(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014491
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240125BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F04C18/02 311S
F04C29/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117358
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】手島 淳夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰造
(72)【発明者】
【氏名】押尾 英一
(72)【発明者】
【氏名】阿久澤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】西山 京志郎
(72)【発明者】
【氏名】津久井 拓也
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA12
3H039BB05
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC36
3H129AA02
3H129AA16
3H129AB03
3H129BB44
3H129CC05
3H129CC38
(57)【要約】
【課題】スクロール型圧縮機の各スクロールの耐久性を向上させる。
【解決手段】スクロール型圧縮機1は、アルミニウム系材料からなる固定スクロール50及び旋回スクロール60を含む。一方のスクロール30Aの基板51の圧縮室側端面51aと渦巻壁52の表面に錫めっきによる第1被膜層C1が形成され、他方のスクロール30Bの基板61の圧縮室側端面61aと渦巻壁62の表面にニッケル-リンめっきによる第2被膜層C2が形成され、他方のスクロール30Bの渦巻壁62の壁高さh2が一方のスクロール30Aの渦巻壁52の壁高さh1よりも高くなるように設定され、一方のスクロール30Aの渦巻壁52の先端の第1被膜層C1と他方のスクロール30Bの基板61の第2被膜層C2が互いに離隔し、一方のスクロール30Aの基板51の第1被膜層C1と他方のスクロール30Bの渦巻壁62の先端の第2被膜層C2が互いに接触している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛み合うように配置されると共にそれぞれが基板及び該基板に立設された渦巻壁を有する固定スクロール及び旋回スクロールを含み、前記旋回スクロールを前記固定スクロールに対して公転旋回させることで、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとの間に形成される圧縮室に取り込んだ流体を圧縮するように構成されたスクロール型圧縮機であって、
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールのぞれぞれは、アルミニウム系材料からなり、
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールのうちの一方のスクロールの前記基板の圧縮室側端面と、前記一方のスクロールの前記渦巻壁の表面には、錫めっきによる第1被膜層が形成され、
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールのうちの他方のスクロールの前記基板の圧縮室側端面と、前記他方のスクロールの前記渦巻壁の表面には、ニッケル-リンめっきによる第2被膜層が形成され、
前記他方のスクロールの前記渦巻壁の壁高さが、前記一方のスクロールの前記渦巻壁の壁高さよりも高くなるように設定され、
前記一方のスクロールの前記渦巻壁の先端の前記第1被膜層と前記他方のスクロールの前記基板の前記第2被膜層が、互いに離隔しており、
前記一方のスクロールの前記基板の前記第1被膜層と前記他方のスクロールの前記渦巻壁の先端の前記第2被膜層が、互いに接触している、スクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記旋回スクロールにおけるめっき施工面積は前記固定スクロールにおけるめっき施工面積よりも小さく、
前記ニッケル-リンめっきによる前記第2被膜層が形成された前記他方のスクロールは、前記旋回スクロールである、請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記流体は、気体冷媒であり、
