晶化合物は、液晶配向性を発揮し、耐熱性に優れるという点から、中でも、下記一般式(III)で表される化合物、及び下記一般式(IV)で表される化合物より選択される1種以上の化合物が好ましい。
【0155】
【化21】
(一般式(III)中、R
61は、水素原子又はメチル基を、R
62は、-(CH
2)
p-、又は-(C
2H
4O)
p’-で表される基を表す。L
3は、直接結合、又は、-O-、-O-C(=O)-、若しくは-C(=O)-O-で表される連結基を、Ar
3は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
3及びAr
3はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
63は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHC(=O)-R
64、-C(=O)-OR
64、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
64
2、-R
65、又は-OR
65を、R
64は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
65は、炭素数1~6のアルキル基を表す。bは2~4の整数、p及びp’はそれぞれ独立に2~10の整数である。
【0156】
【化22】
(一般式(IV)中、R
71及びR
72は各々独立に、水素原子又はメチル基を、R
73は、-(CH
2)
q-、又は-(C
2H
4O)
q’-で表される基を、R
74は、-(CH
2)
r-、又は-(OC
2H
4)
r’-で表される基を表す。L
4は、直接結合、又は、-O-、-O-C(=O)-、若しくは-C(=O)-O-で表される連結基を、Ar
4は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
4及びAr
4はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。cは2~4の整数、q、q’、r及びr’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
【0157】
L3及びL4は前記一般式(I)におけるL2と同様のものとすることができる。
また、Ar3及びAr4は前記一般式(I)におけるAr1と同様のものとすることができる。
前記一般式(III)で表される化合物、及び一般式(IV)で表される化合物は、具体的には例えば、国際公開第2018/003498号の段落0057~0064に記載されている重合性液晶化合物を用いることができる。
【0158】
本実施形態において前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物を用いる場合、その含有量は、位相差や耐久性の向上が適宜調整されればよく特に限定されないが、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して1質量部~90質量部であることが好ましく、5質量部~50質量部であることがより好ましく、10質量部~30質量部であることがより更に好ましい。
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物を用いる場合、その含有量は、上記側鎖型液晶ポリマー(A)100質量部に対して5質量部~100質量部であることが好ましく、10質量部~60質量部であることがより好ましく、20質量部~40質量部であることがより更に好ましい。
【0159】
(2)1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、塗膜の硬度や耐久性を向上する点から、必要に応じて1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物を更に含んでいてもよい。1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物としては前述のような重合性液晶化合物の他、液晶性を有しない重合性化合物を用いることができる。
1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物としては、所謂多官能モノマーを用いることもでき、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、これらをPO、EO等で変性したものが挙げられる。架橋反応が進行し、塗膜の耐久性が向上するため、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)等の1分子中に重合性基を3つ以上有する重合性化合物が好ましい。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において液晶性を有しない1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物を用いる場合、その含有量は、塗膜の硬度や耐久性の向上が適宜調整されればよく特に限定されないが、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して1質量部~40質量部であることが好ましく、5質量部~35質量部であることがより好ましく、10質量部~30質量部であることがより更に好ましい。
【0160】
(3)光重合開始剤
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、エチレン性二重結合含有基等の重合性基を有する化合物を含有する場合に、光重合開始剤を更に含有することが、積層する液晶層との密着性がより優れる配向層兼位相差層を得ることができる点から好ましい。
光重合開始剤としては、光照射によりラジカル種を発生するラジカル系光重合開始剤が好適に用いられる。光重合開始剤は、従来公知の物の中から適宜選択して用いることができる。このような光重合開始剤の具体例としては、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α-アミノアルキルフェノン類、α-ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、オキシムエステル類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が好適に挙げられる。本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物に、前記酸または酸発生剤を含有させる場合には、光開始剤としては、例えばアミノアルキルフェノン系光開始剤のように塩基性を有する光開始剤ではないことが好ましく、塩基性基を有しない光開始剤であることが好ましい。中でも、塗膜の内部まで硬化し耐久性が向上するため、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系重合開始剤、及びオキシムエステル系重合開始剤よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
光重合開始剤は、具体的には例えば、国際公開第2018/003498号の段落0067~0070に記載されている光重合開始剤を用いることができる。
【0161】
本実施形態において光重合開始剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において光重合開始剤を用いる場合、その含有量は、前記重合性基を有する化合物の硬化を促進させればよく特に限定されないが、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して0.1質量部~10質量部であることが好ましく、0.5質量部~9質量部であることがより好ましく、1質量部~8質量部であることがより更に好ましい。
