(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144918
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】加工物の製造方法、およびバリ除去装置
(51)【国際特許分類】
B24B 29/00 20060101AFI20241004BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241004BHJP
B24B 9/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B24B29/00 Z
B24B41/06 L
B24B9/00 602A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057096
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】木内 航
(72)【発明者】
【氏名】宮下 惇
(72)【発明者】
【氏名】渡▲邊▼ 保憲
(72)【発明者】
【氏名】天野 富美子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英和
(72)【発明者】
【氏名】奥脇 香代
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB72
3C049AA06
3C049AA13
3C049AB04
3C049CB01
3C158AA06
3C158AA14
3C158AB01
3C158AB04
(57)【要約】
【課題】加工物のバリの除去をブラシによる手作業で行う場合において、加工物の品質のバラツキを抑制する。
【解決手段】開口部100を有する板材10の上面11を摺動する摺動部材20に加工物200を保持させ、板材10の開口部100から現れるブラシ30の毛先に加工物200を押し当て、加工物200が保持された摺動部材20を、板材10の上面11に対して摺動させることにより、加工物200のバリを除去する。このとき、摺動部材20の摺動をガイドするガイド部123に従って摺動部材20を摺動させてもよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する板材の面上を摺動する摺動部材に加工物を保持させ、
前記板材の前記開口部から現れるブラシの毛先に前記加工物を押し当て、
前記加工物が保持された前記摺動部材を、前記板材の面上に対して摺動させることにより、当該加工物のバリを除去することを特徴とする、
加工物の製造方法。
【請求項2】
前記摺動部材の前記摺動をガイドするガイド部に従って、当該摺動部材を前記板材の面上に対して摺動させることを特徴とする、
請求項1に記載の加工物の製造方法。
【請求項3】
前記ガイド部が、前記摺動部材を摺動させても前記加工物が前記開口部の縁部に接触しない位置に配置されていることを特徴とする、
請求項2に記載の加工物の製造方法。
【請求項4】
前記加工物が保持された前記摺動部材を、前記板材の面上に対して回転させることにより、前記ブラシの毛先に対向する当該加工物の角度を変え、前記板材の面上に対して摺動させることを特徴とする、
請求項1に記載の加工物の製造方法。
【請求項5】
前記摺動部材に付された目印に従って、当該摺動部材を回転させることを特徴とする、
請求項5に記載の加工物の製造方法。
【請求項6】
前記摺動部材に設けられた貫通孔から露出させた前記加工物を前記ブラシの毛先に押し当て、当該摺動部材を摺動させることを特徴とする、
請求項1に記載の加工物の製造方法。
【請求項7】
開口部を有する板材の面上を、加工物を保持した状態で摺動する摺動部材と、
前記板材の前記開口部からブラシの毛先が現れる位置に当該ブラシを固定する固定手段と、
を備え、
前記摺動部材は、前記ブラシの毛先に前記加工物を押し当てた状態で、前記板材の面上に対して摺動することを特徴とする、
バリ除去装置。
【請求項8】
前記摺動部材の前記摺動をガイドするガイド部をさらに備え、
前記摺動部材は、前記ガイド部に従って、前記板材の面上に対して摺動可能であることを特徴とする、
請求項7に記載のバリ除去装置。
【請求項9】
前記ガイド部が、前記摺動部材を摺動させても前記加工物が前記開口部の縁部に接触しない位置に配置されていることを特徴とする、
請求項8に記載のバリ除去装置。
【請求項10】
前記加工物が、前記摺動部材に設けられた貫通孔の内壁に設けられた位置決め機構により位置決めされていることを特徴とする、
請求項7に記載のバリ除去装置。
【請求項11】
前記加工物が、前記位置決め機構としての段差により位置決めをされていることを特徴とする、
