(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144911
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
H04N 5/64 20060101AFI20241004BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H04N5/64 521Z
G02B27/01
H04N5/64 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057087
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 岳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 航
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA30
2H199DA33
2H199DA44
(57)【要約】
【課題】カバーの着脱が可能でありながら、より簡易な構造で耐水性を有するヘッドアップディスプレイを提供すること。
【解決手段】本開示のヘッドアップディスプレイは、車両Cに搭載されるヘッドアップディスプレイであって、表示光Liを射出するディスプレイ20と、表示光Liを反射する平面鏡ユニット10や凹面鏡30と、表示光Liを方向Uへ通過する開口53を形成する上ケース50と、平面鏡ユニット10や凹面鏡30を収容空間62sに収容する下ケース60と、上ケース50と下ケース60とからなるケース40と、開口53を覆う板状のカバー80と、を備え、上ケース50は、カバー80の左右方向の端部81,82を差し込むスリット50sを形成し、カバー80は、端部81,82のうち一方の端部82が低くなるように傾斜しており、ケース40は、一方の端部82を、収容空間62sとは異なる第二収容空間62wに収容する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるヘッドアップディスプレイであって、
表示光を射出するディスプレイと、
前記表示光を反射するミラーと、
前記表示光を上方へ通過する開口を形成する上ケースと、
前記ミラーを収容空間に収容する下ケースと、
前記上ケースと前記下ケースとからなるケースと、
前記開口を覆う板状のカバーと、
を備え、
前記上ケースは、前記カバーの左右方向の端部を差し込むスリットを形成し、
前記カバーは、前記端部のうち一方の端部が低くなるように傾斜しており、
前記ケースは、前記一方の端部を、前記収容空間とは異なる第二収容空間に収容する
ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記第二収容空間は、前記下ケースの底面から上方に向かう壁部で区画される
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記上ケースは、前記カバーを載置する載置部と、前記カバーを抑える抑え部と、の隙間で前記スリットを形成し、
前記壁部は、前記載置部の前記収容空間側に隣接して形成される
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドアップディスプレイの構造として、特許文献1や特許文献2に示される構成が開示されている。
特許文献1の構成では、粘着シート(30)が防塵シート(24)を収容部(13)へ固定する。粘着シートを用いる構成は、防塵シートの再利用性や、ヘッドアップディスプレイのメンテナンス性を低下させていた。そこで、特許文献2の構成では、爪部(6)がカバー(5)を蓋部材(3)へ固定する。この構成によって、カバーの再利用性や、ヘッドアップディスプレイのメンテナンス性が向上された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-102305号公報
【特許文献2】特開2022-123149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カバーを着脱可能に備えるヘッドアップディスプレイとして、より簡易な構造でカバーを固定できることが好ましかった。また、それでありながら耐水性にも優れる構造が好ましかった。
本発明の目的とするところは、上述課題に着目し、カバーの着脱が可能でありながら、より簡易な構造で耐水性を有するヘッドアップディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るヘッドアップディスプレイは、
