(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144906
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】干渉観察装置及び光学調整方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/36 20060101AFI20241004BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20241004BHJP
G02B 21/26 20060101ALI20241004BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
G02B21/36
G02B21/00
G02B21/26
G02B7/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057078
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】山内 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 那津輝
【テーマコード(参考)】
2H052
2H151
【Fターム(参考)】
2H052AA04
2H052AB06
2H052AB26
2H052AC04
2H052AC27
2H052AD09
2H052AD18
2H052AF14
2H052AF25
2H151AA11
(57)【要約】
【課題】高速に且つ精度良く光学調整を行うことができる干渉観察装置及び光学調整方法を提供する。
【解決手段】干渉観察装置1は、光を出力する光源2と、移動可能な参照ミラー15を有し、光源2から出力された光を第1光L1及び第2光L2に分割し、観察対象物8で反射された第1光L1と参照ミラー15で反射された第2光L2との干渉光L3を出力する干渉光学系3と、干渉光L3を検出する撮像素子4と、干渉光L3の検出結果に基づいて干渉画像を取得すると共に、観察対象物8の観察に関連する光学調整のための光学調整処理を行う処理部5と、を備える。処理部5は、第2光L2の光路長を変化させることにより第1光L1と第2光L2との間の光路長差が異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を取得し、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて光学調整処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出力する光源と、
移動可能な参照ミラーを有し、前記光源から出力された光を第1光及び第2光に分割し、観察対象物で反射された前記第1光と前記参照ミラーで反射された前記第2光との干渉光を出力する干渉光学系と、
前記干渉光を検出する撮像素子と、
前記干渉光の検出結果に基づいて干渉画像を取得すると共に、前記観察対象物の観察に関連する光学調整のための光学調整処理を行う処理部と、を備え、
前記処理部は、前記第2光の光路長を変化させることにより前記第1光と前記第2光との間の光路長差が異なる複数の干渉画像を取得し、前記複数の干渉画像に基づいて前記光学調整処理を行う、干渉観察装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記複数の干渉画像の各々について評価値を算出し、前記複数の干渉画像の前記評価値に基づいて前記光学調整処理を行う、請求項1に記載の干渉観察装置。
【請求項3】
前記複数の干渉画像は、前記光路長差が互いに異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を含み、
前記処理部は、前記第1干渉画像に基づいて算出された前記評価値である第1評価値と、前記第2干渉画像に基づいて算出された前記評価値である第2評価値との間の差分に基づいて前記光学調整処理を行う、請求項2に記載の干渉観察装置。
【請求項4】
前記第1干渉画像が取得された後に前記第2干渉画像が取得され、
前記処理部は、前記第2干渉画像の取得後に、前記差分の絶対値が所定値よりも大きい場合には前記光学調整を行い、前記差分の絶対値が所定値以下である場合には前記光学調整を行わない、請求項3に記載の干渉観察装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記第2干渉画像の取得後に前記光学調整を行う場合に、前記第1評価値と前記第2評価値との間の大小関係に応じて前記光学調整を行う、請求項4に記載の干渉観察装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記第2干渉画像の取得後に前記光学調整を行う場合に、前記第1評価値と前記第2評価値との間の前記差分の大きさに対応する量で前記光学調整を行う、請求項4又は5に記載の干渉観察装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記干渉画像に対応する振幅画像に少なくとも基づいて前記評価値を算出する、請求項2又は3に記載の干渉観察装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記干渉画像に対応する位相画像における干渉縞の湾曲量に少なくとも基づいて前記評価値を算出する、請求項2又は3に記載の干渉観察装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記参照ミラーを移動させて前記第2光の光路長を変化させることにより、前記光路長差が異なる前記複数の干渉画像を取得する、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項10】
前記複数の干渉画像の間において、前記第2光の光路長の変化量は、前記光源から出力される光の波長よりも大きい値だけ異なる、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項11】
前記干渉光学系は、対物レンズを更に有し、
前記光学調整は、前記対物レンズと前記観察対象物との間の相対位置を調整することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項12】
前記光学調整は、前記参照ミラーを移動させて前記第2光の前記光路長を調整することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項13】
前記干渉光学系は、前記第2光を前記参照ミラーへ導光する参照対物レンズを更に有し、
前記光学調整は、前記参照対物レンズの位置を調整することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項14】
前記複数の干渉画像の間において、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿っての前記観察対象物に対する観察位置は、同一である、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項15】
前記複数の干渉画像の間において、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿っての前記観察対象物に対する観察位置は、異なっている、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項16】
前記観察対象物を配置するためのステージであって、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿って少なくとも移動可能な前記ステージを更に備え、
前記処理部は、前記ステージの前記平面に沿っての移動に応じて、前記複数の干渉画像に基づいて前記光学調整処理を行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項17】
前記干渉光学系は、対物レンズを更に有し、
前記処理部は、前記ステージの前記平面に沿っての移動に応じて、前記複数の干渉画像に基づいて、前記対物レンズと前記観察対象物との間の相対位置を調整するための前記光学調整処理を行う、請求項16に記載の干渉観察装置。
【請求項18】
前記観察対象物を配置するためのステージであって、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿って少なくとも移動可能な前記ステージを更に備え、
前記複数の干渉画像は、前記光路長差が互いに異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を含み、
前記処理部は、第1処理及び第2処理を交互に実行する、
ここで、前記第1処理では、前記処理部は、前記第1干渉画像を取得し、前記第1干渉画像と、直前の前記第2処理において取得された前記第2干渉画像とに基づいて前記光学調整処理を行うと共に、前記ステージを前記平面に沿って移動させ、
前記第2処理では、前記処理部は、前記第2干渉画像を取得し、前記第2干渉画像と、直前の前記第1処理において取得された前記第1干渉画像とに基づいて前記光学調整処理を行うと共に、前記ステージを前記平面に沿って移動させる、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項19】
前記観察対象物を配置するためのステージであって、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿って少なくとも移動可能な前記ステージと、
第1記憶領域及び第2記憶領域と、を更に備え、
前記複数の干渉画像は、前記光路長差が互いに異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を含み、
前記処理部は、第1処理、第2処理及び第3処理を並列に実行する、
ここで、前記第1処理では、前記処理部は、前記第1干渉画像を生成するための第1データを前記撮像素子から取得し、前記第1記憶領域に前記第1データを記憶させた後に、前記ステージを前記平面に沿って移動させる処理と、前記第2干渉画像を生成するための第2データを前記撮像素子から取得し、前記第1記憶領域に前記第2データを記憶させた後に、前記ステージを前記平面に沿って移動させる処理と、を交互に実行し、
前記第2処理では、前記処理部は、前記第1処理において取得された前記第1データに基づいて前記第1干渉画像を生成し、前記第1干渉画像に対応する第1評価値を前記第2記憶領域に記憶させる処理と、前記第1処理において取得された前記第2データに基づいて前記第2干渉画像を生成し、前記第2干渉画像に対応する第2評価値を前記第2記憶領域に記憶させる処理と、を交互に実行し、
前記第3処理では、前記処理部は、前記第2処理において前記第1評価値又は前記第2評価値が前記第2記憶領域に記憶される度に、直前に取得された前記第1評価値及び前記第2評価値に基づいて前記光学調整処理を行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項20】
前記参照ミラーを移動させるためのピエゾ素子と、
前記光学調整の対象を移動させるためのモータと、を更に備え、
前記処理部は、前記ピエゾ素子を用いて参照ミラーを移動させて前記第2光の光路長を変化させることにより、前記光路長差が異なる前記複数の干渉画像を取得すると共に、前記モータを用いて前記光学調整を行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項21】
前記参照ミラーを移動させるためのステッピングモータを更に備え、
前記ステッピングモータは、第1モードと、前記第1モードよりもステップ角が大きな第2モードで駆動可能であり、
前記処理部は、前記ステッピングモータを前記第1モードで駆動させることによって参照ミラーを移動させて前記第2光の光路長を変化させることにより、前記光路長差が異なる前記複数の干渉画像を取得すると共に、前記ステッピングモータを前記第2モードで駆動させることによって前記光学調整を行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項22】
前記干渉光学系は、対物レンズを更に有し、
前記干渉観察装置は、光を出力するAF光源を有し、前記AF光源から出力されて前記観察対象物の表面で反射された光を前記干渉光学系を介して取得し、取得結果に基づいて前記干渉光学系の対物レンズと前記観察対象物の前記表面との間の相対位置を調整する表面AF部を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置。
【請求項23】
前記観察対象物を配置するためのステージであって、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿って少なくとも移動可能な前記ステージを更に備え、
前記処理部は、前記ステージの前記平面に沿っての移動に応じて、前記複数の干渉画像に基づいて、前記対物レンズと前記観察対象物との間の相対位置を調整するための前記光学調整処理、及び前記参照ミラーを移動させて前記第2光の前記光路長を調整するための前記光学調整処理を行う、請求項22に記載の干渉観察装置。
【請求項24】
光を出力する光源と、移動可能な参照ミラーを有し、前記光源から出力された光を第1光及び第2光に分割し、観察対象物で反射された前記第1光と前記参照ミラーで反射された前記第2光との干渉光を出力する干渉光学系と、前記干渉光を検出する撮像素子と、を備え、前記干渉光の検出結果に基づいて干渉画像が取得される干渉観察装置において、前記観察対象物の観察に関連する光学調整を行うための光学調整方法であって、
前記第2光の光路長を変化させることにより前記第1光と前記第2光との間の光路長差が異なる複数の干渉画像を取得し、前記複数の干渉画像に基づいて前記光学調整のための光学調整処理を行う工程を含む、光学調整方法。
【請求項25】
前記工程では、前記観察対象物の表面で反射された前記第1光と前記参照ミラーで反射された前記第2光との前記干渉光の検出結果に基づいて、前記複数の干渉画像を取得する、請求項24に記載の光学調整方法。
【請求項26】
前記工程では、前記観察対象物の内部で反射された前記第1光と前記参照ミラーで反射された前記第2光との前記干渉光の検出結果に基づいて、前記複数の干渉画像を取得する、請求項24に記載の光学調整方法。
【請求項27】
前記工程では、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿って前記観察対象物を移動させることにより、前記平面に沿っての前記観察対象物に対する観察位置を変化させ、前記平面に沿っての前記観察対象物の移動に応じて、前記複数の干渉画像に基づいて前記光学調整処理を行う、請求項24~26のいずれか一項に記載の光学調整方法。
