(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144917
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】溶接補助装置及び溶接補助方法
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20241004BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B23K31/00 Z
B23K31/00 F
B23P21/00 307J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057094
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】渥美 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】李 思明
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030BD06
3C030DA10
(57)【要約】
【課題】溶接毎に変化する歪み量を考慮して次の溶接予定位置を適切に作業者に報知できる溶接補助装置及び溶接補助方法を提供する。
【解決手段】溶接補助装置1は、ワークWに予め設定された複数の溶接予定位置P1から溶接毎に次に溶接を行うべき次溶接位置P2を報知する溶接補助装置であって、複数の溶接予定位置P1を含む溶接予定範囲R1におけるワークWの歪み量を測定する測定部11と、溶接予定範囲R1においてワークWの歪み量が極大となる極大領域R2に位置する溶接予定位置P1を次溶接位置P2と決定する決定部12と、決定部12によって決定された次溶接位置P2を外部に報知する報知部13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに予め設定された複数の溶接予定位置から溶接毎に次に溶接を行うべき次溶接位置を報知する溶接補助装置であって、
前記複数の溶接予定位置を含む溶接予定範囲における前記ワークの歪み量を測定する測定部と、
前記溶接予定範囲において前記ワークの歪み量が極大となる極大領域に位置する溶接予定位置を次溶接位置と決定する決定部と、
前記決定部によって決定された前記次溶接位置を外部に報知する報知部と、を備える、溶接補助装置。
【請求項2】
前記報知部は、前記次溶接位置を示す画像或いは映像を前記ワークの表面に投影する投影装置によって構成されている、請求項1記載の溶接補助装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記極大領域が複数存在する場合に、前回に決定した次溶接位置に最も近接する極大領域に位置する溶接予定位置を前記次溶接位置として決定する、請求項1記載の溶接補助装置。
【請求項4】
溶接予定範囲における溶接前の前記ワークの歪み量と、溶接予定範囲における溶接後の前記ワークの歪み量と、を記憶する記憶部を更に備える、請求項1~3のいずれか一項記載の溶接補助装置。
【請求項5】
記憶部は、前記溶接予定範囲における前記溶接予定位置の溶接予定順序及び溶接実施毎の前記ワークの歪み量の測定結果の履歴を更に記憶する、請求項4記載の溶接補助装置。
【請求項6】
ワークに予め設定された複数の溶接予定位置から溶接毎に次に溶接を行うべき次溶接位置を報知する溶接補助方法であって、
前記複数の溶接予定位置を含む溶接予定範囲における前記ワークの歪み量を測定する測定ステップと、
前記溶接予定範囲において前記ワークの歪み量が極大となる極大領域に位置する溶接予定位置を次溶接位置と決定する決定ステップと、
前記決定ステップによって決定された前記次溶接位置を外部に報知する報知ステップと、を備える、溶接補助方法。
【請求項7】
前記報知ステップでは、前記次溶接位置を示す画像或いは映像を前記ワークの表面に投影する、請求項6記載の溶接補助方法。
【請求項8】
前記決定ステップでは、前記極大領域が複数存在する場合に、前回に決定した次溶接位置に最も近接する極大領域に位置する溶接予定位置を前記次溶接位置として決定する、請求項6記載の溶接補助方法。
【請求項9】
溶接予定範囲における溶接前の前記ワークの歪み量と、溶接予定範囲における溶接後の前記ワークの歪み量と、を記憶する記憶ステップを更に備える、請求項6~8のいずれか一項記載の溶接補助方法。
【請求項10】
前記記憶ステップでは、前記溶接予定範囲における前記溶接予定位置の溶接予定順序及び溶接実施毎の前記ワークの歪み量の測定結果の履歴を更に記憶する、請求項9記載の溶接補助方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接補助装置及び溶接補助方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗スポット溶接やレーザ溶接を用いてワークの接合を行うにあたっては、溶接品質の観点から、溶接位置でのワーク間の隙間量の管理が重要となっている。例えば鉄道車両構体の外板のような大型のワークにおいては、寸法公差等に起因してワークの歪み量自体が大きくなる。このため、ワーク間の隙間量の管理が特に重要性を有している。実際の溶接作業では、ワークの歪み量を見極めながら溶接位置を決定する必要があり、作業者に熟練した技能が要求される場面が多く存在する。このような課題に対し、例えば特許文献1に記載の作業ガイダンス装置では、作業対象物の機種毎に予め定められた作業順序を作業者に報知する手法が開示されている。このような作業順序の報知により、作業者の熟練度に寄らずに作業が実施できるように補助がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の作業ガイダンス装置では、予め定められた作業順序が作業者に報知される。しかしながら、ワークに予め設定された複数の溶接予定位置を順次溶接する場合、一の溶接予定位置の溶接毎に溶接箇所の周辺を始めとする領域でワークの歪み量が変化していくことが考えられる。