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特開2024-144923無線端末装置、無線中継装置、無線通信システム及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144923
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】無線端末装置、無線中継装置、無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20241004BHJP
   H04B 7/15 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H04B7/08 800
H04B7/08 020
H04B7/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057103
(22)【出願日】2023-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発 研究開発項目 3 端末拡張型無線通信システム構築・制御技術 副題:Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】國澤 良雄
【テーマコード(参考)】
5K072
【Fターム(参考)】
5K072AA04
5K072AA22
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB25
5K072DD11
5K072DD15
5K072EE20
5K072GG05
5K072GG10
5K072GG12
5K072GG13
5K072GG25
(57)【要約】
【課題】無線中継装置の小型化や軽量化を図る。
【解決手段】無線端末装置は、無線端末装置が無線中継装置へ送信する信号の上り送信電力値と無線中継装置での上り受信信号電力値との差である伝搬損失を算出し、無線中継装置の下り利得値と伝搬損失との差である電力差分を算出し、無線端末装置が無線中継装置から受信する信号の下り受信電力値と電力差分との差である無線中継装置の基地局からの信号の下り受信電力予測値を算出する算出部と、下り受信電力予測値に基づいて無線中継装置の基地局の側のアンテナビームを制御するビーム制御情報を出力するアンテナ制御部と、ビーム制御情報を無線中継装置へ送信する上り情報伝送部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線中継装置を介して基地局との間で信号を送受する無線端末装置において、
前記無線中継装置から、前記無線端末装置から前記基地局へ向う上り方向の前記無線中継装置での上り受信信号電力値を示す上り受信信号電力情報と、前記基地局から前記無線端末装置へ向う下り方向の前記無線中継装置での下り利得値を示す下り利得情報と、を受信する下り情報受信部と、
前記無線端末装置が前記無線中継装置へ送信する信号の上り送信電力値と前記上り受信信号電力値との差である伝搬損失を算出し、前記下り利得値と前記伝搬損失との差である電力差分を算出し、前記無線端末装置が前記無線中継装置から受信する信号の下り受信電力値と前記電力差分との差である前記無線中継装置の前記基地局からの信号の下り受信電力予測値を算出する、算出部と、
前記下り受信電力予測値に基づいて、前記無線中継装置の前記基地局の側のアンテナビームを制御するビーム制御情報を出力するアンテナ制御部と、
前記ビーム制御情報を前記無線中継装置へ送信する上り情報伝送部と、
を備える無線端末装置。
【請求項2】
前記無線端末装置は、複数の前記無線中継装置を介して一又は複数の前記基地局との間で信号を送受し、複数の前記無線中継装置に対して同じビーム制御アルゴリズムを用いて前記ビーム制御情報を生成する、
請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記無線端末装置は、複数の前記無線中継装置を介して一又は複数の前記基地局との間で信号を送受し、複数の前記無線中継装置に対してそれぞれ異なるビーム制御アルゴリズムを用いて前記ビーム制御情報を生成する、
請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項4】
無線端末装置と基地局との間で送受される信号を中継する無線中継装置において、
前記無線端末装置から前記基地局へ向う上り方向の前記無線中継装置での上り受信信号電力値を示す上り受信信号電力情報と、前記基地局から前記無線端末装置へ向う下り方向の前記無線中継装置での下り利得値を示す下り利得情報とを前記無線端末装置へ送信する下り情報伝送部と、