【請求項28】
前記干渉光学系は、交換可能な対物レンズを更に有し、
前記工程では、前記対物レンズが交換された場合に、前記複数の干渉画像に基づいて、前記参照ミラーを移動させて前記第2光の前記光路長を調整するための前記光学調整処理を行う、請求項24~26のいずれか一項に記載の光学調整方法。
【請求項29】
前記第2光の光路長を変化させることにより前記第1光と前記第2光との間の光路長差が異なる前記複数の干渉画像を取得し、前記複数の干渉画像に基づいて前記光学調整のための光学調整処理を行う前記工程を微調整工程とし、
前記観察対象物に前記第1光が入射する方向を入射方向とし、対物レンズの焦点位置を前記入射方向における前記観察対象物の全体にわたってスキャンしながら複数の干渉画像を取得し、取得結果に基づいて前記焦点位置を調整する工程を焦点位置調整工程とすると、
前記入射方向と交差する平面に沿っての前記観察対象物の移動に伴って、前記平面に沿っての前記観察対象物に対する観察位置に応じて、前記微調整工程又は前記焦点位置調整工程が行われる、請求項24~26のいずれか一項に記載の光学調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉観察装置、及び干渉観察装置の光学調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、光源と、光源から出力された光を分岐して第1分岐光及び第2分岐光とし、第1分岐光を観察対象物で反射させ、第1分岐光と第2分岐光(参照光)とを合波して当該合波光を出力する干渉光学系と、合波光を受光して検出信号を出力する受光部と、検出信号に基づいて干渉画像を取得する画像取得部と、を備えた干渉観察装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した干渉観察装置は、観察対象物の表面を観察する表面観察に用いられる。一方、干渉観察により観察対象物の内部を観察する内部観察を行うことが考えられる。例えば、観察対象物がキャップ部材付きのデバイスである場合に、キャップ部材を透過する波長の光を用いることで、キャップ部材を介してデバイスの表面(デバイスとキャップ部材との界面)が観察され得る。
【0005】
表面観察及び内部観察のいずれの場合にも、観察に際しては、対物レンズの焦点位置の調整や、参照光の光路長の調整等の光学調整を行う必要がある。このような光学調整には、高速に且つ精度良く実施可能であることが求められる。例えば内部観察の場合において対物レンズの焦点位置を調整する方法として、焦点位置を観察対象物の厚さ方向における全体にわたってスキャンして焦点位置を観察対象物内の観察位置に合わせることが考えられるが、当該方法では高速化が難しい。例えば、当該方法では、焦点位置のスキャン後に物体側の光路長(第1分岐光の光路長)の振動がナノメートルのオーダーで静定するまでに数100ミリ秒の時間が必要となり、この静定の待ち時間が高速化への障害となり得る。
【0006】
そこで、本発明は、高速に且つ精度良く光学調整を行うことができる干渉観察装置及び光学調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の干渉観察装置は、[1]「光を出力する光源と、移動可能な参照ミラーを有し、前記光源から出力された光を第1光及び第2光に分割し、観察対象物で反射された前記第1光と前記参照ミラーで反射された前記第2光との干渉光を出力する干渉光学系と、前記干渉光を検出する撮像素子と、前記干渉光の検出結果に基づいて干渉画像を取得すると共に、前記観察対象物の観察に関連する光学調整のための光学調整処理を行う処理部と、を備え、前記処理部は、前記第2光の光路長を変化させることにより前記第1光と前記第2光との間の光路長差が異なる複数の干渉画像を取得し、前記複数の干渉画像に基づいて前記光学調整処理を行う、干渉観察装置」である。
【0008】
この干渉観察装置では、第2光の光路長を変化させて取得した光路長差が異なる複数の干渉画像に基づいて光学調整処理を行うため、高速に且つ精度良く光学調整を行うことができる。特に、例えば上述した方法のように対物レンズの焦点位置を観察対象物の厚さ方向における全体にわたってスキャンする場合と比べて、高速に且つ精度良く光学調整を行うことができる。
【0009】
本発明の干渉観察装置は、[2]「前記処理部は、前記複数の干渉画像の各々について評価値を算出し、前記複数の干渉画像の前記評価値に基づいて前記光学調整処理を行う、[1]に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0010】
本発明の干渉観察装置は、[3]「前記複数の干渉画像は、前記光路長差が互いに異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を含み、前記処理部は、前記第1干渉画像に基づいて算出された前記評価値である第1評価値と、前記第2干渉画像に基づいて算出された前記評価値である第2評価値との間の差分に基づいて前記光学調整処理を行う、[2]に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0011】
本発明の干渉観察装置は、[4]「前記第1干渉画像が取得された後に前記第2干渉画像が取得され、前記処理部は、前記第2干渉画像の取得後に、前記差分の絶対値が所定値よりも大きい場合には前記光学調整を行い、前記差分の絶対値が所定値以下である場合には前記光学調整を行わない、請求項3に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0012】
本発明の干渉観察装置は、[5]「前記処理部は、前記第2干渉画像の取得後に前記光学調整を行う場合に、前記第1評価値と前記第2評価値との間の大小関係に応じて前記光学調整を行う、[4]に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0013】
本発明の干渉観察装置は、[6]「前記処理部は、前記第2干渉画像の取得後に前記光学調整を行う場合に、前記第1評価値と前記第2評価値との間の前記差分の大きさに対応する量で前記光学調整を行う、[4]又は[5]に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0014】
本発明の干渉観察装置は、[7]「前記処理部は、前記干渉画像に対応する振幅画像に少なくとも基づいて前記評価値を算出する、[2]~[6]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、好適に評価値を算出することができる。
【0015】
本発明の干渉観察装置は、[8]「前記処理部は、前記干渉画像に対応する位相画像における干渉縞の湾曲量に少なくとも基づいて前記評価値を算出する、[2]~[7]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、好適に評価値を算出することができる。
【0016】
本発明の干渉観察装置は、[9]「前記処理部は、前記参照ミラーを移動させて前記第2光の光路長を変化させることにより、前記光路長差が異なる前記複数の干渉画像を取得する、[1]~[8]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、好適に複数の干渉画像を取得することができる。
【0017】
本発明の干渉観察装置は、[10]「前記複数の干渉画像の間において、前記第2光の光路長の変化量は、前記光源から出力される光の波長よりも大きい値だけ異なる、[1]~[9]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0018】
本発明の干渉観察装置は、[11]「前記干渉光学系は、対物レンズを更に有し、前記光学調整は、前記対物レンズと前記観察対象物との間の相対位置を調整することを含む[1]~[10]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、対物レンズと観察対象物との間の相対位置を調整することができる。
【0019】
本発明の干渉観察装置は、[12]「前記光学調整は、前記参照ミラーを移動させて前記第2光の前記光路長を調整することを含む、[1]~[11]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、第2光の光路長を調整することができる。
【0020】
本発明の干渉観察装置は、[13]「前記干渉光学系は、前記第2光を前記参照ミラーへ導光する参照対物レンズを更に有し、前記光学調整は、前記参照対物レンズの位置を調整することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、参照対物レンズの位置を調整することができる。
【0021】
本発明の干渉観察装置は、[14]「前記複数の干渉画像の間において、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿っての前記観察対象物に対する観察位置は、同一である、[1]~[13]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、同一の観察位置において取得された複数の干渉画像に基づいて光学調整処理を行うことができる。
【0022】
本発明の干渉観察装置は、[15]「前記複数の干渉画像の間において、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿っての前記観察対象物に対する観察位置は、異なっている、[1]~[13]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、異なる観察位置において取得された複数の干渉画像に基づいて光学調整処理を行うことができる。
【0023】
本発明の干渉観察装置は、[16]「前記観察対象物を配置するためのステージであって、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿って少なくとも移動可能な前記ステージを更に備え、前記処理部は、前記ステージの前記平面に沿っての移動に応じて、前記複数の干渉画像に基づいて前記光学調整処理を行う、[1]~[15]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、光学調整を行いながら、観察対象物を移動させて観察位置を変化させることができる。
【0024】
本発明の干渉観察装置は、[17]「前記干渉光学系は、対物レンズを更に有し、前記処理部は、前記ステージの前記平面に沿っての移動に応じて、前記複数の干渉画像に基づいて、前記対物レンズと前記観察対象物との間の相対位置を調整するための前記光学調整処理を行う、[16]に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、対物レンズと観察対象物との間の相対位置を調整しながら、観察対象物を移動させて観察位置を変化させることができる。
【0025】
本発明の干渉観察装置は、[18]「前記観察対象物を配置するためのステージであって、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿って少なくとも移動可能な前記ステージを更に備え、前記複数の干渉画像は、前記光路長差が互いに異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を含み、前記処理部は、第1処理及び第2処理を交互に実行する、ここで、前記第1処理では、前記処理部は、前記第1干渉画像を取得し、前記第1干渉画像と、直前の前記第2処理において取得された前記第2干渉画像とに基づいて前記光学調整処理を行うと共に、前記ステージを前記平面に沿って移動させ、前記第2処理では、前記処理部は、前記第2干渉画像を取得し、前記第2干渉画像と、直前の前記第1処理において取得された前記第1干渉画像とに基づいて前記光学調整処理を行うと共に、前記ステージを前記平面に沿って移動させる、[1]~[17]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、逐次的な処理によって光学調整処理を行うことできる。
【0026】
本発明の干渉観察装置は、[19]「前記観察対象物を配置するためのステージであって、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿って少なくとも移動可能な前記ステージと、第1記憶領域及び第2記憶領域と、を更に備え、前記複数の干渉画像は、前記光路長差が互いに異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を含み、前記処理部は、第1処理、第2処理及び第3処理を並列に実行する、ここで、前記第1処理では、前記処理部は、前記第1干渉画像を生成するための第1データを前記撮像素子から取得し、前記第1記憶領域に前記第1データを記憶させた後に、前記ステージを前記平面に沿って移動させる処理と、前記第2干渉画像を生成するための第2データを前記撮像素子から取得し、前記第1記憶領域に前記第2データを記憶させた後に、前記ステージを前記平面に沿って移動させる処理と、を交互に実行し、前記第2処理では、前記処理部は、前記第1処理において取得された前記第1データに基づいて前記第1干渉画像を生成し、前記第1干渉画像に対応する第1評価値を前記第2記憶領域に記憶させる処理と、前記第1処理において取得された前記第2データに基づいて前記第2干渉画像を生成し、前記第2干渉画像に対応する第2評価値を前記第2記憶領域に記憶させる処理と、を交互に実行し、前記第3処理では、前記処理部は、前記第2処理において前記第1評価値又は前記第2評価値が前記第2記憶領域に記憶される度に、直前に取得された前記第1評価値及び前記第2評価値に基づいて前記光学調整処理を行う、[1]~[17]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、並列的な処理によって光学調整処理を行うことできる。
【0027】
本発明の干渉観察装置は、[20]「前記参照ミラーを移動させるためのピエゾ素子と、前記光学調整の対象を移動させるためのモータと、を更に備え、前記処理部は、前記ピエゾ素子を用いて参照ミラーを移動させて前記第2光の光路長を変化させることにより、前記光路長差が異なる前記複数の干渉画像を取得すると共に、前記モータを用いて前記光学調整を行う、[1]~[19]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、ピエゾ素子及びモータを用いて光学調整処理を行うことできる。