このような歪み量の変化は、同一部材のワーク間でも異なる挙動を示す場合があり、作業者の熟練度に寄らずに一定の品質でワークの溶接を行うためには、溶接毎に変化する歪み量を考慮して次の溶接予定位置を作業者に適切に報知できる溶接補助が必要となっている。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、溶接毎に変化する歪み量を考慮して次の溶接予定位置を適切に作業者に報知できる溶接補助装置及び溶接補助方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る溶接補助装置は、ワークに予め設定された複数の溶接予定位置から溶接毎に次に溶接を行うべき次溶接位置を報知する溶接補助装置である。この溶接補助装置は、複数の溶接予定位置を含む溶接予定範囲におけるワークの歪み量を測定する測定部と、溶接予定範囲においてワークの歪み量が極大となる極大領域に位置する溶接予定位置を次溶接位置と決定する決定部と、決定部によって決定された次溶接位置を外部に報知する報知部と、を備える。
【0007】
この溶接補助装置では、次溶接位置の決定にあたって、溶接毎に測定されたワークの歪み量が考慮される。したがって、この溶接補助装置では、溶接毎に変化するワークの歪み量に対応した次溶接位置が決定される。さらに、上述したように決定された次溶接位置が外部に報知されることによって、作業者は決定された次溶接位置を認識できる。したがって、この溶接補助装置は、溶接毎に変化する歪み量を考慮して次の溶接予定位置を適切に作業者に報知できる。
【0008】
報知部は、次溶接位置を示す画像或いは映像をワークの表面に投影する投影装置によって構成されていてもよい。この場合、例えばケガキ工程等によりワークに次溶接位置をマーキングする必要がないため、作業工数を低減できる。
【0009】
決定部は、極大領域が複数存在する場合に、前回に決定した次溶接位置に最も近接する極大領域に位置する溶接予定位置を次溶接位置として決定してもよい。この場合、前回に決定された次溶接位置から今回の次溶接位置までの移動を最小限にできるため、作業効率を向上できる。
【0010】
溶接装置は、溶接予定範囲における溶接前のワークの歪み量と、溶接予定範囲における溶接後の前記ワークの歪み量と、を記憶する記憶部を更に備えていてもよい。この場合、例えば溶接前後のワークの歪み量を比較することによって、ワークにおける溶接が適切に実施されたか否かを検証できる。
【0011】
記憶部は、溶接予定範囲における溶接予定位置の溶接予定順序及び溶接実施毎のワークの歪み量の測定結果の履歴を更に記憶してもよい。この場合、例えば溶接予定順序と実際に溶接が行われた溶接順序とを比較することで、作業者が報知された順序に従って、溶接を実施したか否かを検証できる。また、例えばワークの歪み量の測定結果の履歴と溶接順序とを照合することで、当該溶接順序において溶接を行った際のワークの歪み量の変化を検証でき、今後の作業条件の改善に寄与できる。
【0012】
本発明の一側面に係る溶接方法は、ワークに予め設定された複数の溶接予定位置から溶接毎に次に溶接を行うべき次溶接位置を報知する溶接補助方法である。この溶接補助方法は、複数の溶接予定位置を含む溶接予定範囲におけるワークの歪み量を測定する測定ステップと、溶接予定範囲においてワークの歪み量が極大となる極大領域に位置する溶接予定位置を次溶接位置と決定する決定ステップと、決定ステップによって決定された次溶接位置を外部に報知する報知ステップと、を備える。
【0013】
この溶接補助方法では、次溶接位置の決定にあたって、溶接毎に測定されたワークの歪み量が考慮される。したがって、この溶接補助方法では、溶接毎に変化するワークの歪み量に対応した次溶接位置が決定される。さらに、上述したように決定された次溶接位置が外部に報知されることによって、作業者は決定された次溶接位置を認識できる。したがって、この溶接補助方法は、溶接毎に変化する歪み量を考慮して次の溶接予定位置を適切に作業者に報知できる。
【0014】
報知ステップでは、次溶接位置を示す画像或いは映像をワークの表面に投影してもよい。この場合、例えばケガキ工程等によりワークに次溶接位置をマーキングする必要がないため、作業工数を低減できる。
【0015】
決定ステップは、極大領域が複数存在する場合に、前回に決定した次溶接位置に最も近接する極大領域に位置する溶接予定位置を次溶接位置として決定してもよい。この場合、前回に決定された次溶接位置から今回の次溶接位置までの移動を最小限にできるため、作業効率を向上できる。
【0016】
溶接補助方法は、溶接予定範囲における溶接前のワークの歪み量と、溶接予定範囲における溶接後のワークの歪み量と、を記憶する記憶ステップを更に備えていてもよい。この場合、例えば溶接前後のワークの歪み量を比較することによって、ワークにおける溶接が適切に実施されたか否かを検証できる。
【0017】
記憶ステップでは、溶接予定範囲における溶接予定位置の溶接予定順序及び溶接実施毎のワークの歪み量の測定結果の履歴を更に記憶してもよい。この場合、例えば溶接予定順序と実際に溶接が行われた溶接順序とを比較することで、作業者が報知された順序に従って、溶接を実施したか否かを検証できる。また、例えばワークの歪み量の測定結果の履歴と溶接順序とを照合することで、当該溶接順序において溶接を行った際のワークの歪み量の変化を検証でき、今後の作業条件の改善に寄与できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、溶接毎に変化する歪み量を考慮して次の溶接予定位置を適切に作業者に報知できる溶接補助装置及び溶接補助方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態に係る溶接補助装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】ワークの歪み量の可視化画像の一例を示す図である。
【
図4】報知部による次溶接位置の放置の一例を示す図である。
【
図7】ワークの歪み量の可視化画像の別例を示す図である。
【