前記気体冷媒が潤滑油と一緒に前記圧縮室に取り込まれ、前記一方のスクロールの前記渦巻壁の先端の前記第1被膜層と前記他方のスクロールの前記基板の前記第2被膜層との間の隙間に、前記潤滑油からなる油膜が形成されるように構成されている、請求項1又は2に記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置などに用いられるスクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたスクロール型圧縮機は、互いに噛み合うように配置されると共にそれぞれが基板及び該基板に立設された渦巻壁を有する固定スクロール及び旋回スクロールを含み、旋回スクロールを固定スクロールに対して公転旋回させることで、固定スクロールと旋回スクロールとの間に形成される圧縮室に取り込んだ流体を圧縮するように構成されている。特許文献1に開示されたスクロール型圧縮機では、固定スクロール及び旋回スクロールは軽量化のためアルミニウム系材料により形成されており、旋回スクロールの基板及び渦巻壁の表面には、ニッケル-リンめっきによる被膜層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたスクロール型圧縮機において、固定スクロールにはめっき処理が施されておらず、アルミニウム系材料が固定スクロールの表面に露出しているので、旋回スクロールの渦巻壁の先端のニッケル-リンめっきによる被膜層が固定スクロールの基板のアルミニウム系材料に対して直接的に摺動するおそれがある。そして、ニッケル成分とアルミニウム成分との相互溶解度は比較的に高いため、特許文献1に開示されたスクロール型圧縮機では、例えば、旋回スクロールの渦巻壁の先端がニッケル成分を含む被膜層を介して固定スクロールのアルミニウム成分を含む基板に凝着するおそれがあり、耐久性の点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、各スクロールの軽量化を図りつつ、耐久性を向上させることができる構造を有したスクロール型圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、互いに噛み合うように配置されると共にそれぞれが基板及び該基板に立設された渦巻壁を有する固定スクロール及び旋回スクロールを含み、前記旋回スクロールを前記固定スクロールに対して公転旋回させることで、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとの間に形成される圧縮室に取り込んだ流体を圧縮するように構成されたスクロール型圧縮機が提供される。このスクロール型圧縮機において、前記固定スクロール及び前記旋回スクロールのぞれぞれは、アルミニウム系材料からなり、前記固定スクロール及び前記旋回スクロールのうちの一方のスクロールの前記基板の圧縮室側端面と、前記一方のスクロールの前記渦巻壁の表面には、錫めっきによる第1被膜層が形成され、前記固定スクロール及び前記旋回スクロールのうちの他方のスクロールの前記基板の圧縮室側端面と、前記他方のスクロールの前記渦巻壁の表面には、ニッケル-リンめっきによる第2被膜層が形成されている。前記他方のスクロールの前記渦巻壁の壁高さが、前記一方のスクロールの前記渦巻壁の壁高さよりも高くなるように設定され、前記一方のスクロールの前記渦巻壁の先端の前記第1被膜層と前記他方のスクロールの前記基板の前記第2被膜層が、互いに離隔しており、前記一方のスクロールの前記基板の前記第1被膜層と前記他方のスクロールの前記渦巻壁の先端の前記第2被膜層が、互いに接触している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各スクロールの軽量化を図りつつ、耐久性を向上させることができる構造を有したスクロール型圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスクロール型圧縮機の断面図である。
【
図2】スクロール型圧縮機の要部を説明するための要部拡大断面図である。
【
図4】別の比較例に係る圧縮機の拡大断面図である。
【
図5】スクロール型圧縮機の変形例を説明するための要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るスクロール型圧縮機1の概略構成を示す断面図である。スクロール型圧縮機1は、車両用空調装置などの冷媒回路に組み込まれ、冷媒回路から低圧の気体冷媒を受けて圧縮し、高圧化して当該冷媒回路に戻すように構成される。なお、
図1には、スクロール型圧縮機1の使用状態における前後方向及び上下方向の一例がそれぞれ示されている。また、前述の気体冷媒は、本発明における流体の一例である。
【0011】
スクロール型圧縮機1は、ハウジング10と、回転軸20aと、回転軸20aを回転させる電動モータ20と、回転軸20aによって駆動されて(低圧の)気体冷媒を圧縮するスクロールユニット30と、電動モータ20を駆動制御するインバータ40とを含む。ハウジング10の内部には、主要な構成要素(10,20a,30,40)が収容されている。スクロールユニット30は、固定スクロール50と旋回スクロール60を含む。固定スクロール50及び旋回スクロール60は、スクロール型圧縮機1の中心軸方向に対向し、互いに噛み合うように配置されている。
【0012】