請求項10に記載のバリ除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工物の製造方法、およびバリ除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工物の表面に形成されたバリを除去して加工物の品質を確保するために、ブラシによる手作業で加工物のバリを除去することがある。この場合、作業者が加工物に押し当てるブラシの強さや角度によって加工物の品質にバラツキが生じるため、例えば、作業標準を定めて作業者間で共有する等の対応がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4788162号公報
【特許文献2】特開2009-050996号公報
【特許文献3】特開昭62-199365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業標準を定めたとしても、作業者間の技量の違いによって加工物の品質にバラツキが生じる。これに対して、現場トレーニングを行うことで作業者間の技量の平準化を図ることも考えられるが、現場トレーニングを実施するための時間や手間が掛かり、製造業務に支障を来すこともある。また、回転研磨装置を用いる技術も知られているが、手作業によりバリ取りを行う場合よりも自由度が低いため、加工物に対して多方向からバリ取りをしたい場合に困難性を伴う。さらに、電力を確保できない場所では作業を行えない。
【0005】
本発明の目的は、加工物のバリの除去をブラシによる手作業で行う場合において、加工物の品質のバラツキを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の加工物の製造方法は、開口部を有する板材の面上を摺動する摺動部材に加工物を保持させ、前記板材の前記開口部から現れるブラシの毛先に前記加工物を押し当て、前記加工物が保持された前記摺動部材を、前記板材の面上に対して摺動させることにより、当該加工物のバリを除去することを特徴とする、加工物の製造方法である。
ここで、前記摺動部材の前記摺動をガイドするガイド部に従って、当該摺動部材を前記板材の面上に対して摺動させてもよい。
また、前記ガイド部が、前記摺動部材を摺動させても前記加工物が前記開口部の縁部に接触しない位置に配置されるようにしてもよい。
また、前記加工物が保持された前記摺動部材を、前記板材の面上に対して回転させることにより、前記ブラシの毛先に対向する当該加工物の角度を変え、前記板材の面上に対して摺動させてもよい。
また、前記摺動部材に付された目印に従って、当該摺動部材を回転させてもよい。
また、前記摺動部材に設けられた貫通孔から露出させた前記加工物を前記ブラシの毛先に押し当て、当該摺動部材を摺動させてもよい。
また、上記の目的を達成する本発明のバリ除去装置は、開口部を有する板材の面上を、加工物を保持した状態で摺動する摺動部材と、前記板材の前記開口部からブラシの毛先が現れる位置に当該ブラシを固定する固定手段と、を備え、前記摺動部材は、前記ブラシの毛先に前記加工物を押し当てた状態で、前記板材の面上に対して摺動することを特徴とする、バリ除去装置である。
ここで、前記摺動部材の前記摺動をガイドするガイド部をさらに備えてもよく、前記摺動部材は、前記ガイド部に従って、前記板材の面上に対して摺動可能であってもよい。
また、前記ガイド部が、前記摺動部材を摺動させても前記加工物が前記開口部の縁部に接触しない位置に配置されていてもよい。
また、前記加工物が、前記摺動部材に設けられた貫通孔の内壁に設けられた位置決め機構により位置決めされていてもよい。
また、前記加工物が、前記位置決め機構としての段差により位置決めされていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加工物のバリの除去をブラシによる手作業で行う場合において、加工物の品質のバラツキを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】(A)は、バリ除去装置の断面図(
図1のII-II断面図)である。(B)は、バリ除去装置のブラシの出量の一例を示す図である。
【
図3】(A)は、摺動部材から下側に露出した加工物の一部がブラシの毛に接触している様子を示す拡大断面図(
図1のII-II断面図の拡大図)である。(B)は、摺動部材から下側に露出した加工物の一部が毛に接触している様子を示す拡大断面図(
図1のIII-III断面図の拡大図)である。
【
図4】バリ除去装置を用いて加工物に形成されたバリを除去する手順を示す図である。
【
図6】段差のないフラットな円柱形状の加工物に形成されたバリを除去する場合の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[バリ除去装置の構成]
図1は、バリ除去装置1の平面図である。
図2(A)は、バリ除去装置1の断面図(
図1のII-II断面図)である。
図2(B)は、バリ除去装置1のブラシ30の出量の一例を示す図である。
【0010】