【0162】
(4)増感剤
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、増感剤を含有してもよい。増感剤により、光二量化反応や光異性化反応等の光反応を促進させることができる。
増感剤としては、具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0057に記載されているものを用いることができる。
中でも、ベンゾフェノン誘導体およびニトロフェニル化合物が好ましい。増感剤は単独でまたは2種以上の化合物を組み合わせて併用することができる。
【0163】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、増感剤を用いる場合、その含有量は、塗膜の耐久性や光配向性を向上すればよく特に限定されないが、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して0.1質量部~20質量部であることが好ましく、0.2質量部~10質量部であることがより好ましく、0.5質量部~10質量部であることがより更に好ましい。
【0164】
8.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の調製方法は特に限定されるものではないが、保存安定性が長くなることから、側鎖型液晶ポリマー(A)、光配向性成分(B)、エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0以下の化合物(C)、架橋剤(D)、およびその他の成分を混合し、後から酸または酸発生剤を添加する方法が好ましい。なお、酸または酸発生剤をはじめから添加する場合には、酸または酸発生剤として、塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物を用いることが好ましい。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる側鎖型液晶ポリマー(A)の溶液や、光配向性成分(B)の溶液をそのまま使用することができる。この場合、側鎖型液晶ポリマー(A)の溶液や、光配向性成分(B)の溶液に、上述のように前記化合物(C)、前記架橋剤(D)、およびその他の成分等を入れて均一な溶液とし、後から酸または酸発生剤を添加する。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を加えてもよい。このとき、共重合体の生成過程で用いられる溶剤と、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく異なってもよい。
また、調製された光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタ等を用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0165】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の用途としては、前記側鎖型液晶ポリマー(A)が垂直配向しやすく、且つ光配向性成分(B)がその上に直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れ、且つ、エチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0以下の化合物(C)が光配向性成分(B)の光配向性を阻害し難く、直接積層される層との密着性及び耐久密着性を向上するため、1層で配向層と位相差層の両方の機能を発揮する配向層兼位相差層、乃至、配向膜兼位相差フィルムの製造に適している。
【0166】
B.配向膜兼位相差フィルム
本開示の配向膜兼位相差フィルムは、配向層兼位相差層を有する配向膜兼位相差フィルムであって、前記配向層兼位相差層が、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることを特徴とするものである。
以下、本開示の配向膜兼位相差フィルムにおける各構成について説明する。
【0167】
配向膜兼位相差フィルムの層構成について図を参照して説明する。
図1~
図3は、各々本開示の配向膜兼位相差フィルムの1実施形態を示す。
図1の例に示される配向膜兼位相差フィルム10の1実施形態は、配向層兼位相差層1のみからなる配向膜兼位相差フィルムである。
図2の例に示される配向膜兼位相差フィルム10の1実施形態は、基材2’上に直接、配向層兼位相差層1が形成されている。
図2の例に示される配向膜兼位相差フィルムには基材2’の配向層兼位相差層1側表面に配向規制力を発現する手段が付されていてもよい。また
図3の例に示される配向膜兼位相差フィルム10の1実施形態は、基材2上に配向膜3と配向層兼位相差層1がこの順に積層されている位相差フィルムである。
なお、前記側鎖型液晶ポリマー(A)を含有する配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前述のように、前記側鎖型液晶ポリマーが垂直配向しやすく、それに伴い、任意で含まれていてもよい前記重合性液晶化合物も垂直配向しやすいため、配向膜3を用いなくても、垂直配向性を示し得るものである。
【0168】
1.配向層兼位相差層
本開示の配向層兼位相差層1は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であり、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物から形成されるものである。本開示の配向層兼位相差層は、前記側鎖型液晶ポリマー(A)が有する液晶性部分が垂直配向し且つ、配向層兼位相差層の表面に存在する光配向性基が光二量化構造または光異性化構造となっている状態で、硬化している膜である。
本開示の配向層兼位相差層は、1層に、垂直配向された前記側鎖型液晶ポリマーと、光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する光配向性成分と、熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造とエチレン性二重結合含有基を有する化合物とを含有する。前記側鎖型液晶ポリマーが、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有する場合には、前記配向層兼位相差層は、更に、前記側鎖型液晶ポリマーの熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を含有してもよい。
【0169】
ここで、架橋構造とは、三次元的な網目構造をいう。架橋構造には、前記共重合体の熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造と、必要に応じてその他の成分が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造とが含まれる。架橋構造には、光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造、ならびに、エチレン性不飽和二重結合基同士が重合した構造は含まれない。但し、本開示の配向層兼位相差層には、さらにエチレン性不飽和二重結合基同士が重合した構造が含まれていてもよい。
【0170】
