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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144894
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電力増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20241004BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20241004BHJP
   H03F 1/02 20060101ALI20241004BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H03F1/32 141
H03F3/24
H03F1/02 188
H03F3/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057063
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】長谷 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】祢津 誠晃
(72)【発明者】
【氏名】柳原 真悟
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AA59
5J500AA62
5J500AA63
5J500AA64
5J500AA65
5J500AC26
5J500AF10
5J500AF15
5J500AF19
5J500AH06
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK02
5J500AK09
5J500AK12
5J500AK29
5J500AK42
5J500AM08
5J500AS14
5J500AT01
5J500AT02
5J500CK06
5J500CK07
5J500NG03
(57)【要約】
【課題】信号の品質を改善可能な電力増幅回路を提供する。
【解決手段】歪み補償増幅回路であって、入力信号から分配された第1の信号を第1のゲインで増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器に並列接続される第2の増幅器であって、前記入力信号から分配され、前記第1の信号と位相が異なる第2の信号を第2のゲインで増幅する第2の増幅器と、を含み、前記第1の増幅器から出力される信号と、前記第2の増幅器から出力される信号と、が合成された増幅信号を出力する歪み補償増幅回路と、前記増幅信号を増幅した出力信号を出力する出力増幅回路と、を備え、前記歪み補償増幅回路は、前記入力信号の電力に基づいて、前記出力増幅回路に入力される信号の電力の変化に対する前記出力増幅回路の位相の変化を補償するように、前記第1のゲインと、前記第2のゲインと、を制御する制御回路をさらに含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歪み補償増幅回路であって、
入力信号から分配された第1の信号を第1のゲインで増幅する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器に並列接続される第2の増幅器であって、前記入力信号から分配され、前記第1の信号と位相が異なる第2の信号を第2のゲインで増幅する第2の増幅器と、
を含み、
前記第1の増幅器から出力される信号と、前記第2の増幅器から出力される信号と、が合成された増幅信号を出力する歪み補償増幅回路と、
前記増幅信号を増幅した出力信号を出力する出力増幅回路と、
を備え、
前記歪み補償増幅回路は、前記入力信号の電力に基づいて、前記出力増幅回路に入力される信号の電力の変化に対する前記出力増幅回路の位相の変化を補償するように、前記第1のゲインと、前記第2のゲインと、を制御する制御回路をさらに含む、
電力増幅回路。
【請求項2】
前記歪み補償増幅回路は、
前記第1の増幅器に第1のバイアスを供給し、前記第2の増幅器に第2のバイアスを供給するバイアス回路をさらに含み、
前記制御回路は、
前記入力信号の電力に基づいて、前記第1のバイアスと、前記第2のバイアスと、を制御する、
請求項1に記載の電力増幅回路。
【請求項3】
前記バイアス回路は、
前記第1の増幅器に前記第1のバイアスを供給する第1のトランジスタと、
前記第2の増幅器に前記第2のバイアスを供給する第2のトランジスタと、
を含み、
前記制御回路は、
第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、で差動対を構成する差動回路と、
前記第3のトランジスタのエミッタまたはソースと、前記第4のトランジスタのエミッタまたはソースと、の接続点から、電流を引き抜く第5のトランジスタと、
を含み、
前記第3のトランジスタは、コレクタまたはドレインが前記第1のトランジスタのベースまたはゲートと電気的に接続され、エミッタまたはソースが前記第5のトランジスタのコレクタまたはドレインと電気的に接続され、
前記第4のトランジスタは、ベースまたはゲートに前記入力信号の電力が供給され、コレクタまたはドレインが前記第2のトランジスタのベースまたはゲートと電気的に接続され、エミッタまたはソースが前記第5のトランジスタのコレクタまたはドレインと電気的に接続される、
請求項2に記載の電力増幅回路。
【請求項4】
前記出力増幅回路は、
前記増幅信号を、第1の増幅信号と、前記第1の増幅信号の位相と180度異なる位相の第2の増幅信号と、に分配する第2の分配回路と、
前記第1の増幅信号を増幅した第1の出力信号を出力する第3の増幅器と、
前記第2の増幅信号を増幅した第2の出力信号を出力する第4の増幅器と、
前記第1の出力信号と、前記第2の出力信号と、が合成された前記出力信号を出力する合成回路と
を含む、
請求項1に記載の電力増幅回路。
【請求項5】
前記歪み補償増幅回路は、
前記入力信号から分配された第1の入力信号を増幅した第1の増幅信号を出力する第1の増幅回路と、
前記入力信号が分配された、前記第1の入力信号と位相が90度異なる第2の入力信号を増幅した第2の増幅信号を出力する第2の増幅回路と、
を含み、
前記出力増幅回路は、
前記第1の増幅信号を増幅するピーク増幅回路と、
前記第2の増幅信号を増幅するキャリア増幅回路と、
を含み、
前記第1の増幅回路は、
前記第1の入力信号から分配された第3の信号を第3のゲインで増幅する第3の増幅器と、
前記第3の増幅器に並列接続される第4の増幅器であって、前記第1の入力信号から分配され、前記第3の信号と位相が異なる第4の信号を第4のゲインで増幅する第4の増幅器と、
前記入力信号の電力に基づいて、前記ピーク増幅回路に入力される信号の電力の変化に対する前記ピーク増幅回路の位相の変化を補償するように、前記第3のゲインと、前記第4のゲインと、を制御する第1の制御回路と、
を含む、
請求項1に記載の電力増幅回路。
【請求項6】
前記第2の増幅回路は、
前記第2の入力信号から分配された第5の信号を第5のゲインで増幅する第5の増幅器と、
前記第5の増幅器に並列接続される第6の増幅器であって、前記第2の入力信号から分配され、前記第5の信号と位相が異なる第6の信号を第6のゲインで増幅する第6の増幅器と、
前記入力信号の電力に基づいて、前記キャリア増幅回路に入力される信号の電力の変化に対する前記キャリア増幅回路の位相の変化を補償するように、前記第5のゲインと、前記第6のゲインと、を制御する第2の制御回路と、
を含む、
請求項5に記載の電力増幅回路。
【請求項7】
前記歪み補償増幅回路は、
前記入力信号が分配された第1の入力信号を増幅した第1の増幅信号を出力する第1の増幅回路と、
前記入力信号が分配された第2の入力信号を増幅した第2の増幅信号を出力する第2の増幅回路と、
を含み、
前記出力増幅回路は、
前記第1の増幅信号を増幅するピーク増幅回路と、
前記第2の増幅信号を増幅するキャリア増幅回路と、
を含み、
前記第1の増幅回路は、
前記第1の入力信号から分配された第3の信号を第3のゲインで増幅する第3の増幅器と、
前記第3の増幅器に並列接続される第4の増幅器であって、前記第1の入力信号から分配され、前記第3の信号と位相が異なる第4の信号を第4のゲインで増幅する第4の増幅器と、
前記入力信号の電力に基づいて、前記ピーク増幅回路に入力される信号の電力の変化に対する前記ピーク増幅回路の位相の変化を補償するように、前記第3のゲインと、前記第4のゲインと、を制御する第1の制御回路と、
を含み、
前記第2の増幅回路は、
前記第2の入力信号から分配された第5の信号を第5のゲインで増幅する第5の増幅器と、
前記第5の増幅器に並列接続される第6の増幅器であって、前記第2の入力信号から分配され、前記第5の信号と位相が異なる第6の信号を第6のゲインで増幅する第6の増幅器と、