車両に搭載されるヘッドアップディスプレイであって、
表示光を射出するディスプレイと、
前記表示光を反射するミラーと、
前記表示光を上方へ通過する開口を形成する上ケースと、
前記ミラーを収容空間に収容する下ケースと、
前記上ケースと前記下ケースとからなるケースと、
前記開口を覆う板状のカバーと、
を備え、
前記上ケースは、前記カバーの左右方向の端部を差し込むスリットを形成し、
前記カバーは、前記車両の左右方向の端部のうち一方の端部が低くなるように傾斜しており、
前記ケースは、前記一方の端部を、前記収容空間とは異なる第二収容空間に収容する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示のヘッドアップディスプレイ1(HUD1)が車両Cに搭載された態様の一例を示す図。
【
図2B】上ケース50及びカバー80の外観を示す斜視図。
【
図3A】開口53を含むX-Y断面におけるヘッドアップディスプレイ1の概略断面図。
【
図3B】開口53を含むX-Y断面における上ケース50及び下ケース60の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本開示のヘッドアップディスプレイを、ヘッドアップディスプレイ1(HUD1)が車両Cに搭載された実施形態及び変形例として例にあげ、添付図面を用いて次の順序で説明する。
【0008】
[第一実施形態]
<1-1.構成の説明>
<1-2.ケース40の説明>
<1-3.流路WLの説明>
【0009】
[第一実施形態]
図1は、本開示のヘッドアップディスプレイ1が車両Cに搭載された態様の一例を示す図である。
図1に示す通り、本開示のHUD1は車両Cに設けられたウインドシールドWSの下方に組み付けることができる。車両Cは自動車であるが、自動二輪、作業用車両等の他の形態の車両へも適用できる。車両Cは、被投射部材の一例であるウインドシールドWSと、HUD1を備える。なお、図面内に示される通り、X軸は車両の左右方向、Y軸は車両の上下方向、Z軸は車両の前後方向に対応する。また、それぞれの軸の正の方向は車両Cの左方向Lと上方向Uと前方向Fである。また、それぞれの軸の負の方向は車両Cの左方向Lと上方向Uと前方向Fである。
【0010】
HUD1は、ウインドシールドWSへ表示光Liを投影する。ウインドシールドWSは、表示光Liの一部を反射する。車両Cのユーザは、アイポイントEPから表示光を目で視認することで、あたかも虚像VがウインドシールドWS前方に浮かんで見えるように知覚することができる。HUD1は、回転軸Aを中心に凹面鏡30を回転することで、表示光Liの投影方向を変えてもよい。この構成によれば、HUD1は車両Cのユーザの体格等に応じて表示光Liの光路を調節することができる。すなわち、表示光Liは、標準光路Lc、ショーター光路Ls、トーラー光路Ltをたどることができる。
なお、車両Cは、車両Cの中央よりも右側に偏った位置にハンドルを備える。したがって、車両Cは、いわゆる右ハンドル車である。また、HUD1は、ハンドルの前方に搭載されている。すなわち、HUD1もまた、車両Cの右側に偏った位置に備わる。
【0011】
HUD1は、ディスプレイ20と、平面鏡ユニット10と、凹面鏡30と、ケース40と、を備える。
【0012】
ディスプレイ20は、表示光Liを平面鏡ユニット10へ出射する。ディスプレイ20は、表示光Liを出射する構成として、液晶や有機ELなどの電子ディスプレイを用いた構成、DMD(Digital Micro mirror Device)やLCOS(Liquid Crystal on Silicon)やTFT(Thin Film Transistor)を用いたプロジェクターとスクリーンを用いた構成が適用されうる。
【0013】
平面鏡ユニット10は、ディスプレイ20が出射した表示光Liを凹面鏡30へ反射する。平面鏡ユニット10は、適切な位置に固定された状態で光を反射できる構成であれば良い。例えば本開示の平面鏡ユニット10は、反射面を有する平面鏡、平面鏡を保持する平面鏡ホルダ、平面鏡の縁を覆う平面鏡カバーなどを有する。
【0014】
平面鏡は、光を反射する平板状の鏡である。平面鏡は、ガラスなどの基材に対して、アルミなどを蒸着することで構成できる。平面鏡は、アルミなどの蒸着により形成された反射面を有し、この反射面で、種々の光を反射することができる。本開示では、平面鏡は、ガラス基材の面のうち、表示光Liが入射する面に反射面を有する。
【0015】