前記無線端末装置から、前記上り受信信号電力値及び前記下り利得値に基づいたビーム制御情報を受信する上り情報受信部と、
前記ビーム制御情報に基づいて、前記基地局の側のアンテナビームを切換えるビーム切換部と、
を備える無線中継装置。
【請求項5】
請求項1に記載の無線端末装置と、請求項4に記載の無線中継装置と、
を備える無線通信システム。
【請求項6】
無線端末装置が無線中継装置を介して基地局との間で信号を送受する無線通信方法であって、
前記無線端末装置が、前記無線中継装置から、前記無線端末装置から前記基地局へ向う上り方向の前記無線中継装置での上り受信信号電力値を示す上り受信信号電力情報と、前記基地局から前記無線端末装置へ向う下り方向の前記無線中継装置での下り利得値を示す下り利得情報と、を受信する下り情報受信ステップと、
前記無線端末装置が、前記無線端末装置が前記無線中継装置へ送信する信号の上り送信電力値と前記上り受信信号電力値との差である伝搬損失を算出し、前記下り利得値と前記伝搬損失との差である電力差分を算出し、前記無線端末装置が前記無線中継装置から受信する信号の下り受信電力値と前記電力差分との差である前記無線中継装置の前記基地局からの信号の下り受信電力予測値を算出する、算出ステップと、
前記無線端末装置が、前記下り受信電力予測値に基づいて、前記無線中継装置の前記基地局の側のアンテナビームを制御するビーム制御情報を出力するアンテナ制御ステップと、
前記無線端末装置が、前記ビーム制御情報を前記無線中継装置へ送信する上り情報伝送ステップと、
を含む無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末装置、無線中継装置、無線通信システム及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端末と基地局間で無線信号を中継する無線中継装置が知られている。特許文献1に記載された無線中継装置は、無線中継装置内で伝送される無線周波数の通信信号を復調して基地局IDやビームIDを取得し、無線中継装置のアルゴリズムにより基地局側のビームを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-096459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1に記載された無線中継装置では、基地局から受信した信号の復調回路などが必要であるが、その復調回路などが複雑且つ大規模であるために、無線中継装置の小型化や軽量化が難しかった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、無線中継装置の小型化や軽量化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、無線中継装置を介して基地局との間で信号を送受する無線端末装置において、前記無線中継装置から、前記無線端末装置から前記基地局へ向う上り方向の前記無線中継装置での上り受信信号電力値を示す上り受信信号電力情報と、前記基地局から前記無線端末装置へ向う下り方向の前記無線中継装置での下り利得値を示す下り利得情報と、を受信する下り情報受信部と、前記無線端末装置が前記無線中継装置へ送信する信号の上り送信電力値と前記上り受信信号電力値との差である伝搬損失を算出し、前記下り利得値と前記伝搬損失との差である電力差分を算出し、前記無線端末装置が前記無線中継装置から受信する信号の下り受信電力値と前記電力差分との差である前記無線中継装置の前記基地局からの信号の下り受信電力予測値を算出する、算出部と、前記下り受信電力予測値に基づいて、前記無線中継装置の前記基地局の側のアンテナビームを制御するビーム制御情報を出力するアンテナ制御部と、前記ビーム制御情報を前記無線中継装置へ送信する上り情報伝送部と、を備える無線端末装置である。
本発明の一態様は、上記の無線端末装置において、前記無線端末装置は、複数の前記無線中継装置を介して一又は複数の前記基地局との間で信号を送受し、複数の前記無線中継装置に対して同じビーム制御アルゴリズムを用いて前記ビーム制御情報を生成する、無線端末装置である。
本発明の一態様は、上記の無線端末装置において、前記無線端末装置は、複数の前記無線中継装置を介して一又は複数の前記基地局との間で信号を送受し、複数の前記無線中継装置に対してそれぞれ異なるビーム制御アルゴリズムを用いて前記ビーム制御情報を生成する、無線端末装置である。
【0007】