前記入力信号の電力に基づいて、前記キャリア増幅回路に入力される信号の電力の変化に対する前記キャリア増幅回路の位相の変化を補償するように、前記第5のゲインと、前記第6のゲインと、を制御する第2の制御回路と、
を含み、
前記第1の制御回路および前記第2の制御回路の少なくとも一方は、前記第1の入力信号の位相と90度異なるように前記第2の入力信号の位相を調整する、
請求項1に記載の電力増幅回路。
【請求項8】
前記第1の増幅器は、
ベースまたはゲートに前記第1の信号が入力され、エミッタまたはソースが基準電位と電気的に接続される第1の前段トランジスタと、
エミッタまたはソースが基準電位と電気的に接続され、ベースまたはゲートが第1のキャパシタを通じて前記第1の前段トランジスタのエミッタまたはソースと電気的に接続される第1の後段トランジスタと、
を含み、
前記第2の増幅器は、
ベースまたはゲートに前記第2の信号が入力され、エミッタまたはソースが基準電位と電気的に接続される第2の前段トランジスタと、
エミッタまたはソースが基準電位と電気的に接続され、ベースまたはゲートが第2のキャパシタを通じて前記第2の前段トランジスタのエミッタまたはソースと電気的に接続される第2の後段トランジスタと、
を含み、
前記歪み補償増幅回路は、
前記第1の後段トランジスタのコレクタまたはドレインと、前記第2の後段トランジスタのコレクタまたはドレインと、の接続点から前記増幅信号を出力する、
請求項1に記載の電力増幅回路。
【請求項9】
前記バイアス回路は、
前記第1の増幅器に前記第1のバイアスを供給する第1のトランジスタと、
前記第2の増幅器に前記第2のバイアスを供給する第2のトランジスタと、
高周波成分を減衰させる第1のフィルタ回路と、
高周波成分を減衰させる第2のフィルタ回路と、
を含み、
前記第1のトランジスタは、前記制御回路から前記第1のバイアスを制御するための信号が、前記第1のフィルタ回路を通じてベースまたはゲートに入力され、
前記第2のトランジスタは、前記制御回路から前記第2のバイアスを制御するための信号が、前記第2のフィルタ回路を通じてベースまたはゲートに入力される、
請求項2に記載の電力増幅回路。
【請求項10】
前記第1のフィルタ回路は、
前記第1のトランジスタのベースまたはゲートと直列に接続される第1の抵抗素子と、
一端が前記第1のトランジスタのベースまたはゲートと電気的に接続され、他端が基準電位に接続される第1のキャパシタと、
前記第1のキャパシタと並列接続される第1の分圧抵抗素子と、
を含み、
前記第2のフィルタ回路は、
前記第2のトランジスタのベースまたはゲートと直列に接続される第2の抵抗素子と、
一端が前記第2のトランジスタのベースまたはゲートと電気的に接続され、他端が基準電位に接続される第2のキャパシタと、
前記第2のキャパシタと並列接続される第2の分圧抵抗素子と、
を含む、
請求項9に記載の電力増幅回路。
【請求項11】
前記第1のトランジスタと、前記第2のトランジスタと、前記第3のトランジスタと、前記第4のトランジスタと、前記第5のトランジスタと、が電界効果トランジスタで構成される、
請求項3に記載の電力増幅回路。
【請求項12】
前記制御回路は、
前記第3のトランジスタのドレインに、第1の電界効果トランジスタを通じて、前記第1のバイアスの大きさを調整するための制御信号が入力され、
前記第4のトランジスタのドレインに、第2の電界効果トランジスタを通じて前記制御信号が入力される、
請求項11に記載の電力増幅回路。
【請求項13】
前記歪み補償増幅回路は、シリコン基板に形成され、
前記出力増幅回路は、化合物半導体基板に形成される、
請求項1に記載の電力増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
無線及び衛星通信のような種々のマルチキャリア(多搬送波)通信システムにおいて、通信容量の改善および高いデータ通信速度のために、デジタル変調方式が広く使用されている。デジタル変調方式において伝送される情報は、変調された後、信号の振幅と位相の双方に含めて伝送される。特許文献1には、このような信号を増幅して伝送する場合に、信号の品質を低下させ得る振幅特性および位相特性の歪みを改善する線形増幅器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-223539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の線形増幅器では、ドライバ段の増幅器と並列にアクティブフィードフォワード型プレディストータが接続されている。アクティブフィードフォワード型プレディストータは、入力電力レベルの変化にともなって、最終段電力増幅器の利得および位相応答とは反対の利得および位相応答を持つように設計されている。すなわち、アクティブフィードフォワード型プレディストータは、最終段電力増幅器の非直線性を補償するように、ドライバ段の電力増幅器において入力信号を予め歪ませる。これにより、線形増幅器全体としての出力の線形性を改善することができる。
【0005】
しかし、アクティブフィードフォワード型プレディストータは、トランジスタで構成される最終段電力増幅器と異なる特性を有するダイオード(コンデンサを通じてコレクタが接地されているバイポーラトランジスタ)によって、最終段増幅器の非直線性を補償するよう構成されている。そのため、当該線形増幅器では、補償効果が得られる動作条件(例えば、周波数、温度、出力領域など)が限定されるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、より広い動作条件で信号の品質を改善可能な電力増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明の一側面に係る電力増幅回路は、歪み補償増幅回路であって、入力信号から分配された第1の信号を第1のゲインで増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器に並列接続される第2の増幅器であって、前記入力信号から分配され、前記第1の信号と位相が異なる第2の信号を第2のゲインで増幅する第2の増幅器と、を含み、前記第1の増幅器から出力される信号と、前記第2の増幅器から出力される信号と、が合成された増幅信号を出力する歪み補償増幅回路と、前記増幅信号を増幅した出力信号を出力する出力増幅回路と、を備え、前記歪み補償増幅回路は、前記入力信号の電力に基づいて、前記出力増幅回路に入力される信号の電力の変化に対する前記出力増幅回路の位相の変化を補償するように、前記第1のゲインと、前記第2のゲインと、を制御する制御回路をさらに含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より広い動作条件で信号の品質を改善可能な電力増幅回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る電力増幅回路の構成例を示す図である。
図2】歪み補償増幅回路の構成例を示す図である。
図3】歪み補償増幅回路の詳細な構成例を示す図である。
図4】トランジスタTr3およびトランジスタTr4のコレクタ電流と入力信号RFinとの関係を示すグラフである。
図5】トランジスタTr3およびトランジスタTr4のコレクタ電圧と入力信号RFinとの関係を示すグラフである。
図6】第1の変形例に係る歪み補償増幅回路の構成例を示す図である。
図7】第2の変形例に係る歪み補償増幅回路の構成例を示す図である。
図8】第3の変形例に係る歪み補償増幅回路の構成例を示す図である。
図9】第2実施形態に係る電力増幅回路の構成例を示す図である。
図10】第3実施形態に係る電力増幅回路の構成例を示す図である。
図11】第3実施形態に係る電力増幅回路の変形例を示す図である。
図12】第3実施形態に係る電力増幅回路の変形例を示す図である。
図13】電力増幅回路の各構成要素の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
===第1実施形態に係る電力増幅回路100a===
図1を参照して、第1実施形態に係る電力増幅回路100aについて説明する。図1は、第1実施形態に係る電力増幅回路100aの構成例を示す図である。図1に示す電力増幅回路100aは、例えば、携帯電話等の移動体通信機に搭載され、基地局に送信する無線周波数(RF:Radio-Frequency)信号の電力を増幅するために用いられる。
【0012】