【0028】
本発明の干渉観察装置は、[21]「前記参照ミラーを移動させるためのステッピングモータを更に備え、前記ステッピングモータは、第1モードと、前記第1モードよりもステップ角が大きな第2モードで駆動可能であり、前記処理部は、前記ステッピングモータを前記第1モードで駆動させることによって参照ミラーを移動させて前記第2光の光路長を変化させることにより、前記光路長差が異なる前記複数の干渉画像を取得すると共に、前記ステッピングモータを前記第2モードで駆動させることによって前記光学調整を行う、[1]~[19]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、ステッピングモータを用いて光学調整処理を行うことできる。
【0029】
本発明の干渉観察装置は、[22]「前記干渉光学系は、対物レンズを更に有し、前記干渉観察装置は、光を出力するAF光源を有し、前記AF光源から出力されて前記観察対象物の表面で反射された光を前記干渉光学系を介して取得し、取得結果に基づいて前記干渉光学系の対物レンズと前記観察対象物の前記表面との間の相対位置を調整する表面AF部を更に備える、[1]~[21]のいずれかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、表面AF部によって対物レンズと観察対象物の表面との間の相対位置を調整することができる。
【0030】
本発明の干渉観察装置は、[23]「前記観察対象物を配置するためのステージであって、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿って少なくとも移動可能な前記ステージを更に備え、前記処理部は、前記ステージの前記平面に沿っての移動に応じて、前記複数の干渉画像に基づいて、前記対物レンズと前記観察対象物との間の相対位置を調整するための前記光学調整処理、及び前記参照ミラーを移動させて前記第2光の前記光路長を調整するための前記光学調整処理を行う、[22]に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、観察対象物を移動させながら、対物レンズと観察対象物との間の相対位置を調整するための光学調整処理、及び第2光の光路長を調整するための光学調整処理を行うことができる。
【0031】
本発明の光学調整方法は、[24]「光を出力する光源と、移動可能な参照ミラーを有し、前記光源から出力された光を第1光及び第2光に分割し、観察対象物で反射された前記第1光と前記参照ミラーで反射された前記第2光との干渉光を出力する干渉光学系と、前記干渉光を検出する撮像素子と、を備え、前記干渉光の検出結果に基づいて干渉画像が取得される干渉観察装置において、前記観察対象物の観察に関連する光学調整を行うための光学調整方法であって、前記第2光の光路長を変化させることにより前記第1光と前記第2光との間の光路長差が異なる複数の干渉画像を取得し、前記複数の干渉画像に基づいて前記光学調整のための光学調整処理を行う工程を含む、光学調整方法」である。
【0032】
この光学調整方法では、第2光の光路長を変化させて取得した光路長差が異なる複数の干渉画像に基づいて光学調整処理を行うため、高速に且つ精度良く光学調整を行うことができる。特に、例えば上述した方法のように対物レンズの焦点位置を観察対象物の厚さ方向における全体にわたってスキャンする場合と比べて、高速に且つ精度良く光学調整を行うことができる。
【0033】
本発明の光学調整方法は、[25]「前記工程では、前記観察対象物の表面で反射された前記第1光と前記参照ミラーで反射された前記第2光との前記干渉光の検出結果に基づいて、前記複数の干渉画像を取得する、[24]に記載の光学調整方法」であってもよい。この場合、観察対象物の表面を観察する表面観察の場合に、光学調整を行うことができる。
【0034】
本発明の光学調整方法は、[26]「前記工程では、前記観察対象物の内部で反射された前記第1光と前記参照ミラーで反射された前記第2光との前記干渉光の検出結果に基づいて、前記複数の干渉画像を取得する、[24]に記載の光学調整方法」であってもよい。この場合、観察対象物の内部を観察する内部観察の場合に、光学調整を行うことができる。
【0035】
本発明の光学調整方法は、[27]「前記工程では、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向と交差する平面に沿って前記観察対象物を移動させることにより、前記平面に沿っての前記観察対象物に対する観察位置を変化させ、前記平面に沿っての前記観察対象物の移動に応じて、前記複数の干渉画像に基づいて前記光学調整処理を行う、[24]~[26]のいずれかに記載の光学調整方法」であってもよい。この場合、観察対象物を移動させながら光学調整処理を行うことができる。
【0036】
本発明の光学調整方法は、[28]「前記干渉光学系は、交換可能な対物レンズを更に有し、前記工程では、前記対物レンズが交換された場合に、前記複数の干渉画像に基づいて、前記参照ミラーを移動させて前記第2光の前記光路長を調整するための前記光学調整処理を行う、[24]~[27]のいずれかに記載の光学調整方法」であってもよい。この場合、対物レンズが交換された場合に、光学調整を行うことができる。
【0037】
本発明の光学調整方法は、[29]「前記第2光の光路長を変化させることにより前記第1光と前記第2光との間の光路長差が異なる前記複数の干渉画像を取得し、前記複数の干渉画像に基づいて前記光学調整のための光学調整処理を行う前記工程を微調整工程とし、前記観察対象物に前記第1光が入射する方向を入射方向とし、対物レンズの焦点位置を前記入射方向における前記観察対象物の全体にわたってスキャンしながら複数の干渉画像を取得し、取得結果に基づいて前記焦点位置を調整する工程を焦点位置調整工程とすると、前記入射方向と交差する平面に沿っての前記観察対象物の移動に伴って、前記平面に沿っての前記観察対象物に対する観察位置に応じて、前記微調整工程又は前記焦点位置調整工程が行われる、[24]~[28]のいずれかに記載の光学調整方法」であってもよい。この場合、時間を要する焦点位置調整工程を間欠的に行うことで、タクトタイムの増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、高速に且つ精度良く光学調整を行うことができる干渉観察装置及び光学調整方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図3】対物レンズの移動量と第2光の光路長の変化量との間の関係を説明するための図である。
【
図4】観察対象物が複数の層を有する場合の調整量を説明するための図である。
【
図5】干渉観察装置において実行される処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】干渉観察装置の動作を説明するための図である。
【
図8】実部画像、虚部画像、振幅画像及び位相画像の例を示す図である。
【
図9】取得された干渉画像に基づいて評価値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図10】フォーカス調整処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】フォーカス調整を説明するための図である。
【
図12】フォーカス調整を説明するための図である。
【
図13】フォーカスロックを説明するための図である。
【
図14】フォーカスロックを説明するための図である。
【
図15】(a)及び(b)は、干渉観察装置の動作の別の例を説明するための図である。
【
図16】干渉観察装置において実行される処理の別の例を説明するためのフローチャートである。
【
図17】干渉観察装置において実行される処理の別の例を説明するためのフローチャートである。
【
図18】干渉観察装置において実行される処理の別の例を説明するためのフローチャートである。
【
図19】干渉画像の取得方法を説明するための表である。
【
図20】干渉観察装置の動作の別の例を説明するための図である。
【
図21】光学調整の別の例を説明するための表である。
【
図23】(a)~(c)は、
図22に示される干渉観察装置におけるフォーカス移動量と光路長の変化量との間の関係を説明するための図である。
【
図24】位相画像における湾曲量に基づいて評価値を算出する方法を説明するための図である。
【
図25】光学調整処理の適用例を説明するための図である。
【
図27】干渉観察装置の動作の別の例を説明するための図である。
【
図28】干渉観察装置の動作の別の例を説明するための図である。
【
図29】対物レンズを交換する場合の光学調整を説明するための図である。
【
図30】対物レンズを交換する場合の処理の例を説明するためのフローチャートである。
【
図31】対物レンズにアダプタが取り付けられた例を示す図である。
【
図32】鏡筒機差の調整を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[干渉観察装置]
【0041】
図1及び
図2に示されるように、干渉観察装置1は、光源2と、干渉光学系3と、撮像素子4と、処理部5と、ステージSと、を備えている。干渉観察装置1は、ステージS上に配置された観察対象物8を光の干渉を用いて観察するための干渉顕微鏡である。観察対象物8は、例えば半導体デバイスであるが、金属、ガラス、樹脂、液晶、高分子化合物等により形成された他の工業サンプルであってもよい。観察対象物8は、細胞又は細胞塊等の生体サンプルであってもよい。以下、
図1及び
図2に示されるようにX方向、X方向に垂直なY方向、及びX方向及びY方向に垂直なZ方向を設定して説明する。
【0042】
干渉観察装置1は、観察対象物8の表面(外表面)を観察する表面観察に加え、観察対象物8の内部を観察する内部観察を行うことができるように構成されている。
図1及び
図2に示されるように、内部観察では、観察対象物8内に位置する観察対象面Rが観察される。この例では、観察対象物8はキャップ部付きの半導体デバイスであり、第1層81と、第2層82と、第3層83と、を有している。
【0043】
第1層81は樹脂層(キャップ部)であり、第2層82は空気層であり、第3層83は半導体層(デバイス層)である。第1層81~第3層83は、第3層83、第2層82、第1層81の順に配置(積層)されており、観察対象物8は、第3層83がステージSに接触するようにステージS上に配置されている。観察対象面Rは、第1層81、第2層82、第3層83の間の界面のいずれかに設定される。例えば、
図1の例では、観察対象面Rは第2層82と第3層83との間の界面に設定されており、
図2の例では、観察対象面Rは第1層81と第2層82との間の界面に設定されている。後述する光源2から出力される光として第1層81を透過する波長の光を用いることで、第1層81を介して観察対象面Rを観察することができる。
【0044】
光源2は、インコヒーレントな光を出力する。光源2は、例えばハロゲンランプ等のランプ系光源、LED(Light emitting diode)光源、SLD(Superluminescent diode)光源、ASE(Amplified spontaneous emission)光源等である。
【0045】
干渉光学系3(干渉観察装置1)は、この例ではリニック干渉型に構成されている。干渉光学系3は、レンズ11と、ビームスプリッタ12と、対物レンズ13と、参照対物レンズ14と、参照ミラー15と、を有している。干渉光学系3は、光源2と共に筐体H内に配置されており、光学モジュールMを構成している。光学モジュールMは、所定のアクチュエータ16によりZ方向に沿って移動可能となっている。Z方向は、対物レンズ13の光軸に平行な方向であり、後述する第1光L1が観察対象物8に入射する方向と平行な方向である。
【0046】
レンズ11は、光源2から出力された光をコリメートする。ビームスプリッタ12は、例えば光学面12aを有するプリズムであり、レンズ11によりコリメートされた光を光学面12aにおいて第1光L1及び第2光L2に分割する。ビームスプリッタ12は、第1光L1を対物レンズ13へ出力し、第2光L2を参照対物レンズ14へ出力する。また、光学面12aには、観察対象物8の観察対象面Rで反射された第1光L1が対物レンズ13を介して入射すると共に、参照ミラー15で反射された第2光L2が参照対物レンズ14を介して入射する。これらの第1光L1及び第2光L2は、光学面12aにおいて合波されて干渉光L3となる。干渉光学系3は、干渉光L3を撮像素子4へ出力する。
【0047】
対物レンズ13は、ビームスプリッタ12から出力された第1光L1をステージS上に配置された観察対象物8上に集光する。また、対物レンズ13には、観察対象物8の観察対象面Rで反射された第1光L1が入射する。対物レンズ13は、入射した第1光L1をビームスプリッタ12へ出力する。
【0048】
参照対物レンズ14は、ビームスプリッタ12から出力された第2光L2を参照ミラー15へ導光し、参照ミラー15上に集光する。また、参照対物レンズ14は、参照ミラー15で反射された第2光L2をビームスプリッタ12へ出力する。参照ミラー15は、参照対物レンズ14から出力された第2光L2を参照対物レンズ14へ戻るように反射させる。
【0049】
光学モジュールMの筐体H内には、参照対物レンズ14を移動させるためのステッピングモータ17と、参照ミラー15を移動させるためのステッピングモータ18及びピエゾ素子19と、が更に配置されている。ステッピングモータ17は、Z方向に垂直な第2光L2の光軸方向(例えばX方向)に沿って参照対物レンズ14を移動させる。ステッピングモータ18及びピエゾ素子19は、第2光L2の光軸方向に沿って参照ミラー15を移動させる。
【0050】
ステッピングモータ17,18の応答時間は10msecよりも大きく、ピエゾ素子19の応答時間は1msecよりも小さい。すなわち、ピエゾ素子19の応答時間はステッピングモータ17,18の応答時間よりも短い。ステッピングモータ17,18のストローク(最小移動距離)は数mmであり、ピエゾ素子19のストロークは2μm程度である。すなわち、ピエゾ素子19のストロークはステッピングモータ17,18のストロークよりも小さい。ステッピングモータ17,18の寿命駆動回数は100万回よりも少なく、ピエゾ素子19の寿命駆動回数は100億回よりも多い。すなわち、ピエゾ素子19の寿命駆動回数はステッピングモータ17,18の寿命駆動回数よりも多い。
【0051】