ハウジング10は、フロントハウジング11、カバー部材12、センターハウジング13及びリアハウジング14を含む。そして、これら(11,12,13,14)が図示省略の締結具などによって締結されることで、スクロール型圧縮機1のハウジング10が構成される。
【0013】
フロントハウジング11は、円筒状の第1周壁部111と、第1周壁部111の内部を前後に仕切る第1隔壁部112とを有する。第1周壁部111の内部空間は、第1隔壁部112によって前側のインバータ収容空間と後側のモータ収容空間とに仕切られている。第1隔壁部112には回転軸20aの前端部を支持する支持部113が設けられ、支持部113は第1軸受114を介して回転軸20aの前端部を回転自在に支持している。
【0014】
カバー部材12は、フロントハウジング11の前端面に接合されている。これにより、前記インバータ収容空間が閉塞されている。フロントハウジング11の後端面にはセンターハウジング13の前端面が接合されている。
【0015】
センターハウジング13は、円筒状の第2周壁部131と、第2周壁部131の内部を前後に仕切る第2隔壁部132とを有する。第2周壁部131の内部空間は、第2隔壁部132によって前記モータ収容空間に接続する前側の接続空間と後側のスクロール収容空間とに仕切られている。第2隔壁部132は、フロントハウジング11側に突出する中空突出部132aを有する。中空突出部132aには、回転軸挿通孔132bが形成されている。中空突出部132aは、第2軸受133を介して回転軸20aの後端側部位を回転自在に支持している。
【0016】
リアハウジング14は、センターハウジング13の後端面に接合されている。例えば、センターハウジング13(第2周壁部131)の後端面には、凹部134が形成されている。固定スクロール50の外縁部がセンターハウジング13とリアハウジング14とに挟持されことで、第2周壁部131の後側開口が固定スクロール50で閉塞される。リアハウジング14は、円筒状の第3周壁部141と、第3周壁部141の後側開口を閉塞する底壁部142とを有する。第3周壁部141の前端面が第2周壁部131の後端面に接合されることで、第3周壁部141の前側開口が固定スクロール50で閉塞されている。
【0017】
電動モータ20は、例えば三相交流モータで構成されており、ステータコアユニット21と、ロータ22とを含む。ステータコアユニット21は、フロントハウジング11の第1周壁部111の内周面に固定されている。ステータコアユニット21には、図示しない車載バッテリなどからの直流電流がインバータ40によって交流電流に変換されて供給される。ロータ22は、ステータコアユニット21の径方向内側に所定の隙間を有して配置される。ロータ22は、円筒状に形成されており、その中空部に回転軸20aが挿通された状態で回転軸20aに固定される。ロータ22は、回転軸20aと一体化されている。
【0018】
電動モータ20は、インバータ40からの給電によってステータコアユニット21に磁界が発生すると、ロータ22に組み込まれた永久磁石に回転力が作用してロータ22が回転し、これによって、回転軸20aを回転させる。
【0019】
スクロールユニット30は、前述のように、固定スクロール50と、固定スクロール50に対して公転旋回運動する旋回スクロール60とを含む。固定スクロール50及び旋回スクロール60は、互いに噛み合うように配置されると共に、それぞれが基板(51,61)及び基板(51,61)に立設された渦巻状の渦巻壁(52,62)を有する。固定スクロール50及び旋回スクロール60のぞれぞれは、アルミニウム系材料からなる。具体的には、各スクロール(50,60)の材料として、アルミニウム合金が用いられており、スクロールユニット30の軽量化が図られている。
【0020】
具体的には、固定スクロール50は、円板状の基板51(以下、適宜に、固定基板51という)と、固定基板51の圧縮室側端面51aに立設された渦巻状の渦巻壁52(以下、適宜に、固定渦巻壁52という)とを有する。旋回スクロール60は、円板状の基板61(以下、適宜に、旋回基板61という)と、旋回基板61の圧縮室側端面61aに立設された渦巻壁62(以下、適宜に、旋回渦巻壁62という)とを有する。旋回スクロール60は、旋回渦巻壁62が固定スクロール50の固定渦巻壁52に噛み合うように配置されている。旋回スクロール60は、回転軸20aによってクランク機構70を介して駆動され、固定スクロール50に対して公転旋回運動するように構成されている。
【0021】
クランク機構70は、回転軸20aと旋回スクロール60とを連結すると共に、回転軸20aの回転運動を旋回スクロール60の公転旋回運動に変換するように構成されている。クランク機構70は、回転軸20aの後端部に立設されたクランクピン71と、クランクピン71に対して偏心状態で取り付けられた偏心ブッシュ72と、旋回スクロール60の旋回基板61の背面に突出形成された円筒部73とを含む。偏心ブッシュ72は、図示省略の軸受を介して円筒部73の内周面に回転自在に支持されている。なお、回転軸20aの後端部には、バランサウェイト74が取り付けられている。