本開示の配向膜兼位相差フィルムにおける配向層兼位相差層は、垂直配向して位相差を発現する前記側鎖型液晶ポリマーと、前記光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する光配向性成分とが、互いの性能を阻害し難く、さらに熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造とエチレン性二重結合含有基を有する化合物も光配向性成分の光配向性を阻害し難いため、1層で、優れた垂直配向性と、優れた光配向性(直接積層された液晶性材料を配向させる能力)の両方を示すと推定される。
また、本開示の配向膜兼位相差フィルムにおける配向層兼位相差層は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることから、その架橋構造によって膜の耐熱性、耐溶剤性が良好となり、耐久性が高い。
さらに、本開示の配向膜兼位相差フィルムにおける配向層兼位相差層は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることから、熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造とエチレン性二重結合含有基を有する化合物を含有するため、直接積層される重合性液晶化合物とエチレン性二重結合含有基同士が反応可能であり、直接積層される層との密着性及び耐久密着性に優れるものである。
【0171】
垂直配向して位相差を発現する前記側鎖型液晶ポリマーは、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載した前記側鎖型液晶ポリマーと同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
本開示の配向層兼位相差層には、光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する光配向性成分が含まれ、当該光配向性成分は、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体であってもよい。
本開示の配向層兼位相差層に含まれる前記光配向性成分は、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載した光配向性基および熱架橋性基を有する光配向性成分を熱硬化し、光配向させることにより形成することができる。本開示においては架橋剤が用いられ、光配向性成分と前記化合物(C)に含まれる熱架橋性基は架橋剤と結合する。したがって、架橋構造は、熱架橋性基と架橋剤とが加熱により架橋した構造となる。なお、前記側鎖型液晶ポリマーの非液晶性且つ熱架橋性構成単位が熱架橋基を有する場合には、当該架橋構造として、前記側鎖型液晶ポリマーの熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を含んでいても良い。
なお、架橋剤は、前記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載した架橋剤を用いることができ、架橋構造中には、架橋剤が反応した後の架橋剤の残基が含まれる。
【0172】
例えば、架橋剤がヘキサメトキシメチルメラミンの場合、架橋構造は例えば下記に示すような構造になる。なお、下記式中、各符号は上記式(1)と同様である。下記共重合体は例示であり、単量体単位や熱架橋性基の残基等は下記に限定されるものではない。
【0173】
【0174】
なお、共重合体の各構成単位については、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
配向層が上記共重合体を含有することは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC-MS、XPS、TOF-SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
【0175】
共重合体における光二量化構造は、上記式(1)で表される光配向性構成単位の光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造であり、シクロブタン骨格を有する構造である。
光二量化反応は、下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシクロブタン骨格を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa~XdおよびXa’~Xd’は異なる。
【0176】
【0177】
光二量化構造は、シンナモイル基の光二量化構造であることが好ましい。具体的には、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載したシンナモイル基同士が光二量化反応により架橋した構造が好ましい。中でも、配向層は、下記式(x-4)、(x-5)で表されるような光二量化構造を有することが好ましい。なお、下記式中、各符号は上記式(x-1)、(x-2)、及び(x-3)と同様である。
【0178】
【0179】
配向層が、上記式(x-4)、(x-5)で表されるような光二量化構造を有する場合、芳香環が多く配置され、π電子を多く含むようになる。そのため、配向層上に形成される液晶層と親和性が高くなり、液晶配向能が向上し、液晶層との密着性がさらに高くなると考えられる。
【0180】
また、共重合体における光異性化構造は、光配向性構成単位が有する光配向性基が光異性化反応により異性化した構造である。例えばシストランス異性化反応の場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。
例えば、光配向性基がシンナモイル基の場合、光異性化反応は下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシス体またはトランス体を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa~Xdは異なる。
【0181】
【0182】
光異性化構造は、シンナモイル基の光異性化構造であることが好ましい。具体的には、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載したシンナモイル基が光異性化反応により異性化した構造が好ましい。この場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。中でも、配向層は、下記式(x-6)及び(x-7)で示されるような、上記式(x-1)及び(x-2)で表されるシンナモイル基の光異性化構造を有することが好ましい。
【0183】
【0184】
なお、配向層が上記光二量化構造または光異性化構造を有することは、NMRまたはIRにより分析可能である。
【0185】
配向層兼位相差層には、更に、前記光配向性を有する熱硬化性液晶組成物に更に含まれていてもよいその他の成分が含まれていてもよい。
配向層兼位相差層は、例えば、前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物、1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物、及び重合性基と熱架橋性基とを有する化合物の少なくとも1種の、エチレン性不飽和二重結合基同士が重合した構造等が含まれていてもよい。
配向層兼位相差層は、更に、酸または酸発生剤、光重合開始剤、増感剤、その他の添加剤、及びそれらの分解物を含有してもよい。なお、これらの添加剤については、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載したものと同様である。
【0186】
なお、配向層兼位相差層が上述の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物から形成されたものであることは、配向層兼位相差層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC-MS、XPS、TOF-SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