撮像素子4は、例えば、CCDエリアイメージセンサ、CMOSエリアイメージセンサ等のイメージセンサ(カメラ)である。撮像素子4は、干渉光学系3(ビームスプリッタ12)から出力された干渉光L3を検出(撮像)する。撮像素子4と干渉光学系3との間には、レンズ41及び鏡筒42が配置されている。レンズ41は、干渉光学系3から出力された干渉光L3を撮像素子4の撮像面に結像させる。レンズ41は、鏡筒42内に収容されている。鏡筒42は、例えば円筒状に形成されており、撮像面を囲むように撮像素子4に固定されている。
【0052】
処理部5は、光源2、干渉光学系3、撮像素子4及びステージSを含む干渉観察装置1の各部と通信可能に接続されており、撮像素子4における干渉光L3の検出結果に基づいて干渉画像を取得する。また、処理部5は、干渉観察装置1を用いた観察対象物8の観察に関連する光学調整のための光学調整処理を行う。干渉画像及び処理部5が実行する処理については後述する。処理部5は、例えば、プロセッサ(CPU)、記憶媒体であるRAM及びROMを含むコンピュータCによって構成されている。コンピュータCは、記憶領域51を含んでいる。
【0053】
コンピュータCは、情報の入力を受け付ける入力部52と、情報を表示する表示部53と、を更に有している。入力部52は、例えばユーザの操作入力を受け付けるデバイスであり、例えばマウス、キーボード等である。表示部53は、例えば画像を表示するディスプレイである。入力部52及び表示部53は、例えばタッチパネルにより共通に構成されてもよい。また、この例では処理部5、記憶領域51、入力部52及び表示部53が1つの装置により構成されているが、それらの少なくともいずれかは別のデバイスにより構成されてもよく、例えば携帯端末等により構成されてもよい。
【0054】
ステージSは、観察対象物8を配置するためのステージであり、第1光L1が観察対象物8に入射するZ方向と垂直なXY平面に沿って移動可能となっている。これにより、干渉観察装置1では、ステージSをXY平面に沿って移動させながら、すなわち観察対象物8の観察位置を変化させながら、観察対象物8の観察を行う(干渉画像を取得する)ことが可能となっている。
[干渉観察装置の動作例]
【0055】
上述したとおり、干渉観察装置1では、処理部5が、観察対象物8の観察に関連する光学調整のための光学調整処理を行う。そのような光学調整として、対物レンズ13と観察対象物8との間の相対位置、及び第2光L2(参照光)の光路長の調整が考えられる。前者の調整として、干渉観察装置1では、アクチュエータ16によって対物レンズ13をZ方向に沿って移動させることにより観察対象物8に対する対物レンズ13の位置が調整され、その結果、対物レンズ13の焦点位置(フォーカス位置)が調整される。後者の調整として、ステッピングモータ17,18によって参照対物レンズ14及び参照ミラー15を移動させることにより第2光L2の光路長(第1光L1と第2光L2との間の光路長差)が調整される。
【0056】
そのような光学調整は、例えば以下の理由により必要となる。すなわち、まず、例えば
図1,2に示される内部観察の場合には、第1層81を介して観察対象物8の内部を観察するところ、第1層81の厚さや屈折率の実測値には公称値からのずれが存在する場合がある。そのため、公称値に基づいて対物レンズ13のフォーカス位置及び第2光L2の光路長を調整したとしても、当該ずれに起因して対物レンズ13のフォーカス位置及び第2光L2の光路長に誤差が生じてしまい、干渉画像を良好に取得することができないおそれがある。
【0057】
一例として、第1層81がガラスにより形成されており、その公称屈折率が1.51であり公称厚さが400μmである場合、公称値に基づいて算出された調整量は、対物レンズ13の移動量が256μm、参照ミラー15の移動量が340μmであったが、実測値に基づいて算出された調整量は、対物レンズ13の移動量が270μm、参照ミラー15の移動量が365μmであった。別の例として、第1層81が樹脂により形成されており、その公称屈折率が1.59であり公称厚さが1000μmである場合、公称値に基づいて算出された調整量は、対物レンズ13の移動量が629μm、参照ミラー15の移動量が961μmであったが、実測値に基づいて算出された調整量は、対物レンズ13の移動量が590μm、参照ミラー15の移動量が927μmであった。このように、公称値に基づいて算出される調整量と実測値に基づいて算出される調整量との間には乖離があり、公称値のみに基づく調整では良好に光学調整を行うことができない。
【0058】
また、第1層81の厚さや屈折率は観察位置によって変化する場合があり、そのことによっても、対物レンズ13のフォーカス位置及び第2光L2の光路長に誤差が生じてしまい、干渉画像を良好に取得することができないおそれがある。そこで、干渉観察装置1では、以下に説明する光学調整処理が行われる。
【0059】
図3を参照しつつ、対物レンズ13の移動量と第2光L2の光路長の変化量との間の関係について説明する。破線で示されるように、屈折率n
1、厚さdの観察対象物8に対して、対物レンズ13のフォーカス位置が表面上に位置していた状態から、実線で示されるように、観察対象物8と対物レンズ13との間の距離がδdだけ縮められ、フォーカス位置が裏面上に位置する状態に変化したとする。このとき、δd=d/n
1であり、第1光L1の光路長の増加量は式(1)で表される。理論上は、この増加量だけ第2光L2の光路長が長くなるように調整すればよい。上述した公称値に基づく調整量は、この方法により算出され得る。
【数1】
【0060】
公称値に基づく調整は、観察対象物8が複数の層を有する場合にも適用することができる。
図4を参照しつつ、対物レンズ13の移動量と第2光L2の光路長の変化量との間の関係について説明する。
図4では例として、観察対象物8が3つの層を有する場合が示されている。屈折率の異なるN個の層を有する物体において、N番目の層における下側の表面にフォーカスする場合、1番目の層における上側の表面にフォーカスしていた状態と比べて、観察対象物8と対物レンズ13の間の距離を式(2)で表されるΔdだけ狭くなるように調整する必要がある。
【数2】
【0061】
このとき、第1光L1の光路長の増加量ΔOPDは、式(3)で表される。理論上は、この増加量だけ第2光L2の光路長が長くなるように調整すればよい。
【数3】
上記の計算により、屈折率の異なる層が複数存在する場合であっても、観察対象物8と対物レンズ13の間の距離及び光路長を公称値に基づいて調整することが可能になる。
【0062】
図5を参照しつつ、干渉観察装置1において実行される処理(光学調整方法)の例を説明する。概略的には、この処理では、第2光L2の光路長を変化させることにより第1光L1と第2光L2との間の光路長差が異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を取得し、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて対物レンズ13のフォーカス位置を調整する。第1干渉画像は参照ミラー15が前位置(例えば参照対物レンズ14に近い第1位置)に位置する状態において取得され、第2干渉画像は参照ミラー15が後位置(例えば前位置よりも参照対物レンズ14から遠い第2位置)に位置する状態において取得される。以下、
図5に示されるフローチャートに沿って処理を説明する。処理の全体を概略的に説明した後に、必要に応じて各処理の詳細を説明する。
【0063】
処理開始時における干渉観察装置1の状態は限定されないが、例えば粗調整処理により、観察対象物8の第1層81~第3層83の厚さ及び屈折率の公称値に基づいて対物レンズ13のフォーカス位置及び第2光L2の光路長が調整された状態であってもよい。粗調整処理では、ユーザにより指定された観察対象面Rの干渉画像が取得されるように、第1層81~第3層83の厚さ、屈折率及び配置順序に基づいて、対物レンズ13のフォーカス位置及び第2光L2の光路長が調整される。以下に説明する処理は、粗調整処理よりも精度良く光学調整を行うための微調整処理である。
【0064】
処理開始後、まず、処理部5は、ピエゾ素子19を制御することにより、参照ミラー15を前位置に移動させる(ステップS1)。続いて、撮像素子4が、4枚の干渉画像を取得するための撮像を行う(ステップS2)。続いて、処理部5が、ステップS2で取得された4枚の干渉画像に基づいて1枚の第1干渉画像を構築(取得)する(ステップS3)。続いて、処理部5が、ステップS3で取得された第1干渉画像に基づいて第1評価値を算出する(ステップS4)。「f(a=前)」は、参照ミラー15が前位置に位置する状態において取得された第1干渉画像に基づいて算出された第1評価値を示す。「f」は、干渉画像に基づいて評価値を算出するための関数であり、「a=前」は、参照ミラー15が前位置に位置することを示す。処理部5は、ステップS4において算出した第1評価値を、記憶領域51における第1評価値を記憶するための領域に上書き記憶する。
【0065】
続いて、処理部5が、参照ミラー15が前位置に位置する状態において取得された第1干渉画像に基づいて算出された第1評価値であるf(a=前)から、参照ミラー15が後位置に位置する状態において取得された第2干渉画像に基づいて算出された第2評価値であるf(a=後)を減算した値の絶対値(Abs)が、所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5において用いられるf(a=前)及びf(a=後)の値は、記憶領域51における第1評価値及び第2評価値を記憶するための領域に現在記憶されている値である。f(a=後)は、後述するステップS12において算出され、記憶領域51における第2評価値を記憶するための領域に記憶されている。後述するようにステップS1~S8からなる第1処理とステップS9~S16からなる第2処理とは交互に繰り返し実行されることから、ステップS5の実行前にもf(a=後)は算出されて記憶領域51に記憶されている。
【0066】
ステップS5においてf(a=前)-f(a=後)の絶対値が閾値よりも大きい場合(ステップS5でYES)、処理部5は、フォーカス調整を行う(ステップS6)。一方、ステップS5においてf(a=前)-f(a=後)の絶対値が閾値以下である場合(ステップS5でNO)、処理部5は、フォーカス調整を行わずに、ステージSをXY平面に沿って移動させて観察対象物8の観察位置を次の観察位置に移動させる(ステップS7)。処理部5は、ステップS6の後にもステップS7の処理を行う。ステップS6,S7の処理(フォーカス調整とステージ移動)は同時に並行して行われてもよい。この点は後述するステップS14,S15についても同様である。
【0067】
ステップS7の後に、処理部5は、現在の観察位置が最終観察位置か否かを判定する(ステップS8)。ステップS8において現在の観察位置が最終観察位置である場合(ステップS8でYES)、処理を終了する。一方、ステップS8において現在の観察位置が最終観察位置でない場合(ステップS8でNO)、処理部5は、ステップS9の処理に進む。
【0068】
ステップS9では、処理部5は、ピエゾ素子19を制御することにより、参照ミラー15を前位置から後位置に移動させる。続いて、撮像素子4が、4枚の干渉画像を取得するための撮像を行う(ステップS10)。続いて、処理部5が、ステップS10で取得された4枚の干渉画像に基づいて1枚の第2干渉画像を構築(取得)する(ステップS11)。続いて、処理部5が、ステップS11で取得された第2干渉画像に基づいて第2評価値を算出する(ステップS12)。処理部5は、ステップS12において算出した第2評価値を、記憶領域51における第2評価値を記憶するための領域に上書き記憶する。
【0069】
続いて、処理部5が、f(a=前)からf(a=後)を減算した値の絶対値が上記閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13において用いられるf(a=前)及びf(a=後)の値は、記憶領域51における第1評価値及び第2評価値を記憶するための領域に現在記憶されている値である。
【0070】
ステップS13においてf(a=前)-f(a=後)の絶対値が閾値よりも大きい場合(ステップS13でYES)、処理部5は、フォーカス調整を行う(ステップS14)。一方、ステップS13においてf(a=前)-f(a=後)の絶対値が閾値以下である場合(ステップS13でNO)、処理部5は、フォーカス調整を行わずに、ステージSをXY平面に沿って移動させて観察対象物8の観察位置を次の観察位置に移動させる(ステップS15)。処理部5は、ステップS14の後にもステップS15の処理を行う。
【0071】
ステップS15の後に、処理部5は、現在の観察位置が最終観察位置か否かを判定する(ステップS16)。ステップS16において現在の観察位置が最終観察位置である場合(ステップS16でYES)、処理を終了する。一方、ステップS16において現在の観察位置が最終観察位置でない場合(ステップS16でNO)、処理部5は、ステップS1の処理に戻る。このように、この例では、観察位置が最終観察位置に到達するまで、ステップS1~S8からなる第1処理とステップS9~S16からなる第2処理とが交互に繰り返し実行される。
【0072】
図6に示されるように、この処理では、参照ミラー15が前位置と後位置との間で移動し(ステップS1,S9)、それぞれの位置において、4枚の干渉画像を取得するための撮像が撮像素子4により行われる(ステップS2,S10)。また、参照ミラー15の移動の間に、フォーカス調整処理(光学調整処理)が行われ(ステップS3~S6,S11~14)、ステージSがXY平面に沿って移動する(ステップS7,S15)。このステージSの移動量は、一視野の幅よりもわずかに小さい距離であることが好ましい。そのような動作とすることで、複数画像を撮影しながら、それらの画像を空間的につなぎ合わせて全体の画像を生成することが可能になる。
図6には、撮像素子4による撮像(露光)タイミング及びステージSの移動タイミングが示されている。
【0073】
また、
図6には、ピエゾ素子19の移動量が示されている。
図6に示されるように、ピエゾ素子19は、4枚の干渉画像の撮像タイミングに合わせて細かく移動させられる。これにより、4枚の干渉画像の間において第1光L1と第2光L2との間の光路長差が異なっている。この例では、参照ミラー15が前位置に位置する状態において取得される第1干渉画像と参照ミラー15が後位置に位置する状態において取得される第2干渉画像との間において、第2光L2の光路長の変化量は、光源2から出力される光の波長λよりも大きい値だけ異なる。すなわち、前位置と後位置との間の距離は、波長λよりも大きい。一方、前位置及び後位置の各々において取得される4枚の干渉画像の間において、第2光L2の光路長の変化量は、波長λよりも小さい値だけ異なっている。すなわち、4枚の干渉画像を取得するための参照ミラー15の移動量は、波長λよりも小さく、前位置と後位置との間の距離よりも小さい。具体的には、この例では4枚の干渉画像の間において第2光L2の光路長の変化量は、λ/4だけ異なっている。