電力増幅回路100aは、例えば、2G(第2世代移動通信システム)、3G(第3世代移動通信システム)、4G(第4世代移動通信システム)、5G(第5世代移動通信システム)、LTE(Long Term Evolution)-FDD(Frequency Division Duplex)、LTE-TDD(Time Division Duplex)、LTE-Advanced、LTE-Advanced Pro等の通信規格の信号の電力を増幅する。また、RF信号の周波数は、例えば数百MHz~数十GHz程度である。なお、電力増幅回路100aが増幅する信号の通信規格及び周波数はこれらに限られない。
【0013】
電力増幅回路100aは、入力信号RFinの変動に対する振幅および位相の非直線性を補償する回路である。電力増幅回路100aは、例えば、入力整合回路110、段間整合回路120、出力整合回路130、歪み補償増幅回路140、出力増幅回路150を備える。
【0014】
入力整合回路110は、歪み補償増幅回路140の前段に設けられ、入力端子t1と歪み補償増幅回路140とのインピーダンスを整合させる回路である。
【0015】
段間整合回路120は、歪み補償増幅回路140の後段に設けられ、歪み補償増幅回路140と出力増幅回路150とのインピーダンスを整合させる回路である。
【0016】
出力整合回路130は、出力増幅回路150の後段に設けられ、出力増幅回路150と出力端子t2の後段の回路(不図示)とのインピーダンスを整合させる回路である。
【0017】
歪み補償増幅回路140は、入力端子t1から入力整合回路110を通じて入力される入力信号RFinを増幅して、段間整合回路120を通じて出力増幅回路150に増幅信号RFapを出力する。歪み補償増幅回路140は、入力信号RFinから分岐された信号(以下、「入力制御信号RFs」という。)に基づき、出力増幅回路150の位相の変化を補償するように(出力増幅回路150の位相の変化と逆方向の位相の変化となるように)、位相を調整して増幅信号RFapを出力する。なお、出力増幅回路150の位相の変化とは、例えば出力増幅回路150から出力される信号の位相の変化を示し、以下において同様の表現が使われる場合も同じことを示す。
【0018】
出力増幅回路150は、歪み補償増幅回路140から出力される増幅信号RFapを増幅した出力信号RFoutを、出力整合回路130を通じて出力端子outに出力する。出力増幅回路150は、出力増幅器151と、出力バイアス回路152を含む。出力増幅器151は、例えばトランジスタを含んで構成され、増幅信号RFapを増幅して出力信号RFoutを出力する。出力バイアス回路152は、出力増幅器151(例えばトランジスタのベース)にゲインを調整するためのバイアスを供給する。
【0019】
歪み補償増幅回路140および出力増幅回路150は、例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)等のバイポーラトランジスタを含んで構成される。なお、歪み補償増幅回路140および出力増幅回路150は、HBTに替えて電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-oxide-semiconductor Field-Effect Transistor)を含んで構成されていてもよい。本実施形態では、歪み補償増幅回路140および出力増幅回路150は、バイポーラトランジスタで構成されるものとして説明する。
【0020】
このように、電力増幅回路100aでは、歪み補償増幅回路140と出力増幅回路150とが同じ線形性を有するため、広い動作条件(例えば、周波数、温度、出力領域など)において出力増幅回路150の位相の変化を補償することが可能となる。
【0021】
なお、本実施形態では、一例として、電力増幅回路100aが二段階で電力を増幅する構成を有することとして説明するが、これに限定されず例えば三段階以上で電力を増幅する構成を有していてもよい。
【0022】
<<歪み補償増幅回路140の構成>>
図2を参照して、歪み補償増幅回路140の構成の一例について説明する。図2は、歪み補償増幅回路140の構成例を示す図である。
【0023】
図2(a)に示すように、増幅回路140は、例えば、分配回路141、増幅器142、増幅器143、バイアス回路144、制御回路145を含む。
【0024】
分配回路141は、入力信号RFinを、信号RF11(第1の信号)と、信号RF11と位相が異なる信号RF12(第2の信号)とに分配する。電力増幅回路100aでは、一例として、分配回路141において、信号RF11と位相が90度異なる信号RF12に分配されることとして説明する。90度とは、略90度である場合も含み、例えば45度~125度の範囲を含む。分配回路141は、例えば、バラン、結合線路3dBカプラなどの分布定数回路、またはウィルキンソン型分配器やウェブ型分配器などを含んで構成されていてもよい。さらに、分配回路141は、例えば、1以上のインダクタと1以上の容量とを含む固定移相回路を含んでいても良い。図2では、信号RF11の位相をφで示し、信号RF12の位相をψで示す。
【0025】
増幅器増幅信号RFapは、信号RF11を増幅する。増幅器143は、信号RF12を増幅する。増幅器142および増幅器143のそれぞれは、後述する制御回路145によって制御されるバイアス回路144からバイアスが供給される。
【0026】
バイアス回路144は、増幅器142および増幅器143にバイアスを供給する。バイアス回路144は、供給するバイアスが後述する制御回路145によって制御される。以下、バイアス回路144から増幅器142に供給されるバイアスを「第1のバイアス」とし、バイアス回路144から増幅器143に供給されるバイアスを「第2のバイアス」として説明する。
【0027】
制御回路145は、バイアス回路144から供給される第1のバイアスおよび第2のバイアスのそれぞれの大きさを制御する回路である。制御回路145には、入力制御信号RFsが入力される。入力制御信号RFsは、例えば、入力端子inと入力整合回路110との間のノードn1(図1を参照)から入力信号RFinが分岐された信号である。また、制御回路145には、基準電流Irefおよび制御信号ctrlが入力される。
【0028】
このように、歪み補償増幅回路140は、分配回路141において入力信号RFinを略90度位相が異なる信号RF11および信号RF12に分配し、信号RF11を第1のバイアスが供給される増幅器142で増幅し、信号RF12を第2のバイアスが供給される増幅器143で増幅する。
【0029】
これにより、図2(b)に示すように、歪み補償増幅回路140は、ベクトルθで示すようなゲインおよび位相を示す増幅信号RFapを出力する。ベクトルφは、増幅器142から出力される信号を示し、当該信号の大きさをベクトルの長さで示し、当該信号の位相をベクトルの方向で示したものである。同様に、ベクトルψは、増幅器143から出力される信号を示したものである。
【0030】
すなわち、歪み補償増幅回路140は、入力信号RFinの電力に基づいて、出力増幅回路150に入力される信号の電力の変化に対する出力増幅回路150の位相の変化を補償するように、増幅器142のゲイン(第1のゲイン)と、増幅器143のゲイン(第2のゲイン)とを制御する。このように、歪み補償増幅回路140は、増幅器142のゲインと、増幅器143のゲインとを制御することによって、出力増幅回路150の位相の変化を補償可能な、位相が調整された増幅信号RFapを出力することができる。
【0031】
<<歪み補償増幅回路140の詳細な構成>>
図3を参照して、歪み補償増幅回路140の詳細な構成について説明する。図3は、歪み補償増幅回路140の詳細な構成例を示す図である。以下では、便宜上、制御回路145、バイアス回路144および増幅器142,143の順に説明する。
【0032】
制御回路145は、基準回路145aと、バイアス制御回路145bとを含む。
【0033】
基準回路145aは、バイアス制御回路145bに基準電流を供給する回路である。基準回路145aは、ダイオード接続されたトランジスタD1と、ダイオード接続されたトランジスタD2とが、抵抗R11を通じて直列に接続される。トランジスタD1のコレクタ(アノード)には基準電流Irefが供給される。トランジスタD1のベースは、高周波成分を減衰させるためのキャパシタC11を通じて、基準電位と電気的に接続される。トランジスタD2のエミッタ(カソード)は基準電位と電気的に接続される。
【0034】
バイアス制御回路145bは、入力制御信号RFs(入力信号RFin)の電力に基づき、バイアス回路144から供給される第1のバイアスおよび第2のバイアスのそれぞれの大きさを制御する回路である。バイアス制御回路145bは、トランジスタTr3と、トランジスタTr4と、トランジスタTr5とを含む。トランジスタTr3とトランジスタTr4とは差動対を形成する。
【0035】
トランジスタTr3は、ベースが抵抗R21を通じてトランジスタD1のベースと電気的に接続され、コレクタには抵抗R22を通じて制御信号ctrlが入力され、エミッタが抵抗R23を通じてトランジスタTr5のコレクタと電気的に接続される。トランジスタTr3のベースは、高周波成分を減衰させるためのキャパシタC21を通じて、基準電位と電気的に接続される。トランジスタTr3のコレクタは、バイアス回路144のトランジスタTr1のベースと電気的に接続される。