【0187】
また、配向層兼位相差層において、側鎖型液晶ポリマーの液晶性部分等、含まれる液晶性成分が垂直配向していることは、自動複屈折測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、商品名:KOBRA-WR)により位相差を測定することにより確認することができる。
【0188】
位相差は、自動複屈折測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、商品名:KOBRA-WR)により測定することができる。測定光を位相差層表面に対して垂直あるいは斜めから入射して、その光学位相差と測定光の入射角度のチャートから位相差層の位相差を増加させる異方性を確認することができる。
【0189】
配向層兼位相差層の厚みは、用途に応じて適宜設定すればよい。中でも、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~3μmであることがより好ましい。
【0190】
2.基材
本開示の配向膜兼位相差フィルムにおいて基材は、ガラス基材、金属箔、樹脂基材等が挙げられる。中でも、基材は透明性を有することが好ましく、従来公知の透明基材の中から適宜選択することができる。透明基材としては、ガラス基材の他、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を用いて形成された透明樹脂基材が挙げられる。
【0191】
上記透明基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361-1(プラスチック-透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0192】
また、ロールトゥロール方式で位相差層を形成する場合には、透明基材は、ロール状に巻き取ることができる可撓性を有するフレキシブル材であることが好ましい。
このようなフレキシブル材としては、セルロース誘導体、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類などを例示することができる。なかでも本実施形態においてはセルロース誘導体やポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。セルロース誘導体は特に光学的等方性に優れるため、光学的特性に優れたものとすることができるからである。また、ポリエチレンテレフタレートは、透明性が高く、機械的特性に優れる点から好ましい。
【0193】
本実施形態に用いられる基材の厚みは、配向膜兼位相差フィルムの用途等に応じて、必要な自己支持性を付与できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、10μm~200μm程度の範囲内である。
中でも、基材の厚みは、25μm~125μmの範囲内が好ましく、中でも30μm~100μmの範囲内が好ましい。厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、長尺状の位相差フィルムを形成した後、裁断加工し、枚葉の配向膜兼位相差フィルムとする際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
【0194】
本実施形態に用いられる基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
例えば、本実施形態に用いられる後述の配向膜が紫外性硬化性樹脂を含有するものである場合、透明基材と当該紫外線硬化性樹脂の接着性を向上させるためのプライマー層を基材上に形成してもよい。このプライマー層は、基材および紫外線硬化性樹脂との双方に接着性を有し、可視光学的に透明であり、紫外線を通過させるものであればよく、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系、ウレタン系のもの等を適宜選択して使用することができる。
【0195】
また、後述の垂直配向膜が設けられない場合、基材上にアンカーコート層を積層しても良い。当該アンカーコート層によって基材の強度を向上させることができ良好な垂直配向性を確保できる。アンカーコート材料としては、金属アルコキシド、特に金属シリコンアルコキシドゾルを用いることができる。金属アルコキシドは、通常アルコール系の溶液として用いられる。アンカーコート層は、均一で、かつ柔軟性のある膜が必要なため、アンカーコート層の厚みは0.04μm~2μm程度が好ましく、0.05μm~0.2μm程度がより好ましい。
前記基材がアンカーコート層を有する場合には、基材とアンカーコート層の間に更にバインダー層を積層したり、アンカーコート層に基材との密着性を強化する材料を含有させることにより、基材とアンカーコート層の密着性を向上させてもよい。前記バインダー層の形成に用いるバインダー材料は、基材とアンカーコート層との密着性を向上できるものを特に制限なく使用することができる。バインダー材料としては、たとえば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等を例示できる。
【0196】
3.配向膜
本開示の配向膜兼位相差フィルムの実施形態に用いられる配向膜3としては、前記配向層兼位相差層1の液晶組成物が垂直配向しやすいことから、垂直配向膜を用いることが好ましい。
垂直配向膜は、塗膜として設けることで、側鎖型液晶ポリマーの液晶性部分等、配向層兼位相差層1に含まれる液晶性成分のメソゲンの長軸を垂直配向させる機能を有する配向膜である。
【0197】
垂直配向膜は、垂直方向の配向規制力を備えた配向膜であり、Cプレートの作製に供する各種垂直配向膜、VA液晶表示装置等に適用される各種の垂直配向膜を適用することができ、例えばポリイミド配向膜、LB膜による配向膜等を適用することができる。具体的に、配向膜の構成材料としては、例えば、レシチン、シラン系界面活性剤、チタネート系界面活性剤、ピリジニウム塩系高分子界面活性剤、n-オクタデシルトリエトキシシラン等のシランカップリング系垂直配向膜用組成物、長鎖アルキル基や脂環式構造を側鎖に有する可溶性ポリイミドや長鎖アルキル基や脂環式構造を側鎖に有するポリアミック酸等のポリイミド系垂直配向膜用組成物を適用することができる。
なお、垂直配向膜用組成物として、ジェイエスアール(株)製のポリイミド系垂直配向膜用組成物「JALS-2021」や「JALS-204」、日産化学工業(株)製の「RN-1517」、「SE-1211」、「EXPOA-018」等の市販品を適用することができる。また、特開2015-191143に記載の垂直配向膜であっても良い。
【0198】
配向膜3の形成方法は特に限定されないが、例えば、前記基材2上に、前記配向膜用組成物を塗布し、配向規制力を付与することにより配向膜とすることができる。配向膜に配向規制力を付与する手段は、従来公知のものとすることができる。
【0199】
配向膜3の厚さは、配向層兼位相差層1における液晶性成分を一定方向に配列できればよく、適宜設定すればよい。配向膜の厚さは、通常、1nm~10μmの範囲内であり、60nm~5μmの範囲内が好ましい。
【0200】
4.用途
本開示の配向膜兼位相差フィルムは、直接積層された液晶性材料を配向させる配向膜としても機能するポジティブC型の位相差層を有する位相差フィルムとして好適に用いられる。
ここで、ポジティブCの特性とは、層面に沿ったX軸方向の屈折率をNx、層面に沿った方向でX軸に直交するY軸方向の屈折率をNy、層厚方向の屈折率をNzとしたとき、Nz>Nx≒Nyの関係であるとともに、光軸がNz方向となる特徴を有するものである。