【0074】
図7には、ステップS2において取得される4枚の干渉画像の例が示されている。
図8には、ステップS3においてそれらの4枚の干渉画像から構築(取得)される第1干渉画像の例が示されている。第1干渉画像は、以下に説明する実部画像又は虚部画像であってもよいし、振幅画像(干渉縞振幅画像)又は位相画像であってもよい。ここでは第1干渉画像の構築及び第1干渉画像に基づく第1評価値の算出(ステップS3,S4)について説明するが、第2干渉画像の構築及び第2干渉画像に基づく第2評価値の算出(ステップS11,S12)についても同様である。
【0075】
図9を参照しつつ、ステップS2において取得された4枚の干渉画像から第1干渉画像を取得し、取得された第1干渉画像から第1評価値を算出する処理(ステップS3,S4)を説明する。この処理は処理部5により実行される。まず、4枚の干渉画像を取得する(ステップS21)。続いて、第1干渉画像の実部Re及び虚部Imを算出する(ステップS22)。ステップS22では、Comp=Re+iImとして複素数画像を生成する。実部Reが実部画像に相当し、虚部Imが虚部画像に相当する。続いて、干渉縞の振幅画像及び位相画像を生成する(ステップS23)。
【0076】
振幅画像は複素数の絶対値計算であるAbs(Comp)により算出され、位相画像は複素数の偏角計算であるArg(Comp)により算出される。より具体的には、複素数画像をComp(x,y)=Re(x,y)+iIm(x,y)とすると(x,yは画像内の座標)、Abs(Comp(x,y))=sqrt(Re(x,y)2+Im(x,y)2),Arg(Comp(x,y))=atan2(Re(x,y),Im(x,y))である。sqrtは数値の平方根を計算する関数であり、atan2は与えられた2つの引数を要素とする2次元ベクトルの偏角を計算する関数である。続いて、振幅画像Abs(Comp)の画像内平均値を第1評価値として算出する(ステップS24)。
【0077】
このように、この例では、4枚の干渉画像から1枚の第1干渉画像が取得される。4枚の干渉画像の間における第2光L2の光路長差(位相シフト間隔)は、λ/4となっている。この場合、ステップS22において、複素数画像の実部Reは「I1-I3」により算出され、虚部Imは「I4-I2」により算出される。I1~I4は、順に取得される4枚の干渉画像に対応する。このようなアルゴリズムは、「λ/4間隔4点位相シフト法」と呼ばれる(参考文献1:“Field Guide to Interferometric Optical Testing” SPIE Press, ISBN978-0-8194-6410-0, 2006、36頁)。λ/4は、π/2又は90°と読み換えられ得る。
【0078】
図10を参照しつつ、ステップS6,S14のフォーカス調整処理を説明する。この処理は処理部5により実行される。まず、第1評価値f(a=前)が第2評価値f(a=後)よりも大きいか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31においてf(a=前)がf(a=後)よりも大きい場合(ステップS31でYES)、f(a=前)-f(a=後)の値に所定の係数を乗じた量だけ対物レンズ13と観察対象物8との間の距離を広げる(ステップS32)。より具体的には、ステップS32では、当該量だけ対物レンズ13が観察対象物8から離れるようにアクチュエータ16を制御する。ステップS31においてf(a=前)がf(a=後)以下である場合(ステップS31でNO)、f(a=後)-f(a=前)の値に上記係数を乗じた量だけ対物レンズ13と観察対象物8との間の距離を狭める(ステップS33)。より具体的には、ステップS33では、当該量だけ対物レンズ13が観察対象物8に近づくようにアクチュエータ16を制御する。
【0079】
以上説明した処理により、対物レンズ13のフォーカス位置が調整される。また、上記処理では、ステージSをXY平面に沿って移動させながら、すなわち観察対象物8の観察位置を変化させて観察対象物8の観察を行いながら(第1干渉画像及び第2干渉画像を取得しながら)、対物レンズ13のフォーカス位置が調整される。換言すれば、ステージSのXY平面に沿っての移動に応じて、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づくフォーカス調整処理が行われる。
【0080】
この例では、第1干渉画像及び第2干渉画像の間において、XY平面に沿っての観察対象物8に対する観察位置が異なっている。すなわち、第1干渉画像及び第2干渉画像は、異なる観察位置において取得される。なお、ここでの説明では簡単化のために光学調整としてフォーカス調整を行うとして説明したが、フォーカス調整と併せて第2光L2の光路長の調整が行われてもよい。後述するように、第2光L2の光路長の調整は、フォーカス調整と同時にフォーカス調整と共通の評価値に基づいて行われてもよいし、或いは、フォーカス調整とは別の評価値に基づいて行われてもよい。
【0081】
この例のように参照ミラー15の位置を前位置と後位置との間で変化させて第1干渉画像及び第2干渉画像を取得した場合、取得される干渉画像における干渉縞の歪みが変化するが、対物レンズ13のフォーカス位置は変化しないため、S/N比は低下するものの、干渉画像としては利用することができる。干渉縞に生じる椀状の歪みは、簡単な処理により補正され得る。
【0082】
図11~
図14を参照しつつ干渉観察装置1におけるフォーカス調整について更に説明する。
図11に示されるように、上述したとおり、観察位置A,B,Cによって観察対象物8の第1層81の厚さが変化する場合がある。
図12に示されるように、干渉観察装置1では、例えば位置Aではf(a=前)-f(a=後)の絶対値(第1評価値と第2評価値との間の差分の絶対値)が所定の閾値以下であるため、フォーカス調整は不要と判定される。これは上述したステップS5,S13の処理に対応する。この判定は、対応する参照ミラー15の位置における関数f(a)の勾配Δf(a)/Δaが所定値よりも大きいか否かを判定しているとみなすこともできる。
図12では、参照ミラー15が前位置に位置すること(「a=前」)が「+Δa」により表されており、参照ミラー15が後位置に位置すること(「a=後」)が「-Δa」により表されている。この点は
図14についても同様である。
【0083】
位置Aと同様に、例えば位置Bではf(a=前)-f(a=後)の絶対値が所定の閾値以下であるため、フォーカス調整は不要と判定される。一方、例えば位置Cではf(a=前)-f(a=後)の絶対値が所定の閾値よりも大きいため、フォーカス調整が必要と判定される。この場合、フォーカス調整が行われる(S6,S14)。このように、干渉観察装置1では、干渉画像に基づいて評価値を算出するための関数f(最適化関数)の勾配(微分)に基づいてフォーカス調整(光学調整)の要否が判定される。より具体的には、関数fの勾配が小さい場合にはフォーカス調整が行われない一方で、関数fの勾配が大きい場合にはフォーカス調整が行われる。
【0084】
このような処理を行うことにより、対物レンズ13のフォーカス位置を観察対象面R上に合わせ続けながら(フォーカスをロックしながら)、観察を行うことができる。例えば、
図13に示されるように、第2層82と第3層83との間の界面C1を観察する場合を考える。この場合、第1層81と第2層82との間の界面C2ではなく界面C1にフォーカスを合わせることが求められる。一方、例えば
図14に示されるように、関数f(a)において界面C1による極大値よりも界面C2による極大値が大きくなる場合がある。このような場合において単に参照ミラー15の位置を大きく動かして関数f(a)を最大化すると、界面C2による極大値に対応する位置に参照ミラー15の位置が調整されてしまう可能性がある。これに対し、干渉観察装置1におけるフォーカス調整処理では、参照ミラー15を微小に移動させて勾配(第1評価値と第2評価値との間の差分)を求め、当該勾配に基づいてフォーカス調整を行うため、界面C1による極大値に対応する位置に参照ミラー15の位置を合わせ続けることができる(フォーカスロック)。
[別の動作例]
【0085】
上述した例では参照ミラー15が前位置と後位置との間で移動する間にステージSが移動したが(
図6)、
図15(a)に示されるように、参照ミラー15が前位置に位置する状態で4枚の干渉画像が取得されると共に参照ミラー15が後位置に位置する状態で4枚の干渉画像が取得された後に、ステージSがXY平面に沿って移動してもよい。この場合にも、上述した例と同様に、前半の4枚の干渉画像と後半の4枚の干渉画像とに基づいて第1評価値と第2評価値との間の差分が算出され、フォーカス調整処理が行われる。この場合、例えば上述したステップS7,S8の処理が省略される。各観察位置での観察結果として用いる干渉画像としては、例えば8枚の干渉画像に基づいて構築される干渉画像が用いられ得る。
【0086】
あるいは、λ/4間隔で位相を変化させながら7枚の干渉画像を取得し、干渉画像の番号1~4を前半の干渉画像、干渉画像の番号4~7を後半の干渉画像として用いて、4番目の干渉画像を共通に用いてもよい。この場合、前半の干渉画像から第1評価値を求め、後半の干渉画像から第2評価値を求めることで差分を算出することができるとともに、後述する
図19のλ/4間隔7点位相シフト法によって各観察位置での観察結果として用いる位相画像を生成することができる。
【0087】
また、
図15(b)に示されるように、前半の4枚の干渉画像の取得と後半の4枚の干渉画像の取得とが連続的に行われてもよい。この場合、撮像効率を向上することができる。
【0088】
上述した例ではステップS1~S8からなる第1処理とステップS9~S16からなる第2処理とが交互に繰り返し実行され、逐次的な処理が行われたが、
図16~
図19に示されるように並列的な処理が行われてもよい。この例では、処理部5は、撮像に係る第1処理S40(撮像スレッド)、画像処理に係る第2処理S50(画像処理スレッド)、及び移動量の算出に係る第3処理S60(移動量算出スレッド)を並列に実行する。
【0089】
図16に示されるように、第1処理S40では、まず、処理部5は、ピエゾ素子19を制御することにより、参照ミラー15を前位置に移動させる(ステップS41)。続いて、撮像素子4が、第1干渉画像に対応する4枚の干渉画像を取得するための撮像を行い、処理部5は、4枚の干渉画像に対応する第1データを撮像素子4から取得し、記憶領域51の第1記憶領域(処理待ちFIFO)に第1データを記憶させる(ステップS42)。続いて、処理部5は、ステージSをXY平面に沿って移動させて観察対象物8の観察位置を次の観察位置に移動させる(ステップS43)。
【0090】
続いて、処理部5は、ピエゾ素子19を制御することにより、参照ミラー15を後位置に移動させる(ステップS44)。続いて、撮像素子4が、第2干渉画像に対応する4枚の干渉画像を取得するための撮像を行い、処理部5は、4枚の干渉画像に対応する第2データを撮像素子4から取得し、記憶領域51の第1記憶領域に第2データを記憶させる(ステップS45)。続いて、処理部5は、ステージSをXY平面に沿って移動させて観察対象物8の観察位置を次の観察位置に移動させる(ステップS46)。ステップS46の実行後、処理部5は、ステップS41の処理に戻る。このように、第1処理S40では、ステップS41~S43の処理とステップS41~S43の処理とが交互に実行され、処理待ちFIFO(First-In First Out)メモリである第1記憶領域に第1データ及び第2データが順次記憶される。この第1データ及び第2データには、前位置及び後位置のいずれで撮像されたかを示す情報(フラグ)が付帯されている。
【0091】
図17に示されるように、第2処理S50では、まず、処理部5は、記憶領域51の第1記憶領域に第1データ又は第2データが記憶されているか否かを判定する(ステップS51)。ステップS51において第1記憶領域に第1データ又は第2データが記憶されていると判定した場合(ステップS51においてYES)、処理部5は、画像処理を行うことにより、第1データ又は第2データに基づいて第1干渉画像又は第2干渉画像を生成する(ステップS52)。ステップS51において第1記憶領域に第1データ又は第2データが記憶されていないと判定した場合(ステップS51においてNO)、処理部5は再びステップS51の処理を実行する。
【0092】
ステップS52に続いて、処理部5は、ステップS52において生成した第1干渉画像又は第2干渉画像を記憶領域51に記憶させる(ステップS53)。続いて、処理部5は、ステップS52において生成した第1干渉画像又は第2干渉画像に基づいて第1評価値又は第2評価値を算出する(ステップS54)。続いて、処理部5は、ステップS54において算出した第1評価値又は第2評価値を記憶領域51の第2記憶領域(評価値のデータリスト)に記憶させる(ステップS55)。ステップS55の実行後、処理部5は、ステップS51の処理に戻る。
【0093】
以上により、第2処理S50では、第1処理S40において取得された第1データに基づいて第1干渉画像が生成され、第1干渉画像に対応する第1評価値が記憶領域51の第2記憶領域に記憶される処理と、第1処理S40において取得された第2データに基づいて第2干渉画像が生成され、第2干渉画像に対応する第2評価値が第2記憶領域に記憶される処理と、が交互に実行される。第2記憶領域は例えば評価値のデータリストであり、第2記憶領域には第1評価値及び第2評価値が順次記憶される。
【0094】
図18に示されるように、第3処理S60では、まず、処理部5は、記憶領域51の第2記憶領域(評価値のデータリスト)に第1評価値又は第2評価値が記憶されるのを待ち受ける(ステップS61)。ステップS61において第2記憶領域に第1評価値又は第2評価値が記憶されると、処理部5は、直前に取得された第1評価値及び第2評価値に基づいて、f(a=前)-f(a=後)の絶対値が閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS62)。ステップS62においてf(a=前)-f(a=後)の絶対値が所定の閾値よりも大きい場合(ステップS62でYES)、処理部5は、上述したステップS6,S14に対応するフォーカス調整処理(
図10)を行うことにより、次回の対物レンズ13のZ方向に沿っての移動量を所定値に設定する(ステップS63)。ステップS62においてf(a=前)-f(a=後)の絶対値が上記閾値以下である場合(ステップS62でNO)、処理部5は、次回の対物レンズ13のZ方向に沿っての移動量をゼロに設定する(ステップS64)。ステップS63又はS64の実行後、処理部5は、ステップS61の処理に戻る。以上により、第3処理S60では、第2処理S50において第1評価値又は第2評価値が第2記憶領域に記憶される度に、直前に取得された第1評価値及び第2評価値に基づいてフォーカス調整処理(光学調整処理)が行われる。