本発明の一態様は、無線端末装置と基地局との間で送受される信号を中継する無線中継装置において、前記無線端末装置から前記基地局へ向う上り方向の前記無線中継装置での上り受信信号電力値を示す上り受信信号電力情報と、前記基地局から前記無線端末装置へ向う下り方向の前記無線中継装置での下り利得値を示す下り利得情報とを前記無線端末装置へ送信する下り情報伝送部と、前記無線端末装置から、前記上り受信信号電力値及び前記下り利得値に基づいたビーム制御情報を受信する上り情報受信部と、前記ビーム制御情報に基づいて、前記基地局の側のアンテナビームを切換えるビーム切換部と、を備える無線中継装置である。
【0008】
本発明の一態様は、上記の無線端末装置と、上記の無線中継装置と、を備える無線通信システムである。
【0009】
本発明の一態様は、無線端末装置が無線中継装置を介して基地局との間で信号を送受する無線通信方法であって、前記無線端末装置が、前記無線中継装置から、前記無線端末装置から前記基地局へ向う上り方向の前記無線中継装置での上り受信信号電力値を示す上り受信信号電力情報と、前記基地局から前記無線端末装置へ向う下り方向の前記無線中継装置での下り利得値を示す下り利得情報と、を受信する下り情報受信ステップと、前記無線端末装置が、前記無線端末装置が前記無線中継装置へ送信する信号の上り送信電力値と前記上り受信信号電力値との差である伝搬損失を算出し、前記下り利得値と前記伝搬損失との差である電力差分を算出し、前記無線端末装置が前記無線中継装置から受信する信号の下り受信電力値と前記電力差分との差である前記無線中継装置の前記基地局からの信号の下り受信電力予測値を算出する、算出ステップと、前記無線端末装置が、前記下り受信電力予測値に基づいて、前記無線中継装置の前記基地局の側のアンテナビームを制御するビーム制御情報を出力するアンテナ制御ステップと、前記無線端末装置が、前記ビーム制御情報を前記無線中継装置へ送信する上り情報伝送ステップと、を含む無線通信方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線中継装置の小型化や軽量化を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る無線端末装置及び無線中継装置の構成例を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る無線通信システムの実施例を示す概略構成図である。
図4】一実施形態に係る実施例を示す図である。
図5】一実施形態に係る実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示すブロック図である。図1に示される無線通信システム1において、無線端末装置(端末)UEは、無線中継装置(中継器)10を介して基地局BSとの間で信号を送受する。無線通信システム1の複信方式は、TDD(Time Division Duplex、時分割複信)方式でもよいし、FDD(Frequency Division Duplex、周波数分割複信)方式でもよい。
【0013】
基地局BSは、中継器10を介して、端末UEから基地局BSへ向う上り方向の信号(上り信号)ULを受信する。端末UEは、中継器10を介して、基地局BSから端末UEへ向う下り方向の信号(下り信号)DLを受信する。
【0014】
図2は、本実施形態に係る端末UE及び中継器10の構成例を示すブロック図である。図2を参照して本実施形態に係る端末UE及び中継器10を説明する。
【0015】
図2において、端末UEは、アンテナ制御部201と、算出部202と、下り受信信号電力検出部203と、上り情報伝送部204と、上り送信部205と、下り受信部206と、下り情報受信部207と、切換器208と、アンテナ209とを備える。
【0016】
中継器10は、切換器251と、上り受信信号電力検出部252と、上り情報受信部253と、上り中継部254と、下り中継部255と、下り情報伝送部256と、切換器257と、ビーム切換部258と、端末側アンテナ259と、基地局側アンテナ260とを備える。
【0017】
上り送信部205には、端末UEにおける上位レイヤから上り信号ULが入力される。上り信号ULは、上り送信部205により端末UEと中継器10間で使用される周波数の信号に変換された後に、切換器208を介してアンテナ209から無線送信される。
【0018】
複信方式がTDDの場合、切換器208は、上り信号ULと下り信号DLの送受信タイミングに応じて、アンテナ209の接続先を上り信号ULの送信側回路又は下り信号DLの受信側回路に切換えるスイッチである。複信方式がFDDの場合、切換器208は、TDDにおけるスイッチの代わりに、周波数によってアンテナ209の接続先を上り信号ULの送信側回路又は下り信号DLの受信側回路に切換えることができるデュプレクサ(Duplexer)を用いることにより、TDDにおけるスイッチと同様の動作を行う。