本開示の配向膜兼位相差フィルムは、例え外光反射防止フィルムの一部や、偏光板補償フィルムの一部として好適に用いられ、各種表示装置用の位相差板、光学部材に好適に用いられる。
【0201】
C.配向膜兼位相差フィルムの製造方法
本開示の配向膜兼位相差フィルムの製造方法は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差層機能を有する硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより、更に配向層機能を有する硬化膜を形成する工程とを有する。
【0202】
(1)光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の成膜工程
支持体上に、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を均一に塗布して成膜を形成する。
ここでの支持体上としては、前記基材上であっても良いし、前記配向膜を備えた基材の配向膜上であってもよい。
【0203】
塗布方法は、所望の厚みで精度良く成膜できる方法であればよく、適宜選択すればよい。例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などが挙げられる。
【0204】
(2)位相差層機能を有する硬化膜を形成する工程
次いで、前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差層機能を有する硬化膜を形成する。
当該工程においては、前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記側鎖型液晶ポリマー(A)の液晶性部分を少なくとも配向させる工程が含まれる。
具体的には、成膜された液晶組成物中の側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性構成単位の液晶性部分が垂直配向可能な温度に調整し、加熱する。任意で更に重合性液晶化合物を含む場合には、加熱温度を重合性液晶化合物も垂直配向可能な温度に調整する。当該加熱処理により、側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性構成単位の液晶性部分を少なくとも垂直配向させて乾燥することができ、前記配向状態を維持した状態で固定化することができる。
垂直配向可能な温度は、液晶組成物中の各物質に応じて異なるため、適宜調整する必要がある。例えば、40℃~200℃の範囲内で行うことが好ましく、更に40℃~100℃の範囲内で行うことが好ましい。前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前記側鎖型液晶ポリマーを含有するため、垂直配向可能な温度範囲が広く、温度管理が容易である。
加熱手段としては、例えばホットプレートやオーブン等、公知の加熱、乾燥手段を適宜選択して用いることができる。
また、加熱時間は、適宜選択されれば良いが、例えば、10秒以上2時間以内、好ましくは20秒以上30分以内の範囲内で選択される。
【0205】
また、当該工程においては、前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、前記液晶性部分を配向させた状態で、成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記光配向性成分(B)及び前記化合物(C)の熱架橋性基と架橋剤(D)とを反応させて硬化させる工程が含まれる。
成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記側鎖型液晶ポリマー(A)の液晶性部分を少なくとも配向させるための加熱によって、成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記光配向性成分(B)及び前記化合物(C)の熱架橋性基が架橋剤(D)と反応して硬化する場合には、加熱は1段階の加熱であってよい。
あるいは、成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記側鎖型液晶ポリマー(A)の液晶性部分を少なくとも配向させるための加熱後に、更に加熱温度を変更して加熱することにより、前記液晶性部分を配向させた状態で、成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記光配向性成分(B)及び前記化合物(C)の熱架橋性基と架橋剤(D)とを反応させて硬化させてもよい。
熱硬化させる加熱温度は、例えば40℃~250℃程度で設定することができる。加熱時間は、例えば20秒以上60分以内程度で設定することができる。
【0206】
光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を熱硬化させて得られる硬化膜の膜厚は、用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば0.1μm~5μm程度、好ましくは0.5μm~3μm程度とすることができる。なお、硬化膜の膜厚が薄すぎると、十分な位相差機能と、液晶配向能が得られない場合がある。
【0207】
(3)配向機能を有する硬化膜を形成する工程
次いで、前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより、更に配向層機能を有する硬化膜を形成する。
得られた硬化膜には、偏光紫外線を照射することにより、光配向性成分(B)の光配向性基が光反応を生じさせて異方性を発現させることができる。偏光紫外線の波長は通常150nm~450nmの範囲内である。また、偏光紫外線の照射方向は、基板面に対して垂直または斜め方向とすることができる。
このようにして、配向層機能を有する硬化膜を形成することができる。
以上のようにして、前記硬化膜は、位相差層機能と、配向層機能とを有するようになり、配向層兼位相差層として機能する硬化膜が得られる。
【0208】
(4)その他の工程
本開示の配向膜兼位相差フィルムの製造方法においては、更に別の工程を有していてもよい。
例えば、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物に、重合性液晶化合物など、重合性基を有する化合物を含有する場合には、更に、液晶性成分の配向状態を維持した状態で固定化された塗膜に、例えば光照射することにより、重合性基を有する化合物を重合してもよい。
光照射としては、紫外線照射が好適に用いられる。紫外線照射は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線を使用することができる。エネルギー線源の照射量は、適宜選択されれば良く、紫外線波長365nmでの積算露光量として、例えば10mJ/cm2~10000mJ/cm2の範囲内であることが好ましい。
また、配向層兼位相差層として機能する硬化膜が得られた後に、支持体を剥離することにより、配向層兼位相差層1のみからなる配向膜兼位相差フィルムを得ることもできる。
【0209】
D.位相差板
本開示の位相差板は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、第一の位相差層と、
前記第一の位相差層に隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有する第二の位相差層と、を有することを特徴とするものである。
【0210】