図8】次溶接位置を外部に報知する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】可視化画像を出力する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る溶接補助装置及び溶接補助方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1~
図7を参照して、本実施形態に係る溶接補助装置1について説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る溶接補助装置1の構成を示すブロック図である。
図2は、溶接予定位置P1の一例を示す図である。
図3は、ワークWの歪み量の可視化画像の一例を示す図である。
図4は、報知部13による次溶接位置P2の報知結果を示す図である。
図5は、作業情報の一例を示す図である。
図6は、作業条件情報の一例を示す図である。
図7は、ワークWの歪み量の可視化画像の別例を示す図である。
【0022】
溶接補助装置1は、溶接装置20によるワークWの溶接を補助する装置である。本実施形態では、作業者30が、溶接装置20を用いて、ワークWの溶接を実施する。本実施形態では、溶接装置20は、スポット溶接装置である。スポット溶接装置は、重ね合わされたワークWに一対の電極を当接させ、電極間に電流を通電することによって、ワークWの溶接を実施する。溶接装置20は、例えばレーザ溶接装置であってもよい。作業者30とは、溶接装置20を用いて、ワークWの溶接を実施する主体である。本実施形態では、作業者30は、溶接装置20を用いて、ワークWの溶接を実施する人間である。ワークWは、溶接装置20によって溶接される対象物であり、例えば鉄道車両の側構体の外板及びドアフレームである。本実施形態では、溶接装置20は、重ね合わされた上記外板とドアフレームとを溶接する。すなわち、本実施形態では、ワークWは、鉄道車両の側構体の外板及びドアフレームである。
【0023】
溶接補助装置1は、溶接毎に複数の溶接予定位置P1を含む溶接予定範囲R1におけるワークWの歪み量の測定を行う。溶接予定範囲R1は、溶接装置20による溶接が実施され得る範囲である。例えば溶接装置20の種類やワークWの種別に応じて合理的範囲が溶接予定範囲R1として設定される。上述したように、本実施形態では、ワークWは、鉄道車両の側構体の外板及びドアフレームであり、溶接予定範囲R1はドアフレーム周辺の領域に設定されている。溶接予定位置P1は、溶接予定範囲R1において、溶接が実施される予定の位置である。本実施形態では、溶接予定範囲R1において、「k」個の溶接予定位置P1が設定されている。本実施形態では、溶接装置20がスポット溶接装置であるので、溶接予定位置P1は当該スポット溶接装置の打点位置となる。歪み量は、本実施形態では、ワークWに直交する方向におけるワークWの変位量によって示されている。
【0024】
溶接補助装置1は、測定された歪み量を考慮して、次に溶接を行うべき次溶接位置P2を決定し、決定した次溶接位置P2を外部に報知する。これにより、上述した歪み量の変化に対応して、次溶接位置P2を決定することができ、作業者の熟練度に依存せずに一定の溶接品質を維持した状態で溶接を実施できる。以下では、溶接補助装置1が、上述した機能を実現するための機能構成の詳細を説明する。
図1に示されるように、溶接補助装置1は、機能要素として、測定部11、決定部12、報知部13、記憶部14、及び出力部15を備えている。
【0025】
測定部11は、ワークWの歪み量を測定する部分である。本実施形態では、測定部11は、複数の溶接予定位置P1を含む溶接予定範囲R1におけるワークWの歪み量を測定する。測定部11は、溶接予定範囲R1の全体において、ワークWの歪み量を測定してもよい。あるいは、測定部11は、溶接予定範囲R1のうち複数の溶接予定位置P1に対応する位置においてのみ、ワークWの歪み量を測定してもよい。この場合、測定部11によりワークWの歪み量が測定される上記複数の溶接予定位置P1は、溶接予定範囲R1において、互いに隣り合っていてもよい。測定部11は、例えば3D形状スキャナによって構成されている。上記3D形状スキャナは、例えばレーザトラッカを含む。測定部11は、溶接を行う毎に上述した測定を行い、測定したワークWの歪み量を決定部12及び記憶部14に出力する。すなわち、測定部11は、ワークWの歪み量の測定と、決定部12及び記憶部14への測定結果の出力とを溶接毎に繰り返し実行する。
【0026】
図3を例にとって、測定部11によるワークWの歪み量の測定結果について説明する。
図3は、いずれの溶接予定位置P1においても溶接が行われていない状態における、ワークWの歪み量の測定結果を示している。
図3では、各溶接予定位置P1における歪み量が色の濃淡でそれぞれ示されている。具体的には、
図3では、歪み量が大きいほど色が濃く示され、歪み量が小さいほど色が淡く示されている。溶接前の状態であっても、
図3に示されるように、各溶接予定位置P1における歪み量は、互いに異なっている。溶接補助装置1では、このような各溶接予定位置P1における歪み量の違いも考慮しつつ、次溶接位置P2が決定される。なお、
図3は、出力部15によって生成されたワークWの歪み量の可視化画像であるが、この可視化画像の生成の詳細については後述する。
【0027】
決定部12は、次溶接位置P2を決定する部分である。本実施形態では、決定部12は、測定部11によって測定されたワークWの歪み量に基づいて、次溶接位置P2を決定する。決定部12は、例えば以下のようにして、次溶接位置P2を決定する。まず、決定部12は、ワークWの歪み量が極大となる極大領域R2を決定する。極大領域R2とは、ワークWの歪み量が極大を示す領域である。「ワークWの歪み量が極大を示す」とは、当該位置における歪み量が、周辺位置の歪み量と比較して、十分大きいことを示す。すなわち、極大領域R2は、ワークWの歪み量が最大となる領域のみを示すわけではなく、例えばワークWの歪み量の最大値から所定範囲内に含まれる歪み量を有する領域も含む。次に、決定部12は、極大領域R2に位置する溶接予定位置P1を次溶接位置P2と決定する。この際、決定部12は、次溶接位置P2を決定した回数を示す決定回数をカウントする。次に、決定部12は、決定した次溶接位置P2を報知部13に出力し、決定した次溶接位置P2及びカウントした決定回数を記憶部14に出力する。
