IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-圧縮機 図1
  • 特開-圧縮機 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014490
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/12 20060101AFI20240125BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F04B27/12 N
F04B39/00 103P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117355
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】榎本 安里
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 謙治
(72)【発明者】
【氏名】野邉 正幸
(72)【発明者】
【氏名】小暮 直也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健作
【テーマコード(参考)】
3H003
3H076
【Fターム(参考)】
3H003AA03
3H003AB07
3H003AC03
3H003CA02
3H076AA06
3H076BB26
3H076CC36
(57)【要約】
【課題】ピストン側からのスラスト力を受けるスラスト受け部に起因する摩擦損失やハウジングの摩耗量を従来技術に比べて低減することができる圧縮機を提供する。
【解決手段】駆動軸7と一体に回転するロータ8の回転によって回転する斜板の回転をピストンの往復運動に変換する変換機構を含む圧縮機1において、フロントハウジング3とロータ8との間に設けられてピストン側からのスラスト力を受ける第1スラスト受け部31がスラスト転がり軸受311とスラストプレート312とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室を有するハウジングと、前記シリンダボア内に配置されたピストンと、前記ハウジングに回転自在に支持された駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転するロータと、前記ロータの回転によって回転する斜板と、前記斜板の回転を前記ピストンの往復運動に変換する変換機構と、前記ハウジングと前記ロータの間に設けられて前記ピストン側からのスラスト力を受けるスラスト受け部と、を含む圧縮機であって、
前記スラスト受け部は、スラスト転がり軸受とスラストプレートとを含む、
圧縮機。
【請求項2】
前記スラスト転がり軸受は、複数の転動体と、前記複数の転動体を両側から挟む円環板状の第1スラストレース及び第2スラストレースと、を含み、前記第1スラストレースが前記ロータ側に位置するように配置されており、
前記スラストプレートは、前記スラスト転がり軸受の前記第2スラストレースと前記ハウジングに形成された座面との間に配置されている、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記座面は、前記スラスト転がり軸受の前記第2スラストレースと同じか、又はそれよりも面積の大きい平坦面として形成されている、請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記スラストプレートの一方の面と前記スラスト転がり軸受の前記第2スラストレースと間の摩擦係数が、前記スラストプレートの他方の面と前記ハウジングの前記座面との間の摩擦係数よりも小さい、請求項2に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記スラスト転がり軸受の前記第1スラストレース又は前記第2スラストレースと同じ部品が前記スラストプレートとして使用されている、請求項2に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に車両用エアコンシステムにおいて冷媒を圧縮する圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の圧縮機として、駆動軸によって回転される斜板の回転をシリンダボア内のピストンの往復動に変換することで冷媒の吸入と圧縮を行うように構成された圧縮機が知られている。