本実施の形態に係る加工物200の製造に用いられるバリ除去装置1は、加工物200のバリの除去に用いられる装置である。バリ除去装置1は、板材10と、摺動部材20と、ブラシ30とを備える。
【0011】
(板材)
板材10は、上下方向の上側の上面11と、上下方向の下側の下面12と、開口部100とを有する平板である。また、板材10は、ブラシ30を板材10に固定するための固定機構101と、摺動部材20の摺動をガイドするガイド部材102とを有する。板材10の材質は特に限定されず、例えば、金属や樹脂等で構成される。
【0012】
開口部100は、板材10の上面11から下面12に貫通するように設けられた、角丸四角形状の孔である。開口部100には、加工物200の表面に形成されたバリを押し当てるブラシ30が配置されている。開口部100の形状は、ブラシ30が配置可能な形状であればよいので、
図1に示す形状に限定されず、ブラシ30の毛31の形状に応じた形状とすることができる。また、開口部100の大きさも、ブラシ30の毛31が配置可能な大きさであればよいので、
図1に示す大きさに限定されず、ブラシ30の毛31の大きさに応じた大きさとすることができる。
【0013】
固定機構101は、板材10の下面12側にブラシ30を固定するための機構であり、板材10の上面11と下面12とを貫通させた6つの貫通孔111に挿入されたベルト112で構成される。固定機構101は、ベルト112によりブラシ30の柄32を板材10の下面12に固定する。固定機構101は、ブラシ30の柄32を固定する際、板材10の開口部100にブラシ30の毛31が配置されるように固定する。このため、固定機構101は、ブラシ30の毛31の水平方向の位置と上下方向の位置とを決める位置決め機構として機能する。
【0014】
ガイド部材102は、上下方向の上側の上面121と、上下方向の下側の下面122と、開口部120とを有する平板であり、下面122と板材10の上面11とが対向するように固定されている。ガイド部材102を板材10に固定する手法は特に限定されず、ビス止め、溶接、接着等の手法により固定される。なお、本実施の形態では、4組のビス141およびナット142を用いて固定されている。ガイド部材102は、開口部120が板材10の開口部100の全体を囲う位置に配置されている。開口部120は、ガイド部材102の上面121から下面122に貫通するように設けられた、角丸四角形状の孔である。開口部120の縁部は、摺動部材20が摺動する範囲を定義するガイド部123を構成する。
【0015】
ガイド部材102は、摺動部材20が板材10の上面11を摺動しても加工物200が開口部100の縁部131に接触しない位置に配置されている。これにより、摺動部材20が摺動する範囲と、摺動部材20に保持された加工物200が開口部100を移動する範囲とがガイド部123によって定義される。なお、加工物200と、開口部100と、摺動部材20と、ガイド部123との位置関係の詳細については、
図3を参照して後述する。
【0016】
(摺動部材)
摺動部材20は、バリ除去の対象となる加工物200を保持した状態で板材10の上面11を摺動可能とする、薄い円柱状の部材である。摺動部材20の材質は特に限定されず、例えば、金属や樹脂等で構成される。摺動部材20は、作業者の手作業により摺動する。摺動部材20は、上下方向の上側の上面21と、上下方向の下側の面であり摺動面となる下面22とを有する。また、摺動部材20は、上面21と下面22とを貫通する貫通孔であって、加工物200を保持しながら加工物200の一部を下側に露出させる加工物保持孔23を有する。加工物保持孔23には、加工物200の位置決めをする位置決め機構が設けられている。なお、加工物保持孔23に設けられている位置決め機構の具体例については、
図3を参照して後述する。
【0017】
摺動部材20は、板材10の上面11を、加工物200を保持した状態で周方向に回転可能とする。摺動部材20は、作業者の手作業により回転する。摺動部材20の上面21には、板材10の上面11における回転を把握可能にする3つの目印24が付されている。目印24は、予め定められた角度ごとに付されている。例えば、90度、60度、45度等ごとに目印24が付される。なお、本実施の形態では、90度ごとに目印24が付されている。目印24は、例えば、印字または刻印されたもの、切削により貫通させたものなどである。なお、本実施の形態において目印24は、切削により貫通されている。切削により貫通された目印24は、ブラシ30の可視性が高まる。目印24の数は3つに限定されない。摺動部材20の回転の状況を把握可能にするものであれば、目印24がいくつ付されていてもよい。
【0018】
(ブラシ)
ブラシ30は、毛31と柄32とを有するブラシであり、ブラッシングにより加工物200の表面に形成されたバリを除去する。毛31は、板材10の開口部100に配置され、摺動部材20の動きに合わせて開口部100を移動する加工物200の表面に形成されたバリを除去する。毛31の材質は特に限定されず、加工物200の材質や、加工物200の表面に形成されたバリの態様に応じて選択される。例えば、樹脂製または金属性の毛が選択される。柄32は、板材10の固定機構101により板材10に固定される部位であり、柄32が板材10に固定されることでブラシ30全体が固定され、同時に毛31の位置が決定される。柄32の材質も特に限定されず、例えば、樹脂製または金属性の柄が選択される。
