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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144893
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】トイレットロール
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
A47K10/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057062
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】清水 遥絵
【テーマコード(参考)】
2D135
【Fターム(参考)】
2D135AA04
2D135AA20
2D135AB02
2D135AB13
2D135CA03
2D135DA06
2D135DA11
2D135DA13
2D135DA15
2D135DA16
(57)【要約】
【課題】本発明は、トイレットロールの外周面を構成するトイレットペーパー表面の風合い(滑らかさ)が良好なトイレットペーパーを巻回してなるトイレットロールであって、ロールの引き出し性に優れたトイレットロールを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、1プライのトイレットペーパーを巻回してなるトイレットロールであって、トイレットロールの巻密度が0.80~1.60m/cmであり、測定方法(A)で測定されたトイレットペーパーの表面のTS750が12.0~25.0dBVrmsであり、測定方法(B)で測定されたトイレットペーパー裏面のTS750がトイレットペーパー表面のTS750よりも大きく、裏面のTS750/表面のTS750の値が2.2~4.0である、トイレットロールに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1プライのトイレットペーパーを巻回してなるトイレットロールであって、
前記トイレットロールの巻密度が0.80~1.60m/cmであり、
下記測定方法(A)で測定されたトイレットペーパーの表面のTS750が12.0~25.0dBVrmsであり、
下記測定方法(B)で測定されたトイレットペーパー裏面のTS750が前記トイレットペーパー表面のTS750よりも大きく、
前記トイレットペーパー裏面のTS750と前記トイレットペーパー表面のTS750との比(トイレットペーパー裏面のTS750/トイレットペーパー表面のTS750)が2.2~4.0である、トイレットロール。
測定方法(A):ティシューソフトネス測定装置TSAの試料台に、トイレットロールのロール外周面を構成するトイレットペーパー表面と反対のトイレットペーパー裏面を上に向けて設置したトイレットペーパーの試料に対し、ブレード付ロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0毎秒で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したときに取得される、低周波数側からみたスぺクトルの最初の極大ピークの強度(TS750値)をトイレットペーパー表面のTS750とする;
測定方法(B):ティシューソフトネス測定装置TSAの試料台に、トイレットロールのロール外周面を構成するトイレットペーパー表面を上に向けて設置したトイレットペーパーの試料に対し、ブレード付ロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0毎秒で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したときに取得される、低周波数側からみたスぺクトルの最初の極大ピークの強度(TS750値)をトイレットペーパー裏面のTS750とする。
【請求項2】
前記トイレットペーパー裏面のTS750が100dBVrms以下である、請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項3】
前記トイレットペーパーの巻長が75~155mである、請求項1又は2に記載のトイレットロール。
【請求項4】
前記トイレットペーパーが実質的に全面に亘ってエンボスを有し、当該エンボス凹部が前記トイレットペーパー表面に形成されており、当該エンボスの高さが75~135μmであり、当該エンボス密度が10~50個/cmである、請求項1又は2に記載のトイレットロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1プライのトイレットペーパーを巻回してなるトイレットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーがロール状に巻き取られたトイレットロールでは、1ロール当りの巻長を長くすることによる、ロールの持ち運びや保管時の省スペース化が行われている。このとき、一般的なトイレットロールホルダーによって回転自在に支持され得るようにロールの巻径を所定の寸法内に収めようとすると、紙厚を低減させる必要が生じて、トイレットペーパーの風合いや使用感が損なわれることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、1枚の衛生薄葉紙をロール状に巻き取った衛生薄葉紙ロールであって、衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5~21.5g/m、かつ紙厚が0.6~1.1mm/10枚であり、当該衛生薄葉紙ロールの巻長が145~185m、巻直径が100~132mmである衛生薄葉紙ロールが開示されている。ここでは、衛生薄葉紙のロール外側の表面のTS750を12~30dBVrmsとし、当該衛生薄葉紙のロール外側の表面のTS750の値を1とした時、衛生薄葉紙のロール内側の裏面のTS750の値を1.06~2.30とすることで衛生薄葉紙の坪量を下げずに衛生薄葉紙の風合いや使用感を高めることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-164541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような衛生薄葉紙ロールの一種である、1プライのトイレットペーパーを巻回してなるトイレットロールにおいては、特許文献1に開示されているように、単に、トイレットペーパーのロール外側の表面、すなわちロール外周面を構成するトイレットペーパー表面のTS750を所定範囲とするとともに、当該トイレットペーパー表面のTS750の値を1とした時、トイレットペーパーのロール内側の裏面、すなわちトイレットペーパー表面と反対のトイレットペーパー裏面のTS750の値を1.06~2.30としただけでは、ロール外周面を構成するトイレットペーパー表面の風合い(滑らかさ)が劣る場合があった。また、トイレットロールをトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパーの滑らかさの表裏差が小さいことに起因して、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じ、この滑りにより、トイレットロールが巻き締められ、これによりトイレットロールの径が減少してトイレットロールの回転トルクが増大するため、トイレットロールを回転させつつトイレットペーパーを引き出す力が増大し、トイレットペーパーを円滑に引き出せない場合があり、改善が求められていた。
【0006】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、ロール外周面を構成する表面の風合い(滑らかさ)が良好なトイレットペーパーを巻回してなるトイレットロールであって、トイレットペーパーの引き出し性に優れたトイレットロールを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の具体的な態様の例を以下に示す。
【0008】
[1] 1プライのトイレットペーパーを巻回してなるトイレットロールであって、
トイレットロールの巻密度が0.80~1.60m/cmであり、
下記測定方法(A)で測定されたトイレットペーパーの表面のTS750が12.0~25.0dBVrmsであり、
下記測定方法(B)で測定されたトイレットペーパーの裏面のTS750がトイレットペーパー表面のTS750よりも大きく、
トイレットペーパーの裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比(トイレットペーパー裏面のTS750/トイレットペーパー表面のTS750)が2.2~4.0である、トイレットロール。
測定方法(A):ティシューソフトネス測定装置TSAの試料台に、トイレットロールのロール外周面を構成するトイレットペーパー表面と反対のトイレットペーパー裏面を上に向けて設置したトイレットペーパーの試料に対し、ブレード付ロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0毎秒で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したときに取得される、低周波数側からみたスぺクトルの最初の極大ピークの強度(TS750値)をトイレットペーパー表面のTS750とする;
測定方法(B):ティシューソフトネス測定装置TSAの試料台に、トイレットロールのロール外周面を構成するトイレットペーパー表面を上に向けて設置したトイレットペーパーの試料に対し、ブレード付ロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0毎秒で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したときに取得される、低周波数側からみたスぺクトルの最初の極大ピークの強度(TS750値)をトイレットペーパー裏面のTS750とする。
[2] トイレットペーパー裏面のTS750が100dBVrms以下である、[1]に記載のトイレットロール。
[3] トイレットペーパーの巻長が75~155mである、[1]又は[2]に記載のトイレットロール。
[4] トイレットペーパーが実質的に全面に亘ってエンボスを有し、当該エンボス凹部がトイレットペーパー表面に形成されており、当該エンボスの高さが75~135μmであり、エンボス密度が10~50個/cmである、[1]~[3]のいずれかに記載のトイレットロール。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロール外周面を構成する表面の風合い(滑らかさ)が良好なトイレットペーパーを巻回してなるトイレットロールであって、トイレットペーパーの引き出し性に優れたトイレットロールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態のトイレットロールの構成を説明する概略図である。