【0095】
第1干渉画像又は第2干渉画像の取得方法は、上述した例の方法に限られず、例えば
図19の表に示される方法が用いられてもよい。
図19において最左列のNは第1干渉画像又は第2干渉画像の構築に用いられる干渉画像の数を示している。
【0096】
1行目の方法では、1枚の干渉画像に基づいて、マイクロ偏光子アレイを用いた空間多重化により第1干渉画像又は第2干渉画像が取得される。この場合、複素数画像の実部Reは「I1-I3」により算出され、虚部Imは「I4-I2」により算出される。このようなアルゴリズムは、「Micropolarizer Array, Phase-Shifting Interferometer」と呼ばれる(参考文献1、44頁)。2行目の方法では、1枚の干渉画像に基づいて空間縞解析により第1干渉画像又は第2干渉画像が取得される。この場合、複素数画像の実部Reは「LPF(I*cos(2πfx))」により算出され、虚部Imは「LPF(I*sin(2πfx))」により算出される。LPFは空間的ローパスフィルタリングである。このようなアルゴリズムは、「Spatial Synchronous and Fourier Method」(空間縞法)と呼ばれる(参考文献1、43頁)。
【0097】
3行目の方法では、3枚の干渉画像に基づいて第1干渉画像又は第2干渉画像が取得される。この場合、複素数画像の実部Reは「I1-I2」により算出され、虚部Imは「I3-I2」により算出される。このようなアルゴリズムは、「λ/4間隔3点位相シフト法」と呼ばれる(参考文献1、36頁)。4行目の方法では、3枚の干渉画像に基づいて第1干渉画像又は第2干渉画像が取得される。この場合、複素数画像の実部Reは「I1-2I2+I3」により算出され、虚部Imは「Sqrt(3)*(I1-I3)」により算出される。このようなアルゴリズムは、「λ/3間隔3点位相シフト法」と呼ばれる(参考文献2:“Interferogram Analysis for Optical Testing”,CRC Press, ISBN 978-0824799403, (2005)、269頁)。5行目の方法は、上述した例の「λ/4間隔4点位相シフト法」である。
【0098】
6行目の方法では、5枚の干渉画像に基づいて第1干渉画像又は第2干渉画像が取得される。この場合、複素数画像の実部Reは「-I1+2I3-I5」により算出され、虚部Imは「2(I2-I4)」により算出される。このようなアルゴリズムは、「Schwider-Hariharan5点位相シフト法」と呼ばれる(参考文献1、36頁)。7行目の方法では、7枚の干渉画像に基づいて第1干渉画像又は第2干渉画像が取得される。この場合、複素数画像の実部Reは「-I2+4I4-2I6」により算出され、虚部Imは「I1-3I3+3I5-I7」により算出される。このようなアルゴリズムは、「λ/4間隔7点位相シフト法」と呼ばれる(参考文献3:K. Hibino, B. F. Oreb, D. I. Farrant, and K.G. Larkin, "Phaseshifting for nonsinusoidal waveforms with phase-shift errors," J. Opt.Soc. Am. A 12, 761-768 (1995))。このように、第1干渉画像及び第2干渉画像を取得する方法は限定されず、例えば1枚、3枚、4枚、5枚又は7枚の干渉画像に基づいて第1干渉画像又は第2干渉画像が取得されてもよい。
【0099】
例えば
図19に示される空間縞法が用いられる場合、1枚の干渉画像に基づいて第1干渉画像又は第2干渉画像が取得される。この場合、
図20に示されるように、参照ミラー15が前位置に位置する状態において1枚の干渉画像を取得するための撮像が撮像素子4により行われ、参照ミラー15が後位置に位置する状態において1枚の干渉画像を取得するための撮像が撮像素子4により行われてもよい。
【0100】
上述した例ではステージSをXY平面に沿って移動させながら対物レンズ13のフォーカス位置が調整されたが、
図21に示されるように、ステージSを移動させることなく(観察位置をXY平面に沿って変化させることなく)フォーカス調整処理(フォーカスロック)が行われてもよい。例えば、観察対象物8が内部にナノ構造を有する場合において、ナノ構造が温度変化に応じてどのように変化するのかを経時観察することを考える。この場合、観察位置は観察の全体にわたって特定の位置から変化しないが、観察対象物8の熱膨張によりフォーカス条件が変化することが想定される。このような場合にも、初期調整後にフォーカスロックを行うことで、狙いの観察対象面R上にフォーカス位置を合わせ続けることができる。この場合、第1干渉画像及び第2干渉画像の間において、XY平面に沿っての観察対象物8に対する観察位置は、同一である。すなわち、第1干渉画像及び第2干渉画像は、同一の観察位置において取得される。
【0101】
図22に示される別の例に係る干渉観察装置1Aは、表面AF(Autofocus)部6を更に備える点で干渉観察装置1と異なっている。表面AF部6は、光L6を出力するAF光源61と、例えばダイクロイックミラーであるビームスプリッタ62と、を有している。なお、光の利用効率が低下し得るが、ビームスプリッタ62として波長選択性を持たないハーフミラーを用いてもよい。ビームスプリッタ62は、光L6を2つに分割し、分割された2つの光L6の一方を干渉光学系3へ出力する。干渉光学系3へ出力された光L6は、観察対象物8の表面(外表面)で反射され、干渉光学系3及びビームスプリッタ62を介して表面AF部6に戻る。表面AF部6は、観察対象物8からの戻り光である光L6を検出し、当該検出結果に基づいて対物レンズ13と観察対象物8の表面との間の相対距離を調整する。例えば、表面AF部6は、アクチュエータ16によって対物レンズ13をZ方向に沿って移動させることにより、対物レンズ13と観察対象物8との間の距離を所定の距離に維持する。このように、表面AF部6は、AF光源61から出力されて観察対象物8の表面で反射された光L6を干渉光学系3を介して取得し、取得結果に基づいて対物レンズ13と観察対象物8の表面との間の相対位置を調整する。干渉観察装置1Aは、ビームスプリッタ12と参照対物レンズ14との間に配置され、ビームスプリッタ12で反射された光L6を遮断するフィルタ63を備えている。
【0102】
干渉観察装置1Aでは、上述したフォーカス調整(ステップS6,S14)と同時に、フォーカス調整と共通の評価値に基づいて、第2光L2の光路長を調整することができる。以下、この点について説明する。
【0103】
図23(a)、
図23(b)及び
図23(c)に示されるように、表面AF部6によって対物レンズ13と観察対象物8との間の距離が一定に維持されたままで、観察対象物8の厚さがd
0からd
1に変化したとする。
図23(a)には、屈折率n
1、厚さd
0の観察対象物8に対して対物レンズ13のフォーカス位置が表面上に位置していた状態(破線)から、実線で示されるように対物レンズ13と観察対象物8との間の距離がδd
0だけ縮められ、フォーカス位置が裏面上に位置する状態(実線)に変化した場合が示されている。
図23(b)には、屈折率n
1、厚さd
1の観察対象物8に対して対物レンズ13のフォーカス位置が表面上に位置していた状態(破線)から、実線で示されるように対物レンズ13と観察対象物8との間の距離がδd
1だけ縮められ、フォーカス位置が裏面上に位置する状態(実線)に変化した場合が示されている。
図23(c)には、
図23(b)に示される状態から表面AF部6によって対物レンズ13と観察対象物8との間の距離が調整された後の状態が示されている。
【0104】
図23(a)において、対物レンズ13と観察対象物8との間の距離はWD-δd
0=WD-d
0/n
1であり、このとき、第2光L2の光路長の補正量は下記(4)で表される。WDは、対物レンズ13の空気中におけるワーキングディスタンスである。
【数4】
【0105】
図23(c)において、表面AF部6による調整後の対物レンズ13と観察対象物8との間の距離はWD-δd
1=WD-d
1/n
1であり、このとき、第2光L2の光路長の調整量は下記(5)で表される。
【数5】
【0106】
表面AF部6により対物レンズ13と観察対象物8との間の距離を一定に維持している場合において、上述したステップS5,S13の処理においてf(a=前)-f(a=後)の絶対値が所定の閾値よりも大きくなった場合、光学調整を行う対象としては、対物レンズ13のフォーカス位置、及び第2光L2の光路長の両方が考えられる。このとき、対物レンズ13のフォーカス位置の調整量Δzは、対物レンズ13が観察対象物8に近づく方向を正として、式(6)で表される。
【数6】
【0107】
第2光L2の光路長の調整量ΔOPDは、参照ミラー15がビームスプリッタ12から離れる方向を正として、式(7)で表される。
【数7】
したがって、この場合、第2光L2の光路長の調整量と対物レンズ13のフォーカス位置の調整量の比が、n
1
2-1:1となるように調整すればよい。例えば、観察対象物8の第1層81がガラス層(n=1.5)である場合、この比は1.25:1となり、第1層81がシリコン層(n=3.5)である場合、この比は11.25:1となる。
【0108】
一例として、干渉観察装置1Aを用いる場合、上述したステップS32,S33において、第1評価値と第2評価値との間の差分に所定の係数を乗じた量だけ対物レンズ13と観察対象物8との間の距離を調整する際に、第2光L2の光路長の調整量と対物レンズ13のフォーカス位置(対物レンズ13と観察対象物8との間の距離)の調整量の比が、n1
2-1:1となるように、第2光L2の光路長を併せて調整すればよい。これにより、フォーカス調整と同時に、フォーカス調整と共通の評価値に基づいて、第2光L2の光路長を調整することができる。
【0109】
或いは、第2光L2の光路長の調整は、フォーカス調整とは別の評価値に基づいて行われてもよい。この場合の第2光L2の光路長の調整は、表面AF部6を備える干渉観察装置1Aに限らず、表面AF部6を備えない干渉観察装置1によっても行われ得る。例えば、処理部5は、ステップS31においてf(a=前)がf(a=後)よりも大きい場合(ステップS31でYES)、f(a=前)-f(a=後)の値に所定の係数を乗じた量だけ第2光L2の光路長を長くする(ステップS32)。より具体的には、ステップS32では、当該量だけ参照対物レンズ14及び参照ミラー15がビームスプリッタ12から離れるようにステッピングモータ17,18を制御する。ステップS31においてf(a=前)がf(a=後)以下である場合(ステップS31でNO)、f(a=後)-f(a=前)の値に上記係数を乗じた量だけ第2光L2の光路長を短くする(ステップS33)。より具体的には、ステップS33では、当該量だけ参照対物レンズ14及び参照ミラー15がビームスプリッタ12に近づくようにステッピングモータ17,18を制御する。その他の処理についてはフォーカス調整の場合と同様である。これにより、第2光L2の光路長を調整することができる。
【0110】
この場合のフォーカス調整について説明する。処理部5は、振幅画像Abs(Comp)の画像内平均値を第1評価値又は第2評価値として算出することに代えて、位相画像Arg(Comp)における干渉縞の湾曲量を第1評価値又は第2評価値として算出し、当該第1評価値及び第2評価値に基づいて対物レンズ13のフォーカス調整を行う。すなわち、この場合、処理部5は、ステップS24において位相画像における干渉縞の湾曲量を第1評価値又は第2評価値として算出する。位相画像に基づいて干渉縞の湾曲量を算出する方法については後述する。その他の処理については上述した処理の場合と同様である。これにより、第2光L2の光路長の調整及び対物レンズ13のフォーカス調整を行うことができる。第2光L2の光路長の調整は、フォーカス調整の前又は後に行われてもよいし、フォーカス調整と並行して行われてもよい。
【0111】
また、干渉縞の振幅のみもしくは干渉縞の湾曲のみを指標として第1評価値および第2評価値とする代わりに、干渉縞の振幅の差分と湾曲量の差分の線形和もしくはベクトル和を新たな評価関数として採用してもよい。干渉縞のこの新たな評価関数g(a,b)は、光路長aおよび第1光L1(物体光)と第2光L2(参照光)のフォーカスのずれ量bの両方で表される2変数関数となる。このとき、参照光路の光路長(第2光L2の光路長)のみを動かした場合の評価値の微分は、g(a,b)のaに対する偏微分∂g/∂aとして記述され、参照光路のフォーカスのみを動かした場合の評価値の微分は、g(a,b)のbに対する偏微分∂g/∂bとして記述される(式(8))。また、評価値の勾配ベクトルは、∂g/∂aを第1の要素とし、∂g/∂bを第2の要素とした2次元ベクトルとして記述される。評価関数の勾配ベクトルが分かっているときに、評価関数の極大値に向けてパラメータa,bを最適化する手法としては、最急降下法や共役勾配法を用いることができるので、これらの最適化手法による調整値をもとに、第2光L2の光路長の調整及び対物レンズ13のフォーカス調整を同時に、もしくは時間的に間をおいて調整してもよい。
【数8】
【0112】
また、参照光路の参照ミラー15のみを動かした場合、その影響は評価関数g(a,b)に対して、光路長の変化およびフォーカスの変化の両方の点で寄与する。この場合は、干渉縞の振幅に寄与するのが主として光路長であり、干渉縞の湾曲に寄与するのが主として湾曲量であることに基づいて、第2光L2の光路長の調整及び対物レンズ13のフォーカス調整を行うことができる。
【0113】
図24を参照しつつ、位相画像に基づいて干渉縞の湾曲量を算出する方法を説明する。例えば、推定された湾曲量を有するテスト画像との相関に基づく方法が考えられる。一例として、上記参考文献2には位相画像から波面のゼルニケ多項式成分を算出する方法が記載されている。干渉縞の湾曲量は、ゼルニケ多項式における「Defocus」として知られている下記(9)の成分に対応付けることができる。
【数9】
【0114】
例えば、
図24に示されるように、取得された位相画像を、+5.0,+10.0,+20.0等の湾曲量を有するテスト画像と比較することで、位相画像に基づいて干渉縞の湾曲量を算出することができる。なお、干渉縞から湾曲量を算出する方法はこの方法に限定されない。
【0115】