【0028】
上述したように、極大領域R2は、ワークWの歪み量が最大となる領域のみを示すわけではなく、例えばワークWの歪み量の最大値から所定範囲内に含まれる歪み量を有する領域も含む。したがって、
図3に示されるように、溶接予定範囲R1において、極大領域R2が複数存在する場合がある。この場合、決定部12は、前回に決定した次溶接位置P2´と各極大領域R2との距離に基づいて、今回の次溶接位置P2を決定する。本実施形態では、決定部12は、極大領域R2が複数存在する場合に、前回に決定した次溶接位置P2´に最も近接する極大領域R2に位置する溶接予定位置P1を次溶接位置P2として決定する。具体的には、まず、決定部12は、前回の次溶接位置P2´と各極大領域R2との距離を、それぞれ算出する。次に、決定部12は、算出された、前回の次溶接位置P2´との距離が最も短い極大領域R2を決定し、当該極大領域R2に位置する溶接予定位置P1を次溶接位置P2として決定する。
【0029】
上述したように、測定部11は、溶接を行う毎に、ワークWの歪み量を測定し、測定したワークWの歪み量を決定部12に出力する。決定部12は、測定部11からワークWの歪み量を受け取る毎に、次溶接位置P2を決定する。すなわち、決定部12も、次溶接位置P2の決定を、溶接を行う毎に繰り返し実行する。この場合、2回目以降の溶接においては、決定部12は、複数の溶接予定位置P1のうち、既に溶接が実施された溶接予定位置P1を除いた、溶接予定位置P1の中から、次溶接位置P2を決定する。
【0030】
本実施形態では、決定部12は、次溶接位置P2を決定した後に、溶接予定範囲R1に位置する全ての溶接予定位置P1に対して、次溶接位置P2の決定が実施されたか否かを判定する。具体的には、決定部12は、決定回数と、複数の溶接予定位置P1の数とを比較することで、溶接予定範囲R1に位置する全ての溶接予定位置P1に対して、次溶接位置P2の決定が実施されたか否かを判定する。
【0031】
決定部12は、決定回数と複数の溶接予定位置P1の数とが一致した場合に、溶接予定範囲に位置する全ての溶接予定位置P1に対して、次溶接位置P2の決定が実施されたと判定する。決定部12は、決定回数が複数の溶接予定位置P1の数より小さい場合に、溶接予定範囲に位置する全ての溶接予定位置P1に対して、次溶接位置P2の決定が実施されていないと判定する。
【0032】
報知部13は、決定部12によって決定された次溶接位置P2を外部に報知する。報知部13が次溶接位置P2を外部に報知することによって、作業者30は次溶接位置P2を認識する。例えば、報知部13は、投影装置によって構成されている。投影装置は、次溶接位置P2を示す画像或いは映像をワークWの表面に投影する。この場合、作業者30は、ワークWの表面に投影された画像或いは映像を目視によって確認することで、次溶接位置P2を認識する。
【0033】
本実施形態では、報知部13は、次溶接位置P2を示す画像をワークWの表面に投影する投影装置13Aによって構成されている。投影装置13Aは、例えばプロジェクタである。
図4に示されるように、本実施形態では、投影装置13Aは、溶接を行うための条件を示すである作業条件を、次溶接位置P2を示す画像と共にワークWの表面に投影する。作業条件は、例えばワークWの性質と、溶接予定位置P1の座標情報とに基づいて、予め設定されている。ワークWの性質は、例えばワークWの種別、材質、及び歪み量を含む。ワークWの性質のうち、ワークWの種別及び材質は、例えば作業者30によって、溶接の実施前に溶接補助装置1に予め入力されている。本実施形態では、作業条件は、上述したワークWの性質と、溶接予定位置P1の座標情報とに関連付けられて、記憶部14に記憶されている。すなわち、記憶部14には、ワークWの性質毎に各溶接予定位置P1における作業条件が記憶されている。
【0034】
投影装置13Aは、例えば以下のようにして、作業条件をワークWの表面に投影する。まず、投影装置13Aは、ワークWの性質及び次溶接位置P2として決定された溶接予定位置P1の座標情報とに関連付けられた、作業条件を記憶部14から取得する。次に、投影装置13Aは、次溶接位置P2を示す画像と共に、取得した作業条件をワークWの表面に投影する。
【0035】
図4に示されるように、本実施形態では、投影装置13Aは、作業条件として、「電流値」と、「通電時間」と、「加圧力」と、「施行可否情報」と、をワークWの表面に投影する。「電流値」とは、溶接を行う際に、スポット溶接装置が有する一対の電極に通電する電流値である。「通電時間」とは、スポット溶接装置が有する一対の電極に対して通電を行う時間幅である。「加圧力」とは、スポット溶接装置が有する一対の電極がワークWに対して加圧する力である。「施工可否情報」は、対応する溶接予定位置における溶接が実施可能であるか否かを示す情報である。「電流値」、「通電時間」、及び「加圧力」は、溶接予定位置P1毎に互いに異なる値が設定されていてもよく、同じ値が設定されていてもよい。
【0036】
記憶部14は、溶接補助装置1において使用又は生成される各種データを記憶する部分である。本実施形態では、記憶部14は、ワークWの図面情報と、ワークWにおける各溶接予定位置P1の位置を示す座標情報と、溶接補助装置1が実施した作業の内容を示す作業情報と、上述した作業条件の履歴を示す作業条件情報とを記憶する。以下では、記憶部14が記憶する、座標情報、作業情報及び作業条件情報について、更に詳細に説明する。
【0037】
本実施形態では、ワークWにおける各溶接予定位置P1の座標情報は、2次元座標系によって規定されている。当該2次元座標系は、例えばワークWの所定位置を原点として規定されている。上述したように、本実施形態では、複数の溶接予定位置P1の数は、「k」である。したがって、本実施形態では、複数の溶接予定位置P1の数「k」に対応して、各溶接予定位置P1の座標情報が、(X1,Y1)~(Xk,Yk)で示されている。
【0038】