図2図2は、ティシューソフトネス測定装置TSAの概略断面図である。
図3図3は、測定装置TSAによって測定される試料の例の概略断面図である。
図4図4は、測定装置TSAの測定原理を説明する図である。
図5図5は、測定装置TSAの測定原理を説明する図である。
図6図6は、測定装置TSAによる測定結果の例を示す図である。
図7図7は、エンボス高さの測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
(トイレットロール)
本実施形態は、1プライのトイレットペーパーを巻回してなるトイレットロールであって、トイレットロールの巻密度が0.80~1.60m/cmであり、下記測定方法(A)で測定されたトイレットペーパーの表面のTS750が12.0~25.0dBVrmsであり、下記測定方法(B)で測定されたトイレットペーパーの裏面のTS750がトイレットペーパー表面のTS750よりも大きく、トイレットペーパーの裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比(トイレットペーパー裏面のTS750/トイレットペーパー表面のTS750)が2.2~4.0である、トイレットロールに関する。
測定方法(A):ティシューソフトネス測定装置TSAの試料台に、トイレットロールのロール外周面を構成するトイレットペーパー表面と反対のトイレットペーパー裏面を上に向けて設置したトイレットペーパーの試料に対し、ブレード付ロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0毎秒で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したときに取得される、低周波数側からみたスぺクトルの最初の極大ピークの強度(TS750値)をトイレットペーパー表面のTS750とする;
測定方法(B):ティシューソフトネス測定装置TSAの試料台に、トイレットロールのロール外周面を構成するトイレットペーパー表面を上に向けて設置したトイレットペーパーの試料に対し、ブレード付ロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0毎秒で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したときに取得される、低周波数側からみたスぺクトルの最初の極大ピークの強度(TS750値)をトイレットペーパー裏面のTS750とする。
【0013】
図1に示されるように、トイレットロール10は、1枚(1プライ)のトイレットペーパー13が円筒状の巻芯である紙管14に所定長となるようにロール状に巻回されてなる。
【0014】
本実施形態は上記構成を有するため、トイレットロール10のロール外周面を構成する表面の風合い(滑らかさ)が良好なトイレットペーパーを得ることができる。そして、このようなトイレットペーパー13を巻回してなるトイレットロール10は、トイレットペーパー13を円滑に引き出すことができ、トイレットペーパー13の引き出し性に優れている。
【0015】
従来、1枚の衛生薄葉紙をロール状に巻き取った衛生薄葉紙ロールでは、衛生薄葉紙のロール内側の裏面のTS750と衛生薄葉紙のロール外側の表面のTS750との比(衛生薄葉紙裏面のTS750/衛生薄葉紙表面のTS750)を規定し、衛生薄葉紙の表面が滑らかであり、しかも滑らかさの表裏差も小さい風合いに優れた衛生薄葉紙ロールを提供することが提案されていた。しかし、このような衛生薄葉紙ロールの一種である、1プライのトイレットペーパーを巻回してなるトイレットロールにおいては、トイレットペーパーの滑らかさの表裏差が小さいことに起因して、トイレットロールホルダーに装着された状態にてトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間での滑りにより、トイレットロールが著しく巻き締められ、これによってトイレットロールの径が著しく減少してトイレットロールの回転トルクが著しく増大するため、トイレットロールを回転させつつトイレットペーパーを引き出す引き出し力が著しく増大し、トイレットペーパーを円滑に引き出せなくなり、ひいてはトイレットペーパーがミシン目等で不用意に破断する原因となるという問題があった。また、従来の所謂長巻のトイレットロールにおいては、トイレットペーパーの巻長を長くするために、巻密度が高くなる傾向にあり、ロールの柔らかさ(ふんわり感)に優れたトイレットロールが得られにくかった。本実施形態においては、敢えて、ロール外周面を構成するトイレットペーパー表面と反対のトイレットペーパー裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比(トイレットペーパー裏面のTS750/トイレットペーパー表面のTS750)を大きくすることで、トイレットペーパー13を引き出す際(トイレットロール10をトイレットホルダーに装着した状態でトイレットペーパー13を引き出す際)にトイレットロール10が著しく巻き締められることを抑制することに成功した。これにより、トイレットペーパー13をトイレットロール10から引き出す際のトイレットペーパー13の引き出し性を格段に高めることができる。また、本実施形態においては、トイレットペーパー表面のTS750の値を所定範囲内とすることにより、ロール外周面を構成するトイレットペーパー表面の風合い(滑らかさ)に優れたトイレットペーパー13を得ることができる。さらに、本実施形態においては、トイレットロール10の巻密度を所定範囲内とすることにより、ロールの柔らかさ(ふんわり感)に優れたトイレットロール10を得ることができる。
【0016】
トイレットロール10の巻密度は、0.80m/cm以上であることが好ましく、0.85m/cm以上であることがより好ましく、0.90m/cm以上であることがさらに好ましい。また、トイレットロール10の巻密度は、1.60m/cm以下であることが好ましい。トイレットロール10の巻密度を上記下限値以上とすることにより、トイレットペーパー13の巻長が十分に長いトイレットロール10が得られやすくなり、トイレットロール10の持ち運びや保管時の省スペース化が可能となる。また、トイレットロール10の巻密度を上記上限値以下とすることにより、トイレットロール10を把持した際の柔らかさ(ふんわり感)を高めることができる。
【0017】
本明細書において、トイレットロール10の巻密度は、以下の式により算出される値である。
巻密度(m/cm)=トイレットペーパー13の巻長(m)/トイレットロール10の断面積(cm
トイレットロール10の断面積(cm)=(トイレットロール10の巻直径(cm)/2)×円周率3.14)-(紙管14の外径(cm)/2)×円周率3.14
【0018】
トイレットロール10の巻密度は、トイレットペーパー13の紙厚を適宜調整することによって所定範囲にコントロールすることができる他、トイレットロール10の製造過程における巻き固さを適宜調整することによっても所定範囲にコントロールすることができる。すなわち、トイレットロール10の製造過程において、トイレットペーパー用幅広原紙を原反ロールから繰り出した後、そのトイレットペーパー用幅広原紙を長尺紙管に巻き取って幅広トイレットロールを製造し、当該幅広トイレットロールを所定寸法に切断してトイレットロール10が製造されるが、トイレットペーパー用幅広原紙を長尺紙管に繰り出す繰出速度とトイレットペーパー用幅広原紙を長尺紙管への繰出速度よりも速い速度で巻き取る巻取速度との速度差を制御することにより、トイレットロール10の巻き固さを適宜調整してトイレットロール10の巻密度を所定範囲にコントロールすることができる。例えば、トイレットペーパー用幅広原紙を長尺紙管に繰り出す繰出速度とトイレットペーパー用幅広原紙を長尺紙管に巻き取る巻取速度との速度差を大きくすれば、トイレットロール10の巻き固さが固くなってトイレットロール10の巻密度を大きくすることができ、当該速度差を小さくすれば、トイレットロール10の巻き固さが緩くなってトイレットロール10の巻密度を小さくすることができる。
【0019】
トイレットロール10のロール外周面を構成するトイレットペーパー表面のTS750は、12.0dBVrms以上であり、12.5dBVrms以上であることが好ましく、13.0dBVrms以上であることがより好ましい。また、トイレットペーパー表面のTS750は、25.0dBVrms以下であり、24.5dBVrms以下であることが好ましく、24.0dBVrms以下であることがより好ましい。トイレットペーパー表面のTS750の値を上記上限値以下とすることにより、トイレットロール10のロール外周面を構成するトイレットペーパー表面の風合い(滑らかさ)を効果的に高めることができ、肌触りを良好なものとすることができる。また、トイレットペーパー表面のTS750の値を上記下限値以上とすることにより、トイレットロール10をトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパー13を引き出す際にトイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じ、この滑りによりトイレットロール10が巻き締められることを抑制することができ、これにより、トイレットロール10をトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパー13をトイレットロール10から引き出す際のトイレットペーパー13の引き出し性を高めることができる。
【0020】
トイレットロール10のロール外周面を構成するトイレットペーパー表面と反対側面のトイレットペーパー裏面のTS750は、100dBVrms以下であることが好ましく、98dBVrms以下であることがより好ましく、95dBVrms以下であることがさらに好ましい。また、トイレットペーパー裏面のTS750は、26.4dBVrms以上であることが好ましく、30dBVrms以上であることがより好ましく、35dBVrms以上であることがさらに好ましい。トイレットペーパー裏面のTS750の値を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパー表面のTS750の値を所望の範囲にコントロールしやすくなる。これにより、トイレットロール10のロール外周面を構成するトイレットペーパー表面の風合い(滑らかさ)を効果的に高めることができ、肌触りを良好なものとすることができる。
【0021】
本実施形態のトイレットロール10においては、トイレットペーパー裏面のTS750の値はロール外周面を構成するトイレットペーパー表面のTS750の値よりも大きくなっている。すなわち、トイレットペーパー裏面のTS750の値をPとし、トイレットペーパー表面のTS7の値をQとした場合、P>Qとなっている。これにより、本実施形態のトイレットロール10においては、ロール外周面を構成するトイレットペーパー表面の滑らかさがその反対側のトイレットペーパー裏面と比較して相対的に高められている。