【0019】
アンテナ209から放射された電波は、中継器10の端末側アンテナ259により受信される。端末側アンテナ259により受信された上り信号ULは、切換器251を介して上り受信信号電力検出部252へ入力された後、上り中継部254により信号増幅や周波数変換されてから、切換器257及びビーム切換部258を介して基地局側アンテナ260から無線送信される。基地局側アンテナ260から放射された電波は、基地局BSのアンテナにより受信される。基地局BSは、自己のアンテナにより受信された上り信号ULを取得する。
なお、切換器251,257は、端末UEの切換器208と同様に、上り方向と下り方向の回路を切換える。
【0020】
基地局BSから送信される下り信号DLは、中継器10の基地局側アンテナ260を介して受信され、ビーム切換部258及び切換器257を介して下り中継部255へ入力されて信号増幅や周波数変換されてから、切換器251を介して端末側アンテナ259から無線送信される。中継器10の端末側アンテナ259から放射された電波は、端末UEのアンテナ209により受信される。アンテナ209により受信された下り信号DLは、切換器208、下り受信信号電力検出部203及び下り受信部206を介して端末UEにおける上位レイヤへ出力される。
【0021】
アンテナ制御部201は、中継器10の基地局側アンテナ260のアンテナビームBを制御するビーム制御情報を出力する。
【0022】
例えば、中継器10の基地局側アンテナ260が複数の異なるアンテナビームBをそれぞれ形成する複数のアンテナである場合、ビーム制御情報は、当該複数のアンテナを識別するアンテナ識別子(アンテナID)である。
【0023】
例えば、中継器10のビーム切換部258が複数の異なるアンテナビームBをそれぞれ形成するビームフォーミング機能を有する場合、ビーム制御情報は、当該複数の異なるアンテナビームBを識別するビーム形成識別子(ビーム形成ID)である。
【0024】
例えば、中継器10のビーム切換部258が任意のアンテナビームBを形成するビームフォーミング機能を有する場合、ビーム制御情報は、アンテナビームBを形成するためのアンテナ素子の位相振幅の情報(アンテナ素子位相振幅情報)である。
【0025】
アンテナ制御部201から出力されたビーム制御情報は、上り情報伝送部204、上り送信部205及び切換器208を介してアンテナ209から無線送信される。アンテナ209から無線送信されたビーム制御情報は、中継器10の端末側アンテナ259を介して受信される。中継器10の端末側アンテナ259を介して受信されたビーム制御情報は、切換器251、上り受信信号電力検出部252、上り中継部254及び上り情報受信部253を介してビーム切換部258に入力される。ビーム切換部258は、ビーム制御情報にに基づいて、基地局側アンテナ260アンテナビームを切換える。
【0026】
例えば、中継器10の基地局側アンテナ260が複数の異なるアンテナビームBをそれぞれ形成する複数のアンテナである場合、ビーム切換部258は、ビーム制御情報のアンテナIDに該当するアンテナに切り換える。これにより、ビーム制御情報のアンテナIDに該当するアンテナのアンテナビームBに切換る。
【0027】
例えば、中継器10のビーム切換部258が複数の異なるアンテナビームBをそれぞれ形成するビームフォーミング機能を有する場合、ビーム切換部258は、ビーム制御情報のビーム形成IDに該当するアンテナビームBをビームフォーミング機能により形成する。これにより、ビーム制御情報のビーム形成IDに該当するアンテナビームBに切換る。
【0028】
例えば、中継器10のビーム切換部258が任意のアンテナビームBを形成するビームフォーミング機能を有する場合、ビーム切換部258は、ビーム制御情報のアンテナ素子位相振幅情報に基づいて、ビームフォーミング機能によりアンテナビームBを形成する。これにより、ビーム制御情報のアンテナ素子位相振幅情報に該当するアンテナビームBに切換る。
【0029】
なお、ビーム制御情報は、端末UEの上り情報伝送部204から中継器10の上り情報受信部253へ伝送されればよく、その伝送方法は限定されない。例えば、無線通信システム1において上り信号ULの無線伝送チャネルの帯域のガードバンドを利用して、ビーム制御情報を端末UEから中継器10へ無線伝送してもよい。例えば、端末UEと中継器10の間の近距離無線通信により、ビーム制御情報を端末UEから中継器10へ無線伝送してもよい。近距離無線通信方式として、例えば「Bluetooth(登録商標)」や「Wi-Fi(登録商標)」等を用いてもよい。
【0030】