本開示の位相差板は、第一の位相差層が前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることから、第一の位相差層と、前記第一の位相差層に隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有する第二の位相差層との界面に、前記化合物(C)の反応物、すなわち、第一の位相差層中の架橋剤と架橋反応した熱架橋性基の残基と、第二の位相差層の重合性液晶化合物の重合性基と反応した残基とを含む、化合物(C)の残基が含まれることを特徴とする。このような化合物(C)の残基は、積層体断面のAFM-IR(nano-IR)や、エネルギー分散型X線分光法(EDX)等により分析することができる。
【0211】
図4は本開示の位相差板の一例を示す概略断面図である。
図4に例示する位相差板20においては、基材13上に配向層兼位相差層である第一の位相差層11が形成され、当該第一の位相差層11上に、第二の位相差層12が形成されている。
【0212】
本開示の位相差板は、第一の位相差層が、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることから、垂直配向性に優れ、且つ、直接積層された液晶性材料を配向させることができる。そのため、本開示の位相差板20は、当該第一の位相差層11上に、別途配向膜を備えることなく、直接液晶性材料を積層して第二の位相差層が形成されたものであり、前記第一の位相差層11に隣接して位置する、第二の位相差層12を有するものである。
本開示の位相差板は、第一の位相差層が、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることから、前述のように耐溶剤性に優れているため、第二の位相差層の積層時にも第一の位相差層の位相差の劣化が抑制され、光学特性の良好な位相差板を得ることができる。
さらに、本開示の位相差板は、第一の位相差層が、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることから、特定のSP値を有する化合物(C)が選択されて用いられていることから直接積層された液晶性材料を配向させる能力を悪化させることなく、直接積層される層との密着性及び耐久密着性を向上されたものであり、直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れ、直接積層される層との密着性及び耐久密着性に優れる。
【0213】
なお、基材については、上記「B.配向膜兼位相差フィルム」に記載したものと同様であって良いので、ここでの説明は省略する。
【0214】
1.第一の位相差層
第一の位相差層が、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であるので、第一の位相差層は、前述のように、配向層兼位相差層として機能する。
第一の位相差層は、上記「B.配向膜兼位相差フィルム」に記載した配向層兼位相差層と同様であって良いので、ここでの説明は省略する。
本開示においては、第一の位相差層は、第一の位相差層の第二の位相差層の界面側に、前記化合物(C)の反応物、すなわち、第一の位相差層中の架橋剤と架橋反応した熱架橋性基の残基と、第二の位相差層の重合性液晶化合物の重合性基と反応した残基とを含む、化合物(C)の残基が含まれる。
第一の位相差層に、前記化合物(C)以外の第二の位相差層に含まれる重合性基や熱架橋性基を有する化合物と反応する化合物を含む場合には、第一の位相差層の第二の位相差層の界面側に、互いの層に含まれる化合物同士の反応生成物が含まれていてもよい。例えば、第一の位相差層と第二の位相差層との界面に、前記第一の位相差層に含まれる重合性基を有する化合物の重合性基と、第二の位相差層に含まれる重合性液晶化合物の重合性基とが重合した構造が含まれていてもよい。第一の位相差層の第二の位相差層の界面側に、このような反応生成物を含む場合には、第一の位相差層と第二の位相差層の密着性や耐久密着性が向上する点から好ましい。
【0215】
第一の位相差層は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であり、含まれる側鎖型液晶ポリマーが垂直配向しやすい点から、ポジティブC型の位相差層として、好適に用いられる。
【0216】
2.第二の位相差層
本開示の位相差板における第二の位相差層は、上記第一の位相差層に隣接して位置し、重合性液晶組成物の硬化物を含有するものである。
重合性液晶組成物としては、重合性基を有する重合性液晶化合物を含有するものを用いることができ、位相差層に一般的に用いられるものを使用することができる。
重合性液晶化合物が有する重合性基としては、例えばアクリロイル基、メタアクリロイル基等が挙げられる。
【0217】
重合性液晶組成物には、例えば水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向性を有するものがあり、所望の位相差等に応じて適宜選択される。
【0218】
第二の位相差層における重合性液晶組成物は、第一の位相差層の液晶配向能の点から、水平配向性を有する重合性液晶組成物であることが好ましい。
【0219】
第二の位相差層における重合性液晶組成物は、液晶性を示し、分子内に重合性基を有する重合性液晶化合物(棒状化合物)を含有することが好ましい。当該重合性液晶化合物としては、水平配向性を有する従来公知の重合性液晶化合物を、適宜選択して用いることができる。
重合性液晶組成物は、1つの液晶化合物からなるものであっても2種以上の液晶化合物の混合物であってもよい。
【0220】
第二の位相差層における重合性液晶組成物は、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」において、前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物として説明したものと同様の重合性液晶化合物を好適に用いることができる。
第二の位相差層における重合性液晶組成物において、重合性液晶化合物は、液晶配向性を発揮し、耐熱性に優れるという点から、中でも、前記一般式(III)で表される化合物、及び前記一般式(IV)で表される化合物より選択される1種以上の化合物が好ましい。前記一般式(III)で表される化合物、及び前記一般式(IV)で表される化合物は、具体的には例えば、国際公開第2018/003498号の段落0057~0064に記載されている重合性液晶化合物を用いることができる。
第二の位相差層における重合性液晶組成物において、重合性液晶化合物としては、その他にも、具体的には例えば、特許第6473537号、特許第5463666号、特許第4186981号、特許第5962760号、及び特許第5826759号、特許第6568103号、特許第6427340号、特開2016-166344や、Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas(1996),115(6),321-328に記載されている重合性液晶化合物を用いることができる。
【0221】
第二の位相差層における重合性液晶組成物は、液晶化合物の他に、更に光重合開始剤や溶剤を含んでいてもよく、「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」で説明したようなその他の成分を更に含んでいてもよい。
【0222】
第二の位相差層は、配向層としても機能する前記第一の位相差層上に重合性液晶組成物を塗布し、重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱して第一の位相差層の液晶配向能によって液晶性成分を配向させる工程と、
前記液晶性成分が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射することにより位相差層を形成する工程とを有することにより形成することができる。
【0223】
液晶性成分を配向させる工程において重合性液晶組成物の塗膜を形成する方法、相転移温度まで加熱する方法については、従来公知の方法を用いればよく、特に限定されない。塗布方法、加熱方法については、上記配向層兼位相差層の製造方法における塗布方法、加熱方法と同様の方法を用いることができる。