そして、トイレットペーパー裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比、すなわちトイレットペーパー裏面のTS7の値をPとし、トイレットペーパー表面のTS7の値をQとした場合、P/Qの値は、2.2dBVrms以上であり、2.3dBVrms以上であることが好ましく、2.4dBVrms以上であることがより好ましく、2.5dBVrms以上であることがさらに好ましい。また、P/Qの値は、4.0dBVrms以下であり、3.9dBVrms以下であることが好ましく、3.8dBVrms以下であることがより好ましく、3.7dBVrms以下であることがさらに好ましい。
トイレットペーパーの裏面のTS750/表面のTS750の値(P/Q)の値を上記範囲内とすることにより、トイレットロール10をトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパー13を引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じることを抑制してトイレットロール10が巻き締められることを抑制することができ、これにより、トイレットペーパー13の引き出し性を高めることができる。なお、トイレットロール10をトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパー13を引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じ、この滑りにより、トイレットロール10が巻き締められると、トイレットロール10の径が減少し、これに伴い、トイレットロールの回転トルクが増大して、トイレットロールを回転させつつトイレットペーパー13を引き出す力が増大し、トイレットペーパー13を円滑に引き出すことができなくなり、ひいてはミシン目で意図せずに破断するなどの不具合が生じる。特にこのような不具合はトイレットペーパー13の巻長が長いトイレットロール10において顕著となる。本実施形態においては、トイレットペーパー裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比(P/Qの値)を上記範囲内とすることにより、上記のような不具合の発生を抑制している。
【0022】
また、本実施形態のトイレットロール10において、トイレットペーパー裏面のTS750からトイレットペーパー表面のTS750を減じた値、すなわちトイレットペーパー裏面のTS750の値をPとし、トイレットペーパー表面のTS750の値をQとした場合、P-Qの値は、16.0dBVrms以上であることが好ましく、20.0dBVrms以上であることがより好ましく、30.0dBVrms以上であることがさらに好ましく、40.0dBVrms以上であることが特に好ましい。また、P-Qの値は、72.0dBVrms以下であることが好ましく、65.0dBVrms以下であることがより好ましく、60.0dBVrms以下であることがさらに好ましく、55.0dBVrms以下であることが特に好ましい。
P-Qの値を上記範囲内とすることにより、トイレットロール10をトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパー13を引き出す際にトイレットロール10が巻き締められることを抑制することができ、これにより、トイレットペーパー13の引き出し性を高めることができる。
また、トイレットペーパー裏面の風合い(滑らかさ)が著しく低下することを抑制してトイレットペーパー裏面の風合い(滑らかさ)を可及的に良好なものとすることができる。
【0023】
トイレットペーパー13の各面のTS750の値を所定範囲内とし、さらに、トイレットペーパー裏面のTS750の値をトイレットペーパー表面のTS750の値よりも所定値以上に大きくする方法としては、例えば、トイレットペーパー13の抄造条件を適切にコントロールしたり、トイレットペーパー13に形成するエンボス条件を適宜選択することなどが考えられる。例えば、本実施形態においては、トイレットペーパー13に所定のエンボス及び/又は所定のクレープ(皺)を加工することで、トイレットペーパー13の各面のTS750の値を上記範囲にコントロールすることができる。
【0024】
<TS750の測定>
本明細書において、トイレットペーパー13のTS750は、ティシューソフトネス測定装置TSA(以下、単に測定装置TSAとも記す)により取得される値である。以下では、図2図6を参照して、TS750値の取得に用いられる、ティシューソフトネス測定装置TSA、測定原理及び測定手順について説明する。
【0025】
図2は、本実施形態に係るトイレットペーパー13のTS750値の取得に適用可能な、ドイツのエムテック(Emtec Electronic GmbH)社製のティシューソフトネス測定装置TSAの概略断面図である。測定装置TSAは、日本ルフト株式会社(日本における販売代理店)より入手可能である。
【0026】
トイレットペーパー13に触れたときのヒトの感触(手触り感)は、「柔らかさ」、「滑らかさ・粗さ」、及び「剛性」といったトイレットペーパー13の3つの特性によって影響を受ける。測定装置TSAは、これら3つの特性の指標となるパラメータ(それぞれ順に、TS7、TS750、Dと称される)を音響測定及び変形測定によって数値化可能な装置である。また、測定装置TSAは、得られたこれらのパラメータ(生データ)と、トイレットペーパー13の坪量、厚さ、プライ数等を基に、アルゴリズムを用いた解析を行うことで、ハンドフィール(HF)値と称される値を算出することもできる。
【0027】
上述のTS7はトイレットペーパーの柔らかさの指標となるパラメータであり、TS750は滑らかさ・粗さの指標であり、後述するような測定原理によって測定される。
【0028】
図3は、ティシューソフトネス測定装置TSAによる測定の対象となるトイレットペーパー13の試料23の例を示す概略断面図である。トイレットペーパー13にはエンボス加工が施されているため、図3に示されるように試料23は凸凹したテクスチャを有する。そして、試料23の表面には、構成繊維23fに由来する突出部である起毛が見られる。起毛は、繊維の毛羽立ちとも称され、起毛する繊維の根幹部分は、試料23の表面または内部に存在する。
【0029】
図2の(a)に示されるように、ティシューソフトネス測定装置TSA 20において、試料台21の内部には、振動センサ21aがあり、試料台21の上方には、ブレード25aをモーター25bによって回転させるブレード付ロータ25がある。試料23は、測定されるべき面が上に向くように、すなわち、測定面がブレード付ロータ25側となるように、試料台21に対してドラムヘッドのように取り付けられる。
【0030】
第1の測定ステップにおいて、ブレード付ロータ25を垂直移動により下降させて、図2(b)に示されるように、ブレード25aによって、試料23の上を、設定した荷重(例えば、100mNの荷重)で押す。次いで、その一定の垂直位置で、ブレード25aを、設定した速度で回転(例えば、回転数2.0毎秒)させる。これによって引き起こされる、試料23上のブレード25aの水平運動は、異なる種類の振動・雑音を生み出す。生み出された振動・雑音は、振動センサ21aによって検出される。検出された振動等は、PCを使って周波数が分析され、TS750の値が得られる。例えば、Emtec社のソフトウェアであるemtec measurement systemを用いることで、TS750値をソフトウェア上で自動的に取得することができる。
【0031】
図4に示されるように測定の際には、ブレード25aは、図中、位置(1)から(3)までの移動によって例示されるように、一定の垂直位置で水平運動させられる。ブレード25aのこのような水平運動によって、試料23の位置が変動し、試料23の垂直振動が誘発される。誘発された振動周波数は、トイレットペーパー13の構造的な寸法(例えば、クレープやエンボス等に由来する寸法)及びブレード25aの回転速度に依存する。振動の振幅(強度)は、構造の高さに依存する。
【0032】
また、図5に示されるように測定の際には、一定の垂直位置で水平運動させられるブレード25aは、図中、位置(i)から(iii)までの移動によって例示されるように、試料23の表面を水平方向に進む。このときの試料表面に突出する繊維23fとの接触による瞬間的な遮断とブレード25aの振動に起因して、ブレード25aそれ自身の水平振動が誘発される。
【0033】
図5(a)と比べると、図5(b)では、繊維23fが柔らかく、ブレード25a
と繊維23fが接触した際に、繊維23fが大きく撓んでブレード25aのしなりが小さいため、誘発されるブレード25aの水平振動の振幅は相対的に小さくなっている。ブレード25aの水平振動の振幅は、繊維23fの柔らかさ・固さ(個々の繊維の剛性)、および試料23の素材の内部構造(バルク、繊維の結合強度)、ミクロ・マクロ圧縮性、添加薬品(柔軟剤、澱粉、乾燥強度剤)等に依存する。また、共振周波数は、試料23の素材及び幾何学寸法に依存して一定であり、およそ6,500Hzである。
【0034】
図6に、測定装置TSA 20による音響測定の結果として得られる周波数スペクトルの例を示す。横軸が周波数(単位:Hz)、縦軸が振幅(強度)(単位:dBVrms)を示す。得られるスペクトルは、概して、重なり合う2つの単一スペクトルとなる。
【0035】
図4を参照して説明した、試料23の垂直振動に基づく単一スペクトルは、低周波数側からみたスペクトルの最初の極大ピークP1として現れる。極大ピークP1の強度(振幅)が、試料23の「滑らかさ・粗さ」の指標となるTS750値となる。TS750値が小さい程、試料23は滑らかであると評価される。本実施形態では、この極大ピークP1の強度(振幅)を測定することで、TS750の値を算定している。
【0036】
また、図5を参照して説明した、ブレード25aの水平振動に基づく単一スペクトルは、共振周波数である6500Hzを含む(6500Hzの前後の)スペクトルの極大ピークP2として現れる。極大ピークP2の強度(振幅)が、試料23の「柔らかさ」の指標となるTS7値となる。TS7値が小さい程、試料23は柔らかいと評価される。
【0037】
ティシューソフトネス測定装置TSA 20を用いたTS750値の測定は、以下の手順に従って行うことができる。
【0038】
(1)試料の準備
トイレットロール10からトイレットペーパー13を巻きほどき、直径112.8mmの円形のトイレットペーパーの試料23を切り抜く。試料23の切り抜きには、Emtec社のサンプルパンチが使用されてもよい。
【0039】
(2)試料の取り付け
試料23の測定面が上(すなわち、ブレード付きロータ25側)に向くように試料23を円形の試料台21に載せる。次いで、試料23の外周を保持するように試料固定リング24を押し下げて、試料23を試料台21にロックする。
【0040】
(3)測定