下り情報伝送部256は、上り受信信号電力検出部252から、上り方向の中継器10での上り受信信号電力値を示す上り受信信号電力情報を取得する。下り情報伝送部256は、下り中継部255から、下り方向の中継器10での下り利得値を示す下り利得情報を取得する。下り情報伝送部256は、上り受信信号電力検出部252から取得した上り受信信号電力情報と、下り中継部255から取得した下り利得情報とを出力する。
【0031】
下り情報伝送部256から出力された上り受信信号電力情報及び下り利得情報は、下り中継部255及び切換器251を介して端末側アンテナ259から無線送信される。端末側アンテナ259から無線送信された上り受信信号電力情報及び下り利得情報は、端末UEのアンテナ209を介して受信される。端末UEのアンテナ209を介して受信された上り受信信号電力情報及び下り利得情報は、切換器208、下り受信信号電力検出部203、下り受信部206及び下り情報受信部207を介して算出部202に入力される。
【0032】
なお、上り受信信号電力情報及び下り利得情報は、中継器10の下り情報伝送部256から端末UEの下り情報受信部207へ伝送されればよく、その伝送方法は限定されない。例えば、無線通信システム1において下り信号DLの無線伝送チャネルの帯域のガードバンドを利用して、上り受信信号電力情報及び下り利得情報を中継器10から端末UEへ無線伝送してもよい。例えば、中継器10と端末UEの間の近距離無線通信により、上り受信信号電力情報及び下り利得情報を中継器10から端末UEへ無線伝送してもよい。
【0033】
下り受信信号電力検出部203は、端末UEが中継器10から受信する信号の下り受信電力値を検出する。下り受信電力値は、端末UEが中継器10から受信した受信信号の受信電力値でもよいし、端末UEが中継器10から受信した受信信号を復調して検出した信号(例えば、パイロット信号など)のレベルであってもよい。下り受信信号電力検出部203は、下り受信電力値を算出部202へ出力する。
【0034】
算出部202は、端末UEが中継器10へ送信する上り信号ULの上り送信電力値を取得する。上り送信電力値は、予め、端末UEに設定されるか、通信方式に応じた送信電力制御機能などにより上り送信部205で決定される値に逐次設定される。
【0035】
算出部202は、端末UEの上り送信電力値と、上り受信信号電力情報に示される中継器10の上り受信信号電力値との差である伝搬損失を、次式により算出する。
「伝搬損失」=「上り送信電力値」-「上り受信信号電力値」
【0036】
次いで、算出部202は、下り利得情報に示される中継器10の下り利得値と、当該算出した伝搬損失との差である電力差分を、次式により算出する。
「電力差分」=「下り利得値」-「伝搬損失」
当該電力差分は、下り方向の受信信号の受信電力値について端末UEと中継器10との間の差を示す。又は、当該電力差分は、下り方向の受信信号を復調して検出した信号(例えば、パイロット信号など)のレベルについて端末UEと中継器10との間の差を示す。
【0037】
次いで、算出部202は、端末UEの下り受信電力値と、当該算出した電力差分との差である、中継器10の基地局BSからの下り信号DLの下り受信電力予測値を、次式により算出する。
「中継器の下り受信電力予測値」=「端末の下り受信電力値」-「電力差分」
当該下り受信電力予測値は、中継器10が基地局BSから受信する下り信号DLの受信電力値の予測値である。又は、当該下り受信電力予測値は、中継器10が基地局BSから受信する下り信号DLを復調して検出した信号(例えば、パイロット信号など)のレベルの予測値である。
【0038】
算出部202は、算出した中継器10の下り受信電力予測値をアンテナ制御部201へ出力する。
【0039】
アンテナ制御部201は、中継器10の下り受信電力予測値に基づいて、中継器10の基地局側アンテナ260のアンテナビームを制御するビーム制御情報を上り情報伝送部204へ出力する。アンテナ制御部201がビーム制御情報を生成するアルゴリズムは、既存の端末におけるビーム制御アルゴリズムを用いてもよい。
【0040】
図3は、本実施形態に係る無線通信システム1の実施例を示す概略構成図である。図3に示される無線通信システム1は、基地局側で使用される無線周波数と、端末側で使用される無線周波数とが異なる。基地局側で使用される無線周波数はミリ波帯である。端末側で使用される無線周波数はテラヘルツ帯である。
【0041】
図3に示される無線通信システム1において、本実施形態に係る中継器10は、各種のデバイスDVa,DVb,DVc,DVd,DVeに搭載可能である。デバイスDVaは、端末UEのユーザ(端末ユーザ)が装着するメガネである。デバイスDVbは、端末ユーザが乗車する車両である。デバイスDVcは、端末ユーザが装着するヘッドホンである。デバイスDVdは、端末ユーザが装着する腕時計である。デバイスDVeは、端末ユーザが使用する携帯型のパーソナルコンピュータ(PC)である。