【0224】
前記液晶性成分が配向した重合性液晶組成物の塗膜には、光照射することにより、重合反応を生じさせて、第二の位相差層に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基同士、更に、前記第一の位相差層が重合性基を含む化合物を含有する場合には、第一の位相差層における重合性基を含む化合物の重合性基と第二の位相差層に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基とを重合する。光照射方法は従来公知の方法を用いればよく、前記「C.配向膜兼位相差フィルム」で説明した方法と同様であって良い。
【0225】
本開示の位相差板は、第一の位相差層が配向層兼位相差フィルムとして機能するため、薄型化を図れるものである。本開示の位相差板は、基材を除いた第一の位相差板と第二の位相差板の積層体の厚みを、0.2μm~10μmとすることができ、1μm~6μmとすることがより好ましい。
【0226】
本開示の位相差板においては、前記第一の位相差層がポジティブC型位相差層であり、前記第二の位相差層がポジティブA型位相差層であることが好ましい。ここで、ポジティブAの特性とは、層面に沿ったX軸方向の屈折率をNx、層面に沿った方向でX軸に直交するY軸方向の屈折率をNy、層厚方向の屈折率をNzとしたとき、Nx>Ny≒Nzの関係であるとともに、光軸がNx方向となる特徴を有するものである。
ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層が積層された位相差板は、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置での、λ/4位相差板と直線偏光板とを組み合わせた形態で円偏光板として使用され、外光反射防止フィルムとして使用される点から好ましく、また、液晶表示装置における偏光板補償フィルムの一部として使用される点から好ましい。
【0227】
4.用途
本開示の位相差板は、第一の位相差層に直接第二の位相差層を積層可能で、第二の位相差層用の基材や配向膜や接着剤層等が含まれず、薄型化することができる。
本開示の位相差板は、薄型化を目指している各種画像表示装置の光学部材として好適に用いることができる。
【0228】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0229】
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
(合成例1:液晶モノマーI-1の合成)
国際公開第2018/003498号の段落0121~0124を参照して、下記化学式(I-1)で表される液晶モノマーI-1を得た。
液晶モノマーI-1は、凝集エネルギーが42810、モル分子容が295.2、ΣEcoh/ΣVが145.020、δ(SP値)が12.04である。
【0230】
(合成例2:液晶モノマーI-2の合成)
国際公開第2020/158428号の段落00072~0075を参照して、下記化学式(I-2)で表される液晶モノマーI-2を得た。
液晶モノマーI-2は、凝集エネルギーが48955、モル分子容が448.2、ΣEcoh/ΣVが109.226、δ(SP値)が10.45である。
【0231】
非液晶モノマーII-1としてアクリル酸ステアリル(下記化学式(II-1)、東京化成社製)、及び、熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-2tcとしてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(下記化学式(II-2tc)、共栄社化学社製)を用いた。
【0232】
(合成例3:光配向性モノマーIII-1の合成)
特許第5626492号の合成例3の光配向性モノマー3と同様にして、下記化学式(III-1)で表される光配向性モノマーIII-1を合成した。
【0233】
また、熱架橋性モノマーIV-1としてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(下記化学式(IV-1)、共栄社化学社製)、熱架橋性モノマーIV-2としてアクリル酸4-ヒドロキシブチル(下記化学式(IV-2)、東京化成工業製)を用いた。
また、第三成分モノマーとして、自己架橋基を有する熱架橋性モノマーIV-3としてN-(メトキシメチル)メタクリルアミド(下記化学式(IV-3)、東京化成工業製)を用いた。
【0234】
(製造例A1~A3:側鎖型液晶ポリマーA1~A3の製造)
前記液晶モノマーI-1とI-2、及び、非液晶モノマーII-1とII-2tcを表1に従って組み合わせ、側鎖型液晶ポリマーを合成した。
側鎖型液晶ポリマーA2の合成例を具体的に説明する。
非液晶モノマーII-1と非液晶モノマーII-2tcとをモル比で50:50として組み合わせ、これら非液晶モノマーの合計と、液晶モノマー1とをモル比で40:60となるように組み合わせて混合し、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を加え、40℃で撹拌し溶解させた。溶解後24℃まで冷却し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え同温にて溶解させた。80℃に加温したDMAcに上記反応溶液を30分かけて滴下し、滴下終了後、80℃で6時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却した後、メタノールを撹拌している別の容器に滴下し20分撹拌した。上澄み液を除去後、スラリーをろ過し、得られた粗体を再びメタノール中で20分撹拌、上澄み液の除去、ろ過をした。得られた結晶を乾燥させることにより側鎖型液晶ポリマーA2を収率76.5%で得た。
得られた側鎖型液晶ポリマーについて、質量平均分子量を測定し、構造解析を行った。また、Py-GC-MS、乃至、MALDI-TOFMSにより、用いた1種、又は2種の非液晶モノマー由来の構成単位を含むことを確認した。
【0235】
なお、質量平均分子量の測定方法は以下のとおりである。
側鎖型液晶ポリマーをN-メチルピロリドンに溶解し、濃度が0.5質量%になるようにN-メチルピロリドン溶液とした。下記条件で測定し、ポリスチレン標準液を用いてポリスチレン換算により質量平均分子量を算出した。
GPC:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
カラム:TSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー(株)製)
溶出溶剤:0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドン
流速:0.5ml/min
温度:40℃
検出:RI(示唆屈折検出器)
標準ポリスチレン:Mw706000、427000、190000、96400、37900、17400、5970、2630、1010、5900(以上、東ソー(株)製 TSKGEL標準ポリスチレン)
【0236】
(製造例A4:側鎖型液晶ポリマーA4の製造)
製造例A2において、液晶モノマーと非液晶モノマーの代わりに、液晶モノマーと非液晶モノマーの合計モル数の前記液晶モノマーI-2を用いた以外は製造例A2と同様にして側鎖型液晶ポリマーA4を製造した。
【0237】
【0238】
(製造例B1~B3:共重合体B1~B3の製造)
前記光配向性モノマーIII-1、熱架橋性モノマーIV-1~2、及び、第三成分モノマーを表2に従って組み合わせ、光配向性成分(B)を合成した。
光配向性共重合体B1の合成例を具体的に説明する。