このような圧縮機の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された圧縮機は、いわゆる揺動板式と呼ばれる圧縮機であり、回転主軸(駆動軸)と一体に回転するロータと、ロータの回転によって回転する斜板と、斜板の回転に伴って揺動してピストンを往復運動させる揺動板とを含む。特許文献1に記載された圧縮機は、駆動軸に対する斜板の傾角(傾斜角度)を変化させることで揺動板の揺動幅を変化させ、これによって、ピストンのストローク量を変化させて吐出容量を変更するように構成されている。また、特許文献1に記載された圧縮機は、ロータとフロントハウジングとの間に設けられたスラスト軸受によってピストン側からのスラスト力を受けるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-191347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような圧縮機において、ピストン側からのスラスト力を受けるスラスト受け部としてのスラスト軸受は、フロントハウジングに押し付けられた状態でフロントハウジング上を回転摺動することがある。そのため、スラスト軸受とフロントハウジングの材質の組み合わせによっては摩擦損失やフロントハウジングの摩耗量が大きくなるおそれがある。例えば、軽量化や耐久性の向上などのためにフロントハウジングの材質が変更されることがあるが、そのような場合に、スラスト軸受とフロントハウジングとの間の摺動状態が変化して、摩擦損失やフロントハウジングの摩耗量がフロントハウジングの材質変更前に比べて増大してしまうことがある。これに対し、フロントハウジングを熱処理や表面処理することでフロントハウジングの表面を硬化させることも考えられるが、コストUPを招くため好ましくない。
【0006】
なお、このような課題は、揺動板式の圧縮機に限られるものではなく、同様の構成を有する圧縮機(いわゆる斜板式の圧縮機など)にも共通するものである。
【0007】
そこで、本発明は、ピストン側からのスラスト力を受けるスラスト受け部に起因する摩擦損失やハウジングの摩耗量を従来技術に比べて低減することができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、圧縮機が提供される。この圧縮機は、内部にシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室を有するハウジングと、前記シリンダボア内に配置されたピストンと、前記ハウジングに回転自在に支持された駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転するロータと、前記ロータの回転によって回転する斜板と、前記斜板の回転を前記ピストンの往復運動に変換する変換機構と、前記ロータと前記ハウジングとの間に設けられて前記ピストン側からのスラスト力を受けるスラスト受け部と、を含み、前記スラスト受け部は、スラスト転がり軸受とスラストプレートとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ピストン側からのスラスト力を受けるスラスト受け部に起因する摩擦損失やハウジングの摩耗量を従来技術に比べて低減することができる圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
図2】実施形態に係る圧縮機のフロントハウジング、駆動軸に固定されたロータ及びそれらの間に設けられたスラスト受け部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る圧縮機1の概略縦断面図である。実施形態に係る圧縮機1は、いわゆる揺動板式の圧縮機(可変容量圧縮機)であり、主に車両用エアコンシステムに適用される。なお、図1における左側が圧縮機1のフロント側であり、図1における右側が圧縮機1のリア側である。
【0013】
圧縮機1は、全体として概ね円柱状の形状を有している。図1を参照すると、圧縮機1は、複数のシリンダボア2a(図1にはそのうちの一つだけが示されている。)を有するシリンダブロック2と、シリンダブロック2の一端側(図1の左側)に設けられたフロントハウジング3と、シリンダブロック2の他端側(図1の右側)に設けられたシリンダヘッド4と、を含む。複数のシリンダボア2aは、フロント側から見て円環状に配置されている。そして、これらシリンダブロック2、フロントハウジング3及びシリンダヘッド4が締結ボルトなどで結合されて圧縮機1のハウジング5を構成している。なお、シリンダブロック2とシリンダヘッド4との間にはバルブプレート6が配置されている。