【0022】
旋回スクロール60は、その自転が、自転阻止機構80によって阻止され得る。自転阻止機構80は、リング81とピン82とで構成される自転阻止部を旋回基板61の背面の外周縁近傍の周方向に沿って等間隔に複数配置して構成されている。リング81は旋回基板61の圧縮室側端面61aと反対側の面である背面61bに形成された円形穴に圧入され、ピン82はセンターハウジング13の第2隔壁部132に突設されてスラストプレート90を貫通してリング81の内側に遊嵌される。
【0023】
スクロールユニット30は、旋回スクロール60が固定スクロール50に対して公転旋回運動を行うことで、低圧の気体冷媒を取り込んで圧縮するように構成されている。旋回スクロール60の旋回基板61とセンターハウジング13の第2隔壁部132との間には円環板状のスラストプレート90が配置され、第2隔壁部132の後側の面がスラストプレート90を介して旋回スクロール60からのスラスト力を受けるようになっている。
【0024】
ここで、スクロール型圧縮機1は、低圧の気体冷媒が流入する吸入室H1と、低圧の気体冷媒を圧縮する圧縮室H2と、圧縮室H2で圧縮された気体冷媒が吐出される吐出室H3と、圧縮室H2で圧縮された気体冷媒から潤滑油を分離する気液分離室H4と、旋回スクロール60の背面側(旋回基板61の背面側)に設けられた背圧室H5とを有する。
【0025】
吸入室H1は、フロントハウジング11(第1周壁部111、第1隔壁部112)とセンターハウジング13(第2周壁部131、第2隔壁部132)とによって区画形成されている。第1周壁部111に形成された吸入口P1は、図示省略の接続管などを介して前記冷媒回路(の低圧側)に接続されている。このため、吸入室H1には、吸入口P1を介して、前記冷媒回路からの低圧の冷媒が流入する。また、センターハウジング13には、吸入室H1内の低圧の気体冷媒をスクロールユニット30の外端部近傍の空間H6に導くための冷媒通路L1が形成される。
【0026】
圧縮室H2は、固定スクロール50と旋回スクロール60との間に形成される。スクロールユニット30は、圧縮室H2の形成時に空間H6から低圧の気体冷媒を取り込むことで低圧の気体冷媒を圧縮するように構成される。スクロール型圧縮機1は、旋回スクロール60を固定スクロール50に対して公転旋回させることで、固定スクロール50と旋回スクロール60との間に形成される圧縮室H2に取り込んだ気体冷媒(流体)を圧縮するように構成されている。
【0027】
吐出室H3は、リアハウジング14(第3周壁部141、底壁部142)と固定スクロール50(固定基板51)とによって形成される。圧縮室H2で圧縮された気体冷媒は固定基板51の径方向中央に形成された吐出孔L2を介して吐出室H3に吐出される。固定スクロール50の固定基板51の圧縮室側端面51aと反対側の面51bには、圧縮室H2から吐出室H3への気体冷媒の流通を許容するが、吐出室H3から圧縮室H2への気体冷媒の流通を規制する、例えばリード弁からなる逆止弁Vが取り付けられている。
【0028】
気液分離室H4は、リアハウジング14に設けられている。気液分離室H4内には、例えば、遠心分離式のオイルセパレータOSが配置される。オイルセパレータOSより上部に設けられた吐出口P2は、図示省略の接続管などを介して前記冷媒回路(の高圧側)に接続される。吐出室H3内の気体冷媒(高圧の気体冷媒)は、リアハウジング14の底壁部142に形成された連通孔L3を介して気液分離室H4に流入し、オイルセパレータOSによって気体冷媒に含まれる潤滑油が分離され、その後、吐出口P2から前記冷媒回路の高圧側へと導出される。一方、オイルセパレータOSによって高圧の気体冷媒から分離された潤滑油は、重力によって気液分離室H4の下部へと導かれる。
【0029】
背圧室H5は、旋回基板61と第2隔壁部132との間に形成される。本実施形態において、背圧室H5は、第2隔壁部132の中空突出部132aの内部空間を含む。センターハウジング13、固定基板51及びリアハウジング14には、背圧室H5と気液分離室H4とを接続する潤滑油通路L4が形成される。潤滑油通路L4には、オリフィス(絞り部)OLが配置されている。気液分離室H4において、オイルセパレータOSによって分離された潤滑油は、オリフィスOLにより減圧された状態で潤滑油通路L4を介して背圧室H5に供給される。背圧室H5は、旋回基板61に形成された絞り部として機能し得る貫通孔611を介して圧縮室H2に連通可能である。このため、貫通孔611によって、背圧室H5と圧縮室H2との間を行き来する流体(潤滑油及び/又は気体冷媒)の流量が制限される。この結果、背圧室H5内の圧力が吸入室H1内の圧力と吐出室H3内の圧力との間の中間圧力(背圧)に保持され、この中間圧力(背圧)によって旋回スクロール60が固定スクロール50に向かって押し付けられている。つまり、背圧室H5は、旋回スクロール60を固定スクロール50に押し付ける背圧(背圧荷重)を旋回スクロール60に作用させる。