作業情報は、上述したように、溶接補助装置1が実施した作業内容を示す情報である。作業情報は、各溶接予定位置P1毎に記憶部14に記憶されている。本実施形態では、作業情報は、「溶接予定順序」、「溶接順序」、「溶接前歪み量」、「N回目歪み量」、「溶接後歪み量」、及び「差分歪み量」を含む。したがって、本実施形態では、記憶部14は、
図5に示されるように、各溶接予定位置P1の座標情報に関連付けて、「溶接予定順序」、「溶接順序」、「溶接前歪み量」、「N回目歪み量」、「溶接後歪み量」、及び「差分歪み量」を記憶している。
【0039】
「溶接予定順序」とは、溶接予定範囲R1において、対応する溶接予定位置P1が次溶接位置P2として決定された順序である。すなわち、記憶部14は、溶接予定範囲R1における溶接予定位置P1の溶接予定順序を記憶している。
図5に示される例では、「溶接予定順序」の列に示される数字は、対応する溶接予定位置P1が、何番目に次溶接位置P2と決定されたかを示している。
図5に示される例では、位置(X1,Y1)における「溶接予定順序」は、「2」であり、これは、位置(X1,Y1)が2番目に次溶接位置P2と決定されたことを示している。
【0040】
「溶接順序」とは、溶接予定範囲R1において、実際に溶接が行われた順序である。
図5に示される例では、「溶接順序」の列に示される数字は、対応する溶接予定位置P1における溶接が何番目に実施されたかを示している。
図5に示される例では、位置(X1,Y1)における「溶接順序」は、「2」であり、これは、位置(X1,Y1)における溶接が2番目に実施されたことを示している。
【0041】
作業者30は、報知された次溶接位置P2において、溶接を実施するので、基本的には「溶接予定順序」に基づいて、溶接が実施される。したがって、本実施形態では、溶接毎に、「溶接予定順序」が「溶接順序」として、そのまま記憶部14に格納される。この場合、溶接補助装置1は、溶接装置20への通電を検知したことをもって、「溶接予定順序」に基づいた溶接が実施されたと判断してもよい。「溶接予定順序」が「溶接順序」として、そのまま記憶部14に格納される場合、作業者30が、誤って次溶接位置P2とは別の溶接予定位置P1において、溶接を実施すると、実際の「溶接順序」と記憶部14に格納される「溶接順序」とが異なることがある。この場合、例えば溶接が完了した後に、作業者30が、記憶部14に格納さている「溶接順序」を実際の順序へと更新してもよい。あるいは、「溶接順序」は、溶接毎に又は溶接が完了した後に、作業者30によって記憶部14に格納されてもよい。
【0042】
「溶接前歪み量」とは、溶接予定範囲R1において、いずれの溶接予定位置P1でも溶接が行われていない状態における、ワークWの歪み量である。すなわち、「溶接前歪み量」は、溶接予定範囲R1における溶接前のワークWの歪み量である。
図5に示される例では、位置(X1,Y1)における「溶接前歪み量」は「Da1」である。
【0043】
「N回目歪み量」とは、溶接予定範囲R1において、溶接がN回行われた状態における、各溶接予定位置P1の歪み量である。ここで、「N」は、1以上の整数である。上述したように、本実施形態では、複数の溶接予定位置P1の数は、「k」であるので、「N」の範囲は、1以上k-1以下となる。例えば「2回目歪み量」は、溶接予定範囲R1において、溶接が2回行われた状態における各溶接予定位置P1でのワークWの歪み量であり、「10回目歪み量」は、溶接予定範囲R1において、溶接が10回行われた状態における各溶接予定位置P1でのワークWの歪み量である。
図5に示される例では、位置(X1,Y1)における「N回目歪み量」は、「Dn1」である。
【0044】
「溶接後歪み量」とは、溶接予定範囲R1において、全ての溶接予定位置P1で溶接が行われた状態における、ワークWの歪み量である。すなわち、「溶接後歪み量」は、溶接予定範囲R1における溶接後のワークWの歪み量であり、「k回目歪み量」である。
図5に示される例では、位置(X1,Y1)における「溶接後歪み量」は「Db1」である。
【0045】
「差分歪み量」とは、「溶接前歪み量」と「溶接後歪み量」との差分である。例えば溶接予定範囲R1における各溶接予定位置P1での溶接は、ワークWの歪み量が低減するように行われ得る。したがって、溶接前歪み量と溶接後歪み量とを比較した場合には、各溶接予定位置P1における溶接後歪み量は、対応する溶接前歪み量より小さいことが予想される。したがって、両者の差分である「差分歪み量」は、溶接が適切に行われているかを評価する評価指標である。
【0046】
記憶部14は、測定部11からワークWの歪み量を受け取ると共に決定部12から決定した次溶接位置P2及びカウントした決定回数を受け取る毎に、受け取った次溶接位置P2の座標情報と関連付けて、「溶接予定順序」と、対応する歪み量とを格納する。したがって、記憶部14には、溶接実施毎にワークWの歪み量の測定結果の履歴が格納される。以上のように、記憶部14は、溶接予定範囲R1における溶接前のワークWの歪み量と、溶接予定範囲R1における溶接後のワークWの歪み量とを記憶する。また、記憶部14は、溶接予定範囲R1における溶接予定位置P1の溶接予定順序及び溶接実施毎のワークWの歪み量の測定結果の履歴を記憶する。
【0047】
作業条件情報は、上述したように、作業条件の履歴を示す情報である。作業条件情報は、各溶接予定位置P1毎に記憶部14に記憶されている。本実施形態では、作業条件情報は、「電流値」、「通電時間」、及び「加圧力」を含む。したがって、本実施形態では、記憶部14は、
図6に示されるように、各溶接予定位置P1の座標情報に関連付けて、「電流値」、「通電時間」、及び「加圧力」を記憶している。
図6に示される例では、位置(X1,Y1)における、「電流値」は「E1」であり、「通電時間」は「t1」であり、「加圧力」は「P1」である。これは、位置(X1,Y1)においては、「電流値:E1」、「通電時間:t1」、及び「加圧力:P1」という作業条件の下で、溶接が実施されたことを示している。「電流値」、「通電時間」、及び「加圧力」は、対応する溶接予定位置P1における溶接毎に、例えば作業者30によって、記憶部14に格納される。あるいは、対応する溶接予定位置P1における溶接毎に、溶接補助装置1が、「電流値」、「通電時間」、及び「加圧力」の設定値を、溶接装置20から取得し、取得した各設定値を記憶部14に格納してもよい。