平面鏡カバーは、平面鏡が有する反射面のうち、HUD1の表示に用いる箇所のみを露呈するために、反射面を区画するように反射面の縁を覆う遮光部材である。平面鏡カバーは、ポリプロピレンやABSなどを主成分とした合成樹脂等を基材として、暗色系の塗装やシボを施したもので構成できる。
【0016】
凹面鏡30は、平面鏡ユニット10が反射した表示光Liを、車両Cに搭載される透過反射部材の一例であるウインドシールドWSへ反射する。凹面鏡30の反射面は、ウインドシールドWSの歪みや虚像Vの表示サイズに応じた自由曲面形状であると、虚像Vの表示品位が向上する。凹面鏡31は、ポリカーボネートやポリカペットなどの合成樹脂やガラスの基材へ、反射面をアルミなどの蒸着で形成したものを適用できる。
【0017】
ケース40は、HUD1の構成部品の相対位置を固定しつつ、車両Cに固定される剛性が高い部材である。ケース40は、表示光Liの光路を区切る遮蔽部としての機能も有する。ケース40は、ABSなどの剛性の高い剛性樹脂や、マグネシウム合金などが好ましい。
【0018】
カバー80は、ケース40に形成された開口53を覆う保護部材である。カバー80は、厚さが一様な板状である透明合成樹脂基材が適用でき、例えばPMMAや、ポリカーボネートで構成できる。カバー80は、ケース40の開口53を開いた状態を保ったまま保持される。
【0019】
<1-2.ケース40の説明>
図2A、
図2B、
図3Aに示されるように、ケース40は、上ケース50と下ケース60とで形成される。
図2Aは、上ケース50の外観を示す斜視図である。
図2Bは、カバー80が装着された上ケース50の外観を示す斜視図である。
図3Aは、開口53を含むX-Y断面におけるヘッドアップディスプレイ1の概略断面図である。
【0020】
上ケース50は、方向U側へ向かって表示光Liを通過させる、下ケース60に対する蓋部材である。上ケース50は、スリット50sと、載置部51と、抑え部52と、開口53と、凹部55を形成する。
【0021】
スリット50sは、カバー80を保持する隙間である。スリット50sは、載置部51と抑え部52の間に形成された隙間などで構成される。スリット50sは、カバー80が差し込まれる方向において、カバー80の厚みとおよそ同じ幅の隙間である。
【0022】
載置部51は、カバー80を重力方向である方向U側で受ける箇所である。載置部51は、方向Zに向かって伸びる梁のような形状を為している。載置部51は、浮いているように表現されているが、他の上ケース50の部位(抑え部52等)と一体に形成される。
抑え部52は、方向U側でカバー80が浮き上がることを防ぐように抑える箇所である。
載置部51と抑え部52は、X-Z平面において位置が異なるように形成されることで、射出成形の金型の構造を簡易に実現できる。
【0023】
スリット50sは、カバー80を左右方向に挟むような2箇所に形成される。カバー80は、スリット50sの差込口50aは端部81,82を合わせた姿勢で、方向B側から方向Fへ向かって差し込まれる。差し込みが完了すると、上ケース50へのカバー80の装着が完了する。スリット50s(載置部51)は、端部81が端部82より高くなるようにカバー80を傾斜させた状態で保持する。
【0024】
なお、スリット50sは、少なくとも開口53の方向X側に対向して設けられれば良いが、
図2Aに示されるように、開口53の方向F側にも設けられてもよい。
【0025】
凹部55は、カバー80の縁部分に対応して形成される凹みである。凹部55は、人の指をカバー80の裏面(下面)に引っ掛けられる程度の大きさの凹みである。カバー80の交換時に、作業者がこの凹部55へ手指を入れることでカバー80を把持できる。
【0026】
下ケース60は、開口を上に向けた箱形状を為す収容体であり、ディスプレイ20や平面鏡ユニット10や凹面鏡30を収容空間62sに収容する。表示光Liも収容空間62sを進行した後に、開口53を通過する。
下ケース60は、収容空間62s、第二収容空間62w、底面60b、壁部61を形成する。
【0027】
第二収容空間62wは、スリット50sに差し込まれたカバー80の端部82を収容する空間である。第二収容空間62wは、後述の流路WLに沿って液体が流れてきた場合に、液体が収容空間62sへ進入することを防ぐ。
【0028】
底面60bは、収容空間62s及び第二収容空間62wの底面を形成する。底面60bは、収容空間62sと第二収容空間62wとの間を区画する壁部61を形成する。壁部61は、底面60bから方向U側へ向かって突出する壁形状である。壁部61は、液体が収容空間62sへ進入することを防ぐ。
【0029】
<1-3.流路WLの説明>