【0030】
ここで、スクロールユニット30の耐久性を向上させるためには、スクロールユニット30に、錫めっき(以下、適宜に、Snめっきと言う)やニッケル-リンめっき(以下、適宜に、Ni-Pめっきと言う)を施すことが考えられる。Snめっきは、潤滑性に優れており、他の材料に対する馴染みも良く、限界面圧(具体的には、材料が所定のすべり速度において前記他の材料と摺動する際に、焼付きが起こる面圧)を向上させ易いめっきである。また、Snめっきの施工コストは、一般的に、Ni-Pめっきの施工コストよりも低い。しかし、Snめっきは、Ni-Pめっきと比較すると、摩耗し易い上に、めっき施工面からの剥離を起こし易い。さらに、Snめっきは、Ni-Pめっきと比較すると、耐熱性に劣る。したがって、Snめっきの同一箇所が連続的に長時間摺動すると、Snめっきが摩耗や剥離によってめっき施工面から消失してしまい、めっき施工面が露出するおそれがある。そして、Ni-Pめっきは、Snめっきよりも耐熱性に優れている。しかし、ニッケルとアルミニウムの相互溶解度は比較的に高い。本願発明者は、ニッケルとアルミニウムの高い相互溶解度に着目し、Ni-Pめっきがスクロールユニット30のアルミニウム系材料に直接的に接触することは好ましい摺動状態ではないことに気づいた。
【0031】
本実施形態に係るスクロール型圧縮機1では、スクロールユニット30の軽量化を図りつつ、スクロールユニット30の耐久性を向上するための構造として、以下に説明する構造を有している。
【0032】
図2は、スクロール型圧縮機1の要部を説明するための要部拡大断面図である。
【0033】
本実施形態に係るスクロール型圧縮機1のスクロールユニット30では、固定スクロール50及び旋回スクロール60のうちの一方のスクロール30Aの基板(51又は61)の圧縮室側端面(51a又は61a)と、一方のスクロール30Aの渦巻壁(52又は62)の表面には、錫めっきによる第1被膜層C1が形成されている。第1被膜層C1(換言すると、Snめっき層)は、所定のめっき厚さである第1層厚さt1を有しており、一方のスクロール30Aにおけるめっき施工箇所が例えば無電解Snによる第1層厚さt1の第1被膜層C1(Snめっき層)により覆われている。
【0034】
そして、固定スクロール50及び旋回スクロール60のうちの他方のスクロール30Bの基板(61又は51)の圧縮室側端面(61a又は51a)と、他方のスクロール30Bの渦巻壁(62又は52)の表面には、ニッケル-リンめっきによる第2被膜層C2が形成されている。第2被膜層C2(換言すると、Ni-Pめっき層)は、所定のめっき厚さである第2層厚さt2を有しており、他方のスクロール30Bにおけるめっき施工箇所が第2層厚さt2の第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)より覆われている。
【0035】
つまり、スクロールユニット30では、固定スクロール50における固定基板51の圧縮室側端面51a及び固定渦巻壁52と、旋回スクロール60における旋回基板61の圧縮室側端面61a及び旋回渦巻壁62とに、めっきが施されている。
【0036】
本実施形態では、旋回スクロール60におけるめっき施工面積は固定スクロール50におけるめっき施工面積よりも小さい。具体的には、旋回スクロール60の旋回基板61は固定スクロール50の固定基板51の外形よりも小さな外形を有している。そして、旋回基板61の圧縮室側端面61aの表面積と旋回渦巻壁62の表面積とを合算して得られる旋回スクロール60におけるめっき施工面積が、固定基板51の圧縮室側端面51aの表面積と固定渦巻壁52の表面積とを合算して得られる固定スクロール50におけるめっき施工面積よりも小さい。
【0037】
本実施形態では、錫めっきによる第1被膜層C1の形成対象である一方のスクロール30Aは固定スクロール50であり、ニッケル-リンめっきによる第2被膜層C2の形成対象である他方のスクロール30Bは旋回スクロール60である。つまり、錫めっきによる第1被膜層C1が形成された一方のスクロール30Aは固定スクロール50であり、ニッケル-リンめっきによる第2被膜層C2が形成された他方のスクロール30Bは旋回スクロール60である。
【0038】
したがって、本実施形態では、錫めっきによる第1被膜層C1は、一方のスクロール30Aとしての固定スクロール50において、固定基板51の圧縮室側端面51aと固定渦巻壁52の表面とに形成されている。換言すると、本実施形態では、第1被膜層C1(Snめっき層)は、固定スクロール50及び旋回スクロール60のうちの、相対的に大きい(広い)めっき施工面積を有する固定スクロール50に形成されている。
【0039】
そして、本実施形態では、ニッケル-リンめっきによる第2被膜層C2は、他方のスクロール30Bとしての旋回スクロール60において、旋回基板61の圧縮室側端面61aと旋回渦巻壁62の表面とに形成されている。換言すると、本実施形態では、第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)は、固定スクロール50及び旋回スクロール60のうちの、相対的に小さい(狭い)めっき施工面積を有する旋回スクロール60に形成されている。