【0048】
出力部15は、処理結果を出力する部分である。本実施形態では、出力部15は、ワークWの歪み量の可視化画像を生成し、当該可視化画像を不図示の表示装置上に出力する。一例では、出力部15は、ワークWの溶接後歪み量の可視化画像を生成し、表示装置上に出力する。具体的には、出力部15は、以下のようにして、ワークWの溶接後歪み量の可視化画像を生成し、表示装置上に出力する。まず、出力部15は、記憶部14から各溶接予定位置P1における溶接後歪み量を取得する。次に、ワークWの図面情報に対して、各溶接予定位置P1における溶接後歪み量を色強度で図示することで、
図7に示されるワークWの溶接後歪み量の可視化画像を生成する。
図7に示される例では、ワークWにおける溶接後歪み量が、
図3と同様に、色の濃淡で図示されている。次に、出力部15は、生成した可視化画像を、表示装置上に出力する。あるいは、出力部15は、生成した可視化画像を記憶部14に格納してもよいし、別のコンピュータシステムに送信してもよい。
【0049】
続いて、
図8及び
図9を参照して、本実施形態に係る溶接補助方法について説明する。
図8は、次溶接位置P2を外部に報知する処理の一例を処理フローS1として示すフローチャートである。
図9は、可視化画像を出力する処理の一例を処理フローS2として示すフローチャートである。本実施形態に係る溶接補助方法は、溶接補助装置1を用いて実施される。以下では、まず、
図8を参照して、次溶接位置P2を外部に報知する処理フローS1について説明する。
【0050】
ステップS11では、測定部11が複数の溶接予定位置P1を含む溶接予定範囲におけるワークWの歪み量を測定する。ここでは、測定部11は、「溶接前歪み量」を測定する。すなわち、ステップS11では、測定部11は、溶接予定範囲R1における溶接前のワークWの歪み量を測定する。
【0051】
ステップS12では、決定部12が次溶接位置P2を決定する。ここでは、決定部12は、溶接予定範囲R1においてワークWの歪み量が極大となる極大領域R2に位置する溶接予定位置を次溶接位置P2と決定する。ステップS12では、決定部12は、極大領域R2が複数存在する場合に、前回に決定した次溶接位置P2´に最も近接する極大領域R2に位置する溶接予定位置P1を今回の次溶接位置P2として決定する。
【0052】
ステップS13では、報知部13は、ステップS12によって決定された次溶接位置P2を外部に報知する。ここでは、報知部13は、次溶接位置を示す画像或いは映像をワークWの表面に投影する。上述したように、本実施形態では、報知部13は、投影装置13Aによって構成されている。したがって、ステップS13では、投影装置13Aが、次溶接位置P2を示す画像を、対応する溶接予定位置P1における作業条件と共に、ワークWの表面に投影する。
【0053】
ステップS14では、溶接が実施される。ここでは、作業者30が、溶接装置20を用いて、ステップS12によって決定された次溶接位置P2において、溶接を実施する。本実施形態では、作業者30は、溶接を実施した後に、対応する作業条件情報を記憶部14に格納する。
【0054】
ステップS15では、記憶部14が作業情報を記憶する。ここでは、記憶部14は、各溶接予定位置P1の座標情報と関連付けて、溶接予定範囲R1における溶接前のワークWの歪み量、すなわち、「溶接前歪み量」を記憶する。
【0055】
ステップS16では、決定部12が、溶接予定範囲R1に位置する全ての溶接予定位置P1に対して、次溶接位置P2の決定が実施されたか否かを判定する。すなわち、ステップS16では、決定部12が、次溶接位置P2の決定が完了したか否かを判定する。ここでは、決定部12は、次溶接位置P2を決定した回数を示す決定回数と、複数の溶接予定位置P1の数と、を比較することで、溶接予定範囲R1に位置する全ての溶接予定位置P1に対して、次溶接位置P2の決定が実施されたか否かを判定する。
【0056】
決定回数が、複数の溶接予定位置P1の数と一致する場合、決定部12は、溶接予定範囲に位置する全ての溶接予定位置P1に対して、次溶接位置P2の決定が実施された、すなわち、次溶接位置P2の決定が完了したと判定する。この場合、処理はステップS17に進む。
【0057】
決定回数が、複数の溶接予定位置P1の数より小さい場合、決定部12は、溶接予定範囲に位置する全ての溶接予定位置P1に対して、次溶接位置P2の決定が実施されていない、すなわち、次溶接位置P2の決定が完了していないと判定する。この場合、処理はステップS11に戻る。本実施形態では、溶接予定範囲R1に位置する全ての溶接予定位置P1に対して、次溶接位置P2の決定が実施されるまで、ステップS11~ステップS15が繰り返し実施される。
【0058】
2回目以降に実行されるステップS15では、記憶部14は、対応する溶接予定位置P1の「溶接予定順序」と、各溶接予定位置P1の座標情報と関連付けて、「N回目歪み量」とを記憶する。したがって、ステップS15では、記憶部14が、溶接予定範囲R1における溶接予定位置P1の「溶接予定順序」及び溶接実施毎のワークWの歪み量の測定結果の履歴を記憶する。
【0059】
ステップS17では、測定部11が、ワークWの歪み量を測定する。ここでは、測定部11は、「溶接後歪み量」を測定する。すなわち、ステップS17では、測定部11は、溶接予定範囲R1における溶接後のワークWの歪み量を測定する。
【0060】
ステップS18では、記憶部14が、作業情報を記憶する。ここでは、記憶部14は、各溶接予定位置P1の座標情報と関連付けて、溶接予定範囲R1における溶接後のワークWの歪み量、すなわち、「溶接後歪み量」を記憶する。
【0061】
続いて、
図9を参照して、可視化画像を出力する処理である処理フローS2について説明する。
【0062】
ステップS21では、出力部15が、作業情報を取得する。ここでは、まず、出力部15は、例えば作業者30から、作業情報に含まれる「溶接前歪み量」、「N回目歪み量」、「溶接後歪み量」、及び「差分歪み量」のうち、いずれの歪み量を取得するかを受け付ける。次に、出力部15は、受け付けた歪み量に対応する歪み量を、記憶部14から取得する。
【0063】