ブレード付ロータ25を100mNの押し込み圧力で試料23の上から押し込む。次いで、モーター25bを作動させて、ブレード付ロータ25を回転数2.0毎秒で回転させる。このときの試料台21の振動を、試料台内部に設置した振動センサ21aによって測定する。ソフトウェアを用いて、振動周波数を分析し、TS750値を自動的に取得する。
【0041】
(4)平均値の算出
1種類のトイレットロール10につき、後述のとおり、トイレットペーパー13を巻きほどいた際の最外巻のトイレットペーパー13の端縁から異なる3位置において、上記(1)から(3)の工程を繰り返すことによって、3位置でのTS750値の測定を行い、各測定値の平均値をTS750値として取得する。
【0042】
<巻長>
本実施形態において、トイレットペーパー13の巻長は75m以上であることが好ましく、80m以上であることがより好ましく、85m以上であることがさらに好ましく、90m以上であることが特に好ましい。また、トイレットペーパー13の巻長は155m以下であることが好ましく、145m以下であることがより好ましく、140m以下であることがさらに好ましい。巻長は、例えば、トイレットロール10からトイレットペーパー13を巻きほどきながらその長さを実測することによって求めることができる。以上のように、本実施形態のトイレットロール10はいわゆる長巻のトイレットロールであることが好ましく、長巻のトイレットロールにおいては、持ち運びや保管時の省スペース化を図ることができる。
【0043】
<巻直径>
本実施形態において、巻直径は、トイレットペーパー13がロール状に巻き取られたトイレットロール10のロール径(図1におけるDR)である。トイレットロール10の巻直径DRは、100mm以上であることが好ましく、105mm以上であることがより好ましい。また、トイレットロール10の巻直径DRは、134mm以下であることが好ましく、130mm以下であることがより好ましい。トイレットロール10の巻直径DRは、1種類のトイレットロール10につき、その軸方向両端部および中央部の3位置において、巻尺を用いてトイレットロール10の周長を測定し、各周長の測定値を円周率3.14で割って各3位置での巻直径を算出し、各3位置での巻直径の平均値として測定することができる。トイレットロール10の巻直径DRがこの範囲であると、トイレットロール10は、一般的なトイレットロールホルダー内に収まり、その中で回転自在に支持され得る。
【0044】
<ロール幅>
本実施形態において、ロール幅はトイレットロール10の軸方向寸法である。ロール幅は、例えば、ノギスなどを用いて測定することができる。ロール幅がこの範囲であると、トイレットロール10は、一般的なトイレットロールホルダー内に収まり、その中で回転自在に支持され得る。
【0045】
<紙管>
紙管14は、円筒形状を有しており、その周りにトイレットペーパー13が巻き回されてトイレットロール10となる。図1において、紙管14の外径(コア径)はDCで表されており、外径は、トイレットロールホルダーの部材(コア芯やフック等)のサイズに応じて設定される。一般的には、紙管の外径は、35mm~40mm程度である。なお、紙管14の外径は、トイレットロール10からトイレットペーパー13を全量巻きほどいて、ノギスなどを用いて測定することができる。
【0046】
紙管14の素材は、その外周面にピックアップ糊を塗布し、トイレットペーパー13の始端部をピックアップして接着固定し、トイレットペーパー13を巻き回すことのできるものであればよく、紙管原紙、段ボール原紙、クラフト紙等の厚紙から形成されていることが多い。紙管14は、例えば、スパイラル状に巻き回された帯状紙によって形成されていてもよい。
【0047】
(トイレットペーパー)
本実施形態おいて、トイレットペーパー13の坪量は、14g/m以上であることが好ましく、15g/m以上であることがより好ましく、16g/m以上であることがさらに好ましい。また、トイレットペーパー13の坪量は、22g/m以下であることが好ましく、21g/m以下であることがより好ましく、20g/m以下であることがさらに好ましい。トイレットペーパー13の坪量を上記範囲内とすることにより、トイレットロール10の巻密度を所定の範囲内とすることが容易となる。
【0048】
トイレットペーパー13の坪量は、JIS P8124:2011の規定に準じて測定することができる。より具体的には、トイレットロール10をJIS P8111:1998に規定する方法に従って調湿し、当該調湿したトイレットロール10からトイレットペーパー13を10cm×10cmの大きさに切り出し、当該切り出したトイレットペーパー13の重さを測定し、当該重さをトイレットペーパーの切出面積の0.01mで割ってトイレットペーパー13の坪量を求める。
【0049】
トイレットペーパー13の紙厚は、80μm以上であることが好ましく、90μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。また、トイレットペーパー13の紙厚は、170μm以下であることが好ましく、160μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。トイレットペーパー13の紙厚を上記範囲内とすることにより、トイレットロールの巻密度を所定の範囲内とすることが容易となり、その結果、風合いが良好なトイレットペーパー13が得られやすくなる。また、トイレットペーパー13の紙厚を上記範囲内とすることにより、ロール自体の柔らかさ(ふんわり感)に優れたトイレットロール10が得られやすくなる。
【0050】
トイレットペーパー13の紙厚を測定する際には、トイレットロール10からトイレットペーパー13を巻きほどいた際の最外巻のトイレットペーパー13の端縁から10mに相当する位置、同端縁から巻長の50%の位置、最内巻のトイレットペーパー13の端縁から10mの位置の各3位置においてトイレットペーパー幅方向にランダムな10位置で紙厚を測定し、当該各測定値の平均値として求める。紙厚の測定は、ISO 12625-3に準じて、2つの平行な円形の加圧面を持つマイクロメーターで、加圧面間にトイレットペーパー13を挟んで厚さを測定することにより求める。なお、厚さの測定中、加圧面間に加える圧力は、2kPa±0.2kPaとする。
【0051】
トイレットペーパー13の密度は、0.120/cm以上であることが好ましく、0.130g/cm以上であることがより好ましく、0.140g/cm以上であることがさらに好ましい。また、トイレットペーパー13の密度は、0.230g/cm以下であることが好ましく、0.220g/cm以下であることがより好ましく、0.210g/cm以下であることがさらに好ましい。トイレットペーパーの密度を上記範囲内とすることにより、トイレットロール10の巻密度を所定の範囲内とすることが容易となり、その結果、風合いが良好なトイレットペーパー13が得られやすくなる。また、トイレットペーパー13の密度を上記範囲内とすることにより、ロール自体の柔らかさ(ふんわり感)に優れたトイレットロール10が得られやすくなる。トイレットペーパー13の密度は、トイレットペーパー13の坪量をトイレットペーパー13の紙厚で除して求めることができる。
【0052】
<パルプ成分>
トイレットペーパー13は、抄紙原料として、繊維原料であるパルプ成分を含むスラリーを用いて抄紙することによって得られる。パルプ成分としては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。パルプ成分は上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0053】
パルプ成分としては、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプから選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、針葉樹パルプを用いることが好ましい。針葉樹パルプは、繊維が長く強度があり、トイレットペーパー13に強度を付与することができる。また、広葉樹パルプは、繊維が短く、しなやかであり、トイレットペーパー13に均一性、地合いのよさ、柔らかさなどを提供することができる。本実施形態においては、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)とを併用することがより好ましい。
【0054】
針葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパー13に含まれるパルプ成分の全質量に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、針葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパー13に含まれるパルプ成分の全質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
広葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパー13に含まれるパルプ成分の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、広葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパー13に含まれるパルプ成分の全質量に対して、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
【0055】
パルプ成分として針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用する場合、針葉樹パルプと広葉樹パルプとの配合割合(質量比)を示すL/N比は、例えば、10/90~90/10とすることが好ましく、20/80~80/20とすることがより好ましい。中でも、針葉樹パルプと広葉樹パルプとの配合割合は、同等であるか、又は、広葉樹パルプの配合割合が多い方が好ましい。針葉樹パルプ及び広葉樹パルプの含有量及び配合割合を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーの各面のTS750の値を所望の範囲にコントロールすることが容易となる。
【0056】
<任意成分>
トイレットペーパー13の抄紙原料には、パルプ成分の他、任意成分として様々な薬品が添加されていてもよい。任意成分としては、例えば、柔軟剤、保湿剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、嵩高剤、染料、香料、分散剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、歩留向上剤、サイズ剤等を挙げることができる。
【0057】
<エンボス加工>
本実施形態においては、トイレットペーパー13が実質的に全面に亘ってエンボスを有し、当該エンボス凹部がトイレットロール10の外周面を構成するトイレットペーパー13の表面に形成されていることが好ましい。エンボス加工は、公知の方法、例えば、雄(凸)エンボススチールロールとプレーンラバーロールとを用いて行うことができる。