【0040】
図2を参照すると、他方のスクロール30Bの渦巻壁(本実施形態では、旋回渦巻壁62)の壁高さである壁高さh2が、一方のスクロール30Aの渦巻壁(本実施形態では、固定渦巻壁52)の壁高さh1よりも高く設定されている。具体的には、旋回渦巻壁62の壁高さh2は旋回基板61の圧縮室側端面61aから旋回渦巻壁62の先端面までの距離であり、固定渦巻壁52の壁高さh1は固定基板51の圧縮室側端面51aから固定渦巻壁52の先端面までの距離である。
【0041】
そして、一方のスクロール30Aの渦巻壁(固定渦巻壁52)の先端の第1被膜層C1(Snめっき層)と他方のスクロール30Bの基板(旋回基板61)の第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)が互いに離隔しており、一方のスクロール30Aの基板(固定基板51)の第1被膜層C1(Snめっき層)と他方のスクロール30Bの渦巻壁(旋回渦巻壁62)の先端の第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)が互いに接触している。したがって、スクロール作動中において、一方のスクロール30Aの渦巻壁の先端の第1被膜層C1(Snめっき層)はこれに相対する他方のスクロール30Bの基板の第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)に対して常に離れている。これに対し、他方のスクロール30Bの渦巻壁の先端の第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)は一方のスクロール30Aの基板の第1被膜層C1(Snめっき層)と摺動している。
【0042】
次に、本実施形態に係るスクロール型圧縮機1の効果について、比較例に係るスクロール型の比較圧縮機と比較して説明する。
図3及び
図4は、それぞれ、
図2に示された本実施形態のスクロール型圧縮機1と比較するためのスクロール型の比較圧縮機(1’、1”)の拡大断面図である。
図3は比較例に係る比較圧縮機1’のスクロールユニット30の拡大断面図であり、
図4は他の比較例に係る比較圧縮機1”のスクロールユニット30の拡大断面図である。
【0043】
図3を参照すると、比較例に係る比較圧縮機1’では、旋回スクロール60の旋回基板61の圧縮室側端面61aと旋回渦巻壁62の表面には、ニッケル-リンによる第2被膜層C2が形成されているが、固定スクロール50にはめっきが施されていない。さらに、アルミニウム系材料(素材)が露出した固定スクロール50の固定渦巻壁52の先端は、旋回基板61の圧縮室側端面61aに形成された第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)に接触している。したがって、比較例の比較圧縮機1’では、スクロール作動中において、旋回渦巻壁62の先端が、ニッケル成分を含む第2被膜層C2を介して、露出した固定スクロール50のアルミニウム成分を含む固定基板51の圧縮室側端面51aに直接的に接触して摺動することになる。そして、ニッケル成分とアルミニウム成分との相互溶解度が高いことから、比較圧縮機1’において、旋回スクロール60の旋回渦巻壁62の先端(第2被膜層C2の表面)と固定スクロール50の固定基板51の圧縮室側端面51aとの摺動部分において、大きな摩擦熱が発生して、摺動部分の温度が過度に上昇するおそれがある。この場合に、比較圧縮機1’では、旋回スクロール60の旋回渦巻壁62の先端がニッケル成分を含む第2被膜層C2を介して固定スクロール50のアルミニウム成分を含む露出した固定基板51の圧縮室側端面51aに凝着するおそれがある。同様に、比較圧縮機1’では、固定スクロール50のアルミニウム成分を含む露出した固定渦巻壁52の先端がニッケル成分を含む第2被膜層C2を介して旋回スクロール60の旋回基板61の圧縮室側端面61aに凝着するおそれがある。つまり、比較圧縮機1’では、旋回スクロール60に施されたニッケル成分を含む第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)が固定スクロール50の露出したアルミニウム系材料(アルミニウム素材)に直接的に接触した状態で、摺動しているので、両スクロール(50,60)の凝着が発生するおそれがある。
【0044】
これに対し、本実施形態に係るスクロール型圧縮機1では、一方のスクロール30Aの基板の圧縮室側端面と渦巻壁の表面には、錫めっきによる第1被膜層C1が形成され、他方のスクロール30Bの基板の圧縮室側端面と渦巻壁の表面には、ニッケル-リンめっきによる第2被膜層C2が形成されている。したがって、スクロール型圧縮機1では、他方のスクロール30Bに施されたニッケル成分を含む第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)が一方のスクロール30Aのアルミニウム系材料(アルミニウム素材)に接触した状態で、摺動することが防止されている。