ステップS22では、出力部15が、ワークWの歪み量の可視化画像を生成する。ここでは、出力部15は、ワークWの図面情報に対して、各溶接予定位置P1におけるワークWの歪み量を色強度で図示することで、可視化画像を生成する。
【0064】
ステップS23では、出力部15が処理結果を出力する。ここでは、出力部15は、ステップS22によって生成された可視化画像を表示装置上に出力する。
【0065】
以上説明したように、溶接補助装置1では、次溶接位置P2の決定にあたって、溶接毎に測定されたワークWの歪み量が考慮される。したがって、溶接補助装置1では、溶接毎に変化するワークWの歪み量に対応した次溶接位置P2が決定される。さらに、上述したように決定された次溶接位置P2が外部に報知されることによって、作業者30は決定された次溶接位置P2を認識できる。したがって、溶接補助装置1は、溶接毎に変化する歪み量を考慮して次の溶接予定位置を適切に作業者30に報知できる。
【0066】
作業者30が高い熟練度を有する場合であっても、次溶接位置P2を判断するにあたっての基準は様々であり、作業者30に依る次溶接位置P2の決定が行われた場合には、溶接品質にばらつきが生じするおそれがある。溶接補助装置1では、上述したように、ワークWの歪み量が極大となる極大領域に位置する溶接予定位置P1が次溶接位置P2として決定されるので、溶接品質にばらつきが生じがたい。したがって、溶接補助装置1は、ワークWの溶接品質にばらつきが生じることを抑制する。
【0067】
溶接補助装置1では、報知部13は、次溶接位置P2を示す画像或いは映像をワークWの表面に投影する投影装置によって構成されている。この場合、例えばケガキ工程等によりワークWに次溶接位置P2をマーキングする必要がないため、作業工数を低減できる。
【0068】
溶接補助装置1では、決定部12は、極大領域R2が複数存在する場合に、前回に決定した次溶接位置P2´に最も近接する極大領域R2に位置する溶接予定位置P1を次溶接位置P2として決定する。この場合、前回に決定された次溶接位置P2´から今回の次溶接位置P2までの移動を最小限にできるので、作業効率を向上できる。
【0069】
溶接補助装置1は、溶接予定範囲R1における溶接前のワークWの歪み量と、溶接予定範囲R1における溶接後のワークWの歪み量と、を記憶する記憶部14を備えている。この場合、例えば溶接前後のワークWの歪み量を比較することによって、ワークWにおける溶接が適切に実施されたか否かを検証できる。
【0070】
溶接補助装置1では、記憶部14は、溶接予定範囲R1における溶接予定位置P1の溶接予定順序及び溶接実施毎のワークWの歪み量の測定結果の履歴を記憶している。この場合、例えば溶接予定順序と実際に溶接が行われた溶接順序とを比較することで、作業者30が報知された順序に従って、溶接を実施したか否かを検証できる。本実施形態では、記憶部14に記憶された、溶接予定順序と溶接順序とを比較することで、上記の検証を実施できる。また、例えばワークWの歪み量の測定結果の履歴と溶接順序とを照合することで、当該溶接順序において溶接を行った際のワークWの歪み量の変化を検証でき、今後の作業条件の改善に寄与できる。
【0071】
溶接補助装置1を用いた溶接補助方法では、次溶接位置P2の決定にあたって、溶接毎に測定されたワークWの歪み量が考慮される。したがって、上記溶接補助方法では、溶接毎に変化するワークWの歪み量に対応した次溶接位置P2が決定される。さらに、上述したように決定された次溶接位置P2が外部に報知されることによって、作業者30は決定された次溶接位置を認識できる。したがって、上記溶接補助方法は、溶接毎に変化する歪み量を考慮して次の溶接予定位置を適切に作業者30に報知できる。
【0072】
溶接補助装置1を用いた溶接補助方法では、上述したように、ワークWの歪み量が極大となる極大領域に位置する溶接予定位置P1が次溶接位置P2として決定されるので、溶接品質にばらつきが生じがたい。したがって、上記溶接補助方法は、ワークWの溶接品質にばらつきが生じることを抑制する。
【0073】
報知ステップ(ステップS13)では、次溶接位置P2を示す画像或いは映像をワークWの表面に投影する。この場合、例えばケガキ工程等によりワークWに次溶接位置P2をマーキングする必要がないため、作業工数を低減できる。
【0074】
決定ステップ(ステップS12)では、極大領域R2が複数存在する場合に、前回に決定した次溶接位置P2´に最も近接する極大領域R2に位置する溶接予定位置P1を次溶接位置P2として決定する。この場合、前回に決定された次溶接位置P2´から今回の次溶接位置P2までの移動を最小限にできるので、作業効率を向上できる。
【0075】
上記溶接補助方法は、溶接予定範囲R1における溶接前のワークWの歪み量と、溶接予定範囲R1における溶接後のワークWの歪み量と、を記憶する記憶ステップ(ステップS15,S18)を備えている。この場合、例えば溶接前後のワークの歪み量を比較することによって、ワークにおける溶接が適切に実施されたか否かを検証できる。本実施形態では、記憶部14に記憶された、「溶接前歪み量」と「溶接後歪み量」とを比較すること或いは「差分歪み量」を参照することによって、上記の検証を実施できる。
【0076】
記憶ステップでは、溶接予定範囲における溶接予定位置の溶接予定順序及び溶接実施毎のワークの歪み量の測定結果の履歴を記憶する。この場合、例えば溶接予定順序と実際に溶接が行われた溶接順序とを比較することで、作業者30が報知された順序に従って、溶接を実施したか否かを検証できる。本実施形態では、記憶部14に記憶された、溶接予定順序と溶接順序とを比較することで、上記の検証を実施できる。また、例えばワークWの歪み量の測定結果の履歴と溶接順序とを照合することで、当該溶接順序において溶接を行った際のワークWの歪み量の変化を検証でき、今後の作業条件の改善に寄与できる。
【0077】
以上、本開示の実施形態について、説明してきたが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0078】