【0036】
トランジスタTr4は、ベースが抵抗R24を通じてトランジスタD1のベースと電気的に接続され、コレクタには抵抗R25を通じて制御信号ctrlが入力され、エミッタが抵抗R26を通じてトランジスタTr5のコレクタと電気的に接続される。トランジスタTr4のベースには、キャパシタC22を通じて入力制御信号RFsが入力される。トランジスタTr4のコレクタは、バイアス回路144のトランジスタTr2のベースと電気的に接続される。
【0037】
トランジスタTr5は、ベースが抵抗R27を通じてトランジスタD2のベースと電気的に接続され、エミッタが基準電位と電気的に接続される。
【0038】
バイアス回路144は、トランジスタTr1、トランジスタTr2、フィルタ回路144a、フィルタ回路144bを含む。
【0039】
トランジスタTr1は、ベースがフィルタ回路144aを通じてトランジスタTr3のコレクタと電気的に接続され、コレクタには定電圧Vbattが供給され、エミッタが後述する増幅器142のトランジスタTr6のベースと電気的に接続される。
【0040】
トランジスタTr2は、ベースがフィルタ回路144bを通じてトランジスタTr4のコレクタと電気的に接続され、コレクタには定電圧Vbattが供給され、エミッタが後述する増幅器143のトランジスタTr7のベースと電気的に接続される。
【0041】
フィルタ回路144aおよびフィルタ回路144bは、高周波成分を減衰させる回路である。
【0042】
増幅器142は、分配回路141で分配される信号RF11を増幅する回路である。増幅器142は、トランジスタTr6、抵抗R31、キャパシタC31、抵抗R32を含む。トランジスタTr6は、ベースにはキャパシタC31を通じて信号RF11が入力され、コレクタは出力端子t20と電気的に接続され、エミッタは抵抗R32を通じて基準電位と電気的に接続される。トランジスタTr6のベースには、抵抗R31を通じてバイアス回路144のトランジスタTr1のエミッタが電気的に接続され、バイアスが供給される。
【0043】
増幅器143は、分配回路141で分配される、信号RF11と位相が異なる信号RF12を増幅する回路である。増幅器143は、トランジスタTr7、抵抗R33、キャパシタC32、抵抗R34を含む。トランジスタTr7は、ベースにはキャパシタC32を通じて信号RF12が入力され、コレクタは出力端子t20と電気的に接続され、エミッタは抵抗R34を通じて基準電位と電気的に接続される。トランジスタTr7のベースには、抵抗R33を通じてバイアス回路144のトランジスタTr2のエミッタが電気的に接続され、バイアスが供給される。
【0044】
<<歪み補償増幅回路140の動作>>
次に、図3図4図5を参照して、歪み補償増幅回路140の動作について説明する。図4は、トランジスタTr3およびトランジスタTr4のコレクタ電流と入力信号RFinとの関係を示すグラフである。図4では、縦軸がコレクタ電流(A)の大きさを示し、横軸が入力信号RFinの大きさ(dBm)を示す。図5は、トランジスタTr3およびトランジスタTr4のコレクタ電圧と入力信号RFinとの関係を示すグラフである。図5では、縦軸がコレクタ電圧(V)を示し、横軸が入力信号RFinの電力(dBm)を示す。
【0045】
制御回路145では、差動対のトランジスタTr3およびトランジスタTr4のコレクタに一定の電圧の制御信号ctrlが供給される。また、トランジスタTr3、トランジスタTr4およびトランジスタTr5のベースには、基準回路145aから一定のバイアスが供給される。すなわち、制御回路145では、差動対のトランジスタTr3およびトランジスタTr4のエミッタからトランジスタTr5によって一定電流が引き抜かれる。そして、トランジスタTr4のベースには、入力制御信号RFsが入力される。
【0046】
入力制御信号RFsの電力が増加する場合(入力信号RFinの電力が増加する場合)、トランジスタTr4のエミッタ電流が増加する一方で、トランジスタTr3のエミッタ電流およびトランジスタTr4のエミッタ電流を合成した電流が一定であるため、トランジスタTr3のエミッタ電流は減少する。同様に、入力制御信号RFsの電力が減少する場合、トランジスタTr4のエミッタ電流は減少する。
【0047】
このように、制御回路145は、入力信号RFinの電力に基づき、トランジスタTr3およびトランジスタTr4のいずれかのエミッタ電流が大きくなると、他方のエミッタ電流が小さくなるように動作する。すなわち、制御回路145は、入力信号RFinの電力が増加するにしたがって、トランジスタTr3およびトランジスタTr4のエミッタ電流がよりアンバランスになるように動作する。
【0048】
バイアス回路144では、トランジスタTr3およびトランジスタTr4のコレクタ電流に対応する電流が、トランジスタTr1のベースおよびトランジスタTr2のベースに供給される。
【0049】
図4に示すように、バイアス回路144では、上述したように、入力制御信号RFsの電力(横軸の入力信号RFin)が増加するにしたがって、トランジスタTr4のコレクタ電流(破線)が増加する。すなわち、トランジスタTr2のベース電流が増加するため、エミッタ電流が増加する。これにより、増幅器143では、抵抗33における電圧降下が増加するため、増幅器143のコレクタ電流が減少する。
【0050】
一方、図4に示すように、バイアス回路144では、入力制御信号RFsの電力(横軸の入力信号RFin)が増加するにしたがって、トランジスタTr3のコレクタ電流(実線)が減少する。すなわち、トランジスタTr1のベース電流が減少するため、エミッタ電流が減少する。これにより、増幅器142では、抵抗31における電圧降下が減少するため、増幅器142のコレクタ電流が増加する。ここで、図5に示すように、トランジスタTr4のコレクタ電圧は、コレクタ電流とは逆の特性を示す。
【0051】
このように、歪み補償増幅回路140では、入力信号RFinの電力が増加するにしたがって、増幅器142と増幅器143の出力がアンバランスとなる。アンバランスの程度は、例えば、基準電流Irefおよび制御信号ctrlを調整することによって設定可能である。なお、位相特性の変化方向は、入力制御信号RFsが入力されるトランジスタを切り替える(ここではトランジスタTr3に切り替える)ことで調整可能である。
【0052】
すなわち、歪み補償増幅回路140では、図2(b)のベクトル図における、増幅器142の出力の大きさを示すベクトルφの長さと、増幅器143の出力の大きさを示すベクトルψの長さとが調整されて、出力の位相を調整する。また、歪み補償増幅回路140の分配回路141は、ベクトルφとベクトルψとの位相差を調整可能である。このように、歪み補償増幅回路140は、入力信号RFinの電力に基づき、分配回路141で増幅器142と増幅器143との位相差を調整し、さらに増幅器142と増幅器143とのバイアス(ゲイン)を調整することにより、出力増幅回路150の位相の変化と逆方向に位相が変化する増幅信号RFapを出力できる。
【0053】
以上から、出力増幅回路150の位相特性を予め特定し、当該位相特性と逆の方向に変化する位相特性を有する歪み補償増幅回路140を設けることにより、電力増幅回路100aの利得の線形性を改善できる。
【0054】
<<第1の変形例>>
図6を参照して、電力増幅回路100aの第1の変形例について説明する。図6は、第1の変形例に係る歪み補償増幅回路140aの構成例を示す図である。
【0055】
図6に示すように、第1の変形例に係る歪み補償増幅回路140aは、増幅器142aおよび増幅器143aがキャパシタを通じてダーリントン接続されたトランジスタを含んで構成される。
【0056】
増幅器142aは、トランジスタTr6aと、トランジスタTr6bと、抵抗R31aと、抵抗R31aと、抵抗R32aと、抵抗R32bと、キャパシタC31aと、キャパシタC31bとを含む。
【0057】
トランジスタTr6a(第1の前段トランジスタ)は、ベースにキャパシタC31aを通じて信号RF11が入力され、エミッタが抵抗R32aを通じて基準電位と電気的に接続され、コレクタが出力端子t20と電気的に接続される。トランジスタTr6aのベースには、抵抗R31aを通じてバイアス回路144のトランジスタtr1aのエミッタと電気的に接続され、バイアスが供給される。
【0058】
トランジスタTr6b(第1の後段トランジスタ)は、ベースがキャパシタC31bを通じてトランジスタTr6aのエミッタと電気的に接続され、エミッタが抵抗R32bを通じて基準電位と電気的に接続され、コレクタが出力端子t20と電気的に接続される。言い換えると、トランジスタTr6bのベースは、キャパシタC31bを通じて基準電位と電気的に接続されている。また、トランジスタTr6bのベースには、抵抗R31bを通じてバイアス回路144のトランジスタtr1bのエミッタと電気的に接続され、バイアスが供給される。