【0058】
トイレットペーパー13におけるエンボス高さは、75μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、85μm以上であることがさらに好ましく、90μm以上であることが特に好ましい。また、トイレットペーパー13におけるエンボス高さは、135μm以下であることが好ましく、130μm以下であることがより好ましく、125μm以下であることがさらに好ましく、120μm以下であることが特に好ましい。トイレットペーパー13におけるエンボス高さを上記範囲内とすることにより、トイレットペーパー裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比((P/Qの値)を所望の範囲にコントロールしやすくなり、トイレットロール10をトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパー13を引き出す際のトイレットペーパー13の引き出し性をより効果的に高めることができる。
【0059】
トイレットペーパー13のエンボス高さは、形状測定レーザーマイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して求める。形状測定レーザーマイクロスコープは、点光源であるレーザ光源を、対物レンズを介して、観察視野内のX-Y平面((図7(a)参照)を複数に分割したピクセルにスキャンし、ピクセル毎の反射光を受光素子で検出する。そして、対物レンズを高さ(Z軸)方向((図7(b)参照)に駆動し、最も反射光量の高いZ軸位置を焦点として、高さ情報と反射光量を検出する。このようにしてスキャンを繰り返すことにより、全体に焦点の合った光量超深度画像と高低画像(情報)が得られる。レーザ光源は、ピンホール共焦点光学系であるので、測定精度が高い。
【0060】
形状測定レーザーマイクロスコープとして、ワンショット3Dマイクロスコープ(VR-3200)(KEYENCE社製)を用いることができる。また、レーザーマイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。なお、測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
エンボス高さの解析は、次の手順に従って、行う。
(1)対象画像について面形状補正によって視野全体のうねりを除去する。
(2)線粗さの測定によって、測定対象とする1つのエンボスを挟んだ2点間の粗さプロファイルを計測し、傾き補正を行う。
(3)エンボスの平面方向における位置X(μm)とエンボス深さZ(μm)のデータからエンボスの開始点X1と終了点X2のエンボス深さZ1、Z2を求める(図7の(c)参照)。
(4)エンボス深さZ1とZ2の平均値をエンボス深さの極大値Zmaxとし、エンボスの開始点X1と終了点X2との間に位置するエンボス深さの極小値Zminとの差をエンボス深さΔZとする(図7の(c)参照)。
ΔZ=Zmax-Zmin
(5)上記(1)から(4)の測定を、トイレットペーパー13の幅方向の任意の10個のエンボスについて行い、ΔZの平均値をエンボス深さDとする。
この測定は、トイレットロールからトイレットペーパーを巻きほどいた際の最外巻のトイレットペーパーの端縁から15mに相当する位置、同端縁から巻長の55%の位置、最内巻のトイレットペーパーの端縁から15mの位置の各3位置で行い、各位置でのエンボス深さDの測定値の平均値をエンボス高さとして求める。
【0061】
トイレットペーパー13におけるエンボス密度は、10個/cm以上であることが好ましく、15個/cm以上であることがより好ましく、20個/cm以上であることがさらに好ましく、25個/cm以上であることが特に好ましい。また、トイレットペーパー13におけるエンボス密度は、50個/cm以下であることが好ましく、45個/cm以下であることがより好ましく、40個/cm以下であることがさらに好ましく、35個/cm以下であることが特に好ましい。
トイレットペーパー13のエンボス密度については、トイレットロール10から巻きほどいたトイレットペーパー13について8cm×8cmの範囲を定め、その範囲内のエンボスの個数を目視にてカウントし、その個数を1cm×1cmあたりに換算して求めることができる。8cm×8cmの範囲内のエンボスの個数を目視にてカウントするに際しては、エンボス全体がその範囲内に含まれるもののみをカウントし、エンボスの一部のみがその範囲内に含まれるものについては、カウントしないものとする。
トイレットペーパー13におけるエンボス高さやエンボス密度を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパー裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比((P/Qの値)を所望の範囲にコントロールしやすくなり、トイレットロール10をトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパー13を引き出す際のトイレットペーパー13の引き出し性を効果的に高めることができる。
【0062】
トイレットペーパー13におけるエンボス1個当たりの面積は、2.0mm2以上であることが好ましく、2.3mm2以上であることがより好ましく、2.6mm2以上であることがさらに好ましい。また、トイレットペーパー13における1個当たりの面積は、3.5mm2以下であることが好ましく、3.2mm2以下であることがより好ましく、2.9mm2以下であることがさらに好ましい。
トイレットペーパー13におけるエンボス1個当たりの面積を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパー裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比((P/Qの値)を所望の範囲によりコントロールしやすくなり、トイレットロール10をトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパー13を引き出す際のトイレットペーパー13の引き出し性をより効果的に高めることができる。
トイレットペーパー13におけるエンボス1個当たりの面積は、形状測定レーザーマイクロスコープとしてワンショット3D形状測定器VR-3200(KEYENCE社製)を用いるとともに、形状測定レーザーマイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとして解析アプリケーションVR-H2A(KEYENCE社製)を用いて、後述のトイレットペーパー13のエンボス高さの測定と併せて行うことができる。ワンショット3D形状測定器VR-3200および解析アプリケーションVR-H2Aを用いた、トイレットペーパー13のエンボス1個当たりの面積の測定方法については、公知の手法、例えば特許第6606147号に開示される手法に従ってトイレットペーパー13の幅方向の任意の10個のエンボスについて行い、その平均値をエンボス1個当たりの面積の測定値とする。そして、この測定を、後述のトイレットペーパー13のエンボス高さの測定と併せて、トイレットロールからトイレットペーパーを巻きほどいた際の最外巻のトイレットペーパーの端縁から15mに相当する位置、同端縁から巻長の55%の位置、最内巻のトイレットペーパーの端縁から15mの位置の各3位置で行い、各位置でのエンボス1個当たりの面積の測定値の平均値をエンボス1個当たりの面積として定めることができる。
【0063】
(トイレットロールの製造方法)
本実施形態のトイレットロール10の製造方法は、抄紙原料として、パルプ成分を含むスラリーを調製する工程と、当該スラリーを用いてトイレットペーパー用幅広原紙を抄造する工程と、当該トイレットペーパー用幅広原紙をロール状に巻き取って原反ロールを製造する工程と、当該原反ロールからトイレットペーパー用幅広原紙を繰り出しつつ長尺紙管に巻き取って幅広トイレットロールを製造する工程と、幅広トイレットロールを所定幅に切断してトイレットロール10を製造する工程とを有する。
【0064】
パルプ成分を含むスラリーを調製する工程においては、パルプ成分を漂白する工程を含んでもよい。漂白工程で使用する漂白剤としては、酸素系漂白剤や塩素系漂白剤等の公知の漂白剤を挙げることができる。
【0065】
また、パルプ成分を含むスラリーを調製する工程においては、パルプ成分を叩解する工程を含むことが好ましい。叩解工程においては、例えば、ダブルディスクリファイナー等を用いて叩解処理を施すことができる。この時、針葉樹パルプと広葉樹パルプをそれぞれ単独で叩解してもよいし、混合させた後に叩解してもよい。
【0066】
パルプ成分を含むスラリーを用いてトイレットペーパー用幅広原紙を抄造する工程において用いられる抄紙機としては、例えば、サクションブレストフォーマー(円網タイプ、長網タイプ)、ツインワイヤーフォーマー、円網フォーマー(Cラップ、Sラップ)、クレセントフォーマー等の抄紙機を挙げることができる。
【0067】
パルプ成分を含むスラリーを用いてトイレットペーパー用幅広原紙を抄造する工程では、ワイヤーパートが設けられる。ワイヤーパートでは、網状のワイヤー上にパルプ成分を含むスラリーが供給されてパルプの薄層が形成される。その後、プレスパートに向かって移送されながら、パルプの薄層の水分が網の下へ抜かれることでパルプの薄層は脱水される。このような工程を脱水工程と呼ぶこともある。一般に、ワイヤーは、金属またはプラスチック製の網を環にしたものである。
【0068】
ワイヤーパートの下流にはプレスパートが設けられ、プレスパートでは、紙層(湿紙)に圧力がかけられることで、紙層(湿紙)に含まれる水分が搾り取られる。また、プレスパートでは、紙層(湿紙)の表面を平滑にすると同時にパルプ成分の密度を高めることもできる。
【0069】
プレスパートの下流にはドライパートが設けられる。ドライパートでは、プレスパートを経て湿った状態にある紙層(湿紙)の余分な水分をヤンキードライヤーに張り付けて加熱することにより、強制的に蒸発させ、これによって紙層(湿紙)を乾燥させる。紙層(湿紙)は、ヤンキードライヤーのシリンダーに巻き付けられて乾燥され、その後、ドクターブレードによってヤンキードライヤーのシリンダーの表面から剥離されるとともに、流れ方向に圧縮されてクレープ(皺)が付与され、これによってトイレットペーパー用幅広原紙が抄造される。
【0070】
本実施形態では、トイレットロール10のロール外周面を構成するトイレットペーパー13の表面がヤンキー面(ヤンキードライヤー接触面)となるようにすることが好ましい。トイレットロール10のロール外周面を構成するトイレットペーパー表面をヤンキー面とすることにより、トイレットペーパー表面が滑らかとなる。
【0071】