ヘッドアップディスプレイ1は、耐水性の観点で優れる。
図3Bは、ヘッドアップディスプレイ1(特にカバー80)が方向U側から水などの液体をかけられた場合の状態を示す図である。
【0030】
液体は、矢印付き二点鎖線で示される流路WLを辿って流れる。まず、カバー80は、端部82側が重力方向である方向Yにおいて低くなるように上ケース50に保持される。したがって、液体は、端部82側へ流れる。流れた液体は、抑え部52とカバー80の接点に到達する。この接点において両者が強く接触している場合、液体はここにとどまるか、方向Zへ流れ出す。しかし、本実施形態のように、スリット50sにカバー80が差し込まれている構成では、強い接触が見込まれないので、液体は接点を超えてケース40の内部へ進入する場合がある。
【0031】
図示される流路WLは、この場合に基づいて表現されており、引き続き二点鎖線で示されている。端部82へ到達した液体は、重力に従い第二収容空間62wへ到達する。このように、収容空間62sとは異なる第二収容空間62wへ液体が到達するように構成されることは、表示光Liに影響が及び得る収容空間62sへの液体の進入を防止できる。
【0032】
(効果例)
第一に、本開示のヘッドアップディスプレイは、
車両Cに搭載されるヘッドアップディスプレイであって、
表示光Liを射出するディスプレイ20と、
表示光Liを反射する平面鏡ユニット10や凹面鏡30と、
表示光Liを方向Uへ通過する開口53を形成する上ケース50と、
平面鏡ユニット10や凹面鏡30を収容空間62sに収容する下ケース60と、
上ケース50と下ケース60とからなるケース40と、
開口53を覆う板状のカバー80と、
を備え、
上ケース50は、カバー80の左右方向の端部81,82を差し込むスリット50sを形成し、
カバー80は、端部81,82のうち一方の端部82が低くなるように傾斜しており、
ケース40は、一方の端部82を、収容空間62sとは異なる第二収容空間62wに収容する。
【0033】
この構成に依れば、好適に収容空間62への液体の進入を防げる。ひいては、この構成は、カバーの着脱が可能でありながら、より簡易な構造で耐水性を有するヘッドアップディスプレイとなる。
【0034】
第二に、本開示のヘッドアップディスプレイ1では、
第二収容空間62wは、下ケース60の底面60bから上方に向かう壁部61で区画される。
【0035】
この構成に依れば、より好適に収容空間62sへの液体の進入を防げる。
【0036】
第三に、本開示のヘッドアップディスプレイ1では、
上ケース50は、カバー80を載置する載置部51と、カバー80を抑える抑え部52と、の隙間でスリット50sを形成し、
壁部61は、載置部51の収容空間62s側に隣接して形成される。
【0037】
この構成に依れば、より好適に収容空間62sへの液体の進入を防げる。
【0038】
ここまでの説明では、本開示のヘッドアップディスプレイ装置を車両に搭載したときの形態の一例が説明された。本開示の説明では、一部の周知技術の説明が省略されている。また、本願発明はこの形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜種々の改良ならびに変更が可能なことは勿論である。
【0039】
カバー80がスリット50sに差し込まれる態様が示されたが、カバー80は、上ケース50の位置決め部に突き当たることで位置決めが行われてもよい。
カバー80は、通過する表示光Liを変調するような複屈折特性、偏光特性、波長特性などの光学特性を有してもよい。
【0040】
カバー80の方向R側の端部82が、方向L側の端部81よりも低い態様が示されたが、方向L側の端部が低くなるように構成されてもよい。なお、車両が左ハンドル車の場合は、方向L側の端部が低くなるように構成された方がよい。というのも、ヘッドアップディスプレイが収容されるダッシュボード(インストルメントパネル)は、車両の中央より外側の方が低くなるように構成されることが一般的である。したがって、この形状に合わせて、車両の外側に位置する方の端部が低くなるように構成されることが望ましい。
【符号の説明】
【0041】
C 車両
A 回転軸
EP アイポイント
Li 表示光
V 虚像
WS ウインドシールド
WL 流路
1 ヘッドアップディスプレイ(HUD)
10 平面鏡ユニット
20 ディスプレイ
30 凹面鏡
40 ケース
50 上ケース
50s スリット
51 載置部
52 抑え部
53 開口
55 凹部
60 下ケース
60b 底面
61 壁部
62s 収容空間
62w 第二収容空間
80 カバー