【0059】
バイアス回路144は、増幅器142aがダーリントン接続されたトランジスタtr6aおよびトランジスタtr6bのそれぞれにバイアスを供給するための、トランジスタTr1aおよびトランジスタtr1bを備える。トランジスタTr1aおよびトランジスタtr1bのそれぞれは、トランジスタTr1と同様であるため、その説明を省略する。
【0060】
このように、増幅器142aは、トランジスタTr6aとトランジスタTr6bとをキャパシタC31bを通じてダーリントン接続して構成されている。通常のダーリントン接続では、キャパシタC31bを介さずに、二つのトランジスタを電気的に接続する。仮に、この場合、トランジスタTr6aのベース電位が、トランジスタTr6bのベースエミッタ間電圧と、自らのベースエミッタ間電圧との二つ分のベースエミッタ間電圧上昇する。また、トランジスタTr6aは、バイアス回路144のトランジスタTr1aからバイアスが供給される。すなわち、トランジスタTr6aとトランジスタTr6bとをキャパシタC31bを介さずにダーリントン接続する場合、バイアス回路144のトランジスタTr1aのコレクタに供給する電源電圧は、三つ分のベースエミッタ間電圧が必要となり、高い電源電圧を用いる必要があるという問題が生じる。
【0061】
第1の変形例に係る歪み補償増幅回路140aでは、キャパシタC31bを通じてトランジスタTr6aとトランジスタTr6bとをダーリントン接続することにより、低い電源電圧で構成することが可能となる。具体的には、トランジスタTr6bのベースは、キャパシタC31bを通じて基準電位と電気的に接続されているため、キャパシタC31bのラインが直流パスとなる。よって、トランジスタTr6aは、キャパシタC31bを設けていない場合は二つ分のベースエミッタ間電圧上昇するところ、一つ分のベースエミッタ間電圧だけ上昇する。これにより、電力増幅回路100aは低い電源電圧Vbattで位相の変化を補償できる。
【0062】
<<第2の変形例>>
図7を参照して、電力増幅回路100aの第2の変形例について説明する。図7は、第2の変形例に係る歪み補償増幅回路140bの構成例を示す図である。
【0063】
図7に示すように、第2の変形例に係る歪み補償増幅回路140bは、上記におけるバイポーラに替えて電界効果トランジスタで構成されている。また、第2の変形例に係る歪み補償増幅回路140bのバイアス制御回路145bにおいて、トランジスタTr3のドレインには、抵抗素子(図3の抵抗R22)に替えて電界効果トランジスタであるトランジスタTr8を通じて制御信号ctrlが入力され、トランジスタTr4のドレインには、抵抗素子(図3の抵抗R25)に替えて電界効果トランジスタであるトランジスタTr9を通じて制御信号ctrlが入力される。トランジスタTr9は、ソースとゲートとが電気的に接続される。
【0064】
第2の変形例に係る歪み補償増幅回路140bでは、バイアス制御回路145bにおいて抵抗素子に替えて能動負荷であるトランジスタTr8およびトランジスタtr9を用いることにより、抵抗値の絶対値のばらつきによる出力電圧が不安定になるという問題を解消することができる。
【0065】
<<第3の変形例>>
図8を参照して、電力増幅回路100aの第3の変形例について説明する。図8は、第3の変形例に係る歪み補償増幅回路140cの構成例を示す図である。
【0066】
図8に示すように、第3の変形例に係る歪み補償増幅回路140cのバイアス回路144は、キャパシタと抵抗とで形成されるフィルタ回路144aおよびフィルタ回路144bを含む。
【0067】
フィルタ回路144aは、キャパシタC41、抵抗R41(第1の分圧抵抗素子)、抵抗R42(第1の抵抗素子)を含む。キャパシタC41は、一端がトランジスタTr1のベースと電気的に接続され、他端が基準電位と電気的に接続される。抵抗R41は、キャパシタC41と並列に接続される。トランジスタTr1のベースは、抵抗R42を通じてトランジスタTr3のコレクタと電気的に接続される。すなわち、抵抗R42はトランジスタTr1のベースと直列に接続される。
【0068】
フィルタ回路144bは、キャパシタC42、抵抗R43(第2の分圧抵抗素子)、抵抗R44(第2の抵抗素子)を含む。キャパシタC42は、一端がトランジスタTr2のベースと電気的に接続され、他端が基準電位と電気的に接続される。抵抗R43は、キャパシタC42と並列に接続される。トランジスタTr2のベースは、抵抗R44を通じてトランジスタTr4のコレクタと電気的に接続される。すなわち、抵抗R44はトランジスタTr2のベースと直列に接続される。
【0069】
第3の変形例に係る歪み補償増幅回路140cでは、簡易な回路設計によって高周波成分を適切に減衰させることができる。
【0070】
===第2実施形態に係る電力増幅回路100b===
図9を参照して、第2実施形態に係る電力増幅回路100bについて説明する。図9は、第2実施形態に係る電力増幅回路100bの構成例を示す図である。なお、以下では、第1実施形態に係る電力増幅回路100aと共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については逐次言及しない。
【0071】
図9に示すように、電力増幅回路100bは、図1の電力増幅回路100aと比べて、出力増幅回路150aが差動増幅回路で構成されている。具体的には、電力増幅回路100bの出力増幅回路150aは、増幅器151aと、増幅器151bと、出力バイアス回路152と、分配回路153と、合成回路154とを含む。
【0072】
分配回路153は、歪み補償増幅回路140から出力される増幅信号RFapを、第1の増幅信号RFap1と、第1の増幅信号RFap1の位相と180度異なる位相の第2の増幅信号RFap2とに分配する回路である。180度とは、略180度である場合も含み、例えば135度~225度の範囲を含む。分配回路153は、例えば、バラン、結合線路3dBカプラなどの分布定数回路、またはウィルキンソン型分配器やウェブ型分配器などであってもよい。
【0073】
増幅器151aは、増幅信号RFap1を増幅して出力信号RFout1を出力する増幅器である。増幅器151bは、増幅信号RFap2を増幅して出力信号RFout2を出力する増幅器である。このように、出力増幅回路150aは、増幅器151aと増幅器151bとが差動対を形成するように構成されている。
【0074】
出力バイアス回路152は、増幅器151aおよび増幅器151bにバイアスを供給する回路である。
【0075】
合成回路154は、出力信号RFout1と出力信号RFout2とを合成して出力信号RFoutを出力する回路である。
【0076】
電力増幅回路100bでは、出力増幅回路150aを差動対で構成することによって、歪み補償増幅回路140で利得の線形性を改善するとともに、高出力、高利得動作が可能となる。
【0077】
===第3実施形態に係る電力増幅回路100c===
図10を参照して、第3実施形態に係る電力増幅回路100cについて説明する。図10は、第3実施形態に係る電力増幅回路100cの構成例を示す図である。なお、以下では、第1実施形態に係る電力増幅回路100aと共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については逐次言及しない。
【0078】
電力増幅回路100cは、図1の電力増幅回路100aと比べて、出力増幅回路150bがドハティ増幅回路で構成されている。そして、電力増幅回路100cは、例えば、ドライバ段の増幅回路が図1の歪み補償増幅回路140ではなく位相特性を調整する機能を有さない増幅回路140aを含み、出力増幅回路150bに電力増幅回路100aの歪み補償増幅回路140の機能を有する増幅回路(歪み補償増幅回路155,156)を含むように構成される。
【0079】
出力増幅回路150bは、ピーク増幅回路151cと、キャリア増幅回路151dと、バイアス回路152aと、分配回路153と、合成回路154と、歪み補償増幅回路155と、段間整合回路156a~156dとを含む。
【0080】
分配回路153は、ドライバ段の増幅回路140aから出力される増幅信号RFapを、増幅信号RFap10と、増幅信号RFap10の位相と90度異なる位相の増幅信号RFap20とに分配する回路である。分配回路153は、例えばバラン、結合線路3dBカプラなどの分布定数回路、またはウィルキンソン型分配器やウェブ型分配器などを含んで構成されていてもよい。
【0081】