【0019】
上述のように、ブラシ30の毛31の水平方向および上下方向の位置は、固定機構101により位置決めされる。例えば、
図2(B)に示すように、毛31の水平方向の位置が、板材10の開口部100に位置し、毛31の上下方向の位置が、毛31の端部311がガイド部材102の上面121の高さに位置するように位置決めされる。このように位置決めされた状態で、加工物200を保持させた摺動部材20をガイド部材102の開口部120に配置すると、
図2(A)に示すように、摺動部材20から下側に露出した加工物200の一部が毛31に接触する。
【0020】
(その他)
バリ除去装置1の四隅には、バリ除去装置1の固定等に用いられるビス151およびナット152の組み合わせが2組ずつ設けられている。
【0021】
図3(A)は、摺動部材20から下側に露出した加工物200の一部がブラシ30の毛31に接触している様子を示す拡大断面図(
図1のII-II断面図の拡大図)である。
図3(B)は、摺動部材20から下側に露出した加工物200の一部が毛31に接触している様子を示す拡大断面図(
図1のIII-III断面図の拡大図)である。
本実施の形態に係る加工物200は、加工により段差が設けられた加工物である。加工物200は、加工により大径部210と小径部220とが形成されている。加工物200は、加工の際、小径部220の端部において、一部または略一周に渡ってバリ230が形成される。
【0022】
摺動部材20の加工物保持孔23は、加工物200の形状に合わせた形状になっている。具体的には、加工物保持孔23の内壁には、加工物200の位置決めをする位置決め機構としての段差231が設けられている。上述のように、加工物200には段差があり、径が小さい小径部220の端部にバリ230が形成される。このため、加工物200は、バリ230が形成されている部分が下側に位置するように加工物保持孔23に挿入される。すると、加工物保持孔23に挿入された加工物200を構成する大径部210の端部211が、加工物保持孔23の内壁に設けられた段差231に突き当たる。これにより、加工物200の上下方向の位置決めがなされる。
【0023】
上述のように、ガイド部材102は、摺動部材20が板材10の上面11を摺動しても加工物200が開口部100の縁部131に接触しない位置に配置されている。具体的には、例えば、
図3(A)および(B)に示すように、摺動部材20とガイド部123との距離D1が、開口部100における加工物200と縁部131との距離D2よりも短くなる位置にガイド部123が配置されている。
【0024】
このように、
図1のII-II断面側、および
図1のIII-III断面側のいずれについても距離D1<距離D2になるように配置することで、加工物200がブラシ30の毛31からはみ出して板材10に接触することが防がれる。これにより、加工物200に傷が付く機会が抑制される。さらに、
図1のII-II断面側にて、距離D1の長さにより加工物200が移動する範囲が定義されるので、加工物200がブラシ30の毛31に接触する時間および距離が一定になる。
【0025】
[バリ除去の手順]
図4は、バリ除去装置1を用いて加工物200に形成されたバリ230を除去する手順を示す図である。
上述の
図3(A)および(B)に示すように、加工物200の端部には、略一周に渡ってバリ230が形成されている。このため、作業者は、バリ除去装置1を用いてバリを除去する際、加工物200が保持された摺動部材20を、板材10の上面11に対して回転させることにより、ブラシ30の毛31の毛先に対向する加工物200の角度を変える。
【0026】
具体的には、作業者は、加工物200が保持された摺動部材20について、加工物200を上側から下側に向けて押し付けながら、ガイド部123に従って水平方向の第1側と第2側とを往復摺動させる動作と、円周方向の右側に90度回転させる動作とを交互に行うことでバリを除去する。作業者は、加工物200が保持された摺動部材20を円周方向の右側に90度回転させる際、摺動部材20の上面21に設けられている目印24に従って摺動部材20を回転させる。
【0027】
例えば、
図4に示すように、摺動部材20を水平方向の第1側と第2側とを往復摺動させる動作(1回目)により0度方向のバリを除去し(STEP1)、摺動部材20を円周方向の右側に90度回転させる動作(1回目)により摺動部材20の向きを変える(STEP2)。次に、摺動部材20を水平方向に往復摺動させる動作(2回目)により90度方向のバリを除去し(STEP3)、摺動部材20を円周方向の右側にさらに90度回転させる動作(2回目)により摺動部材20の向きを変える(STEP4)。