上述した例ではピエゾ素子19によって参照ミラー15を前位置と後位置との間で移動させたが(ステップS1,S9)、ステップS1,S9においてステッピングモータ18によって参照ミラー15を前位置と後位置との間で移動させてもよい。この場合、ステッピングモータ18は、微動モード(第1モード)及び粗動モード(第2モード)で駆動可能に構成され得る。微動モードでは、粗動モードと比べてステッピングモータ18のステップ角(移動距離)が小さく、マイクロステップ駆動が可能であり、パルスレートが高く、リミットのチェックがない。粗動モードでは、微動モードと比べてステッピングモータ18のステップ角(移動距離)が大きく、マイクロステップ駆動は不可であり、パルスレートが低く、リミットのチェックがある。処理部5は、ステップS1,S9ではステッピングモータ18を第1モードで駆動させることによって参照ミラー15を前位置と後位置との間で移動させ、第1干渉画像及び第2干渉画像を取得する(ステップS3,S11)。一方、処理部5は、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づく判定の結果、第2光L2の光路長を調整する場合には、ステッピングモータ18を第2モードで駆動させることによって参照ミラー15を移動させる。このような処理によっても上述した処理と同様に光学調整を行うことができる。このような処理を行う場合、ピエゾ素子19は省略されてもよい。このような処理は、ピエゾ素子19による参照ミラー15の移動を必要としない空間縞方式を用いる場合に特に有効である。
[光学調整処理の適用例]
【0116】
図25を参照しつつ、光学調整処理の適用例を説明する。第1適用例として、干渉観察装置1の初期調整が挙げられる。初期調整は表面観察及び内部観察のいずれに適用されてもよく、対物レンズ13のフォーカス位置及び第2光L2の光路長を調整する。気温変化や経年変化により光学モジュールMの筐体Hにミクロンスケールの変位が生じる可能性があることから、初期調整は定期的に(例えば1週間に1回程度)行うことが考えられる。
図25の表では、上述した第1干渉画像及び第2干渉画像に基づく光学調整方法により調整される場合には「〇」が示され、当該光学調整方法以外の方法により調整される場合には「別途」と示され、調整されない場合には「-」が示されている。
【0117】
初期調整では、まず、対物レンズ13のフォーカス位置を観察対象面Rに合わせる。このフォーカス調整は、例えばコントラストAF等の調整方法を用いて行われ得る。コントラストAFとは、焦点位置を観察対象物8の光軸方向における全体にわたってスキャンしながら複数の干渉画像を取得し、干渉画像のコントラストの評価関数が最大となる点を焦点位置として採用する手法である。続いて、処理部5は、振幅画像の画像内平均値を第1評価値又は第2評価値として用いて、第2光L2の光路長(参照光路長)を調整する光学調整処理を行う。続いて、処理部5は、位相画像における干渉縞の湾曲量を第1評価値又は第2評価値として用いて、参照対物レンズ14と参照ミラー15との間の距離(参照側フォーカス)を調整する。より具体的には、この場合、参照対物レンズ14と参照ミラー15との間の距離が目標距離となるようにステッピングモータ17,18を制御する。第2光L2の光路長の調整と参照側フォーカスの調整はどちらが先に実施されてもよい。初期調整の場合、ステージSはXY平面に沿って移動しない。
【0118】
第2適用例として、
図26に示されるような表面観察が考えられる。表面観察の場合、対物レンズ13のフォーカス位置のみを調整すればよい。上述した処理(
図5)により、対物レンズ13のフォーカス位置を調整することができる。表面観察の場合、ステージSがXY平面に沿って移動しながら、フォーカス位置が調整される。
【0119】
図27に示されるように、表面観察の場合、第1評価値及び第2評価値の算出及びフォーカス位置の調整は間引いて行われてもよい。例えば
図27に示される例では、観察位置(視野)の変更が3回行われる度に第1評価値及び第2評価値の算出及びフォーカス位置の調整が行われる(この例では視野#3,#6,#9…のみで行われる)。
【0120】
表面観察の場合、ステージSは、上述した例のように撮像の度に移動及び停止を繰り返す方法(Stop and Go)に代えて、一定速度で駆動されてもよい。すなわち、上述した例ではステージSが1回移動する度にフォーカス調整が行われたが、
図27に示される例のようにステージSが所定回数移動する度にフォーカス調整が行われてもよいし、この例のようにステージSが連続的に移動しながらフォーカス調整が行われてもよい。いずれの場合にも、処理部5は、ステージSのXY平面に沿っての移動に応じて、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて光学調整処理を行う。なお、ステージSが連続的に移動しながらフォーカス調整が行われる場合には、1枚の干渉画像に基づいて第1干渉画像及び第2干渉画像を取得する「Micropolarizer Array, Phase-Shifting Interferometer」又は「Spatial Synchronous and Fourier Method」(空間縞法)を用いることが好ましい。また、干渉画像へのモーションアーチファクトの重畳を抑制するために、光源2をパルス駆動することが好ましい。
【0121】
図28に示されるように、温度環境が不安定である場合等、観察中に参照側フォーカスや第2光L2の光路長が変動する可能性がある場合には、上述した初期調整時の処理と表面観察時の処理とをハイブリッド的に併用してもよい。例えば
図28に示される例のように観察対象物8をジグザグ状にXYスキャンする場合には、各行での最初の視野(視野#1,#7,#15…)において初期調整時の処理を行ってもよい。コントラストAFには時間を要するが、この例のように間欠的に行う場合にはタクトタイムへの影響を抑えることができる。それ以外の視野では、表面観察時の処理に従って、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づく対物レンズ13のフォーカス位置の調整を行ってもよい。なお、初期調整時の処理を行う視野としては、観察対象物8のエッジ等、コントラストAFを行いやすい視野を選択してもよい。
【0122】
すなわち、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて光学調整処理を行う工程を微調整工程とし、コントラストAFにより対物レンズ13のフォーカス位置を調整する工程を焦点位置調整工程とすると、上記例では、XY平面に沿っての観察対象物8の移動に伴って、XY平面に沿っての観察対象物8に対する観察位置に応じて、微調整工程又は焦点位置調整工程が行われる。上述したとおり、焦点位置調整工程(コントラストAF)では、観察対象物8に第1光L1が入射する方向を入射方向とすると、対物レンズ13の焦点位置を入射方向における観察対象物8の全体にわたってスキャンしながら複数の干渉画像を取得し、その取得結果に基づいて焦点位置が調整される。
【0123】
再び
図25を参照して、第3適用例として、内部観察が考えられる。内部観察の場合、対物レンズ13のフォーカス位置及び第2光L2の光路長の両方を調整する。この場合、上述したとおり、表面AF部6を備える干渉観察装置1Aを用いて、共通の評価値に基づいて、対物レンズ13のフォーカス位置及び第2光L2の光路長が調整されてもよい。或いは、振幅画像の画像内平均値を第1評価値又は第2評価値として用いて、第2光L2の光路長を調整するための光学調整処理が行われると共に、位相画像における干渉縞の湾曲量を第1評価値又は第2評価値として用いて、対物レンズ13のフォーカス位置を調整するための光学調整処理が行われてもよい。第2光L2の光路長を調整するための光学調整処理及び対物レンズ13のフォーカス位置を調整するための光学調整処理は、視野の移動(観察位置の変更)の度に両方が行われてもよい。或いは、奇数番目の視野では一方のみが行われ、偶数番目の視野では他方のみが行われるというように間引いて行われてもよい。
【0124】
内部観察の例としては、上述した例のように観察対象物8がキャップ部付きの半導体デバイスである場合以外に、半導体デバイスを透明樹脂キャップ越しに観察する場合、半導体デバイスをガラスウィンドウ越しに観察する場合、半導体デバイスを半導体キャップ越しに観察する場合(この場合は光源2は赤外光を出力する)、半導体デバイスの裏面を観察する場合(この場合は光源2は赤外光を出力する)、貼り合わせウエハにおける貼合面を観察する場合(この場合は光源2は赤外光を出力する)、貼り合わせウエハにおける貼合面のボイドを観察する場合、ガラスと樹脂との間の接合部又は貼合面を観察する場合、ガラス、樹脂、又は半導体からなる部材内におけるレーザ加工面を観察する場合、液晶パネルにおける内部欠陥を観察する場合等が挙げられる。
【0125】
第4適用例として、対物レンズ13の交換時の調整が考えられる。例えば、
図29に示される例では、対物レンズ13が筐体Hに交換可能に取り付けられており、互いに倍率が異なる複数(この例では3つ)の対物レンズ13の中から選択された1つの対物レンズ13が筐体Hに取り付けられている。このような構成において観察倍率を変更するために対物レンズ13を交換した場合に、上述した第1干渉画像及び第2干渉画像に基づく光学調整を行うことで、高速に且つ精度良く光学調整を行うことができる。
【0126】
図30に示されるように、対物レンズ13の交換時の調整では、まず、対物レンズ13が交換される(ステップS71)。続いて、対物レンズ13のフォーカス位置を観察対象面Rに合わせる。このフォーカス調整は、例えばコントラストAF等の調整方法を用いて行われ得る(ステップS72)。ステップS71,S72と並行して、処理部5は、ステッピングモータ17,18を制御して、対物レンズ13の公称オフセット分だけ第2光L2の光路長を調整する(ステップS73)(粗調整)。ステップS72,S73に続いて、処理部5は、振幅画像の画像内平均値を第1評価値又は第2評価値として用いて、第2光L2の光路長を調整するための光学調整処理を行う(微調整)。
【0127】
対物レンズ13の公称オフセットとは、対物レンズ13ごとの光路長の違いに応じて補正する必要がある第2光L2の光路長の値であり、事前に測定されている。ただし、対物レンズの経年変化や温度環境、対物レンズの取り付け箇所における機械的誤差等の影響によりミクロンスケールの誤差が生じ得るため、公称オフセット分の調整だけでは最適な干渉縞が得られない可能性がある。対物レンズ13にアダプタが付いている場合は、当該アダプタの寄与分も加味して公称オフセットが設定される。
【0128】
図31に示されるように、複数の対物レンズ13の少なくともいずれかにアダプタ13aが取り付けられていてもよい。例えば、対物レンズ13の交換の際には、倍率の変更以外に、乾燥対物レンズから液浸対物レンズ(水浸等)に変更される場合も考えられる。干渉観察の分解能は、対物レンズ13及び参照対物レンズ14のうちNAが小さいもののNAで規定される。そのため、参照対物レンズ14の倍率は、複数の対物レンズ13のうちで最もNAが高いものの倍率に合わせることが好ましい。例えば、複数の対物レンズ13がそれぞれ20X,10X,5Xの倍率を有する場合、最もNAが高い対物レンズ13の倍率が20Xであるため、参照対物レンズ14の倍率は20Xが好ましい。
【0129】
また、乾燥対物レンズと液浸対物レンズでは、一般的に同じ倍率でも液浸対物レンズの方がNAが高い。例えば、10Xの対物レンズの一般的な値として、乾燥タイプでNA=0.25、水浸タイプでNA=0.30である。この場合、参照対物レンズ14が10X乾燥タイプであると、対物レンズ13が10X水浸タイプである場合にその高分解能性が活かせないため、参照対物レンズ14をNA=0.40の20Xとすることが好ましい。
【0130】
対物レンズ13の交換時の調整におけるステッピングモータ17,18の移動距離を短くするために、複数の対物レンズ13には倍率に対応したアダプタ13aが取り付けられていてもよい。アダプタ13aは光路長を長くするための中空の部材であってもよいし、内部に透明な誘電体の板が配置された部材であってもよい。一般的に、5X,10X,20Xの対物レンズでは、5X<10X<20Xの順にレンズ内における光路長が長いため、アダプタ13aの光路長はそれとは逆の5X>10X>20Xとすることで、対物レンズ13の交換時の調整におけるステッピングモータ17,18の移動距離を短くすることができる。アダプタ13aは、対物レンズ13と機械的に接続又は接着され、対物レンズ13の交換時に一体的に取外し及び取付け可能であることが好ましい。
【0131】
再び
図25を参照して、第5適用例として、鏡筒機差の調整が考えられる。
図32に示されるように、撮像素子4や鏡筒42等の微妙な製造誤差により、撮像素子4の撮像面4aの共役面4bが対物レンズ13のフォーカス位置からずれてしまう場合がある。このずれは通常数ミクロン程度であるが、干渉観察においては無視できない大きさである。そのような場合でも、上述した第1干渉画像及び第2干渉画像に基づく光学調整処理により、撮像面4aの共役面4bを対物レンズ13のフォーカス位置に合わせることができる。鏡筒機差の調整時の処理は、初期調整の場合と同様である。ただし、鏡筒機差の調整時には、撮像面4aの共役面4bがずれているため、参照対物レンズ14の位置を固定したままで参照ミラー15のみをステッピングモータ18で移動させる方が効率的である。
[作用及び効果]
【0132】
干渉観察装置1は、光を出力する光源2と、移動可能な参照ミラー15を有し、光源2から出力された光を第1光L1及び第2光L2に分割し、観察対象物8で反射された第1光L1と参照ミラー15で反射された第2光L2との干渉光L3を出力する干渉光学系3と、干渉光L3を検出する撮像素子4と、干渉光L3の検出結果に基づいて干渉画像を取得すると共に、観察対象物8の観察に関連する光学調整のための光学調整処理を行う処理部5と、を備える。処理部5は、第2光L2の光路長を変化させることにより第1光L1と第2光L2との間の光路長差が異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を取得し、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて光学調整処理を行う。
【0133】
干渉観察装置1では、第2光L2の光路長を変化させて取得した光路長差が異なる第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて光学調整処理を行うため、高速に且つ精度良く光学調整を行うことができる。特に、例えば対物レンズ13の焦点位置を観察対象物8の厚さ方向における全体にわたってスキャンする場合と比べて、高速に且つ精度良く光学調整を行うことができる。例えば、コントラストAFのために観察対象物8をZ方向にわたってスキャンすると、検出結果に数100msecの間多大なノイズが残存する。そのため、高速化が難しく、例えばインラインでの測定には適さない。これに対し、干渉観察装置1では、高速に且つ精度良く光学調整を行うことができ、インラインでの測定にも好適に適用することが可能となる。