ドライパートの下流には、リールパートが設けられる。リールパートでは、トイレットペーパー用幅広原紙が巻取リールに巻き取られて原反ロールが製造される。巻取リールとヤンキードライヤーのシリンダーとに速度差を設けることにより、所定のクレープ率((ヤンキードライヤーの周速-巻取リールの周速)/巻取リールの周速)×100)としてトイレットペーパー用幅広原紙に所望のクレープを付与することができる。
【0072】
ドライパートとリールパートとの間には、カレンダパートが設けられる。カレンダパートでは、トイレットペーパー用幅広原紙が所定の厚さにコントロールされる。
【0073】
原反ロールの製造後は、当該原反ロールを加工機に設置し、原反ロールからトイレットペーパー用幅広原紙を繰り出しつつ長尺紙管に巻き取って幅広トイレットロールを製造する工程と、当該幅広トイレットロールを所定幅に切断する工程とを経て、トイレットロール10が製造される。
原反ロールからトイレットペーパー用幅広原紙を繰り出しつつ長尺紙管に巻き取って幅広トイレットロールを製造する工程では、巻取り工程が設けられる。巻取り工程においては、トイレットロール10のトイレットペーパー13が所定の製品長を満たすように、トイレットペーパー用幅広原紙が所定の長さ分だけ長尺紙管に巻き取られる。本実施形態では、トイレットロール10のトイレットペーパー13の巻長が75~155mとなるようトイレットペーパー用幅広原紙が長尺紙管に巻き取られる。この際、幅広トイレットロールの外周面を構成するトイレットペーパー用幅広原紙の表面がヤンキー面となるように、すなわちトイレットロール10のロール外周面を構成するトイレットペーパー表面がヤンキー面となるように、トイレットペーパー用幅広原紙が長尺紙管に巻き取られることが好ましい。
この巻き取り工程では、例えばマンドレルシャフトを有するワインダーを用いて、以下のように行うことができる。(1)まず巻芯となる長尺紙管をマンドレルシャフトに挿入し、固定する。(2)長尺紙管に接着剤を付着させ、長尺紙管にトイレットペーパー用幅広原紙の始端部を接着固定する。(3)マンドレルシャフトを回転させることにより、トイレットペーパー用幅広原紙がトイレットペーパー13の製品長さ分だけ長尺紙管に巻き取られる。
また、巻き取り工程では、トイレットペーパー用幅広原紙の幅方向に横切る破断用ミシン目をトイレットペーパー用幅広原紙の長手方向(MD方向)に沿って、一定間隔毎に形成してもよい。破断用ミシン目の形成には、知られている任意のミシン目形成手段を用いることができる。
トイレットペーパー用幅広原紙をトイレットペーパー13の製品長さ分だけ長尺紙管に巻き取った後は、トイレットペーパー用幅広原紙の巻き終わりの終端部を接着剤(テールシール糊)によって糊付けする工程が設けられてもよい。このような工程を設けることで、幅広トイレットロールが巻きほぐれることを抑制することができる。
幅広トイレットロールを所定幅に切断してトイレットロール10を製造する工程では、幅広トイレットロールがログソーによって所定幅に切断され、これによってトイレットロール10が製造される。
【0074】
原反ロールからトイレットペーパー用幅広原紙を繰り出しつつ長尺紙管に巻き取って幅広トイレットロールを製造する工程では、原反ロールと長尺紙管との間において保湿剤や柔軟剤等の薬剤をトイレットペーパー用幅広原紙の片面又は両面に塗工する薬液塗布工程が設けられてもよい。なお、薬液には、保湿剤や柔軟剤の他に、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などが含まれていてもよい。柔軟剤はトイレットペーパー用幅広原紙に柔軟性を与えたり表面を滑らかにしたりする効果があり、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を用いることができる。また、無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
【0075】
また、原反ロールからトイレットペーパー用幅広原紙を繰り出しつつ長尺紙管に巻き取って幅広トイレットロールを製造する工程では、原反ロールと長尺紙管との間においてトイレットペーパー用幅広原紙にエンボス加工するエンボス加工工程が設けられる。エンボス加工工程では、エンボスパターンを構成する凸構造が設置されたエンボスロールとラバーロールとの間にトイレットペーパー用幅広原紙を通し、エンボスパターンがトイレットペーパー用幅広原紙に型押しされる。ここで、エンボス加工に用いるエンボスロールには、凸構造高さ0.75mm以上0.85mm以下の凸構造が設置されていることが好ましい。また、エンボス加工に用いるエンボスロールには、凸構造密度(エンボス密度)10個/cm以上50個/cm以下の凸構造が設置されていることが好ましい。そして、エンボス加工では、上記のエンボスロールを8kgf/cm以上20kgf/cm以下の圧力でトイレットペーパー用幅広原紙に型押しすることが好ましい。
エンボス加工工程では、トイレットロール10のロール外周面を構成するトイレットペーパー表面にエンボス凹部が形成されるように、幅広トイレットロールの外周面を構成するトイレットペーパー用幅広原紙の表面にその全域に亘ってエンボス凹部が形成され、これによりトイレットロール10のトイレットペーパー13が実質的に全面に亘ってエンボスを有し、当該エンボス凹部がトイレットロール10の外周面を構成するトイレットペーパー表面に形成される。
【実施例0076】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0077】
(実施例1)
パルプ成分(100質量%)のうち、針葉樹クラフトパルプ(NKP)25質量%、広葉樹クラフトパルプ(LKP)75質量%を混合したパルプスラリーをダブルディスクリファイナーを用いてフリーネスが590mlになるように叩解した。次いで、パルプ成分100質量%に対して柔軟剤を0.15質量%を添加し、各成分が均一になるように十分攪拌して、パルプスラリーを調製した。このように調製したパルプスラリーを用いてツインワイヤーヤンキーマシンで抄紙することにより、トイレットペーパー用幅広原紙を抄造し、当該トイレットペーパー用幅広原紙を巻取りリールに巻き取って原反ロールを製造した。ここで、原反ロール製造工程において、抄造されるシートを乾燥させる間にクレープ加工を行い、さらに乾燥されたシートに対して、カレンダー加工を行った。クレープ加工におけるクレープ率は32%であり、カレンダー加工時のカレンダー線圧は5kg/cmであった。
【0078】
原反ロールの製造後は、当該原反ロールを加工機に設置し、原反ロールからトイレットペーパー用幅広原紙を巻き解きながら、線圧5kg/cmにてカレンダー加工を行い、次いでエンボス加工を行った。エンボス加工は、エンボスパターンを構成する凸構造が設置されたエンボスロールとラバーロールとの間にトイレットペーパー用幅広原紙を通すことで行った。エンボス加工後は、トイレットペーパー用幅広原紙を長尺紙管に巻き取って幅広トイレットロールを製造し、当該幅広トイレットロールを表中のロ―ル幅に対応した所定の幅に断裁することで1プライのトイレットロールを製造した。
【0079】
(実施例2、3)
実施例1からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例1と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0080】
(実施例4)
表1に記載の巻直径になるように巻き固さを調整した以外は、実施例1と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0081】
(実施例5、6)
実施例4からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例4と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0082】
(実施例7)
実施例1対比、エンボス密度が低いエンボスロールを使用した以外は、実施例1と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0083】
(実施例8、9)
実施例7からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例7と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0084】
(実施例10)
トイレットロールの巻長を表2に記載のとおりに実施例1よりも長くし、表2に記載の巻直径になるように巻き固さを調整した以外は、実施例1と同様にてトイレットロールを製造した。
【0085】
(実施例11、12)
実施例10からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例10と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0086】
(実施例13)
表2に記載の巻直径になるように巻き固さを調整した以外は、実施例10と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0087】
(実施例14、15)
実施例13からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例13と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0088】
(実施例16)
実施例10対比、エンボス密度が低いエンボスロールを使用した以外は、実施例10と同様にしてトイレットロールを製造した。また、使用したエンボスロールは実施例7~9と同様のエンボスロールである。
【0089】
(実施例17、18)
実施例16からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例16と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0090】
(実施例19)
トイレットペーパーの坪量を表3に記載のとおりに実施例1よりも低くし、トイレットロールの巻長を表3に記載のとおりに実施例1よりも長くし、かつ表3に記載の巻直径になるように巻き固さを調整した以外は、実施例1と同様にてトイレットロールを製造した。
【0091】
(実施例20、21)
実施例19からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例19と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0092】
(実施例22)
表3に記載の巻直径になるように巻き固さを調整した以外は、実施例19と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0093】
(実施例23、24)
実施例22からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例22と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0094】