光配向性モノマーIII-1を3.08g、熱架橋性モノマーIV-1(アクリル酸4-ヒドロキシブチル)を1.44g、重合触媒としてα,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)50mgをジオキサン25mlに溶解し、90℃にて6時間反応させた。反応終了後、再沈殿法により精製することで、共重合体B1を得た。得られた共重合体B1の質量平均分子量は18000であった。
【0239】
【0240】
下記表3及び表4に示すように、熱架橋性重合性化合物として、本発明に用いられるエチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有するSP値が13.0(cal/cm3)1/2以下の化合物に相当する、化合物C1~C14を準備した。また、下記表4に示すように、SP値が13.0(cal/cm3)1/2を超えるエチレン性二重結合含有基と熱架橋性基とを有する化合物である、C’1~C’5も準備した。
【0241】
【0242】
【0243】
上記化合物の入手先は以下の通りである。
C1(商品名HQMA、大阪有機工業(株)製)、
C2(o+p+m+n+q+r≒6、商品名アロニックスM926、東亜合成(株)製)
C4(商品名ブレンマーPE-200、日油(株)製)
C5(商品名アロニックスM920、東亜合成(株)製)
C7(商品名M600A、共栄社化学(株)製)
C8(商品名HOP-A(N)、共栄社化学(株)製)
C9(商品名ブレンマーAE-90U、日油(株)製)
C10(商品名アクリル酸4-ヒドロキシブチル、東京化成社製)
C11(商品名MT-3548、東亜合成(株)製)
C12(グリセロールジメタクリラート、東京化成社製)
C13(商品名ブレンマーPE-90、日油(株)製)
C14(商品名ブレンマーPE-350、日油(株)製)
C’2(商品名ブレンマーGLM、日油(株)製)
C’3(グリセリン1,3-ジグリセロラートジアクリラート、シグマアルドリッチ社製)
【0244】
(化合物C3の合成)
国際公開第2013/047523号の段落0108を参照して、化合物C3を得た。
(化合物C6の合成)
国際公開第2022/186442号の段落39を参照して、化合物C6を得た。
(化合物C’1の合成)
国際公開第2014/065327号の段落0064~0066を参照して、化合物C’1を得た。
(化合物C’4の合成)
特開2001-198213号の段落0044を参照して、化合物C’4を得た。
(化合物C’5の合成)
国際公開第2014/065327号の段落0044を参照して、化合物C’5を得た。
【0245】
[実施例1~24、及び比較例1~8]
(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の調製)
表5に示す側鎖型液晶ポリマー(A)と光配向性成分(B)とを、表5に示す質量比で混合して組成物1~6を得た。
下記表6に示す組成の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物1~24及び比較組成物1~8を調製した。
・表5に示す側鎖型液晶ポリマーと光配向性共重合体の組成物1~6のいずれか:100質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):5質量部
・表3または表4に示す熱架橋性重合性化合物:表6に示す質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.5質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):170質量部
・シクロヘキサノン:400質量部
【0246】
【0247】
(配向膜兼位相差フィルムの形成)
PET基板(東洋紡(株)製、E5100、厚さ38μm)の片面上に、表6に示す光配向性を有する熱硬化性液晶組成物(ポジティブC型位相差層用組成物)1~24または比較組成物C1~C8のいずれかを、硬化後の膜厚が0.6μmとなるようにバーコートにより塗布し、90℃のオーブンで1分間、続いて120℃のオーブンで1分間加熱して乾燥、液晶性成分の配向、及び熱硬化を行い、位相差を有する硬化膜を形成した。その後、この硬化膜表面にHg-Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に100mJ/cm2照射することで、前記硬化膜に配向層としての機能を更に付与したポジティブC型位相差層(配向層兼位相差層)を基材上に形成した。
【0248】
(位相差板の製造)
特許第6473537号の式(1-1)で表される化合物1と同様にして調製した下記化学式(LC-1)の重合性液晶化合物100質量部、光重合開始剤(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン:BASF社製、イルガキュア907)4質量部をシクロペンタノン900質量部に溶解させ、ポジティブA型位相差層用組成物1を調製した。
【0249】
【0250】
上記で得られたポジティブC型位相差層(配向層兼位相差層)上に、前記のように調製されたポジティブA型位相差層用組成物1を、硬化後の膜厚が1μmになるようにバーコートにより塗布し、140℃で120秒間乾燥させた後に、Fusion社製のHバルブを用いて紫外線(UV)を照射量400mJ/cm2で照射して、ポジティブA型位相差層を形成し、位相差板を製造した。
【0251】
[評価]
得られた各配向膜兼位相差フィルムおよび各位相差板について以下の評価を行った。
【0252】
(1)密着性
上記で得られた位相差板のポジティブA型位相差層側にコロナ処理(コロナ表面改質評価装置TEC-4AX(春日電機(株)製、出力:100W、搬送速度:3m/min)を施し、位相差板の基板を剥離して、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とを粘着付きガラスに、ポジティブC型位相差層/ポジティブA型位相差層/粘着付きガラスの順になるように転写して測定用サンプルを作製した。測定用サンプルに対して、JIS K5400-8.5(JIS D0202)に準拠した方法で付着性-碁盤目試験を実施した。カッターナイフを使用して、ポジティブC型位相差層側からポジティブA型位相差層まで達する切込みを11本入れた後、90°向きを変えて11本切込みを入れた。カットした塗膜面にセロテープ(登録商標)(24mm×35m CT405AP-24、ニチバン製)を貼り付け、消しゴムでこすって塗膜に前記テープを付着させ、1~2分後に前記テープの端を持って塗膜面に直角に保ち、瞬間的にひきはがした。セロテープ(登録商標)の貼り付けとひきはがしの作業を繰り返し、合計5度行った。剥離した後の、残存したポジティブC型位相差層のカット部数の比をもとめ、下記の基準にて評価した。
(評価基準)
AA:100/100
A:90/100~99/100
B:50/100~89/100
C:0/100~49/100
【0253】
(2)耐久密着性
位相差板を温度60℃、湿度90%のオーブンに48時間保管した後、上記密着性と同じ評価方法にて耐久密着性を評価した。
(評価基準)
AA:100/100
A:90/100~99/100
B:50/100~89/100
C:0/100~49/100
【0254】
(3)光配向性(直接積層した液晶性成分を配向させる能力)
位相差板のPET基板を剥離して、配向層兼位相差層(ポジティブC型位相差層)と第二の位相差層(ポジティブA型位相差層)とを粘着付きガラスに転写したサンプルに対して、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WR)により、波長550nmにおける面内位相差Reを測定した。
(光配向性の評価基準)
A:Re≧135nm
B:100nm≦Re<135nm
C:Re<100nm
【0255】