歪み補償増幅回路155は、歪み補償増幅回路155aと、歪み補償増幅回路155bとを含む。歪み補償増幅回路155aおよび歪み補償増幅回路155bは、例えば図1の歪み補償増幅回路140と同様の機能を有する回路である。すなわち、歪み補償増幅回路155aおよび歪み補償増幅回路155bには、ドライバ段の増幅回路140から出力される増幅信号(入力信号RFinに対応する信号)からノードn2で分岐された入力制御信号RFsが入力される。また、歪み補償増幅回路155aおよび歪み補償増幅回路155bは、例えば、図1の歪み補償増幅回路140における増幅器142に対応する増幅器(第3の増幅器,第5の増幅器)および増幅器143(第4の増幅器,第6の増幅器)のそれぞれに対応する増幅器を備える。
【0082】
歪み補償増幅回路155a(第1の増幅回路)は、入力制御信号RFsに基づき、後述するピーク増幅回路151cに入力される信号の電力の変化に対するピーク増幅回路151cの位相の変化を補償するように、図3の増幅器142に対応する増幅器(第3の増幅器)のゲイン(第3のゲイン)と、図3の増幅器143に対応する増幅器(第4の増幅器)のゲイン(第4のゲイン)とを制御する。歪み補償増幅回路155aの構成は、図3と同様の構成であるとして、その説明を省略する。歪み補償増幅回路155aは、増幅信号RFap10を増幅して増幅信号RFap11を出力する。
【0083】
歪み補償増幅回路155b(第2の増幅回路)は、入力制御信号RFsの電力に基づき、後述するキャリア増幅回路151dに入力される信号の電力の変化に対するキャリア増幅回路151dの位相の変化を補償するように、図3の増幅器142に対応する増幅器(第5の増幅器)のゲイン(第5のゲイン)と、図3の増幅器143に対応する増幅器(第6の増幅器)のゲイン(第6のゲイン)とを制御する。歪み補償増幅回路155bの構成は、図3と同様の構成であるとして、その説明を省略する。歪み補償増幅回路155bは、増幅信号RFap20を増幅して増幅信号RFap21を出力する。
【0084】
ピーク増幅回路151cは、歪み補償増幅回路155aから出力される増幅信号RFap11が段間整合回路156aを通じて入力される。ピーク増幅回路151cは、増幅信号RFap11を増幅して増幅信号RFap12を出力する。ピーク増幅回路151cは、例えば、入力される信号の電圧レベルが所定の電力レベル以上の領域において増幅作用を有する。また、ピーク増幅回路151cは、使用条件によって、A級、AB級、B級、C級にバイアスされてもよい。
【0085】
キャリア増幅回路151dは、歪み補償増幅回路155bから出力される増幅信号RFap21が段間整合回路156bを通じて入力される。キャリア増幅回路151dは、増幅信号RFap21を増幅して増幅信号RFap22を出力する。キャリア増幅回路151dは、例えば、A級、AB級またはB級にバイアスされる。すなわち、キャリア増幅回路151dは、小さい瞬時入力電力など入力信号の電力レベルに関係なく、入力される信号を増幅して増幅信号を出力する。
【0086】
合成回路154は、例えば、ピーク増幅回路151cから出力される増幅信号RFap12と、キャリア増幅回路151dから出力される増幅信号RFap22と、が合成された出力信号RFoutを出力する。
【0087】
電力増幅回路100cでは、例えば、出力増幅回路150bをドハティ増幅回路で構成することによって、ピーク増幅回路151cが動作するとその働きにより負荷インピーダンスが半分の値となる。これにより、電力増幅回路100cのバックオフ効率が改善される。さらに、電力増幅回路100cでは、出力増幅回路150bのキャリア増幅回路151dおよびピーク増幅回路151cのそれぞれに、入力信号RFinの電力の変化に基づく位相の変化を改善するための歪み補償増幅回路155a,155bを設けることにより、利得の線形性を改善することができる。
【0088】
<<第4の変形例>>
図11を参照して、第3実施形態に係る電力増幅回路100cの変形例について説明する。図11は、第3実施形態に係る電力増幅回路100cの変形例を示す図である。
【0089】
図11に示すように、第4の変形例に係る電力増幅回路100cは、図10の電力増幅回路100cと比べて、出力増幅回路150cにおいて、ピーク増幅回路151cには歪み補償増幅回路155が設けられるものの、キャリア増幅回路151dには図10に示す歪み補償増幅回路155bに替えて位相特性を調整する機能を有さない増幅回路155cが設けられて構成されている。すなわち、第4の変形例に係る電力増幅回路100cは、ピーク増幅回路151cのみの位相特性を補償するように構成されている。
【0090】
ピーク増幅回路151cは、キャリア増幅回路151dに比べて低いバイアスで動作させる必要があるため、出力信号の位相がキャリア増幅回路151dの出力信号の位相より歪みやすい。第4の変形例に係る電力増幅回路100cでは、出力信号の位相がより歪むピーク増幅回路151cの位相の変化を補償することによって、簡易な回路構成により利得の線形性を改善することができる。
【0091】
<<第5の変形例>>
図12を参照して、第3実施形態に係る電力増幅回路100cの変形例について説明する。図12は、第3実施形態に係る電力増幅回路100cの変形例を示す図である。
【0092】
図12に示すように、第5の変形例に係る電力増幅回路100cは、図10の電力増幅回路100cと比べて、出力増幅回路150dの分配回路153が、例えば、増幅信号RFap10と、増幅信号RFap10と同相の増幅信号RFap20とを分配する。
【0093】
歪み補償増幅回路155bは、増幅信号RFap10の位相と90度異なるように増幅信号RFap20の位相を調整する。さらに、歪み補償増幅回路155bは、入力制御信号RFsの電力に基づき、キャリア増幅回路151dに入力される信号の電力の変化に対するキャリア増幅回路151dの位相の変化を補償するように、図3の増幅器142に対応する増幅器(第5の増幅器)のゲイン(第5のゲイン)と、図3の増幅器143に対応する増幅器(第6の増幅器)のゲイン(第6のゲイン)とを制御する。歪み補償増幅回路155bの構成は、図3と同様の構成であるとして、その説明を省略する。なお、図12においては、歪み補償増幅回路155a、155bのそれぞれは、ピーク増幅回路151cおよびキャリア増幅回路151dのそれぞれの前段に設けられているように説明したがこれに限定されない。例えば、歪み補償増幅回路は、ピーク増幅回路151cの前段のみ、或いは、キャリア増幅回路151dの前段のみに設けられていてもよい。
【0094】
第5の変形例に係る電力増幅回路100cでは、段間整合回路を削減でき、ピーク増幅回路151cおよびキャリア増幅回路151dの位相の変化を補償することができるため、簡易な回路構成により線形性を改善することができる。
【0095】
===電力増幅回路の配置===
図13を参照して、電力増幅回路100aの各構成要素の配置について説明する。図13は、電力増幅回路100aの各構成要素の配置例を示す図である。
【0096】
図13に示すように、電力増幅回路100aにおいて、例えば、入力整合回路110および歪み補償増幅回路140がシリコンを含む基板材料とする半導体集積回路(図13の一点鎖線)に実装され、段間整合回路120および出力増幅回路150が化合物半導体基板とする集積回路(図13の二点鎖線)に実装され、出力整合回路130がパッケージ基板に実装される。化合物半導体基板は、例えばガリヒ素で構成される。
【0097】
すなわち、電力増幅回路100aは、ドライバ段の増幅回路が形成されるシリコンのチップと、パワー段の増幅回路が形成される化合物のチップとの二つのチップで構成される。このように、電力増幅回路100aでは、ドライバ段の増幅回路をシリコンのチップに形成することにより、配線の微細化が可能となり、回路を小型化でき、低コスト化を図ることができる。
【0098】
以下において、図9図12に示す電力増幅回路の各構成要素の配置について説明する。
【0099】
図9に示す電力増幅回路100bでは、入力整合回路110および歪み補償増幅回路140がシリコンを基板材料とする半導体集積回路に実装され、分配回路153および出力増幅回路150aが化合物半導体基板とする集積回路に実装され、出力整合回路130がパッケージ基板に実装されていてもよい。
【0100】
図10に示す電力増幅回路100cでは、入力整合回路110、増幅回路140a、バイアス回路140b1、分配回路153、段間整合回路156a,156cおよび歪み補償増幅回路155a,155bがシリコンを基板材料とする半導体集積回路に実装され、段間整合回路156b,156d、ピーク増幅回路151c、キャリア増幅回路151d、バイアス回路152aおよび合成回路154が化合物半導体基板とする集積回路に実装され、出力整合回路130がパッケージ基板に実装されていてもよい。図11および図12も同様に、段間整合回路156b,156dよりも入力側の各構成要素がシリコンを基板材料とする半導体集積回路に実装される。
【0101】