(実施例25)
実施例19対比、エンボス密度が低いエンボスロールを使用した以外は、実施例19と同様にしてトイレットロールを製造した。また、使用したエンボスロールは実施例7~9および実施例16~18と同様のエンボスロールである。
【0095】
(実施例26、27)
実施例25からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例25と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0096】
(比較例1)
実施例7~9対比エンボス密度が低いエンボスロールを使用し、実施例9対比エンボスロールの押込み圧をさらに弱めた以外は、実施例1と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0097】
(比較例2)
実施例1対比、エンボス密度が高いエンボスロールを使用した以外は、実施例1と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0098】
(比較例3、4)
実施例1からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例1と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0099】
(比較例5)
実施例16~18対比エンボス密度が低いエンボスロールを使用し、実施例18対比エンボスロールの押込み圧をさらに弱めた以外は、実施例10と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0100】
(比較例6)
実施例10対比、エンボス密度が高いエンボスロールを使用した以外は、実施例10と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0101】
(比較例7、8)
実施例10からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例10と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0102】
(比較例9)
実施例25~27対比エンボス密度が低いエンボスロールを使用し、実施例27対比エンボスロールの押込み圧をさらに弱めた以外は、実施例19と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0103】
(比較例10)
実施例19対比、エンボス密度が高いエンボスロールを使用した以外は、実施例19と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0104】
(比較例11、12)
実施例19からエンボスロールの押込み圧を変更した以外は、実施例19と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0105】
(比較例13、14)
トイレットペーパーの坪量を表5に記載のとおりに実施例21よりも高くし、トイレットロールの巻直径を表5に記載の巻直径になるように巻き固さを調整した以外は、実施例21と同様にしてトイレットロールを製造した。
【0106】
(測定及び評価)
実施例1~27および比較例1~14の各トイレットロールについて、以下の測定および評価を行った。なお、測定は、日本工業規格JIS P8111に準じた環境下(温度23±1℃、湿度50±2%)で試料を調湿して行った。
<巻長>
トイレットロールからトイレットペーパーを巻きほどきつつ、トイレットペーパーの終端部から始端部までの紙管への巻き回しの長さを測定した。測定は0.5m刻みで行い端数は切り捨てた。
【0107】
<巻直径>
トイレットロールの巻直径は、1種類のトイレットロールにつき、その軸方向両端部および中央部の3位置において、巻尺を用いてトイレットロールの周長を測定し、各周長の測定値を円周率3.14で割って各3位置での巻直径を算出し、各3位置での巻直径の平均値として測定し、小数点以下を四捨五入した。
【0108】
<ロール幅>
トイレットロールのロール幅をノギスにより測定し、小数点以下を四捨五入した。
【0109】
<紙管外径>
トイレットロールの紙管の外径(直径)をノギスにより測定し、小数点以下を四捨五入した。
【0110】
<巻密度>
巻密度は以下の式により算出した。
巻密度(m/cm)=トイレットペーパーの巻長(m)/トイレットロールの断面積(cm
トイレットロールの断面積(cm)=((トイレットロールの巻直径(cm)/2)×円周率3.14)-(紙管外径(cm)/2)×円周率3.14))
【0111】
<坪量>
トイレットロールからトイレットペーパーを巻きほどき、JIS P8124:2011に準じて、トイレットペーパーの坪量を測定した。具体的には、トイレットペーパーをJIS P8111:1998に規定する方法に従って調湿し、当該調湿したトイレットペーパーを10cm×10cmの大きさに切り出し、当該切り出したトイレットペーパーの重さを測定し、当該重さをトイレットペーパーの切出面積の0.01mで割ってトイレットペーパーの坪量を求めた。
【0112】
<紙厚>
トイレットロールからトイレットペーパーを巻きほどいた際の最外巻のトイレットペーパーの端縁から10mに相当する位置、同端縁から巻長の50%の位置、最内巻のトイレットペーパーの端縁から10mの位置の各3位置においてトイレットペーパー幅方向にランダムな10位置で紙厚を測定し、当該各測定値の平均値として求めた。紙厚の測定は、ISO 12625-3に準じて、2つの平行な円形の加圧面を持つマイクロメーターで、加圧面間にトイレットペーパーを挟んで厚さを測定することにより求めた。但し、厚さの測定中、加圧面間に加える圧力は、2kPa±0.2kPaとした。
【0113】
<密度>
坪量を紙厚で割って求めた。
【0114】
<TS750(表面)>
ティシューソフトネス測定装置TSAの試料台にトイレットロールのロール外周面を構成するトイレットペーパー表面を上に向けて設置したトイレットペーパー試料に対し、ブレード付ロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0毎秒で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定した。このときに取得される、低周波数側からみたスペクトルの最初の極大ピークの強度をトイレットペーパー表面のTS750とした。
この測定は、トイレットロールからトイレットペーパーを巻きほどいた際の最外巻のトイレットペーパーの端縁から5mに相当する位置、同端縁から巻長の45%の位置および最内巻のトイレットペーパーの端縁から5mの3位置で行い、各測定値の平均値をトイレットペーパー表面のTS750とした。
【0115】
<TS750(裏面)>
ティシューソフトネス測定装置TSAの試料台にトイレットロールのロール外周面を構成するトイレットペーパー表面と反対のトイレットペーパー裏面を上に向けて設置したトイレットペーパー試料に対し、ブレード付ロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0毎秒で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定した。このときに取得される、低周波数側からみたスペクトルの最初の極大ピークの強度をトイレットペーパー裏面のTS750とした。
この測定は、トイレットペーパー表面のTS750の測定位置(3位置)に対し、トイレットロールからトイレットペーパーを巻きほどいた際の最外巻のトイレットペーパーの端縁側にそれぞれ隣接する3位置で行い、各測定値の平均値をトイレットペーパー裏面のTS750とした。
【0116】
<エンボス高さ>
トイレットペーパーのエンボス高さは、形状測定レーザーマイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して求めた。具体例には、形状測定レーザーマイクロスコープとして、ワンショット3Dマイクロスコープ(VR-3200)(KEYENCE社製)を用い、レーザーマイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとして、製品名「VR-H1A」を使用した。測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定した。
エンボス高さの解析は、次の手順に従って、行った。
(1)対象画像について面形状補正によって視野全体のうねりを除去する。
(2)線粗さの測定によって、測定対象とする1つのエンボスを挟んだ2点間の粗さプロファイルを計測し、傾き補正を行う。
(3)エンボスの平面方向における位置X(μm)とエンボス深さZ(μm)のデータからエンボスの開始点X1と終了点X2のエンボス深さZ1、Z2を求める(図7の(c)参照)。
(4)エンボス深さZ1とZ2の平均値をエンボス深さの極大値Zmaxとし、エンボスの開始点X1と終了点X2との間に位置するエンボス深さの極小値Zminとの差をエンボス深さΔZとする(図7の(c)参照)。
ΔZ=Zmax-Zmin
(5)上記(1)から(4)の測定を、トイレットペーパー13の幅方向の任意の10個のエンボスについて行い、ΔZの平均値をエンボス深さDとする。
この測定は、トイレットロールからトイレットペーパーを巻きほどいた際の最外巻のトイレットペーパーの端縁から15mに相当する位置、同端縁から巻長の55%の位置、最内巻のトイレットペーパーの端縁から15mの位置の各3位置で行い、各位置でのエンボス深さDの測定値の平均値をエンボス高さとして求めた。
【0117】
<エンボス密度>
トイレットロールから巻きほどいたトイレットペーパーについて、8cm×8cmの範囲を定め、その範囲内のエンボスの個数を目視にてカウントし、その個数を1cm×1cmあたりに換算して求めた。8cm×8cmの範囲内のエンボスの個数を目視にてカウントするに際しては、エンボス全体がその範囲内に含まれるもののみをカウントし、エンボスの一部のみがその範囲内に含まれるものについては、カウントしないものとした。
この測定は、エンボス高さや紙厚やTS750の測定位置と異なる測定箇所にて8cm角におけるエンボス個数を目視で測定した。
【0118】
<官能評価>
以下の項目について官能評価を行い、その結果を記号で示した(◎:優、〇:良、△:可、×:不可)。官能評価は、トイレットロールの巻長がほぼ同じ試料同士の相対評価とした。
<表面風合い(滑らかさ)>
トイレットペーパー表面(トイレットロールの外周面を構成するトイレットペーパー表面)の手触りが滑らかであるほど、風合いが優(◎)であるものとした。
【0119】
<官能評価(引き出し易さ)>