【0014】
ハウジング5内にはクランク室C1が設けられている。クランク室C1は、シリンダブロック2とフロントハウジング3とによって画定されている。クランク室C1は、各シリンダボア2aに連通している。また、シリンダヘッド4には吸入室C2及び吐出室C3が形成されている。こうして、ハウジング5は、内部に複数のシリンダボア2a、クランク室C1、吸入室C2及び吐出室C3を有している。
【0015】
吸入室C2は、バルブプレート6に形成された吸入孔61を介して各シリンダボア2aに連通している。吸入孔61は、リード弁からなる吸入弁(図示省略)によって開閉される。また、吸入室C2は、吸入通路(図示省略)を介して前記車両用エアコンシステムの冷媒回路(の低圧側)に接続されている。
【0016】
吐出室C3は、バルブプレート6に形成された吐出孔62を介してシリンダボア2aに連通している。吐出孔62は、リード弁からなる吐出弁63によって開閉される。また、吐出室C3は、吐出通路(図示省略)を介して例えば前記車両用エアコンシステムの冷媒回路(の高圧側)に接続されている。
【0017】
圧縮機1は、外部駆動源から回転駆動力が入力される駆動軸7を有している。駆動軸7は、クランク室C1をフロント側からリア側へと貫通して延びている。また、クランク室C1内には、フロント側からリア側に向かってロータ8、斜板9及び揺動板10が配置されている。
【0018】
ロータ8は、駆動軸7に固定されている。つまり、駆動軸7とロータ8とは一体化されている。駆動軸7及びロータ8は、ラジアル方向においては第1ラジアル軸受21と第2ラジアル軸受22とによって支持されている。第1ラジアル軸受21は、フロントハウジング3に取り付けられており、第2ラジアル軸受22は、シリンダブロック2に取り付けられている。換言すれば、駆動軸7は、第1ラジアル軸受21及び第2ラジアル軸受22を介してハウジング5に回転自在に支持されており、ロータ8は、駆動軸7と一体に回転する。なお、本実施形態において、第1ラジアル軸受21及び第2ラジアル軸受22は、滑り軸受で構成されている。
【0019】
また、駆動軸7及びロータ8は、スラスト方向においては第1スラスト受け部31と第2スラスト受け部32とによって支持されている。第1スラスト受け部31は、フロントハウジング3とロータ8との間に設けられ、第2スラスト受け部32は、シリンダブロック2に取り付けられている。
【0020】
斜板9は、概ね円盤状に形成に形成されている。斜板9は、略中央部にリア側に突出すボス部9aを有する。斜板9は、駆動軸7及びロータ8の回転によって回転する。また、斜板9は、駆動軸7(の軸線)に対する傾角が変化可能に構成されている。
【0021】
具体的には、斜板9は、連結機構(リンク機構)11を介してロータ8に連結されている。連結機構11は、斜板9から突設された斜板側アーム111と、斜板側アーム111に固定された連結ピン112と、ロータ8から突設されたロータ側アーム113と、を含み、ロータ側アーム113には、連結ピン112が挿入され且つ連結ピン112が移動可能な円弧状孔113aが形成されている。
【0022】
また、斜板9の略中央部には、駆動軸7が挿通される挿通孔9bが形成されている。挿通孔9bは、斜板9が駆動軸7の軸方向に移動すること、及び駆動軸7(の軸線)に対する斜板9の傾角が所定の範囲で変更され得る形状に形成されている。
【0023】
本実施形態において、斜板9は、図1に示された状態(以下「第1の状態」という。)と、図1に示された状態よりもリア側に位置すると共に駆動軸7に略直交する状態(以下「第2の状態」という。)と、の間で変化可能に構成されている。
【0024】
揺動板10は、概ねリング状に形成されている。揺動板10は、斜板9の回転に伴って揺動し、各シリンダボア2a内に配置されたピストン12を往復運動させるように構成されている。つまり、揺動板10は、斜板9の回転をピストン12の往復運動に変換する変換機構としての機能を有している。
【0025】