【0045】
図4を参照すると、他の比較例に係る比較圧縮機1”では、旋回スクロール60の旋回基板61の圧縮室側端面61aと旋回渦巻壁62の表面には、ニッケル-リンによる第2被膜層C2が形成され、固定スクロール50の固定基板51の圧縮室側端面51aと固定渦巻壁52の表面には、錫めっきによる第1被膜層C1が形成されている。そして、比較圧縮機1”では、固定スクロール50の固定基板51の圧縮室側端面51aの第1被膜層C1(Snめっき層)と旋回スクロール60の旋回渦巻壁62の先端の第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)が互いに接触している。これらの点については、比較圧縮機1”の構造と本実施形態に係るスクロール型圧縮機1の構造は共通している。しかし、比較圧縮機1”では、固定スクロール50の固定渦巻壁52の先端の第1被膜層C1(Snめっき層)と旋回スクロール60の旋回基板61の圧縮室側端面61aの第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)が互いに接触している。
【0046】
ここで、比較圧縮機1”において、固定スクロール50の固定渦巻壁52の壁高さは旋回スクロール60の旋回渦巻壁62の壁高さと同じである。そして、比較圧縮機1”のスクロール作動中に、以下の接触ペアAと接触ペアBとのそれぞれにおいて、摩擦熱による温度上昇が発生する。接触ペアAは、固定スクロール50の固定渦巻壁52の先端の第1被膜層C1(Snめっき層)と旋回スクロール60の旋回基板61の圧縮室側端面61aの第2被膜層C1(Ni-Pめっき層)との摺動部分であり、接触ペアBは、固定スクロール50の固定基板51の圧縮室側端面51aの第1被膜層C1(Snめっき層)と旋回スクロール60の旋回渦巻壁62の先端の第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)との摺動部分である。
【0047】
前述のようにSnめっきは、Ni-Pめっきと比較すると、摩耗し易い上にめっき施工面からの剥離を起こし易いめっきである。したがって、本願発明者は、比較圧縮機1”の接触ペアA及び接触ペアBにおいて、第1被膜層C1(Snめっき層)の摺動状況について、詳しく検討した。
【0048】
比較圧縮機1”において、接触ペアBでは、スクロール作動中において、固定スクロール50の固定基板51の圧縮室側端面51aの第1被膜層C1(Snめっき層)は旋回スクロール60の公転旋回に起因して間欠的(断続的)に第2被膜層C2に摺動する。したがって、間欠的(断続的)な摺動では、接触ペアBにおける固定基板51の圧縮室側端面51aの第1被膜層C1(Snめっき層)の摩耗及び剥離の可能性が低く、第1被膜層C1(Snめっき層)は残存し易くなっている。
【0049】
しかし、比較圧縮機1”において、接触ペアAでは、スクロール作動中において、固定スクロール50の固定渦巻壁52の先端の第1被膜層C1(Snめっき層)は連続的に(常に)第2被膜層C2に摺動する。したがって、接触ペアAでは、固定スクロール50の固定渦巻壁52の先端の第1被膜層C1(Snめっき層)が摩耗及び剥離によって固定渦巻壁52の先端から消失し、アルミニウム系材料(アルミニウム素材)が固定渦巻壁52の先端面に露出するおそれがある。その結果、固定渦巻壁52が熱膨張により伸長すると、固定渦巻壁52の先端面に露出したアルミニウム系材料と旋回基板61の圧縮室側端面61aの第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)の表面との間で大きな摩擦力が発生して、これらの温度が過度に上昇するおそれがある。この場合に、比較圧縮機1”では、接触ペアAでは、固定スクロール50のアルミニウム成分を含む露出した固定渦巻壁52の先端がニッケル成分を含む第2被膜層C2を介して旋回スクロール60の旋回基板61の圧縮室側端面61aに凝着するおそれがある。
【0050】
これに対し、本実施形態に係るスクロール型圧縮機1では、接触ペアAに相当するペアA1である一方のスクロール30Aの渦巻壁の先端の第1被膜層C1(Snめっき層)と他方のスクロール30Bの基板の第2被膜層C2が、互いに離隔している。したがって、スクロール型圧縮機1では、一方のスクロール30Aの渦巻壁の先端の第1被膜層C1(Snめっき層)の摩耗及び剥離が防止される。その結果、スクロール型圧縮機1では、一方のスクロール30Aの渦巻壁の先端が他方のスクロール30Bの基板の圧縮室側端面の第2被膜層C2に凝着することが確実に防止され、耐久性の向上が図られている。
【0051】