トイレットロールをトイレットホルダーに装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパーを引っ掛かりなく円滑に引き出せるほど、引き出し易さが優(◎)であるものとした。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
比較例に比べて実施例で得られたトイレットロールにおいては、トイレットペーパー表面(トイレットロールの外周面を構成するトイレットペーパー表面)の風合い(滑らかさ)が良好であり、トイレットペーパーの引き出し易さも良好であった。
表1に示されるように、実施例1から実施例9の巻長が75.5m~77.0mの1プライのトイレットロールは、いずれも巻密度が0.80~1.60m/cmであり、トイレットペーパーの表面のTS750が12.0~25.0dBV2rmsであり、トイレットペーパーの裏面のTS750の値が表面のTS750の値よりも大きく、トイレットペーパー裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比(トイレットペーパー裏面のTS750/トイレットペーパー表面のTS750)が2.2~4.0であった。
【0126】
かかるかかる実施例1から実施例9のトイレットロールは、「表面風合い(滑らかさ)」(4段階評価)が、いずれも評価◎(優)、評価〇(良)、評価△(可)であり、トイレットロールの外周面を構成するトイレットペーパーの表面の手触りが滑らかであった。
また、「引き出し易さ」(4段階評価)が、いずれも評価◎(優)、評価〇(良)、評価△(可)であり、トイレットロールをトイレットロールホルダ―に装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパーを円滑に引き出すことができた。
【0127】
比較例1は実施例1と比較して、エンボス高さが低く、かつエンボス密度が低かったため、トイレットペーパーの表面のTS750が低かった。そのため、「表面風合い(滑らかさ)」は評価◎(優)でありトイレットペーパーの表面の手触りは優れていたが、トイレットペーパーの表面および裏面のTS750がともに低いため、トイレットロールをトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じやすく、「引き出し易さ」は評価×(不可)であり、トイレットペーパーの引き出し易さは劣っていた。
【0128】
比較例2は実施例1と比較して、エンボス密度が高かったため、トイレットペーパーの表面および裏面のTS750が高かった。そのため、トイレットロールをトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じにくく、「引き出し易さ」は評価◎(優)であった。一方、「表面風合い(滑らかさ)」が評価×(不可)であり、トイレットペーパーの表面の手触りが劣っていた。
【0129】
比較例3は実施例1と比較して、エンボス高さが高かったため、トイレットペーパーの表面のTS750が高かった。そのため、「表面風合い(滑らかさ)」が評価×(不可)であり、トイレットペーパーの表面の手触りが劣っていた。
【0130】
比較例4は実施例1と比較して、エンボス高さが低かったため、トイレットペーパーの表面および裏面のTS750がともに低く、トイレットペーパーの裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比も低かったため、トイレットロールをトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じやすく、「引き出し易さ」は評価×(不可)であり、トイレットペーパーの引き出し易さが劣っていた。
【0131】
表2に示されるように、実施例10から実施例18の巻長が101.0m~102.5mの1プライのトイレットロールは、いずれも巻密度が0.80~1.60m/cmであり、トイレットペーパーの表面のTS750が12.0~25.0dBV2rmsであり、トイレットペーパーの裏面のTS750の値が表面のTS750の値よりも大きく、トイレットペーパー裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比(トイレットペーパー裏面のTS750/トイレットペーパー表面のTS750)が2.2~4.0であった。
【0132】
かかるかかる実施例10から実施例18のトイレットロールは、「表面風合い(滑らかさ)」(4段階評価)が、いずれも評価◎(優)、評価〇(良)、評価△(可)であり、トイレットロールの外周面を構成するトイレットペーパーの表面の手触りが滑らかであった。また、「引き出し易さ」(4段階評価)が、いずれも評価◎(優)、評価〇(良)、評価△(可)であり、トイレットロールをトイレットロールホルダ―に装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパーを円滑に引き出すことができた。
【0133】
比較例5は実施例10と比較して、エンボス高さが低く、かつエンボス密度が低かったため、トイレットペーパーの表面のTS750が低かった。そのため、「表面風合い(滑らかさ)」は評価◎(優)でありトイレットペーパーの表面の手触りは優れていたが、トイレットペーパーの表面および裏面のTS750がともに低いため、トイレットロールをトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じやすく、「引き出し易さ」は評価×(不可)であり、トイレットペーパーの引き出し易さは劣っていた。
【0134】
比較例6は実施例10と比較して、エンボス密度が高かったため、トイレットペーパーの表面のTS750が高かった。そのため、そのため、「表面風合い(滑らかさ)」が評価×(不可)であり、トイレットペーパーの表面の手触りが劣っていた。
【0135】
比較例7は実施例10と比較して、エンボス高さが高かったため、トイレットペーパーの表面のTS750が高かった。そのため、「表面風合い(滑らかさ)」が評価×(不可)であり、トイレットペーパーの表面の手触りが劣っていた。
【0136】
比較例8は実施例10と比較して、エンボス高さが低かったため、トイレットペーパーの表面および裏面のTS750がともに低く、「表面風合い(滑らかさ)」は評価〇(良)でありトイレットペーパーの表面の手触りが優れていた。一方、トイレットペーパーの裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比が低かったため、トイレットロールをトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じやすく、「引き出し易さ」は評価×(不可)であり、トイレットペーパーの引き出し易さは劣っていた。
【0137】
表3に示されるように、実施例19から実施例27の巻長が150.5m~152.0mの1プライのトイレットロールは、いずれも巻密度が0.80~1.60m/cmであり、トイレットペーパーの表面のTS750が12.0~25.0dBV2rmsであり、トイレットペーパーの裏面のTS750の値が表面のTS750の値よりも大きく、トイレットペーパー裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比(トイレットペーパー裏面のTS750/トイレットペーパー表面のTS750)が2.2~4.0であった。
【0138】
かかるかかる実施例19から実施例27のトイレットロールは、「表面風合い(滑らかさ)」(4段階評価)が、いずれも評価◎(優)、評価〇(良)であり、トイレットロールの外周面を構成するトイレットペーパーの表面の手触りが滑らかであった。
また、「引き出し易さ」(4段階評価)が、いずれも評価◎(優)、評価〇(良)、評価△(可)であり、トイレットロールをトイレットロールホルダ―に装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパーを円滑に引き出すことができた。
【0139】
比較例9は実施例19と比較して、エンボス高さが低く、かつエンボス密度が低かったため、トイレットペーパーの表面のTS750が低かった。そのため、「表面風合い(滑らかさ)」は評価◎(優)でありトイレットペーパーの表面の手触りは優れていたが、トイレットペーパーの表面および裏面のTS750がともに低いため、トイレットロールをトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じやすく、「引き出し易さ」は評価×(不可)であり、トイレットペーパーの引き出し易さは劣っていた。
【0140】
比較例10は実施例19と比較して、エンボス密度が高かったため、トイレットペーパーの表面のTS750が高かった。そのため、「表面風合い(滑らかさ)」が評価×(不可)であり、トイレットペーパーの表面の手触りが劣っていた。
【0141】
比較例11は実施例19と比較して、エンボス高さが高かったため、トイレットペーパーの表面のTS750が高かった。そのため、「表面風合い(滑らかさ)」が評価×(不可)であり、トイレットペーパーの表面の手触りが劣っていた。
【0142】
比較例12は実施例19と比較して、エンボス高さが低かったため、トイレットペーパーの表面および裏面のTS750がともに低く、トイレットペーパーの裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比も低かったため、トイレットロールをトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じやすく、「引き出し易さ」は評価×(不可)であり、トイレットペーパーの引き出し易さが劣っていた。
【0143】
比較例13は実施例21と比較して、エンボス高さが高かったため、トイレットペーパーの表面のTS750が高かった。そのため、「表面風合い(滑らかさ)」が評価×(不可)であり、トイレットペーパーの表面の手触りが劣っていた。また、トイレットペーパーの裏面のTS750とトイレットペーパー表面のTS750との比が低かったため、トイレットロールをトイレットロールホルダーに装着してトイレットペーパーを引き出す際に、トイレットペーパー裏面とそのトイレットペーパー裏面に接するトイレットペーパー表面との間で滑りが生じやすく、「引き出し易さ」は評価×(不可)であり、トイレットペーパーの引き出し易さは劣っていた。
【0144】
比較例14は実施例21と比較して、エンボス高さが高く、かつエンボス密度が高かったため、トイレットペーパーの表面のTS750が高かった。そのため、「表面風合い(滑らかさ)」が評価×(不可)であり、トイレットペーパーの表面の手触りが劣っていた。
【符号の説明】
【0145】
10 トイレットロール
13 トイレットペーパー
14 紙管
20 ティシューソフトネス測定装置TSA
21 試料台
21a 振動センサ
23 試料
24 試料固定リング
25 ブレード付ロータ
25a ブレード
25b モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7