具体的には、揺動板10は、その内周面が第3ラジアル軸受41を介して斜板9のボス部9aの外周面に取り付けられている。また、斜板9のリア側の面と揺動板10のフロント側の面との間にはスラスト軸受42が配置されている。本実施形態において、第3ラジアル軸受41及びスラスト軸受42は、転がり軸受で構成されている。さらに、斜板9のボス部9aの先端側には、揺動板10との間に所定の隙間を有した状態でバランスリング13が固定されている。バランスリング13は、主に斜板9の動的バランスを取るための部材である。つまり、斜板9、揺動板10及びバランスリング13は、揺動板10が相対回転可能な状態で一体化されている。
【0026】
揺動板10の回転は、揺動板10から下方に延びる延設部10aと、クランク室C1の下部に設けられてフロント側からリア側に延びるレール部材(回転阻止部材)14と、によって阻止されている。
【0027】
また、揺動板10は、コネクティングロッド15を介して、各シリンダボア2a内に往復動自在に配置されたピストン12に連結されている。
【0028】
これにより、揺動板10は、斜板9が回転することによって駆動軸7の軸線方向に揺動し、コネクティングロッド15を介してピストン12をシリンダボア2a内で往復運動させるようになっている。したがって、斜板9(及び揺動板10)が駆動軸7に略直交する前記第2の状態にあるとき、揺動板10の揺動幅は小さく、ピストン12のストローク量も小さくなる。他方、斜板9(及び揺動板10)が図1に示される前記第1の状態にあるとき、揺動板10の揺動幅は大きく、ピストン12のストローク量も大きくなる。
【0029】
駆動軸7のフロント側はフロントハウジング3のボス部3aを貫通して延びており、駆動軸7のフロント側の端部はハウジング5の外側に位置している。また、フロントハウジング3のボス部3aには電磁クラッチ16が取り付けられている。そして、実施形態に係る圧縮機1においては、電磁クラッチ16が締結されることによって外部駆動源からの回転駆動力が駆動軸7のフロント側の先端部に入力され、これによって、駆動軸7(及びロータ8)が回転するようになっている。なお、ボス部3aには軸封装置17が装着されており、ハウジング5の内部と外部とは遮断されている。
【0030】
圧縮機1は、さらに制御弁18を有している。制御弁18は、クランク室C1と吸入出室C2とを連通する圧力逃がし通路の開度を調整することにより、クランク室C1内の冷媒圧力の吸入室C2への逃がし量を制御するように構成されている。本実施形態において、制御弁18は、シリンダブロック2に取り付けられており、前記圧力逃がし通路は、駆動軸7の内部に形成された通路(内部通路)7aを含む。また、吐出室C3とクランク室C1とは、絞り部を有する圧力供給通路(図示省略)を介して連通している。
【0031】
ここで、圧縮機1の動作例を簡単に説明する。
【0032】
外部駆動源からの回転駆動力によって駆動軸7及びロータ8が回転すると、斜板9が回転し、斜板9の回転に伴って揺動板10が駆動軸7の軸線方向に揺動する。これにより、コネクティングロッド15を介して揺動板10に連結されたピストン12が対応するシリンダボア2a内で往復運動する。吸入室C2には前記吸入通路を介して前記冷媒回路の冷媒が導かれている。このため、ピストン12の往復運動に伴い、吸入室C2内の冷媒が吸入孔61及び前記吸入弁を介してシリンダボア2a内に吸入され及び圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出孔62及び吐出弁63を介して吐出室C3に吐出され、吐出室C3に吐出された冷媒(圧縮後の冷媒)は前記吐出通路を介して前記冷媒回路へと送られる。
【0033】
制御弁18が閉弁すると、クランク室C1内の冷媒を吸入室C2へと流出させる前記圧力逃がし通路が遮断される。また、吐出室C3内の高圧冷媒は、前記絞り部を有する圧力供給通路を介してクランク室C1に供給されている。このため、クランク室C1の圧力が上昇する。そして、クランク室C1の圧力が吸入室C2の圧力よりも高くなると、斜板9及び揺動板10は、リア側へと移動しつつ、駆動軸7に略直交する前記第2の状態に近づく。これにより、揺動板10の揺動幅が小さくなり、ピストン12のストローク量が減少し、圧縮機1の吐出容量が減少する。
【0034】
他方、制御弁18が開弁すると、クランク室C1内の冷媒が前記圧力逃がし通路を介して吸入室C2に流出する。また、吐出室C3内の高圧冷媒は、前記絞り部を有する圧力供給通路を介してクランク室C1に供給されているが、前記圧力逃がし通路の流出量の方が多いため、結果としてクランク室C1の圧力が低下する。そして、クランク室C1の圧力が吸入室C2の圧力よりも低くなると、斜板9及び揺動板10は、フロント側へと移動しつつ、図1に示された前記第1の状態に近づく。これにより、揺動板10の振幅幅が大きくなり、ピストン12のストローク量が増加し、圧縮機1の吐出容量が増加する。