そして、スクロール型圧縮機1では、一方のスクロール30Aの渦巻壁の先端の第1被膜層C1(Snめっき層)と他方のスクロール30Bの基板の第2被膜層C2との間に隙間が形成され、一方のスクロール30Aの基板の圧縮室側端面の第1被膜層C1(Snめっき層)と他方のスクロール30Bの渦巻壁の先端の第2被膜層C2が互いに優先的に接触するようになっている。その結果、スクロール型圧縮機1では、接触ペアAに相当するペアA1(一方のスクロール30Aの渦巻壁の先端の第1被膜層C1(Snめっき層)と他方のスクロール30Bの基板の第2被膜層C2)における押圧力が比較例の圧縮機1”における押圧力よりも低減し、接触ペアBに相当するペアB1(一方のスクロール30Aの基板の圧縮室側端面の第1被膜層C1(Snめっき層)と他方のスクロール30Bの渦巻壁の先端の第2被膜層C2)における押圧力が比較例の圧縮機1”における押圧力よりも増加することになる。スクロール型圧縮機1における接触ペアBに相当するペアB1では押圧力が増加するが、このペアB1の一方のスクロール30Aの基板の圧縮室側端面の第1被膜層C1(Snめっき層)は第2被膜層C2に対して間欠的に摺動している。したがって、このペアB1における第1被膜層C1(Snめっき層)は残存し易くなっており高い限界面圧を有している。
【0052】
また、本実施形態では、スクロール型圧縮機1では、気体冷媒が潤滑油と一緒に圧縮室H2に取り込まれ、一方のスクロール30Aの渦巻壁の先端の第1被膜層C1と他方のスクロール30Bの基板の第2被膜層C2との間の隙間に、潤滑油からなる油膜Mが形成されるように構成されている。これにより、圧縮室H2の気密性が容易に確保されつつ、耐摩耗性及び耐凝着(かじり)性の向上が図られる。その結果、Snめっき(第1被膜層C1)の高寿命化が図られ、ひいては、耐久性の向上がより効果的に図られている。
【0053】
以上のように、本実施形態に係るスクロール型圧縮機1では、固定スクロール50及び旋回スクロール60の素材としてアルミニウム系材料が採用されることで、スクロールユニット30の軽量化が図られている。そして、上述のように、スクロール型圧縮機1は、従来よりも耐久性を向上させることができる構造を有している。
【0054】
本実施形態では、旋回スクロール60におけるめっき施工面積は固定スクロール50におけるめっき施工面積よりも小さく、ニッケル-リンめっき(Ni-Pめっき)による第2被膜層C2が形成された他方のスクロール30Bは、旋回スクロール60である。これにより、単位施工面積当たりのめっき施工費の高いNi-Pめっきがめっき施工面積の小さい(狭い)旋回スクロール60に形成されることになる。その結果、めっき施工費が第2被膜層C2(Ni-Pめっき層)を固定スクロール50に形成した場合のめっき施工費よりも低くなり、製造コストの低減が図られる。
【0055】
なお、本実施形態では、ニッケル-リンめっきの施工対象である他方のスクロール30Bは、旋回スクロール60であるが、これに限定されるものではない。
図5に示されるように、ニッケル-リンめっきの施工対象である他方のスクロール30Bは、固定スクロール50でもよい。
【0056】
具体的には、
図5を参照すると、変形例に係るスクロール型圧縮機1のスクロールユニット30では、ニッケル-リンめっきによる第2被膜層C2が形成された他方のスクロール30Bは、固定スクロール50であり、錫めっき(Snめっき)による第1被膜層C1が形成された一方のスクロール30Aは、旋回スクロール60である。この場合、
図5を参照すると、錫めっきによる第1被膜層C1が旋回スクロール60の旋回基板61の圧縮室側端面61aと旋回渦巻壁62の表面に形成され、ニッケル-リンめっきによる第2被膜層C2が固定スクロール50の固定基板51の圧縮室側端面51aと固定渦巻壁52の表面に形成され、ニッケル-リンめっき(Ni-Pめっき)が形成された他方のスクロール30Bである固定スクロール50の固定渦巻壁52の壁高さh2が、錫めっきが形成された一方のスクロール30Aである旋回スクロール60の旋回渦巻壁62の壁高さh1よりも高くなるように設定されている。そして、
図5を参照すると、旋回スクロール60の旋回渦巻壁62の先端の第1被膜層C1と固定スクロール50の固定基板51の第2被膜層C2が、互いに離隔しており、旋回スクロール60の旋回基板61の第1被膜層C1と固定スクロール50の固定渦巻壁52の先端の第2被膜層C2が、互いに接触している。この変形例に係るスクロール型圧縮機1においても、スクロールユニット30の軽量化が図られると共に、耐久性の向上が図られる。
【0057】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…スクロール型圧縮機、
50…固定スクロール、
51…固定基板(基板)、
51a…圧縮室側端面、
52…固定渦巻壁(渦巻壁)、
60…旋回スクロール、
61…旋回基板(基板)、
61a圧縮室側端面、
62…旋回渦巻壁(渦巻壁)、
30A…一方のスクロール、
30B…他方のスクロール、
C1…第1被膜層、
C2…第2被膜層、
h1…壁高さ(前記一方のスクロールの前記渦巻壁の壁高さ)、
h2…壁高さ(前記他方のスクロールの前記渦巻壁の壁高さ)、
H2…圧縮室