【0028】
次に、摺動部材20を水平方向に往復摺動させる動作(3回目)により180度方向のバリを除去し(STEP5)、摺動部材20を円周方向の右側にさらに90度回転させる動作(3回目)により摺動部材20の向きを変える(STEP6)。次に、摺動部材20を水平方向に往復摺動させる動作(4回目)により270度方向のバリを除去し(STEP7)、摺動部材20から加工物200を取り出す(STEP8)。すなわち、STEP1乃至8において、摺動部材20を水平方向に往復摺動させる動作と、摺動部材20を円周方向の右側に90度回転させる動作とを交互に行う。これにより、加工物200の端部に略一周に渡って形成されたバリに対するブラシ30によるブラッシングが均一に行われる。
【0029】
[バリ除去装置の使用例]
図5は、バリ除去装置1の使用例を示す図である。
バリ除去装置1は、例えば、
図5に示すように、ケース50の内側に配置して使用することができる。作業者40は、ケース50の内側に配置されたバリ除去装置1の摺動部材20を摺動させる動作、および回転させる動作を交互に行うことで、摺動部材20に保持されている加工物の表面に形成されたバリを除去できる。除去されたバリは、下側に落ちてケース50内に堆積されるので、バリが飛散することが抑制される。
【0030】
以上まとめると、本発明が適用される加工物の製造方法は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、本発明が適用される加工物(例えば、
図3(A)の加工物200、
図6の加工物300)の製造方法は、開口部100を有する板材10の面上(例えば、
図1の上面11)を摺動する摺動部材20に加工物を保持させ、板材10の開口部100から現れるブラシ30の毛先(例えば、
図3(A)の毛31)に加工物を押し当て、加工物が保持された摺動部材20を、板材10の面上に対して摺動させることにより、加工物のバリ230を除去することを特徴とする、加工物の製造方法である。
【0031】
開口部100を有する板材10の面上を摺動する摺動部材20に加工物を保持させ、開口部100から現れるブラシ30の毛先に加工物を押し当て、加工物が保持された摺動部材20を板材10の面上に対して摺動させることにより加工物のバリ230を除去する。これにより、加工物に押し当てるブラシ30の強さと角度とを均一化させることが可能となる。その結果、加工物のバリ230を除去する作業をブラシ30により手作業で行う際、加工物の品質のバラツキを抑制できる。また、作業者がブラシ30に触れる機会が低減化されるため、例えば、作業者の指に装着された樹脂製の指サックがブラシ30により削られ、その結果として生じ得る異物の混入を防ぐことができる。また、板材10が蓋の役割を果たすので、ブラシ30により除去されたバリ230の飛散が防がれる。
【0032】
ここで、摺動部材20の摺動をガイドするガイド部123に従って、摺動部材20を板材10の面上に対して摺動させてもよい。
これにより、摺動部材20の摺動をガイド部123がガイドするので、作業者の意図せぬ範囲に摺動部材20が摺動してしまうことを防ぐことができる。
【0033】
また、ガイド部123が、摺動部材20を摺動させても加工物が開口部100の縁部131に接触しない位置に配置されていてもよい。
ガイド部123が、摺動部材20を摺動させても加工物が開口部100の縁部131に接触しない位置に配置されている。これにより、加工物と開口部100の縁部131との接触による加工物の損傷等を防ぐことができる。
【0034】
また、加工物が保持された摺動部材20を、板材10の面上に対して回転させることにより、ブラシ30の毛先に対向する加工物の角度を変え、板材10の面上に対して摺動させてもよい。
加工物が保持された摺動部材20を、板材10の面上に対して回転させることにより、ブラシ30の毛先に対する加工物の角度を変える。これにより、加工物のバリ230に対して多方向からの均一なブラッシングが可能となる。
【0035】
また、摺動部材20に付された目印24に従って、摺動部材20を回転させてもよい。
摺動部材20に付された目印24に従い摺動部材20を回転させる。これにより、作業者は、摺動部材20を回転させたことを一見して把握できるので、作業の精度を向上させながら、作業の効率化を図ることができる。
【0036】
また、摺動部材20に設けられた貫通孔(例えば、
図3(A)および(B)の加工物保持孔23)から露出させた加工物をブラシ30の毛先に押し当て、摺動部材20を摺動させてもよい。
これにより、摺動部材20の摺動面(例えば、
図2(A)の下面22)から露出した部分に対する均一なブラッシングが可能となる。
【0037】
また、上記の目的を達成する本発明のバリ除去装置1は、開口部100を有する板材10の面上を、加工物を保持した状態で摺動する摺動部材20と、板材10の開口部100からブラシ30の毛先が現れる位置にブラシ30を固定する固定手段(例えば、