【0035】
ところで、圧縮機1においては、フロントハウジング3とロータ8との間に設けられた第1スラスト受け部31によってピストン12側からのスラスト力を受けることになる。ピストン12側からのスラスト力は、主にピストン12に作用する圧縮反力である。ここで、従来技術と同様、第1スラスト受け部31として単にスラスト軸受が用いられると、上述のように、摩擦損失やフロントハウジング3の摩耗量が大きくなるおそれがある。
【0036】
このような事態を軽減し又は緩和するため、実施形態に係る圧縮機1は、以下のような構成を採用している。図2を参照して説明する。なお、図2は、圧縮機1におけるフロントハウジング3(二点鎖線で示す。)、駆動軸7に固定されたロータ8及びそれらの間に設けられた第1スラスト受け部31を示す図である。
【0037】
図2を参照すると、実施形態に係る圧縮機1において、ピストン12側からのスラスト力を受ける第1スラスト受け部31は、ロータ8側に配置された転がり軸受(以下「スラスト転がり軸受」という。)311と、フロントハウジング3側に配置されたプレート部材(以下「スラストプレート」という。)312と、を含む。スラスト転がり軸受311及びスラストプレート312は、駆動軸7に装着されている。
【0038】
スラスト転がり軸受311は、複数の転動体311aと、複数の転動体311aを周方向に間隔をあけた状態で保持する円環状の保持器311bと、複数の転動体311aを両側から挟む円環板状の第1スラストレース311c及び第2スラストレース311dと、を含む。第1スラストレース311cと第2スラストレース311dとは、共通部品であり得る。スラスト転がり軸受311は、第1スラストレース311cがロータ8側に位置するように配置されている。ロータ8には、第1スラストレース311cの外側面が接触する平坦面8aが形成されている。平坦面8aは、第1スラストレース311cの外側面とほぼ同じ大きさであるか、又はそれよりも大きい。
【0039】
スラストプレート312は、円環板状に形成されている。スラストプレート312は、スラスト転がり軸受311の第2スラストレース311dとフロントハウジング3との間に配置されている。スラストプレート312は、スラスト転がり軸受311の第2スラストレース311d(及び第1スラストレース311c)の径方向寸法とほぼ同じ径方向寸法を有して形成されている。但し、これに限られるものではなく、スラストプレート312の外径寸法は、スラスト転がり軸受311の第2スラストレース311d(及び第1スラストレース311c)の外径寸法よりも大きくてもよい。
【0040】
スラストプレート312の一方の面(リア側の面)は、スラスト転がり軸受311(の第2スラストレース311d)側に位置し、スラストプレート312の他方の面(フロント側の面)は、フロントハウジング3側に位置している。フロントハウジング3には、スラストプレート312の前記他方の面が接触する座面3bが形成されている。座面3bは、スラストプレート312(の前記他方の面)とほぼ同じ面積か、又はそれよりも面積の大きい平坦面として形成されている。
【0041】
圧縮機1において、ピストン12側からのスラスト力が発生すると、ロータ8の平坦面8aとスラスト転がり軸受311の第1スラストレース311cの外側面とが接触し、スラスト転がり軸受311の第2スラストレース311dの外側面とスラストプレート312の前記一方の面とが接触し、スラストプレート312の前記他方の面とフロントハウジング3の座面3bとが接触する。そして、第1スラスト受け部31の全体がフロントハウジング3の座面3bに押し付けられることになる。
【0042】
ここで、特に限定されないが、本実施形態においては、スラストプレート312としてスラスト転がり軸受311の第1スラストレース311c又は第2スラストレース311dと同じ部品が用いられている。これらは、スラスト転がり軸受311の構成要素であるので入手が比較的容易であり、また、スラストプレート312に要求される物性を有しているからである。
【0043】