これにより、電力増幅回路100bおよび電力増幅回路100cにおいても電力増幅回路100aと同様に、配線の微細化が可能となり、回路を小型化でき、低コスト化を図ることができる。
【0102】
===まとめ===
<1>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100aは、歪み補償増幅回路140であって、入力信号RFinから分配された信号RF11(第1の信号)を第1のゲインで増幅する増幅器142(第1の増幅器)と、増幅器142(第1の増幅器)に並列接続される増幅器143(第2の増幅器)であって、入力信号RFinから分配され、信号RF11(第1の信号)と位相が異なる信号RF12(第2の信号)を第2のゲインで増幅する増幅器143(第2の増幅器)と、を含み、増幅器142(第1の増幅器)から出力される信号と、増幅器143(第2の増幅器)から出力される信号と、が合成された増幅信号RFapを出力する歪み補償増幅回路140と、増幅信号RFapを増幅した出力信号RFoutを出力する出力増幅回路150と、を備え、歪み補償増幅回路140は、入力信号RFinの電力に基づいて、出力増幅回路150に入力される信号の電力の変化に対する出力増幅回路150の位相の変化を補償するように、第1のゲインと、第2のゲインと、を制御する制御回路145をさらに含む。これにより、電力増幅回路100aは、より広い動作条件において、利得の線形性を改善可能となり、信号の品質を改善することができる。
【0103】
<2>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100aは、歪み補償増幅回路140は、増幅器142(第1の増幅器)に第1のバイアスを供給し、増幅器143(第2の増幅器)に第2のバイアスを供給するバイアス回路144をさらに含み、制御回路145は、入力信号RFinの電力に基づいて、第1のバイアスと、第2のバイアスと、を制御する。これにより、電力増幅回路100aは、利得の線形性を改善可能となり、信号の品質を改善することができる。
【0104】
<3>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100aにおいて、バイアス回路144は、増幅器142(第1の増幅器)に第1のバイアスを供給するトランジスタTr1(第1のトランジスタ)と、増幅器143(第2の増幅器)に第2のバイアスを供給するトランジスタTr2(第2のトランジスタ)と、を含み、制御回路145は、トランジスタTr3(第3のトランジスタ)と、トランジスタTr4(第4のトランジスタ)と、で差動対を構成する差動回路と、トランジスタTr3(第3のトランジスタ)のエミッタまたはソースと、トランジスタTr4(第4のトランジスタ)のエミッタまたはソースと、の接続点から、電流を引き抜くトランジスタTr5(第5のトランジスタ)と、を含み、トランジスタTr3(第3のトランジスタ)は、コレクタまたはドレインがトランジスタTr1(第1のトランジスタ)のベースまたはゲートと電気的に接続され、エミッタまたはソースがトランジスタTr5(第5のトランジスタ)のコレクタまたはドレインと電気的に接続され、トランジスタTr4(第4のトランジスタ)は、ベースまたはゲートに入力信号RFinの電力が供給され、コレクタまたはドレインがトランジスタTr2(第2のトランジスタ)のベースまたはゲートと電気的に接続され、エミッタまたはソースがトランジスタTr5(第5のトランジスタ)のコレクタまたはドレインと電気的に接続される、を含む<1>または<2>に記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100aは、利得の線形性を改善可能となり、信号の品質を改善することができる。
【0105】
<4>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100bにおいて、出力増幅回路150aは、増幅信号RFapを、増幅信号RFap1(第1の増幅信号)と、増幅信号RFap1(第1の増幅信号)の位相と180度異なる位相の増幅信号RFap2(第2の増幅信号)と、に分配する分配回路153(第2の分配回路)と、増幅信号RFap1(第1の増幅信号)を増幅した出力信号RFout1(第1の出力信号)を出力する増幅器151a(第3の増幅器)と、増幅信号RFap2(第2の増幅信号)を増幅した第2の出力信号を出力する第4の増幅器と、出力信号RFout1(第1の出力信号)と、出力信号RFout2(第2の出力信号)と、が合成された出力信号RFoutを出力する合成回路154とを含む、<1>から<3>のいずれか一つに記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100bでは、歪み補償増幅回路140で利得の線形性を改善するとともに、高出力、高利得動作が可能となる。
【0106】
<5>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100cにおいて、歪み補償増幅回路は、入力信号RFin(図10では増幅信号RFap)から分配された増幅信号RFap10(第1の入力信号)を増幅した増幅信号RFap11(第1の増幅信号)を出力する歪み補償増幅回路155a(第1の増幅回路)と、入力信号RFin(図10では増幅信号RFap)が分配された、増幅信号RFap10(第1の入力信号)と位相が90度異なる増幅信号RFap20(第2の入力信号)を増幅した増幅信号RFap21(第2の増幅信号)を出力する増幅回路155c(第2の増幅回路)と、を含み、出力増幅回路150bは、増幅信号RFap11(第1の増幅信号)を増幅するピーク増幅回路151cと、増幅信号RFap21(第2の増幅信号)を増幅するキャリア増幅回路151dと、を含み、歪み補償増幅回路155a(第1の増幅回路)は、増幅信号RFap10(第1の入力信号)から分配された第3の信号(図3の信号RF11)を第3のゲインで増幅する第3の増幅器(図3の増幅器142)と、第3の増幅器(図3の増幅器142)に並列接続される第4の増幅器(図3の増幅器143)であって、増幅信号RFap10(第1の入力信号)から分配され、第3の信号(図3の信号RF11)と位相が異なる第4の信号(図3の信号RF12)を第4のゲインで増幅する第4の増幅器(図3の増幅器143)と、入力信号RFinの電力に基づいて、ピーク増幅回路151cに入力される信号の電力の変化に対するピーク増幅回路151cの位相の変化を補償するように、第3のゲインと、第4のゲインと、を制御する第1の制御回路(図3の制御回路145)と、を含む<1>から<3>のいずれか一つに記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100cは、バックオフ効率を改善するとともに、利得の線形性を改善することができる。
【0107】
<6>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100cにおいて、歪み補償増幅回路155b(第2の増幅回路)は、増幅信号RFap20(第2の入力信号)から分配された第5の信号(図3の信号RF11)を第5のゲインで増幅する第5の増幅器(図3の増幅器142)と、第5の増幅器(図3の増幅器142)に並列接続される第6の増幅器(図3の増幅器143)であって、増幅信号RFap20(第2の入力信号)から分配され、第5の信号(図3の信号RF11)と位相が異なる第6の信号(図3の信号RF12)を第6のゲインで増幅する第6の増幅器(図3の増幅器143)と、入力信号RFinの電力に基づいて、キャリア増幅回路151dに入力される信号の電力の変化に対するキャリア増幅回路151dの位相の変化を補償するように、第5のゲインと、第6のゲインと、を制御する第2の制御回路(図3の制御回路145)と、を含む<5>に記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100cは、バックオフ効率を改善するとともに、利得の線形性を改善することができる。
【0108】