上述した実施形態では、ワークWは、鉄道車両の側構体の外板及びドアフレームであったが、ワークWは特に限定されない。例えば、ワークWは、鉄道車両の車体側面に設置される行先表示器又は鉄道車両の妻構体の妻外板などであってもよい。ワークWは、鉄道車両に関連する部材に限定されず、自動車、船舶、航空機といった他の車両又は輸送機器に関連する部材であってもよい。
【0079】
上述した実施形態では、報知部13は、投影装置13Aによって構成されていたが、報知部13の構成は、上述した構成に限定されない。例えば、報知部13は、例えば次溶接位置P2の位置を示す情報を音声によって報知するスピーカによって構成されていてもよい。この場合、作業者30は、上記スピーカから報知される次溶接位置P2の位置を示す情報を聞くことによって、次溶接位置P2を認識する。
【0080】
上述した実施形態では、作業者30は人間であったが、作業者30はロボットであってもよい。この場合、報知部13は、当該ロボットに対して、次溶接位置P2の位置を示す情報を出力してもよい。ロボットである作業者30は、次溶接位置P2の位置を示す情報を受け取ることによって、次溶接位置P2を認識する。
【0081】
上述した実施形態では、2回目以降の溶接においては、決定部12は、複数の溶接予定位置P1のうち、既に溶接が行われた溶接予定位置P1を除いた、溶接予定位置P1の中から、次溶接位置P2を決定する。しかしながら、2回目以降の溶接において、決定部12は、前回の次溶接位置P2´を含む、複数の溶接予定位置P1の中から、次溶接位置P2を決定してもよい。この場合、決定部12は、今回決定された次溶接位置P2と、前回の次溶接位置P2´と、が同じ位置である場合に、測定部11から、今回受け取ったワークWの歪み量と、前回受け取ったワークWの歪み量とを比較してもよい。測定部11から、今回受け取ったワークWの歪み量のデータと、前回受け取ったワークWの歪み量のデータと、が同じである場合には、決定部12は、前回の溶接が行われなかったことを示す情報を報知部13に出力してもよい。報知部13は、当該情報を外部に報知してもよい。
【0082】
上述した実施形態では、複数の溶接予定位置P1の座標情報は、2次元座標系で規定されていたが、座標情報は、3次元座標系で規定されていてもよい。この場合、複数の溶接予定位置P1の座標情報が2次元座標系で規定される場合と同様に、当該3次元座標系は、ワークWの所定位置を原点として規定される。複数の溶接予定位置P1の座標情報が3次元座標系で規定される場合、複数の溶接予定位置P1の数「k」に対応して、各溶接予定位置P1の座標情報は、(X1,Y1,Z1)~(Xk,Yk,Zk)で示される。
【0083】
上述した実施形態では、可視化画像においては、ワークWの歪み量が色の濃淡によって図示されていたが、ワークWの歪み量を図示する方法は、上述した方法に限定されない。例えば、可視化画像においては、ワークWの歪み量が、暖色から寒色へのグラデーション或いは寒色から暖色へのグラデーションで図示されていてもよい。ワークWの歪み量が暖色から寒色へのグラデーションで図示される場合、色強度が暖色となるほど、ワークWの歪み量が大きいことを示し、色強度が寒色となるほど、ワークWの歪み量が小さいことを示す。ワークWの歪み量が寒色から暖色へのグラデーションで図示される場合、色強度が寒色となるほど、ワークWの歪み量が大きいことを示し、色強度が暖色となるほど、ワークWの歪み量が小さいことを示す。
【0084】
本開示の要旨は、以下の[1]~[10]のとおりである。
[1]ワークに予め設定された複数の溶接予定位置から溶接毎に次に溶接を行うべき次溶接位置を報知する溶接補助装置であって、前記複数の溶接予定位置を含む溶接予定範囲における前記ワークの歪み量を測定する測定部と、前記溶接予定範囲において前記ワークの歪み量が極大となる極大領域に位置する溶接予定位置を次溶接位置と決定する決定部と、前記決定部によって決定された前記次溶接位置を外部に報知する報知部と、を備える、溶接補助装置。
[2]前記報知部は、前記次溶接位置を示す画像或いは映像を前記ワークの表面に投影する投影装置によって構成されている、[1]記載の溶接補助装置。
[3]前記決定部は、前記極大領域が複数存在する場合に、前回に決定した次溶接位置に最も近接する極大領域に位置する溶接予定位置を前記次溶接位置として決定する、[1]又は[2]記載の溶接補助装置。
[4]溶接予定範囲における溶接前の前記ワークの歪み量と、溶接予定範囲における溶接後の前記ワークの歪み量と、を記憶する記憶部を更に備える、[1]~[3]のいずれか記載の溶接補助装置。
[5]記憶部は、前記溶接予定範囲における前記溶接予定位置の溶接予定順序及び溶接実施毎の前記ワークの歪み量の測定結果の履歴を更に記憶する、[4]記載の溶接補助装置。
[6]ワークに予め設定された複数の溶接予定位置から溶接毎に次に溶接を行うべき次溶接位置を報知する溶接補助方法であって、前記複数の溶接予定位置を含む溶接予定範囲における前記ワークの歪み量を測定する測定ステップと、前記溶接予定範囲において前記ワークの歪み量が極大となる極大領域に位置する溶接予定位置を次溶接位置と決定する決定ステップと、前記決定ステップによって決定された前記次溶接位置を外部に報知する報知ステップと、を備える、溶接補助方法。
[7]前記報知ステップでは、前記次溶接位置を示す画像或いは映像を前記ワークの表面に投影する、[6]記載の溶接補助方法。
[8]前記決定ステップでは、前記極大領域が複数存在する場合に、前回に決定した次溶接位置に最も近接する極大領域に位置する溶接予定位置を前記次溶接位置として決定する、[6]又は[7]記載の溶接補助方法。
[9]溶接予定範囲における溶接前の前記ワークの歪み量と、溶接予定範囲における溶接後の前記ワークの歪み量と、を記憶する記憶ステップを更に備える、[6]~[8]のいずれか記載の溶接補助装置。
[10]前記記憶ステップでは、前記溶接予定範囲における前記溶接予定位置の溶接予定順序及び溶接実施毎の前記ワークの歪み量の測定結果の履歴を更に記憶する、[9]記載の溶接補助方法。
【符号の説明】
【0085】
1…溶接補助装置、11…測定部、12…決定部、13…報知部、13A…投影装置、14…記憶部、P1…溶接予定位置、P2…次溶接位置、R1…溶接予定範囲、R2…極大領域、W…ワーク。