【0042】
中継器10は、例えば、端末ユーザが装着するメガネ(デバイスDVa)に備わる。端末UEは、テラヘルツ帯の無線信号を送受するためのアンテナ301(図2のアンテナ209に対応)と、テラヘルツ帯の受信信号を処理する信号処理部302とを備える。信号処理部302は、メガネ(デバイスDVa)に備わる中継器10を介してアンテナ301で受信したテラヘルツ帯の下り信号DLを復調する。また、信号処理部302は、テラヘルツ帯の上り信号ULをアンテナ301により送信する。
【0043】
端末UEとメガネ(デバイスDVa)に備わる中継器10との間でテラヘルツ帯のリンクTHzLINKが確立される。メガネ(デバイスDVa)に備わる中継器10は、基地局BSとの間でミリ波帯の上り信号UL及び下り信号DLを送受する。メガネ(デバイスDVa)に備わる中継器10は、上り信号UL及び下り信号DLをそれぞれに受信し周波数変換し増幅してから送信する。これにより、端末UEと基地局BSとは、メガネ(デバイスDVa)に備わる中継器10を介して、双方向の通信を行うことができる。
【0044】
ここで、例えばメガネ(デバイスDVa)やヘッドホン(デバイスDVc)や腕時計(デバイスDVd)等の小型のデバイスでは、搭載可能な装置の大きさや重量やバッテリー容量等の制約が大きい。このため、それらの小型のデバイスDVa,DVc,DVdに対しては、特に、搭載される中継器10の小型化や軽量化や省電力化が要求される。本実施形態は、そのような小型のデバイスDVa,DVc,DVdに中継器10が搭載される場合に、特に顕著な効果が得られる。図3に示される無線通信システム1は、例えば、将来の6GやBeyond5Gに適用され得る。
【0045】
図4及び図5は、本実施形態に係る実施例を示す図である。図4及び図5に示される実施例は、端末UEが複数の中継器10を介して一又は複数の基地局BSとの間で信号を送受する場合である。
【0046】
図4の実施例では、端末UEは、複数の中継器10に対して同じビーム制御アルゴリズムを用いてビーム制御情報を生成する。図4の例では、端末UEは、メガネ(デバイスDVa)に搭載された2個の中継器10-1,10-2に対して、基地局側アンテナ260のアンテナビームBを同じ基地局BS-1に向けるように、ビーム制御情報を生成する。このビーム制御情報によって、各中継器10-1,10-2は、基地局側アンテナ260のアンテナビームBを同じ基地局BS-1に向ける。
【0047】
図5の実施例では、端末UEは、複数の中継器10に対してそれぞれ異なるビーム制御アルゴリズムを用いてビーム制御情報を生成する。図5の例では、端末UEは、メガネ(デバイスDVa)に搭載された2個の中継器10-1,10-2のうち、中継器10-1に対して基地局側アンテナ260のアンテナビームBを基地局BS-1に向けるようにビーム制御情報を生成し、中継器10-2に対して基地局側アンテナ260のアンテナビームBを基地局BS-2に向けるようにビーム制御情報を生成する。それらビーム制御情報によって、中継器10-1が基地局側アンテナ260のアンテナビームBを基地局BS-1に向ける、一方、
中継器10-1が基地局側アンテナ260のアンテナビームBを基地局BS-2に向ける。
【0048】
端末UEは、複数の中継器10が連携して最適なアンテナビームを形成するように、ビーム制御情報を生成してもよい。
【0049】
上述したように本実施形態によれば、無線中継装置の小型化や軽量化を図ることができるという効果が得られる。
【0050】
なお、これにより、例えば無線通信システムにおける総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0052】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0053】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…無線通信システム、UE…無線端末装置、BS…基地局、10…無線中継装置、201…アンテナ制御部、202…算出部、203…下り受信信号電力検出部、204…上り情報伝送部、205…上り送信部、206…下り受信部、207…下り情報受信部、208…切換器、209…アンテナ、251…切換器、252…上り受信信号電力検出部、253…上り情報受信部、254…上り中継部、255…下り中継部、256…下り情報伝送部、257…切換器、258…ビーム切換部、259…端末側アンテナ、260…基地局側アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5