図1の固定機構101)と、を備え、摺動部材20は、ブラシ30の毛先に加工物を押し当てた状態で、板材10の面上(例えば、
図1の上面11)に対して摺動することを特徴とする、バリ除去装置である。
開口部100を有する板材10の面上を摺動する摺動部材20に加工物を保持させ、開口部100から現れるブラシ30の毛先に加工物を押し当て、加工物が保持された摺動部材20を板材10の面上に対して摺動させることにより加工物のバリ230を除去する。これにより、加工物に押し当てるブラシ30の強さと角度とを均一化させることが可能となる。その結果、加工物のバリ230を除去する作業をブラシ30により手作業で行う際、加工物の品質のバラツキを抑制できる。また、作業者がブラシ30に触れる機会が低減化されるため、例えば、作業者の指に装着された樹脂製の指サックがブラシ30により削られ、その結果として生じ得る異物の混入を防ぐことができる。また、板材10が蓋の役割を果たすので、ブラシ30により除去されたバリ230の飛散が防がれる。
【0038】
ここで、摺動部材20の摺動をガイドするガイド部123をさらに備えてもよく、摺動部材20は、ガイド部123に従って、板材10の面上に対して摺動可能であってもよい。
これにより、摺動部材20の摺動をガイド部123がガイドするので、作業者の意図せぬ範囲に摺動部材20が摺動してしまうことを防ぐことができる。
【0039】
また、ガイド部123が、摺動部材20を摺動させても加工物が開口部100の縁部131に接触しない位置に配置されていてもよい。
ガイド部123が、摺動部材20を摺動させても加工物が開口部100の縁部131に接触しない位置に配置されている。これにより、加工物と開口部100の縁部131との接触による加工物の損傷等を防ぐことができる。
【0040】
また、加工物が、摺動部材20に設けられた貫通孔(例えば、
図3(A)および(B)の加工物保持孔23)の内壁に設けられた位置決め機構により位置決めされていてもよい。
貫通孔の内壁に設けられた位置決め機構に加工物の位置決めをさせる。これにより、摺動部材20の摺動面から露出する部分を均一化できる。その結果、均一なブラッシングが可能となる。
【0041】
また、加工物が、位置決め機構としての段差231により位置決めをされていてもよい。
貫通孔の内壁に、位置決め機構としての段差231が設けられている。これにより、摺動部材20の摺動面から露出する部分を均一化できる。これにより、均一なブラッシングが可能となる。
【0042】
[他の実施の形態]
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態には限定されない。本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。上述の実施の形態では、例えば、
図3(A)および(B)に示すように、摺動部材20の加工物保持孔23の内壁に設けられた位置決め機構としての段差231が、加工物200の位置決めをする構成となっている。ただし、この構成は、加工物の形状が段差のある円柱形状である場合の構成の一例に過ぎない。例えば、加工物の形状が段差のないフラットな円柱形状である場合には、摺動部材20の加工物保持孔23に挟持機能を設けて、加工物保持孔23内に加工物を固定できるようにしてもよい。具体的には、例えば、スクロールチャックを用いて加工物保持孔23内に加工物を固定できるようにしてもよい。
【0043】
図6は、段差のないフラットな円柱形状の加工物300に形成されたバリを除去する場合の具体例を示す図である。
作業者は、例えば、
図6に示すように、まず、段差のないフラットな円柱形状の加工物300を摺動部材20の加工物保持孔23に挿入する(STEP1)。次に、作業者は、加工物300の一部が摺動部材20から下側に向けて露出するように押し込む(STEP2)。すると、加工物保持孔23の挟持機能により、加工物保持孔23内に加工物300が固定される(STEP3)。これにより、板材10の開口部100に配置されているブラシ30の毛31に加工物300の一部が押し込まれた状態で加工物300の位置決めが可能となる。
【0044】
また、上述の実施の形態では、バリ除去の対象となる加工物の形状は円柱状であるが、これに限定されない。例えば、四角柱形状等であってもよい。すなわち、バリ除去装置1の摺動部材20に設けられている加工物保持孔23に固定可能な加工物であれば形状は問わない。
【0045】
また、上述の実施の形態では、固定されたブラシ30は動かない構成となっているが、これに限定されない。例えば、ブラシ30を振動させる機構を有していてもよい。これにより、バリを除去しやすくなる。
【符号の説明】
【0046】
1…バリ除去装置、10…板材、11…上面、20…摺動部材、23…加工物保持孔、24…目印、30…ブラシ、31…毛、100…開口部、102…ガイド部材、123…ガイド部、200…加工物、230…バリ、231…段差