また、スラスト転がり軸受311の第2スラストレース311dの外側面とスラストプレート312の前記一方の面との間の摩擦係数は、スラストプレート312の前記他方の面とフロントハウジング3の座面3bとの間の摩擦係数よりも小さく設定されている。このようにするのは、スラスト転がり軸受311(の第2スラストレース311dの外側面)とスラストプレート312との間で滑りを効果的に生じさせることで、フロントハウジング3の座面3b上でのスラストプレート312の回転摺動を抑制するためである。
【0044】
実施形態に係る圧縮機1によれば、以下のような効果が得られる。
【0045】
フロントハウジング3とロータ8との間に設けられてピストン12側からのスラスト力を受ける第1スラスト受け部31は、ロータ8側に配置されたスラスト転がり軸受311と、フロントハウジング3側に配置されたスラストプレート312と、を含む。
【0046】
上記構成では、フロントハウジング3上を回転摺動する部材は、スラストプレート312になり、このスラストプレート312とロータ8側に配置されたスラスト転がり軸受311との間には滑りが生じる。このため、フロントハウジング3上を回転摺動する部材の回転速度(摺動速度)が従来技術に比べて低下し、この結果、第1スラスト受け部31に起因する摩擦損失やフロントハウジング3の摩耗が低減され得る。
【0047】
具体的には、スラスト転がり軸受311は、複数の転動体311aと、複数の転動体311aを保持する円環状の保持器311bと、複数の転動体311aを両側から挟む第1スラストレース311c及び第2スラストレース311dと、を含み、第1スラストレース311cがロータ8側に位置するように配置されている。また、スラストプレート312は、スラスト転がり軸受311の第2スラストレース311dとフロントハウジング3に形成された座面3bとの間に配置されている。
【0048】
ここで、座面3bは、スラストプレート312(の前記他方の面)とほぼ同じ面積か、又はそれよりも大きい面積を有する平坦面として形成されている。また、スラスト転がり軸受311の第2スラストレース311dの外側面とスラストプレート312の前記一方の面との間の摩擦係数が、スラストプレート312の前記他方の面とフロントハウジング3の座面3bとの間の摩擦係数よりも小さく設定されている。
【0049】
このため、スラストプレート312の変形等が抑制されると共に、スラスト転がり軸受311とスラストプレート312との間の滑りが大きく(多く)なり、フロントハウジング3上を回転摺動する部材であるスラストプレート312の回転速度(摺動速度)が効果的に低下させ得る。したがって、第1スラスト受け部31に起因する摩擦損失やフロントハウジング3の摩耗がさらに低減され得る。
【0050】
また、スラスト転がり軸受311の第1スラストレース311c又は第2スラストレース311dと同じ部品がスラストプレート312として用いられている。このため、簡便な構成で第1スラスト受け部31に起因する摩擦損失やフロントハウジング3の摩耗が低減され得ると共に、コストUPも抑制され得る。
【0051】
なお、上述の実施形態においては、スラスト転がり軸受311がロータ8側に配置されており、スラストプレート312がフロントハウジング3側に配置されている。しかし、これに限られるものではない。スラストプレート312がロータ8側に配置され、スラスト転がり軸受311がフロントハウジング3側に配置されてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態においては、スラスト転がり軸受311とフロントハウジング3との間に1つのスラストプレート312が配置されているが、複数のスラストプレート312が配置されてもよく、スラストプレート312の厚さを増してもよい。
【0053】
また、上述の実施形態は、揺動板式の圧縮機として説明されているが、本発明は、上述の実施形態の同様の構成によってピストン側からのスラスト力を受ける他の圧縮機(例えば、揺動板を有していない斜板式の圧縮機)にも適用可能である。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0055】
1…圧縮機、2…シリンダブロック、2a…シリンダボア、3…フロントハウジング、4…シリンダヘッド、5…ハウジング、7…駆動軸、8…ロータ、9…斜板、10…揺動板、11…連結機構、12…ピストン、15…コネクティングロッド、31…第1スラスト受け部、311…スラスト転がり軸受、311a…転動体、311b…保持器、311c…第1スラストレース、311d…第2スラストレース、312…スラストプレート、C1…クランク室、C2…吸入室、C3…吐出室
図1
図2