【0134】
処理部5が、第1干渉画像及び第2干渉画像の各々について評価値(第1評価値及び第2評価値)を算出し(ステップS4,S12)、第1干渉画像及び第2干渉画像の評価値に基づいて光学調整処理を行う。これにより、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0135】
処理部5が、第1干渉画像に基づいて算出された評価値である第1評価値と、第2干渉画像に基づいて算出された評価値である第2評価値との間の差分に基づいて光学調整処理を行う(ステップS5,S12)。これにより、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0136】
処理部5が、第2干渉画像の取得後に、上記差分の絶対値が所定値よりも大きい場合には光学調整を行い、当該差分の絶対値が所定値以下である場合には光学調整を行わない(ステップS5,S12)。これにより、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0137】
処理部5が、第2干渉画像の取得後に光学調整を行う場合に、第1評価値と第2評価値との間の大小関係に応じて光学調整を行う(ステップS31~S33)。これにより、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0138】
処理部5が、第2干渉画像の取得後に光学調整を行う場合に、第1評価値と第2評価値との間の差分の大きさに対応する量で光学調整を行う(ステップS32,S33)。これにより、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0139】
処理部5が、第1干渉画像又は第2干渉画像に対応する振幅画像に基づいて第1評価値又は第2評価値を算出する(ステップS24)。これにより、好適に評価値を算出することができる。
【0140】
処理部5は、第1干渉画像又は第2干渉画像に対応する位相画像における干渉縞の湾曲量に評価値を算出してもよい(
図24)。この場合にも、好適に評価値を算出することができる。
【0141】
処理部5が、参照ミラー15を移動させて第2光L2の光路長を変化させることにより、光路長差が異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を取得する。これにより、好適に第1干渉画像及び第2干渉画像を取得することができる。
【0142】
第1干渉画像及び第2干渉画像の間において、第2光L2の光路長の変化量が、光源2から出力される光の波長よりも大きい値だけ異なる。これにより、好適に光学調整処理を行うことできる。
【0143】
干渉観察装置1において行われる光学調整が、対物レンズ13と観察対象物8との間の相対位置を調整することを含んでいる。これにより、対物レンズ13と観察対象物8との間の相対位置を調整することができる。
【0144】
当該光学調整が、参照ミラー15を移動させて第2光L2の光路長を調整することを含んでいる。これにより、第2光L2の光路長を調整することができる。
【0145】
当該光学調整が、参照対物レンズ14の位置を調整することを含んでいる。これにより、参照対物レンズ14の位置を調整することができる。
【0146】
第1干渉画像及び第2干渉画像の間において、XY平面(観察対象物8に第1光L1が入射する方向と交差する平面)に沿っての観察対象物8に対する観察位置は、同一であってもよい(
図21)。この場合、同一の観察位置において取得された第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて光学調整処理を行うことができる。
【0147】
第1干渉画像及び第2干渉画像の間において、XY平面に沿っての観察対象物8に対する観察位置は、異なっていてもよい(
図5)。この場合、異なる観察位置において取得された第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて光学調整処理を行うことができる。
【0148】
処理部5が、ステージSのXY平面に沿っての移動に応じて、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて光学調整処理を行う。これにより、光学調整を行いながら、観察対象物8を移動させて観察位置を変化させることができる。
【0149】
処理部5が、ステージSのXY平面に沿っての移動に応じて、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて、対物レンズ13と観察対象物8との間の相対位置を調整するための光学調整処理を行う。これにより、対物レンズ13と観察対象物8との間の相対位置を調整しながら、観察対象物8を移動させて観察位置を変化させることができる。
【0150】
処理部5が、第1処理(ステップS1~S8)及び第2処理(ステップS9~S16)を交互に実行する。第1処理では、処理部5は、第1干渉画像を取得し(ステップS2)、第1干渉画像と、直前の第2処理において取得された第2干渉画像とに基づいて光学調整処理を行うと共に(ステップS5,S6)、ステージSを平面に沿って移動させる(ステップS7)。第2処理では、処理部5は、第2干渉画像を取得し(ステップS10)、第2干渉画像と、直前の第1処理において取得された第1干渉画像とに基づいて光学調整処理を行うと共に(ステップS13,S14)、ステージSを平面に沿って移動させる(ステップS15)。これにより、逐次的な処理によって光学調整処理を行うことできる。
【0151】
処理部5が、第1処理S40、第2処理S50及び第3処理S60を並列に実行してもよい。第1処理S40では、処理部5は、第1干渉画像を生成するための第1データを撮像素子4から取得し、記憶領域51の第1記憶領域に第1データを記憶させた後に(ステップS42)、ステージSをXY平面に沿って移動させる(ステップS43)処理と、第2干渉画像を生成するための第2データを撮像素子4から取得し、第1記憶領域に第2データを記憶させた後に(ステップS45)、ステージSをXY平面に沿って移動させる処理(ステップS44)と、を交互に実行する。第2処理S50では、処理部5は、第1処理S40において取得された第1データに基づいて第1干渉画像を生成し(ステップS52)、第1干渉画像に対応する第1評価値を記憶領域51の第2記憶領域に記憶させる(ステップS54,S55)処理と、第1処理S40において取得された第2データに基づいて第2干渉画像を生成し(ステップS52)、第2干渉画像に対応する第2評価値を第2記憶領域に記憶させる(ステップS54,S55)処理と、を交互に実行する。第3処理S60では、処理部5は、第2処理S50において第1評価値又は第2評価値が第2記憶領域に記憶される度に(ステップS61)、直前に取得された第1評価値及び第2評価値に基づいて光学調整処理を行う。この場合、並列的な処理によって光学調整処理を行うことできる。
【0152】
処理部5が、ピエゾ素子19を用いて参照ミラー15を移動させて第2光L2の光路長を変化させることにより、光路長差が異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を取得すると共に、ステッピングモータ17,18を用いて光学調整を行う。これにより、ピエゾ素子19及びステッピングモータ17,18を用いて光学調整処理を行うことできる。ピエゾ素子19はステッピングモータ18よりも寿命駆動回数が多いため、ピエゾ素子19を用いて第1干渉画像及び第2干渉画像を取得することで、装置の長寿命化を図ることができる。
【0153】
ステッピングモータ18が、微動モード(第1モード)と、微動モードよりもステップ角が大きな粗動モード(第2モード)で駆動可能であってもよい。この場合、処理部5が、ステッピングモータ18を微動モードで駆動させることによって参照ミラー15を移動させて第2光L2の光路長を変化させることにより、光路長差が異なる第1干渉画像及び第2干渉画像を取得すると共に、ステッピングモータ18を粗動モードで駆動させることによって光学調整を行ってもよい。この場合、ステッピングモータ18を用いて光学調整処理を行うことでき、装置の構成を簡易化することができる。
【0154】
光学調整処理に用いられるステッピングモータ17,18は、1マイクロメートル~数マイクロメートルの分解能を持つ他の種類のモータであってもよい。他の種類のモータとしては、例えば減速比の大きいギヤードモータやサーボモータ等が挙げられる。
【0155】
干渉観察装置1Aは、表面AF部6を備えている。表面AF部6は、光L6を出力するAF光源61を有し、AF光源61から出力されて観察対象物8の表面で反射された光L6を干渉光学系3を介して取得し、取得結果に基づいて干渉光学系3の対物レンズ13と観察対象物8の表面との間の相対位置を調整する。この場合、表面AF部6によって対物レンズ13と観察対象物8の表面との間の相対位置を調整することができる。
【0156】
表面AF部6を備える干渉観察装置1Aにおいて、処理部5が、ステージSのXY平面に沿っての移動に応じて、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて、対物レンズ13と観察対象物8との間の相対位置を調整するための光学調整処理、及び参照ミラー15を移動させて第2光L2の光路長を調整するための光学調整処理を行ってもよい。これにより、観察対象物8を移動させながら、対物レンズ13と観察対象物8との間の相対位置を調整するための光学調整処理、及び第2光L2の光路長を調整するための光学調整処理を行うことができる。
【0157】
干渉観察装置1を用いて行われる光学調整方法では、観察対象物8の表面で反射された第1光L1と参照ミラー15で反射された第2光L2との干渉光の検出結果に基づいて、第1干渉画像及び第2干渉画像が取得されてもよい(表面観察)。これにより、観察対象物8の表面を観察する表面観察の場合に、光学調整を行うことができる。
【0158】
光学調整方法では、観察対象物8の内部で反射された第1光L1と参照ミラー15で反射された第2光L2との干渉光の検出結果に基づいて、第1干渉画像及び第2干渉画像が取得されてもよい(内部観察)。これにより、観察対象物8の内部を観察する内部観察の場合に、光学調整を行うことができる。
【0159】
光学調整方法では、XY平面に沿っての観察対象物8の移動に応じて、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて光学調整処理が行われてもよい。この場合、観察対象物8を移動させながら光学調整処理を行うことができる。
【0160】
光学調整方法では、対物レンズ13が交換された場合に、第1干渉画像及び第2干渉画像に基づいて、参照ミラー15を移動させて第2光L2の光路長を調整するための光学調整処理が行われてもよい(対物レンズ13の交換時の調整)。これにより、対物レンズ13が交換された場合に、光学調整を行うことができる。
[変形例]
【0161】
本発明は、上述した例に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
【0162】
上述した例では参照ミラー15を移動させて第2光L2の光路長を変化させることにより第1干渉画像及び第2干渉画像が取得されたが、対物レンズ13を移動させて第2光L2の光路長を変化させることにより第1干渉画像及び第2干渉画像が取得されてもよい。上述した例では第1干渉画像及び第2干渉画像の2枚の干渉画像に基づいて光学調整処理が行われたが、3枚以上の干渉画像に基づいて光学調整処理が行われてもよい。
【0163】
上述した例のステップS32,S33では、f(a=前)-f(a=後)の値に所定の係数を乗じた量だけ対物レンズ13と観察対象物8との間の距離を変化させたが、f(a=前)-f(a=後)の値と正に相関する量だけ当該距離を変化させればよく、f(a=前)-f(a=後)の値と変化量との間の関係は、比例関係に限られない。
【0164】
振幅画像に基づく評価値(第1評価値又は第2評価値)は、振幅画像の画像内平均値に限られず、振幅画像に基づいて算出される他の値であってもよい。位相画像に基づく評価値は、位相画像における干渉縞の湾曲量に限られず、位相画像に基づいて算出される他の値であってもよい。評価値は、振幅画像及び位相画像の両方に基づいて算出されてもよい。第1干渉画像及び第2干渉画像の間において、第2光L2の光路長は、光源2から出力される光の波長よりも小さい値だけ異なっていてもよい。この場合にも、上述した例と同様に光学調整処理を行うことできる。
【0165】
上述した例ではアクチュエータ16によって対物レンズ13をZ方向に沿って移動させることにより対物レンズ13と観察対象物8との間の相対位置が調整されたが、これに代えて又は加えて、ステージSをZ方向に沿って移動させることにより当該相対位置が調整されてもよい。この場合、ステージSは、XY方向に加えてZ方向にも移動可能に構成される。この場合、アクチュエータ16は省略されてもよい。ステージSは、第1光L1が観察対象物8に入射する方向と交差する方向に沿って移動可能であればよく、例えばXY平面に対して傾斜した方向に移動可能であってもよい。参照対物レンズ14及び参照ミラー15を駆動させるアクチュエータは、ステッピングモータ17,18に限られず、サーボモータ等の他のアクチュエータであってもよい。
【0166】
第1干渉画像に基づいて第1評価値を算出する処理(ステップS4)及び第2干渉画像に基づいて第2評価値を算出する処理(ステップS12)においては、干渉画像に対して空間的な間引き処理(低解像度化)を行ったうえで、評価値を求めることに特化したサブルーチン内での画像処理を行ってもよい。検査用の画像として使用する干渉画像の生成を別途高解像度の画像を用いて行いつつ、評価値を間引いた画像から算出することで、画像処理を高速化することができる。
【0167】
上述した例では干渉光学系3がリニック干渉型に構成されていたが、干渉光学系3(干渉観察装置1)は、マイケルソン干渉型又はミラウ干渉型に構成されてもよい。参照対物レンズ14は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0168】
1,1A…干渉観察装置、2…光源、3…干渉光学系、4…撮像素子、5…処理部、6…表面AF部、61…AF光源、8…観察対象物、13…対物レンズ、14…参照対物レンズ、15…参照ミラー、18…ステッピングモータ、19…ピエゾ素子、51…記憶領域、L1…第1光、L2…第2光、L3…干渉光、L6…光、S…ステージ、S40…第1処理、S50…第2処理、S60…第3処理。