<7>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100cにおいて、歪み補償増幅回路は、入力信号RFinが分配された増幅信号RFap10(第1の入力信号)を増幅した増幅信号RFap11(第1の増幅信号)を出力する歪み補償増幅回路155a(第1の増幅回路)と、入力信号RFinが分配された増幅信号RFap20(第2の入力信号)を増幅した増幅信号RFap21(第2の増幅信号)を出力する歪み補償増幅回路155b(第2の増幅回路)と、を含み、出力増幅回路150dは、増幅信号RFap11(第1の増幅信号)を増幅するピーク増幅回路151cと、増幅信号RFap21(第2の増幅信号)を増幅するキャリア増幅回路151dと、を含み、歪み補償増幅回路155a(第1の増幅回路)は、増幅信号RFap10(第1の入力信号)から分配された第3の信号を第3のゲインで増幅する第3の増幅器(図3の増幅器142)と、第3の増幅器(図3の増幅器142)に並列接続される第4の増幅器(図3の増幅器143)であって、増幅信号RFap10(第1の入力信号)から分配され、第3の信号と位相が異なる第4の信号を第4のゲインで増幅する第4の増幅器(図3の増幅器143)と、入力信号RFinの電力に基づいて、ピーク増幅回路151cに入力される信号の電力の変化に対するピーク増幅回路151cの位相の変化を補償するように、第3のゲインと、第4のゲインと、を制御する第1の制御回路(図3の制御回路145)と、を含み、歪み補償増幅回路155b(第2の増幅回路)は、増幅信号RFap20(第2の入力信号)から分配された第5の信号を第5のゲインで増幅する第5の増幅器(図3の増幅器142)と、第5の増幅器(図3の増幅器142)に並列接続される第6の増幅器(図3の増幅器143)であって、増幅信号RFap20(第2の入力信号)から分配され、第5の信号と位相が異なる第6の信号を第6のゲインで増幅する第6の増幅器(図3の増幅器143)と、入力信号RFinの電力に基づいて、キャリア増幅回路151dに入力される信号の電力の変化に対するキャリア増幅回路151dの位相の変化を補償するように、第5のゲインと、第6のゲインと、を制御する第2の制御回路(図3の制御回路145)と、を含み、第1の制御回路(図3の制御回路145)、および、第2の制御回路(図3の制御回路145)の少なくとも一方は、増幅信号RFap10(第1の入力信号)の位相と90度異なるように増幅信号RFap20(第2の入力信号)の位相を調整する、<1>から<3>のいずれか一つに記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100cでは、段間整合回路を削減でき、ピーク増幅回路151cおよびキャリア増幅回路151dの位相の変化を補償することができるため、簡易な回路構成により線形性を改善することができる。
【0109】
<8>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100aにおいて、増幅器142a(第1の増幅器)は、ベースまたはゲートに信号RF11(第1の信号)が入力され、エミッタまたはソースが基準電位と電気的に接続されるトランジスタTr6a(第1の前段トランジスタ)と、エミッタまたはソースが基準電位と電気的に接続され、ベースまたはゲートがキャパシタC31b(第1のキャパシタ)を通じてトランジスタTr6a(第1の前段トランジスタ)のエミッタまたはソースと電気的に接続されるトランジスタTr6b(第1の後段トランジスタ)と、を含み、増幅器143a(第2の増幅器)は、ベースまたはゲートに信号RF12(第2の信号)が入力され、エミッタまたはソースが基準電位と電気的に接続されるトランジスタTr7a(第2の前段トランジスタ)と、エミッタまたはソースが基準電位と電気的に接続され、ベースまたはゲートが第2のキャパシタを通じてトランジスタTr7a(第2の前段トランジスタ)のエミッタまたはソースと電気的に接続されるトランジスタTr7b(第2の後段トランジスタ)と、を含み、歪み補償増幅回路140aは、トランジスタTr6b(第1の後段トランジスタ)のコレクタまたはドレインと、トランジスタTr7b(第2の後段トランジスタ)のコレクタまたはドレインと、の接続点から増幅信号RFapを出力する<1>から<7>のいずれか一つに記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100aは、低い電源電圧Vbattで位相の変化を補償できる。
【0110】
<9>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100aおいて、バイアス回路144は、増幅器142(第1の増幅器)に第1のバイアスを供給するトランジスタTr1(第1のトランジスタ)と、増幅器143(第2の増幅器)に第2のバイアスを供給するトランジスタTr2(第2のトランジスタ)と、高周波成分を減衰させるフィルタ回路144a(第1のフィルタ回路)と、高周波成分を減衰させるフィルタ回路144b(第2のフィルタ回路)と、を含みトランジスタTr1(第1のトランジスタ)は、制御回路145から第1のバイアスを制御するための信号が、フィルタ回路144a(第1のフィルタ回路)を通じてベースまたはゲートに入力され、トランジスタTr2(第2のトランジスタ)は、制御回路145から第2のバイアスを制御するための信号が、フィルタ回路144b(第2のフィルタ回路)を通じてベースまたはゲートに入力される<1>から<8>のいずれか一つに記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100aは、簡易な回路設計によって高周波成分を適切に減衰させることができる。
【0111】
<10>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100aにおいて、フィルタ回路144a(第1のフィルタ回路)は、トランジスタTr1(第1のトランジスタ)のベースまたはゲートと直列に接続される抵抗R41(第1の抵抗素子)と、一端がトランジスタTr1(第1のトランジスタ)のベースまたはゲートと電気的に接続され、他端が基準電位に接続されるキャパシタC41(第1のキャパシタ)と、キャパシタC41(第1のキャパシタ)と並列接続される抵抗R42(第1の分圧抵抗素子)と、を含み、フィルタ回路144b(第2のフィルタ回路)は、トランジスタTr2(第2のトランジスタ)のベースまたはゲートと直列に接続される抵抗R43(第2の抵抗素子)と、一端がトランジスタTr2(第2のトランジスタ)のベースまたはゲートと電気的に接続され、他端が基準電位に接続されるキャパシタC42(第2のキャパシタ)と、キャパシタC42(第2のキャパシタ)と並列接続される抵抗R44(第2の分圧抵抗素子)と、を含む<9>に記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100aは、簡易な回路設計によって高周波成分を適切に減衰させることができる。
【0112】
<11>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100aにおいて、トランジスタTr1(第1のトランジスタ)と、トランジスタTr2(第2のトランジスタ)と、トランジスタTr3(第3のトランジスタ)と、トランジスタTr4(第4のトランジスタ)と、トランジスタTr5(第5のトランジスタ)と、が電界効果トランジスタで構成される<1>から<10>のいずれか一つに記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100aは、低い電源電圧で動作可能となる。
【0113】
<12>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100aにおいて、制御回路145は、トランジスタTr3(第3のトランジスタ)のドレインに、トランジスタTr8(第1の電界効果トランジスタ)を通じて、第1のバイアスの大きさを調整するための制御信号ctrlが入力され、トランジスタTr4(第4のトランジスタ)のドレインに、トランジスタTr9(第2の電界効果トランジスタ)を通じて制御信号ctrlが入力される<11>に記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100aは、抵抗値の絶対値のばらつきによる出力電圧が不安定になるという問題を解消することができる。
【0114】
<13>本開示の例示的な実施形態に係る電力増幅回路100aにおいて、歪み補償増幅回路140は、シリコン基板に形成され、出力増幅回路150は、化合物半導体基板に形成される<1>から<12>のいずれか一つに記載の電力増幅回路。これにより、電力増幅回路100aでは、ドライバ段の増幅回路をシリコンのチップに形成することにより、配線の微細化が可能となり、回路を小型化でき、低コスト化を図ることができる。
【0115】
以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更又は改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0116】
100a,100a,100c…電力増幅回路、110…入力整合回路、120…段間整合回路、130…出力整合回路、140,140a,140b,140c…歪み補償増幅回路、141…分配回路、142,143…増幅器、144…バイアス回路、145…制御回路、150,150a,150b,150c,150d…出力増幅回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13